百合小説

レス41 HIT数 7985 あ+ あ-


2010/11/08 18:41(更新日時)

自身の体験を元に百合小説を書いてみました


感想なんかも頂けたりすると嬉しく思います♪

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No.1452569 (スレ作成日時)

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No.1

私の生まれた家は、代々と続く由緒ある神社だ。

近日のパワースポットブームにも乗っかって雑誌なんかにもよく紹介されたりするから、参拝客は後を立たない


ま、うちの神社も潤うことだし、こっちとしては良いことをしてる気分も味わえる

持ちつ持たれつ

というやつだ。

結局のところ、神様が何かしてくれるわけじゃない

生まれもった運命から人は逃れられないのだ

本人次第なんて言うけど
あらかた生まれ育った環境で人の人生は決まる

そう

神が本当にいるのなら
神社に生まれた私が真っ先に救われていいはずじゃないのか?

No.2

…それにしても

「今日も来てる」

いくら雑誌に紹介されてるからって毎日やってくる参拝客というのもめずらしい

少女のような女のコ…
名前は更科エリコ

私のクラスメイトだ…

彼女は特徴的だった
長い髪が印象的で、身長も校内で1、2番目を争う位小さかった。


はじめて参拝している後ろ姿を見かけた時は本気で小学生かと思ったくらい

そしてかなりの美少女

だから同じ教室に彼女を見つけた時は驚いた

でもそれだけじゃない

No.3

彼女は何のために毎日お参りにくるのかが謎だった。

お参りをしている時の彼女は学校で見かける時とだいぶ印象が違っていた


学校での彼女はいつもにこにこしていて
そのまま固まってしまったような顔をしている。

まぁつまりは自分とは真逆ということになる。

美少女にありがちな自分の意見をハッキリと口にするようなタイプではなく、皆に合わせている感じ


そんな彼女がお参りをしている時だけは妙に大人びて見える表情をする

No.4

私の方は彼女とは対象的で、頭ひとつ分ゆうに身長は大きく、校内でいちばん背が高かった。

名前の順でも背の順でも彼女に接点はなかったから、彼女と接する機会は皆無だった。

しかしたまたま私の隣の席の子が彼女と同中で、あの日彼女に呼ばれてきたのが私とエリコとの始まりだった。

「それはないって!ねえねえ、エリコ~!」隣の席のユカがエリコを遠くから呼んだ。

「あのね、シノがエリコのこと気になってるみたいだから、色々教えてあげて!」

ユカがイタズラっぽく微笑んだ

No.5

彼女がこちらに近づいてきた
「…ちょ!ユカ!私は…」
彼女が私の目の前までやってきた。

彼女に目を移す…
(…うゎっ!小さっ!)

エリコは上目遣いでじっと私を見つめている

私はなんて言葉をかけていいのかわからず言葉を探した

「武藤…シノさんですよね?」

私とは対照的で彼女は落ち着き払っていた。

耳に心地が良い声

「名前知って…」

No.6

「うん。武藤さんすごく目立つから」

そう言って彼女はにっこりと微笑んだ

私は運動部に所属していて大会でも良い成績をおさめていた。

(…なんだ…)

あの時何となく残念な気持ちが残ったのを覚えていた

思えばあの時から…

エリコには一個人として、色眼鏡でなく私を見てもらいたかったのかもしれない
「いんや~それにしてもこんだけ外見が違うのもびっくりだわ~」

No.7

ユカが私と彼女を見比べながら言った

言われて私は、改めてエリコを見た

(もしかして…お姫様だっことか出来そう…?)

「ちょっとごめん」

私はそう言うと彼女を抱き抱えた

「わゎ!」

「出来た!」
私はエリコに向かってニッと笑った

No.8

彼女は戸惑いながらも私の腕の中にすっぽりと収まっていた

「ずいぶん軽いなぁ~体重何キロ?」

「35位…かな」

「35!?」

私も170をゆうに超える長身のわりには、痩せている。しかし彼女との差は20キロ前後違う

「ほら彼女はバレエを習ってるから」

ユカが横から口をはさんだ

No.9

「そっか~…バレエの世界って大変なんだね」

「そんなに大変ってほどじゃ…私背も低いからそんなに量が入らないってゆうか」

彼女がゴニョゴニョと口ごもった

ええと…つまり…

「心配しないで…ってこと?」

「うん!そう!」

彼女は納得いったように笑顔を私に向けた

(うわ…可愛い…)

No.10

「こらこら、いつまで抱っこしてんの!」

ユカに言われてハッとした

「ごめんごめん☆ユカと違って抱っこしてる気がしなかったからさ」

彼女をゆっくりと降ろしながら私はユカに向かってニヤリと笑った。

「ゆったな!私だってそのうちお姫様抱っこしてくれる彼氏をゲットするんだから」

彼女は安堵のため息をつくと
「背高いと周りの景色も違って見える」
と言った

「景色?意識したことないけど…そかな?」

「全然違った!羨ましいな」

No.11

彼女との会話は心地が良かった。
へたに構えることもなく、穏やかな空気に変わる

それは彼女が必要以上に人との間を縮めてこないからだと思う

私の周りはいつだって私をほっといてくれない

女のコ特有の甘えや猫なで声、私はそのどれもが嫌いだった。

裏表を上手く使い分けて生きてるあの人にそっくりだからだ。

No.12

(…いいな~私もしてもらいたい…あれ…誰?…更科とかゆう……)

