蒼い月が出てた
「お前が産まれた日はねえ、雪がチラチラ降って空を見上げたら月が蒼いんだよ」 幼い頃祖母が話していた。 「お前は産声一つあげなくてね、おかしな赤子だった」 それは呪文のように記憶に刻まれている。 昭和40年頃私が記憶している我が家は、腐りかけた木造平屋の掘っ建て小屋。 19歳の両親と55歳の祖母、24歳の父の姉。貧困だった。けど幼い子供にはよく理解出来ず水道もなくトイレも外なんて暮らしでも普通だった。母はいつも顔をしかめ、愚痴を言い人目だけを気にする人間。父は優しいが頼りない人間。そして私はぐずらない泣かない子供だった。
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>> 53
中学校に通う頃になると、母の干渉はもう、異常としか言えなくなった。
クラブ活動で、新しい友人も数人できたり私の生活も少しずつ変わってゆく。
その頃みんなで交換日記を始めてた。たわいもない話から恋の相談なんかも、みんな書きあってた。ある日お風呂から出てくると母がその交換日記のノートを持って私に怒鳴りはじめた。「これは何?ちゃらちゃらした事ばっかり書いて、何しに学校に行ってるんだい」信じられない。勝手に人の物を覗くなんて。「なんで勝手に私のカバンあけるの?」
「子供の物見るのは親の権利なんだよ、かばんも親が買ったものだろ」
そうなのだ。私にはプライバシーなんてもの全くなかった。母はかばんでも、机でも郵便でも全て勝手に見ていた。
>> 56
ある日の放課後。数人の女子でたわいのない話でのんびりしてた。そこにクラスではかなり問題のある女の子が入ってきた。「あれ?南さんきょう休んでたのに、」一人の子が聞いてる。「うん、さぼってたんだけどさあ、呼び出し」「南さん、さぼってどっか行ってたの?」「彼の家にお泊り」
「すごーい、南さんかっこいい、彼とお泊りだって」みんな興味津々だ。そこから、南さんのエッチ講座がはじまった。私はそういう行為には全くの無知だったから、男女の行為について詳しい話を耳にしたのが生まれて初めてだった。そして遠い昔心に封印していたあの忌まわしい叔父にされた事の意味を知った。そして、自分がすごく穢れている気持ちになり気分が悪くなってしまった。
>> 57
「ごめん、気分悪いから、クラブは休むね。」「まいちゃん大丈夫?]
「うん、ごめん、帰るね」私は吐き気と戦いながら、学校を出た。自分の身に起きた忌まわしい出来事を回想しながら歩く。その頃全ての事柄について、自分には何の責任もないと、何の非もないと思えないしわからない年齢だったから、誰にも言えない暗い記憶に押し潰されそうだった。「なんか、しんどいな、」後ろから誰かが呼んでる。「おーい、まいちゃん」振り返ると同じクラブの中山君。『帰るの?さぼりか?」
「ちょっと気分悪くてさ」「そかそか、大丈夫か?」「うん、だいぶよくなったよ」
『乗れよ、俺様の高級車に」私は彼の自転車に乗せてもらった。
>> 58
「中山君こそ、さぼりなんじゃない?」「まいちゃん帰ってるの見て便乗した」
「駄目じゃん」「いいからいいから、飛ばすぞ~」風を感じて自転車の後ろで目をとじる。少し気分が回復してた。『中山君サンキュ、気分良くなったよ」
「よし、じゃあドライブしよっか」そう言ってぐんぐん飛ばす。「ちょっと、飛ばしすぎ!(笑)っほらあ危ないよ」ものすごい勢いで街中を疾走して私はなんだか笑いが止まらなくなってた、心から笑ってた。川原の堤防に止まって二人はまだくすくす笑いながら座りこんだ。「すっきりした?」「うん、おかげさまで。何年ぶりかでいっぱい笑った」
「何年ぶり?まいちゃん年寄りみたいだな」「はは、そだね」「笑ってなきゃ駄目だぞ、笑ってたら、やな事も消えてくからな」
>> 59
「そうかな、消えてくかな?」「、、なんか嫌な事あったのか?」
「ううん、今日はない」中山君はそれ以上聞いてこなかった。しばらく学校のこと、クラブのこと、進路のことを話した。「まいちゃんは高校どこ受ける?」
「さあ、まだわからない、あんまり成績良くないしね」「俺様と同じ所にしない?」
「どこ受けるの?」『県立青葉」「うーん、私無理かも、点数足りないかも」
『大丈夫だよ、頑張ろうぜい」「なんで一緒のとこなん?」「、、、まいちゃん俺といると毎日笑えるぞ」(笑)「そうだね、それはかなり惹かれる」
