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お題リレー短編小説PART2

No.131 12/07/13 23:44
秋扇公主 ( aVaWh )
あ+あ-

≫130

【女の武器】
「羅(ルオ)家が……お嬢様との婚約破棄を申し入れて来ました!」
「何だと?」
お父様が長椅子から飛び上がる音に、お母様の甲高い声が続く。
「どういうこと?あの子に一体どんな落ち度があるというの?」

庭の池に白い菱の花がポツポツ咲き始めた、あの夏の日。
十五の誕生日を迎えたばかりの私は、お父様旧知の羅家から婚約を破棄された。

宣統帝が退位されて民国の世となり、官位を失った我が鄭(ジョン)家が傾いたこと、
相手の羅家にしても恐らくは同様だったこと等々、今、思い返すと、理由は色々考えられる。

だが、経緯はどうであれ、私は許婚者とは一度も顔を合わせないまま、「不要な女」と告げられたのだ。

「どうして…」

池に咲く菱は、雪の欠片の様に白く透き通って見えた。

その年は、異様に冬が早く来たのを覚えている。
そして、北平(ベイピン)の凍てつく様な寒さと感冒は、心身共に弱っていた両親と、私の育った家そのものを奪っていった。

※※※※※

「菱姐(リンジエ)、どうもありがとうございます」

質屋から買い戻した耳飾りを確かめると、後輩二人は頭を下げた。

「いいのよ、このくらい」

あまりにも畏まった二人の姿に、昔、家に居た女中たちを思い出し、私は何とはなしに苦笑いする。

「そんな安物、私にはどうってことないわ」

全てを失って上海に流れ着いた私は、元は女中や百姓をしていた様な娘たちに混ざって、舞女(ダンサー)をしている。

「誇り高い鄭家の娘が!」

お父様お母様は墓の中でそう嘆くかもしれない。

だが、男でない私には、もう自分の「女」を武器にするより他に、生きる術がないのだ。

次は【プライド】

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