欲情の果て

レス190 HIT数 189691 あ+ あ-


2010/12/14 23:18(更新日時)

🔞猥褻な表現も多数あるかと思うので、不快に思う方は見ないで下さい🙇


後悔の日々…

反省の念もあって 綴ってみようと思います。

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No.1273110 (スレ作成日時)

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No.101

『…期待って…?』
恐る恐る、琉美が訊ねた。

『琉美も、俺と同じ位 俺の事好きでいてくれてるかと期待してたけど… 所詮は 俺の思い上がりだったんだな』

寂しそうに、課長が呟く。


…仕事の事じゃ無いのか。

琉美は胸をなで下ろした。
慌てて、体裁を繕う。

『すみません。明日の事で頭が一杯で…。つい、取り乱してしまいました』

しかし毅然として 言葉を続ける。

『でも、今日は これから接待ですよね? 仕事とプライベートは混合して欲しく有りません』

『なんだよ~。そういう事か(笑)』

課長は 嬉しそうにそう言うと、車を発進させた。

No.102

『今日はね、接待じゃ無いから』

『…え?! だって…』
琉美は、思わず 課長の横顔に目を遣る。

『ああでも言わないと、会社の連中の手前マズいだろ?』

課長が、悪戯っ子の様な笑みを浮かべた。

…そう言えば…

社内では 携帯のメールで遣り取りする訳にもいかず、密会の約束を交わす手段が無い。

No.103

『琉美、俺達だけの“合図”決めようよ』
課長が 弾んだ声で言う。


お互いに様々と提案し合っている内に、車は あっという間に目的地へと着いた。


京壁造りの…高級感漂う料亭。


琉美は、思わず気後れした。

『この店のフグは最高だよ。夕方 予約入れといたんだ』

言って、課長が再び琉美にキスをする。

『行こっか』

課長に促され、琉美は素直に頷いた。

No.104

課長が手を差し出す。

琉美は 躊躇いつつ、その手を握った。

手を繋いだまま、料亭の敷居を跨ぐ。

『中川様。お待ちしてました』
すかさず 和風姿の女性が、課長に挨拶する。

『急に無理言って、申し訳無いです』

『いいえ、運良く 下関から程度の良いトラフグ入ったので』


琉美は 二人の会話を聞きつつ、場慣れした感の課長に 改めて尊敬の念を抱いていた。

No.105

個室へと案内され、座卓を挟んで課長と向かい合う。

『直ぐに用意させて頂きます』
言って、和風の女性が退いた。


琉美は、緊張して正座していた。

『足 解しちゃってよ』
課長が微笑む。

No.106

『雅也さん、あの…この店には 何度も…?』

琉美は、自分が場違いな様に思える空間に 緊張していた。


『接待で何度も…。でも、女性と2人っきりで来るのは初めてだなぁ』

課長が 苦笑いしつつ答える。

『あっ、先刻の和風の女性が 女将さん。ご主人が板長で、俺達常連は“大将”って呼んでいるんだ』
琉美の緊張を解そうとしてか、課長が 立て続けに言葉を繋ぐ。

『琉美、確か 茶道やってたよね? この料亭は、茶懐石の出張もやっているから…。 琉美も気に入ってくれると思うんだ♪』

No.107

言われて、琉美は 室内を見渡した。


掛け軸・生け花…
完璧な空間だ。

生け花は“茶花”式
掛け軸は 墨一色のみだが、墨の濃淡に 奥深さを感じる。


『裏千家…ですか』

感嘆しつつ、思わず琉美が呟く。

庭を見たい衝動に駆られ、正座を解き 障子へ滲み寄る。

No.108

障子を開き、琉美は中庭に目を遣った。

『見事な“枯れ山水”ですね…』
思わず感嘆する。


『俺には分からない世界だケド…琉美は好きだろうって思ったんだ』

課長が、満足気に微笑んだ。

No.109

『…凄い』


