クマトモ
熊谷 友之(くまがい ともゆき)、
通称"クマトモ"はバカである。
それもただのバカでは無い。
底無しのバカなのだ。
ヤツとは長いつき合いになる。
保育園の年小組(四歳)の時からの幼なじみだ。
今、俺とアイツは小学校五年生。
この物語は、俺がアイツを常日頃から観察した出来事を綴った……何気ない物語。
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🐾14🐾
「……」
しばらく黙り込んだままその場に立ち尽くしていたが、神奈はそれからまた歩き出した。颯爽とエレベーターに向かう彼女の姿は…周りから見れば至って普通の行動だったろう。しかし彼女は、その一連の仕草と相反して…硬い表情を浮かべていた。
__彼女がその少女と初めて顔を合わしてから…まだ一日しか経っていない…日時。神奈は再び少女の病室へと足を運んでいた。
「入るぞ?」
外からノックと共に聞き覚えのある声が聞こえてくる……少女は無愛想に『どうぞ』と神奈に返事をするのだった。
その返事の通り、病室のドアを開けて神奈は室内に入った。
『案外素直だな……』
毛嫌いしている割にはスンナリ入室を許可した辺り…まだ優しさを持ち合わせているのだと悟った。
「…何よ?」
…しかも心なしか少しテンションが上がっている。昨日の今日で此処まで打ち解けてしまえるとは…。少し驚いた。と共に、神奈は少し関心した。
「具合はどうだ…何か欲しいモノはあるか?」
「……いきなり馴れ馴れしいわねアンタ…。
まぁ…良いけど。」
少し呆れ顔を浮かべる少女は昨日とはまるで違う雰囲気を出していた。
🐾15🐾
今日もまた
室内には相変わらず妙な空気が漂ってはいたモノの、昨日の様な気まずさは既に無くなっていた。
「…此処はいい病院だ。」
神奈は室内を見渡す。綺麗な花の模様が入ったカーテンを眺めつつ…和やかな気分に浸っていると…
「ええ、いい病院ね…いつまでも入院していたいくらいだわ。」
と嫌みが聞こえてきた。それはそれはピリピリとした重圧のある嫌みだった。しかし神奈はまるで堪えてはいなかった。
「そうだな…入院と言えば、私も昔一度だけ入院した事がある。」
「……そう。」
嫌みを軽くスルーされたと言う妙な敗北感が少女の心に残った。
『…大物だわこの娘…』__
__「ねぇ、アンタさ…この辺に住んでるの?」
「…!」
またまた唐突な質問だ。しかも内容が内容なので暫し驚きを隠せなかったが、やはり神奈は嬉しかった。彼女自身、何故嬉しいのかハッキリと言葉では言い表せ無かったが…目の前の少女が、少なからず自分の存在を認め始めたのだと…そう悟り始めた。
「ああそうだ…近くの町に住んでいる。ここから車で約四十分くらいのな。」
「…ふーん。じゃあ地元の子なんだね、アンタ。」
「……前までは神戸の方に住んでいた。」
🐾16🐾
「ふーん…」
少女はただ相槌を打つだけで、『何で越してきたの?』とは聞いてこなかった。興味がなかったのか…それとも聞かない方が良いと思ったのか、それは定かではなかった。ただ彼女は相槌をする前に一度だけ神奈の顔を真剣な目で見据えてきた。
神奈の表情から、余り良い話ではないのだと…そう悟ったのだろう。
神奈も心なしかそう悟っていた、だからこの話はそこで中断した__
__それからまた暫く部屋に静寂が訪れた。
だがしかし、神奈も少女も一昨日までの苛立ちや気まずさなどを感じてはいなかった…
…不思議と、この空気が自然であり…そして同時にむしろ居心地の良さすらを感じとっていた。何故居心地良く感じるのか定かではなかったが、『これが当たり前なんだ』と言う思考が彼女達の間に生まれていた。
__何でもない時間__
しかしそれは彼女達にとっては《何も無い時間》では無く、至極当たり前で…同時にこの上ない落ち着きを感じさせてくれる時間だった。
ただ静かに窓の外を眺める少女と、ただ静かに部屋の中を見渡す少女。両者は互いを拒絶せず…ただ個々にいる。
🐾17🐾
ソレがこの『空間』を形成している"何か"である事は否定できない。
少なくとも彼女達にとって互いを拒絶しない事こそが…最低限で、そして最高のコミュニケーションなのかも知れない。
「…」
「……何?」
少女は神奈の視線を感じ、捉えていた。先程から自分を見据える目に違和感を覚えたからだ。
「…いや…何でも無い。」
神奈は静かに目を閉じ、口を開いた。『何でも無い』と言う言葉には…《何かあるのだが言えない訳がある》と言う…暗黙の意思表示が含まれている。だから少女は何も聞き返さなかった。全く変わったやり取りだが…勿論、こんな会話が今に始まった訳でも無い…。
「……」
…しかし少女は、今度は黙って神奈の方を見つめ返した。窓の外に目を反らしていた神奈は、すぐに彼女の視線に気付いた。
「何だ?」
先程までの神奈とは打って変わり、まるで平生とした様子だ。脳天気な反応を示す辺り…思考を180度切り替えたのか、それとも……
「…アンタさ、何か読めないわよね。」
「…何がだ?」
「…だからさ、アンタのその性格と思考……」
暫く静寂に包まれていた室内に、また張り詰めた空気が漂ってきた。
🐾18🐾
「?」
神奈は首を傾げた。一体何を言い出すのか、神奈には良く理解できなかったからだ。
「…警戒心むき出しでこっちの方見てきたと思ったら今度は知らんぷり…」
少女が其処まで話すと、やっと神奈は少女が…何故こんな事を尋ねてくるのかと言う要因を理解した。そして同時に後悔の念が僅かにこみ上げてくる。
「…私は時々…自分が何者なのか分からなくなるときがあるの。
周りと関わらないでいつも独り…こうして窓の外を眺めている。
それが今の私なんだって、割り切ってるんだけど。
でもヤッパリ、こうして居ても辛いだけよ……独りだから辛いんじゃ無くて、自分が何者で…何のために此処に居て…何で生きてるのかが分からないのが辛いの。」
少女は顔を天井に向け、まるで遠くを見つめるかのような目で語り始めた。
そして直後、少女は再び口を開く。そして、ある衝撃的な事を口にする……
…それは…唐突な話であり、そして同時に…神奈の思考を完全遮断するモノだった。先程までの張り詰めた空気すら感じさせない様な。この部屋のすべてを飲み込んでしまうかの様な…そんな言葉だった。
「私ね……もうじき死ぬの。」
🐾19🐾
…室内に籠もるのはただの静寂と、そして漠然とした空気だけだった。神奈は最初、その少女が何を言っているのか…とても理解できなかった。ただ意識が呆然として、目の前の少女がまるで幻のように感じられた。
