僕と携帯電話とおかん
はじめて小説を書きます。ほぼノンフィクションです。誤字脱字あるかと思いますがお許し下さい。
『貧乏な母親が僕にくれたもの。
それは携帯電話とお米だけ。
一人暮し、部屋4畳、風呂トイレ共同、家賃3万円が僕の城。
収入額、約月に6万円。
何が楽しくて生きているのかわからない。
でも親孝行がしたい。たったそれだけの気持ち。
18歳の僕。未成年からどん底。
それでも夢を見ます。』
貧乏人の頑張りを伝えます。
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初日。僕は電車で集合の場所へ向かった。まだおかんからもらったお金はほとんど使っていなかった。
3ヶ月間で千円しか使ってない…おっちゃんの作ってくれるご飯と寮費を出してくれてるおかんに感謝した。
集合場所にはたくさんの人がいた。そこからバスに乗って移動する。僕は10人組に分けられた、チームに入れられた。
もちろん僕が一番若かった。
チームのリーダーは阿部さんといった。刺青がすごくて怖いという印象をもった。
でもお兄さんで優しくて、歳は28歳だった。
他に印象に残ったのは、金子さんといって丸坊主に少し髪の毛が伸びた同じく28歳の人。
あとはみずきくんといって僕の1つ年上の人。
荒井さんといって離婚してしまったけどカッコいい子供想いの人。大西司さん、ずっとみんなにつーちゃんって呼ばれていたB系の似合うワイルドな人。
あとは3人で友達で来た。女の子たちだった。
お小遣いを稼ぐためにそれぞれが様々な目的のために集まった感じだった。
バスの中では自己紹介やらが行われた。
リーダーの阿部さんはとても皆をまとめるのが上手かった。もともとその中でも僕と、女の子3人だけが初対面という形だった。
ただどうしても阿部さんの刺青が怖かった。
つーちゃんに聞いてみた。
阿部さんは元々暴走族だったと言うこと、全く別次元の世界だった。
また荒井さんと金子さんは、ホストをやっていたということ、
夜の世界から昼間に生活を戻すために今働いているということだった。
それでもってつーちゃんは、ダーツ屋さんの店員とのこと、
みずきは学生で唯一ウマがあったのかもしれない。
そんな感じでバスは仕事場に到着した。
仕事の内容的には簡単だった。
一生懸命マラソンをしている人に
「おつかれさま」とジュースやうちわを渡すだけだったから。
なにより和気あいあいとチームで仲良くなりながら、バイトができたということ。
それが楽しかった。
バイト終わりに飲みに行くぞ!!と
阿部さんが言っていたけど、
僕はお金はないしまだ高校生だったから断った。
みずきも断っていたけど、
断っといたら結局、ご馳走してやるということになり、
飲に行くことになった。
もちろん僕とみずきと女の子3人はお酒は飲まなかったが、
派遣先の事務所が同じということもあって、みんなとはよく一緒に働くことが多かった。
派遣会社が仕事がしやすいようにメンバーを組むというシステムみたいだったからだ。
それから7月の間は、よくみんなで働いた。次第に仲良くなっていくことができた。
僕の携帯電話には一気に8人もの名前が増えた。
嬉しかった。
彼とも一緒にこんな仕事がしたかったなとは何度も思っていたけど…
この出会いで僕はお金というものがとても怖いものであるということに気付く。
人間には必ずといっていいほど1つや2つの悩みがあったんだ。
僕は阿部さんにmixiというものを教えてもらった。
日記は普段から書いているけど、友達のを読んだりできるしコメントもできるということだったので、僕も始めた。
8人みんながやっていたということもあったからだ。
またお金も事務所に受け取りにいった。明細書に押すハンコがなかったので1度目では貰えなかったんだが、
自分で稼いだお金は3万円だった。こんな大金を持ったのは初めてだった。
2万円は封筒に入れて大事に貯金して
あとの1万円は阿部さんたちとご飯に行ったりするために使おうと思った。
そうやって夏休みにちょこちょこと働いて
封筒の中には5万円も貯まった。
そして僕は封筒を持ってお墓参りとおかんに会いに久しぶりに実家へ帰った。
おかんに何か買ってあげようと思ってウキウキしていた。
実家に帰る電車、荷物とギターを背負って、4ヶ月半前の気持ちが甦ってくる。
この期間にたくさんのことがあった。そして不安の中にいた4ヶ月。4ヶ月は短いかも知れないけど、僕にはとても長かった。
でもおかんに少しでも成長した自分を見せてあげたかった。
駅に着いてバスに乗る。
上手に伝えられないけど…
景色とか匂いとか、
あまりにも懐かしく感じられた。
ウキウキしていたのになんか
溢れてくるものに耐えきれずに、また涙が出た。
おかんと別れてから今まで、たくさん泣いてきたな…
涙腺が弱くなりすぎたよ…
また寮に戻らなくちゃ駄目なんだな…
そんなことを考えながら、バスに乗り込んだ。
どんどん近づいていく。小学校が見えた、自転車でおかんと並走した川も見える。ほら、本屋さんも図書館も…
たった4ヶ月なのに…
もっと時間が経ってたら、どうなってたんだろ…
家に着いて、自転車を見る。ちゃんと置いてあった。
「おかん!!ただいま」玄関を開ける。
おかんのいつもの靴が置いてあった。
「おかえりなさい」
カレーの匂いがする…
いっぱい話をした。
彼のことも先生のこともおっちゃんのこともギターのことも、バイト先で知り合った人たちのことも。
やっぱり笑顔で聞いてくれる。
「おかんは元気だった?」
「お母さんも元気だったよ」
お金のことは聞けなかった。
でも僕はおかんにお土産をいっぱい持って買って帰ってきたんだ。
おっちゃんが持っていけって言ったおまんじゅうとバイトして貯めたお金で買ったブレスレットをあげた。
つーちゃんがこれがいいって言うから買ったんだ。
初めて入ったよ…あんな高価なものが並んでるお店。
あとギターだよ。
聴かしてあげた。
いろんな思いでの詰まったあの曲を…
おかんも知っていたから、泣きながら聞いてくれた。
そしたらさ、
僕の髪の毛をぐしゃぐしゃにしながら「こんな優しい子に育ってくれてお母さんとっても幸せだよ」って潤みながら言ってくれた。
まだまだ親孝行し足りないけど…1つできたかなって思えて胸がいっぱいになった。
お盆休みはあっという間だった。僕はあと2週間程休みがあったが…おかんは3日だけ休みだったみたいだった。
おとんの墓参り行った。
おっちゃんにもらったおまんじゅうを1つおとんにも分けてあげた。
あとおとんには実家の近くでお花を買ってあげた!!
