*9**
19歳のマナミは毎日泣いて、泣いて、毎晩あまり飲めないお酒を無理やり流し込むように胃に入れていた。
とにかく辛かった、淋しかった…………
眠くても眠れず、飲んでも酔えず、忘れられない恋にひたすら後悔ばかりしていた。
逢いたい、逢いたい、声が聞きたい、逢いたいよぉ
助けてよぉ
そしてまた朝がくる。
仕事へ行き、何も考えず仕事をこなしまくる。
そしてまた夜がくる
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4年付き合った2つ年上の彼、直樹と3年同棲し、マナミは16歳の時直樹の子供を妊娠し中絶した。
18歳で2度目の妊娠、直樹とは結婚も考えていたが堕ろしてほしいと言われ2度目の中絶。 2度目の妊娠は双子だった。
19歳でマナミから同棲解消を提案し直樹は受け入れた。
少し距離を置いてみたものの2人はますます愛し合い深い情もうまれた。
ある日携帯で話ながらささいな事で喧嘩になった、売り言葉に買い言葉でマナミは別れを口にした。直樹はその言葉を受け入れた。
3日たちマナミは直樹にあやまりの電話をするが別れは別れと言われ、そのまま修復出来なくなってしまった。
どんなにあやまっても直樹はマナミを許しても別れだけは撤回させなかった。
同棲を解消して実家に戻っていたマナミは毎晩のやけ酒を母親に感ずかれ、直樹との別れを話した。自分はなんてバカな事をしてしまったんだと自分を責め続けるマナミに母はこう言った。 「もしかしたら直樹くんはマナミから別れを言うの待ってたんじゃないかな?そんな素振りはなかった?」まさかそんな事あるわけない、またアパートとを借りて一緒に暮らそうと話してたくらいなのに、そんな事あるわけない! とマナミは母の言葉は聞き流し毎晩辛さをお酒でごまかそうとしていたが、酔えず、眠れず、何も考えないように仕事を増やしかけもちし朝3時に起き1つめの仕事に行き22時まで仕事をして、それを1ヶ月続けた。 それでも直樹への気持ちは薄らぐ事なく、日増しに逢いたい気持ちがふくらみすぎて心は壊れそうだった。辛すぎて死ぬ事も考えた。 そんな時、出会い系サイトに登録し2人のメル友が出来た。
1人はマナミより8歳年上、もう1人は4歳年上だった。マナミは年上が好みで、8歳年上の方に興味を強くもち2人と1ヶ月ほどメールをし会う事になった。最初に会ったのは勿論タイプの8歳年上。ルックスは全く気にしないマナミは彼の少し太めの体型も、何もあたってないただの短髪のヘアスタイルも、別にきにならなかった。ただスポーツカーが大好きなマナミには彼の乗るスポーツカーにはすごくそそられた。
会った手応えはまずまず。相手はマナミの事をすごく気に入り、付き合ってほしいと言ってきた。即答はやめ少し考えさせてほしいと言いその日は送ってもらった。
2人目とは1週間後に会う事になったが仕事の休みが合わず夜21時から会う事になった。マナミの門限は23時。母に頼みこみ1時間だけのばしてもらった。
会った印象は……チャラチャラ…車は普通。ルックスはあまり気にしないがチャラチャラは嫌いなマナミ…微妙…もしくは却下と頭の中で思っていた。
2人とは同時進行でメールをしていて4歳年上の悠斗には直樹の事を忘れられず辛くて淋しい毎日のまだ続くやけ酒の事や色んな事を話した、直樹は優しく聞いてくれた。色んな話をメールや電話でして、マナミの中で悠斗は大切な友達になりかけていた。
8歳年上の本命君には直樹の事など全く話さずお互いの好きな事や音楽の話題で毎日メールをしていた。
なんでも話すようになった悠斗にもう1人メル友が居る事を話し、付き合ってほしいと言われて迷ってる事を打ち明けた。
その時すでにマナミの中で8歳年上のメル友は却下になりかけていた。
あまりメールや電話にマメでないのがマナミには微妙だった。
その点、悠斗はかなりマメ。しかしチャラチャラの印象からしてどちらとも新しい恋は無いなと思っていた。
もう1人のメル友に返事をすると悠斗にメールで告げると、悠斗から電話がかかってきて、「俺じゃダメかな?」といきなり言われた。
どちらとも付き合う気は無かったがストレートな悠斗の言葉に少しトキメキYESの返事をしてしまった。
