ちむにーの冒険
クラッカーとコーンポタージュを食べてソファでゲームをしていたら、もう夜の九時になっていました。いつもなら八時にはお母さんが帰って来ます。しばらくゲームに夢中になっていたちむにーは、時計を見て急に心配になりました。LINEも来ていないので、これはいよいよ変だと思い、ちむにーはリビングルームをぐるぐる歩き回ったあと、電話をかけることにしました。しばらく待っていると、突然誰かの叫び声が聞こえました。それはお母さんの声でした。ちむにー来ちゃだめ!何度も叫んでいましたが途中で電話が切れてしまいました。ちむにーはあまりの衝撃に呆然としていましたが、これはいよいよ大変なことになったと思いました。お母さんが危ない!こういう時に何をしたら良いのか、まだ幼いチムニーにとってそれは大きな試練でした。スマホから110番して警察に連絡をしました。
「はいこちら○○○警察です」
ちむにーは必死に説明をしましたが、警察側はイタズラ電話だと思ったらしく、途中からちむにーを舐めてかかりました。ちむにーは今にも泣きそうになりながら、何とか状況を伝えようとしましたが、警察官はついに大声をあげて笑いました。そしてイタズラを止めるようにと告げると電話を切られてしまいました。
ちむにーはわっと泣き出しその場で崩れてしまいました。早くお母さんを助けないといけない。しかし幼いこの無力なちむにーに一体何が出来るというのでしょうか。すると突然辺りが明るくなり、チムニーの目の前にお母さんが男達に捕まっている光景が一瞬、見えました。ちむにーはその場所をよく知っています。それは近所のスーパーの駐車場でした。ちむにーは立ち上がると、自分の中から不思議な力が湧いてくるのを感じました。目を閉じて、意識を集中。
それから目を開けると、ちむにーはスーパーの入り口にいました。驚いている暇はありません。ちむにーは現場に急行しました。
タグ
>> 1
それは最早お母さんではありませんでした。お母さんではない何か、つまりデーモンの罠でした。本当のお母さんはどこにいるのだ!ちむにーが叫ぶとデーモンは笑いました。
「オマエニハハオヤハ、サイショカライナイ」
ちむにーはデーモンに接近し過ぎたこともあってその魔力に引きずられていきました。それは物凄い吸引力で、あっという間に胸の中の希望という光が失われていくのを感じました。私に母親はいないって?ちむにーの記憶が走馬灯のようにフラッシュバックしていきました。
母親はいつも仕事で忙しい。私はほとんど全ての時間を家で一人で過ごしてきた。お母さんはたまに帰ってきて、机にカバンやネックレスを放り投げる。あんたまだいたの?彼女は毎回そうやって私に声をかけた。たまに知らない男を連れてくることもあった。私は物心ついた頃から父親の存在を知らなかった。家にいるのは母親と私と知らない男だけ。母親はいつも食べ物を机に置いてどこかへ消えてしまう。夜になると再び知らない男を連れて帰ってくる。入れ替わり立ち替わり現れる知らない男達は、私を必要以上に撫でまわしてきた。毎日その繰り返し。父親のいない私にとって母親が全てだった。母親がいなければ、私はどうやって生きていけばいいのだろうか。
ダルメール・シアンがちむにーを間一髪で救い出しました。デーモンはちむにーの絶望の記憶を呼び覚まし、その力を増幅させることに成功したようでした。スーパーの駐車場は悪魔の巣窟のような雰囲気と化しました。
「ちむにーよ、あのデーモンを滅ぼすことは、貴方の記憶を滅ぼすことになります。貴方自身を救うことになるのです」
ちむにーは迷っていました。デーモンはお母さんと一体化しているから、滅ぼせばお母さんも滅ぶのです。そうなれば、ちむにーには母親という存在がいなくなってしまう。それはとても寂しいことだと、ちむにーは思いました。
力を蓄えたデーモンは、大量のヘドロを生み出し、一人の美しい青年を作り上げました。青年はちむにーの名前を何度も優しく呼びました。
「ちむにー、ぼくだよ。君の父親さ」
ちむにーはその美しい青年こそがまさに自分の父親だとわかりました。なぜなら顔がそっくりだったからです。
「ちむにー、ぼくだよ。遊び人で女を取っ替え引っ換えしていたのは。何も出来ないただのヒモさ。君のお母さんに飼われて、裏切られたのさ」
スーパーはもう閉店していますから、鍵はかかっているし、中は真っ暗なのですが、何故かちむにーはすり抜けることが出来ました。自身に突然芽生えた不思議な能力を実感しながら、ちむにーは階段を駆け上がり、あっという間に屋上の駐車場に着きました。
広い駐車場の真ん中に黒いバンが一台、止まっています。ちむにーはその車から発せられる恐ろしいオーラに一瞬めまいがしました。しかしあそこにお母さんがいる!という確信がありました。
ちむにーは再び目を閉じて意識を集中しました。それから目を開けると、体全体にマジカルきゅあちゃんのバスタープリンセスの格好になっていることに気づきました。それに相棒の子犬、マックスフンドーもいます。ちむにーはミラクルステッキを構え、バスターエマージェンシーモードになりました。するとマックスフンドーがミラクルステッキの中へ吸い込まれていきました。これはアニメでマジカルきゅあちゃんが悪を滅ぼす時に使う最上級奥義です。ちむにーは興奮と緊張も驚きと感動の混ざった気持ちで、必殺技を叫びました。
「悪よ滅べ!堪忍せよ!マジカルミラクルサンシャイン!いけっ、マックスフンドー!」
すると七色のまばゆい光が出現し、黒いバンを覆い尽くしました。禍々しい悲鳴が聞こえたかと思うと、バンの中から石油のような黒いヘドロが溢れ出しました。それからバンはその姿をデーモンに変えました。そして何とデーモンの肉体の中に、お母さんが埋め込まれていたのです。お母さんは辛うじて顔だけが見えています。そして再び叫びました。来ちゃ駄目って言ったでしょ!何で来たの!?
