二つの選択

私は５歳離れた姉、３歳離れた兄の３人兄弟の末っ子で産まれた。

家はさほど裕福ではなく、むしろ貧しかったと思う。

でも姉と兄は大変可愛がられていたのであろう、生まれた時、行事ごとの写真を、プロのカメラマンに撮ってもらってたのが、アルバムにあった。

私の写真は……

ベビーカーに乗って、半身が切れてる写真が一枚のみだった。

私の出生は、人より少し早かった。母が私を身篭った時、父は仕事が不安定な事もあって、良い顔しなかったらしい。でも堕ろすお金もないからと、父が母のお腹を殴ったり蹴ったりしてたらしい。

それでも私は五体満足に生まれてしまった。。

それがそもそもの間違いだった。

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小さい頃の記憶は当然あまりないので、ところどころになりますが昉

母は育児ノイローゼになりやすいタイプらしく、姉や兄もよく虐待してたらしい。まだ赤ちゃんの私に熱湯かけようとしたり、紐で首を絞めようとするところで、母の宗教の仲間が発見して、私はそのまま母方のおばあちゃん宅に２年間程預けられる事になる。


この時、見つけてくれなければ…何の痛みもなく…

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おばあちゃん宅で過ごした日々は全く記憶にない。でも物心ついた時のおじいちゃん、おばあちゃんの印象は『厳しい』だった。正座・敬語は当たり前。テレビでよく見る、祖父母に甘えるなんて、到底想像できなかった。


３歳くらいの時、おじいちゃんが体調を悪くしたのを機に、母が迎えにきた。ほとんど記憶がないのに、何故かすぐに母を受け入れれた。

４歳手前でおじいちゃんが亡くなった。朝、電話がかかってきて、母が泣きじゃくったのを覚えている。お焼香の時、母と一緒に手を合わせた。

その時の母の手のぬくもりが私は不謹慎だけど嬉しかった。

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５歳、幼稚園に入園した。

でもほとんど幼稚園には行ってない。

プールにも入ってないし、行事にも参加してない。

たまに通園した時、お弁当を忘れたので、昼ご飯前に母がほっかほか亭のデカいままのお弁当を持ってきて、皆に笑われた。

たまに母が作ってくれる時もあったけど、子供心をくすぐらない内容で、私はおかずを落としたフリして、お弁当を捨てていた。

そしたら…先生に密告された。

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当然母はショックで泣いていた。そしてその日から一切お弁当は作ってくれなくなった。

母は元々家事が苦手だったみたいで、５歳年上の姉が家事全般をしていた。

精神的に不安定でもあった母は、時折私ら兄弟を虐待した。真冬の寒い時に、ほぼ下着の状態で外に放り出されたりもした。靴もなかったから、足がすりむいた事もあった

特に虐待がひどかったのは、兄と私だったから、兄とはほんとによく遊んだ。

その兄にもあんな事されるなんて思いもしなかった。

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母の虐待といっても、１日中というわけでもなく、ある程度は母親をしていてくれた。買い物に一緒に行った時は必ず外食ができた。

母が買い物や外出する時は、決まって１人で先に出て、何分かあとに電話がかかってきて、電話を取った人が、母と外出できる権利を得れた。

その争奪戦をよく兄弟でしていた。時には殴り合いになったりもした。

母の横で寝たい権利もやはり争奪戦になった。

母は虐待をしていても、自分がスッキリしたら、ものすごく優しかった。それをわかっていたから、母の優しさに触れたい一心だった。

母から心ない罵声を浴びた時は、どうしても母からの愛情を受けたかった。

母は私に対して体への暴力は並くらいだったけど、言葉の暴力が兄弟で一番酷かった。

喧嘩したり、悪い事をしたわけじゃないのに、ふとした時に、あんたはほんとは生む予定じゃなかったんよ～堕ろすお金もなかったしね～今自分で死んだら、お金もかからないし、事件にもならないから、私らに迷惑かけたくなかったら、死んでくれないかなぁ？なんて当たり前のように言われた。

まだ小学生にもなってなかった私に…

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それでもやっぱり母親からの愛情は欲しかったから、母に媚びる事もしていた。自分なりに良いコになろうとしていた。

