蒼い月が出てた

レス88 HIT数 17914 あ+ あ-


2011/06/02 08:39(更新日時)

「お前が産まれた日はねえ、雪がチラチラ降って空を見上げたら月が蒼いんだよ」 幼い頃祖母が話していた。 「お前は産声一つあげなくてね、おかしな赤子だった」 それは呪文のように記憶に刻まれている。 昭和40年頃私が記憶している我が家は、腐りかけた木造平屋の掘っ建て小屋。 19歳の両親と55歳の祖母、24歳の父の姉。貧困だった。けど幼い子供にはよく理解出来ず水道もなくトイレも外なんて暮らしでも普通だった。母はいつも顔をしかめ、愚痴を言い人目だけを気にする人間。父は優しいが頼りない人間。そして私はぐずらない泣かない子供だった。

No.1418214 (スレ作成日時)

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No.51

>> 50 その後引越しも終わり、祖母がまた同居した。そのアパートは一階に台所に六畳一間に、念願の風呂場。二階に六畳二部屋。一階に祖母、二階の一部屋に私と聡美。狭いけど、満足してた。初めて風呂に入った。一人で。うれしくて長々と入ってしまいのぼせてしまったくらいだ。しかし毎日祖母がいる生活は、母にはストレスでしかなく、日に日に険悪になって行った。祖母は工場勤めで夕方に帰ってくる。夕飯時私たちが食事中その傍らで晩酌をしていた。母はそれも気に入らなかった。祖母はお酒が入ると愚痴っぽくなるのだ。

No.52

>> 51 饒舌になった祖母の話相手はいつも私だけ。愚痴っぽいけど、興味深い話もしてくれた。
昔まだ父たちが生まれた頃の話だ。その頃まだおじいちゃんが生きてた頃は、生活も良かったんだそうだ。もう少し街中の一軒家に暮らしていた。おじいちゃんはいい学校を出て役所の仕事についてたらしい。戦争の空襲に遭い家は焼け出されその後おじいちゃんは、肺炎をこじらせて亡くなった。叔母が6歳父が3歳のときだ。それからは女手一つ、貧しい中、ひたすら働いてきたらしい。

No.53

>> 52 そんな中決まって最後は私の生まれた日の話になる。「お前が生まれた日はね、雪がちらちら降ってるのに月が出ててね。見上げると蒼いんだよ」
『義母さん、どうせ酔ってたんでしょうが」横から母が口を挟む。
「いやいや、あの日は産院に急いで出かけたからね。飲んでなかったね」「まいは産声一つあげない、変わった子だったよ」
「ただの強情な変わり者なんだよ」と母。私は祖母の方を向く。「まいはいい子だよ、おばあちゃんはまいが一番可愛いんだよ」私はにっこり笑い返した。
母は気に入らず二階に上がってしまった。

No.54

>> 53 中学校に通う頃になると、母の干渉はもう、異常としか言えなくなった。
クラブ活動で、新しい友人も数人できたり私の生活も少しずつ変わってゆく。
その頃みんなで交換日記を始めてた。たわいもない話から恋の相談なんかも、みんな書きあってた。ある日お風呂から出てくると母がその交換日記のノートを持って私に怒鳴りはじめた。「これは何?ちゃらちゃらした事ばっかり書いて、何しに学校に行ってるんだい」信じられない。勝手に人の物を覗くなんて。「なんで勝手に私のカバンあけるの?」
「子供の物見るのは親の権利なんだよ、かばんも親が買ったものだろ」
そうなのだ。私にはプライバシーなんてもの全くなかった。母はかばんでも、机でも郵便でも全て勝手に見ていた。

No.55

>> 54 「お前の付き合うのは皆馬鹿ばっかだね、今頃から男の話ばっかりで、ろくなもんじゃないね」私はもううんざりだった。「うるさい、、うるさい!くそばばあ!だまれ!」
「なっ、何?もう一回言ってみろ」母は私の髪をつかみひきずった。
「うるさいんだよ!このばばあ!離せっ!」その日を境に私は歯向かうようになった。
母はそんな私に執拗に干渉する。やっぱり学校だけが私の避難所だった。