ちむにーはお母さん、今助けるからね!と言い、次の技を打つ為に呪文を唱えました。
「光の戦士あるてぃめいたむ降臨せよ!」
するとマックスフンドーの姿が大きな獣戦士ダルメール・シアンに変わりました。その瞬間、ダルメール・シアンの素早い一撃がデーモンの首を切り落としました。デーモンの首から勢い良く溢れ出る黒い液体が駐車場全体に黒い雨となって降り注ぎました。
ちむにーはお母さんの目の前に瞬間移動して、救出しようと試みました。しかしお母さんの肉体は既にデーモンに溶け込んでおり、引き剥がすことは困難でした。
突然、お母さんの両目が真っ黒になりました。それから口を大きく開けて笑い始めました。
「オマエノハハオヤハ、ココニハイナイ」
- << 2 それは最早お母さんではありませんでした。お母さんではない何か、つまりデーモンの罠でした。本当のお母さんはどこにいるのだ!ちむにーが叫ぶとデーモンは笑いました。 「オマエニハハオヤハ、サイショカライナイ」 ちむにーはデーモンに接近し過ぎたこともあってその魔力に引きずられていきました。それは物凄い吸引力で、あっという間に胸の中の希望という光が失われていくのを感じました。私に母親はいないって?ちむにーの記憶が走馬灯のようにフラッシュバックしていきました。 母親はいつも仕事で忙しい。私はほとんど全ての時間を家で一人で過ごしてきた。お母さんはたまに帰ってきて、机にカバンやネックレスを放り投げる。あんたまだいたの?彼女は毎回そうやって私に声をかけた。たまに知らない男を連れてくることもあった。私は物心ついた頃から父親の存在を知らなかった。家にいるのは母親と私と知らない男だけ。母親はいつも食べ物を机に置いてどこかへ消えてしまう。夜になると再び知らない男を連れて帰ってくる。入れ替わり立ち替わり現れる知らない男達は、私を必要以上に撫でまわしてきた。毎日その繰り返し。父親のいない私にとって母親が全てだった。母親がいなければ、私はどうやって生きていけばいいのだろうか。 ダルメール・シアンがちむにーを間一髪で救い出しました。デーモンはちむにーの絶望の記憶を呼び覚まし、その力を増幅させることに成功したようでした。スーパーの駐車場は悪魔の巣窟のような雰囲気と化しました。 「ちむにーよ、あのデーモンを滅ぼすことは、貴方の記憶を滅ぼすことになります。貴方自身を救うことになるのです」 ちむにーは迷っていました。デーモンはお母さんと一体化しているから、滅ぼせばお母さんも滅ぶのです。そうなれば、ちむにーには母親という存在がいなくなってしまう。それはとても寂しいことだと、ちむにーは思いました。 力を蓄えたデーモンは、大量のヘドロを生み出し、一人の美しい青年を作り上げました。青年はちむにーの名前を何度も優しく呼びました。 「ちむにー、ぼくだよ。君の父親さ」 ちむにーはその美しい青年こそがまさに自分の父親だとわかりました。なぜなら顔がそっくりだったからです。 「ちむにー、ぼくだよ。遊び人で女を取っ替え引っ換えしていたのは。何も出来ないただのヒモさ。君のお母さんに飼われて、裏切られたのさ」
お知らせ
小説・エッセイ掲示板のスレ一覧
ウェブ小説家デビューをしてみませんか? 私小説やエッセイから、本格派の小説など、自分の作品をミクルで公開してみよう。※時に未完で終わってしまうことはありますが、読者のためにも、できる限り完結させるようにしましょう。
- レス新
- 人気
- スレ新
- レス少
- 閲覧専用のスレを見る
-
-
みんなの出来事
0レス 52HIT 小説好きさん (40代 ♂) -
光あたるところと闇と…
0レス 97HIT 匿名さん -
秋の神様
6レス 122HIT たかさき (60代 ♂) -
猫温泉
3レス 77HIT たかさき (60代 ♂) -
「狂気!!コックさんのデス・クッキング」 しばらく休載です
0レス 115HIT コック
-
真夏の海のアバンチュール〜ひと夏の経験
