注目の話題: 離婚の申し出、無視出来る？; まだ若いのにおばあちゃんと言われた; 中2娘反抗期、愚痴です。しんどい

お題リレー短編小説PART2

No.114　12/06/03 01:55
秋扇公主 ( aVaWh ) あ+あ-

【良き時代】
カフェに一人で入ってきた私の姿に気付くと、女は火を点けたばかりの煙草を灰皿に置いた。

「蔡(ツァイ)……微塋(ウェイイン)さんですか」

私は震える声で問い掛けた。

「私、劉莉(リウ・リー)……」

言い終える前に、相手が答えた。

「あんたが小莉(シャオリー)ね」

そして、女は近くに立つ男たちに告げた。

「人払いしてちょうだい」

「しかし、姐さん」

「大丈夫よ」

女の目は男たちよりむしろ私に告げる様に微笑んだ。

「さ、座って」

※※※※※※

「……兄は、上海でどんな風に暮らしてたんでしょうか」

まだ熱過ぎる紅茶を一口飲み干すと、私は早速本題に切り込む。

「偉哥(ウェイ兄さん)は素敵な人よ」

女の声は、穏やかだが反論を許さない響きがあった。

「優しくて、男前で、あたしたち、皆、憧れた」

“あたしたち”とは、一体、誰なのだろう。

「偉哥にとっては皆、小さい妹だったけどね」

女はどこか寂しく笑うと、砂糖一匙入れずにコーヒーに口を付けた。

「花様年華(いい時代)だったわ」

女はそう呟くと、“花様的年華(ホアヤンダニエンホア)”と、一節だけ口ずさんでみせた。

「昔、流行った歌よ。知ってる？」

黙っている私を見据えたまま、女は新たに取り出した煙草に火を点けた。

「あんたが聞きたいのは、それだけかしら？」

次は【質問】

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