注目の話題
🍀語りあかそうの里🍀1️⃣0️⃣
突然連絡がつかなくなった彼
彼氏と分かり合えない。納得できない

お題リレー短編小説PART2

レス214 HIT数 26434 あ+ あ-

秋扇公主( aVaWh )
23/01/27 08:44(更新日時)

前スレに参加させていただき、とても楽しかったので、
パート2を立ててみました。

ルールは前と同じで、前の人が出したお題で短編(詩・俳句・エッセイ等ジャンルは何でも可)を書き、
レスの最後に次の人へのお題を出しましょう。

次のお題は出来る限り、自分の書いた話に即したものにして下さい。

また、1つのお題につき1レスで完結させるのが原則です。

それでは、最初のお題は「イメージキャラクター」です。

No.1620392 11/06/24 14:11(スレ作成日時)

投稿順
新着順
主のみ
付箋

No.1 11/06/24 21:52
@紋次郎@ ( 30代 ♂ BGhZh )

【イメージキャラクター】


ギラギラと照りつけるのは真夏の太陽ではなく小学2年生の君の瞳..

コンビニの『夏の納涼』をイメージしたCM作製..

先方の意向で子供を中心とした涼しげなものを作りたいらしい..

私はそのイメージに合ったキャラクターの子役を募集し書類選考を通過した者を面接している..

こいつで17人目..私としては涼しげな子を探しているのだが..
この..目付きのギラギラした子供達は一体何なんだ..
これが小学生の瞳なのかと愕然としている..

顔は笑っているが眼は笑っていない..時折、上目遣いにこちらの顔色を伺っているのが痛い..

母親も目一杯のお洒落をしているようだ..胸元が大きく開いたピンクのブラウスに白の奇抜なミニスカート..

お昼に廊下ですれ違い『おはようございます!!』と元気よく挨拶され業界人と勘違いしたが..この子の母親だったのか..

面接の終わりを告げたがまだ母親は必死に娘を売り込んでやめようとしない..他の面接者も苦笑した今度は娘に耳打ちしている..

娘が突然立ち上がりヒップホップを踊り始めた..相変わらずギラギラした目付きで私を見ている..

今までに似たような親子を限りなく見てきてはいるが..この親子は鬼気迫る勢いがある..

『合格』の言葉を貰うまでは踊り続けるのではあるまいか..

このような親子が特に危ない..何をしでかすかわからない恐さがある..

私は『合格』の言葉が今にも喉元から出そうなのを必死で堪えている..


【言葉】

No.2 11/06/25 13:18
ウッカリ八兵衛 ( VYlai )

>> 1 言葉

「マコト、橋渡ったらあと1キロほどだ。頑張れ!」

「ハア・・・・」

「ハア・・・・」

マコトは息が上がってしまって、返事をしようにも言葉が出ない。そんなマコトを、タケシは併走しながら励ます。

市立南中学校名物の夏マラソン、通称「地獄マラソン」。30数年前に始まったこの悪夢のような行事は、毎年7月の第1週に3年生全員で行われる。距離は、およそ10キロ。

マコトのように、運動オンチでぽっちゃり体型の人間には、まさに「地獄」である。

そんなマコトを気遣って、タケシはマコトとの併走を決めていた。タケシは野球部員でそれなりに鍛えられている。単独で走れば、上位入賞は間違い無い。

しかし、順位度外視で今マコトの隣を走っている。

今日は特に暑い。気温は35℃。直射日光を浴びれば体感気温は40℃をゆうに超える。

マコトの目は、汗と涙でほとんど開いていない。そんなマコトを、誘導するようにタケシは走る。依然として、2人は併走を保つ。

太陽は、2人に容赦なく光と熱を浴びせ続けた。その友情を、確かめてやると言わんばかりに・・



次は「暑い」でお願いします。

No.3 11/06/27 08:10
久遠流水 ( WxiBh )

『暑い』

最近、気温の上昇にともない、隣の住人がうるさい。

古臭いアパートだから、隣の物音は結構筒抜けだが、それでも--、

「暑い!」

と若い女性の声となれば、独身男の当方としては、平静ではいられないのである。

ウ~ンきっと美人なんだろう、ウン美人だといいなぁ。

毎晩隣家の住人を想像し、いつの間にか寝ているのが日課になっていた。

しかし、誰もその住人を知らない。

昔から住んでいる、一階の老人でさえ知らないと言う……。

それどころか、その話題になると怒り出す。

「暑い!」

今晩も聞こえる。それに部屋がやけに明るい。

体が何故か動かない、頬に何かが触れた。

「熱いっ!」

全身燃え盛る女が、覆いかぶさっていた。

朝目覚めると、全身火傷で入院していた……。

アパートは全焼、間一髪救助されたらしい。

一体何だったんだろう……?

お題『悲鳴』w

No.4 11/06/27 13:36
ウッカリ八兵衛 ( VYlai )

>> 3 悲鳴

「いやあ、嬉しい悲鳴とは、まさにこの事ですな、がはははは!」

高柳隆一は、豪放に笑いながら話す。

高柳は中小飲料メーカー「高柳飲料」の社長だ。10年前父から事業を受け継ぎ細々と操業していたが、「このままではジリ貧」と一念発起。新製品の開発に力を注ぐ。

そのうち、開発した製品の一つ「納豆ドリンク」がまさかの大ヒット。注文は殺到し、小さな工場は24時間フル回転で操業する。それでも、生産は追いつかなかった。

高柳は新工場を建てるべく、銀行に融資を依頼。銀行側はほぼ希望通りの額の融資を決めた。その、交渉の席での発言が、冒頭の言葉である。

高柳の胸中は、野望に満ちていた。「これで、我が社も一流企業へ仲間入りだ・・」

しかし、物事は上手い事ばかりには進まない。無理な生産体制は、当然現場に相当な負担を強いる。機器の故障や疲労による体調不良が相次ぎ、従業員の間に不満は募る一方である。

得意の絶頂にある高柳は、不満のくすぶりに気がつかなかった。その事はやがて、取り返しのつかぬ事態を巻き起こし、高柳に本当の意味での「悲鳴」をあげさせる事になる・・



次は「得意」でお願いします。

No.5 11/07/01 21:50
@紋次郎@ ( 30代 ♂ BGhZh )

>> 4 【得意】

「どんなもんだい」

あなたはいつも得意気に話してくれる..

仕事の事..兄弟の事..趣味の事や将来の事も..

私はただ静かに話を聴いている..それだけで十分だった..

学生生活最後の夏..仲良しの友達だけのキャンプ..あなたがみんなの前で得意気に話をしている..

いつもと変わらない光景..私は揺らめく炎の影に隠れて静かに微笑んでいる..

お節介な友達の突然の言葉..

「この子あんたに気があるんだって」

私の微笑みは一瞬で凍りついた..誰にも気付かれたくない..気付かせないはずの仄かな想いだった..

揺らめく炎だけがみんなの笑い声を懸命に消そうとしてくれた..


あの日..みんなの一瞬の出来事は私の一生の想い出..
数年後..得意気に話していたあなたを人混みの中偶然見かけた..

あなたはよろめきながら歩いていて..すれ違う人達に憐れみを請うていた..

人々の蔑んだ視線を気にもせずボロボロの服と赤黒く変色した髪と髭..私の前へと近付いてくる..

「姉さん..少しだけ恵んでくれないか..」

異臭がした..

私を見つめるあなたの視線は虚ろに揺らめいて..私を見つめていなかった..

私が財布ごと手渡すと..あなたが不思議そうに首を傾げた..

そして..あの頃と変わらなく得意気に

「あ..ありがとう..」

何度も何度も頭を下げている..

私は人混みをかき分けながら震える唇をキツク結びあの日の揺らめいていた炎を想い出している..


【あの日】

No.6 11/07/01 23:25
陽子 ( ♀ oQ9K )

>> 5 先ず初めに

前スレ主の風花さん、スレをありがとうございました。
三年前、高校生の時に立てて下さったんですね。

秋扇公主さん、今回スレを立てて下さり、ありがとうございます。
また以前のように参加させて下さい。
宜しくお願いします。

【あの日】

携帯小説があるのを見て、ミクルの携帯小説を読み始めた。

好きな小説が幾つか出来た。
その作家の方のお名前を、このリレー短編小説でたまたま見つけた。

あまりリレーが続いて無かったので、突然参加させて貰った。

その方はミクルに来られなくなった。
リアルの生活がお忙しいようだ。
長編小説が途中なので、いつかまた続きを書いて下さると嬉しいなと思っているが、催促などする気は無い。

あの日、たまたま見つけたお名前に誘われて、今は短編小説を綴るのを楽しませて貰ってます。

今回小説で無く失礼しました。
次のお題は【出会い】でお願いします。

No.7 11/07/02 07:44
風花 ( ♀ rbVjnb )

>> 6 【出会い】

運命的な出会い…て、実際あると思う。

ちょうど2年前の7月、我が家にやってきた、サバ白の八割れ、カギ尻尾。

いたいけな愛くるしい仔猫も、今は立派な美猫に。

飼い主が泣いていると慰めにきてくれる猫の話を聞いていたから、ちょっと期待していたけど、アナタはいつも、クールに一瞥するだけ。

でもそんなツンデレなアナタが大好き。


こうして猫に「運命的な出会い」を使い果たしてしまった私は、ますます婚期を逃すのであった。

次は【白馬の王子】



PS:ごめんなさい、私・風花は前スレ主ではないのです💦 3年前は高校生…よりももっと年上でした(-.-;)

No.8 11/07/02 09:55
ウッカリ八兵衛 ( VYlai )

>> 7 白馬の王子

事業に成功して財を成した高柳隆一にとって、残る気がかりは1人娘、紗理奈の結婚だった。

本人はそれなりに結婚願望があるとは言うものの、どうも煮え切らない。妻に聞いたところ、「白馬の王子様が現れるのを待っている」だとか。

最初は「そんなヤツいるか」と一笑に付したが、やはり気になる。ここは一つ、儂が娘の「白馬の王子様」を探してきてやるか・・

高柳は社の内外の人脈を使い、2人の男を探し当てた。

高柳に面会した2人は、口を揃えて言う。

「僕こそが、『白馬の王子』です」

1人は、愛車が白のフェラーリなのだという。なるほど、フェラーリのエンブレムは「跳ね馬」だ。羽振りも良さそうだし、白馬の王子を名乗るのに相応しい男だ・・

もう1人は言う。

「僕は、取り柄もなく金持ちでもありませんが、正真正銘『はくばのおうじ』です」

どこがだ・・? 高柳は訝しむ。

高柳は、ふと手元の書類に目をやる。あ、なるほど、そういう事か・・

彼の名は「迫場野 旺児」。


次は「結婚」でお願いします。

No.9 11/07/02 22:27
秋扇公主 ( aVaWh )