_ちゃんと形が有るのにも関わらず、少しつついただけで直ぐに壊れてしまう様な存在。余りにも脆く、気付けば…いつの間にか遠くにさえ行ってしまうかのような…そんな脆さを持ち合わせている。
彼女からの言葉で、神奈は頭の中が真っ白になっていた。何も考えない…感じられない。ただ心の中に大きな穴が空いたと言う感覚だけが…彼女の中に残っていた。
「…それは…本当…か?」
ただ声が震えて、目の前の現実を受け入れられないで居る。しかしその反面で、少女が言っていることは確かではないと言う…疑心にも似た確信が、心の中にあった。
「…ええ、みたいね。
私も直で言われたわけじゃないけど…間違いないわ。」
「……どう言うことだ!?」
無意識に少し声の張りが上がる。しかし神奈は、今はそんな事など…気にはしていなかった。そんな事よりも少女の口から、何か僅かながらでも希望に満ちた言葉が出てくるのを期待していた。
🐾20🐾
神奈の過敏な反応に、少女は少しだけ…目を見開いた。
『…意外…ここまで反応を示すなんて。』
少女が予想していたよりも、神奈のリアクションがそれだけ過敏であった事が伺える。
そして神奈は、相変わらず少女を問い質す。
「医者から直接聞いたのでは無いのか?」
神奈の『まだかまだか』と言わんばかりの仕草に、少女は少し驚いたが…それでも再び口を開いた。
「ええ、そうよ。直接聞いた訳じゃないわ。
ただ病室を抜けたときにね、看護婦さん達の…そう言う会話が聞こえてきたの。
『私がもうじき死ぬかも知れない』って会話がね…」
神奈は黙り込む。少女は神奈の方を見ずに、再び窓の方に顔を逸らして話し始める。
「…最初は半信半疑だったの。『何かの間違いだ』って…
それでお父さんに確認したのよ。『私は死ぬのか?』って…
そしたら……泣き出して何も答えてくれなかったわ。ただ私の手を握って…。
しばらくしてから、ようやく泣き止んだわ…そしてお医者様が、『手術すれば何とかなるかも知れない』みたいな事を言ってたと…そう告げてきたの。
それってね、手術は出来るけど助かる可能性は低いって事なのよ。」
🐾21🐾
少女がそこまで話し終わると、神奈は黙り込んだまま表情を和らげた。先程までの硬い表情はその時すでに消え失せていた。
「それは…本当なんだな?!」
「…?…まぁね。」
少女には神奈のその反応が理解できなかった。_何故この娘は嬉しそうなのだろう… _そんな事を考えていた。
「だったら、助かる可能性はまだあるんだな!!」
「………」
張り詰めた空気が一気に吹き飛び、妙な空気が部屋に残った。神奈の突然な解釈に、少女はただ黙り込んでしまった。『良かった良かった』と喜ぶ神奈に少女は冷静に対応をする。
「…話聞いてたの…死ぬかも知れないのよ…私。」
「しかし助かる可能性もある。」
「…」
神奈のその言葉に少女は黙り込んでしまった。何か言い返したそうだが、少女は神奈の返答に応えられない。言葉が出てこない…ただ心無しか苛立ちが募っていた_例えようもない苛立ちだった。その怒りの矛先が、神奈に対してなのかそれとも彼女自身に対するものなのか…それは到底理解できなかった_
しかしそれでも少女は暫く黙り込んでから…神奈に向かって再び口を開いた。
「助からないわよ。」
「助かる。」
両者は静かに、しかし重みのある声で口論しあう。
🐾22🐾
少女はだんだんと苛立ってきた。
「エラく固執するのね。」
「当然だ。お前には死んで欲しくはない。」
少女はさらに神奈を睨みつける。
「あんたに何か心配されたくないんだけど。」
「それは無理だ。知り合いの死に直面して黙っていられるか。」
両者の間に重くまがまがしい空気が満ちていく。この場に第三者が介入する空気はまるで無い。
「…何でそんなに…私なんかに固執するのよ!」
少女は少し声がふるえ始める。それは言葉では言い表せない程、沢山の感情が籠もった声だった。
神奈は少女の言葉を黙って聞き受けた後、静かに口を開け…重みのある声で答えた。
「それは私が、人間だからだ。」
_『…!』_
何故かは分からなかったが…少女は確かにその言葉を重く受け止めていた。まるで意味の分からない言葉だった…しかし何故かは分からなかったが、少女にはその言葉が何か重要な価値を秘めているモノだと理解した。
そしてそれっきり、彼女は黙り込んでしまった。まるで言葉が見つからない…そんな感じで俯いてしまったのだ。
__暫く、部屋にはまた沈黙が訪れていた。彼女達は互いに動こうとはしなかった。
🐾23🐾
「ねぇ、あんた…さ…家族は…居るの?」
また暫く黙り込んでいた少女が、再び重い口を開けた。当然少女の声に、神奈は静かに『ああ。』と応える。
「そう__」
少女は俯いた状態のまま、静かに口にした。そして語り始める。
「私にはもう居ないは。"本物の家族"はね。」
しばし黙り込んだ後で再び少女は口を開いた。
「…私の家族は六年前のある日、交通事故で皆死んだの。父も母も…弟もね。」
『…!』
神奈は一瞬だけ反応した。しかし黙り込んだ状態のままで何も言わなかった。今はただ_静かに聞いてやることにした。
「…私は一人だけ生還することが出来たわ。でも一緒に車に乗っていた後の三人は…__
__六年前…
『…可哀想にね。』
『そうね…あの子、身寄りもいないんでしょ?どうなるのかしらね…』
『児童養護施設に入るんじゃない?ほら、アソコにあるじゃない。』
『ああ…』
…看護婦たちの声が聞こえる。ここは何処だろう?私は辺りを見回す。
此処は……
_『休憩室』_
おかしい_今の今まで、病室に寝てたはずなのに_私は自分の手を前に翳す。しかし、動いている感覚はあるのに_体が見えない。変だ。
🐾24🐾
_あれ…どうして私…病室で寝てたって分かるんだろ…ここが何処かも分からないのに_
私は辺りを見回す。よく見ると、見覚えのある白い壁に…白い服を着た女の人や男の人がたくさんいる。
_…ああ…そうだ。此処は病院だ…_
ふと一瞬…映像が私の脳裏をよぎる。
『しっかりしろ!!直ぐに助けてやるからな!!!』
『直ぐに運んで!!まだ息がある!!!』
『急いで手術室に!!!』
…それからの記憶は不思議と脳の奥から引きずり出されるかの様に、私の目の前に映像として再現されていく。
手術がどうたらと聞こえてから、暗い暗闇の中でずっと横たわっていた夢…目が覚めると白い部屋に寝かされていたこと…看護婦さんが私の名前を呼んで、大丈夫よ_とだけ言って私の腕に触れた事。私が此処が何処か尋ねると、病室よ_とだけ応えた事。あまりハッキリとは見えなかったけど、私の体に沢山チューブが繋がれていた事。そして、掠れる意識の中で…私は確かにこう尋ねた。
_お父さんは何処?