琉美は、只々 感嘆していた。

緊張感すら 遠い次元に追いやっていた。



…抱かれたい

初めて、精神が その感情を抱く。


触れられては無く、肉体は それを求めていない。


ただ…
課長に対する尊敬の念が、琉美の奥底を破壊しつつ有った。

No.110

尊敬の念は、憧れへと変化していた。

互いの体を重ねる度に、情が深まりつつあった。


憧れと情とが紡ぎ合い、それは 愛情にも似た感情になっていた。


体だけで無く 精神までも、課長を求めつつあった…

No.111

障子を閉じ、琉美は席へと戻った。


『こんな素敵な店知ってるなんて…流石は“大人”ですね』

『まあ ネ、伊達に年食ってる訳じゃ無いから(笑)』

琉美の言葉に 課長が笑顔で返す。

『雅也さん…』
琉美が口を開き掛けた所で 障子が開かれた。


『失礼します。食前酒と先付けをお持ちしました』
先程の和服の女性…女将さんが、中腰で挨拶し 座卓へと料理を運ぶ。

目の前に、品良く綺麗に料理が象られた皿が置かれる。

『こちら様には、食前酒では無く フグのヒレ酒を』

課長には食前酒、琉美へはヒレ酒を配膳すると、女将さんが退席した。

No.112

『琉美、乾杯しよ♪』
課長が 食前酒の入ったグラスを掲げる。

琉美は、ヒレ酒の注がれたお猪口を手にした。

器は交わさずに 乾杯する。


『季節感も盛り込まれた 素晴らしい八寸ですね』

琉美は、先付けの皿に目を遣り 賞賛した。

『見た目にも楽しませてくれるけど、舌も楽しませてくれるよ』

食前酒で喉を潤し、課長が料理を勧める。

No.113

琉美は、手にしていたお猪口を口元へ運んだ。

炙られたヒレの香ばしさが、日本酒の澄んだ香りと相まって食欲を擽る。

『美味しい…!!』
ヒレ酒を口にし、琉美の顔が綻んだ。

『…だろ?』
課長が満足気に頷く。

『琉美は果実酒苦手だろうから、食前酒 変更して貰ったんだ』


確かに、琉美は果物が苦手だった。

課長の気遣いが嬉しい。


先付けに箸をつける。

崩してしまうのが勿体無い様な料理。

『…美味しい…』

『琉美、さっきから“美味しい”しか言わないなぁ(笑)』
課長が笑って言う。

『だって、美味しいから…』

琉美は呟きながら思った。
…芸能レポーターは、良くも様々な表現で料理や味わいを言葉にするもんだ…

只々、美味しいの一言しか口に出来ない自分の語彙力に苦笑する。

No.114

琉美は、空になった[お猪口]に手酌し掛けた。

課長の手が、お銚子に掛けた琉美の手を包み、制止する。

『“宅呑み”じゃ無いんだから…(笑) 琉美? 俺の存在 忘れて無い?』

課長が 苦笑しつつ、酒を注ぐ。

『スミマセン!!…つぃ…癖で』

琉美は、思い掛けずリラックスしていた自分に驚いた。

No.115

緊張感を忘れさせる程に 居心地の良い空間。


思わず 琉美の酒は進む…

No.116

『琉美は 相変わらず飲みっぷりがイイなぁ(笑)』
課長が、苦笑しながら言う。

『すみません…つい…』
慌てて 琉美が、お猪口を置く。

『明日はプレゼンなんだから、今日は お銚子一本だけだよ』

課長から 牽制の声が掛けられた。

『はい! 了解です』
『素直で宜しい』

二人で顔を見合わせ笑い合う。



ふと 障子越しに人の気配を感じ、琉美が目を遣った。

『失礼します』
障子の向こうから、女将さんが声を掛けて来る。

『鍋の支度が整いました』

言って、障子を開け 仲居さんと共に女将さんが料理を並べ始めた。

No.117

フグの薄造り・白子・フグの唐揚げ…

卓上に 所狭しと料理が並べられる。


女将さんは、卓上コンロの火力を調節すると『鍋が空きましたら、内線でお知らせ下さい』と言って配膳を終えた。

『どうぞ ごゆっくりと…』
笑顔で会釈し、女将さんが障子を閉める。


『…凄い料理…豪華ですね』
琉美は、感嘆し呟いた。