>> 8 【結婚】
「夜明けまでには、必ず帰ってくるんですよ」

嫦娥(じょうが)は厳しい声で告げた。

「はい」

相手はまだ少女じみた顔に白粉をはたきかけながら、答える。

「いつかの時みたいに、朝になっても河辺をうろついていては駄目ですよ」

「分かってます」

相手は拗ねた声で答えると、口紅を引き直した。

「この事は貴女のお父様からも頼まれていますから」

「はーい」

返事もそこそこに相手は部屋を飛び出していく。

「牽牛(けんぎゅう)さーん!」

待ちきれない様な声が、辺りに反響した。

「織姫(おりひめ)ちゃんは、幸せね」

残された嫦娥は苦笑いすると、織姫の部屋から宮殿の廊下に出た。

広く長い廊下には、もう人影一つ見えない。

「年に一度は、必ず夫に逢えるのだから」

宮殿の窓辺に凭れかかると、嫦娥は呟いた。

「あの人の目を盗んで、あんな薬を飲んだ私が馬鹿だったわ」

見下ろす地上の一角では、年老いた夫婦が仲良く短冊を笹に飾り付けていた。

「私一人が延々とこの月で生き続けなければならないなんて」

地上のまた別の一角では、やつれた女と幼い子供が息を引き取ったばかりの男に取りすがって泣いていた。

「あなた、どうかもう一度現れて」

一心に弓を引く少年の姿を新たに地上に見出だすと、
幾千もの歳月を経ても変わらぬ女神の滑らかな面を、
透き通った滴が伝って落ちた。

「愚かな私を射殺(いころ)して」

「あれ、雨かな?」

大会に向けてアーチェリーの練習に励んでいた少年は、思わず空を見上げた。

「気のせいか」

空には片割れの月が煌々と輝いていた。

次は【女神】

No.10 11/07/05 09:56
ウッカリ八兵衛 ( VYlai )

>> 9 女神

「次のテーマは『女神』か・・」

「それなら、こんなのはどうでしょう。しがない大学生の下宿先に若い美女・・実は女神・・が舞い込んで、やがて2人は恋仲に・・ タイトルはズバリ『おお!女神さま』」

「バカ、それじゃ思いっきり『〇〇!女神さま』のパクリじゃないか!」

「じゃあ、こんなのは・・ 放射能で人類滅亡の危機に瀕した地球に、救いの女神が手を差し伸べる。タイトルは、地球から出発する宇宙船の名を取って『宇宙戦艦・・』」

「それもパクリ!」

「ならば・・ 製薬で財を成した名家に降りかかる相続争いと連続殺人・・」

「それは・・ 女神じゃなくて犬神だろ!」

「美人過ぎる母親を持つ少年の、思春期の苦悩を描く・・」

「それは八神!」

「それなら・・」

「それも!」

「・・・・」

「・・・・」

ただただ、時間は過ぎるのみ・・


次は「パクリ」でお願いします。

No.11 11/07/05 15:00
久遠流水 ( WxiBh )

『パクリ』

四条かえでは、小さい頃両親を不幸な事故でなくし、教会の施設で育った。幸い学業が大変優秀だった為、教会の関係者の強い推薦で、学費免除+奨学金付きで、ミッション系女子校に通うことになった。

いわゆるお嬢様学校、それも生粋のお嬢様学校だった。その為か、かえでの生い立ち等知っても、何の隔たりもない。

とは言え、庶民を自負するかえでにとって、日々の生活はストレスだった。ある日、密かにストレス解消のちょっとしたイタズラをした。

「四条さま、先日の音楽の作曲の宿題、実は作曲コンクールの校内選考も兼ねてたんですって」

「え!?」

「四条さまの曲が、選考会で満場一致で学校代表に選ばれたそうですわ」

学友の快挙にクラスメイトが口々に褒めたたえる。

「音楽科の先生など、斬新にして軽快、そしてノスタルジックだと大絶賛ですって」

「……」

はしゃぐ学友の中で、かえでだけが、顔を青くしていた。

『ウソ……』

『ちょっとしたイタズラだったのに……』

『だってあの曲、日曜夕方のアニメ』

『お魚くわえたドラ猫追っかける……』

かえでは、この時生まれて初めて、心の底から神様に祈り、助けを求めた。

『あぁ、神様……!』

次は『イタズラ』で

No.12 11/07/07 10:00
ウッカリ八兵衛 ( VYlai )

>> 11 イタズラ

「いったい、誰がこんなイタズラを・・」

森野圭一は通勤途中の公園で、一部が焼けただれた短冊飾りを見つけた。七夕に合わせて近所の子供達が作った物に、何者かが放火したらしい。

「まったく、しょうがねえな・・」

圭一は、会社に遅刻するかもと思いながらも、焼けただれた短冊飾りを可能な限り直し、周辺の清掃をした。

その夜、圭一の枕元に女神が現れる。

「心優しき人よ・・ 今日は七夕。あなたの願い、ひとつだけ叶えてあげましょう」

突然の事と、女神の美しさに、呆然とする圭一。

しばしの沈黙の後、圭一の口が開く。

「あんた、誰・・?」

「私の名前が知りたい・・ あなたの願いは、それでいいのですか?」

「え? いや、そういう訳じゃ・・」

「私の名はベルダンディー」

「願い事は・・ ええっと・・」

「願い事はひとつだけ・・ 叶いましたね? では、さようなら・・」

「・・・・」

部屋から、女神の姿が消える。圭一は部屋中探したがもちろん見つからない。

慌てて外へ出た。時間は深夜。見回しても誰もいない。空には、満天の夜空が静かに広がったいた・・


次は「願い事」でお願いします。

No.13 11/07/08 21:21
なおさん ( 40代 ♂ eqOJh )

>> 12 【願い事】

恋しい思いを、願いに託します。

    /| _
    / |// __
   |ノ/∠__>
   /ヘ/⌒\ \
  /||\ \ ヽ
 /// /| ヽ |\|
// // | |ノ
 ̄\  | ̄|
\ ヽ |万|
Vヽ | |馬|
  |ノ |券|
    |_|

次は、【ギャンブル】でお願いします。

No.14 11/07/10 21:42
ウッカリ八兵衛 ( VYlai )

>> 13 ギャンブル

あらゆる事象は「ギャンブル」の対象と成りうる。

日曜日の夜7時前、ある事を対象にギャンブルが行われていた。

滝本喜朗は、最近連敗続き。今度こそはと意気込みが違う。

熟慮の末、喜朗は言った。

「よし、俺は『2』でいこう」

同席の女が答える。

「私は、『5』だと思う」

もう1人の女は言う。

「じゃあ、私は『0』でいいわ。まあ、先週は『5』で先々週は『2』だったから、今回はね・・」

いよいよ、運命の瞬間が訪れる。






テレビ画面で、若い女性が札を掲げる。

『2』

「よっしゃー!!!」

喜朗の雄叫びが響き渡る。

勝者の証として、喜朗は愛娘に肩を叩いてもらい、晩酌の安酒が「本物のビール」へと変わったのである。今日1日限りではあるが・・




『0』『2』『5』は、ジャンケンの際伸ばす指の数。

この物語は、「サザエさん」のジャンケンを利用して家庭内の物事を決定する、ある一家の日曜夜の光景である。



次は「ジャンケン」でお願いします。

No.15 11/07/11 16:42
バトー ( 20代 ♂ IbDL )

>> 14 『ジャンケン』



「お前、今、後出ししただろ!」

「はぁ?してねぇし」

「嘘つくなよ!一回グー出してチョキに変えただろうが!」

「グーなんか出してねぇよ!」

「出しただろうがよォ!」

「出してねぇっつってんだろうが!!」

「……お前らまたケンカしてんのか?」

タカシとマサルは些細なことで、しょっちゅうケンカをする仲だ。今日もまた、ジャンケンの後出しが原因でケンカが始まったようだ。

「聞いてくれよ、コイツ後出ししやがったんだぜ!」

とタカシがマサルに指を差す。

「はぁ!?後出しなんかしてねぇよ!!」

そういうと、今度はマサルがタカシに掴み掛かった。

「ヤメろって!」

話を聞いていた友人が、割って入って制止する。
二人は今にも取っ組み合いのケンカを始めそうな雰囲気だ。

「そいつが後出しするから悪いんだよ!」

「してねぇって言ってんだろ!」

この二人の相手をしていても埒があかない。そう思い、友人は先に帰ることにした。

「そんなに揉めるんなら、もう一回ジャンケンしたら?」

「「さっきから何回もやってるよ!!」」


「……」

二人の息の合った言葉に、返す言葉が見つからなかった。



次は、
『ケンカ』

No.16 11/07/22 04:45
ウッカリ八兵衛 ( VYlai )

>> 15 ケンカ

モトナリの息子3兄弟は、いつもいつもケンカが絶えない。見るに見かねた彼は、3兄弟に「3本の矢」の故事を諭そうと部屋に集めた。

「タカモトよ、まずは矢を1本折ってみよ」

長男タカモトは、鼻で笑った。

「こんなもの、楽勝折ってやるよ」

しかし、タカモトがいくら力を入れても矢は折れない。顔を真っ赤にし、全身の力を込めても、矢は折れない。

その様子を見て「そんなのも折れねーのかよ」と笑っていた次男モトハルと3男タカカゲ。しかし、いざ自分が折ろうとすると、これが折れない。

モトナリは困惑した。せめて、1本の矢は折ってもらわないと話が続かない・・

「もしかして、用意した矢が固かった・・?」

そう思ったモトナリは矢を手に取り、折ってみた。矢は、簡単に折れた。

絶句する3兄弟・・

「よいか。貴様らの力は、まだまだ父には遠く及ばぬ。これからも日々精進せよ」

言いたい事はそれじゃない・・と思いつつも、今日のところはそう結ぶしかないモトナリであった。



次は「言いたい事」でお願いします。

No.17 11/07/23 00:08
秋扇公主 ( aVaWh )

>> 16 【言いたい事】
「今日は顔色が良くないようだね、マルタ」

窓から差し込んできた春の柔らかな光を背に、私は苦心してさりげない声を出す。

「神父様、お分かりですか」

美しい娘は戸惑った様な、その実どこか嬉しそうな顔をした。

「あたし、最近、よく眠れなくて」

「それはいけないね」

いけないと思いつつ、彼女の寝巻き姿を想像してしまう。

しかし、次の瞬間、娘の口から出た一言が私を打ちのめした。

「ある方の事を思うと、眠れないのです」


「もう、邪な思いは捨てたかね」

ただ座っているだけでも滲んでくる汗を拭いながら、私は娘に再び問う。

「邪なんかじゃありません」

娘は潤んだ目で反駁する。

「罪なんだ!」

私のお前への思いも。

「そもそもその男には、深く愛する妻がいるのだろう?」

「知っていても、あたし、どうしても思い切れないんです」

「諦めるんだ」

私も聖母と結婚したはずなのに、この娘に執着している…。


「この街を、出る事にしました」

ふとした隙間から秋風の忍び込む聴聞室で、マルタはしめやかな声で告げた。

「これ以上ここにいると、あたしは罪を犯してしまいそう」

「その方が良いだろうな」

私はキリキリ痛む胃に堪えつつ頷く。

これ以上、他の男への思いを口にする彼女を見たら、私も恐ろしい罪を犯してしまいそうだ。

「神父様」

マルタは澄んだ目に涙を浮かべていた。

「最後に、一つだけ申し上げたい事がございます」

「何だね」

私は今、さぞかし冷たく恐ろしげな顔をしているに違いない。

「あたしが愛していたのは、貴方です」

次は【告白】

No.18 11/08/06 22:46
なおさん ( 40代 ♂ eqOJh )

【告白】

  ________
 |それは 私の  |
 |おいなりさんだ/
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/ ̄
    /レヘ__
   /|/   レ)ヽ\
  | ____ | ヽ
  ∠/  ∞  \フ |
  ヒ)⌒ヽ ノ⌒i|ヽ|
  ヒ) \| |/ || |
  ヒ)マ>|-|<ア|| |
   ヽ_ノ ヽ_ノ∧ |
  _/\   / | |
`/ _ ∥ー-イ  ノ丿|
/_(_)ヽヽノ∥ ( |ノ
///|_ | |∥  Y|
LLL_(_ノ  ル- ||
 \ ノ∥ // _/ ノ
  | || // ヽ  /
  ||-||// ー|//
  ||-|// ー| /
  / ヽ//ヽ ノ|
 /  (  |  |
/  |  |   \
 ̄\ ヽ_ノ   /\
  ヽ/ \  /  \

