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宇宙からの贈り物

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小説好きさん
20/12/17 22:15(更新日時)

 突如として辺り一面が真っ暗になった。群衆が騒ぎ出す。

「何が起こったんだ?」
「空が見えないぞ」
「日食か?」

 情報はまたたく間に広がり、次第に真相が明らかになっていった。たくさんのテレビ局のカメラとレポーターが大挙して押しかけてくる。

「みなさん、大変な事が起こりました。街をすっぽりと覆うほどの巨大な宇宙船と思われる物体が、突如として上空に出現したようです。直径でおおよそ十キロメートル程度はあるでしょうか。宇宙船に太陽の光を遮られた街には暗闇が広がっています。いま私たちは、この物体のちょうど端の方からレポートをしています。外側はいつもの見慣れた風景が広がっていますが、宇宙船の真下当たる部分には、太陽の光は届かず夜の世界が広がっています。はたして、高度な文明を持つ宇宙人が乗船しているのでしょうか。また、目的はなんなのでしょうか」

 直ちにこの国の大統領と大臣や政府高官が集まり、また国の優秀な科学者や天文学者、宇宙研究のスペシャリストらを招集し対策会議を始めた。

「これはいったいどういうことだ。このように巨大な宇宙船が近づいてきていたのに、宇宙望遠鏡での観測や、衛星、地上のレーダー網などで事前に察知できなかったのかね」
「分かりません。突如として出現したようです。もしかしたらワープ航法を使ったのかもしれません」
「ワープか。映画やアニメでよく聞く言葉だが、実際にそんな技術が存在するのかね」
「私たち人間の科学力では不可能とされていましたが、やはり実現する方法があったのかもしれません」
「興味深いが、一旦その話はおいておこう。問題は、何を目的としてこの船が地球へやってきたのか。また宇宙船の中に、実際に生命体が乗り込んでいるのかどうかだ」
「現在、様々な言語での挨拶や信号を宇宙船に向けて発信していますが、反応はないようです」
「エックス線や超音波、赤外線などで中の様子は分からないのか」
「いろいろと試みているのですが、どうも宇宙船全体を覆う目に見えないシールドのようなものがあり調査を邪魔しているようで、一切の情報が遮断されています」
「ううむ。仕方がない。まず、宇宙船が覆っている地域及び、宇宙船の中心から半径五十キロメートルの住人全員に避難指示を出し、もしもの場合に備えて軍隊を待機させろ。友好的なのか、敵対的なのか分からないうちは、こうするしか方法がない。

No.3200676 20/12/17 22:12(スレ作成日時)

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No.1 20/12/17 22:13
小説好きさん0 

 この国の軍隊だけでなく、世界各国からも応援の部隊や専門家たちが続々と集結した。
 さまざまな方法で、この宇宙船とのコンタクトを試み、また内部の調査を行おうとしたが、状況は一向に前に進まなかった。
 宇宙船はあいかわらず上空に浮かんだまま静止していた。
「どうしたものか。このままでは埒があかない。目的が分からない限りはこちらから攻撃することもできないわけだし、仮に攻撃したとしても、あのような圧倒的な科学力を見せつけられていては、こちらに勝ち目は無いだろう」
 そのまま膠着状態が続いていたが、ひと月ほどすると、その宇宙船から、大音量でなにかが流れ始めた。

「わたしたちは、遠い惑星からやってきました。はじめまして。ここに到着してから、しばらくの間、あなたたちの言語を解析するのに時間がかかってしまいましたが、だいたいのことを理解することが出来るようになりました。わたしたちは、友好的な目的でやってきました」

 数種類の言語で同じようなことをわれわれに伝えてくれた。中には動物の鳴き声のようなものも混ざっていた。動物たちへもメッセージを送るとは、なんとも粋なはからいではないか。ややたどたどしくはあったが、はっきりと地球の言語を理解していることは確認できた。地球からも、歓迎の意を伝える。

No.2 20/12/17 22:14
小説好きさん0 

「遠くからようこそいらっしゃいました。わたしたちは、この星を地球とよんでいます。あなた方ほどの高度な文明は持ち合わせていませんが、ぜひ、今後、星同士での文化や技術、資源の交流などができれば嬉しく思います」

