幻世

レス11 HIT数 477 あ+ あ-


2025/09/27 21:39(更新日時)

下書きもなし
ストーリーも即席ですので、わけわからん展開になるかもしれません。よろしくお願いします。

No.4358797 (スレ作成日時)

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No.1

痒くなった頭皮を指を立てて掻きむしる。
「ガタンガタン…ガタンガタン…」
高架下は通り過ぎる電車の打撃音に包まれていた。
黒ずんだ爪を頭から顎に移し、伸びた無精髭をジョリジョリと擦る。
(風呂に入ったのはいつだっけな…)

No.2

「どうしろっての…」
おもむろにギターを抱えると、雑に"みかん"と書かれた空き缶を歩道の隅に置いた。

左の指は爪が綺麗に切ってある。なぜなら弦を押さえる時に指板に食い込んで傷つけてしまうのを防止する為だ。なにより爪が伸びていると正確に弦を押さえ込めない。

「ポローン…」
Gコードを鳴らす。

No.3

コードを分離させるように指で弾き、小さく呟くように唄った。

生ぬるい風に生ゴミの臭いが混ざり出す。

「ガチャ…バタン!」
ラーメン屋の裏口から汗を拭いながら店主が出てきた。
弾いていた弦の振動を右の掌で止めて店主を見つめた。

「シュボッ」
100円ライターの音がして店主は煙草に火をつけた。

「ふぅー」

「またあんたか…あんたが裏手に居ると客がひっきりなしなんだよ…座敷童か何かか?」

煙草の煙を黄色い夜空に吐き出すと店主は笑いながら話し掛けてきた。

No.4

小汚い身なりのホームレスが、飲食店の裏手に居座っていたら厄介払いされそうなものだが、この店主は違ったようだ。
「いや今日は捌いたなぁ…」
肩をグルグルと回しながら言った。その肩から白い湯気のような靄が出ている。

「あんた見るのは3度目かな、俺は大輝って名だ。あんた名前は?」

店主はホームレスに名を聞いた。

No.5

「…真琴…です」
男なのに中性的な名前。まだ誠や真で"まこと"にするのならば自然なのにと何度、思い返しただろうか。呪いのように親から一方的に押し付けられる名前が一生続くことに嫌気がさしていた。

「まことね…」
ホームレスに名前を尋ねるとは変わっている。
「そうだ!余りものの唐揚げがあるんだ、ちょっと待ってな。腹減ってるだろ」
そう言うと大輝は煙草を灰皿に押し付けた。

No.6

「代金は要らねぇよ」
厨房から戻ってきた大輝は唐揚げが3個入った透明な容器を真琴に差し出す。
「ごくり…」
唾を飲み、受け取る。
「あ…ありがとうございます」
スパイスとニンニクの香りが食欲をそそる。真琴は我慢できずにかぶりついた。
溢れる肉汁が口の中に広がる。

「うまい…」

「唐揚げは肉汁を逃さないように揚げるのがコツよ。うめーだろ」
なんだか楽しそうに、嬉しそうに大輝は言った。

No.7

「あんたあれか?なんでこんな若者がホームレスなんてやってるんだい?」

唐揚げを口いっぱいに含んでいて返答できないでいる真琴の顔を大輝は下から覗き込んだ。パーマをかけたような前髪が顔の半分を隠している。

「おいおい…よく見るとイケメンじゃないか!」
「え…」真琴は不思議な返答を続けた。

「他に何が見えます?特に肩とか、足は?」
「肩?足?なに言ってんだ?」

キョトンと目を見開いて大輝は真琴の肩と足を見つめる。

No.8

「肩?まぁ…普通か…広くてたくましいとは言えねぇな。足は…サンダル?」

「……」
少し落胆したように真琴は俯いた。

「あぁ…まぁ元気だしてな!」
何か噛み合わない雰囲気を察したのか大輝は自分の頭を掻いた。

真琴は上目遣いで何かを恐れるかのように尋ねた。
「もし…大輝さんの肩と足から"白い靄"が出ていて、その靄の行先が地面だとしたら信じますか?」


「は?…何言ってんだ?…」
大輝は眉をひそめる。

No.9

「人間から靄が出る?運動した後に湯気が身体から昇るだろ…それかい?」
大輝は引き攣ったような表情を浮かべる。

「…なんでもないです。忘れて下さい」

「唐揚げ…とてもおいしかったです…ありがとうございました」
真琴は俯き深々とお辞儀をした。

「あ…あぁ…店も閉めた後で残り物だったから気にしないでくれ…じゃあな」
大輝はそう言って真琴に手を振る。

No.10

真琴は狭い路地に立ち尽くした。大輝が去った後に自分の両足をぼんやり見つめる。

「ジリ…」サンダルで地面を擦る。

ドブネズミが暗闇に紛れて通り過ぎた。

靄が見える他人と見えない他人が存在する。自分自身の靄は見えない。そして今のところ白、灰色、黒の三種の色を確認している。その靄が何を意味しているのか分からないし、精神障害で幻覚でも見えているのかもしれない。

大輝の靄の色は白に近い灰色であった。

No.11

この得体の知れない"靄"の詳細を誰かに説明しても共感を得る事は皆無だった。頭のネジが飛んでいる奴の戯言と思われるのがオチなのだ。
真琴はダンボールが敷いてある今日の寝床に座り込む。見上げたビルの隙間には真っ黒な空が貼り付いていた。
「月がねぇな…」

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