幸せの景色

No.10 19/06/27 23:39
漣音 ( ♂ PFdSnb )
あ+あ-

2013年1月7日

僕の復職に向けて、病院から3つの条件が出された。
①不眠の解消
薬の服用がある状態で6時間以上連続した睡
眠時間が確保できていること。
②身体的症状の消失
過呼吸などの症状が消失していること。
③気力が戻ってきていること。

この3条件に対し睡眠時間だけクリア出来ずにいたが、僕は医師に嘘をついた。
「先生、大丈夫。オールクリアです」
「わかりました。ではお仕事については短時間から始めましょう。お薬も徐々に減らして様子を見て行きましょう」と医師は言った。

こうして僕は医師からの許可を得て復職することになった。詩織からは
「ゆっくりならし運転で仕事を再開してね」と何度も念押しされた。

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1月8日

9週間ぶりの出社だ。
僕は仕事に戻れることに嬉しさを感じると共に、職場の人々の僕に対する反応、仕事へのブランクから不安も感じていた。その為、前夜は薬を飲んでいるのに何度も目が覚めてしまっていた。

会社に着くと門の前で詩織が立っていた。
詩織はにこやかな笑顔で挨拶をした。
「おはようございます。」
僕もおどけて挨拶を返した。
「おはようございます!今日からお世話になります高木です。よろしくお願いします!」
詩織は続けて
「こちらへどうぞ」と微笑みながら返した。
詩織は僕の不安を察してくれていたのだろう。なんて茶番だ… なんて思いつつ、僕の不安は和らぎ、詩織の優しさに感謝した。

始業時間が過ぎると、まず社長に挨拶をした。
社長は僕を見ると開口一番
「おう!まぁ座れ」と手で社長室のソファを指し示した。こういう時の社長は決まって話が長くなるのだ。僕は覚悟を決めソファに腰掛けた。
「大丈夫か? 睡眠はとれているか? 無理はするなよ? 」から始まり、あとはいつものごとく社長の自慢話を永延と聞かせられた。結局、話し終わったのは1時間後だった。朝イチからちょっとうんざりもしたが、いつもと変わらない社長に僕はホッとするような嬉しさも感じた。

社長は本当に僕のことを心配し、期待して待っていてくれたのだ。
職場の人達も僕のことを温かく迎えてくれるのだろうか…。なぜ何も、誰も連絡してくれなかったのだろう…。

まだ少しの不安を抱えつつ、僕は仕事に戻ることにした。

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