【エレイソン】
ある一つの魔界がある。
それに訪れるモノはない。
その魔界が外界の訪問を拒んでいるわけではない。
その魔界が特別異質なわけでもない。
ただ、知られていないだけ。
それの名前は【エレイソン】
人間界、天界、魔界の中心核周辺にあり。
魔界方面へ傾いた一つの世界。
魔界方面へ傾いた時から、魔物、いわゆるモンスターが現われだした。
ただ、それだけの比較的ちょっと安全な魔界。
言ってしまえば魔界は全て危険である。
このエレイソンも魔界の端くれ。
他の魔界との違う事は統一者、つまり魔王が居ないことぐらいなものである。
魔界寄りと言っても世界の中心核。
人間界、天界、魔界の種族が多種生存している。
そんな、なんとも中途半端な世界。
このエレイソンにある町。
大きく分けて3つある。
それぞれが人間界、天界、魔界の様な役割があり。
3つの町の中心に巨大な樹がある。
その樹にこれと言って意味はない。
あるとすれば祭り事に周辺が使われる位なもの。
その樹に寄り添うようにして、空を見上げる影二つ。
それも魔界の町を向いて。
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左肩と下半身に、吸い込まれそうな程黒いローブを纏い。
灰銀の髪に、真紅の瞳で全てを見透かすかの様に空を見上げている青年と。
肩まで伸びた黄金色の髪、エメラルド色の瞳。
学校の制服の様な服を着ている少女。
「Es erzahlt ∽∬Ξπσ 」
掻き消えそうな程小さな声で呟く。
「え?なんか言った」
「いいや、関係ない事さ」
微笑を浮かべながら、町を見渡す。
「いいや。じゃなくて、こっちが聞いてるんだけど?」
「声は遠くに、私は翔ぶ。と言っただけだ」
「・・・え~っと、何処の言葉で?」
「オリジナルスペルだよ、自分だけの呪文」
へ~、とか何とか言いながら立ち上がり、数歩進み振り返る。
「そろそろ、帰らない?」
ああ、と返事を返す。
少女は人間界の町に歩を進める。
青年はその少女の背中をゆっくり、見守るように歩きだす。
投影。視認したモノを己の想像と魔力で練り上げる魔術。
投影は壊れる時、その魔力は霧散する。その霧散する魔力を、彼は幾度となく己が内に取り込み、再利用する。
投影の際放出した魔力を、壊れると同時に使われた魔力を取り込む。
この、特異投影を易々と行う若者が居ると言う話を聞きつけ。
天使の町【キリエ】から人間界の町【ケルト】に移動中の天使が1人。
「話だけは聞いたんだけど・・・会えるかな」
「天使さん、出張かい?」
そこには、目を奪われるほどに深い黒のローブを纏った青年と。
制服の様な姿をした少女が居た。
「じゃあ、先に帰ってるね」
少女がケルトに向う背中を見送る。
「何か。様ですか」
身構える。始めはいきなり声をかけられて呆然としたが。
声をかけてきた青年は魔界の町【フラデ】の方角から来た。
理由なんてそれだけでいい。悪魔なら襲われてもおかしくない。
「身構えなくてもいいんじゃないか」
何時も会っている友人のように言う。
「俺は悪魔じゃないし、ケルトに住んでる」
「そうですか。何故話し掛けたんですか」
「天使ってあんまり来ないからさ。」
はぁ、とため息を吐く。
確かに、天使はキリエからあまり出ない。
「信じてくれた?俺の名前はスレイ」
スッと手を差し出してきた。