No.118

『さぁ、食べよ♪』
課長が、フグの薄造りへと箸を伸ばす。

『こうして芽ネギをフグで巻いて、好みで紅葉おろしを乗せて…』

解説しながら、フグを口に運ぶ。

『うん! 美味い!!』
課長が、満足気に頷いた。


琉美も、課長を真似てフグに箸を付けた。

人生初のフグを 恐る恐る口にする。

『…美味しい!!』
琉美は驚いていた。

薄いのに、コリコリとした歯触り…淡白な中にあるシッカリとした旨味…

『フグって 美味しいんですねぇ…』
思わず言って、琉美は自分の間抜けな言葉に耳を赤くした。

『沢山食べてネ♪ この、皮の所も美味いよ。コラーゲンたっぷり(笑)』

課長が、琉美の心を知ってか知らずか 琉美の箸を促す。

No.119

『フグちり鍋も、もう食べ頃だよ♪』
課長が勧める。

琉美は、勧められるがままに箸を進めた。

どれもこれも美味い。
自然と顔が綻ぶ。


『琉美はホント可愛いなぁ』
課長の声が弾む。

『素直で分かり易いよ。さっき、車の中で 感情的になった琉美を見て、思わず抱きしめそうになった…』

『あれは…本当に一杯一杯で…』
琉美は口籠もった。


『大丈夫。分かってるよ。…だからこそ、こうして琉美を連れ出した訳だし』

課長が微笑む。



…私 この人のこと好きかも…

琉美は 漠然と思っていた。

確信は無かったが、尊敬とは別の感情が芽生えつつあった。

しかし、相手は既婚者だ。
深入りする訳にはいかない。

No.120

箸を進めつつ、話題は 中座していた“合図”について盛り上がっていた。


気が付けば、鍋も空になっている。


課長が内線を掛けた。


待っていたかの様なタイミングで、女将さんが来室した。

火力を強めると、洗って笊に晒した御飯を 鍋へと入れ蓋をする。

…無言で待つ

長い様で短い時間。


再び鍋が沸騰すると、女将さんは 火を止め卵を流し込んだ。

『2~3分したら、蓋開けて下さいネ』

No.121

『デザートに…』とリンゴのグラニテを置き、女将さんが退席した。


『雅也さん。すみませんけど…デザート…』

琉美が、グラニテの入った器を 課長へと差し出す。

『あぁ、気にしなくて良いよ。琉美が食べれない物は 俺が片付けるから(笑)』

課長が快く デザートの器を受け取る。

『しかし、女の子で スィーツも果物も嫌いなんて…珍しいよなぁ』

課長が首を傾げた。

『筋金入りの辛党なんです』

『確かにな(笑)』

No.122

2~3分経過したのを見計らって、課長が 鍋の蓋を開けた。

卵が 良い感じに半熟状になっている。

課長が、雑炊を器へ取り分け ポン酢の入った容器と共に 琉美へと勧める。

『好みで味調整してね。ここのポン酢は オリジナルで旨いよ』

琉美は 器を受け取り、先ずはポン酢を掛けずに味見した。

『…美味しい…』

フグの旨味を吸った雑炊は絶品だった。

『だろ? 俺なんて、この雑炊が一番の楽しみなんだから』

課長も、頬を緩めて 雑炊を堪能している。


琉美は、ポン酢を加えてみた。
一口啜る。

『味が閉まって、また一段と美味しいですね!』
思わず声が弾む。


鍋の雑炊は、あっという間に二人の胃に収まった。

No.123

課長が、支払いを終えた。

女将さんに見送られ、料亭を後にする。


どちらかとも無く 手を絡め合って、駐車場へと歩いた。

肌を刺す様な冷たい風が 心地良い。



ランクルに乗り込み、軽く唇を重ねる。

『コラーゲン補給したから、明日は更にプルップルかな(笑)』

琉美の両頬を包み込みながら、課長が 琉美の目を覗き込む。

『試してみます?』
冗談混じりに、琉美が挑発する。


『出来れば、今すぐ…』

『駄目ですよ(笑) これから社に帰って仕事するんですから』



二人は、先程決めた“合図”を再確認しつつ、会社へと戻った。

No.124

【合図】


誘う時は“ワン切り”