No.56

>> 55 みんなと話してると楽しいけど、なんだか疎外感がある。みんなキャピキャピしてる。私にはない要素だ。廊下で好きな男の子に会ったりすると、うれしそうに「あードキドキしたあ、まいちゃんは好きな子いないの?」「うーん、そうだなあ、いないなあ。」
「変なの、まいちゃん変!」友人は笑うけど、やはり私はそんな感情にはまだなれなかった。あるとき一つ上の先輩に告白された事がある、何度か二人で話したけど、駄目だった。その人は家柄のいいお坊ちゃんだったのだ。優しい人だったと思う。でもきっと私の育ってきた環境や心の葛藤なんか絶対に理解してはもらえないと思ったのだ。

No.57

>> 56 ある日の放課後。数人の女子でたわいのない話でのんびりしてた。そこにクラスではかなり問題のある女の子が入ってきた。「あれ?南さんきょう休んでたのに、」一人の子が聞いてる。「うん、さぼってたんだけどさあ、呼び出し」「南さん、さぼってどっか行ってたの?」「彼の家にお泊り」
「すごーい、南さんかっこいい、彼とお泊りだって」みんな興味津々だ。そこから、南さんのエッチ講座がはじまった。私はそういう行為には全くの無知だったから、男女の行為について詳しい話を耳にしたのが生まれて初めてだった。そして遠い昔心に封印していたあの忌まわしい叔父にされた事の意味を知った。そして、自分がすごく穢れている気持ちになり気分が悪くなってしまった。

No.58

>> 57 「ごめん、気分悪いから、クラブは休むね。」「まいちゃん大丈夫?]
「うん、ごめん、帰るね」私は吐き気と戦いながら、学校を出た。自分の身に起きた忌まわしい出来事を回想しながら歩く。その頃全ての事柄について、自分には何の責任もないと、何の非もないと思えないしわからない年齢だったから、誰にも言えない暗い記憶に押し潰されそうだった。「なんか、しんどいな、」後ろから誰かが呼んでる。「おーい、まいちゃん」振り返ると同じクラブの中山君。『帰るの?さぼりか?」
「ちょっと気分悪くてさ」「そかそか、大丈夫か?」「うん、だいぶよくなったよ」
『乗れよ、俺様の高級車に」私は彼の自転車に乗せてもらった。

No.59

>> 58 「中山君こそ、さぼりなんじゃない?」「まいちゃん帰ってるの見て便乗した」
「駄目じゃん」「いいからいいから、飛ばすぞ~」風を感じて自転車の後ろで目をとじる。少し気分が回復してた。『中山君サンキュ、気分良くなったよ」
「よし、じゃあドライブしよっか」そう言ってぐんぐん飛ばす。「ちょっと、飛ばしすぎ!(笑)っほらあ危ないよ」ものすごい勢いで街中を疾走して私はなんだか笑いが止まらなくなってた、心から笑ってた。川原の堤防に止まって二人はまだくすくす笑いながら座りこんだ。「すっきりした?」「うん、おかげさまで。何年ぶりかでいっぱい笑った」
「何年ぶり?まいちゃん年寄りみたいだな」「はは、そだね」「笑ってなきゃ駄目だぞ、笑ってたら、やな事も消えてくからな」

No.60

>> 59 「そうかな、消えてくかな?」「、、なんか嫌な事あったのか?」
「ううん、今日はない」中山君はそれ以上聞いてこなかった。しばらく学校のこと、クラブのこと、進路のことを話した。「まいちゃんは高校どこ受ける?」
「さあ、まだわからない、あんまり成績良くないしね」「俺様と同じ所にしない?」
「どこ受けるの?」『県立青葉」「うーん、私無理かも、点数足りないかも」
『大丈夫だよ、頑張ろうぜい」「なんで一緒のとこなん?」「、、、まいちゃん俺といると毎日笑えるぞ」(笑)「そうだね、それはかなり惹かれる」
「だろだろ、一緒の高校行こう」