告白しよう
それは私が履いてたパンツだ
    ぅぉぇっぷ
  /⌒丶フ
  /  rノ
 OO_)

【パンツ】

No.19 11/08/09 20:00
陽子 ( ♀ oQ9K )

>> 18 【パンツ】

庄吉はパンツや股引、ステテコのゴムが苦手で、妻の千代子に紐に付け替えて貰ってた。

庄吉と千代子に子は無かったが、年が離れた千代子は、よく笑う明るい女で、気立ても良く、庄吉は千代子を可愛く愛おしく思っていた。

しかし庄吉は亭主関白の風を崩さず、気の利いた言葉を千代子に掛けることはなかった。

千代子は欲の無い女で、何かを強請るなんてことは無かったが、
「今度一度でいいから熱海連れて行って」

恥ずかしそうにそう言った。

庄吉は大工で、仕事が立て込んでいたので、
「秋になったらな」といつもの愛想無しの口振りで言った。

それでも千代子は嬉しそうに
「熱海♪熱海♪」と歌うように弾んで台所に行った。

その後ろ姿に庄吉は頬が緩んだ。

台所から千代子がひょいと顔を出して
「今夜の祭り行きましょね!」
そう言ってまた引っ込んだ。

その夜、庄吉も浴衣に着替え、千代子も浴衣姿で祭りに行った。

祭りで、赤い金魚の絵が描いてある江戸風鈴を買い、縁側に吊した。

庄吉は朝早くから、夜遅くまで忙しく働いた。
早く仕事を終わらせて、秋には熱海に千代子を連れて行ってやろうと思っていた。

そんな日々が続いた、酷く暑いある日の昼間、仕事先に千代子が倒れ、病院に運ばれたと連絡が来た。

そしてそのまま千代子は息を引き取った。

呆気なかった。

心筋梗塞とか医者が言ってたが、庄吉は茫然として何も頭に入らなかった。

仕事仲間、ご近所さん、庄吉の妹夫婦がすべて取り仕切って葬式も終わった。

妹の八重が一人まだ残っていた。

「兄さん一人で大丈夫?
全部姉さんがしてくれてたから、何がどこにあるのかも分からないでしょ?」

「そんな広(ひれ)い家じゃねぇんだから、そんなもんちっと探しゃあ分かるさ」

それでも八重は箪笥の引き出しをちょいと失礼と言いながら開けて、
「一番上は仕事着が入ってるわ」
と次々開けては庄吉に伝えた。
一番下の引き出しには新のパンツや股引、ステテコがあり、全部紐に付け替えてあった。

それを聞いた庄吉は堪えられなくなって、仏壇の千代子に向かって
「ちよお~!おぉ~」
悲鳴のように叫んで泣き伏した。

その時、縁側の風鈴がチリリン♪と涼やかに鳴った。


次は【風鈴】

No.20 11/08/11 09:15
なおさん ( 40代 ♂ eqOJh )

>> 19 【風鈴】

暑中お見舞い
   申し上げます

      |
チリーン /⌒\
    (・ω・)
      ̄T ̄
     _⊥_
     | |
     |納|
     |豆|
     / _/ //
    ∠_)//

臭い?

【猛暑】

No.21 11/08/11 11:12
陽子 ( ♀ oQ9K )

>> 20 【猛暑】

家庭の事情で会社を辞められ、ご実家の水戸に戻られた、夫の元部下の鈴木直樹さんから納豆が届いた。

在職中から、夫の納豆好きを知って水戸納豆を暑中見舞いと一緒に送って下さるのが慣例になっていた。

藁に包まれた納豆と、通常に市販されている容器のと詰め合わせの品が届く。

家族全員納豆は好きなので嬉しいのだが、夫の寛治が毎回繰り返す納豆話に家族は辟易していた。

寛治の子供の頃、寛治の家は祖父、祖母、両親、姉、兄、寛治、弟の大家族で、納豆一つを兄が半分取り、残りを兄弟三人で分けて食べたと言う話を、同じ口回しで何回聞かされたか分からない。

しかし妻の淳子も子供達も寛治の話を
「もう何回も聞いたよ」と遮ることはしなかった。

淳子は寛治も何回も話しているのは分かっているが、貧乏時代の話をしたいのだろうと思っていたから、毎回頷いたりもしていた。
子供達は今では黙って食事してやり過ごしていた。


寛治は付き合いとかで殆ど午前様で、タクシーを乗り付けては、淳子に支払わせることが多かった。
だから家族揃って夕飯を摂ることも稀だった。

納豆が届いたその日は珍しく寛治は早く帰宅した。
毎日猛暑が続き。日が落ちたと言うのに、気温が下がらなかった。

いつもなら冷房いれてたが、寛治は冷房が嫌いで、

夏は暑いものだ、冷房入れるなんて贅沢だが持論で、口煩いので、その日は冷房を消していた。

寛治は食事せず、ビールを飲んでいた。

そこでまた納豆話が出た。

黙々食事する子供達。

暑い台所でご飯支度した淳子に頷く余裕も無く、誰も納豆話に反応しなかった。

それに気分を害したのか、

テーブルを見渡し

おかずが多過ぎる、
お前達は贅沢だ
俺なんか納豆半分も有れば食事出来る

と煩く言い出した。

淳子は黙って席を立ち、支払ったタクシーの領収書の束を寛治の前に無言で置き、窓閉め、冷房を入れ、テーブルに戻って食事を続けた。

寛治は黙って、ソファに移った。


子供達は淳子に
「美味しいよ、ママ」
と言い笑顔を見せた。

淳子も笑顔で頷いた。


次は【領収書】

No.22 11/08/11 22:05
@白猫@ ( 30代 ♂ BGhZh )

>> 21 【領収書】

「ひとみちゃん、この領収書、何か分かるかな..」

仕事の邪魔をするようで申し訳なさそうに、事務員へ領収書を渡すとPCに何か打ち込んでいる手を止めて、ずり落ちたメガネをピンと跳ね上げながら領収名と日付等を確認た..

「さぁ..ちょっと傷みが激しくて分からないですねぇ..名前は..比良吉之助..」
彼女は首を傾げながら領収書を返すとPCに向き直った..


この『比良吉之助』と書かれた古びた領収書が、二週間ほど前から私の机で見かけるようになった..

他の領収書の束に紛れている為、仕訳をしているときに見つけるようになってい..た

但し書きには『葬儀代』と書かれているようだった..

葬儀代..?何でこんなものが紛れるんだ?

金額は五万円だった。収入印紙も貼られている..

これまにで七枚見つけているから計三十五万円分の支払いという事だ..

以前、この会社に勤めていた人かもしれないと、退職者名簿を調べてみたが名前はなかった..



それから一ヶ月くらい、『比良吉之助』の領収書を見かける事がなくなった..

何となく気になって丁寧に領収書の束を仕訳しても、やはり見つからなかった..

そのうち『比良吉之助』の領収書の事も忘れかけてきた頃..


事務員が必要のない書類を倉庫へ運ぼうと、段ボールを抱え廊下へ出ると紙切れが落ちているのに気付いた..

紙切れを拾ってみると『比良吉之助』と書かれた領収書だった..

ふと前を見ると領収書が点々と続いている..

点々と落ちている領収書を拾いながら進んで行くと倉庫の扉にたどり着いていた..

拾った領収書は全部で五十枚..金額は五万円と書かれている..

不思議に思いながらも倉庫の扉を開けて中へ入ると、山積みにされた段ボールの陰に見え隠れしている細長いロッカーの前に領収書が矢印のように三枚並べられていた..

流石に『これはイタズラだな..』と苦笑して逆に驚かせてやろうと、一旦外に出る気配をさせ忍び足でロッカーの前へと戻った..

誰だかしらないが驚いた顔を想像しながら笑いを噛み殺し、思いっきりロッカーを開けた..



倉庫に行ったきり帰ってこない事務員を探しに行くとロッカーの前で仰向けに倒れている事務員に、白骨化した遺体が拝むように折り重なっていた..


【ロッカー】

No.23 11/08/12 11:35
なおさん ( 40代 ♂ eqOJh )

>> 22 【ロッカー】

おらっ!出てこい>>1!!

  ドッカン   ゴガギーン
    _ ドッカン  ☆
===( )   /
`∧∧ ||___ ∧∧
(  )|||  |(Д`)
f ⌒ノ/ |  |/  \
|   / |  //| / /
|  | |ヘ/\|_/ /
(  | ロ|\/\(_ノ)
| ∧ | |  | Y /
| ||| |  | ||
| |/ /  |  | ||
| / /__|__| ||
((_)      (_)

うるせー!ロッカーの昼寝を邪魔するねぇ❗
    / ̄\
   _/ ̄ ̄\丶_
  //    ) 丶
  /| ッ  <  |
 |r=―==―)  |
 |L_∧_/(  |
 |(/ヽノヽ \ |
 ||<>-) / ) |
 | \___/  |
  \_(月 ̄)_ N
  ( ⊂(ミ丶  )ノ
  /  //\\ |

シャケナベイベー。

熱中症にご注意を。

【昼寝】

No.24 11/08/13 16:46
陽子 ( ♀ oQ9K )

>> 23 【昼寝】


目が覚めた。
思いっ切り伸びをした。
あ~よく寝たようだ。

うん?
此処は何処だ?

辺りを見回した。
以前来た場所か?
見たような、微かな記憶がある。
しかし、確かな記憶なのか?
自信が無い。

何処なんだ?!

不安で胸が苦しくなって来た。

ウグッ!

泣きそうだ。

落ち着け!
落ち着くんだ!

自分の拳固をじっと見つめて、冷静になろうとした。

私はいつもこうやって心落ち着かせて来た。

今日もだんだん落ち着いて来た。

よし、部屋を探ってみよう!
何か手掛かりが見つかるかもしれない。

私は起きて、部屋を探り始めた。

興味深い物があちらこちらにあったが、手掛かりにはなりそうに無かった。

しかし、私は次々手にした。


気が付くと部屋は物が散乱していた。

これ程探っても、此処が何処であるのか分からない。

また不安が私を襲った。

もう冷静では居られなくなった。

ウグッ、ウグッ!
気付くと私は大泣きして、しゃくりあげてしまった。


すると誰かがやって来た。

「あら~起っきしてたの~?


誰だ?アンタ?

私は一層悲しくなり、爆発したように泣いた。

また誰かやって来た。

「あら~、こんなに散らかしてイケない子ね!」

あっ知ってる顔、ママだ!

私はやっと安心して、知ってる顔に急いで近づいた。

すると、ママは、良い心地に私を抱っこして、ほ乳瓶を私の口に入れた。
美味しいミルクの味!

しかし、直ぐには泣き止むことが出来ない。
どっか私にも意地がある。

泣いたカラスが…て言われるのに嫌気が差していた。

だけどお腹も空いたことだし、今回はこれで治めておくか!


「あ~凄い勢いで飲んでるわね。涙溜めちゃって。」

私の顔を覗き込んで、そう言ってる人にママが

「お母さん、有里が部屋散らかしちゃってごめんね」

て。

あ~、この人おばあちゃんか!
此処はおばあちゃんちか!納得!

