ハッピーライフ🎵
結婚して十年。
絶対無いと思っていたことが起きた!!
旦那の浮気…。
どうする?アタシ?
どうなる?アタシ⁉
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絶対に不倫なんか無いから。
何の根拠も無いのに、旦那のこの言葉だけは、本当に信じてた…。
何で、携帯見ちゃったんだろ?
知らない女の人の名前。
彼氏、彼女の楽しげで、ラブラブなメール。
読みながら、体が震え、頭が、カーッとなるのが分かった。
すぐに、寝ている旦那を起こした。
「何これ?」
「あぁ…。」
冷静に受け答えする旦那。メールだけの付き合いだから、そんなに悪い事じゃあ無いと思っていたと…。
でも、もうやめる。
嫌な思いさせて、ごめん。
と、旦那は言ってた。
いっぱい泣いた。
いっぱい怒った。
携帯も折った。
悲しかった。
体の関係が、本当に無かったとしても、彼女とメールをしている間、旦那の気持ちは、彼女に向いていた。それが、悲しかった。
でも、子供たちの為にも、今回は許そう。
何より、アタシが、旦那の事が、好きだから。
笑って許そう!
携帯を開いて、マナーモードに。
何となく、メールを見てしまった。
彼女からのメールだった。
頭が、真っ白になっていく。
「パパ、これ何?」
「えっ!?」
携帯を見て、ゆっくり起きた旦那が…。
そのまま、家を飛び出した!!
呆然として、旦那の後ろ姿を見つめてた…。
家に入って、鍵を掛けた。
1時間ぐらい経った頃、旦那が帰って来た。
携帯だけ持って、飛び出した旦那。
家に入れて欲しいと、メールを送ってきた。
何回かの、電話とメールを無視した。
でも、「携帯を渡すなら」という条件で、旦那を家に入れた。
土下座して謝る旦那。
何だか、冷静に旦那の姿を見ている。
まるで、テレビや映画を見てるみたいな、現実味の無い、不思議な感覚。
最初に発覚した時、あんなに、怒って泣いたのに…。
土下座して、謝り、言い訳をする旦那を見ながら、
「この男は誰だろう?」
自分の知らない男が、何か言ってる。
しばらく、そんな感覚で、旦那の姿を見つめてた…。
一人になると、携帯のロックを解除するのに、必死になった。
アタシに隠して、守りたい女なの?
アタシより、その女の方がいいの?
知りたかった…。
旦那が、どんな女と、どんなやり取りをして、どんな気持ちだったのか、知りたかった。
気がつくと、朝になっていた。
携帯のロックが解除された。
携帯のデータは、全て削除されていた…。
でも、退会したはずの無料ゲームのサイトにまた、登録しているのを見つけた。
サイトの中でのメールのやり取りをしてるのは、4人も居た。
この男は、何を考えているんだろう?
何がしたいんだろう?
もう、考えるのも嫌になってきた。
「バカじゃない!?」
そう言いながら、携帯を投げ捨てた。
その日は、日曜日だった。子供たちを連れて3人で出掛けた。
何も知らずに、楽しそうに遊んでる子供たち。
パパの事を聞かれたら、どうしよう…。
旦那は、子供たちをとても可愛いがっていた。
子煩悩で、真面目で優しい旦那。
そう思っていた。
今は、何も考えず、子供たちと思いっきり楽しもう。
そう思い直して、いっぱい遊んだ。
ファミレスで夕食をして、3人でお風呂に入って、とても楽しい1日だった。
旦那の事を忘れて、眠れそうだった。
真夜中…。
旦那の携帯の着信音が鳴った。
電話の相手は、怒りを押さえてる様な震える声だった。
旦那の名前を言い、旦那の携帯かと確認された。
旦那の携帯だけど、旦那は、留守だと伝えた。
電話の相手は、旦那の浮気相手のご主人だった。
こちらも携帯番号、メアドを削除するので、そちらからも、連絡しないで欲しいとの電話だった。
どうすればいいのか、何を言えばいいのか、わからないままとりあえず、旦那の不始末のお詫びをした。
相手のご主人も、少し冷静になられた様で、申し訳ないと言って下さった。
相手の携帯には、メールのやり取りも残っていて、どんなやり取りをしていて、会っていたと思われる日、次に会う約束をしていた日を教えてくれた。
二度と連絡を取り合わせない事を約束して、電話を切った。
電話を切った後、ひどい吐き気がして、トイレに駆け込んだ。
吐く程ショックを受けたのに、涙は出なかった…。
悲しいのか、腹が立つのか、自分の感情も気持ちも、わからなかった。
自分の体が、自分のものじゃないみたいな、フワフワした感覚がまとわりつていた。
旦那に連絡しようとも、思わなかった。
いろんな事を考えた。
ただの、浮気なのか?