…お母さんは?_
看護婦さんはそれから少し黙り込んだ後、ゆっくりと口を開け…みんなが遠くに行ってしまった…とだけ言い残した。それからの事は覚えていない。
はい、またまた更新停滞してて申し訳ないです。はい。💧
今日は三年生の卒業式でしたよ。いや~…眠くて眠くて大変でしたよ、隣の席の友人にねっ………とまぁ…それは置いといて。
実は明日からまたまた学年末考査がありまして、来週の水曜日くらいまで暫しお休みを頂きます。ご理解下さい🙏
何かもぅ…中途半端なとこで停滞しちゃうんだよなぁ~いつも…。
ホント申し訳ないです。すみません。進級かかってるんです…僕も。
🐾25🐾
「もういい」
神奈のその一言が、少女の発言を静止する。十分だよ、そう言うと神奈は…この話題をそこで終わらせた。少女はそれっきり、黙ったままで何も返さなかった。
ただ神奈の表情が、一瞬だけ目に映った刹那…少女は喉の奥から言葉が出なかった。
その表情は、冷たく寂しい顔、目だった_
_「今日はもう帰るよ。」
そう言うと神奈は、静かに立ち上がる。相も変わらず淡白な表情。少女は黙ったまま神奈の方を見据えていた。
「…明日も来るのかしら?」
少女が静かにそう尋ねると、神奈も暫く黙った後『ああ。』とだけ答えた。神奈は黙ったまま、部屋の入り口に向かう。
_「そうだ、先ほどの話だが…」
また神奈は振り返り、とっさに尋ねてきた。少女は顔を上げ、神奈を見据えた。
「今でもあるのか…その……」
「何?」
「………生きたまま体を離れる現象だよ。」
『生きたまま』と聞こえた時、少女は目を見開いた。この娘は何を言い出すのか、脳裏を駆け巡る衝動に少女はたじたじとした。
「……」
いきなりの質問にどう答えたらいいのか分からず、声が出ない。
「…"幽体離脱"や"体外離脱"と言うんだがな。」
🐾26🐾
何やら急にオカルトな話になってきた。こういう類の話は以前…テレビで観たことがある、本来ならそんな思考が働くところだが彼女にはそれが働かない。
「無い…けど……何?」
そうか、と言うと神奈は顎に手をやり、しばらく黙り込んだ。何か考え事をしている様だが、少女には神奈が何を考えているのかなど…勿論分かる訳がなかった。
「……もう一つ質問だが、お前はその事故以来…或いは、ここ一年の間に何か変わったことは無いか?」
「…どんな?」
「…何でも良い…具体的な事なら。」
「…だからどんなよ?」
少しイラっとした様子で少女はまた尋ね返した。
「…例えば、頻繁で無くても良いんだ、よく分からない気配を感じたりとか…。後、体に妙な違和感を感じたりとか。」
「違和感って?」
「体から意識が抜けそうになったりとか、目をつぶったときに何か…そう、光の様なものが見えたりとか。」
「何それ?」
少女は苦笑した。まるで神奈を少しだけ嘲笑っているかの様子で。…勿論、彼女にそんなつもりは無いのだが。
「無いわね。強いて言うなら…そう…今アナタが個々に居ると言う事くらいかしらね。全く奇妙な事象だわ。」
🐾27🐾
少女は冗談混じりそう呟いた。神奈は相変わらず無関心だが…。
「…そう…か。わかった、有難う。」
そう言うと神奈は部屋の入り口に足を運ぶ。
「ちょ…ちょっと待ってよ!」
「ん…何だ?」
「『何だ?』じゃないでしょ!何なのよ突然変なこと聞いて!」
「変なこと?」
「そうよ変な事よ!
何なのよ"幽体離脱"が…っとか、事故以来どうとかって……怖いのよ!何の話よ!」
「ああ。」
『ああ。』じゃ無い!、と少女は思った。そして神奈に対し、コレまでに無い苛立ちを覚えた。
「……あんた、アレ?何か…そう言う、しゅ…宗教の人?」
「宗教?違う違う。ただそう言う神経が鋭いだけだ。」
『そう言う神経』と言うものを少女は概ね理解できた。つまりそれは、
「"第六感"とかいうヤツ?」
「まぁ、そう言う事だ。」
少女の発言をすんなり肯定した。少し苦い表情を浮かべる少女に対し、神奈は相も変わらずしれっ、としていた。それから暫くして、少女が『もういい』と返すと神奈は相槌をうって部屋を出た。
部屋を出てから、また神奈はドアを開けて『もう一つ良いか?』と尋ねてきた。
勿論少女からは見えないが。
🐾28🐾
「何よ?」
少し目を細めて少女は尋ね返した。
「菜恵、何か憑いてるのでは無いか聞きたいのでは無いか?」
「聞きたくないわ!帰れ!!」
少女がそう叫ぶと、神奈は笑いながら『冗談だ。何も憑いてないから。』と言い残し、部屋を去った。廊下に出てからまた独り言を呟いた。
「この手の話は苦手なのか。」
自然と笑みがこぼれた。_
_神奈は一階のロビーに降りると時計の針を確認した。まだ時間はあるな、と呟くと、近くの椅子に腰を掛けてテレビを観る事にした。他の患者や見舞いに来た人達の姿は殆ど無い、老人が一人ぼけ~っと座り込んでいるだけだ。神奈は側のテーブルの上にあるリモコンに手を伸ばすと、適当にチャンネルを回した。
夕方、この時間帯は教育テレビ以外は別段目立つ番組(バラエティーなど)はやっていない。殆どがニュースだ。一部アニメもやっているが、殆どがニュースだ。
「まっ…嫌いではないがな。」
ふと、そんな独り言を漏らしていた。
呟きながら暫くチャンネルを回していると、神奈はあるニュース番組のところで手を止めた。
🐾29🐾
『ここ一ヶ月の間で…西日本各地を中心に多発している自殺事件、今日もまた兵庫県明石市の…』
テレビの画面で話すニュースキャスターの声が耳に入る。『また今日も』…もう聞き飽きた言葉だ。
ここ一ヶ月、ずっとこんなニュースばかりだ。まるで明るい話題が無い。
「…」
神奈はただ静かにテレビ画面を睨みつける。明石市の方にあるオフィスビル街が映っていた、街中だが高いビルは見られない。カメラが周囲を映している。
直後カメラが事件跡を映す前に、神奈はチャンネルを変えた。もういい、と呟くとリモコンを傍らの椅子の上に捨てた。ため息をついて、近くの時計に目をやると。時計の針は五時半を指していた…_
_翌日。夕方の四時頃に、神奈はまた病院の前にいた。彼女が入り口のドア付近に佇んでいると、聞き覚えのある声がした。
「よぅ嬢ちゃん!」
「!」
振り返るとこの間のタクシーの運転手さんが居た。運転席の窓から顔を出している。神奈は口元に笑みを作り、近寄った。
「この間はどうも。」
一礼すると、再び運転手さんと目を合わした。
「今日も見舞いかいな?」
「はいそうです。そちらもお仕事ですか?」
「そや。」
🐾30🐾
聞くに、今日は別の客を連れてきたのだという。それから少しの間だけ、話に花を咲かせた。
「今日はもうおかえりですか?」
「ああ、そうや。それで……お?」
男性のポケットから携帯の着信音が鳴る。男性は『ちょっとすまん』と言うと、ポケットから携帯電話を取り出し話し込んだ。
「もしもし、」_
_暫くして、電話が終わったが、運転手さんはどこかテンションが下がっている。
「嬢ちゃん、わしゃそろそろ…」
「あ、はい」
どうかされたんですか、と尋ねそうになったが、男性のやけに重くなった声色を聞いた瞬間…尋ねてはいけないと、本能的に悟った。