私はやっと落ち着いてミルクを飲んだ。


次は【赤ちゃん】

No.25 11/08/30 16:44
うさぎ ( 30代 ♀ qK5pnb )

(赤ちゃん)

私は眠い眼をこすり、むくりと身を起こした。朝は苦手だ。
そんな私に向かって騒がしく彼らが口々に声をかける。

酷く慌てているな。

私は首肯した。
ああ、解っている。赤ちゃん扱いしないでくれたまえ。1人でここにいればいいのだろう?

扉を締めるまで騒ぎながら彼らは外出した。
私は…とりあえずもう一度寝ることにしよう。

次に眼を覚ました時、まだ彼らは帰ってきていなかった。苛立ちに枕を蹴散らしていると騒音と共に彼が戻ってきた。
遅かったじゃないか。私は立腹しているぞ。
ほう、病院に行ったのだと。で、再び待てと。ちょっと待ってくれ。せめて食事を用意していくべきだろう?!
バタバタバタ
パタン

…取り残された私は自力で食事を用意した。
首尾は上々だ。ジャムの瓶が空になったが致し方あるまい。牛乳がこぼれ蒲団が濡れたが、これも不可抗力だろう。

さて、さしあたって蒲団を片付ける事にしよう。

ズルズル ズルズル

何なんだ、この重さと大きさはっ。ちっとも畳めないではないか。シーツは縺れるし、濡れていて気持ち悪い。キーッ!

私はふて寝をすることにした。

昼近く、ようやく足音が聞こえたが、入ってきたのは隣人だった。
何やら興奮状態で機関銃のようにまくしたてながら、私があれほど苦労した蒲団をなんなく片付け出した。

男の子が…
ママが…

隣人は私の反応そっちのけで喋り続けた。

なるほど、今日だったのか。
ご婦人、貴方と病院へご一緒するのだな。よろしくお願いする。
素晴らしい名を用意してあるのだ。ご披露しよう。

弟と三歳半の姉。この日初遭遇。

(先輩が三歳時分の記憶です)皆さんの小説楽しみにしてます。是非続けて下さい♪

次は(ジャム)でお願いします🙇

  • << 27 うさぎ♪さん ありがとう✨ また宜しくお願いします。

No.26 11/09/01 06:39
陽子 ( ♀ oQ9K )

>> 25 【ジャム】

時子はジャムをよく作る。
厚めのトーストにジャムをつけて食べると最高に美味しい。

特に好きなジャムはアプリコット。
しかし手に入る期間を逃してしまう年がある。

アプリコットはそう長い期間出回らないので、うっかりすると終わってしまうのだ。

ジャム専用のホウロウ鍋は、親友の昌子の結婚式の引き出物カタログで選んだ物だ。

もう二十年以上使っている。

キッチンで、火に掛けた鍋の中のジャムが焦げないように、静かに木ベラでかき回している時に、甘い優しい匂いがしてくる。

その時、時子は何とも言えない幸せを感じる。

時子のジャムは家族にも好評で、それが嬉しくて、それも幸せに感じる一つになっている。


義母の正枝が匂いに誘われてか、キッチンにやって来た。

「あらぁ、良い匂い!これは…アプリコットジャムかしら?」

「そうです。去年作れなかったので、今年は逃さないように気を付けました。」

「嬉しいわ~、お父さんもアプリコットジャム好きなのよ。」
笑顔の正枝。

「あっ!食パン厚切り私買って来るわ!駅前のえーっと店の名前何だったかしら…?」

店名を思い出そうと天井見上げる正枝に

「藤ノ木ブレッドです!
お義母さん、私が買って来ますから。」

「いいわよ!あそこ直ぐ売り切れちゃうから、私、今直ぐに行って来るわ!
時子さんはジャム作ってて!」

正枝は本当に直ぐに買いに出掛けた。

『良かった、あんなに喜んで下さって。
お義母さん、昨夜の喧嘩聴こえたのかしら?
気遣って下さっているのかも?後で正雄にメールしとこうかな? 』

時子は木ベラを静かにかき回せながら、正雄に何とメールしようか考えていた。

その時、携帯のメール音が鳴った。

『誰かしら?』

木ベラ回しながら、携帯を開いた。

『昨日は言い過ぎた。ごめん。今夜は早く帰るので夕飯ヨロシク』

メール送る前に正雄からメールが来た。

『私もごめんなさい。
今夜はあなたの好きな生姜焼き作って待ってます❤』

送信した。

アプリコットの甘い優しい匂いが時子を包んだ。

『うふっ』


次は【仲直り】

  • << 28 【仲直り】 ごめんなさいの一言を言わなかったために、母と娘は生涯仲直りが叶わなかった。 あの日も、帰宅時間が遅かったことを理由に、朝からガミガミ言う母に嫌気がさした恵は、暴言を吐いて出勤した。 同僚の三奈とランチを食べていた時だった。 珍しく、父親から携帯がかかってきたのだ。 「もしもし」 携帯に出ると、静かに、そして抑揚の無い父の声が流れる。 「恵、母さんが死んだ」 嘘でしょ?そんなはずは無い。だって、ほんの数時間前まで、お母さんはいつものように、私と話してたのだから… 恵は、頭が真っ白になり、わけが分からなくなった。 警察の霊安室。そこには、今にも起き上がりそうな、安らかな寝顔の母が横たわっていた。 身元確認が済んだ後、恵の母はすぐに帰宅することが許されなかった。 毎週通っているフラワーアレンジメントの教室。そこに向かう途中、電車内で恵の母は亡くなったようだ。 事件製の有無、司法解剖。そして遺族は警察の事情聴取を受けさせられた。 3日後、ようやく母は帰宅した。 「お母さん、3日も外泊したの初めてだね」 母の死と向き合い始めた恵は、亡骸に抱きついて号泣した。 「お母さん、ごめんなさい」 次は「謝罪」 🎵携帯変更でピュアを改名。皆様宜しくお願いします。

No.27 11/09/01 07:02
陽子 ( ♀ oQ9K )

>> 25 (赤ちゃん) 私は眠い眼をこすり、むくりと身を起こした。朝は苦手だ。 そんな私に向かって騒がしく彼らが口々に声をかける。 酷く慌てている… うさぎ♪さん
ありがとう✨

また宜しくお願いします。

No.28 11/09/03 02:25
purelove ( ♀ yarFnb )

>> 26 【ジャム】 時子はジャムをよく作る。 厚めのトーストにジャムをつけて食べると最高に美味しい。 特に好きなジャムはアプリコット。 しかし手… 【仲直り】
ごめんなさいの一言を言わなかったために、母と娘は生涯仲直りが叶わなかった。
あの日も、帰宅時間が遅かったことを理由に、朝からガミガミ言う母に嫌気がさした恵は、暴言を吐いて出勤した。

同僚の三奈とランチを食べていた時だった。
珍しく、父親から携帯がかかってきたのだ。
「もしもし」
携帯に出ると、静かに、そして抑揚の無い父の声が流れる。
「恵、母さんが死んだ」
嘘でしょ?そんなはずは無い。だって、ほんの数時間前まで、お母さんはいつものように、私と話してたのだから…
恵は、頭が真っ白になり、わけが分からなくなった。

警察の霊安室。そこには、今にも起き上がりそうな、安らかな寝顔の母が横たわっていた。
身元確認が済んだ後、恵の母はすぐに帰宅することが許されなかった。

毎週通っているフラワーアレンジメントの教室。そこに向かう途中、電車内で恵の母は亡くなったようだ。
事件製の有無、司法解剖。そして遺族は警察の事情聴取を受けさせられた。

3日後、ようやく母は帰宅した。
「お母さん、3日も外泊したの初めてだね」
母の死と向き合い始めた恵は、亡骸に抱きついて号泣した。
「お母さん、ごめんなさい」

次は「謝罪」

🎵携帯変更でピュアを改名。皆様宜しくお願いします。

No.29 11/09/03 03:49
りょう ( 30代 ♀ p6P7nb )


『謝罪』


いくら泣いて謝っても彼は許してはくれなかった。

「ねぇ、どうしたら許してもらえるの?」

「いくら謝られても、何をしてもらっても僕は君を一生許さない。」

「聞いて!本当に知らなかったの!あなたが本当にそんなにも大事に思っていたなんて…」

「いいや、君は知ってたはずだ!僕がどんなにか楽しみにしていたかをね」

「本当に知らなかったの!たまたまだと思ってたのよ…」

「たまたまだと?!そんなわけないだろうが!僕の唯一の楽しみだったんだよ!」

「まさか、だってそこまでではないと思っていたの…」

「ま、まさかだと!黒柳徹子に謝れ!僕は、徹子の部屋をな、今まで一回だってリアルタイムで見逃した事がなかったんだよ!それを僕が見てる前で、簡単に昼ドラにチャンネルを変えるなんて、絶対に許せるか!!」

「あなた、一体いくつなの?!」



…くだらなくてすみません😅
勝手に参加させて頂きました💦 これからも皆様のを読ませて頂きますね。


次は『いくつ』でお願いします😄

No.30 11/09/04 02:53
purelove ( ♀ yarFnb )

>> 29 【いくつ】

「あなた、一体、いくつなの?」

光は、あまりにも幼い勇に、ついそう突っ込んでしまった。

しまった。思わず口走った言葉を遮るように、自分の手のひらを口元で隠してみたが、間に合わなかった。

「お前、いつからそんな口を叩くようになったんだ?」

「ごめんなさい。本当にごめんなさい」

勇は、自分のこめかみを指で押さえながら、光を見下ろし、口元を上げた。目は笑っていない。

光は、勇のこの表情を見ると凍りつく。
慌てて、車のキーとバッグを持って、玄関に向かった。

そうはさせまいと、勇も光の行動を見越して、瞬発力を発揮する。

後少し。玄関のドアノブをつかみ、あと一歩のところで、光はあえなく勇に取り押さえられた。

「いいから、こっちに来い!僕から逃げられると思ったその根性も気に入らない」

もうだめだ…
光は大きなため息をついた。
まるでサメに食いつかれたあざらしの子供のように、あえなく勇に抱きかかえられた。

それから数時間…
寝室に閉じ込められた光は、激しい遊びを勇に強いられた。

「よぉーし!今日はここまで」

勇も光も汗だくで、ベッドに倒れ込んだ。

次のお題は
【遊び】

No.31 11/09/11 08:30
陽子 ( ♀ oQ9K )

>> 30 【遊び】

志穂は家族と郊外の一軒家に暮らしている。
もう13年経った。

夫は都心に通勤、子供は小4と小1の男の子でサッカーをしている。

子供のサッカーの試合には夫婦で応援に行く。

ご近所と仲が良く、何家族も集まって、バーベキューをしたり、流し素麺をしたり、花火したり、お互いの子供を泊まらせ合ったり、深く付き合っている。

子供はわんぱくで大変な時もあるが、可愛い子供達だ。
夫は家事も手伝ってくれ、ご近所の奥さん達とたまに食事に行く時は、楽しんでおいでと送り出してくれる。

志穂の母も
「優しい旦那様で幸せね」
と電話する度に言う。

優しい夫、可愛い子供達、仲の良いご近所さん達、志穂は幸せだった。

しかし数ヶ月前から、ぼんやりしている夫を見ることがあった。
以前のように、サッカーの応援にも行ってるし、休みの日は、一緒に買い物にも行ってるが、何か以前とは違う夫にモヤモヤした気分になっていた。