アタシには、もう、気持ちが無いのか?
平気な顔をして、アタシや子供たちの前で、メールをしてた事。
旦那は、別れたいのか?
アタシが、泣いたり、怒ったりする姿を見ても、何も思わなかったのか?
「絶対に離婚なんかしてやらない!」
いつの間にか、そう思っていた。
旦那が出て行って、何日か経ったある日、下の子供が言った。
「パパ帰って来ないね~。僕、お手紙書いておくね♪」
子供が書いた手紙には、
「パパ大好きだよ。」
「パパのお顔を見せてね。」
と書いてあった。
旦那に連絡して、話しをしなければ…。
そう思った。
1週間ぶりに旦那が、帰って来た。
「どうするつもりで、帰って来たの?」
「どうするか、俺に決める権利はないだろう?」
何処の女と、どういう付き合いをしていたのか、どうするつもりなのかを聞いた。
旦那に、携帯のロックが解除された事を告げ、正直に話して欲しいと言った。
旦那とサイトでやり取りしていた人の名前を一人づつ挙げて、それぞれどういう付き合いかを聞いた。
バレる訳ないと思っていたのだろう。
驚いた顔をして、アタシを見ていたが、ポツポツと話し始めた。
4人のうち2人は、サイトの中だけのやり取りしかしていない。
1人は、直接メールのやり取りをしていたけど、携帯を変えてからは、メールは、していないと…。
最後の1人は、サイトでも、直接メールでも、やり取りを続けていた。
でも、それだけだと言った。
何の為に、誤魔化そうとするのか?
込み上げてくる怒りを押さえながら、努めて冷静に聞いた。
「そう…。
じゃあ、この携帯の番号は、誰の?」
旦那は、携帯の画面を見て、驚いた。
「何で…!?」
「〇〇さんの番号よね?
〇〇に住んでいる人でしょ?」
唖然とする旦那。
アタシは、胸の奥で何かが割れる音を聞いた様な気がした。
旦那は、もうアタシの顔を見なかった。
探る様な、諦めた様な、帰って来た時とは、明らかに違う様子で、話し始めた。
「何て、電話があったの?」
「〇〇さんとは、話したの?」
そう聞かれた…。
何でバレたのか、彼女がどうしてるのか、どこまで知っているのか…。
旦那が知りたいのは、彼女との事ばかりだった。
旦那の口から謝罪の言葉や、アタシを気遣う様な言葉は、何一つ出なかった…。
「どうするつもりで、帰って来たの?」
もう一度聞いた。
「次に会う約束してたよね?アタシが知らないと思って、会うつもりだったでしょ!?」
「彼女と会った後で、アタシとも、そういう事が出来るって、何考えてんの!?」
他にも色々文句を言った。怒り過ぎて、覚えてないけど、旦那の言葉は、覚えている。
「正直、バレる訳ないと思ってたから、適当に理由を言って、会いに行くつもりだった…。」
旦那は、彼女との関係を終わらせる気など無かったのだ…。
彼女も、ご主人にバレた。
自分も、嫁にバレた。
彼女との関係を続ける事は、出来ない。
そう思ったからなのか、その場しのぎの言葉なのか、
「ごめん…。」
と、旦那が言った。
「ママの事を嫌いになった訳じゃない。
彼女とどうこうしたかった訳でもない。
遊びのつもりだった。
向こうも家庭があったし、お互い、遊びだった。
愛してるのは、ママだけだから…。」
旦那の言葉は、もう信じられなかった。
もう、旦那が何を言っても、アタシの心に響くものは、無かった。
「三度目は、ないから。」
そう言って、旦那が家に戻る事を許した。
次の日の朝。
久しぶりに、パパの顔を見た子供たち。
すごく嬉しそうだった。
「パパ、お仕事忙しいの終わった?
お疲れ様♪」
喜んで、パパに飛びつく子供たちを見て、自分の感情は、抑えなきゃ。
今までの生活に戻さければ…。
そう思っていた。
今まで通り、生活しよう。そう、思ったのに、旦那に何事も無かったかの様にされると、イライラしてしまう。
旦那の為に食事を用意するのも、旦那の着たものを洗濯するのも、嫌だった。
アタシのこのイライラは何なんだろう?