直樹と別れて3ヶ月。
まだまだ直樹の事を心の底から愛していた。一生忘れる事なんて出来ないと思いながらも悠斗と付き合うようになった。
悠斗にはマナミの気持ちは伝えてあった。
毎日悠斗とたくさんメールし、電話し、少しずつマナミは癒されていった。
ハードな日々の仕事と途切れる事のないやけ酒でとうとうマナミは倒れて検査入院をする事になった。
仕事の合間を見てお見舞いに来てくれた悠斗はスーツ姿だった。
ときめいた…
軽い胃炎で退院し、体調が回復してから初めて悠斗とデートをする事になった。デート当日、実家暮らしの悠斗の家に泊まり体の関係をもった。
毎週休みを合わせデートを重ねるようになった。
悠斗はマナミに元彼の事は無理に忘れようとしなくていいよと言った。
マナミの心の中には常に直樹がいた。しかし体を壊してからはお酒をやめた。
優しく包みこんでくれる悠斗へ惹かれていった。
ある日悠斗が言う。
「ペアリングとかどぉ?」マナミは直樹との指輪を別れてすぐに捨てていた。しかし捨てる時にしばらくは指輪はしたくないと思っていた事を話した。
マナミにとって悠斗はいつも優しくあたたかい存在だった。
優しすぎ、マナミの事を心から信用する悠斗に物足りなさを感じたマナミは付き合いだして半年後、新しくサイトで知り合った人と浮気をした。
たった1度だけの遊びのつもりだったが相手はマナミを気に入り、ストーカーの様な行為を始め、怖くなったマナミは全てを悠斗に話した。
悠斗は許した。それどころか危険だからとしばらくマナミのボディーガード役をしてくれた。
マナミはもう浮気は絶対しないと約束し、ペアリングを買おうと言った。
「悠ちゃん、ごめんなさい、反省してます」
「マナミ、次はもうないよ、だからもう絶対しないで」
「うん、ありがとう」
今までシルバーの指輪しか、はめたことないマナミはプラチナのリングに重みを感じた。
マナミはハードな仕事を今だに続けていた。
「仕事1つにすればいいのに」
悠斗はマナミの体を心配して言った。
「最初は何も考えたくなくて2つ始めたけど、ガンガン貯金して欲しい物を買うために頑張ってるから、このまま続けるよ、心配してくれてありがとう」
2人は海沿いを悠斗の車でドライブしていた。
「欲しい物って何?」
「車!!今の車は貯金たまるまでの繋ぎで、もう少しで買えそうなんだ。16の時からずっと片思いの車があって、それに乗りたくて車の免許もAT限定じゃなくて普通に取ったんだ」
「へぇ~、じゃあもう3年の片思いじゃん、どんな車?」
「悠ちゃんは興味ない車種だよ(笑)」
「え~、どんなの?」
「×××××××の、Rー34!!!」
「うわ、またゴツイなぁ(笑)」
「うん、よく言われる。でも中古だよ、もう製造されてないから(泣)」
「中古でも改造してるやつは高いでしょ。」
悠斗は車を海の見える位置に駐車し、興奮するマナミの顔を見る。
「うん、だから月の給料の3分の2は毎月しっかり貯金したらだいぶ貯まったよ、雑誌でイイ感じのやつも見つけたし、今度見に行ってみようかなって思ってる」
マナミはかなり興奮気味に早口でしゃべりまくる。悠斗は優しい眼差しでそんなマナミを見る。
「どこのお店?」
「××××ってとこ、知ってる?」
「あ~、あの店はやめた方がいいなぁ、色々問題あるよ。」
悠斗は車のディーラーの営業マンなので、そうゆう方面には顔がきく。
「え~~でも、そこのが今のとこ1番だもん(泣)」
「じゃあ、今度一緒に見に行くよ、俺の中で色々査定してあげるよ」
「本当に?!嬉しい!!!」
1週間後、2人で見に行き、店員に怪しまれないように悠斗は車のすみずみまで査定した。
店員が離れた時悠斗はこっそりマナミに言った。
「とりあえず見たところ事故車ではないし、手入れもいいし、いいと思うよ。でもこの店で買うのはやめた方がいい、俺が違う店にこの車を引っ張るから、そこで契約した方がいいよ後々ね。」
「え?そうなの?私はよく分からないから、悠ちゃんがそう言うならそうする」
店員が戻る前に2人は店を出た。
「あれ確定?」
「うん!まだ親にも相談してないけど、相談したら女の子の乗る車じゃないって反対されるから、事後報告の予定。」
「そっか、じゃあ車引っ張れたら言うよ。」