彼の分も一緒に拝んでおいた。
おとんがいたらそんなことで泣くなって怒ってたかもしれない…
でもそのぶんいっぱい努力したからおあいこでいいかな!!
田舎だったから夏でも涼しい。夜なんか蛍がとんでたりもする。
川の水が綺麗だったんだ。
星も見えるんだよ。
僕の誕生日の魚座を探したけど見つからなかったけどさ。
田舎の時間はゆっくりでいいな!!都会で住んでみて思った。
なにも考えないでいられる。
そんな時、フッと曲が出来上がったりするんだ。
ギターを始めて、たくさんのメロデイを自分で出しているうちに
音と音を繋ぐことができる感覚になっていた。
例えば弦を弾く場所を高い位置で弾くか低い位置で弾くか、それだけで簡単なCの音も違った音を出す。
ピアノでいうと、左側を弾くか右側を弾くってただそれだけなんだけど、
また強弱もあって
次に繋ぐ音によって
もっと言えば、そこまで指をスライドさせる時に鳴る音を経由して、
そんなイメージばっかりできるようになっていた。
それは知らない間に僕が身に付けていた知識だったのかもしれない。
実家で音楽番組を見ている時も目を瞑っていてギターの音がどの音なのか、わかるようになっていた。
いつの間にか
楽譜と言うものやCDを買わなくても聴いただけで、
弾けるようになっていた。
それに気付いた時、僕はびっくりしたんだ
また自分の指の先がすごく固くなっていたことにも
それでいて、僕は気が付いた。
目と耳、昔から貧乏で使い過ぎていたこの生まれ持ったものをそのまま脳に持っていくことばかりしていたことに。
携帯電話のキー操作音で
音楽を奏でたりしていると、
訳のわからない文字がズラッと並んでいる。
田舎の夜空を見上げて川の流れる音を聞く。
おかんとおとんに与えられたものだけでこんなに楽しめている自分に気付くと嬉しくなった。
だが、忘れてはいけないこともある。先生が教えてくれた言葉だ。
目が見えない子供たちや耳の聞こえない子供たちがたくさんいるってこと。
目が見えなくても耳が聞こえる。耳が聞こえなくても目が見える。また両方に障害を持っていても肌で感じることができる。
その人が与えられた物だけでも楽しく嬉しくなること、
僕なりの答えを見つけ出すためにこれからまたもう1つ成長できるように、
僕はお盆休みを終えて、おっちゃんらがいる寮に戻った。
僕は実家に封筒を置いてきた。手紙を添えて、
「何かあった時に使って欲しい。もし使わなかったら、今年の冬休みのクリスマスにケーキを買おう。だから置いていきます。僕はおかんがくれたお金まだ残ってるから。」
都会に戻った。
ギターを背負って歩いていると路上で歌を歌っている人に声をかけられた。
ちょっと聞かせてよ、って
恥ずかしかったけど、僕も座り込んでギターを弾いた。
『Let it be』を弾いていたら周りで聞いてくれている人がいた。
弾き終わったら拍手してくれた。プロのミュージシャンはもっと凄いんだな、なってみたいな。
寮に帰るとおっちゃんが迎えてくれた。「ただいま!!おっちゃん」僕には今、2つの家がある。
これって凄く幸せなことなんじゃないかな…
明日からまた少しアルバイトの予定が入っていた。
貯めれるときに貯めておく何かあった時のために貯金は必要だと思っていた。
阿部さんに明日の時間と集合場所を確認して、
疲れていたのか、そのままゆっくりと夢の中に入っていった。
その日の雰囲気はいつもと少し違っていた。
いつものメンバーが集まるはずだったのだが、金子さんがいなかった。
阿部さんはバックレたと言って怒っていた。
派遣の仕事は信頼関係がとても大事だった。その人を信頼して派遣会社は先方に送る。
バックレられたりしたら売上がなくなってしまう。
仕方がないので、いるメンバーでイベント場所へ向かうことになった。
つーちゃんは「オレが2人分働くから」と言っていたが、荒井さんは何故か思い当たる節があるのかその日ずっと静かにしていた。
僕とみずきとあと女の子3人は年齢が近かったということもあって、学校の話をしたり恋の話をしたりして盛り上がっていた
時折、阿部さんとつーちゃんが話に割って入ってきていたが、荒井さんはどうも静かだった。
仕事が終わり、僕は気になって荒井さんに話し掛けた。
「どうしたんですか?金子さんのことですか」
荒井さんは頷いて今日時間あるかと聞いてきた。
僕は頷いて、近くの居酒屋にいった。荒井さんは生ビールを一気に飲んで、僕に聞いてきた。
「お金って人を変えるから…」って
僕は烏龍茶を飲みながら、金子さんとどんな関係があるのかを聞いてみた。
荒井さんも金子さんも同じ歳でもう僕なんかよりもずっと歳上だ。
「おまえはなんで働いてんだ!?そりゃお金稼ぎたいからだよな。まだ若いし欲しいものとかいっぱいあるよな」