「仕事の仲間が自殺しよった…」
だがそんな心配をした矢先、男性は自然とそう呟いたのだった。そして神奈は、その男性の言葉を聞いてから少し間を置いて、『そうですか。』と無機質に答えた。
それから落ち込んだ様子の男性と別れの挨拶を交わすと、神奈は男性が車で去るのを見送った。別れ際、男性は重い苦笑いを浮かべながら手を振っていた。
神奈はその光景を、走り去るタクシーの車体に重ねたのだった。そしてその像を重い描きながら、車体が眼前から消えるまで静かにその場に佇んでいた。
🐾31🐾
タクシーの車体を眺めながら、神奈は目を細め唇を噛みしめた。拳を握る手の力が一層強くなる。心の底から何か熱く、だがしかし冷え切った感情が込み上がってくるのを、神奈は実感していた。_
_邪魔するぞ、と神奈は病室に入った。少女は相変わらず素っ気ない態度で『いらっしゃい。』とだけ言った。素っ気ない割には、言葉遣いはしっかりしている。
『相変わらず読めない奴だな…』
神奈はそんな事を考えていた。初めて会った時もそうだった、思い返せばツンツンしてる割には変に物事に入り込もうとして…『構って欲しい』と態度で示しているのが分かりやすい性格なのだった。
「何か用?」
「いや、見舞いに来ただけだが。」
『…それ以外に何があると言うのだろう…』
と思った。しかし反面神奈は、目の前の少女を見ながら…照れてるな、とも思った。そしていつもの通り傍らの椅子に腰をかけた。
「喜べ、今日は土産がある。」
少女はピクリと反応した。そう、と少女は冷たく返事をしたがどこか嬉しそうだ。『やはり照れている』と神奈は思った。
…そうこうしながら神奈は肩から掛けたバッグからその"土産"を取り出した。
「ほれ。」
「?」
🐾32🐾
少女はその"土産"を神奈から渡され、キョトンとした様子で…ジッと眺めていた。
「…コレあんたが作ったの?」
「私じゃ無い。それに、自慢じゃないが…私は図画工作は大の苦手だ。」
「…でしょうね。」
少女は手のひらに乗せた、その"紙ダルマ"をただ真っ直ぐな目で眺める続けている。
「コレ…誰が作ったの?」
「隣の部屋の少年だ。」
「隣の…部屋?」
「あぁ、この部屋の右隣だ。そこの小さな少年だよ。菜恵とは直接話したことがないと言っていた。」
「そうだったかしらね…。」
この少女が普段どの様な病院生活を過ごしているのかは知らないが、この少女の性格上…周囲の患者と親しい間柄になるような事は決して無いのだと言うことを神奈は重々理解していた。故に少女の返答に返す言葉もコレと言って見つからなかった。
「なかなか素直で純粋な少年だ。菜恵も今度話しをしてみると良い。」
「気が向いたらね。」
少女は相も変わらず素っ気ない返事を返し、持っていた紙ダルマを窓側の花瓶の横にソッと置く。少年とコミュニケーションをとるあたりは、あまり乗り気では無さそうだが…しかし、紙ダルマはそれでも大事に飾るのだった。
🐾33🐾
『今日は、落ち着いてるな。』
ここ数日通いつめて分かったことが二つある。一つは、この少女が分かり易過ぎるくらいに照れ屋だという事。もう一つは、この少女のテンションの高低差がずば抜けて高いことであろうか…。
「アンタさぁ、見えるの?」
「何がだ?」
「だから……ほらっ。
昨日言ってたじゃない!第六感がどうとかって!」
あまり"その単語"を口に出したくないのか、彼女は少し控えめに…そして少し苛立った様子でそう言い放った。
「ああ、"霊体類"の事か?」
「霊体…類?何よソレ…。」
「?…知ってて聞いたのではないのか、まぁいい。
…私は確かに第六感が人並み以上に鋭い。だから本来見えないものも見えてしまう。」
神奈は続ける。
「…ご存知の通り、第六感というものには様々なモノがあるが…。
私のはその中でも所謂、"霊感"と呼ばれる部類に入る。
私は"視覚"を媒体にして、一般的に"幽霊"や"神霊"などと呼ばれる輩が目に見えてしまう。」
「…ややこしい説明はいらないわよ。
つまりアレでしょ、その…普通は見えない…あ、アレが見えちゃうって事でしょうが?」
「"アレ"と言うのは"ゆうれ…」
「言わないで!!」
🐾34🐾
少女はハッキリと静止した。どうやら、本当にこの手の話は苦手なようだ。
「絶対に!!
言わないで!!
絶対よ!!
分かった!?」
少女は少しキレ気味で神奈に念を押した。人差し指を突き立てて神奈の口を塞ぐ。
「分かった。」
神奈はあまりの威圧に耐えかね、少女の言い分を了承した。
「さて、それじゃあ続きを聞かせてちょうだい。極力、怖い話はやめてね、いい?」
『とうとう本音が出たな…。』
「いい!?」
「あ…あぁ、わ…分かった…。」
_
_
「つまり、"肉体"と呼ばれる体を持つ生物を分類して"肉体類"と呼び…。
"肉体"ではなく"霊体"と呼ばれる体を持つものを…"霊体類"と呼ぶんだ。分かったか?」
「まぁ、大体は。」
「…そして、私はその"霊体類"の像を視覚から捕らえることができる。つまり、」
「視える…と。」
尋ねるように返答してくる少女に神奈は軽く相槌を打つ。少女は溜め息をついて窓の外に視線を反らした。
「アンタ…意外とオカルトなのね。」
「?…!」
少し動揺した。突然の発言内容に、神奈は驚きと同時に妙な苛立ちを覚えたのだ。彼女はムッとした…その理由は、
🐾35🐾
「…私は嘘はついて無いし、『おかると』でも無い!」
少女は驚いた。一瞬、神奈が何を大声で叫びだすのか理解でき無かったためだが、半面彼女の少し眉間にしわを寄せた表情を見た瞬間に『怒ってるな。』と悟る事が出来たためでもある。神奈の意外な一面を少女は見た。故に、どう対応して良いのか分からず、ただ驚くしかなかったのだ。…焦ったと言う表現の方が正しいかも知れないが。
「…なっ…お、怒ってんの?」
「んんっ、………怒ってない。」
『怒ってたじゃん……絶対。』
神奈はぷい、と顔を反らした。彼女の意外な一面に、少女は少し苦笑いを浮かべた。笑ってはいけないのだと言う思想五割、笑いたいと言う思想も五割。
「…アンタ、変わってるわね。」
「………菜恵も変わってるじゃないか。」
「変わ…っ、……っはぁ!?」
…その後は定石通りに、神奈は淡々と…少女はガミガミと、お互い一歩も譲らずに、とことん口論し合った。暫くそんなこんなで口論しあって、ものの十分が過ぎた頃…二人はやっとで普段の冷然を取り戻していた。
「ハァ…ふぅ…、この話題はここまでにしよう…。」
「ハァ…ハァ…そうね。」
二人はすっかり息を切らしていた。
🐾36🐾
ゆっくりと椅子に腰を下ろし、神奈は少女の方を見据えた。
「菜恵、強情だな…。」
「…アンタに言われたくないんだけど…。」
二人はそれっきり、互いに顔を反らしたままで黙り込んでしまった。そして微かに、二人は口元に笑みを浮かべていた。_
_時計の針が五時二十分を指した。神奈は今日もまた『帰るよ。』と言い、部屋を後にする事にした。別に何かをするでもなく、今日もまた病室内でただジッと時を過ごすだけ過ごして…。
「…ねぇ…」
「ん?」
少女は少しうつむき加減で硬い表情をしていた。