  • << 62 後になって振り返ると、あれが初恋だったのかなと、お互いそんな話は一度もしたことはないけれど。思い出したら心穏やかになれる可愛い想い出。 高校受験間際になって、母はますますヒートアップ。「落ちたら出て行ってもらうからね、近所で青葉に行くってもう言ってあるんだから」 全く母らしいなと思いつつ、(ぎりぎりだし、数学やばいな)少し焦る日々。 そんなある日、「まいちゃん勉強しよっか」ゆみちゃんが家にやって来た。 ゆみちゃんはもう有名私立に合格していたので、私の勉強を見に来てくれたのだ。

No.61

いつも読ませて頂いてます⭐
頑張って下さいね😃

  • << 63 ありがとうございます。拙い文章にお付き合い下さり感謝します。

No.62

>> 60 「そうかな、消えてくかな?」「、、なんか嫌な事あったのか?」 「ううん、今日はない」中山君はそれ以上聞いてこなかった。しばらく学校のこと、ク… 後になって振り返ると、あれが初恋だったのかなと、お互いそんな話は一度もしたことはないけれど。思い出したら心穏やかになれる可愛い想い出。
高校受験間際になって、母はますますヒートアップ。「落ちたら出て行ってもらうからね、近所で青葉に行くってもう言ってあるんだから」
全く母らしいなと思いつつ、(ぎりぎりだし、数学やばいな)少し焦る日々。
そんなある日、「まいちゃん勉強しよっか」ゆみちゃんが家にやって来た。
ゆみちゃんはもう有名私立に合格していたので、私の勉強を見に来てくれたのだ。

  • << 64 「はい、この問題やってみて。この辺押さえといたら数学何とかなるよ」 「ゆみちゃん。ありがと、すっごい助かる」「まいちゃんと一緒に高校行きたかったけど、ほら、うちの母親が勝手に私立決めちゃってさ、うちは何でも母の決めた通りだから」 「そっか、お互いやな親に苦労するよね」「、、うん。」 あの泣き虫でわがままなゆみちゃんは、その頃すごく変身してた。穏やかでなんか、全て受け入れて諦めた大人の女性みたいだった。「受験終わったら、どっか行こうか?」 「そうだね、みんな誘って行こうよ!」「じゃあ、きまり。さっさと試験終わらせなきゃ」(笑)「まいちゃんは昔から緊張とかしない子だよね」「まあね、外に恐いものないんだよ」

No.63

>> 61 いつも読ませて頂いてます⭐ 頑張って下さいね😃 ありがとうございます。拙い文章にお付き合い下さり感謝します。

No.64

>> 62 後になって振り返ると、あれが初恋だったのかなと、お互いそんな話は一度もしたことはないけれど。思い出したら心穏やかになれる可愛い想い出。 高校… 「はい、この問題やってみて。この辺押さえといたら数学何とかなるよ」
「ゆみちゃん。ありがと、すっごい助かる」「まいちゃんと一緒に高校行きたかったけど、ほら、うちの母親が勝手に私立決めちゃってさ、うちは何でも母の決めた通りだから」
「そっか、お互いやな親に苦労するよね」「、、うん。」
あの泣き虫でわがままなゆみちゃんは、その頃すごく変身してた。穏やかでなんか、全て受け入れて諦めた大人の女性みたいだった。「受験終わったら、どっか行こうか?」
「そうだね、みんな誘って行こうよ!」「じゃあ、きまり。さっさと試験終わらせなきゃ」(笑)「まいちゃんは昔から緊張とかしない子だよね」「まあね、外に恐いものないんだよ」