夜、子供たちが寝てから、旦那が帰って来た。
旦那の顔を見た瞬間、自分のイライラの原因に気づいた。
アタシは、旦那をベッドに誘った。
寂しかった…。
旦那の気持ちが、他の女に移った事。
アタシのものだと、信じていた旦那が、他の女を抱いた事。
アタシは、自分で思っていた以上に旦那を愛していたんだ…。
旦那を取り戻したかった。
旦那は、戸惑いながら、アタシを抱いた。
アタシは、また、すぐに旦那を求めた。
旦那は、もう、無理と応じてくれなかった。
泣きながら、訴えた。
「アタシにこんなに寂しい思いをさせたのは、パパでしょ!?
傷つけたのは、パパでしょ!?
だったら、傷を癒してよ!寂しい思いをさせないで!」
旦那は、何も言わず、背を向けて寝てしまった…。
惨めだった…。
旦那にとって、女じゃなくなってしまったのか?
彼女に負けたのか?
裏切ったという事が、許せないのか?
何が悲しくて、何に腹が立って、惨めに思うのか、わからなかったけど、
凄く惨めだと感じていた…。
その日、アタシは、イライラを子供たちに、ぶつけてしまった。
いつもなら、叱ったりしない些細な失敗を、大きな声で責めていた。
びっくりして、泣く事も忘れて、アタシを見上げる子供たち。
駄目だ、子供たちに当たりたくない!!
アタシは、家を飛び出していた…。
日曜日の夜。
ファミレスには、楽しそうに食事をしている家族。
駅からは、買い物帰りの仲良さげな家族。
手を繋ぎ、寄り添って歩く、恋人たち。
家を飛び出し、街を歩くアタシの目に映るのは、幸せそうな人達ばかりだった。
どうして、こんな事になったのか?
どうして、アタシが、こんな思いをさせられるのか?
ずっと涙もこぼさずにいたからか、胸が詰まった様な苦しい気持ちが、溢れ出した。
アタシは、公園のベンチに座って、しばらく泣き続けた。
そして、気持ちに踏ん切りを着けて、立ち上がった。
家に戻ったのは、深夜だった。
携帯には、旦那からの着信が、何度も入っていた。
「何処に行ってたんだ!?」旦那が、起きて待っていた。
アタシは、それに答えず、子供たちの部屋へ行き、寝ている子供たちを抱きしめて眠りについた。
朝、いつもの様に子供たちを送り出した。
その後、出勤前の旦那に告げた。
「離婚はしません。
愛してるからじゃない。子供たちとアタシに対する責任を果たして欲しいから。
でも、アタシたちは、もう夫婦じゃないから。
意味わかるよね?
アタシは、あなたの事は、要らない。
アタシは、自由にさせて貰います。
あなたに文句を言う権利はないから。」
旦那は、黙って聞いていた。
完全に吹っ切れた訳じゃない。
旦那のした事を忘れるなんて、無理だろう。
でも、進まなきゃ。
前に向かって、一歩でもいいから、進まないと。
子供たちの為にも、泣いて沈んだまま暮らす事は出来ない。
何より、アタシ自身、辛く、惨めな思いを抱えたくなかった。
失恋したんだ…。
結婚してから、失恋なんて、ちょっと可笑しいけど、失恋なんだ。
だから、過去の経験を思い出して、また、立ち直ればいい。
その時は、そう思っていた。
すぐに、立ち直って笑えると…。
いつもと同じ日々が続いた。
朝、子供たちを送り出し、洗濯や掃除をする。
昼間、買い物に行き、子供たちが帰って来たら、宿題を見ながら、夕食の準備。夜は、子供たちと夕食を食べて、一緒にお風呂に入って、本を読んだり、少しおしゃべりをして、就寝。
そこに、旦那が居ない事以外は、いつもと同じ生活だ。
旦那の世話は、何もしなかった。
洗濯も、食事の用意も、何もかも…。
アタシの中から「旦那」という存在を消そうとしていた。
子供たちが一緒に居る時は、余計な事を考えず、楽しい時間が過ごせていた。
子供たちを送り出した後も、ママ友とランチに行ったり、おしゃべりしたり、いつもと同じ日々を過ごした。
旦那は、残業だったのか、遊んでいたのか知らないが、帰宅するのが、遅かった。
旦那に踏ん切りをつけた三日後、仕事中の旦那からメールが届いた。
「ママを失ないたくない。」
裏切り、傷つけて、本当に申し訳なかった。
もう一度、信頼してもらえる様に努力するから、チャンスをくれないか?
そういう内容のメールだった。
アタシは、何の返事もしなかった。
意地を張ったのでは無く、何も感じられなくて、返事が出来なかったのだ。
夜、子供たちと3人分の夕食の片付けをしていると、メールが届いた。
旦那から、二度目のメール…。
少し、胸がザワついた。
昼のメールと同じ様に、別れたくないという、内容のメール。
自分が、軽はずみにした事で、どんなにママを傷つけてしまったか、自分にとって、ママが必要だ、別れたくない。
ママを失うと思うと、頭が真っ白になって、何も考えられない。
0からでいいから、もう一度やり直してくれないか?