「…どうかしたのか?」
尋ねたが、少女は相変わらず黙り込んでいた。神奈は何か変だ、と思い黙ったままで少女の方をジッと見据えた。
「…私、来週退院するの。ここの病院。」
「え…」
その返事を聞いたとき、神奈は暫く黙り込んでしまった。…しかし少し間を置いて、神奈は再び口を開いた。
「…良かったな。コレでやっと…」
「手術を受けるの。大学病院の方で…」
少女はまた口を開いた。少し重みのある声で…
「今週末には、この病院ともサヨナラ…。
って言うか…ひょっとしたら、もう…」
少女は目を閉じた。そして顔を伏せてしまった。
🐾37🐾
神奈は少女の側に寄った。手を差し延ばし、そっと少女の背をさすった。
「…大丈夫だ、お前はこんなに元気じゃないか。」
苦笑いを浮かべながら少女の背をそっとさすり続けていると、彼女の背が微かに震えているのが分かった。
「……で…」
「?」
掠れるような声で、少女は微かに口にした。
「もぅ、来ないで…」
神奈は驚嘆した。
「…菜恵?」
少女に呼びかけたが、何も返答は返ってこなかった。ただ背中がビクビク震えていて、すっかり自身の殻に籠もっていた。神奈はどうして良いのかわからず、ただ少女の背をさすってやった。
時計の針は、五時半を指していた。_
_あの後、少女に別れを告げて…神奈は病室を出た。一応『元気でな。』と声を掛けておいたが、少女からの返答は返ってこなかった。
「…」
時刻は六時を回っていた。外にはすっかり雪が積もっていて、交通の便も止まっていた。神奈は迎えが思った以上に遅れている事に少し安堵しつつ、少女の言葉を何度も思い返していた。頭から離れない…。
「…嫌な定めだな…。」
病院の入口の前で佇みながら、静かにそう呟いた。彼女の肩や頭には、すっかり雪が積もっていた。
🐾38🐾
「…困ったなぁ。帰られへんがな…。」
「…すごい雪やなぁ。」
二人組の男性が病院から出てきた。神奈はただ黙って二人の話を聞いていた。
「源さんどないやねんな?」
「ん?あぁ…、大事には至ってへんみたいやけどな。
もうちょっとで死んどったかもしれへんやて、」
「ホンマかいな…」
「おぉ。」
男性二人は寒そうにポケットに手を入れた。
「しっ…かし、アホやなぁ…なんで自殺なんかしよったんやろ…。生きとったからエエけどよな。」
男性のその一言を聞いた瞬間、神奈は目を見開いた。
「源さん、何階の病院やって?」
「三階や。暫くは個室に入れられるみたいやで。また家族のモンも面会に来るみたいやさかい…まぁ、大丈夫やろ。」
苦笑を浮かべる男性二人を尻目に、神奈はただ目を見開いて、驚嘆の表情を浮かべていた。
「…最近多いからなぁ。」
「このあたりずっとや、また警察も来るみたいやさかいに…まぁ今回は何とかなるかも知れんけど。」
「あの…」
「ん?」
男性二人が振り向くと陰に隠れてよく見えなかったが、ソコには神奈が静かに佇んでいた。
「どないしたん嬢ちゃん?」
🐾39🐾
「今話してらした事で少し尋ねたいことがあるんですが。」
「…?」
男性二人は不思議そうに互いの顔を見合わせた。
「何や?」
「…先程の話で出てこられた男性の方ですが、自殺未遂後…意識は戻られましたか?」
「…え…あ、あぁ…」
「どのようなご様子で?」
男性二人は再度互いの顔を見合わせた。何やらアイコンタクトを交わしている様子だ。
「…嬢ちゃん誰やねんな。源さんの知り合いか?それやった…ら………」
男性の一人が淡々と喋り始めたときの事だった、目の前の少女に向けていた目が徐々に見開き、言葉が詰まって口を閉じられなくなってしまったのは。
「あっ……っ……」
「…質問を続ける…」
男性二人はその光景に…ただ、ただ、驚嘆した。
普通に考えても絶対に有り得ないその光景に、二人はただ呆然とするのみだった。
それはとても神秘的で_同時に、この世のものとはとても思えない様な膨大な"恐怖"を孕んでいた。
「…此処は"流"が乱れている。人目に付くのが玉に傷だな…」
神奈は左手を前に差し伸べた。次の瞬間、男性二人の目の前から"意識(しかい)"が消えた…。_
🐾40🐾
ー夜、静まり返った病棟内を少女は耳をすませて感じ取っていた。
『…今週でここともサヨナラか…あの娘…神奈ともう少し仲良くなりたかったなぁ…』
少女は膝を抱え込んで真っ暗な病室内に一人、思いにふけ入っていた。
『…また独り…』
この上無い孤独感に苛まれ、少女は唇を噛み締めた。彼女の脳裏には彼女の父親の姿が映っていた。失った家族に代わって、今まで自身の世話をしてくれた養父。
『…お父さんとも…もうじきお別れかもね…』
自然と口元には笑みがこぼれていた。皮肉な人生に対する、ささやかな復讐だった。そんな虚ろな笑みも、やがて消え失せた…。
バカみたい、と少女は呟き…横になった。
少女の目には、真っ暗闇の中…天井だけが映っていた。
そして少女は静かにそのまま目を…閉じようとした時の事だった。
突然、激しい悪寒が彼女の背筋を走った。
『……!…っ何?!』
少女は声が出せず驚嘆した。体がピクリと一度だけ痙攣を起こした後…突然脳の中に不思議な映像や感覚が走った。
それは、彼女には身に覚えのある感覚だった。
『…これっ……』
体から、今にも何かが溢れ出てきそうな感覚。確かに身に覚えのあるモノだった。
🐾41🐾
『幽体…離脱じゃ無いッ…?!』
体の内側からの物凄い発熱、何かが彼女の体の中に居座っている。
熱を出しているのは彼女では無く、彼女の中に居るその"何か"だ。体が脳に訴えかけてくる。
『怖いっ』『何コレ』『喰われてる』『体の中に』『何か居る』『死ぬ』『死にたくない』『壊される』
体を丸めて例え様の無い吐き気に苦しむ_蝕まれている_胃をかき混ぜられている様な感覚が脳に流れ込んでくる_溢れんばかりの"脳の痛み"が今にも口から溢れ出てきそうだ_
「…っ…やあぁッッ!!??」
弾けんばかりの衝撃が体を走る_視界が動く…上から下へ…腹部に焦点が定まる_霞む視界の中で少女はしかとその姿を目にした_
見ると、眼球が見下ろしている。真っ黒で何も無い顔から白い眼球が三つ、ソイツは手とも脚とも言い難いものを四本…その体から生やしている。黒い陰の塊。
「……っ……」
少女は恐怖のあまり声が出ない、どんなに頑張っても霞んでしまう。体が震えている、身動き一つ取れない。体が…
「…ッッ!!??」
動く。ビクリともしなかった体が勝手に動く…ものすごい勢いだ。指示していない、脳は一度も"動け"とは指示していないのだ。
🐾42🐾
まず足が動いた。早く逃げろ、そう言わんばかりにベッドから床に飛び出す。
そして足に攫われ上半身も連れて無造作に落ちる。上半身には力が入らない、頬と横っ腹で何とか受け身を取ったものの痺れが体中を伝う。
「…ッッ!!?…」
化け物は依然として少女を見下ろしている。下腹部から出たソレは、しかし耐えようの無い痛みすら意識させようとせず、そして今度は彼女の右手も独りでに動き出す。
『…いやッッ?!!』
握り潰さんと言わんばかりに、その右手は彼女の首元に喰らいついてきた!