小学生になり、クラスで一番整理整頓ができると褒められたのを機に、ゴミ屋敷化していた家を、こまめに掃除するようになった。

たった30分のテレビが見たい時は、母と父の肩揉みを１時間はした。

それでもやっぱり言葉の暴力は耐えなかった。

普段特に接する事のない父からも、生まれてくるコじゃなかったと言われた時はほんとに辛かったな。。

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それでも私の中ではわいわいと、父の給料日の時や、皆の誕生日、イベントの時はささやかながら、団欒を持っていた。

プロレスごっこもした。

ビデオカメラがなかったからカセットテープに皆で声を入れた。

楽しい記憶もたくさんある。

あの男が来るまでは。

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母は、姉の担任の先生（Aさん）や、宗教活動でよくしてくれた男の人（Bさん）を招いて、父も交えてごはんを食べたり、遊びに行ったりした。

汚い家なのによく呼べるなと子供心に思った。

特にBさんが家に来た時は、何やら親密なようで、父を差し置いて、べったり横並びに座っていた記憶がある。

そのBさんの横に私は呼ばれて、私はBさんからテーブル下でいたずらを受けていた。

まだ小さいから何を意味してたのかわからなかったけど、日に日にエスカレートして、最終的には下着の中にまで手を入れられた。

そのことは母や父には絶対言ったらダメな事だけはわかった。

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ある日Bさんは父が仕事からまだ帰らない昼過ぎに、家に来た。

私ら兄弟3人に百円ずつお金を渡して、ちょっとの間外で遊んでおいで～と言われた。

兄と私は単純にお菓子が買えるから、喜んでたけど、当時11歳になろうとしてた姉は、母の不倫に察したのだろう。その百円をにぎりしめながら泣いていた。

ほんとにちょっとの間だけ買い物をして、家に戻ると、姉の予感は的中した。

母とBさんは、慌てたように自分らの服を正して、母からはほっぺたを数回叩かれた。

Bさんが、私にもこの間気持ち良い事してあげたやろ～あれの大人ﾊﾞｰｼﾞｮﾝやでと放った一言で、更に母は激高して、かなづちで殴られ、意識がなくなった。

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目が覚めたら病院だった。母は事の事態に卒倒したらしく、鎮静剤で眠っていた。その間に私は医者から虐待を受けているんじゃないか？と聞かれた。手足に無数にある傷は、母にやられたのもあるが、飼い猫が居て、家も汚い状態なので、ノミアレルギーからとびひ状態になったのがほとんどだった。

今回金づちで殴られたのも、私が遊んで金づちを振り回しているうちにぶつけた、母親は何も悪い事していない。と医者に告げた。

目が覚めた母に、泣きながらごめんね、ごめんねと謝ってきた。抱きしめてくれた母のぬくもりが嬉しくて一緒に私も泣いた。

怪我が治るまでは、母は私に優しかった。

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その事件があってからしばらくBさんはやってこなかった。

代わりにAさんがよく家に来てた。そして学校内では、私ら家族に酷い噂がまわった。

母は薬中で子供を虐待、姉は虐待されて精神的に病んでいる、兄もまた虐待のせいで、野良猫や学校の動物を虐めたり、殺したりして、その肉を食べている、私は小学１年生で売春していると。

兄に関しては校長にまで話が持ち上がり、まだ小３の兄にたいして学校中から酷い仕打ちを受けた。

全部Aさんが流したデマだった。

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父にもその話が耳に入り、仕事にまで影響が出た。父は職人だった。たいした給料はないけど、中学卒業からずっと働いていた職場だった。

でも私らの話もあり、止むを得なく仕事を辞める事になった。

私達は、母のおばあちゃんに頼み込んでお金を借り、田舎に引越をした。

今思えば、よくニュースにならなかったなぁと思う…。今現在こんな仕打ちがあったら、マスコミも黙ってないだろうと…。

噂が広がるのは怖いと子供心に思った。

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田舎に越してからは、しばらくは穏便に時を過ごした。

小３で初めて友達ができた。

みきちゃんとよっちゃん。

みきちゃんはクラスの中心的な存在だったので、始めはきっと根暗な私に、先生が友達になってあげてと言ったのだろう。

よっちゃんは、私と似たようなすこし暗い印象だったけど、ジャニーズが好きで、私はテレビや雑誌を見ないから、話題についていけなかったけど、よっちゃんからの情報で少しずつ興味を持った。

みきちゃんとよっちゃんを通じて、世間一般的な事を色々知った。

お風呂や服の洗濯、歯磨きなど…私は人よりできてなかった。そりゃ虐められるわけだと改めて反省した。

整理整頓だけはできるのに、不思議だね（笑）と笑われた。

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