「だろだろ、一緒の高校行こう」
- << 62 後になって振り返ると、あれが初恋だったのかなと、お互いそんな話は一度もしたことはないけれど。思い出したら心穏やかになれる可愛い想い出。 高校受験間際になって、母はますますヒートアップ。「落ちたら出て行ってもらうからね、近所で青葉に行くってもう言ってあるんだから」 全く母らしいなと思いつつ、(ぎりぎりだし、数学やばいな)少し焦る日々。 そんなある日、「まいちゃん勉強しよっか」ゆみちゃんが家にやって来た。 ゆみちゃんはもう有名私立に合格していたので、私の勉強を見に来てくれたのだ。
>> 60
「そうかな、消えてくかな?」「、、なんか嫌な事あったのか?」
「ううん、今日はない」中山君はそれ以上聞いてこなかった。しばらく学校のこと、ク…
後になって振り返ると、あれが初恋だったのかなと、お互いそんな話は一度もしたことはないけれど。思い出したら心穏やかになれる可愛い想い出。
高校受験間際になって、母はますますヒートアップ。「落ちたら出て行ってもらうからね、近所で青葉に行くってもう言ってあるんだから」
全く母らしいなと思いつつ、(ぎりぎりだし、数学やばいな)少し焦る日々。
そんなある日、「まいちゃん勉強しよっか」ゆみちゃんが家にやって来た。
ゆみちゃんはもう有名私立に合格していたので、私の勉強を見に来てくれたのだ。
- << 64 「はい、この問題やってみて。この辺押さえといたら数学何とかなるよ」 「ゆみちゃん。ありがと、すっごい助かる」「まいちゃんと一緒に高校行きたかったけど、ほら、うちの母親が勝手に私立決めちゃってさ、うちは何でも母の決めた通りだから」 「そっか、お互いやな親に苦労するよね」「、、うん。」 あの泣き虫でわがままなゆみちゃんは、その頃すごく変身してた。穏やかでなんか、全て受け入れて諦めた大人の女性みたいだった。「受験終わったら、どっか行こうか?」 「そうだね、みんな誘って行こうよ!」「じゃあ、きまり。さっさと試験終わらせなきゃ」(笑)「まいちゃんは昔から緊張とかしない子だよね」「まあね、外に恐いものないんだよ」
>> 62
後になって振り返ると、あれが初恋だったのかなと、お互いそんな話は一度もしたことはないけれど。思い出したら心穏やかになれる可愛い想い出。
高校…
「はい、この問題やってみて。この辺押さえといたら数学何とかなるよ」
「ゆみちゃん。ありがと、すっごい助かる」「まいちゃんと一緒に高校行きたかったけど、ほら、うちの母親が勝手に私立決めちゃってさ、うちは何でも母の決めた通りだから」
「そっか、お互いやな親に苦労するよね」「、、うん。」
あの泣き虫でわがままなゆみちゃんは、その頃すごく変身してた。穏やかでなんか、全て受け入れて諦めた大人の女性みたいだった。「受験終わったら、どっか行こうか?」
「そうだね、みんな誘って行こうよ!」「じゃあ、きまり。さっさと試験終わらせなきゃ」(笑)「まいちゃんは昔から緊張とかしない子だよね」「まあね、外に恐いものないんだよ」
>> 64
受験も終わり、なんと、合格してた。母は、ほっとしていたが、お褒めの言葉もなく、制服が高い金がかかると文句を連発し出す始末。それはそれでかなりうっとうしい事だった。
約束どおり私たちは皆で出かける事になった。ゆみちゃん、まりちゃん、さよちゃん、そこに何故か中山君も。電車に乗って景色が綺麗な公園に。そこは色んな花が咲き誇り、池にはボートもある、そこそこ有名な場所だった。「まいちゃん、中山とボート乗ってきな」まりちゃんがにこにこしながら私の背を押した。「うん、乗るけど、皆は乗らないの?」「私たちも乗るから、先に乗ってきな」
私は中山君と二人でボートに乗った。「なんか俺無理やりついて来てごめんな」
「えっ?ああ、いいんじゃない?皆同じクラブでよく知ってんだし」
「そか、よし俺が漕ぐ」すいすいボートが水面を滑っていく。
>> 65
「まいちゃんってさあ、明るいしおもしろいのに、寂しそうだよなあ、」
「、、、そう?」「うーん。なんか謎めいてて、好きな子の話なんかも絶対しないじゃん?」「いないから、私は誰かを好きになるんだったら、一回だけにしたいんだ」