「お願いします!」
5日後悠斗は約束通り車の準備が整った事をマナミに伝え、その日の夜お互いの仕事が終わってから悠斗がマナミの家まで迎えに行き近くの駐車場で車をとめ、書類のチェックをした。
その日から毎晩2人は仕事が終わってからマナミの門限までの間逢っていた。
1ヶ月後、マナミの片思いの車が納車された。
クリスマスが近くなってきたある日、マナミは今だ忘れる事の出来ない直樹に電話をして、どうしても聞きたい事があった。
迷った、しかし同じ失敗を繰り返したくなかったマナミは、どうしても直樹に聞きたかった。
携帯の画面に久しぶりの名前と番号が表示される。
「プルルル…」
番号かわってないんだ、意外。出るかな。マナミはそんな事を思いながら緊張して手が汗でびっしょりだった
「もしもし…」
懐かしい直樹の声。
「あ、もしもし、分かる…かな?」
「分かるよ、マナミだろ?」
電話の向こうは賑やかな音で声が聞きとりずらい
「出来たよ。直樹も新しい彼女出来たでしょ?」
「俺はお前と別れてから誰とも付き合ってないよ。」 意外な直樹の言葉にマナミはドキドキした。
「久しぶりだし、会わない?」
直樹からの誘いに何故電話したのかも忘れマナミは返事してしまった。
「うん、いいよ。」
2日後、同棲していたアパートの近くの広い駐車場で2人は再会した。 数台停まってるが直樹の車がなくてマナミは暗闇の中目をこらした。
すると携帯が鳴った。
「もしもし…直樹まだ着いてない?」
「いや、マナミもしかして車かえた?」
「うん…」
すると正面から2回パッシングがあり
「俺も車かえた、これ。」
と直樹がパッシングと同時に言った。
マナミは電話を切り直樹の車の隣に駐車した。 2人は車から降り相手の車をマジマジと見ながら話しだした。
「どっちも車の事前もって言ってなかったから分かりずらかったね。」
「うん、でもマナミがマジで34買うとはビックリしすぎ(笑)」
「アハハ、カッコイイでしょ」
「まーまーかな(笑)」
直樹はタバコに火をつけた。つられてマナミも自分のタバコを取り出す。
「俺の車禁煙だから吸い終わったら乗ろう。」
「へぇ…どうして?」
「新車をヤニで変色させたくないから。マナミのは?」
「私のは普通に吸いまくりよ、しかも中古だし。」
「34は新車ないでしょ。」
「うん。寒いね。」
マナミは、あの答えを聞くタイミングを見計らう。
「じゃあ、マナミの車で吸っていい?」
「え……あぁ、いいよ。」
「微妙な返事だなぁ~、ミラーに彼氏のプリクラ貼ってそう(笑)」
ドアを開け乗ると2人は乗りこみ、
「やっぱ土禁かぁ(笑)、俺も(笑)」
「もちろん(笑)」
「ミラーのプリクラにも参るけど、コレはまたすごいな。」
マナミの車のダッシュボードの上には悠斗とのメッセージ入りの写真がシルバーの写真タテに入れられ飾られていた。
悠斗の車にも同じように飾ってある。
「この人が今付き合ってる人だよ。」
「へぇ~、そして指輪かぁ~、好きなの?そいつの事。」
「うん…」
「相変わらずの音楽だね~、マナミ少し痩せた?」
「痩せたよ、8キロくらい(笑)」
「前より可愛いくなったよ。」
「はいはい。それでさ、あの答えは?」
「あ~…、マナミから別れを言われるの待ったわけじゃないよ。 俺と会う事彼氏に言った?」
「言ってない。 待ってたわけじゃなかったんだ。」
「彼氏知ったらキレる?」
「多分キレない。でもショックとは思う。」
「ふ~ん、愛されてる?」
「と、思う。」
沈黙が流れる。
「よし、次は俺のに乗って話すか! 聞いてほしい歌もあるし。」
「聞いてほしい歌?何?」
「まぁまぁ聞いてみてよ、行こ。」
2人は直樹の車に移動する。
直樹のミラーにはプリクラが無かった。キレイな内装。香水の匂いが懐かしい。
流れてきたのは昔マナミがよくカラオケで歌った曲だった。 サビが流れる。
『今でも~♪あなたが好きだから~♪』
「懐かしいね、この歌。」
「今の俺の気持ち。 俺今でもマナミの事好きだよ。」
直樹がマナミの顔をのぞきこむ。マナミは緊張して直樹の顔を見る事が出来ない。
「嬉しい。でもじゃあどうして別れたの?」
「マナミに別れを言われて、1回別れた方がいいのかなって思ったから。でも別れて後悔した。」