夫は相変わらず、家事も手伝ってくれて、会話もしている。

しかし、時々、夫が遠くに居るように感じた。

モヤモヤしていたが、志穂は何も言わなかった。


休みの昼に、棚の高い所にある蒸し器を取って貰おうと、居間の夫を呼んだ。

夫はソファーに座り、庭を見ていた。

呼んでいるのに気付かない。

「ねぇってば、蒸し器取って!」
再度声を掛けると

慌てたように
「あっ、呼んだ?」
と志穂を見た。

志穂は黙って、夫の向かいに座った。

志穂の硬い表情を見て、夫は目を落とした。

しばらく沈黙が続いた。

「終わったんだ。もう終わったんだ。
何も無かった。君が心配するようなことは何も無かったんだ…」

「遊びだったの?」

美穂は夫に訊いた。

沈黙の後
「彼女とは何も、何も無かったんだ。」

美穂は夫の頬を思いっ切り引っ張ったいた。

そしてワァーッと泣いた。

遊びだったと言って欲しかった。

数ヶ月後、美穂達は離婚し、美穂は子供達と実家に帰った。


次は【別れ】でお願いします。

No.32 11/09/13 20:09
橘花 ( ♀ kt7Nh )

「…昔はね、結婚というものは親同士が決めるものでしてね、私もね結婚式の当日まで主人の顔を見たこともなかったんですよ。」
老婆は目の前にいる私に目線を合わすことなく呟いた。その瞳はぼんやりとした色をしているものの、私には見えない何かを遥か遠くに見据えているようだ。
声をかける事を躊躇していると老婆はそこに私が存在していないかのようにまた喋り出す
「式の時ちらっと主人の顔を覗いて見たものの…その後、宴会の席ではねみんな同じような格好をしているでしょう?どれが主人かわからなくてね…私の結婚式の思い出ってそんなもんなんですよ、まぁ昔の話ですからね」
「結婚生活は幸せでしたか?」
私は音にならないほど小さな声で勇気をだして聞いてみたが、その後、老婆から言葉は発せられなかった。
私は老婆の夫だ、結婚式まで顔も知らなかった夫婦も長年連れ添い、色々苦労もしたが今まで安定した人生を送ってきた。
そう、妻がアルツハイマー型認知症と診断されるまでは…
最近は私の顔も忘れてしまっているようで、しきりと両親を恋しがっては徘徊を繰り返す妻、私が夫である意味など今はないのかもしれないと唇を噛み締めた
その時、妻は蚊の鳴くような小さな声でブツブツと呟いた
「…幸せでしたよ、不器用な主人だったけど…優しい人だった」
涙が次から次から溢れてきた、頬を伝う涙が口に入りしょっぱいような不思議な甘さを感じ胸が一杯になった。
もうすぐ妻は私の事はおろか両親の事さえわからなくなるだろう、ある意味[別れ]の時がやってくる。
それでも私は妻に
「私も幸せでした、ありがとう」と言い続けたい
いつか死と言う別れが来るまで…


次は[人]でお願いします

  • << 34 【人】 その人はレースのカーテンが風で揺れる中に居た。 僕は悪い風邪を引き、軽い肺炎に掛かり、医師の勧めで叔父の北軽井沢の別荘で静養中だった。 日毎回復して来た僕は、小径を散歩するようになった。 東京の空気とは全く違う清々しい空気の中を散歩すると、悪い物が空気に溶け出して行くように感じた。 散歩が日課になり、いつものように文庫本を片手に持ち、お気に入りのカフェまで、空気を吸い込みながら歩いた。 毎回同じ道もつまらないので、違う道に入った。 すると白い洋館があった。 その洋館の窓際に立っている人が見えた。 その人は遠くの白樺の林の方を見つめていた。 不作法なことだが、僕はその人を見続けてしまった。 車が来なかったら、僕はそのまま見続けていただろう。 赤いスポーツカーが軽くクラクションを鳴らしたので、僕は歩き出した。 そのスポーツカーは白い洋館に入って行った。 『変な男が覗いていたと思われたろうか?』 しばらく白い洋館の道には行かないことにした。 しかし、あの人が気になって、また来てしまった。 すると、今日もあの人は白樺林の方を見つめていた。 カーテンが揺らぐ隙間から見えるその人の横顔が寂しげで、僕はいつの間にか心を掴まれてしまっていた。 僕はそこから立ち去れなかった。 不意にカーテンが開き、男が顔を出した。 僕は自分の不作法な行為に赤を赤らめ、一礼して足早に立ち去ろうとした。 すると窓の男は笑顔で 「これ気に入ってくれたんですか?」 と、その人を抱いて僕の方に向かせた。 『えっ!あっ?えーっ!』 洋館に招かれ、その人を間近で見た。 「銀座で来月から私の個展をやりますので、是非来て下さい。この子も展示します。」 男は、寂しげな人の作者だった。 「彼女は白樺の木で作りました。どこか白樺の精のようでしょう?」 僕はその人が、人では無いと分かっても、その人に惹かれる思いが消えず見つめ続けた。 作者は 「彼女に恋をしたようだね」 「はい、恋をしたような…、 分かりません」 僕はすっかり回復し、北軽井沢を後にした。 あれは恋だったのか?と、今でも分からない。 次は【恋する心】でお願いします。

No.33 11/09/14 16:51
橘花 ( ♀ kt7Nh )

>> 32 最初にお題を書き忘れてました
申し訳ありませんm(__)m
初めて参加させて頂きました
ざくっと書いたので誤字脱字等あるかと思います💧
みなさんの小説楽しみにしてます😄

No.34 11/09/18 18:24
陽子 ( ♀ oQ9K )

>> 32 「…昔はね、結婚というものは親同士が決めるものでしてね、私もね結婚式の当日まで主人の顔を見たこともなかったんですよ。」 老婆は目の前にいる… 【人】

その人はレースのカーテンが風で揺れる中に居た。

僕は悪い風邪を引き、軽い肺炎に掛かり、医師の勧めで叔父の北軽井沢の別荘で静養中だった。

日毎回復して来た僕は、小径を散歩するようになった。

東京の空気とは全く違う清々しい空気の中を散歩すると、悪い物が空気に溶け出して行くように感じた。


散歩が日課になり、いつものように文庫本を片手に持ち、お気に入りのカフェまで、空気を吸い込みながら歩いた。

毎回同じ道もつまらないので、違う道に入った。

すると白い洋館があった。
その洋館の窓際に立っている人が見えた。

その人は遠くの白樺の林の方を見つめていた。

不作法なことだが、僕はその人を見続けてしまった。

車が来なかったら、僕はそのまま見続けていただろう。


赤いスポーツカーが軽くクラクションを鳴らしたので、僕は歩き出した。

そのスポーツカーは白い洋館に入って行った。

『変な男が覗いていたと思われたろうか?』

しばらく白い洋館の道には行かないことにした。

しかし、あの人が気になって、また来てしまった。


すると、今日もあの人は白樺林の方を見つめていた。

カーテンが揺らぐ隙間から見えるその人の横顔が寂しげで、僕はいつの間にか心を掴まれてしまっていた。

僕はそこから立ち去れなかった。

不意にカーテンが開き、男が顔を出した。

僕は自分の不作法な行為に赤を赤らめ、一礼して足早に立ち去ろうとした。

すると窓の男は笑顔で

「これ気に入ってくれたんですか?」

と、その人を抱いて僕の方に向かせた。

『えっ!あっ?えーっ!』


洋館に招かれ、その人を間近で見た。

「銀座で来月から私の個展をやりますので、是非来て下さい。この子も展示します。」

男は、寂しげな人の作者だった。

「彼女は白樺の木で作りました。どこか白樺の精のようでしょう?」

僕はその人が、人では無いと分かっても、その人に惹かれる思いが消えず見つめ続けた。


作者は
「彼女に恋をしたようだね」

「はい、恋をしたような…、
分かりません」



僕はすっかり回復し、北軽井沢を後にした。

あれは恋だったのか?と、今でも分からない。


次は【恋する心】でお願いします。

No.35 11/09/20 02:38
@白猫@ ( 30代 ♂ BGhZh )

【恋する心】


あなたと出逢ったのはいつ頃だっただろう..

今にも降り始めそうな空を窓越しに見つめながら、水滴のような記憶を辿っていた..


確か..あなたの勤める会社に採用されて2ヶ月くらい経った頃だっけ..決して若いとは言えない私が採用されたのは幸運だった..


少しずつ新しい仕事に慣れて、周囲の事にも気付けるようななった頃だったよね..


あなたは、とても静かな人で、挨拶程度の言葉しか交わしあえなかった時間が今ではとても辛い..


あなたはいつもシワシワのシャツで、少し薄くなりはじめた頭も幼さの残る瞳が、ささくれ立ってた私の心を和ませてくれた..



社会人になり学生時代の陰鬱な過去を振り払うように、私は荒れていた..

誘ったり誘われながら付き合った男は数知れず..心も体も鞭で打たれたような傷痕だけが私に残っていた..


『人間..って何のために生きてるんだろう』


誰もいない夕暮れの堤防に独り座り込んだ..太陽は何十億年..何百億年生きているが私の問いには答えてくれなかった..



窓越しに浮かんでは消えていく記憶が弱々しく握られた左手で途切れた..


「すまんな..」


生気の薄れた顔に幼さの残る瞳が寂し気に微笑んだ..


「バカ!何、弱気な事いってるの!」


零れ落ちそうな涙を必死に止めようとする度にぎこちなく、あなたの左手を握り返した..


そんな私をあなたは不思議そうに見つめる..


病院へと続く銀杏の並木道が黄色い絨毯へとかわりはじめた季節に、冷たくなったあなたの左手をもう一度ぎこちなく握り返した..


「ありがとう..」


零れ落ちそうな涙をそのままに私は呟いた..


最初で最後の恋する心だけが残っていた..