心が…動いた…。
許せない訳じゃない。
許したらいけない。
そう思っていた。
もう裏切られたくない。
自分が傷つきたくない。
信じるのが怖かった。
でも、アタシも、旦那の事をまだ愛してる。
だから、旦那のメールに揺さぶられてしまうのだと思う。
メールに返事は、しなかった。
でも、何も言わず、旦那の帰りを待ち、夕食とビールの用意をして迎えた。
「お帰りなさい。」
旦那は、最初、驚いていたけど、照れた様に「ただいま。」と言った。
お風呂に入って、テーブルに用意した食事を嬉しそうに食べていた。
新婚の時の様に、「美味しいね」と繰り返し、仕事の話しをしながら、食べていた。
あの頃に戻れるんだろうか?
全て元通りとは、いかないだろうけど、0からやり直せるんだろうか?
何も言わず、そんな事を考えていると、
「今すぐじゃなくていいから。ママの気持ちが戻ってくれる様に、頑張るから。」
旦那が、そう言って微笑んだ。
いつもと同じ朝。
子供たちを送り出し、旦那を送り出し、笑顔で見送る。
洗濯、掃除、毎朝繰り返される家事。
洗濯機の前に立ち、衣類を分類する。
箸でつまんだりは、しなかったが、旦那のものだけ別に洗濯機を回した。
嫌悪感?
そこまでじゃないかも知れない。
でも、一緒に洗いたくなかった。
一通りの家事を終え、ひと息つくと、リビングの棚に、家族で写した写真が、目に入った。
平凡だけど、何事もなく、幸せだった。
旦那は、この時、どんな気持ちだったんだろう?
どうして、子供たちの事を忘れてしまったんだろう?
何故、アタシ以外の人と…。
一度考え出すと、止まらない。
答えなんて出ないのに、ぐるぐると、同じ様な事をずっと考えていた。
それが、始まり。
繰り返される、フラッシュバックにアタシは、苦しめられる事になる。
何気なく目に入る文字や、耳に入る言葉から、旦那の事が、頭に浮かぶ。
「旦那は、浮気してたんだ…。」
時計を見ても、旦那と彼女がメールしていた時間だったりすると、
「アタシには、仕事へ行ってから帰るまで、メールなんて送ってきた事ないのに…。
彼女には、送ってたんだ。」
ふと、自分の携帯の受信メールを確認した。
旦那からのメールは、彼女と付き合う様になってから、全く送られていなかった。
改めて、旦那の気持ちが、余所へ向いてしまった寂しさに襲われた。
最初は、子供たちや、ママ友たちと過ごしている時間は、笑顔で居られた。
冗談を言ったり、ふざけっこをしたり出来ていた。
ある日、ママ友と話してると、スーパーの窓ガラスに映る自分の笑顔が、不自然で、ひきつった妙な顔になっていた。
おしゃべりをしていても、買い物をしていても、旦那の事が浮かんでくる。
次第に、子供たちと遊ぶ時間も、会話も減っていった。
旦那は、やり直したいと言ったけれど、本当は、彼女との関係を続けて居たかったのでは…?
メールで呼び合っていた、親しげな呼び方。
関係を持った後だと、容易にわかるメール。
残業だと言ったのに、彼女と会っていた日。
最初にメールを見つけた時、怒るアタシに土下座していた旦那。
でも、その後、泣いて責めたアタシには、冷たい目で
「メールだけなのに。」と言った。
2度目の浮気発覚の時、家を飛び出して、すぐに彼女に連絡を取っていた。
明日以降、連絡するから、待っててと…。
旦那がアタシについた嘘。
彼女と会って、帰って来た時の様子が、繰り返し思い出される様になっていった。
フラッシュバックは、続き、食事が喉を通らなくなった…。
用もないのに、旦那の昼休みの時間に、携帯を鳴らした。
繋がった時は、安心したけど、繋がらず、折り返し連絡してくれない時は、イライラしたり、不安になった。
旦那が入浴中、就寝後は、必ず携帯をチェックした。
疑わしいメールも電話も無い。
少し前なら、ほっとしていたのに、今は、削除したのかもと疑ってしまう。
そして、旦那が寝た後、携帯を触っていると、メールの予測変換に気づいた。
「デート」「会いたい」彼女の名前。
アタシには、使った事の無い絵文字や❤の履歴。
何時間も、旦那の携帯の履歴や、予測変換で、彼女に送っていたと、思われる言葉を繋ぎ続けていた…。
アタシは…病んでいった。
一日中、旦那の浮気の事ばかり考えていた…。
家事も、きちんと出来ず、気がつくと、涙を流していた。
悲しいとか、寂しいとか、そんな感情があったのかも、わらない。
泣く…。というのではなく、勝手に涙が溢れて出た。そんな感覚だった…。
数日が経ち、子供たちに、「ママ、辛いの?」
と聞かれた。
「どうして?」と聞き返すと、
「ママ、笑わなくなったから。」と言われた。
いつもなら、おやつも一緒に食べてたし、必ず、ふざけっこしながら、抱きしめたりしていた。
旦那の浮気に囚われ過ぎて、子供たちの事を考えていなかった…。
その晩、旦那に話しがしたいと言った。
旦那は、少し、沈んだ顔をしたが、すぐに応じてくれた。
「本当に彼女とは、終わった?」
「終わったよ。」
「お互い、バレて、無理やり終わらせたから、未練があるんじゃない?」
「彼女に対して未練は、無いよ。」
「どうして、そんなにあっさり出来るの?