僕は貧乏だからとかは言えなく黙って聞いていた。
荒井さんはずっと仲良くやってきた金子さんと最近になって連絡がとれなくなったって教えてくれた。
「あいつの人生は本当に辛いものだったんだよ。おまえはいい高校入って有名な大学行って新卒とかもらって就職していくかもしれないけど…
間違った道を一歩でも歩いた俺達はもう心から人を信頼するってことができないんだ…騙されて騙されて、だからこうやって1日1日を繋いでいってるんだ。」
荒井さんは離婚をしていた。
あまり深くは聞けなかった…
*心から人を信頼する。その裏側には裏切りっていう言葉もあったんだ。恋愛を除いてはそこには必ずと言っていいほどお金という存在があった。*
荒井さんは離婚をした理由は、子供を養っていく経済力がなかったため、奥さんに不倫をされてそのまま子供と出ていかれたということだった。
荒井さんそれ以来間違った道を進んだと
金子さんとはそこで知り合ったそうだ。
夜の世界に浸かっていたということを教えてくれた。
女性を水商売に紹介したり…もちろん女性もその仕事を探していたらしいが、
その中でヤクザ屋さんとの関係もしばしばあった。
そしてお金が沸いてきていたと
欲しいものは全て買えた。
奥さんに裏切られてお金が必要だと決心したのが動機だった。
簡単にお金が手に入る。夜の世界から抜け出すことができなかった。
そんな中で知り合ったのが阿部さんだったそうなんだ。
阿部さんは暴走族を辞めて、働き始めた時に出会ったと。
阿部さんが当時の部下と町を歩いている時に荒井さんたちと関係のあった人と揉めたそうなんだ。
荒井さんは止めに入ったんだが、1人が阿部さんの脇腹をナイフで刺して逃げたみたいだ。
荒井さんは腰が抜けたと言っていたが、阿部さんは部下に近くの薬局で「針と糸を買ってこい」と命令して、その場で縫って後を追いかけたらしい。
しかし近くで阿部さんは倒れていたため、荒井さんは救急車を呼んだ。
荒井さんは金子さんを連れて阿部さんを病院に運び、なんども謝罪をした。
しかし阿部さんはそのことを全く大事にしなかった。その代わり自分と一緒に荒井さんと金子さんを昼間に戻るように仕向けたんだ。
それで阿部さんと荒井さんそして金子さんは一緒に働き始めたと言っていた。
阿部さんは今はまだ資格の勉強をしながら派遣として働いてはいる。荒井さんはコツコツ貯めたお金でコンサルト関係の会社を起業した。まだ余裕がないため空いた時間を見付けてアルバイトをしていると。
ただ金子さんはそんな2人を見て少なくとも負い目を感じていた。
昼間に戻ってやりたいことを見つけている2人が羨ましかったんだ。金子さんはギャンブルがどうしても辞められず、お金を貯めることができなかった。
少しずつ距離を実感していたんだ。本当に友達としてやっていけるのか、自分だけ惨めだと思われているんじゃないだろうか…
そんなことが金子さんの人を信頼するということに邪魔をしていた。
またお金が欲しい…
荒井さんは僕にまた金子さんが夜に戻ってしまったんではないかと心配を打ち明けた。
少し怖くなった。
僕は今、おかんの為にお金が欲しい。もしすぐにお金が沸いてくるような仕事があったらすぐにやってしまう気がした。
どんな仕事でさえ、それが人を騙してしまうような仕事だったとしても…わからない!!怖い…
自分の生活のため欲望のため
働いてみてわかった。
お金を稼ぐことの意味。
理屈じゃなかった、感情のまま動いてしまったら…取り返しのつかないことになる。
今まで自分が想ってきたこと、
お金を稼ぎだしてから
得たぶん失うものがあるんじゃないか…
お金を稼ぐという現実に直面して自分が甘かったんじゃないかって、
やっぱりお金よりも人間としての良心を大切にしたい…
それが甘かったんじゃないかって…
荒井さんは一通り僕にその話をしてくれた
僕が間違った方向に進まないようにしてくれたのではないか、
たくさんの経験をしてきている。僕よりももっとたくさん。
お店のお会計は荒井さんが出してくれた。
僕も払うと言ったけど、これも働くってことのひとつの勉強なんだぞって言って断った。
駅で別れた。荒井さんはまた金子さんと連絡とれるようにしてみると言って手を挙げて去っていった。
お金ってなんなんだろう…
なんで信頼や裏切りって起こるんだろう。
貧乏だった僕にはわからなかった。
100円ショップで買った財布の中を見た7千円入っている。
僕はこれだけでも今は満足できる。
このお金はおかんが毎日、レジを売って、品出しして稼いでくれたお金なんだ。
やっぱり良心があった。
僕はお金や都会に呑まれたくない!!そんなことの為におかんが借金までして作ってくれた今の環境なんかじゃない!!