No.65

>> 64 受験も終わり、なんと、合格してた。母は、ほっとしていたが、お褒めの言葉もなく、制服が高い金がかかると文句を連発し出す始末。それはそれでかなりうっとうしい事だった。
約束どおり私たちは皆で出かける事になった。ゆみちゃん、まりちゃん、さよちゃん、そこに何故か中山君も。電車に乗って景色が綺麗な公園に。そこは色んな花が咲き誇り、池にはボートもある、そこそこ有名な場所だった。「まいちゃん、中山とボート乗ってきな」まりちゃんがにこにこしながら私の背を押した。「うん、乗るけど、皆は乗らないの?」「私たちも乗るから、先に乗ってきな」
私は中山君と二人でボートに乗った。「なんか俺無理やりついて来てごめんな」
「えっ?ああ、いいんじゃない?皆同じクラブでよく知ってんだし」
「そか、よし俺が漕ぐ」すいすいボートが水面を滑っていく。

No.66

>> 65 「まいちゃんってさあ、明るいしおもしろいのに、寂しそうだよなあ、」
「、、、そう?」「うーん。なんか謎めいてて、好きな子の話なんかも絶対しないじゃん?」「いないから、私は誰かを好きになるんだったら、一回だけにしたいんだ」
「うげ、人生一回こっきり?」「、、うん、おかしいよね」「いや、おかしくないよ。珍しいけど」「私が生まれた時月が蒼かったんだって」「??」「なんでもない、ごめん」「まいちゃんってやっぱおもしろい、ミステリーだ」(笑)そう、あの時みんなは、私たちがいい関係なのをわかってて気を利かせてくれたんだと思う。でも私の心の葛藤に気が付くには、まだ中山君は幼かったんだろう。

No.67

>> 66 高校生活が始まり、私は、何だか馴染めずにいた。まりちゃんとさよちゃんは、二人同じ商業高校に進学していたし、ゆみちゃんはかなり遠い学校だったから、もうほとんど会うことはなかった。私は誰も知らないクラスでぼんやり過ごした。中山君はクラスも違ってたまに話す程度だった。家に帰ればあの母がいる。学校はつまらない。何故かその時の私は誰とも付き合う気になれず、疎外感だけ。それなりに話をする女の子たちもいたが、やはりなじめなかった。
ある日私は黙って学校を早退した。一人駅までの田舎道をぶらぶら歩いた。するとなんだかほっとした。

No.68

>> 67 家に帰るわけにもいかず、そのままぼんやり歩いた。色々なこと考える。自分は何がしたいんだろう。これから、どうすればいいんだろう。答えは出ない。日が暮れて仕方なく家に帰った。そこに仁王立ちの母がいた。「今までどこに行ってた?先生から電話かかったんだよ、早退したって!」激怒してる。「別にどこにも行ってない、ぶらぶらしてた。」
「この馬鹿が!」いきなり殴られて壁に頭打ち付けた。「どうせ、男でもできたんだろう。おまえみたいな女は、そうに決まってるんだ。頭の悪いあばずれが!」
「?はあ?何言ってんの?」「どこの男だ?お前は軽い女だねえ、情けない」
もう、何言っても無駄だ。でもなんで私があばずれなの?彼氏も出来た事ないし、この人は病気だ。それに私を心配して叱ってくれもしない。自分の気持ちだけが大切なんだ。

No.69

>> 68 その日を境に私は学校に行かなくなった。母は半狂乱だったが、もうそんな事どうでもよかった。毎日あの秘密の空き地で、野良猫を眺めて過ごした。そんなある日、高校の担任が家にやって来た。その人は年輩の穏やかな男性だった。「君は今どうしたい?何か夢はないのかな?」「わかりません、だけど学校には戻りません」「、、、そうか、だけどそれなら就職しないとな。面接行ってみないか?先生の知り合いの老人施設なんだがね、大きな施設で中途採用もしてくれるよ。」『病院みたいな所ですか?」『病院と老人施設が一緒になってるんだよ」「、、、。」「どうだい?試しに?」「はい、、」