アタシを裏切ってまで、会いたかった彼女なのに。」
「本当に、お互い遊びだったんだ…。
愛してるのは、ママだけ。ママの気持ちに甘えてしまったんだ…。
大事にされる事に甘えて、ママや、子供の事を考えなくなってた。
彼女にその気になる様なメールを貰って、深く考えず、軽い気持ちで遊んでしまった。
本当に、ごめん。」
「彼女が、ご主人にバレてなかったら、まだ続ける気だったんでしょ?」
「………。正直、そのつもりだった…。
でも、ママが家を出て、自分の前から居なくなると思ったら、どうしていいか判らなくなって、本当に恐かったんだ。
だから、二度としないよ。」
ここまで聞いて、本当に愛されてるとは、思えなかった。
アタシたち夫婦は、同棲して、妊娠したから、籍を入れた。
いわゆる、できちゃった婚。
いずれは…と言いながら、自分たちの意思とは、関係なく結婚してしまった。
アタシは、旦那の事が好きで、旦那の子供を生みたいと思っていたので、そんな状況をすんなり受け入れたが、旦那は違うと思っていた。
したい仕事を諦め、生活する為に収入重視で仕事を選び、いきなり家族の為と責任を背負う事になった…。だから、
『望んでした結婚じゃない』
旦那の気持ちは、そうなんじゃないかと、胸の奥でずっと引っ掛かっていた。
「したくてした結婚じゃないでしょ?
アタシと、結婚したかった訳じゃないよね?」
アタシは、思いきって聞いた。
「結婚したいと思ってなかった…。」
と、旦那は言った。
「やっぱりね…。
ずっと、引っ掛かってたんだ…。
この人は、アタシと結婚したくないんだって。
責任は取るけど、愛してるんじゃない。
結婚して、子供も二人、授かったけど、愛されてないかも…。
ずっと、そう思ってた。」
「違うよ!!
結婚して、家族を養って、責任持つことが、不安で、結婚は、まだ、したくなかった。
そういう意味だよ。」
「でも、アタシの事を裏切ったじゃない。
アタシは、パパ以外の人なんて、興味も持たない。
でも、パパは、出来た。
それが、アタシには、愛してない証拠に思える。」
「愛されてないのに、一緒に暮らしたくない。
夫婦じゃないよ。
セックスが出来る、家政婦だよ。
もう、いやだ!!」
長い間、溜めていたものを、全部吐き出した。
「やっぱり、やり直すなんて無理だよ。
最初から、何も無いのに、どう、やり直すの?」
「別れたいの?」
旦那が聞いてきた。
「愛されてないのに、一緒に居るなんて、もう無理。」
その日、旦那をリビングに残して、アタシは子供部屋で、眠った。
体が、気持ちが、冷えていく様な、空っぽになっていく様な、なんとも言えない寂しさに潰されそうになった…。
アタシは、子供たちを抱きしめて、泣いた。
旦那が浮気した事で、自分が抱いていた、不安が真実になる。
愛されていない。
アタシは、それを認めるのが、一番恐かったのかも知れない。
愛されてない不安が、胸の奥で燻る中、旦那が浮気した。
結局、愛されていないという、実感だけが残った。
そして、この数ヵ月間の旦那の言葉や、顔を思い出して、旦那が知らない男の人になっていった。
どうすれば、いいんだろう?
この先、どうなるんだろう?