「ッ…!!?」
声が出ない助けが呼べない死んでしまう_
頭の中を様々な思想が駆け巡る。
殺される_病魔でも目の前の化け物でもなく、
《私自身ニ殺サレル》
視界が少し霞み始めた。もうだめだ、少女は覚悟を決め目を瞑った。
《もぅ…何も感じない…死んでしまうのかしら……まぁ…別に良いけど…
…私には死に神が憑いてるんだ…だからみんな死んだんだ…お父さんも…お母さんも…
…お養父さんや…
…神奈も…
私と居たら…みんな不幸になる…その前に…私一人が死ねば良い…それが一番幸せなんだ……
…一番…》
🐾43🐾
不意に頭の中が真っ白になる。少女は、目の前の"死"を受け入れる。
『……パサ……』
《……?…》
その時だった、微かに何かが落ちる音が聞こえたのは。
《…あれ……》
それは先刻、少女が隣の部屋の幼い少年から貰い受けた"紙ダルマ"だった。ソレが目に映った時、少女は以前…ここの看護婦から聞かされた話を、ふと思い返す。
それは、隣部屋に重い病気を患っている少年が居ると言う話だった_看護婦はそんな少年でも生きたいと頑張っているのだと呟いていたが、当時絶望の淵に立たされていた少女の心には到底響かなかった。しかし_
「…やめ…てよ…」
首元に食らいつく右腕に、震えながら左手が触れる。
「…いい…加減…に…しな…さいよ……!」
少女は腹の底から精一杯の声を上げ、自由の利く左手に渾身の力を込めた。
「……何でッ………自分で、自分殺さなきゃいけないのよ……ッ!!!
何で私が…死ななきゃいけないのよ…この…ッ離れろぉぉ!!!」
爪が食い込むほどの力で、彼女の左手は力一杯その右腕に喰らいついた。先程まで彼女の首元にさも強欲に喰らいついていた右腕は、彼女の左手からそれ以上に強い握力で喰らいつかれて力が入らない。
🐾44🐾
窒息した蛇のようにピクピク痙攣し、しかしそれでも尚余力の限り喰らいつこうとする右腕を_至極冷静に止める。腹の底から血を煮えたぎらせ、険しい目つきを化け物に向ける。
「…いつまでそこにいるのよ…ッッ!!
コレは私の体……ッ!!
さっさと出ていけッッ!!!」
力の限り化け物に罵声を飛ばした。と同時に、化け物は金切り声を上げ苦しみ始めた。
ー《キィィィイッッ!!》ー
次の瞬間化け物は物凄い勢いで体から飛び出した。残りの下半身が下腹部から勢い良く出てきた。黒い影は一度空に舞い、音もなく床に着地した。イヤ、よく見ると微かに床から…
「…浮いてる?」
ー《キィィ!!》ー
その蜘蛛の様な形をした黒い陰は、少女を威嚇しているのか再び甲高い金切り声を上げ、少女はその一瞬で怖じ気付いてしまった。自由の戻った右腕を後ろに下げる、するとそこに何やら感触を感じた。目をやる。
『…!……』
そこにあったのは"紙だるま"だった_それを目にした瞬間_少女は心の奥底から、見る見る熱いものがこみ上げてくるのを感じ取った。
拳を力一杯握り締め、目の前の化け物を思いっ切り睨みつけた。
「殺せるもんなら殺して見なさいよッ!」
🐾45🐾
「アンタなんかに喰われる様なヤワな体じゃ無いッッ!!!
生きてやるッ!!
私は絶対生きてやるッッ!!!」
少女がそう言い切ると同時に、化け物は叫んできた。
ー《キィィィイッッ!!》ー
どこからその甲高い金切り声を出しているのか分からない。
ただ分かるのは確実にその化け物は彼女を威嚇していると言う事。
しかしそれでも少女は、たじろわ無い。怯まない絶対に諦めようとしなかった_
「勇気は買うが…無謀だぞ菜恵。」
その時だった、聞き覚えのある声が聞こえた。
少女は声のした方を向いたソコには右手には何か棒状の物を握り締めた人影が佇んでいた、
『神奈…!』
暗くてよく見えないが、暗闇に映っていたのは黒ずんで年季の入った木刀を右手に持った神奈だった。
距離で言えば2メートル前後。化け物と神奈の距離は結構ある。
「…全く厄介なのが入り込んだな…」
すぐ終わる、と呟くと神奈はグッと、木刀を力強く握った。次の瞬間、彼女の手元が青白く光り刀身にその光が纏わりついた。そして次の瞬間、刀身から光の刃が真っ直ぐ伸びて化け物の頭部を掠った。それから化け物が金切り声を上げるよりも早く、神奈は刀身を下に向けた。
🐾46🐾
上から下へ、化け物の体は一瞬で二つに割れた。音も立てず静かに…縦にスライスされた体は静かに床に落ちたが、しかし音は無く闇に溶け込むようにどこかに消えていってしまった。
「あっ…」
少女は目の前の現象が理解できずにただその場に座り込んでいた。するとそんな少女に直ぐに気付き、神奈は歩み寄ってきた。
その時、少女の視界にもう一体の黒い陰が映った。神奈から死角にいるそれは眼を光らせている。
「…ッ後ろッ!!!」
少女が言い終わるより前に化け物は神奈に飛び掛かっていた。振り向く神奈の眼前には既に六本、化け物の鋭い足と眼が映っていた。
その姿が眼前に迫る刹那、神奈の黒い眼球が光を失い_次の瞬間静寂が走った。
一瞬だった。ほんの一瞬の事だった、少女には何が起こったのか頭で理解できなくなっていた。
鈍い音が室内に響いた。しかしそれは空気を弾く音ではなかった。
「…ウソ……」
意識が飛びそうな衝撃が体全体にぶつかり通り過ぎた。そして少女の視界には_壁に叩きつけられた、黒い化け物の姿があった。
だがそんな光景よりも彼女は、目の前の神奈の姿に驚いた。黒い影から垣間見える…それ_
「…コレは私の中の鬼だ…」
🐾47🐾
少し俯き加減で神奈は呟いた。少女は息を呑んだ。
_そこに映っていたのは、神奈と…そして彼女を包み込むかのように纏わりついた_巨大な"龍の頭"だった。
巨大なそれは、眼球の大きさだけでも子供一人分くらい…口の大きさならば大の大人を三・四人は軽く飲み込めてしまえる程の巨大なモノだった。
「……お…に…?」
今し方神奈が呟いた言葉を復唱した、震えが止まらないが必至にそれを抑えて声に出した。
神奈はその長い、少し乱れた髪を軽く整え_言葉を口にする。
「…私の家系は…代々"鬼"を体に宿す一族なのさ。…私はその一族の末裔…。」
淡々と言い終えると、次の瞬間…神奈の体全体を覆い尽くしていたその"龍の頭"は消えた。
「今のは"陰龍"(いんりゅう)
私の中に封じられた"鬼"の一種だ。」
そう言うと神奈は木刀を勢い良く振りかざした。すると壁で延びていた化け物はキレイにスライスされた。
壁…化け物は勢い良くぶつかった筈だが壁には傷一つ付いていない。少女は驚嘆し、神奈に恐る恐るその事を尋ねた。
「…本来なら壁を透過する処だ。ソイツは霊体だからな。」
「…霊体……類?」
🐾48🐾
ああ、と呟くと神奈は続けた。
「コイツは"影蜘蛛"(かげぐも)と言う"神霊"の一種だ。
複数で行動するから…まだもう一匹居るだろう。」
神奈は淡々とそう説明したが、無論少女には理解できなかった。ただ言葉が出ず、今まで起こった事がひたすら脳の中を駆け巡るのだった。
「…ッて、ちょっと待ってよ!!