僕は金子さんを説得したい。
荒井さんと僕と他のみんなを信頼して欲しい。
裏切ったりなんか絶対しない!!
だから僕は残りの夏休み、荒井さんと金子さんを探しに行くことにした。
僕が先生を好きになったこと、それはたぶん優しかったからなんだと思う。
人を好きになることって素晴らしいことである反面、とても辛いことでもあるんじゃないかな…
僕はアルバイトで出逢った女の子とたまに連絡をとるようになっていた。
ごく普通に友達だったはずが、どんどん気になっていくんだ。
不思議だった。
人を好きになったら、
どんなに辛いことでも頑張ろうってなれるんじゃないかな。
それがたとえ片想いでも…
僕と荒井さんは荒井さんの車で繁華街に向かった。
そこはキャバクラ等
お金を持っている人が楽しめる場所だった。
そこに向かった理由としては、
金子さんが昔っからよく顔を出していたという場所だったからだ。
荒井さんはおしゃれでとてもいい匂いがする。
僕なんか普通のTシャツに安いお店で買ったGパン姿だった。
路上で客引きをしている人が荒井さんに様々な声をかける。
「お待ちしておりました。キャバクラですよね?」とか「イチャイチャお好きですか?」なんて、
思わず笑ってしまったのが、
「パスポーとなしでフィリピン行けますよ!!オマケにVISAも使えちゃいます」だって、
いろんな人がいるんだなって思った。
ことごとく荒井さんは愛想笑いをして断った。
そしてまっすぐあるお店に向かった。そこは暗くて人気が少ない通りで、いかにも怪しいっていったお店だった。
荒井さんがドアを開けて入るとそこには若い綺麗なおねぇさんが立っていた。
「金子いる?」荒井さんがカマをかけると、そのおねぇさんは、「まだ今日は見えてないです。」そんな言葉が返ってきた。
荒井さんは確信を持ってここに来たんだ。
金子さんはまた夜の世界に戻ってしまっていた。
夜の世界を否定するわけではないが、法律に触れることだけは絶対にしてほしくなかったんだ。
おねぇさんの話によると、運び屋をしているとのことだった…
おねぇさんも本当は喋ってはいけないといった感じだったが、
お酒が入っていたのかポロッと口を滑らせたみたいだった。
次元が違いすぎた。
1日に10万円、多くて100万円が動いていたんだから…
それが法律的に駄目なことであるってことは僕でもわかった…
またヤクザ屋さんとまた繋がっているって言うこともわかった。
荒井さんは金子さんと話がしたいと言って金子さんが来るまでお店で待つことにした。
その間も昔話で持ちきりだった…
昔はこんなことには手を出さなかったと、表現は悪いが人を騙して沈めるそれぐらいだったということ。
僕は衝撃すぎた、目の前が真っ暗になって座っているだけでも横になってしまいたいくらい目眩がしていた…
すこし後に金子さんがやってきた。
荒井さんは衝動的に金子さんの胸ぐらを掴み吠えた。
「おまえなにやってんだ」と…
静かな部屋にその声だけが響いたんだ…
金子さんはずっと黙っている。
おねぇさんも自分が喋ってしまったことの重大さに気がつく…
「おまえ、なにプッシャーなんかやってんだよ!!阿部さんと約束しただろ人の力になれる仕事をしようって、それがたとえ日雇いからだったとしても、世間の目なんか気にせずに、目標のために頑張ろって太陽の下で日に当たって働くって約束したじゃないか!!
おまえ…なにやってんだよ!!」
荒井さんは想いを無我夢中で吠えた。
それでも金子さんは黙っていた。
「なんとか言えよ!!」
荒井さんが目に涙を溜めて金子さんの胸ぐらを揺する。
しばらく荒井さんの細い糸が今にも切れそうなすすり泣きが響いた…。
そしてようやく金子さんが口を開いた。
重苦しい雰囲気だった…
やっとの思いで金子さんが話した言葉が僕にはいつまでも忘れられない、そんな気がした。
金子さんは静かにゆっくりと喋りだした。
「好きな人ができた。一方的に俺が好きになってしまったんだ…
その人はキャバクラの人だった。
営業ってわかってはいるけど、それでも一緒にいたいって思ったんだよ。
いつの間にかお金を使いきってしまった。ギャンブルやって増やそうと思ったけど増えたのは借金だった…お金がない、だから心のゆとりが欲しくて、彼女に会いたかった。どうしても会いたかった…他の客に取られたくなかったんだよ…
本当は昼間にみんなと働きながら持っているお金で通う予定だったんだけど、できなかったんだ。
そしたらいつの間にか昔の事務所の前に立っていた。
俺はまた闇に染まる道を自分で選んだんだよ!!
そのお金で彼女に会いに行く。1日10万円を使ってもまだまだ残っている。そんな生活にまたゆとりをもってしまったんだ。
でも裏切られた…俺がプッシャーをやっていることが警察にバレた。
だから昼間にも戻れない、もう外にも自由に歩けなくなったんだ…なにやってんだろうな、おれ…」
彼を警察に売ったのはそのキャバクラの女性だった。
金子さんは彼女のためにお金を作った。信頼していた。彼女だけはわかってくれると…
でも彼女は裏切った。
裏切ったというよりも、金子さんを売ってお店を飛んだんだ!!