【握る】

No.36 11/09/21 00:08
陽子 ( ♀ oQ9K )

>> 35 【握る】

包丁を握る手が震えていた。

「止めろ!俺が悪かった!」
「止めろって!」
「なっ、落ち着いて話し合おう!」
「君は誤解してるんだ!」
「彼女とは何にも無いんだ!」「信じてくれ!お願いだ!」
「俺が愛してるのは君だけだ!」
「嘘じゃないよ!」

包丁を握り締めたまま、近づいて来る。

「俺を刺したりしたら、君は捕まる!」
「君を刑務所なんかに入れたくない!」
「君の人生が台無しになる!」

ゆっくり近づいて来る。

「お前、馬鹿か?」
「あぁ、そうだよ!浮気したよ!」
「でも、刺される程のことか?」
「アイツは、お前より俺を大事にしてくれるんだよ!」
「浮気じゃないな、本気だよ!」
「お前に飽きたんだよ!」
「刺したきゃ、刺せよ!」
「前科一犯になりゃあいいじゃん!」
「お前なんか、ずっと前から別れたかったんだよ!」


とうとう目の前に来た。

「ごめん。嘘だよ、嘘。今も君が好きだ。愛してる。君を傷つけるつもりなんか無かったんだ。本当だ。ごめん。許して。お願い!」


女が包丁を振りかざすと、男は悲鳴を上げた。


女は振りかざした包丁を、男の後ろに積まれた段ボールのテープの真ん中に刺して切り込んだ。

「テープが剥がれなくてさ…」

「そ、そうなんだ。あはっ…」

「知らなかった。アンタ浮気してたんだ。マジで刺される前に出て行きな!」


男は一目散に出て行った。


段ボールの中には男が好きな梨が入っていた。


女は梨を剥いた。


次は【自白】でお願いします。

No.37 11/09/21 21:40
橘花 ( ♀ kt7Nh )

【自白】
「お前に謝らなきゃならないことがある」
おだやかな休日を過ごした日曜日の深夜、由香は昼間遊び疲れ逆に興奮しきった子供をようやく寝かしつけた。
リビングに戻るとソファに腰をかけた夫の晃から話があると声を掛けられたのだった
「話って何なの?」
向かい合った晃の顔をじっと見た
晃は目を合わそうとはしなかった、テーブルの上に置かれたタバコを吸うわけでもなく、ただいじっては戻しを繰り返す
何分たったのか…そうしてよくやく告げられた一言だった
「あの女の事?」
由香は冷静に答えた。
夫が浮気をしていたのは知っていた、常に持ち歩く携帯、接待ゴルフだと言うも日焼けもせずに帰宅する、飲み会だと出掛けると必ず甘ったるい香水の匂いをさせながら帰り、機嫌をとるために饒舌になった
自ら嘘をばらしているも同然じゃないか、由香はその度、卑屈に笑う夫を見て吐き気をもよおしていた。

先制攻撃をされた晃は取り乱し錯乱した様子を悟られないように冷静を保つふりをしながら言った
「そうだ、知っているなら話が早い。離婚してくれないか?」

「わかりました、慰謝料を貴方とあの女から頂いて、この家ももちろん頂きます。よろしいかしら?」

「お前は無一文で俺を追い出す気なのか!」
晃はかつて見たこともないほど激しく怒り大声で怒鳴り由香に詰め寄った
「当然でしょう。あなたはそれだけの事をしているのよ、殴りたければ殴ればいいわよ?」
晃は錯乱していた、取り乱し泣きわめくであろう妻を想像していた、目の前には自分をあからさまに挑発している女がいる、それはまったく知らない人物に思えた。
まったく歯が立たない、そんな気がした、晃はがっくりと肩を落とし家を出た。

由香は夫が家を出たのを確認し携帯をならした
「終わった?」
すぐさま携帯をとったその相手は由香の恋人、そして子供の本当の父親だった。
「終わったわ、今日辺りだとは思ってたけど。まったくこっちの思惑通りに動いてくれたわ」
男って馬鹿だ、自白なんかしなければいいのに…真実なんか告げたところで自分の心の負担が少なくなるだけなのにね
長話は禁物、さっさと携帯をしまいテーブルに置きっぱなしの夫だった人のタバコに火をつけた
馬鹿って嫌いじゃないけどね
涙が出るのはタバコの煙のせい…たぶんね
由香は涙をぬぐいもせず火が尽きるまでタバコを見つめ続けた。

次は【悪女】でお願いします

No.38 11/09/23 03:02
陽子 ( ♀ oQ9K )

>> 37 【悪女】

パン教室で知り合った23歳の愛美。
貿易会社のOLだと言う。
土曜の午前10からの教室に来ている。

教室には私のような主婦が5人と愛美のような独身OLが5人の生徒が居る。

主婦も独身OLも和気あいあいとパン作りを学んでいる。

教室は半年が1サイクルで、月2回。

私達は初級の教室で、5回目のパン作りを終え、いつものように自分達のパンを食べて楽しく会話した。

後片付けも終わり、 帰り支度をしていると、愛美が声を掛けてきた。

「加藤さん、お時間有ったら、この後美味しい珈琲の店があるんだけど行きませんか?」

「特に予定はないから、お夕飯の買い物するまでなら付き合えるわ」

「じゃ、行きましょう!」

愛美は嬉しそうに言った。

愛美は目がパッチリしたチャーミングな子だった。

パン教室ではみんなと同じように接していて、特に愛美と親しくしていた訳では無かったので、突然誘われ
『なんで私?』と思ったが、時間も有ったのと、これからもパン教室で顔を合わすので親しくしておこうと、誘いに乗った。

店は雰囲気も良く、珈琲も美味しかった。

愛美は
「加藤さん、ご結婚されて何年ですか?」

首を可愛らしく傾げて訊いてきた。

「13年と半年になるわね」

「旦那様とはラブラブなんですか?」

くりくりの目を更にくりくりにして訊いてきた。

「あはは…仲は良いわよ。ラブラブかどうかは分からないけどね」

「愛美さん恋人は?」

「居ますけど、彼、既婚者なんです!」

「えっ!」

「うふ。所謂不倫です」

「…」

「うふ。加藤さん真面目な奥さんだから驚きますよね。
私、悪い女なんです!」

まだ幼さが残って見える愛美が、不倫をしてると明るく言っていることに驚いた。

「不倫している女は嫌いですか?」

「あぁ…、うーん…、突然で驚いちゃって」

そう言って、珈琲を飲んだ。


「私からその人を好きになったんです」

「…」

「でもその人最近別れようって言い出して…」

「…」

「私は別れたくなくて、絶対に別れたくなくて!」


可愛いチャーミングな愛美の顔が、般若のような顔になった。

「奥さんから奪いたいんです!」

声も変わってきた愛美に、

「私、失礼するわ!」

伝票持ってレジに向かった。

「奪います!」

背中に愛美の声が刺さった。

次【棘】で。

No.39 11/09/23 10:34
秋扇公主 ( aVaWh )

>> 38 【棘】
「ご挨拶なさい」

由香は娘の肩を押した。

「新しいパパよ」

「パパじゃない!」

幼い娘は由香と男を鋭く睨みつけると、刺々しく叫んだ。

「ひかるのパパは、パパだけだもん!」



「本当に、俺の子なのか?」

晴れて夫となったはずの男は苦い声を出した。

「貴方の子よ」

何ならDNA鑑定したっていい。

「どうも、そんな気がしないな」



「今までの養育費は返すから、もう光には逢うなだって?」

元夫の晃はやつれた顔に殴られた様な驚きを浮かべた。

「もう、耐えられないから」

由香は寂しく笑った。
何だかもう一度離婚するみたい。

「あの子、貴方の子じゃないの」

「俺は、本当に馬鹿だな」

沈黙を破った晃は微笑していた。

「君の思惑通りにあの子を我が子として育て、そして君の策略通り離婚した」

晃の笑いが苦い皮肉を帯びる。

「俺が一番後悔してるのは、光を君に渡したことだ」

由香の顔に、刺された様な痛みが走った。

「あの子が君のお腹にいた時、いつも寄り添って話しかけたのは誰だった?」

晃の目に熱い光が宿って揺れた。

「皆の希望となる様に『光』と名付けたのも俺だ」

晃の目から潤んだ光が溢れた。

「それを君とあいつはずっと…」

「やめて!」

由香は泣き崩れた。

「子供はおもちゃじゃないんだ」

晃は目尻を拭うと、立ち上がる。

「我が子を他人に押し付けて舌を出していた奴が、
後から父親になれるわけないさ」

啜り泣く由香に、晃の声が杭を打つ。

「これ以上、あの子に憎しみを植え付けたら、今度こそ、本当に許さないぞ」

次は【父親】

No.40 11/09/23 18:13
橘花 ( ♀ kt7Nh )

【父親】
「もうちょっとゆっくり歩いてってば!」
花嫁は苛立ちを隠せない様子で声をあげた
「あぁ悪い…でも無理だよ、ワシには無理だ。誰か代理を頼む訳にはいかんのか?」
「お父さんが生きてるのに他の人に頼む訳にはいかないでしょっ!」
綺麗な化粧も台無しになるほど目を向いて怒る花嫁、我が娘とはいえまったく気が強い、誰に似たんだか…深いため息が漏れた。
今日は娘の真由美の結婚式、本番前のリハーサルだった
無宗教なのに教会で式を挙げドレスを着て、挙げ句バージンロードを歩くとは…だいたい30過ぎてバージンロードも何もあったもんじゃない
それだけならまだしも…父親も一緒に歩くのが決まりだと!
自慢じゃないが人前に出るのは昔から苦手なのに、ため息が出るのもしかたのない話だ。
「お父さんたら娘の結婚式が楽しみじゃないのかしら?」真由美は母親に向かってぼやいていた
「楽しみって言うか寂しいのよ、ふて腐れて文句言いたいのよ」
「ふーん、お父さん泣くかな?楽しみだわ」
控え室で妻と娘がケラケラ笑っているのをドア越しに聞いた
泣くもんか!行き遅れの娘がようやく嫁いでくれるなんて清々するとしか思いようがない!
怒りを落ち着け深呼吸をした、もう一度段取りを思いだそうとしていると
「そろそろ時間ですよ」と声をかけられ、未だ心の準備もできてないまま連れて行かれてしまった

ドアの前に立つとさすがの真由美も緊張しているのか顔がひきつっている
そういえば子供の頃、娘は緊張するとお腹が痛いとよく泣いていたな…
静かにドアが開く
途端にオルガンの音色やステンドグラスから漏れるキラキラとした光…
厳かだった
娘と共に一歩踏み出す
保育園の時、運動会で二人三脚したな、途中で転んで泣いてたっけ
また一歩踏み出す
父親参観で似顔絵を書いてくれたよな、得意気な顔で渡してくれた
一歩毎に思い出が鮮烈に蘇る
おめでとう!様々な人が声をかけカメラのフラッシュが飛び交う、しかしもう何も目には入らなかった
ゆっくりゆっくりと進む
【お父さん、紹介したい人がいるの】
そう言われたのはつい昨日のような気がするのに。
娘とワシが目標に歩いているのはその男、娘が選んだ結婚相手だ
涙をこらえその男をしっかりと見据えた
幸せにしてやってくれ、大事に大事に育てた娘だ、ワシの大事な娘なんだ。
ゆっくりと男に歩みより娘を渡した
父親って損だな…
ハンカチを渡してくれた妻に聞こえないほどの声で呟いた

次は【ハンカチ】でお願いします

No.41 11/09/26 00:19
@白猫@ ( 30代 ♂ BGhZh )

>> 40 「あら?」

マンションの駐車場に車を停めて踵を降ろした所にハンカチを見つけた..

拾い上げると霞色の生地に桜模様が施されている..

「誰のかしら..」

駐車場を取り巻くようにコの字見下ろすベランダを見渡した..

「ま、いいか..」

駐車場の出入り口近くにひっそりと佇む、一本の桜の樹を見つけると、早々に葉を散らした小枝を引き寄せてハンカチを結びつけた..

「よし、これで気付くよね」

結びつけられた小枝に遅咲きの花が咲いたようだった..


数ヶ月が経ったがハンカチの持ち主は現れなかった..

木枯らしの吹く季節となり、雨風に晒された霞色のハンカチは色褪せて、ただの白い包帯を結びつけたようだった..

主を待ち続けるハンカチは頼りなさそうにヒラヒラと冷たい風になびいている..


それから15年の歳月が流れた..


私は結婚する事も諦め独りで生きなければならない事を覚悟した..

そんな折り、駐車場の桜の樹の下に捨てられていた小さな白い猫を見つけた..

時々、ミルクを与えてやるだけだったが、いつの間にかテクテクと後ろをついて来るようになっていた..

桜の樹の下で見つけてから一年程経ったが今まで鳴き声を聞いたことがなかった..

私はこっそりと、この猫を飼うことにした..

猫と過ごす時間はとても楽しく過ぎていった..

買い物やドライブ、旅行..いつも一緒だった

それから数年が経った頃猫が部屋から飛び出して桜の樹の下でうずくまるようになった..