まだもう一匹居るのッ!?」
「ああ居るだろうな。
夕方…自殺未遂をした患者がここに運び込まれた。幸い大事には至らなかったそうだが、その時その患者の体に、こいつ等が憑慰していたんだ。」
《自殺…未遂》
先程の事が再び彼女の脳裏をよぎった。
「近頃多発している自殺事件も、五割程はこいつ等が絡んでいる。
残り五割は私生活面に問題を抱え込んだ奴らや、自殺ブームに乗り遅れまいとする人生を持て余したバカ共だが…」
少し怒った様子でそう口にすると、神奈は少女の手を掴みソッと立たせた。不思議と簡単に立ち上がることが出来た。
「ちょっ…ちょっとその前にまだ質問よ!
さっき言ってたけど…普通は壁を透過するんでしょ?でもだったら、何であいつ等は壁に触れたのよ…」
「私がこの部屋と他の病室に"遮断結界"を張って置いたからだ。」
🐾49🐾
「…遮…断、結界…?」
「その名の通りさ、結界の中と外を遮断するタイプの結界だ…霊壁なんかでな。
一応"事象断層"も形成しておいたから…っと、ややこしいな…まぁ分かりやすく言えばだ。この部屋と外を遮断したから、外からはこの部屋を意識することは出来ない。」
理解できない。やはり何が何だかサッパリで、仮に理解できたところでそれを脳が実感できるとも思えない。
「…意識出来無いって…どれくらい?」
「菜恵が大声で叫んでいたのが、全く意識出来ないくらいだ。」
道理で、あれだけ叫んだのに誰も来ないわけだ。少女は少し冷静になった。
「今のところ"感知結界"には反応が無いから、多分大丈夫だろう…。
……!」
神奈は目を見開いた。
「…どうしたの?」
「…どうやら大丈夫では無いようだ。早速近くで反応だ!」
神奈はそう口にすると勢い良く外に飛び出した。廊下_
「何…!?」
少女はそれに続いた、少しふらつきそうになったが、それでも何とか駆け出せた。
暗い部屋から薄暗い廊下に出ると、神奈が辺りを見回していた。少女は再度尋ねる。
「どうしたの!?」
「近くにまだ居る!!」
《近く…》
すると隣部屋から気配を感じた。
🐾50🐾
病室のドアが開く音と共に、中から出てきた_
「あら、黒田さんどうかしたの?」
看護婦だった。
張り詰めた緊張感が解け少女は少し安堵した。しかし、何かが気掛かりだ…
「あ…えっと…」
「トイレに行くと答えるんだ。」
神奈のとっさの声に少女は驚いた、そして視線の隅に映る彼女に違和感を覚えた。確かにソコには神奈は居る、しかし気のせいだろうか…彼女からは…存在を感じられない。看護婦が問いかけてきた。
「…何かあるの?」
その問いかけには、まるで目の前の光景に気付いてないと言う意味が含まれている。そう、少女が顔を向けた先に神奈が居ると言うことに気づいていないのである。
「……?」
困惑する彼女に、神奈は淡々と答えた。
「遮断結界を自分に張った。だから私から声を掛けない限りは、他の者は気付かない。
それより、早くこの場を切り抜けたいのだが…」
神奈が言い切る前に少女は概ね理解し、看護婦に『トイレに行く』と告げた。
「…そっちの部屋も、個室トイレの電気付かないの?」
看護婦は不思議な事を呟いた。
「…電気…がどうしたって…?」
「うん、どうもこっちの部屋のトイレね…灯りが付かないのよ。」
🐾51🐾
「壊れてるのかしら、啓太君も公共トイレに行ったみたいだし…」
「…啓太君?」
大体予想は付いていたが、念の為誰の事か聞いてみた。
「この部屋の男の子よ。」
"紙だるま"をくれたあの小さな少年だ。それで納得がいった。
「でも変ね、あの子一人でトイレに行ったのかしら?昼間でも誰かに付いて貰わないと行けないくらい怖がってるのに…」
『!!』
二人の脳裏に、瞬間嫌な悪寒が走った。《まさか…!》そして次の瞬間、少女の右手首と首の辺りに看護婦が傷と痣を発見した直後。少女は走り出していた。
《…あの子が狙われてるッ!!》
「ちょっと黒田さん!?」
看護婦の少女を引き止める声は響く。しかし彼女は止まらない。
急がないと_
少年があの化け物に_!