充分に金子さんのおかげで稼げた、だからもうキャバクラは辞める。
そういう風に他のキャバクラの女性に聞いたみたいだった!!
金子さんはもう誰も信じられない。阿部さんや荒井さんが俺たちとやり直そうって言ってもその言葉は金子さんには届かなかった。
自分が選んだ道!!それで裏切られた、人を好きになることもおろか、友達を信頼することさえもできない…
あまりにも辛い結果に終わった。
だから金子さんは修羅の道を行くと言った。そして荒井さんの手を振りほどいて、外に出ていった。
「金子!!自首しろ!!」そんな荒井さんの声だけがまた店内に響く。
間違ったんだ…
金子さんは、優しさの伝え方を間違えただけなんだ…
初めて金子さんに会ったバイトの初日、金子さんはすごい優しい笑顔だったんだよ。
お金ってそんなに人の感情を簡単に変えてしまうの?
僕が求めていたお金もそうなの?
おかんは大丈夫なの?
そんなものなら僕はいらない!!
好きになった人のためにお金を稼ぐってのは間違ってないかな…
好きになった人や大切な人には
気持ちで伝えるってのじゃ駄目だったの…ほんとうは伝わっていないの…
おかんにも先生にも
気持ちは伝わったと思っているのは間違いないなの、
ほんとはお金に還元してほしかったの?
お金ってなんなんだよ!!
僕はそれ以来、アルバイトはしなくなった。
貧乏のままでいい…
みんなとは連絡をとるけど働くことは二度となかった…
そんな夏休みが終わった…
僕は貧乏だ。
友達がゲームの話をしていてもわからないし、TVの話をしていてもわからない。
だから恋愛をしても相手を楽しませてあげることはできやしなかった。
メールは返せるけど、電話ぐらいならできるけど、
映画を観たり、カラオケをしたり普通の付き合い方ができない。
学校が違う、
会うだけでお金が必要になってくるんだ。
今、メールを1日に5通くらいやりとする女の子がいる。
それはアルバイトで出逢った彼女だった。
アルバイトをすれば少しくらい遊びにいったりすることだってできるかもしれないけど、
お金を得ることが怖かったんだ。矛盾しているかもしれない、
僕はお金がなくても楽しめてきた。ギターや読書とか、
そんなことを共有できる女の子じゃないと、その子を楽しませてあげることができない…
ただメールをするだけ、
お互いのことを知りたいという内容で相手がどこにすんでいるのか、何に興味があるのか、
それは楽しかったんだと思う。
いつか、お互いがそれなりにわかって…一緒に遊んだりなんて話になったら、
僕は彼女を幻滅させる。
だから僕は貧乏であるかぎり
恋愛なんてことを考えることが許されない。
傷つくのは自分だ。
いまのままが一番いいんじゃないかな…
青春なんて言葉は僕には与えられていない…
いつか昔を振り返ったら
あの時に戻りたかったなんて思わないんだろうな。
次第に、僕からメールを送る回数は減っていった…
秋の空、日が沈むのが早くなってきて、涼しさがやって来た。
毎日歯がゆく生活をしていた。
飽きることもなくギターを引き続け、彼のことを思い出す。
毎日、ギターばっかり弾いていた。
メールを送ったあと携帯電話を見ては着信を気にする。
なんども新着メール問い合わせをしてみる。
僕がメールを減らしたから、嫌われたかな…ほんとは好きになってしまっていたのに、
一緒に遊んでみたかった。
でもきっとこれでよかったはずなんだよ。
時おり寒い夜がくる。
人肌恋しいと言うか、温もりがほしいとか考えてしまう。
おかんがいたときは、
寒い夜も湯タンポとかあって
温かい布団があったりしていたけど、今はない。
恋愛について考えてみた。
経験はないけど、テレビや本やインターネットで知って自分で考えてみた。
もともと興味があったんだと思う。
人を好きになる。それはたぶん人間が誰しもが持ち合わせていることであたりまえの感情なんだ。
片想いをしている時、どうやって自分を見てもらおう…かっこよく見せれるんだろって
きっと金子さんはそれをお金と答えをだしちゃったんだ…
間違っているとは言えない。
それはその人の考え方だから。
でもさ、付き合うようになって
自分に自信が持てなくて、
いつ振られるかビクビク心配しながら付き合うって変じゃないかな?
お金がなくなる心配もしなくちゃなんない…
でもお金で付き合っていたとしても、お金を持っている。
それはその人の成功の結果なんだ…だからそれは魅力的な部分でもある。努力した結果でもあるんだ…
難しいな…
じゃあお金がない僕はどうやったらいいんだろう…
一緒にいて落ち着くとかなのかな…
僕の魅力ってなんなんだろう…
僕の魅力が見つからない…自信もない…
だから付き合ったって
いつ振られちゃうかビクビクしながら付き合わなきゃいけない…
相手に他に好きな人ができちゃうかもしれないって、
そしたらどんなに辛いんだろう。
失恋ってきっと物凄く辛いことなんじゃないかな…
だから復縁したいとかいっぱいあるんだろうな…
人を好きになることの幸せさと怖さ、
金子さんから学んでしまった。
信頼と裏切り、
きっと僕は信頼をしていて、裏切られてしまう…そんな経験をしそうだ。
お金がなくギター以外に楽しみがない僕は恋愛に依存してしまう。
きっと裏切られたら、
死んでしまいたいって思うよ。
僕の頭の中には彼が亡くなったことで彼の分も必死に生きなきゃいけない。失恋したら、きっと死にたいって思う…
僕は自分に全く自信が持てないでいた…
それでも、相手からの返信を待ってしまう…
好きなのに…
苦しい、今すぐこの苦しさから逃げ出したい。
付き合うことができたらどんなに楽しいんだろう!