No.70

>> 69 結局他に何も思いつかず、面接に行くことにした。母はとりあえず、先生の推薦なので、文句は言わなかった。面接の日先生は親切にも一緒に来てくれた。帰り道「君は心に悩みを抱え込んでるね。君は真面目な子だから、頑張ってきっといい大人になれるよ。これからも頑張りなさい。」そう言って帰って行った。先生とはそれが最後だった。
私の生活は一変した。仕事が始まった。大きな建物の病院兼老人施設で、私のように中途採用の若い子がたくさんいた。早朝から部屋を回って、入院してる人の体を拭いたりおむつ交換。食事の世話。とにかく一日走りまわった。意外なことに汚れ仕事も嫌じゃなかった。お年寄りが「ありがとう」って言ってくれると、うれしかった。

No.71

>> 70 仕事にも少し慣れてきた。そこには私と同じくらいの女の子がたくさんいた。昼休憩何人かで一緒に座った。「まいちゃんて言うの?私はみき。よろしく」彼女は同じ年。
私より少し先に採用されていたので、いろいろ教えてくれた。「ここはさ、不良が多いよ、ここの院長の方針でさ、安く使えるし更正させるって建前もできるしね」
「そっか、」「ほら、私も中学で頭してたし、あそこにいる子は、鑑別出だし。
「へえ、」「まいちゃんは?」「私?私は高校中退」「そっか。ま、仲良くしよ」
なるほど、それで若い子が多いんだ。納得。

No.72

>> 71 本当に事情の抱えた女の子ばかりだった。みきちゃんは、中学校で女子の頭。
まゆちゃんて子は、親を刺して鑑別所出。そんな訳ありな少女ばかり。
何故かみんなすごく仲良しになった。そう、心に傷と闇を抱えた者ばかり。
だからしっくりきたんだろう。仕事が夕方に終わる週末は、アパート暮らしのみきちゃんの部屋がみんなのたまり場になってた。「だあ~疲れたあ」「タバコある?」「今日何する?」みんなそれぞれ寝転んだりテレビ見たり、くつろぎモードになる。

No.73

>> 72 私たちは、皆居場所を探してさまよう子供だった。まゆちゃんは、可愛い顔した女の子だった。彼女が親を刺したのは、虐待の果ての反撃だったそうだ。しばらく鑑別所にいて、そこを出所と同時にここに就職した。「ねえ、これからみんなで映画でも行こうよ」
「それよりさ、買い物行きたい、給料出たんだし。」その後みんなで近くの商店街に繰り出した。初めて自分が稼いだお金。少ない給料だったが、うれしかった。
玩具屋の前を通って私は立ち止まる。「ごめん、待って」さとみに何か買ってあげよう。
みきちゃんが「何買うの?」「うん、妹にさ」「へえ、妹いるんだ、何歳?」
「今10歳」「ぬいぐるみなんかどう?」

No.74

>> 73 まゆちゃんも加わって皆真剣に選んでくれてる。「これどう?可愛いよ~」みきちゃんが持ってきたくまのぬいぐるみ。大きくてとぼけた顔。可愛い。それに決めた。
その後みんなで服を見に行った。大きなぬいぐるみを抱っこしたまま。
その時生まれて初めて自分の好みの服を選んだ。ドキドキした。白のフリル襟のブラウスにふんわりミニの黒に裾がやはり白のレースでフリルつき。「まいちゃん可愛い」
「マジ可愛い」みんなのお世辞に照れながら試着も楽しかった。その後映画も誘われたが聡美に早く渡してあげたくてそこで私だけ帰ることにした。「また来週ね、ばいばい」
「バイバイ、まいちゃん」みきちゃんとまゆちゃんはそのまま夜中までの映画に向かった。