「そっか…」
「マナミは?もう俺の事忘れた?」
「ん~…………」
「マナミ、こっち向いて。」
「あっ…ん………」
マナミが直樹の方を向いた瞬間、直樹が激しくキスをしてきた。
マナミは抵抗しなかった。マナミの胸はドキドキが大爆発していた。
直樹の手がマナミの胸を服の上から激しくもんできた。
マナミは初めて抵抗した。
「彼氏からマナミの事奪っていい?」
「え?!本気??」
「本気!!!」
「……………………………………………」
「何も言わないって事は俺にも可能性有りだな。」
「何も言え…ん……んっ……」
直樹は激しくマナミの唇を貪る、マナミも直樹の唇を熱く貪る。直樹の手がマナミのニットの中で暴れる、ブラジャーの上から強く胸をもむ。
「あっ…待って……んっ…」
いきなり直樹がマナミから離れる。
「ラブホ行こ」
「ダメ… ごめん」
マナミはあやまりながらも揺れていた。
直樹はマナミのシートを倒した。マナミのスカートをまくりあげショーツの上から舐め始めた。
マナミは揺れていた気持ちを頭からはなし、体中が熱くなりだしていた。
「わかった………んっ……行こ……。」
「よし!」
マナミは自分の車に戻り、タバコに火をつけた。
(だめだ、悠斗を裏切ったらダメだ、直樹はもう過去なんだから。)
直樹の車が発信し、マナミは後ろをついて行こうとしたが直樹に電話した。
「ごめん、やっぱごめん、帰る。」
直樹はハザードをつけて車を寄せる。
「分かったよ(笑) 気を付けて帰れよ(笑)」
そう言って窓から手を出しマナミに向かって手をふる。
「ごめんね、じゃあ。」
電話を切りマナミはクラクションを2回鳴らして直樹の横を通過した、直樹も同じように鳴らして逆方向へ発信したのがミラーで見えた。
マナミは走りながらオーディオのボリュームを上げ、ウーハーのバスも上げ自分の心臓の早さを紛らわせるようにした。
帰宅し車を駐車してエンジンを切ると、携帯のディスプレイが光ってる事に気づき開いて見ると、悠斗からメールが来ていた。
(今何してる?今夜逢いたい 悠斗)
「無理~………今夜は1人でいたい。」
そうため息まじりにマナミはつぶやいた。
携帯が鳴る、表示は直樹だった。
え…出るか出ないか、迷いながらもマナミは通話ボタンを押した。
「もしもし…」
「俺、もう着いた?」
「うん…」
「また会おうよ」
「う~ん…微妙… 聞きたい事があっただけだし、彼に悪いから…」
「まぁ、また電話するよ… ッーッーッー」
ぼーっとフロントガラスをみつめるマナミ。
悠斗から着信が入る。
「もしもし、ごめん、今メール見た」
「ううん、忙しい?」
「大丈夫、でも今日はもう門限まで時間ないから…」
「うん、じゃあ今夜は逢えない分いっぱい話そうよ」
「うん…」
「どうした?」
「私今車の中でさ…今から家入ってお風呂とかだから…また明日話そう。」
「え?今日仕事夕方までじゃなかったっけ?」
「うん… 仕事でイヤな事あってさ、1人で少しドライブしてた。」
「そっかぁ、お疲れ様。じゃあまた寝る前にでもメールちょうだい」
「うん分かった、ごめんね」
ため息をつきながら車を降りるマナミ。
1週間後の休日、マナミは悠斗と夜の海岸を散歩していた。
「寒いね、海は風もあるし、真冬の夜の海岸は凍死しそう(笑)。」
「うん、マナミ風邪ひくよ、もう車乗る?」
「もう少し、 あそこ座ろう。」
砂浜にある大きな岩をマナミは指差した。
2人並んで座り、マナミは真っ暗な夜空を見上げてつぶやいた。
「私、今まで生きてきた中で、幸せって思う事無かった。楽しいし、嬉しい、おもしろくて、居心地よくて、気持ちよくても、幸せって言葉を意識した事なかった。」
夜空に月はなく、たくさんの星が今にも降ってきそうな勢いでキラキラ光っていた。波の音、冷たい風。マナミは頭がスッキリしていた。
悠斗はそんなマナミを優しく抱き寄せた。
「うん。」
「でもね、悠斗と一緒に居るといつも幸せって思えて、これが幸せなんだって最初は感動したよ。」
「俺もマナミとの時間を幸せって思うよ。」
2人は軽くキスをした。
「マナミ、風邪ひくよ車行こ」
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