ミルクを与えても何も口にする事はなかった..


その後、白い猫は桜の樹の下に姿を見せる事も少なくなっていた..

時々見かけると樹の下でこちらを向いて、静かに微笑んでくれているようだった..

その姿を見たのが最後だった..

翌朝、冷えきった車に乗り込み駐車場から出ようとして、何気なく桜の樹を見ると小枝に結びつけられ、ヒラヒラと風になびくハンカチが視界に入り込んだ..

私は気にも留めず左右を確認するとハンドルを切った..


【車】

No.42 11/09/28 10:54
橘花 ( ♀ kt7Nh )

【車】
ジリジリと焼けるアスファルトの臭いが鼻につき目が覚めた
気がつくと恵は古い軽自動車の運転席を倒し横になっている。
何故こんなとこで寝ていたのか…寝ぼけ頭で戸惑い困惑していると後部座席に横になっている娘の美保が目入った。
恵はだんだんと思考が働きだし、その現実が重くのしかかるのを感じた
【そうだ私たちはアパートを出てきたんだ】
恵は高校を卒業すると同時に妊娠し駆け落ち同然に同級生だった恋人と他県に移り住んだ
古びたアパート暮らしで夫の職も定まらなかった、貧乏で贅沢は出来なかったが健康な娘も授かり幸せだった
しかし当然のように夫の浮気、暴力と借金、挙げ句お決まり事のように失踪してしまった。
美保はスヤスヤと眠っているのでそっと車のドアを開け、外で大きく深呼吸をした
寂れたドライブインだった、昔は華やかだったのだろう大きな駐車場は荒れ果てホームレスらしき人達が何人かいる
残りのお金は後五百円もなかった、美保にご飯を食べさせたらガソリンさえも入れられない
【いっそ死んでしまおうか…】疲れきった恵はそれがとても正しい事のように感じてしまった
「車で寝とるのはアンタの娘かね?」
急に声をかけられ恵はとても驚いた、足音さえもしなかった。
声の主はホームレスらしきおばあさんだった、もうかなりの年寄りだろう錆びたようなボサボサの白髪の隙間から靄のかかったような色の瞳が見えた
「アンタは金がないのかね、何故働かん?」
恵が答える間もなく次の質問を投げつけてきた
「しょうがないじゃない!仕事も子供を預けるところもない!保護を受けようと役所に通っても受け付けてももらえない!実家にも帰れないのよ!」
八つ当たりだった、不運をホームレスのおばあさんにぶつけている自分がとても滑稽で涙がにじんだ。
「私に残ったのはこの車だけ…もっともガソリンが切れたらただの鉄の塊だけどね…」
「実家は隣の県かね?」
車のナンバープレートを見ておばあさんが聞いた
微かにうなずくとゴソゴソと汚い袋から何かを取り出しながら言った
「甘えてるねアンタは、死ぬ気があるなら何故働かん?託児所つきの仕事だってある。それからね、アンタに残っているのは車だけじゃない、宝物が眠っているだろうが」
そう言っておばあさんは娘を指差した後、汚い何かを私の手に突っ込んだ
「親に土下座しんさい、死ぬ気があれば土下座くらいなんぼでもできる」
恵の手にはクシャクシャの千円札が三枚握らされていた、驚いて口を開こうとする恵をおばあさんは遮った。
「それは貸してやる、利子は高いぞ」それだけ言うとおばあさんは足早にどこかへ行ってしまった

恵は涙がとまらなかった
【実家に帰ろう…帰って親に謝ろう、それから何でもいい仕事をしよう…】

恵が握りしめたお札はほんわりと暖かかった

次は【娘】で

No.43 11/10/07 12:01
陽子 ( ♀ oQ9K )

>> 42 【娘】

綾子は届いたばかりの新商品を取りに倉庫に行った。

すると奥の方から話し声が聞こえてきた。

「お宅の社長は、そこら辺りに居る若い娘(こ)には無い気品と色気があるよね!」

「そうそう、大人の素敵な女性!
うちのお母さんと年近いけど、全然違う!
あんな女性に憧れるわ~!」

「確か独身だよね!」

「先輩の話だと、お子さんが小さい時に離婚して、一人で育てて来たんだって。
仕事も必死で頑張って、この会社も立ち上げたんだって!
凄いよね!」

「へぇ~!凄いね!
彼氏とか居ないのかな?」

「先輩が、何回かロマンスグレーの素敵な男性と歩いてるのを見たって言ってた。」

「やっぱりなぁ、居るよなぁ~」

「やだ!城田さん、うちの社長狙ってたの?!」

「あははは、狙ってなんかないけど、一度くらいお付き合い出来たらなぁくらいは思ってたっ!
な~んてね!あははは…」

綾子はふふふと笑顔になった。
二人に気付かれないように倉庫を出て、社長室に戻った。

「社長!倉庫に行かれたんですか?
言って下されば私が取って参りましたのに!」
社長秘書の郷田幸子が申し訳無さそうに言った。

「ありがとう。急いで見たかったから。
良く出来上がってるわね!」

綾子は自分がデザイン、生地も選んだ服を広げ、上機嫌に微笑んだ。

その夜、親友の白石恵子とフランスレストランで食事をした。

「木村さんとはもう十年の付き合いでしょ?匡哉君も大学生だし、もう結婚考えて良いんじゃない?」
白ワイン飲みながら恵子が言った。

「う~ん、私達今のままで楽しいし、このままで良いかなって思ってるの」

「ふ~ん。落ち着いた大人の付き合いか、それも良いかもね。」

その数日後、綾子は木村と共通の知人から、木村が娘程、年の離れた女性と結婚したことを知らされ愕然となった。


次は【思い違い】

No.44 11/10/09 22:32
橘花 ( ♀ kt7Nh )

>> 43 思い違い
【ぁたしは真姫、カレシは年上で、優しくてぇ包容力?ぁるしぃスゲェ甘えさせてくれる。バイト先の雇われ店長だからぁ…モチロン付き合ってるコトゎ内緒。
モテルから心配が絶えないのがタマニキズ?
店長がね、優しくぁたしを見て目をキュッと何度か瞑るのゎ、二人の合図…
ア、イ、シ、テ、ル、って言ってるの】
真姫は誰かに付けられているような気がしていた
最近、毎日不可解な出来事がある
バイトに行けば靴がなくなりアパートに帰宅すれば必ず無言電話があった
もちろん店長に相談はしていた、しかし【気のせい】で片付けられた
心当たりはある、同じバイトスタッフの加奈だと確信していた
加奈も店長を狙っていたのは知っていた、店長とデートの時は必ず後を付けてきた
気味が悪い…
店長の腕にしがみつきギュッとその手に力を入れた
気を取り直し、いつものように店長のマンションに向かった
二人きりになるとすぐに抱き締められて耳元から優しい声が響いてくる
アイシテルと…
その時突然、大きな音がして玄関のドアが開いた
キラリと光るナイフと狂気に満ちた瞳が私達を見据えてた

その後の事はよく覚えていない、気がつけば真姫は警察署らしき場所にいた
「だからぁ!ぁたしと店長は恋人同士で!加奈が嫉妬して!斬りつけてきたんだってば!何度言ったらわかるんよ?」
刑事はため息をつきながら何度目かの同じ台詞を吐いた
「あのね、あなたが刃物を持って不法侵入し斬りつけたのよ?落ち着いてね?」
店長は別室で話をしていた「あいつは、いつも僕を見てました…正気の瞳じゃなかった、後を付けてきたり恋人の加奈の家に毎日無言電話を繰り返し…僕は!ストレスでチックになって、まばたきを繰り返していた!」
「真姫さんはそれをアイシテルの合図だと言い張ってましたよ」刑事は冷めた口調で言った
「思い違いも甚だしいですね…」

【ぁたしと店長は愛し合ってる、他人ゎ誤解するかもだけど、きっとまた合図してくれる ア、イ、シ、テ、ルってね】

次は【愛】でお願いします

No.45 11/10/09 23:34
いちご。 ( ♀ L5U5nb )

>> 44
【愛】

「またか…」
俺は3ヶ月前から教師になった、いわゆる新米教師だ。

最近毎朝デスクの上に
手作りのお菓子がおいてある。

「ん?先生、今日もですか?」

「はぁ…。一体誰の仕業なんだか…」
「愛ですね…」
「愛って…」
「でもいつも食べてるじゃないですか。」
「まぁ…せっかくの頂き物だし…」

本当何なんだ。
違う先生に話をしても
皆「愛ですね」って言う。
絶対面白がってるな。
と言いつつも今日も美味しく頂く。
今日はマフィンか。


ガラッ

「失礼しまーす!」
「植木…またお前か」
「ひどーい先生!」
「で?今日は何の用だ?」
「この問題教えて…あっ」
「…何だ?」
「先生っマフィンの食べかす服に付いてるよ」
「…わ、本当だ」
「とってあげるね!」
「いや自分で……ん?」
「どしたの先生?」


何でマフィンだって分かったんだ?
食べかすだけ見て。

あ…

『一体誰の仕業なんだか…』
『愛ですね…』


「植木の下の名前って…何だっけ?」
「えー!覚えててよ!
愛だよっ愛♪」
「…最近毎朝来るとデスクにお菓子がおいてあるんだけど、何でだと思う?」
「…えっ、それはー
アレだよアレ!!
愛の仕業、じゃない?」
「愛の仕業…か」
「…あっじゃ、教室戻るね!先生バイバイ!!」

…何だその慌てよう。


「植木っ」
「な、何?先生」
「俺チョコ系のお菓子好きなんだけど」
「…え…」
「じゃ、早く教室戻れ」
「……先生っ!またねっ
明日も来るからね♪」


ったく…
愛の仕業…か。


次は【お菓子】で
お願いします!!

  • << 47 お菓子 「私、お菓子が好きで自分のために好みのもの作っちゃいます」 半分嘘、半分本当 なんでだろう、長年真面目に主婦をしてきて恋だの愛だの無縁な生活してきたのにね。 「あなたはお菓子みたいだ、そう口に入れた途端にフワフワ溶ける綿菓子みたい」 バツイチはもてる、と話には よく聞いた。 離婚した途端に寄って来るような男はろくなもんじゃない 二年前に離婚した、私は結婚生活10年目に夫に捨てられた 【捨てられた】と言えば聞こえが良い。 実際、悲劇のヒロインになりきる事ができ私にはとても都合が良い 夫婦生活は破綻していた、破綻するように目論んだのはもちろん私だ。 夫が嫌いだった 夫婦生活を拒みそんなにやりたいなら風俗にでも行ったらいい、と突き放したのは私…女は男がいつでも口にできるお菓子ではない。 はれて一人になるとまた男が寄ってくる 「あなたが作ったお菓子を食べてみたい」 新しい男は自らそんな提案をしてきた。 バカみたい ヘンゼルとグレーテルはお菓子の家を見つけたけれど、魔女の餌になるための撒き餌なのにね 壁はレープクーヘン、屋根はお菓子で覆われて、窓は透き通った砂糖でできていて お菓子の家は男の城になるのよ バカみたい 私はクリームチーズに濾したゼラチンを入れボールをかき混ぜた。 それでも女は男のためにお菓子を作ってしまう やっぱりバカみたいね 今度は自分のために呟いてみた 私はこれからもお菓子を作り続けるだろう【お菓子を作る女】を夢見る男のためにね 次は男でお願いします m(__)m

No.46 11/10/10 02:28
@白猫@ ( BGhZh )

>> 45 【お菓子】

会社からの帰り道..弁当を買うためにコンビニへ寄った..