貧乏はどこまで僕を苦しめるんだ…
おとんやおかんが悪いわけじゃない、ただお金がない生活をしてきた僕には、いざ好きな人ができた時、どうしたらいいのかがわからないだけなんだ…
またアルバイトしたらいいのかな、
そしたらまたお金が欲しいってなっちゃうよ、
それなら、おかんにお金あげたほうがいいんじゃないかな…
携帯電話が鳴る。
彼女からだ…
すぐ僕は携帯電話を手に取る。
なに喜んじゃってんだよ…
このメールを返すのに僕がどれほど考えなくちゃいけないか、
自分自身でもわかってるんだろ
内容を見てから、携帯電話を閉じる。
そして、また目を瞑って考えるんだ…
僕はつーちゃんに電話をした。
アルバイトでお兄ちゃんと呼べる存在だったから…
恋愛相談なんて…つーちゃんにしかできない!!
つーちゃんは僕が彼女と連絡をとっていることに驚いていた。
応援するって…
だから僕は自分が貧乏であること、金子さんから学んでお金に呑まれたくないことを相談した。
つーちゃんはお金なんて関係ない。高校生でお金持ってるやつなんざいないって、だから自分の気持ちに素直になれって
「お前は優しいんだから彼女を大切にしてあげれればいいだけなんだよ、彼女は一途でいい子だし、お前のことをちゃんと好きでいてくれるよ!
でもお前が貧乏だからって弱さばっかり見せていると、
嫌われちゃうぞ!!
それを魅力がないって言うんだ!
出逢いがあったら別れもある。人間は巡り合いの中で生きてる!!
お前が好きなケツメイシの歌の歌詞だろ!?
別れた時のことなんか考えずに、素直になれよ!!俺なんかとんでもないくらい振られてるんだから…それでもほら、元気だろ!?」
ありがとう…
巡り合った人たちに支えられて生きている。その中で僕は生きているんだ。
僕は、告白しようって決心した。
いつのまにかすごく好きになっていた。振られるかもしれないけど…付き合えたとしても、
いずれ幻滅されるかもしれないけど、
僕だって…僕だって青春したい。
次の休みの日にどこかに誘ってみよう、お金とかあんまりないからどこがいいんだろ、
つーちゃんに聞くの忘れちゃった…
告白ってどこですればいいんだろ、直接会って言いたい。
どこがいいかな、
なんて言えばいいんだ
「好きです、付き合ってください。」でいいのかな、
モジモジしそうだ…
そうだ、服は何を来ていけばいいんだ!?一番お気に入りのやつを着ていこう!
おっちゃんに洗濯頼んでおかなきゃ…
頭がパンクしそうだ…あんなに悩んでたのに、
そこには素直になれた自分がいた。
その日が来た。
僕はどれくらい緊張していたんだろう…
楽しみにしていたのとまだやって来るなの2つの感情をまといながら…
結局、ショッピングに行くことになっていた。僕はなにも買うものはないけど、彼女は欲しいものがあったみたいだった。
待ち合わせの時間よりも30分も早く来てしまった…
その辺をウロウロしながら時間ばっかり気にしていた…
初めてのデート、告白、
落ち着かない、僕がリードしなければいけない…カッコ悪くないようにカッコつけないようにしなきゃ
10分前、僕は待ち合わせの場所に向かった。
そしたら彼女はもういたんだ、
待たせてごめん、って言った
そしたら、
駅じゃない方からやって来た僕を見て彼女は笑っていた
いきなりやってしまった…
カッコ悪すぎる…
そのあと彼女が行きたい場所に僕を連れていった。
完全に、僕はリードされていた…
でも居心地がすごく良かった。
時間が経つのが早い…
お昼に待ち合わせをして
もう夕方だった。
刻一刻と時間が迫ってくる。
一緒に歩いているときも、楽しかった。僕はこんなに自分がおしゃべりだったんだと思うくらい、ずっと喋っていた。
それを聞いてくれる彼女も優しかった。
そろそろ帰る時間になってきた、
彼女は手を繋ぎたいって!!
今日一番の緊張が走る!!
秋で涼しいのに変な汗をかいてしまいそうだった。
手を繋いだら彼女は僕の指先が固いって驚いていた。
駄目だったのかな
ギターの話はしていたから、きっと大丈夫だったと思う…
「今日楽しかった?なにも買わなかったの?」って
「楽しかったよ」が精一杯だった…
もう駅前だった…
僕は焦っていた。
言う機会がない…
彼女は僕から手を離して、
切符を買いに行った。
僕も切符を買った。
途中で彼女は乗り換えで降りてしまう…
そのまま改札を通って、電車を待つ。休みの日だったから人がたくさんいて混んでいた。
また一度離した手を繋ぐことは勇気がなくてできなかった…
電車に乗る。
どうしよう…
彼女が降りる駅に着く!!