少しだけ困った。握手なんてしたことが無い。
けど・・・信用してもいいかな、と思い。
「おかしな人ですね。私はエア。」
握手をして違和感を覚えた。
スレイはある意味真っ直ぐで、ある意味捻じ曲がっている。
直感がそう告げているが、悪い人でもないとも。
「ケルトに行くんだろ。案内しようか?」
「ええ、ではお言葉に甘えて」
先ほど出合ったばかりと言うのに、親友のように肩を並べて歩く影が二つ。
ケルトに向って進んでいく。
>> 3
「ここの通りは見ての通り、店が多い。いや、極端に言えば店しかない」
「活気に溢れていますね、良いところです」
「武具とか、魔術媒体とか色々売ってるから。時間潰しに見て回るのにもオススメ」
そう会話を続けている二人の前には、人、人人、人人人、人人人人人・・・etc
立ち並ぶ建物。
行き交う人々。
良く耳に聞こえる店員の声。
そして、なにより・・・
うるさい事この上ない。
「・・・・・」
そんな、人込みを眺めていると。スレイがジ~~~ッとこっちを見ている。
「えっと。なんですか?」
「気になる事があってさ」
首を傾げる。
気になる事。それが何なのか私には解らなかった。
ケルトに住んでいるからこそ、解る事なのかもしれない。
>> 4
「何か、変な所でもありますか?」
あたりをキョロキョロと見渡す。
しかし、返事は
「いや、違う」
?を顔に浮かべながら続きの言葉を待つ。
「・・・移動しよう」
それだけ言って、踵を返す。
一応、黙って付いていく。
付いた場所は、ケルトの魔術研究所【4-9】号室。
「ここでいいかな」
「あの、何で入れるんですか?」
普通に考えて研究所や施設に一般人が入れる訳がない。
「知り合いが使ってるんだよ」
さあ、座って。
椅子を指差し、奥に消えていった。
戸惑う、どう反応すればいいのか。
自分でも、さすがにこういうのは落ち込む。
まあ、座っておこう。
いくら天使が堅物と言われようとも、受け答え、反応はきちんと出来る。
自分自身が、歯痒い。
天使は悪を許さない。
ちょっとの自己嫌悪が原因で、自殺をした天使もいるほどに。
「その知り合いが何時でも使ってくれってさ」
声の方に顔を向けると。
両手に三角フラスコ、中には何やら黒い液体。
「コーヒー。砂糖かミルクいる?」
>> 5
フラスコから湯気と言う名の蒸気が出ている。
いやいや、それよりフラスコって。
「どうした?熱消毒してるから大丈夫だぞ?」
「貴方は、その・・・いつもそれで?」
「此処ではね。消毒しないなら、普通のコップの方が汚いってさ」
確かに。確かにそうだ。
しかし、フラスコって。
「中は普通のインスタントだから。ホットの」
「はぁ・・・そうなんですか」
「ああ、アイスかホット聞いときゃ良かったね。」
なんて言いながら笑ってる。
どう言う気の使い方なんだろう。
・・・あったかいの好きだけど。
「で、どうする?」
「え?・・・あ、じゃあ。砂糖を」
はいはい、と気軽な返事をして。また、部屋の奥に引っ込んだ。
・・・掴みにくいな~。
スレイさんも、フラスコも。
>> 6
透明な箱に粉が入った物を手に戻ってくる。
「さて・・・」
目の前の机にその箱を置き、コーヒー入りフラスコを啜る。
「砂糖はご自由に、どぞ」
そう言われたので、少しずつ砂糖をフラスコに入れ。
フラスコをちょっと振っていると。
「AとB。どっちを聞きたい?」
「へ?」
AとB?何それ?