受けた方は“誘い”を認識した合図に、伸びをする。

OKならば、そのまま《例の場所》で落ち合う。


NGならば、首or肩を回し 軽くストレッチする。

No.125

二人だけの“暗号”を決め、社の駐車場へと戻った。


部署の在る階まで、非常階段で上る。


皆、普通にエレベーターを利用している。


加えて 時間帯も相乗し…“密室”状態だ。


…舌を絡め合い、互いの下半身を貪る…

No.126

非常階段の踊場で、互いの性感帯を愛撫しつつ…求め合っていた。

No.127

『ぁあ、ダメだ…! 琉美! いきなりゴメン!!』

課長が、言葉と共に 琉美の秘部へと男根をねじ込んだ。


琉美は…
状況が飲み込めなかった。

No.128

熱くそそり立った物体が、琉美の中を陵辱する。

…優しく…激しく…

No.129

琉美は、壁に手を付いて必死に耐えていた。


喘ぎ声を飲み込む。

No.130

立ち姿勢で…


初めての事態に狼狽えつつ、琉美は快楽の波に飲まれつつあった。

閉ざされた静かな非常階段に、ジュプジュプと卑猥な音と共に パンパンと腰を打ち付ける音が響く。


『…ぁっ あぁっっ!出すよ!!』

課長が 低く呻き、琉美の腰上に 白い液体を放出した。

No.131

『俺って、意志が弱いな』

課長が、放出した液体を自ら拭いつつ…申し訳なさそうに謝る。


『…まぁ…次回は…ネ』

琉美は 課長の襟元を直しつつ、息を整えた。

No.132

>> 131 正直、琉美はイッて無かった。
…イケる状況では無かった。


疼く下半身とは裏腹に、冷静に言葉を吐き放つ。

『部署に戻りましょ。明日の準備も有りますから…』

No.133

淡々と階段を昇る琉美を 課長が追う。

『琉美、ちょっとペース落としてよ』

息を切らしつつ、課長が訴えた。

『あれ? もしかしてペース速かったですか?』

琉美が振り返る。

息も切らさず 涼しい顔をしている琉美を見て、課長が ガックリと力を落とした。

『これが、若者とオッサンの差かぁ…』

『あっ!! スミマセン つい…』
慌てて 琉美が補足する。

『私 ボルダリングやってるんで、日頃から鍛えてるんですよ』

『ボルダリングって…?』
課長が問う。

『壁を登るスポーツです。最近 一部人間の間では、人気上昇中なんですよ(笑)』

No.134

『あぁ…。あれって“ボルダリング”って言うのか』

何度かテレビで目にした競技を思い出し、課長が言葉を続ける。

『道理で、琉美が いつも深爪してる訳だ…』

『缶のプルトップ開けるのに苦労するんですよ(笑)』

琉美が 笑って答えた。

『琉美は、ただ細いだけじゃなくて引き締まってると思ってたけど…なるほどね』

課長が、納得して呟く。

『体幹筋肉が発達してると、アソコの締まりも良いって言うからなぁ。…琉美の中は最高だよ…』

『もぅ!! これから職場に戻るんですから、頭切り替えて下さいね(笑)』

言って、琉美は課長に先を行く様促した。

No.135

部署の在る階へ着き、非常階段の扉を開ける。

部署内には、まだ残業している者が数名残っていた。


『ただいま~』
課長が、先に部署へと足を踏み入れる。

『只今戻りました』
琉美も 後に続く。


『いいなぁ。美味い物 食って来たんでしょ』

『ばぁか。接待に美味い不味い言ってられっか(笑)』

部下のツッコミに、間髪入れず 課長が返す。


『じゃあ、私は着替えして帰りますね』
琉美は、荷物を纏めると更衣室へ向かった。

『琉美ちゃん、付き合わせちゃって悪かったね。お疲れ様』

課長の声が追い掛ける。

琉美は 振り返って会釈をすると、部署内の同僚に向かって『お先です。お疲れ様♪』と声を掛け、部署のガラス戸を閉めた。

No.136

初めての“個人プレゼン”は、呆気無い程順調に 成功を納めた。


会場を後にし、琉美は 思わず身体のバランスを崩し倒れそうになった。

何時の間にか隣に来ていた課長が すかさず手を差し伸べる。

『…あっ! スミマセン!!』
琉美は 慌てて立ち上がろうとしたが、体に力が入らない。

部署の仲間も 心配気に声を掛けてくれるが…

気が遠のく…



琉美は、薄れ行く意識の中で『意外と重いなぁ』とボヤく課長の声を耳にしつつ気を失っていた。

No.137

……?