いつもは朝食の残り物を夕飯にしているが今朝は寝坊して朝飯どころではなかった..

会社に一時間も遅刻して狸顔の課長にこっぴどく説教された..

「君!一体何歳になるんだね!?」

この台詞から始まり狸課長の演説から解放されたのが四十分後だった..


『あぁ..今日はいつもの倍以上疲れたな』

コンビニの扉までが重く感じた..店内に入ると温かな、おでんの薫りが鼻をくすぐった..

『もう秋だよなぁ..』

センチな気分に浸っていると小学生くらいの男の子がお菓子の陳列棚の前でしゃがみ込んでいた..

棚の上には小さな旗が立てられ『懐かしの復刻版』と銘打たれている

男の子はラムネのお菓子と猫ガムを掴んでレジへ走って行った..

『うわぁ、懐かしいな..俺が小学生の頃のお菓子だよ』

それから仕事帰りにコンビニへ立ち寄ってラムネのお菓子を買うことが日課となっていた..

白い錠剤のお菓子を口へ入れると小学生の頃の思い出がひと粒ごとに浮かんでくる気がした..

『真由美ちゃん..どこで何してるのかなぁ』

あの頃、転向して来たばかりの真由美ちゃんは、友達が出来なくて一人でいることが多かった..

隣りの席になった真由美ちゃんは、いつも心配しているような顔をしていた..

秋の遠足の日、やっぱり真由美ちゃんは一人だった。ピンク色のリュックサックが真新しかった..

「真由美ちゃん僕たちのグループに入んなよ」

他の男の子達は始めは嫌がっていたけど、いつの間にかみんなで騒いでいた..

遠足の帰り道..真由美ちゃんが「ありがとう」ってラムネのお菓子をコッソリくれた..

それから一週間後に真由美ちゃんは転向して行った..お父さんの仕事の事情だと後から先生が教えてくれた..

「懐かしいなぁ..」

ラムネのお菓子をしげしげと眺めていると店員の女性が品物を陳列しながら笑いかけてきた

「お客さん、そのお菓子好きなんですね」

「え、えぇ..」

「私も好きなんですよ..そのお菓子。初恋の思い出があって」

女性は微笑んでレジへ向かった..

棚に置かれていたラムネのお菓子はこれが最後の一本だった..

扉を押すと冷たくなったビル風が襟元に入り込んだ..


「真由美ちゃん、ラムネのお菓子もう無いから補充しといてね」

「はーい」



【遠足】


No.47 11/10/10 02:28
橘花 ( ♀ kt7Nh )

>> 45 【愛】 「またか…」 俺は3ヶ月前から教師になった、いわゆる新米教師だ。 最近毎朝デスクの上に 手作りのお菓子がおいてあ… お菓子
「私、お菓子が好きで自分のために好みのもの作っちゃいます」
半分嘘、半分本当
なんでだろう、長年真面目に主婦をしてきて恋だの愛だの無縁な生活してきたのにね。
「あなたはお菓子みたいだ、そう口に入れた途端にフワフワ溶ける綿菓子みたい」
バツイチはもてる、と話には よく聞いた。
離婚した途端に寄って来るような男はろくなもんじゃない
二年前に離婚した、私は結婚生活10年目に夫に捨てられた
【捨てられた】と言えば聞こえが良い。
実際、悲劇のヒロインになりきる事ができ私にはとても都合が良い
夫婦生活は破綻していた、破綻するように目論んだのはもちろん私だ。
夫が嫌いだった
夫婦生活を拒みそんなにやりたいなら風俗にでも行ったらいい、と突き放したのは私…女は男がいつでも口にできるお菓子ではない。
はれて一人になるとまた男が寄ってくる
「あなたが作ったお菓子を食べてみたい」
新しい男は自らそんな提案をしてきた。
バカみたい
ヘンゼルとグレーテルはお菓子の家を見つけたけれど、魔女の餌になるための撒き餌なのにね
壁はレープクーヘン、屋根はお菓子で覆われて、窓は透き通った砂糖でできていて
お菓子の家は男の城になるのよ

バカみたい

私はクリームチーズに濾したゼラチンを入れボールをかき混ぜた。
それでも女は男のためにお菓子を作ってしまう
やっぱりバカみたいね
今度は自分のために呟いてみた

私はこれからもお菓子を作り続けるだろう【お菓子を作る女】を夢見る男のためにね

次は男でお願いします
m(__)m

No.48 11/10/10 02:41
橘花 ( ♀ kt7Nh )

すいません💧重複しました💧
次は遠足でm(__)m

No.49 11/10/10 04:21
秋扇公主 ( aVaWh )

>> 48 【遠足】【男】
「この辺りで、お昼にしましょう」

女の様子を見計らって俺は声を掛けた。

「そうね」

女は安堵した表情で頷く。

「随分歩いたわ」


「お弁当の他にクッキー焼いてきたの」

女はビニルシートの上に次々広げていく。
正直、二人で食うには多すぎる。

「あなたがずっと家に居てくれて」

俺は出来るだけさりげない風に言ってみる。

「こんな風に毎日作ってくれたらいいのに」

「知ってるでしょ」

女は目を落として寂しく笑った。

「私、バツイチよ」


「お袋も、バツイチでした」

俺は言いながら、クッキーに手を伸ばす。

「というより、俺は本当の父親には会ったこともない」

彼女の注いでくれた紅茶を一口啜る。
魔法瓶入りのお茶ってどうしてこんなに熱いんだろう。

「遠足の時も、俺だけおやつは手作りのクッキーで」

皆にからかわれ、恥ずかしくて堪らなかった。

「お袋は不器用だったから、こんな綺麗には焼けなかったですけどね」

見てくれはともかく、少し甘過ぎる味付けは似てる。

「お袋が今の義父(ちち)と再婚してからは、暮らしも大分楽になりました」

苗字が変わると同時に、俺らは灰色のアパートから、
ケーキの上の砂糖菓子みたいな赤い屋根の家に移った。

「あの人には、本当に感謝しています」

それから、お袋は二度と手作りのクッキーを焼かなくなった。

「男の人って」

目の前の女は目尻に皺を寄せて笑った。

「幾つになっても母親を求めるものなのね」

「そうかもしれないな」

チョコチップを奥歯で噛み締めると、苦くてしょっぱい味がした。

次は【チョコ】

No.50 11/10/12 09:48
橘花 ( ♀ kt7Nh )

>> 49 【チョコ】
「これ…受け取って?」
弘樹は放課後クラスメートの理穂に呼び止められた
手渡された物は可愛くラッピングされた小さなピンクの箱だった。
「何これ?」愚問だ、今日はバレンタインデーいくら行事に疎い俺でも二月十四日にプレゼントを渡されたら中身はチョコだと推測はできる。
「何って、チョコに決まってるじゃない?バレンタインデーだし」
強気な態度ではいるものの理穂は少し伏せ目がちでもじもじしていた
「受け取ってあげなさいよ!理穂頑張ってチョコ作ったのよ」
少し離れて後ろの方に待機している理穂の友人達が囃し立てた。
面倒くさい…正直俺はこんなシュチエーションが苦手だった
「悪いけど…俺あんまり好きじゃないんだ」
後々、余計に面倒な事になるんだろうなと思う率直な台詞がつい口から出た
「好きじゃないって…チョコが?それとも私?」
恨みがましい目線が飛んでくる
「はっきりしなさいよ!」後ろに待機している女達も攻撃体制に入っているのが一目瞭然だった
「両方。甘いものは好きじゃないしよく知らない奴の手作りとか気持ち悪い、こんな場に友達と数人で来る奴も苦手」
言い終わらない間に可愛らしいピンクの箱は俺の顔を目掛けて飛んできた
理穂は泣きながら教室を走り去り友人達はサイテー!と言い捨て追いかけて行った

「それからどうなったの?」彼女は膝枕をしたまま俺を上から覗き込んだ
「クラスの女子から卒業するまで無視され続けたよ」俺は苦笑いをしながら言った
「最低よね、私だってそう言ったわきっと」
彼女は笑いながら俺の口に手作りの甘ったるいチョコを放り込んだ。
卒業してもう10年以上が過ぎた、今でもバレンタインデーが来る度にチクリと胸を刺す
あのチョコもこれと同じくらい甘ったるくて鼻をつく香りがしたんだろうな
昔も今もやっぱりチョコはあんまり好きじゃない

彼女には言わないけどね

次はプレゼントでお願いします

  • << 51 【プレゼント】 男は、至って穏やかな口調だったが、口を開くのも億劫なのか、まるで腹話術のように無表情に唇を少しだけ動かした.. 「じゃ、明日の朝7時までに五百枚、お願いします」 「わかった..」 そう答えると、男は大きな艶のある黒い鞄を抱え慌ただしく立ち上がる.. 「先生、これ以上迷惑かけないで下さいね」 三日前に新しく担当者となった男は、真っ白な原稿用紙を前にうなだれている私を一瞥すると、そそくさと部屋を出て行った.. 熱めに入れたコーヒーが冷たくなっていた。時計をみると午後11時を回っている.. 「書けるわけないだろ..」 担当者の前で今にも吐き出しそうな言葉だった.. 作家となり..いや、売れない作家となり二年が過ぎようとしていた.. 趣味で書いていた小説を気紛れに投稿すると、いきなり『佳作』を受賞した それが、選考委員の大物作家の目に留まり絶賛され次回の新人賞候補に選ばれた 目ざとい編集者は見切り発車の契約を持ち掛けてきた。私は即座にサインをした 降ってわいたような僥倖に夢でも見ている気分だった 新人賞選考日の一週間前に大物作家は失踪した。詳細は不明だが書斎の机に『ごめんなさい』と小さなメモが残されていたと報道されていた.. 私は大きな後ろ盾を失ったように、新人賞に落選した。そもそも、絶賛してくれたのは大物作家ただ一人だった.. 慌てふためいたのは見切り発車の契約を持ち掛けてきた編集者だった 「すみません!契約無かった事にして下さい!」 失踪事件が明るみに出て、30分後に担当者が泣きついてきた 「あのね、あんたが『新人賞間違いない、連載枠も確保しますから今の内に契約して下さい』こう言ったんだよ!だから私だって仕事辞めて作家で喰って行こうと決めたんじゃないか!家だって都内のマンション買ったんだよ!バカヤロー!」 私は沈黙しながら編集者の事情を延々と聞いていたが、一方的な言い分に怒りが噴き上がった.. 結局、折り合いがつかなかった。『取りあえず三流雑誌の不定期連載枠に空きがある』と話しを終えた.. 私は作家稼業に飽き飽きしていた。原稿料は月に三万円。当然バイトしながらの生活だ.. 「滅びの美学..か」 失踪した大物作家を思い浮かべた.. 私は一枚目の原稿用紙にタイトルを残し失踪した.. タイトル 『最後のプレゼント』 次のお題【白紙】
投稿順
新着順
主のみ
付箋
このスレに返信する

小説・エッセイ掲示板のスレ一覧

ウェブ小説家デビューをしてみませんか? 私小説やエッセイから、本格派の小説など、自分の作品をミクルで公開してみよう。※時に未完で終わってしまうことはありますが、読者のためにも、できる限り完結させるようにしましょう。

  • レス新
  • 人気
  • スレ新
  • レス少
新しくスレを作成する

サブ掲示板

注目の話題

カテゴリ一覧