No.75

>> 74 家に帰ってさっそく聡美にプレゼントを渡した。顔いっぱいに期待の笑顔で、包装を開ける。「わあ~大きい!可愛い。ありがと~まいちゃん」私もうれしくなった。
「またお給料出たら買ってあげるね」その光景を見ていた母親が「次は親に恩返しくらいしなさいよね」無視した。どうしてもそんな気持ちにはならない。
その後自分に買った洋服を出して着てみた。「何?そのばかみたいな服!」
母がまた難癖をつける。「うるさいなあ、自分のお金で何買ってもいいだろ」
まったく、あの人は服はかざりのない地味な物以外許せないんだろう。

No.76

>> 75 休み明け、朝仕事にでると、みきちゃんがかけよって来た。「まいちゃん、まずいことになったよ。」「?どうした?」
「この間さ、まいちゃんと別れてから、映画行ったでしょ、その後ナンパされてさ、
黒塗りの外車にうじゃうじゃ男が乗ってて。」
「それで?」「うん、まゆが乗ってっちゃって」
「、、それで?」「行方不明なんだよ。」
「そうゆうの、絶対やめなって言ったのに、、」「うん、ごめん、あたし止めたんだけどさ、さっき婦長さんに話したら警察に届けるってさ」
「まゆちゃん、大丈夫かな」「うん、、あの子家族からは絶縁されてて、寂しいんだよ」

No.77

>> 76 その日は一日落ち着かなかった。仕事をしながら、私は色々考えた。
居場所がない。寂しい。皆そうだ。それでも、それを理由に自堕落な人間に落ちて行くのは間違いだと。お昼休憩のとき、私はそう話した。『私たちはさ、みんな嫌な事抱えてるじゃん?だからこそ、ちゃんとしようよ、自分大事にしよう、」

No.78

>> 77 みきちゃんは、「あたしは彼氏いるからさ、ナンパなんかされても乗らないよ。まゆは本当寂しいんだよ」
「寂しいのはわかるよ。だけど自分守るのは自分だけだよ」
「そうだね、まいちゃんの言う通りだよ」
まゆちゃんは結局その後一週間くらい行方不明だった。
そして、とんでもない姿で帰ってきたのだ。まゆちゃんは、どこかの組の事務所に監禁されて、薬漬けとなり、道端に放置されて発見された。

No.79

>> 78 一度だけ面会に行ったとき、まゆちゃんは別人になってた。
私たちの事もわからず、ただただ怯えて叫びだすだけ。
看護師さんが飛んできてすぐ帰された。
みきちゃんと私は無言のまましばらく歩き続けた。「まいちゃん、まゆはもう駄目なんかな」
「わかんない、だけど、薬ぬけたらよくなるんじゃない?」
「仕事は首だってさ、当然だけど、」「うん、、また良くなったらお見舞い行こう」
だけど、まゆちゃんにはそれきり遭う事はなかった。聞いた話では、遠い親類のいる他府県に行ってしまったということだった。

No.80

>> 79 毎日がまた単調になり、仕事に行きたまに皆でわいわい騒ぐ。みきちゃんの部屋がかなり居心地よくなってた。ある日土曜の午後みきちゃんの部屋に行くと彼が来てた。
みきちゃんの彼は暴走族の頭をしてる。けど、とても硬派な人だった。
暴走族で真面目とはおかしな表現だけど、優しくて紳士だ。
「よう、まいちゃんいらっしゃい。」「お邪魔だったね、すぐ帰るからさ」
『遠慮すんな、ゆっくりしてけよ」「そうだよ、まいちゃんゆっくりしな」
「うん。じゃあ、少しだけ」
それから皆でカップラーメン食べて、レコード聴いてのんびり過ごす。
「まいちゃんは彼氏いないんか?」「、、うん」
「なんでさ?可愛いのにさ、理想高いとか?」

No.81

>> 80 理想か、、。よくわからなかった。その頃みきちゃんの知り合いや、いろんな男の子に付き合おうって誘われた。けど、私は断り続けた。誰かを好きになる。それは私にとって難しい事のように思えた。「まいちゃんはお堅いからねえ。」みきちゃんは笑いながら言う。「そんなんじゃない、、うまく言えないけど、ちゃんと好きになりたいんだ」
「まいちゃんの好きになる人ってどんなだろね、早く見たい」
「、、できたら教えるから。」
『楽しみだねえ」