 しばらく時間が経った後、このような返事が返ってきた。

「この惑星で何らかの生命活動をしている生物が存在するシグナルを発見し、わたしたちはやってきました。生命活動に危機が迫っているのではないかとも推測してやってきましたが、いまだ、たくさんの生命があふれており感動しています。ぜひ、みなさんに直接お会いしたいのですが、残念ながら、わたしたちの身体は、地球の環境には適応できそうにありません。そのため、こうやって音声のみでのコミュニケーションでご容赦ください」

 世界中の人たちが、この世紀の瞬間に湧き上がった。また、さまざまな動物たちが、一様に興奮していた。人間だけではなく、動物にまでこのキセキの出来事が伝わっているのだろうか。

 必ずどこかに存在すると信じられていた地球外生命体、宇宙人。地球からはさまざまな方法で、地球外の惑星の探査を繰り返していたが、地球の科学力では、太陽系以外の恒星系にたどり着くことは出来ていなかった。それが向こう側から地球を見つけ、わざわざやってきてくれたのだ。
 しかも友好的な関係を築きたいとも言っており、これを機に、地球の文明が加速度的に進化することへの期待感もに溢れていた。

「せっかくいらしていただいたので、何か地球の特産品や、地球ならではのものをお贈りしたいと思います。世界各国から取り寄せますので、少しお待ちいただけますか」

「ここに到着してから、この星のことをくまなく調べさせてもらいましたが、概ね想像通りでした。ほとんどのものはわたしたちの星に存在するようです。しかしながら、わたしたちは、この星をより良くするためにもっともふさわしいと考えた贈り物を準備してきています。それをあなたたちにプレゼントさせていただきます。これで、地球がもっと住みよい星になるでしょうし、そうなれば、わたしたちもやってきたかいがあります」

No.3 20/12/17 22:14
小説好きさん0 

 それを聞いて、地球の人々は沸きに沸いた。地球外の高度な文明を持つ星からの贈り物とはなんだろうか。わからないが、その贈り物を分析することによって、地球の科学力はさらに向上するだろう。いつの日か、地球人たちも、地球外の惑星へ出かけることができるようになるのではないか。そんな夢のような話に世界中の人々が胸を踊らせていた。
 朝や昼のワイドショウでは、そんな話題で盛り上がっていたし、各国政府も、地球外の惑星の生命体と友好的な交流が実現出来ることとなり、安堵するとともに、未来への期待感をよりいっそう膨らませていた。

 しばらくすると数え切れないぐらい多くの巨大なコンテナが宇宙船から降ろされはじめた。
「何が入っているんだろう。食べ物かな。高度な技術力で作られた何かの機械かな」
 それらは世界中のテレビで生放送されており、ひとびとは固唾を呑んで見守った。
「どうぞ受け取ってください」

 そう言うやいなや、コンテナは続々と開き始め、無数の触手を持った、巨大で、目を覆わんばかりの不気味さの虫のようなものがうじゃうじゃと現れた。
 そして、その虫のようなものは、次々と人間を捕食し始めた。
 虫たちは、人間を食べれば食べる程大きくなり、またすぐに産卵し、数を増やしていった。

 油断していた人類は、一度引き上げさせていた軍隊を再度集結し、その虫のようなものへ攻撃を加えたが、どのような攻撃も何ら効果を発揮することは出来ず、地球の人々は、逃げ惑うばかりとなった。
 虫たちはその勢いで、世界各地へ広がり、同じように人間を捕食し続けた。

「うん、いいじゃないか。この星には害獣が存在し、多くの生命を危険に晒すどころか、この星自体の寿命も縮めていたようだった。実際に訪れてみて、現状を調査するとまさにその通りだったというわけだ。わたしたちが放った害獣駆除用に研究開発した虫によって、人間とかいう害獣が駆逐されれば、この星は、改めて生命に溢れた楽園に生まれ変わるだろう。この星の人びとも喜んでくれるだろう」

 人間はほとんど絶滅危惧種扱いとなり、地球に存在する人間以外の生命体は、この異星からやってきた宇宙船に感謝の念を送った。そして、その後長い繁栄の時代を迎えることとなる。

No.4 20/12/17 22:15
小説好きさん0 

ショートショートSFでした。〜おしまい〜

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