「おっ。すごいよシノ。どこからともなくファンの子たちが☆エリコやっかまれちゃうよ~おおコワっ!」
おどけるようにユカが言った。

「はいはい。」
実際女子校にいると私みたいなタイプは非常にモテる
だけど私には彼女たちを後輩と思う以上の感情はなかった

No.13

「エリコ~!パン無くなっちゃうよっ!早く早く!」
エリコの友達のひとりがこちらに向かって叫んだ

「あ!いけない!」

そういうと彼女は私に向かって

「それじゃあ…」
と軽く会釈すると仲間の方にパタパタと駆けていった
「フラれちゃったね」

またもやエリコは意味深な笑みを浮かべるのだった

No.14

私は女子同士のグループに俗するのが苦手だった。


私の私生活はあらゆるものに束縛されているのだ。
せめて学校では自由でいたいと思って当然だろう


彼女については美少女特有のやっかみや悪い噂を聞いたことがない

せいぜい「トロい」位。

…ぬるい…

私が知る限り彼女のトロさはハンパなかった

No.15

今だから書けるけど
当時彼女はお弁当を持参していた。

手作りだと言うから
「女のコだな~」と感心していたが

その理由が「購買部のパンが買えなかったから」
だとは!

何度やっても買えないと力説するので試しにやらせてみた

(決して私は鬼ではない)

彼女は…人混みの中で消えてしまった

これにはお腹を押さえながら笑ってしまった


小さいために周りに埋もれてしまうのだ

No.16

そう

エリコは尋常じゃないくらいトロくさかった

日々何事に対してもこんな感じなので、毎日何かしら彼女はダメージを受けている

きっとスライムごときにもやられてしまうタイプであろう

あれほど他人に関心はなかった私がエリコに対してだけはかなり世話焼きになったのもこんな理由からだった

エリコといるとホッとする

No.17

「ねぇ、前から気になってたんだけどエリコが首から下げてるのってペンダントなの?」

私はエリコの首からかかっているものについて聞いてみた


それはいつもエリコが肌身離さず身につけているものだった

「うん…家に代々伝わるもので私の御守りなの」

御守りという言葉に私は反応した

「ちょっと見せてよ」

No.18

「うん…シノになら…いいよ」

エリコは首からペンダントを取り出した

「!…カメオ?」

「うん、シェルカメオっていうの」

それは双子の女神を彫りこんだ、一見して骨董品としても価値があるとわかるような品だった

No.19

「すごく綺麗だ…双子には何か意味があるのかな」

私はつぶやくように言葉を発した

エリコは黙っていた

その時教室に休み時間の終了を告げるチャイムが鳴り響いた

後になって思えばあのチャイムは警告だったのかもしれない

No.20

その出来事から何週間かが過ぎたある日

「いけね」

私は忘れ物に気がついて、放課後の校舎を引き返していた

部活動が終わった後だから他の生徒はいない


教室のある3階につくと、ふと私は人の気配を感じて振り返った

上段の屋上へと続く階段に人の影…

エリコだった

No.21

彼女は空を眺めていた。

教室での彼女とは違う、何だか近より難い雰囲気…

私は思いきって彼女に声をかけた

なんだろう…この違和感


「まだ帰ってなかったんだ」

彼女がこちらに振り向いた。

No.22

一瞬ドキリとした

妙に色っぽい...

いつもと違う上から目線

笑み

ほどいた長い髪のせいだけではなかったと思う

彼女は視線を空に戻すと
「そうね。ちょっと空が綺麗だったから」

そう言うとまた視線を空に向けた

No.23



私は彼女が覗いていた窓を見た…

夕焼け、だけどいつもと変わらない空がそこにあった。

「そっか…」

言葉が見つからない…


「…じゃあ、またね」

「…あ!」

彼女は私の言葉を待たずにその場を立ち去ってしまった

どうしてしまったんだろう
エリコが?

…私が?

No.24

ピッピ…ピピッ
携帯のアラームが朝を告げている。
いつもと同じ時刻。

私はアラームを解除した

ふぅ...

手には携帯を握ったままだった

最近ではこんなふうに目覚ましをセットすることはなかった

どんなに疲れていても、その時間には必ず目覚めていたからだ

No.25

部屋はオイルヒーターのおかげでいつも快適な温度に保たれている

私は起き上がるとなるべく音を立てないようにゆっくりと窓を開けた

カララ…
急速に暖気が逃げていく。かわりに秋の訪れを思わせる冷たい風が頬を通り過ぎていった

一年一年時はめぐるけど、
他人も私にとって在るだけに過ぎなかった
季節と同じ。ただの通過点

なのに
それが違ってしまった

No.26

ただひとつをのぞいて…
脳裏に彼女の顔が浮かんだ

パンッ

私はそれを壊すように両手で頬を叩いた。

私はいずれ跡取りとしてこの家を継ぐ

感情に左右されてる場合ではないのだ

(しっかりしろ!)