No.82

>> 81 その頃、たまに仕事帰り、家にはあまり早く帰りたくない事もあり、
用もなく繁華街をぶらついてた。みきちゃんと二人その日も洋服を見たり、
雑貨見たり。土曜日で人が多い。ふとみきちゃんが立ち止まった。
なんだかすごい化粧の女が二人私たちの前に立ちはだかる。
「お前みきだよな?お前人の男と付き合って何様?」
「はあ?誰お前。」みきちゃんはさすがに番はってただけあって凄むと貫禄。
それはいきなり始まった。その女とみきちゃんが殴りあってる。
するともう一人の女が私にいきなり殴りかかってきた。

No.83

>> 82 いきなりの暴力。その時私の中で何かが切れた。
心の中に蓄積された全てのものが爆発したような。
気づいた時、私はみきちゃんに羽交い絞めになって止められてた。
「まいちゃん!もういい、やめな!まいちゃん!」
私は女の髪をつかみ馬乗りになって顔を地面に打ち付けていた。
女は顔面血だらけ、泣き叫んでいる。私はみきちゃんに引き起こされ立ち上がった。
その時警官が駆けつけえた。まわりは人だかりになってる。

No.84

>> 83 そのまま、近くの交番に連れて行かれた。若い警官は私の腕をしっかり掴んだままだ。
「座りなさい」そう言われてぼんやりしていた私はやっと、我に帰った。
「君、女の子なのに暴力はいけないなあ、」
「はっ?ちょっと待ってよ、こっち被害者だけど?」
「何言ってる、あの子の怪我見なさい」見るとその子は顔から血を流しながらうなだれてた。
「いきなり何にもしてない私らに殴りかかってきたのは、あいつらだから。」
「そうなのか?」警官が聞くと彼女たちはゆっくりうなずいた。
みきちゃんが話だした。「おまわりさん、あいつらさ、多分私の彼氏のナンパした子だよ。んで、逆恨みしてうちらに因縁つけたんだ、まいちゃんごめんね。」

No.85

>> 84 そうゆう事か、、。みきちゃんが警官と話してる間、さっきの場面を思い返してみた。
なんだったのか、いきなりの怒り、暴走した感情。考えてもその時の私にはよくわからなかった。
その後話しだけで、帰してもらえた私たちは、ぶらぶら歩きながら話た。
「まいちゃんなんか巻き込んでごめん、帰ったら圭一に一発くらわしてやる。」
「圭一君てナンパするんだね、硬派だと思ってた。」「男はみんな浮気するよ」
「そうか、、さっきの子たちいかつい格好してたけど弱かったね」
「てゆうか、まいちゃん切れたらめちゃ恐い!」「(笑)あははは」
なんかふたりその後笑い崩れた。

No.86

>> 85 それから、同じような毎日の中もやもやと行き場のない
空虚な気持ちのまま、数ヶ月がたち、夜ぼんやり過ごしている
所に一本の、私の人生を決定させる電話が鳴る。

No.87

>> 86 「もしもし?」
「もしもし、、、まい、、ちゃんだっけ」
「はい、そうですけど?」
「僕斉藤雅浩って言うんだけど、中学時代のゆみって子の
友達だったろ?そのまた友達が、その、、まいちゃんの事紹介
してくれるって電話番号くれて、、あの、一度会ってもらえない?」
「いいよ、明日休みだし」いきなりの知らない男の子からの
電話。何故躊躇しなかったのか自分でもわからなかった。そして
運命の出会いとなる。

No.88

>> 87 翌日、朝ぼんやりとしている所に、何やら爆音が響く。
外に出て見る。原付バイクだ、、。一人の男の子。
エンジンを止めた。無言で見つめあう。
綺麗だ、、目が。顔より目が印象的。
私、、この人と生きていく事になるな、、。
どうしてそんな事思ったのか、今になってもわからない。

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