答えが出ないまま、気持ちは、どんどん沈んでいった。
次の日の朝、アタシは、旦那の顔が見れなかった。
出掛ける間際、旦那がアタシの前に立った。
うつ向いたままのアタシに「本当にもう無理?」
と聞いてきた。
「俺と一緒に居たくない?」
「……一緒に居たい…。
でも、愛されてないのに、一緒に居るのは、辛いから嫌だ…。」
「じゃあ、一緒に居て。」アタシは、顔を上げて、旦那の顔を見た。
「今は、何を言っても無理かも知れない。
俺の事も信じて貰えないと思う…。
でも、俺は、一緒に居たい。
本当に愛してるから一緒に居たい。」
旦那の言葉をどう受け止めればいいのか、わからなかった…。
アタシを裏切った旦那。
愛してくれていないかも知れない旦那…。
この先、信じていけるかどうか、判らない。
でも……。
一緒に居たい。
それが、アタシの本心だ。
旦那は、愛してくれなくても、アタシの傍に居てくれる。
旦那との間に可愛い子供も二人居る。
アタシが旦那を愛しているんなら、もう、それだけでいいか…。
アタシは、そう思い始めてた。
旦那の事を愛してる。
そう、思える間は、離婚とか別れるとか、考えなくてもいいかな…と思った。
旦那との事が、この先どうなるか判らない。
でも、笑っていたい。
毎日を沈んで、暗い気持ちのまま過ごすより、子供たちと笑って楽しく過ごしたい。
忘れる事は、出来ないし、水に流す事も出来ないと思う。
結構、引きずるタイプだし…。
でも、前を向いて歩こう!
その日、また、旦那からメールが届いた。
「また、今度、ゆっくり話しを聞いてくれないか?
」
たぶん、アタシは、旦那を許すんだろう…。
メールを読んで、そう思っていた。
その日から、なるべく、旦那の浮気を考えない様にした。
子供たちと、いつもの様に過ごし、旦那とも普通に接した。
久しぶりに、穏やかな夜を過ごし、旦那と同じ寝室で眠った。
週末、旦那と話しをした。
結婚する時、いつも笑ってて欲しいと言ったのに、俺自身が泣かせてしまった…。
本当に申し訳ない。
これから、一生懸命頑張って、笑顔で居られる様にするから。
もう、浮気なんてしないから。
旦那は、そう言った。
「本当は、まだ自信は無いの…」
アタシは言った。
「帰りが遅かったり、連絡が着かない時、また?って、疑ってしまうかも…。
不安になって、携帯をチェックしてしまうかも…。」
そう言うアタシに、
「見ればいいよ。
不安な時は、見ればいい。
もう、大丈夫だから。」
と、旦那は言った。
また、少し、気持ちが、落ち着いた。
日曜日の朝、いつもの様にゆっくり起きてきたパパに飛びつく息子。
何やら、ナイショ話しをした後、
「うん、わかった。
ありがとう、パパ頑張るよ」と。
どうしたの?と、聞いてみたが、「ナイショ🎵」と言って、息子は、教えてくれなかった。
旦那は、息子のおかげだとだけ言っていた。
これで、また、家族としてやっていける。
そう思う反面、いつか旦那は、また浮気するかも…。
もしかしたら、本気で誰かを好きになるかも知れない。
アタシは、そう思っていた。
一度ある事は、二度…じゃないけれど、結婚しても、気持ちは「永遠」では、無い…今回の事で、そう思った。
人は、結局、誰もがずっと片想いをしているのかも知れない。
どんなに愛し合って結婚した夫婦でも、日々、繰り返される生活。
男と女だけど、夫になったり、妻になったり、親になったりする中で、ずっと同じ気持ちでは、居られないだろう。
愛し合っている事に変わりは無くても、二人が同じ想いのまま、居られるなんて事は、ほぼ無いと思う。
仕事や育児などのストレスから、どちらかに、歪みが出来てしまったら、気持ちも、すれ違い易くなる。
愛しているけど、想いの深さや、想いの熱さは、時の流れの中で、移ろうと思う。
だから人は、一生、片想いなんだ。
人の気持ちは、止められない。
だから、結婚しているのに、誰かに惹かれてしまうのは、仕方のない事なのかも知れない。
でも、気持ちは、止められなくても、行動は、止められる。
何故なら、人には理性があるから。
その理性さえ、吹き飛ばして、「不倫」に走らせてしまうものは、何なんだろう?
人は、自分勝手で、ワガママな生き物だ。
結局は、自分が一番大事で、愛する家族さえも、自分の欲求の前では、「他人」になってしまうのかも知れない。
そこまで、人を狂わせるものは、何なんだろう?