まあ、取り敢えず。
「えと、じゃあAで」
「・・・では、問います」
問いますと言われましても・・
「貴女は、今日初めてこの町【ケルト】来たと言いましたね?」
「は、はぃ」
「では、貴女は【ケルト】に宿屋、ホテル等の類が無いのを知りませんね?」
「え?無いんですか」
普通有るでしょ、一番情報が集まる町なのに。
「宿屋の類は有りませんが、【ケルト】に住んでいる人が住んでいる家は、大概が大きいのでそこに止めてもらいます」
(・・・そんな話大天使様から聞いてないよ~。調査位しか言われてないのに)
「どうやら、知らなかったようですね。そこで提案なんですが・・・」
>> 8
片付けが終わる、さあ帰ろう。
「ああ、ちょっと用事があるから適当に街中をブラブラしてて」
そう言われても・・・
言われた通り、適当にブラブラしていると。
「あら、天使さんなんて珍しいわね」
騒がしい街中でも、聞き取りやすい声がした。
おそらく、自分の事なので振り返ってみたが。
・・・・・
あるのは人混みばかり。
「こっち、上。店の屋根」
顔を上げると、屋根に座る一人の女性。
「昇ってきなさいな、話しましょうよ」
昇って、と言われても。
「飛べないの?じゃあ、登ってきて。その背中の羽根が、見かけ倒しならね」
ああ、そうか。
自分の身体の事も解らない自分って・・・
なんか自分が腹立たしい。
苛々+自己嫌悪していると。
「フフ、可愛い」
笑われた。
「ほら、早く」
なるべく周りに迷惑が掛からないように。
あと、スカートの中が見られないように飛ぶ。
「初めまして、私の名前は葉月。貴女は?」
「えと、私はエアです」
>> 9
名前から自己紹介、何気ない会話。
話している。ただ話しているだけ。
でも、何故かいつもとは違う。
【キリエ】に居たときには、感じられなかった。
心地よさ、共感、笑い。
欲しかった日常。
時間が過ぎる。感じているよりもずっとずっと速く。
「あら、もう暗くなってる」
空を見上げると夕焼け色の向こうに夜が来ている。
「そうですね、結構話しましたし」
「また、今度会ったら話しましょう」
バイバイ、と手を振る。
楽しかった、嬉しかった。
暫らく、空を眺めてみる。
今日だけでも、貴重な体験をした。
【キリエ】では学べない事。人情って言うのかな?
どれくらい考えたのか。
どれくらい悩んだのか。
いくら考えても。
いくら悩んでも。
わからない、分からない、解らない、判らない、ワカラナイ。
「解らないなら、深く悩むな、考えるな」
「えっ・・・」
振り返ると、そこには紙袋を持ったスレイ。
「考えても出て来ないなら、考えるな。成るようになるさ」
・・・・・
この人は人生を勘で生きてるんじゃないのかな。
「なんだ、哀れそうな顔で見るなよ」
「すみません」
「笑ってた方がいいぜ」
この人ほんと悩みなさそう・・・
「行くか?家」
「はい、行きましょう」
◇
「さて、ここが家なんだけど・・・」
?
「あ~、驚くぜ。多分」
「じゃあ、素直に驚きますね」
「・・・そうか」
他人の家なんて入った事もない。
だから、多分驚く。大抵のことで。
「ただいまー」
ガラガラっときてドカーン。
「ガハッ!」
何か黒い影がスレイさんのおなか、みぞおちに・・・こう、ドーンって。
そして、ガフガフという鳴き声?
「もう、シャマシュ暴れないの。スレイお帰りー。ニンツ手伝って、アージュそっちじゃないよ~」
ポカーンっと。
「どう?ペット多数だろ」
「多すぎじゃ、ないですか?」
「今~・・・何匹居るっけ?」
シャマシュと呼ばれた犬(?)がじゃれている。
「取り合えず中に入ろうか」
>> 11
「・・・」
これは・・・
「確か、20~40は居ると思うんだが」
「ペット飼い過ぎでしょ」
「ですよね~」
ははは、と笑って奥に入っていく
≠
夕飯をご馳走になり
お風呂も入った
部屋も用意してもらった
ここ迄は良かった
うん、凄く。凄過ぎるぐらい良かった
「これからは、お前が考えて動け」
この一言が最大の壁となって立ちはだからなかったら
今日は、最良の日
この言葉が出てきて
今日は、困惑の日
「あんな事言われても」
「買い物したことあるか?なら大丈夫」
とかも言われた、余計な
「幾らなんでも、買い物くらいは」
・・・・・
(私自身で動け、か)
難しいだろう
今迄のどんなことより
しかし、それを吸収すれば
私は一歩踏み出せる
「明日から。頑張ろ」
ベットに転がり、目を閉じた
すっかり、当初の目的を忘れて
深い眠りに、ゆっくり引きずり込まれていく
(明日は、もっと新鮮な事がありますように)
これは、少女の非日常の物語
・・・かもしれない
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