「うげ、人生一回こっきり?」「、、うん、おかしいよね」「いや、おかしくないよ。珍しいけど」「私が生まれた時月が蒼かったんだって」「??」「なんでもない、ごめん」「まいちゃんってやっぱおもしろい、ミステリーだ」(笑)そう、あの時みんなは、私たちがいい関係なのをわかってて気を利かせてくれたんだと思う。でも私の心の葛藤に気が付くには、まだ中山君は幼かったんだろう。
>> 67
家に帰るわけにもいかず、そのままぼんやり歩いた。色々なこと考える。自分は何がしたいんだろう。これから、どうすればいいんだろう。答えは出ない。日が暮れて仕方なく家に帰った。そこに仁王立ちの母がいた。「今までどこに行ってた?先生から電話かかったんだよ、早退したって!」激怒してる。「別にどこにも行ってない、ぶらぶらしてた。」
「この馬鹿が!」いきなり殴られて壁に頭打ち付けた。「どうせ、男でもできたんだろう。おまえみたいな女は、そうに決まってるんだ。頭の悪いあばずれが!」
「?はあ?何言ってんの?」「どこの男だ?お前は軽い女だねえ、情けない」
もう、何言っても無駄だ。でもなんで私があばずれなの?彼氏も出来た事ないし、この人は病気だ。それに私を心配して叱ってくれもしない。自分の気持ちだけが大切なんだ。
>> 69
結局他に何も思いつかず、面接に行くことにした。母はとりあえず、先生の推薦なので、文句は言わなかった。面接の日先生は親切にも一緒に来てくれた。帰り道「君は心に悩みを抱え込んでるね。君は真面目な子だから、頑張ってきっといい大人になれるよ。これからも頑張りなさい。」そう言って帰って行った。先生とはそれが最後だった。
私の生活は一変した。仕事が始まった。大きな建物の病院兼老人施設で、私のように中途採用の若い子がたくさんいた。早朝から部屋を回って、入院してる人の体を拭いたりおむつ交換。食事の世話。とにかく一日走りまわった。意外なことに汚れ仕事も嫌じゃなかった。お年寄りが「ありがとう」って言ってくれると、うれしかった。
>> 73
まゆちゃんも加わって皆真剣に選んでくれてる。「これどう?可愛いよ~」みきちゃんが持ってきたくまのぬいぐるみ。大きくてとぼけた顔。可愛い。それに決めた。
その後みんなで服を見に行った。大きなぬいぐるみを抱っこしたまま。
その時生まれて初めて自分の好みの服を選んだ。ドキドキした。白のフリル襟のブラウスにふんわりミニの黒に裾がやはり白のレースでフリルつき。「まいちゃん可愛い」
「マジ可愛い」みんなのお世辞に照れながら試着も楽しかった。その後映画も誘われたが聡美に早く渡してあげたくてそこで私だけ帰ることにした。「また来週ね、ばいばい」
「バイバイ、まいちゃん」みきちゃんとまゆちゃんはそのまま夜中までの映画に向かった。
>> 79
毎日がまた単調になり、仕事に行きたまに皆でわいわい騒ぐ。みきちゃんの部屋がかなり居心地よくなってた。ある日土曜の午後みきちゃんの部屋に行くと彼が来てた。
みきちゃんの彼は暴走族の頭をしてる。けど、とても硬派な人だった。
暴走族で真面目とはおかしな表現だけど、優しくて紳士だ。
「よう、まいちゃんいらっしゃい。」「お邪魔だったね、すぐ帰るからさ」
『遠慮すんな、ゆっくりしてけよ」「そうだよ、まいちゃんゆっくりしな」
「うん。じゃあ、少しだけ」
それから皆でカップラーメン食べて、レコード聴いてのんびり過ごす。
「まいちゃんは彼氏いないんか?」「、、うん」
「なんでさ?可愛いのにさ、理想高いとか?」
>> 83
そのまま、近くの交番に連れて行かれた。若い警官は私の腕をしっかり掴んだままだ。
「座りなさい」そう言われてぼんやりしていた私はやっと、我に帰った。
「君、女の子なのに暴力はいけないなあ、」
「はっ?ちょっと待ってよ、こっち被害者だけど?」
「何言ってる、あの子の怪我見なさい」見るとその子は顔から血を流しながらうなだれてた。
「いきなり何にもしてない私らに殴りかかってきたのは、あいつらだから。」
「そうなのか?」警官が聞くと彼女たちはゆっくりうなずいた。
みきちゃんが話だした。「おまわりさん、あいつらさ、多分私の彼氏のナンパした子だよ。んで、逆恨みしてうちらに因縁つけたんだ、まいちゃんごめんね。」
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