旦那は、優しくなった。
メールも電話も、マメにしてくれる。
休みの日には、買い物に付き合ってくれたり、子供たちと出かけたり、家族との時間を大切にしてくれた。
でもやっぱり、時々不安になり、こっそり携帯をチェックしたり、財布や持ち物をチェックしていた。
彼女との事を、疑う様なものは何も無かったが、微妙な違和感が胸の奥に残る。
そんな日を繰り返し、少しずつ、携帯や持ち物のチェックも、しなくなった。
浮気の事を考えないように、蓋をして、今後の事だけを考えようと思っていた。
――――――アタシ達は、
別居する事になった。
終わったはずだったのに、アタシと子供たちが出掛けた、ある土曜日、また、彼女とメールをしていた。
もう、泣きわめいたり、怒鳴ったりする事もなく、
「もう、いいわ」と一言だけ言った。
もう、諦めるしかない。
そう、思っていた。
旦那は、色々言い訳をしていたが、繰り返される嘘に付き合う気はなかった…。
浮気では無く、本気だった。
でも、子供が居るから、離婚するのを、躊躇っているのだろう。
アタシは、どうすればいいのか、どう考えればいいのか、判らない。
本気で彼女の事が、好きになったのなら、仕方ない。許す許さないの問題では、なくなった。
夫婦として、どうするのか?
家族として、どう向き合って行くのか?
これからの生活をどうして行くのか?
考える事は、判っているのに、それを考える事が、出来なかった…。
心が空っぽになってしまったみたいだった。
旦那は、謝罪の言葉を繰り返し、子供たちを愛してる、アタシを愛してると、何度も言う。
でも、その一方で、彼女とも連絡を取り続けていた。
もう、何を言っても、別れないだろう…。
愛してる…と言うのとは、違う。
でも彼女にも気持ちは、ある。
旦那は、そう言った。
家で携帯を触る旦那を見ると、イライラする。
顔を見ると、吐き気がする。
家を出て、考える時間を作って欲しいと、別居を言い出したのは、アタシだった。
旦那は、ずっと拒んでいたが、食事も摂らず、眠る事も出来ず、精神的に追い込まれるアタシを見て、渋々、了承した。
そうして、別居が決まった。
子供たちも、アタシ達二人の間が変わってしまった事に気付いていた。
下の子供は、まだ小さく、ちゃんと、理解出来ていない様子だが、「パパがママに悪い事した」と言って、アタシを慰めてくれた。
上の子供は、もう、大体の事情が判っていた。
「離婚するの?」と聞かれた。
子供に酷な事とは、思ったが、別々に暮らす事を説明した。
離婚は、まだ決まっていないけど、そうなるかも知れないと、話しをした。
「わかった。どうなるか決まるまで、パパの話しは、しないで。」と言われた…。
子供たちには、こんな風にしか、進めなかった、アタシの不器用さを、本当に申し訳ないと思った。
子供たちにとっては、かけがえのない、父親なのに…。
自分の気持ちを優先させて、旦那を追い出してしまった。
もっと上手く、旦那と話しが出来ていれば、子供たちを悲しませずに、済んだかも知れない…。
「ごめんね。」
子供たちには、それしか言えなかった…。
お互いの実家にも、別居する事になったと報告した。
両親達からは、考え直すように言われた。
離婚する気が無いなら、別居しない方がいい。
子供たちの事を思うなら、そのまま修復した方がいい。
あなた達が積み重ねてきた十年間を無駄にしないで。
永く夫婦をしていれば、そういう事もあるから、そのまま修復する事を考えたら?