彼女が今日は楽しかったって言って降りようとするから
今日じゃないとまた僕、貧乏と葛藤してしまうから…
今日言うって決心したんだから…
だから、僕も降りたんだ。
どうしても今日気持ちを伝えたかった…
電車を降りた時、
彼女はびっくりしていたのと
同時に笑ってくれた。
嬉しかったって言ってくれた。
また、「付き合って」って先に言われてしまった…
僕から言いたかったのに…
一生懸命考えて素直になって
言おうと思ったのに、先に言わさせてしまった…
でも嬉しかった。
なぜかまた妙に緊張した…
まさか駅のホームだとは思わなかったよ…
周りの人がチラチラこっちを見ながら通りすぎていく。
なんかドラマの主人公になった気分だった。
「うん。僕から言おうと思ってたんだけど…」って精一杯の返答をする。
このまままた電車に乗って帰るなんてできなかった。
もっと一緒にいたかった…
また手を繋いだんだ。
自分のことをありのままさらけだして、それでも好きって思ってもらえるように
頑張らなくちゃな!!
まだ心配はなくならない…
でも今は、とっても幸せな気分だった。
しばらく、一緒に歩いた。
お互いのことをもっと知りたかった。
手はずっと繋がっていた。
離れないように
ギュッと握っていた。
時折、恥ずかしくもなるけど、夢のような世界にいた。
「誕生日は?」「好きな季節は?食べ物は?」「いつも休みの日何してるの?」「好きな芸能人は?歌は?」「初恋は?」…
…
…
「私のこと好き?」…
すべてに素直に答える。
僕も同じように聞き返していた。
知れば知るほど、好きになっていく
自分の中でもそれがわかる。
ギターが聞きたい。大勢の人の前で弾いてるところか見てみたいな!!
だから僕は決めた。
いろんな学校からたくさんの人が集まり見に来る文化祭でギターを弾くことにした。
つーちゃんもみずきもみんな招待しよう!!
クラスで一緒に何人かとバンドを組むことした。
そうやって約束した!!
お金がないから楽しませてあげられることなんて、ほんの僅かしかないけれど、
僕にでも出来ることはあるんだ。
そうだ先生に、ひまわり教室の子供たちも呼んでもらおう!!
おっちゃんに連絡して、亡くなった彼のご両親も見に来てもらえないか聞いてみよう!!
おかんにも文化の日に休みとってもらって見に来てもらおう!!
僕の彼女って紹介してやらないと…きっとすごく喜ぶだろうな。
貧乏なのに頑張ってご馳走作るから家に連れてきなさいとか言われそうだ。
僕は文化祭に出ることを彼女に伝えた。
クラスで1組、なにかやらなければいけない!みんな嫌がっていたから、僕がやる。
音で伝えられること、歌で伝えられることがあるかもしれない。
やってみたいんだ!!
そんな姿をすべての人に見てもらいたい。
僕は彼女とちっちゃな公園のベンチに座った。
もう日が暮れるのも早く、19時だっていうのに真っ暗だ。
「どんな歌が好きなの?」
彼女は僕が曲をある程度、歌詞をつけて作れることを知っていた。
「なんでも好き。歌詞が良いのが好きかな。」
「どんな歌詞?」
「ゆったりしたせつないメロディで誰も見ていないところで、すごく頑張ってたり感謝している。それを誰にも言わないんだけど、でも周りの人はそれに気が付いていて、応援したくなるような歌詞。
それでね、好きな人にもちゃんと伝わるような歌詞がいい。
…難しい?」
と彼女は微笑んで言うんだ。
難しいって思ったけど、
それが僕の作りたい曲だったからやってみるよってだけ伝えた。
僕の今までのことを思い出して、メロディに乗せるんだ…
伝えきれないくらいあるよ…
僕はその日、静かに彼女と抱き合ってキスをしてバイバイをした。
帰りの電車、初めての感触といままでの想いとでドキドキしていた…
ほんとうにほんとうに幸せだった。
おかん、大切な人ができたよ。
次の日から僕は文化祭に出て歌うと先生に伝えた。
だいちゃんというクラスメートが一緒にやってくれると言ってくれた。
僕は放課後、寮から持ってきたギターを手に取って、
2人は部活が終わった後に少し体育館や音楽室を借りて歌合わせをしてくれた。
3曲を歌う。
2曲はメジャー曲を歌い、あとの1曲はオリジナルで歌う。
曲は出来上がっていない、彼女の要望を歌詞にしたいから
もっと時間をかけて気持ちをゆっくりさせて、1人で静かに考えたいんだ。
だいちゃんもギターを弾くことができた。音を合わせたりしながら、2人のリズムや癖を知る。
2人で絶対良いものを作り上げる!!そんな目標があった。
僕の彼女は同じ年齢で他校のバスケットボール部に所属していた。
あまり強くはない学校だったらしいのだが、秋に行われる大会に向けて、土日も練習を行っていた。
そのため、土日に逢ったり出来るのは夕方などで、どこかに遊びに行ったりするのとかではなく、散歩して話したり、彼女の家のお買い物に付き合ったりをしていた。
やはり、電車代にしろ、少しはお金が必要だった。
またアルバイトをするというのも、例の件から少し気が引けていた。
そんな相談を先生にしてみた。
先生は、NPO法人(非営利組織)でお手伝いをしてみたらと話してくれた。
少しは時給がでるとのこともあったし、彼が亡くなったこともあったのか福祉のこと学んで見なさいとも話してくれた。
もともと先生はひまわり教室という障害を持った子供たちと学んでいたことがあったためアルバイトを募集している福祉団体のNPO法人を紹介してくれた。
子供と遊んだりするそんな内容だった。
平日はだいちゃんとギターを弾いて練習をする。そして寮に帰って歌詞と作曲を始める。
休みの日は夕方17時まで児童館でアルバイトをする。そして彼女と待ち合わせをする。
そんな充実した日々が続いていた。彼女は1ヶ月後の文化祭の日をすごく楽しみにしてくれている。
僕も徐々に形が出来上がっていく、だいちゃんとの曲に気持ちを込める。
オリジナル曲はゆっくりメロディから作りにかかった。
児童館では、やむを得ない理由や虐めなどによって登校拒否をしている子供たちと触れ合うそんな場だった。主に小学生が多かった…
邦彦くんという小学4年生の子が僕にとてもなついてくれた。
サッカーが大好きなんだって。
「邦彦くんはどうして、学校いかないの?」これは聞いても良い質問だった。
ここのNPO法人の目的は、勇気を出してもらって学校に通ってもらうことだから!!