梨乃は披露宴が終わったら私と一緒に原宿の竹下通りや表参道で洋服を見ると…(流行作家さん0)
344レス 1366HIT 流行作家さん -
幻世
真琴は狭い路地に立ち尽くした。大輝が去った後に自分の両足をぼんやり見つ…(通りすがりさん0)
10レス 424HIT 通りすがりさん -
秋の神様
皆さん、お稲荷さまからおいしいごちそういただき楽しい秋祭りするための準…(たかさき)
6レス 122HIT たかさき (60代 ♂) -
20世紀少年
中学 1973年 昭和48年4月 中学に入学 中学は小学校…(コラムニストさん0)
120レス 2624HIT コラムニストさん -
神社仏閣珍道中・改
(岩室観音堂 続き) こちらのお堂の二階にある御内陣のひだりてに…(旅人さん0)
191レス 11233HIT 旅人さん
-
-
-
閲覧専用
where did our summer go?
500レス 1715HIT 作家さん -
閲覧専用
20世紀少年
2レス 214HIT コラムニストさん -
閲覧専用
モーニングアフター モーリンマクガバン
500レス 3482HIT 作家さん -
閲覧専用
フーリーヘイド ~読む前の注意書きと自己紹介~
500レス 5991HIT saizou_2nd (40代 ♂) -
閲覧専用
おとといきやがれ
9レス 365HIT 関柚衣
-
閲覧専用
where did our summer go?
そして、例様がケニーロジャーズのLady を歌う 聖子とミスター…(作家さん0)
500レス 1715HIT 作家さん -
閲覧専用
モーニングアフター モーリンマクガバン
お昼ご飯のお刺身を食べ終わり私はレンタカーで例様を社員寮へと送る …(作家さん0)
500レス 3482HIT 作家さん -
閲覧専用
20世紀少年
1961 生まれは 東京葛飾 駅でいうと金町 親父が働いて…(コラムニストさん0)
2レス 214HIT コラムニストさん -
閲覧専用
ウーマンニーズラブ
聖子の旦那が有能な家政婦さんを雇ったおかげで聖子不在だった機能不全の家…(作家さん0)
500レス 3455HIT 作家さん -
閲覧専用
フーリーヘイド ~読む前の注意書きと自己紹介~
やはり女性は私に気が付いている様である。 とりあえず今は、 …(saizou_2nd)
500レス 5991HIT saizou_2nd (40代 ♂)
-
閲覧専用
新着のミクルラジオ一覧
サブ掲示板
注目の話題
-
5日寝なかったら5億円あなたはやりますか
5日寝なかったら5億円貰えます。 もし寝てしまったら100万円払う事になり チャレンジ終了です。…
16レス 324HIT おしゃべり好きさん -
きつい指摘をした側が泣く。この心理わかる方いませんか?
厳しいことを言ったり、キツイ指摘をした側が泣く。この気持ちわかる方いますか? 職場にて、男…
12レス 224HIT 通りすがりさん -
離婚後の面会交流を父親が拒否する
現在離婚前提の別居中で、別居期間は1年と少しです。 夫婦間の子どもはひとりで娘5歳は私とふたりで暮…
10レス 238HIT 通りすがりさん (30代 女性 ) -
兄が豹変してしまって兄が怖い、自分の居場所が無いと感じる
自分含めてきょうだいは三人とも三十代です。 兄が二人いるのですが、下の兄が少しミスをしただけなのに…
14レス 226HIT 教えてほしいさん (30代 女性 ) -
彼女にいうことを聞かすには
私は19歳で彼女は22歳です。私が年下ということもあり彼女に主導権があります。そのことを友達に話した…
20レス 336HIT 恋愛好きさん (10代 男性 ) -
真夏の海のアバンチュール〜ひと夏の経験
昔の沖縄ふたり旅をベースに創作を加えてまた書いてみたくなりました。いとこは私と同い年で梨乃。おひつじ…
344レス 1366HIT 流行作家さん - もっと見る