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闇の中の天使

No.65 13/02/19 20:35
中谷月子 ( ♀ ezeSnb )
あ+あ-

≫64


放課後、教室を出る時にみんなは「ごきげんよう」と、言う。
明日は休みだからだ。
「ごきげんよう」と、私も返してから廊下に出ると、トイレに入った。

下着を下ろそうとした時に、急に上から冷たいものを浴びせられた。
何が起きたのか、分からなかった。
上を見上げると緑色のホースが見える。
ドアを開けようとしたが、開かない。
「やめてよ!やめて!」繰り返したが、ホースから出る水は止まることなく、私の全身に降り注いだ。

馬鹿みたい。
私は開き直った。
硫酸を浴びせられているわけでもない。ただの水に怯えることなどない。
私は便座に座ると、お好きなだけどうそとでも云わんばかりに水を浴び続けた。
五分…
十分…

水の音だけはするが、上から降ってくる水は止まった。
私は立ち上がると、ドアを開けた。
あんなに頑丈に押さえつけられていたドアは、いとも簡単に開いた。
誰もいない中、緑色のホースがまるで生きた蛇のように波打ちながら、大量の水を吐き出している。
私は蛇口に近付くと、きゅっと閉めた。
暴れていたホースは大人しくなって、静けさだけが残った。

「由香里さん!」
ずぶ濡れになった私を見て、矢島さんが驚いた顔を見せてから、すぐにトランクから毛布を出すと、私の体を包んで、後部シートに座らせた。「大丈夫ですか?」「ええ、大丈夫です」気丈に返事をしたものの、春風はまだ冷たく私の体から熱を奪っていた。恐怖心は無いが、寒さで私は震えていた。


「いったい、何が起きたのですか?」
暖かいミルクの入ったマグカップを私に手渡しながら、佐伯さんがソファーの私の隣に座った。
「ただ、水をかけられただけです」着替えて、新しい毛布に身をくるむと体がやっと温まり、落ち着いた私は佐伯さんにそう言った。
「これは、どういうことですか?」
テーブルには、ズタズタに切り裂かれた教科書とノートがあった。


あの後、私は蛇口を閉めてトイレから出て、教室に鞄を取りに戻った。
教室の私の机の上には、それらがあった。


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