大学生が実習生として来ていた。彼らは単位を貰うため実習をする。
僕はアルバイトとしてNPO法人のための仕事をする。
だから僕は邦彦くんのことを学校にまた通ってもらうために、思い切った質問を許されていた。
邦彦くんはサッカー好きで小学生のクラブチームに所属している。
毎週3回練習があって、
休みの日曜日はここに遊びに来ているんだ。
学校にいかない理由はサッカーが下手だったから…
周りの友達は邦彦くんがクラブチームに入っていることで上手いと期待していたみたいなんだ。
しかし休み時間や放課後にサッカーをして遊んでいる時に邦彦くんが上手くない、自分達のほうが上手い!!嘘つきだ…
邦彦くん自身もサッカーが好きで毎日練習をしている。あんなことやこんなことができる…そういったことを言ってしまっていたんだけど、
嘘つきだ。嘘つきがうつる。下手くそのくせにクラブチームに入ってることを自慢する… 仲間外れにされてしまった。
そんな言葉や友達の態度が邦彦くんには辛かった。
上手くなりたかったから練習をしている。
いつかカズみたいにいっぱい点取れるような選手になりたかっただけなのにって 邦彦くんは僕に教えてくれた。
でも邦彦くんは笑っていたんだ。
サッカーがほんとうに大好きだったから、上手いとか下手とか関係なく、純粋な気持ちでサッカーをしていたから…
邦彦くんがサッカーを始めたのはお父さんがサッカーボールを買ってくれたから、
お父さんは休みの日、一緒にサッカーをしてくれる。
でもお父さんは仕事で忙しくなったりすることもあって、
毎週遊ぶことができない…
だからクラブチームに入ったんだ。
邦彦くんは喜んだ。自分のユニホームがある。
いっぱい練習をして上手くなった姿をお父さんやお母さんに見せてあげたい。
ギターを始めた僕にそっくりだった…
邦彦くんはずっと笑っているんだ。僕とサッカーをしてる時も永遠にパスだけしていられるそんな感じなんだよ…
学校はたまにしか行っていない、学校の先生も親もすごく心配している。でも学校に行くと仲間外れにされて、泣きたくなっちゃうんだ。
だからどうしても行きたくない!!
その日は17時まで邦彦くんとずっとサッカーをしていた。
僕はここの人にどうしても邦彦くんを学校に行かせたい。と伝えた
僕と似ているんだ…僕も小学生の頃は、多少なりとも仲間外れは経験していた。
貧乏がうつる!!そんな言葉を思い返した…
他の友達はみんな親が迎えに来ていて、帰っていく。
邦彦くんはいつもお母さんが車で迎えに来るんだが今日はまだ来ていない。
僕は片付けを始めるからと邦彦くんに待っていてと言って片付けを始めた。
邦彦くんは、手に持ったネットに入っているボールを蹴りながら1人で待っていた…
17時半になって僕は着替えを済まし邦彦くんのところまで走っていった。
邦彦くんはポツンと立って待っていた。
「邦彦くんのお母さんまだ来ない?」って声を掛けると、
邦彦くんは寂しそうにボールを蹴るのをやめて泣いていた。
「お母さんがこない…」
周りの迎えに来てくれたお母さんと帰っていく姿を見て、またいつも17時には、車の中でお母さんが待っているのが当たり前だったのだからだろう。
日も暮れるのが早く、周りはすっかり暗くなっていく、
僕は彼女に電話をして
邦彦くんの迎えがまだだから、少し遅くなりそうと伝え、
邦彦くんのお母さんの迎えを待った。
見渡しがいい通りだったため、
車のライトが見えると、邦彦くんはお母さんじゃないかと、前に出る。
でもそのライトがお母さんの車じゃないとわかると寂しそうにまた後ろに戻る…
「お母さん…どうしたんだろ…」
もう18時になろうとしていた。
邦彦くんと2人で待っている時、楽しい話をしようと思った。
サッカー選手の話をしたり、邦彦くんのクラブチームの話をしたりと、
もうすぐ大会があるみたいだ。邦彦くんの顔に少し笑顔が戻る。
「河川敷でね今度の日曜日に試合があるから楽しみなんだ。早く来週の日曜日になんないかな。」
すると、邦彦くんは続けて、
「お母さんの車だ。」って叫ぶ。
ライトでわかったみたいだ!!いつもクラブチームの練習の後も迎えに来てくれるからわかるんだって、
「邦彦くん、お母さん好き?お父さんも好き?」
「うん。好きだよ」
僕もおかんは大好きだ…だから言った!!
「じゃあ学校も行こう。心配させちゃ駄目なんだよ。僕も何度も心配かけさせてきたからそう言えるんだよ。あとでごめんねって思うから…ゆっくりでいいから」
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