私は手早く身支度を整えると、本堂へと向かった

No.27

いつものように清掃を済ませ、祈りを捧げる

同じことが出来るというのはつまりは「落ち着いてる」んだ

そう思うと少しだけ心が軽くなった

家を出る時はいつも母親が見送る
ご丁寧に深々と頭を下げて…

そう

いやでも跡取りとしてのプレッシャーはついて回った

No.28

私の人生は既に支配されていて、どこにも自由などなかった


時間はいつもと変わらない
失態をさらす位なら死んだ方がマシだ

そう思ってきた

私は母の優越感を満たすために存在している

母はプライドが高く自分の思い通りにならないとすぐにヒステリーを起こした


むろん外では檀家の手前、貞淑な妻を演じている
優しいのは他人の前でだけ…

No.29

そんな私がエリコにやすらぎを感じるのはごく自然なことだった

きっとエリコは優しい両親に育てられたんだろうな

私はホームドラマのような家庭を思い浮かべた

秋晴れの空の青さも後押しして私は気持ちにケリをつけた

No.30

教室ではエリコが先に来ていた。
ユカと楽しそうに談笑している

私はいつものようにふたりに声をかけた

「エリコ!ユカおはよっ!」

「お~!おっはよー」
ユカがいつものようにおどけた調子で応える

その瞬間まで私はエリコからもいつもの、花のような柔らかい笑顔が返ってくると思っていた

(………!)

No.31

振り向いたエリコの表情は温かみなど微塵も感じさせないほど冷ややかだった

2秒…いや3秒私と目を合わせていただろうか…

ドクン…

その時私の後ろから話し声が聞こえた

「…でさ~」

瞬間

彼女の表情が瞬時に変わった

「おはようシノ」

いつものエリコがそこにいた・・・

No.32

私はエリコに何かしてしまったのだろうか

同時に、突然、安心を奪われた気がした

一体誰に?
エリコに?

授業が手につかない
気がつくと私はエリコを目で追っていた


「泣かせるよね!」

ユカの言葉にドキリとした

No.33

「だよね~」

休み時間だった
マチコが先週から始まったドラマのすばらしさを皆に語っている

「でも、お母さんとのくだりがちょっと…、ちゃんと話せばお母さんもわかってくれるんじゃないのかなって」

ハナシアエバワカッテクレル・・・

私の中で何かがはじけた

「私そういうのあんまり好きじゃない」

No.34

私はエリコに向かっていった。

「そういうのって八方美人で性格悪そ」

ただ事ではない様子に周りの空気が変わった。

(構うものか…!)

私はエリコに対して怒っていたし、エリコがどう思っているのかわからないけど、自分がエリコにとってどういう存在なのかハッキリさせたかった

No.35

エリコは下を向いてしまった。

エリコの態度はますます私の怒りを増幅させた。


「…自分が被害者ってわけ?」

「ちがっ…!」

私はエリコの言葉を無視するようにカバンをつかむと教室を出て行った。

今日の自分は随分と心が乱れてしまった

気がつくと私は本堂に来ていた

No.36

しばらくしても気分は晴れなかった

自分の中でエリコの存在がこんなにも大きくなっていたなんて…

辺りは暗くなりはじめていた

その時道場の扉が開いた
ユカだった。
「近くでおはぎ売ってたからいっぱい買っちゃったの。さばくの手伝ってよ」

ユカがニッと笑った

No.37

「…了解」

私たちは離れに移った


「ちょっといくら何でもこれは買いすぎじゃない?」
「いやぁ、ヤケ食いする時は思いっきりってね!」

かなわないなぁユカには
私は笑った


「あのさ…私が口をはさむことじゃないと思うけどさ。エリコのこと…」

「…うん」

No.38

「シノはエリコが好きなんだね…」

「…うん」

「これはエリコから口止めされてることなんだけど…」

「…なによ」

「エリコは私たちより年上なんだ」

No.39

「…年…上?」

「うん…病気でね…彼女は私たちより2つ上なの」

ゲホっ!
(2つ?!)
思わず咳き込んでしまった。
「年下の間違いじゃなくて?」

「うん、ほんとそう見えるよね。引っ込み思案だし、思ったこと言わないし…」
「………」

No.40

「きっと、言えないんだと思う。エリコ言ってた。今がいちばん幸せだって、この幸せがなくなることが怖いって」

全てのつじつまが合った気がした。
毎日の祈りは彼女の願いだった。
それを間接的とは言え、誰よりも知っていたのはこの私だった…

そのエリコを私がいちばん傷つけた…

No.41

エリコ……

「ありがとうユカ」

ユカはいいやつだと思う
大事な親友だ

エリコに謝ろう…
私は彼女の家に電話をかけていた

「え!?まだ帰っていない?」

胸が騒ぐ
私は玄関を飛び出した
一体どこへ?!
彼女が行きそうな場所に見当がつかなかった

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