少女は走った。
廊下の突き当たりまで来て、右に曲がる。
公共トイレはこの先_少年に意識と理性が残っていれば男性トイレに入っている筈である。
あと少し、しかしその時_突然少女の目の前がぐらついた。
《…なに…っ!?》
少女はその瞬間、壁に倒れ込む様にもたれ掛かる。目眩がする_視界も、気のせいか霞んできている。
《…病魔…》
その言葉が彼女の朦朧とする意識の中で響く。
🐾52🐾
「無理はするな。」
結界で気配を消していた神奈が声を上げ、後方五メートルから駆け寄ってくる。少女はグッと力を入れ、壁から離れる。
「…平気!…」
そう言うとよろめきながら立ち上がり、グッと力を込め先程以上にスピードを出して駆け出す。神奈もそれに続いた。
「…坊やッッ!!」
トイレに駆け込み真っ先に少女の目に映ったものは_
「……っ」
黒い影が少年の体にへばり付いて、一方の少年は窓から身を乗りだそうとしている。
「ッ!!」
少女は無意識のウチに駆けだしていた、もう何も考えず、感じず、ただ少年に_
「生きて!!」
声を上げて_少女が駆ける。
刹那、その黒い影は少年の体を捨てるかのように_そこから剥がれて今度は少女に飛び掛かってきた。
視界には迫り来る黒い影と、その背後には窓から落ちる寸前の少年の姿_
ここは三階…下はコンクリートの地面、落ちればまず助からない。
少女は力一杯歯を噛みしめて、覚悟を決め駆け出した。
「菜恵ッッ!!」
後ろから神奈の声が響く、振り向かず…ただ少年に向かい駆け出す。少年の手を取りに、全力で_
《キィッッ!!》
甲高い声とともに化け物が、少女に覆い被さってくる。重みは無い。
🐾53🐾
しかし違和感はある、コレは危険だ_
《体が…ッ!》
魂が今にも体から抜け落ちようとする、体の自由が効かない…今にも倒れそうだ。
目の前には少年の姿、窓から体が乗り出している…落ちていく_
《ダメッ……!!》
_そう強く念じたときだった、少女の体から化け物が剥がれ落ちて…或いは弾き飛ばされて空を舞う_
刹那、体に自由の戻った彼女はなりふり構わず駆け出す。もう少しで、少年に手が届く_
一方の化け物は空中で姿勢を立て直し、再び彼女に向き直る。化け物は狙っている、隙の出来た少女の背後を狙って…
「失せろ」
しかし振りかざされた木刀で、体を二つに切り裂かれる。空中で光を失う化け物の目には、闇の中…振りかざした木刀を握り締める鬼の様な目をした少女…神奈が映っていた。
『ガシッ』っと言う、物を掴む音が響く。少女の腕にはしっかりと、気を失った少年が掴まれていた。そして直後、神奈の腕もしっかりと少年を室内に引き込んでいた。
「…ハァ…ハァ…」
息を切らす少女には、この上ない安堵感と温もりのある表情が浮かんでいた。
_週末。降り積もっていた雪はすっかり溶けて暖かい日差しとなった。
🐾54🐾
少女の退院が決まった。とは言っても別の病院に移ると言う話だが…。
神奈はその日も、少女のもとを訪れていた_
_「調子はどうだ菜恵?」
「今は良いみたい、この先はどうなるか分かんないけど。」
この病院での最後の会話だ。意味深な話も、いつも通りの会話もした。
様々な会話を。
「あ…ねぇ、そう言えば結局あの化け物…何だったの?それにアンタは…」
ただ一つ、どうしても気掛かりな話を少女は聞いておきたかった。
「あれは"神霊"。
自然に宿る…まぁ、所謂精霊とか呼ばれてるヤツらだ。
もともとは人間を食べない大人しい連中だったんだがな。
ここ最近、自然が減ってきたせいで居所を無くして…食べるものが無いから、代わりに人間の"命"を食べているんだ。」
「自殺は彼らの仕業なの?」
「"自殺衝動"が起こるのは人間の自己防衛機能だよ。
"命"と一緒に"魂"、まぁ…精神を食べられない様にするために、体から魂を引き離そうとするんだ。
結果、"死"を選ぶ。肉体から魂を引き離す最も効率的な方法だ。
本人の意志に関係無く…"本能"に従ってな。」
🐾55🐾
概ね話の筋は理解できたが、少女にはまだ、幾らか引っかかる点があった。
しかし彼女は、結局その事を口にはしなかった。彼女の頭の中にソッと、締まっておく事にした。
「…あ、そうだ。メアド教えてよ、またアンタと話がしたいし。」
少女は笑みを浮かべる。一方神奈はキョトンとした様子で、
「…"メアド"………?」
と尋ね返してきた。
「……えっと…メールアドレスの事ね…」
少し詰まりながらそう口にした。こういう略語は使わないのか…少女はそう思った。
「ああ、そう言う意味か…。悪いが私は携帯電話は持って無いんだ。」
「え…そうなの?」
少女は更に言葉に詰まった。驚嘆する。
結局二人は、郵便番号と住所を互いに告げた。神奈の提案で手紙のやりとりをする事にしたのだ。
「手紙は奥が深い、コレほど素晴らしいモノは無いと私は思う。」
大した理由も言わずそう口にする、おそらく神奈にとっては手紙を交わす事には何か深い意味があるのか…それとも単に機械に弱いのか…少女は少し考えた。_
_「それじゃ、またね。」
病院の入り口で少女と別れを告げる事になった。
🐾56🐾
「ああ、元気でな。
病気になんか、負けるんじゃないぞ。」
神奈がニコリと微笑むと少女もニコリと笑みを返した。
「当然よ。」
その後少女は看護婦や医師達に一通り礼と別れを告げた。
そしてあの少年にも別れを告げた。
「…またね。」
看護婦の影に隠れながら少し照れくさそうに少年は呟いた。少女は自然と笑みがこぼれた。
「ええ、またね。」
そう言い少女は少年とも別れを告げ、皆が見送る中…病院を後にした。
そして神奈も一人、少女が遠くなるのをずっと見届けていた_
_それから二ヶ月後、一通の手紙が神奈のもとに届いていた。
…『手術が無事に済みました。気力で何とか乗り越えられ、お医者さんも大変喜んでいました。
今はリハビリ、リハビリ、の毎日ですが、直ぐに退院して普通に学校にも通う予定です。
一年遅れの高校一年生。沢山不安もありますが、でも根気強く生きていこうと思います。
天国の両親や弟の分まで活発に生き抜いてやる!
追伸
夏休みにまた、そっちの方に帰ります。
その時は宜しく😊
黒田 菜恵』
手紙の端には、綺麗な桜の花びらが一枚添えられていた。
ー🌙神霊幻想記🌙・完ー
ーあとがきー
読者の皆さん…こんにちは、こんばんは。
作者のバトー😁です。
なんやかんやで最後まで書ききることが出来ました。まさか五十スレ行くとは思いませんでしたから、書いた後でびっくりしましたよ。
もっと短く終わらせるつもりだったんですけどね。何でこんなダラダラしてしまったんだろう…反省💧
しかし、今回この作品を通して、改めて漫画と小説の違いに気付かされました。
途中(半分くらい)まで、試しに漫画をイメージして書いてはみたのですが…まんまと失敗しました。
やはり小説には小説にしか表現できないモノがあるなと思いました。漫画みたいな使い回しをすると…どうにもヘタクソな演出になる上に、スピードと質を殺してしまう。
以後、気をつけたいと思います。
ちなみに本作、漫画で描く予定で…一応簡単なプロットと設定資料は出来てるんです。ただ読み切りにすると設定が説明出来なくなっちゃうんですね。今回本作を読まれて、『あれ…この設定は保留か?』と思われた部分もあるでしょう。すみませんでした💧
また機会があれば連載に…。
とっとにかく最後までお付き合い頂いた読者様、ありがとうございました💧
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