判っている。
アタシも、聞かされた側なら、同じ様な事を言っただろう。
でも、泣きながら誓った言葉まで嘘だった。
あんなに何度も謝罪し、愛してる、大切だ、もう傷つけたりしないからと言ったのに、その裏で、アタシにバレずに、彼女と続ける事を考えていた旦那…。
そんな人を、どう許して、どう信じていけばいいのか、判らないし、自信もない。
そんな人と、夫婦として、家族として、共に生きていく意味があるのか、判らなかい。
だから、アタシは、旦那と離れて一人で考えたかった。
友達にも、別居しない方がいいんじゃない?と言われた。
今、別居しても、旦那は自由になるから、彼女と別れるどころか、もっと真剣な関係になるかも知れない。離れない方がいいよ!と言われた。
確かに、アタシに隠れてコソコソする必要なんてない。
いつでも、好きな時に彼女に会ったり、メールや電話が出来る。
旦那には、好都合かも知れない。
でも、アタシは、それで旦那の本心が判る。
旦那のこれからの行動で、アタシたち夫婦が、別れず居られるか、別れてしまうかが、決まる。
そう、思っていた。
生活費は出してくれるらしいが、いつまでか判らない。
仕事を探して、離婚する事になっても、生活出来るようにしておきたい。
離婚して、子供たち2人とアタシだけで生活する事になったら…と思うと、とても不安になる。
でも、今は、自分が出来る事、やるべき事をしていくしかないと思っていた。
子供たちだけは、自分で守りたかったから。
旦那の事を、どう思っているのか自分でも、わからなくなっていた。
アタシ以外の人を好きになって、夢中になった旦那の気持ちは、「仕方ない」と頭の中では、冷静に受け止めている。
でも、一番大切で愛してるのは、アタシだと言っていたのに、一番愛してたのは、彼女なんだと思うと、やるせない。
旦那の顔を見たくないのに、この家に帰って来ないという安心感もあるのに、アタシの傍から居なくなる寂しさに押し潰されそうだった。
時々、旦那の温もりを思い出して、旦那に抱きしめてほしくなって、一人で泣いた…。
「部屋を決めてきた…。
一週間後に出て行くから。」
旦那が言った。
「そう…。何処に住むの?」
アタシは、旦那の顔も見ずに聞いた。
旦那が借りてきた部屋は、家から一駅離れた所にあるワンルームマンションだった。
「子供たちにいつでも会える様に近くにしたよ。」
「出て行く日まで、出来るだけ家族4人で楽しく過ごしたい。」
子供たちのために、アタシもそうした方がいいと思った。
「うん。わかった。」
そう返事した。
次の日から、旦那は早く帰宅して子供たちと一緒にご飯を食べたり、ゲームをしたり、お風呂に入ったりしていた。
平日なのに、子供たちの好きな宅配ピザを頼んだり、休みの日には、公園に行って、外食して帰った。
子供たちは、とても楽しそうで、嬉しそうで、そういえば、こんな笑顔の子供たちを見るのは、久しぶりだと気付き、せつない気持ちになった。
もうすぐ、パパが出て行ったと悲しむ、寂しげな顔を見る事になる…。
アタシは、この子たちから父親を引き離してしまう選択をした事を、少し後悔した。
旦那が家を出る迄と思って居たからか、この一週間、浮気や別居なんて、夢だったのかと思うほど、今まで通り、楽しく幸せな時間を過ごした。
アタシは、思わず旦那に、
「本当に彼女と別れてアタシとやり直そうと思ってるなら、このまま、別居せずにいようか?」
と言ってしまった…。
「いいのか?」驚いた様に旦那が言った。
「でも、部屋も契約したし、俺は一人になって、反省して来るよ。」
と、笑って旦那が言った。
何気なく答えた風を装おっていたが、最初に驚いた顔をした後、少し困った様な顔をした事をアタシは見逃さなかった。
「やっぱり、彼女と別れる気なんてないんだ…。」
心の中で、そう言いながら、また一つ何かが壊れてしまった気がした。
そして、旦那が家を出て行った。
これから、どうなるんだろう…。
旦那は、自由を選ぶだろうか?
アタシは、どうするんだろう?
今は、何も考えたくない。
アタシは、家中を必死になって掃除した。
旦那が居た名残を消したかった。
なのに、いつも、煙草を吸いながら、コーヒーを飲む場所だけは、そのままにした…。
旦那を…旦那が帰って来るのを願っているのかも知れない。
アタシの気持ちは…ずっと、揺れている。
十年以上、旦那だけを愛してきた。
旦那だけを見てきた。
もう、いいと思う気持ちもある。
顔も見たくないとも思う。
なのに、どこかで、旦那の事を待っている。
愛しているから?
それとも、ただ依存しているだけなのか?
他の女の人に夢中になっている旦那を思うと、腹も立つし、吐き気がする。
だけど、旦那の事を思ったり、考えたりすると、待っている自分に気付く。
十年以上ずっと、旦那しか見て来なかったし、旦那中心の生活だったから、判らなくなった。
今の旦那への気持ちは、愛なのか情なのか、習慣なのか…。
結婚してから、旦那に頼って生活してきた。
そう考えると、やっぱり依存は、しているだろう。
金銭的にもだけど、精神的にも、アタシの傍には、この人が居るという、安心感。
頼りきっていたと思う。
今までの生活や、精神的な安定を失う不安が、旦那への執着や依存になっているかも知れない。
本当に、お互いを必要とし、大切に思い、愛し合っていける存在なのか?
夫婦として、家族として、これからも一緒に生きていきたい存在なのか?
旦那だけじゃなく、アタシもちゃんと考えなければ、前に進めないと思った。
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