腕に違和感を覚え 琉美は目を覚ました。


『あっ! 動かしちゃダメだよ』

課長が注意を促す。

『点滴の針が刺さってるから、そのまま寝てなさい。点滴終わったら看護士さん呼ぶから』

『えっと…私…?』
状況を飲み込めず、琉美は 課長に目を遣った。

『プレゼン会場を出た所で倒れたんだよ。ここは病院』

『スミマセン…ご迷惑お掛けして…』
琉美が謝る。

『気にしなくて良いよ。琉美は 俺の大切な彼女だからね♪』

課長が、琉美の頭を撫でながら言う。

『貧血だってさ。ちゃんと朝飯食って来たのか?(笑)』

『いえ…緊張して食欲無かったんで…』

言いながら、琉美は 気を失う直前の事を思い返していた。

No.138

『部署の面々は? …心配…掛けちゃいましたよね…』

琉美は 心苦しかった。


『あぁっ!! 忘れてた💦』

課長が、焦って椅子から立ち上がる。

『病院内は 携帯禁止だから、電源切ったままで…。 会社に連絡入れて来るわ』

そう言うと、課長は そそくさと病室から出て行った。

No.139

病室に 独り取り残され、琉美は 気を失う前の記憶を辿っていた。


『意外と重い』

朧気な記憶の根底に刷り込まれた言葉…


“重い”

かつて言われた事の無い言葉だった…

No.140

身長=163㎝
体重=45㎞

琉美は 筋肉質な為もあり、実際は 周囲から心配される程に“見た目”は華奢だった。


“重い”

初めて耳にした言葉が 琉美を苛む。


半ば朦朧とした意識の中、琉美は『痩せなくちゃ…』と 自分を追い込んでいた。

No.141

電話を終え、課長が戻って来た。

『もう大丈夫。社にも 琉美の親御さんにも、連絡入れたから』

言いながら、課長が琉美の頬を撫でる。

優しく唇を重ねる。

…どちらからとも無く 舌を絡め合う。

No.142

絡め合う舌が 琉美の下半身を刺激する。

秘部に 熱い密が充満する…

No.143

唇を解放し、互いに見詰め合う。


琉美が、躊躇いがちに口を開いた。

『そういえば“病院”って…奥様は…?』

以前、課長の奥様が看護士をしていると聞いていた事を思い起こしていた。

『うちのは、こんな救急指定の大病院じゃなくて、小さな個人病院だから(笑)』

『…そうなんですか』

琉美は、思わず胸をなで下ろしている自分に気付いた。

…やはり心の何処かで 奥様に対して“疚しい気持ち”が有るのだろう…

No.144

『ところで…家の親には何て…?』

恐る恐る 琉美が尋ねた。

『ああ…。心配させると悪いから“部署内でプレゼンの打ち上げする”って言っておいた』

課長が『大丈夫だよ』と言って、琉美の頭を撫でる。

『点滴が終わるまで、もう少しかかりそうだから休んでなさい』


琉美は、課長の言葉を聞きながら、再び混沌の中に意識を沈めていた。

No.145

『…美、琉美』

遠くで自分に呼び掛ける声がする。

意識を引き上げられ、琉美は 重い瞼を開いた。


『点滴終わりそうだから、ナースコールしたよ。直に看護士が来る筈だから…』

課長が、帰り支度をし始める。

No.146

朦朧とした意識の中で、琉美は 下半身の湿りを感じていた…

No.147

先程のキスの感触が、残り香の様に…琉美に刻まれていた。

『雅也さん…今日は抱かれたい…』

琉美が弱々しく訴える。

『ああ…。体が“危険”を感じると、種を残そうって本能で、エッチしたくなるんだよ』

琉美の頭を撫でながら、課長が続ける。

『“やりたかったらジェットコースターに乗せろ”って…、昔 悪い先輩に教わったなぁ(笑)』

No.148

やがて

車輪を引く音が近付いて来て…病室の前で止まった。


コンコン!

ドアがノックされ、引き戸が開けられた。

『気分は如何ですか?』

医療用のステンレス製キャリーを引いた看護士が、琉美に声を掛ける。


『もう大丈夫です。ご迷惑お掛けしました…』

言って、起き上がろうとした琉美を 看護士が制止する。


『取り敢えず、点滴の針 抜いときますケド…。まだ休んでて下さいネ。体調が整ったら 受付で会計して頂ければOKです』

言って、看護士が 針を抜き 手際良くガーゼを当て ネット状のテープを貼った。

『まだ顔色悪いから もう少し休んでって下さいネ』

言って、看護士が 病室を後にした。



病室は…

琉美と課長“二人だけの空間”

No.149

『琉美。今日は、俺が 君を病院から自宅まで送り届ける事なっているから。二人共このまま“直帰”だよ』

ベッドの端に 軽く腰掛け、課長が優しく微笑む。

『今日は鉄分補給! レバー食いに“焼鳥屋”行こうぜ♪』

琉美を元気付けようとしてか、課長がテンションを上げる。


その気遣いが…

琉美は、唯々嬉しかった。

No.150

『もう少し 休んでなさい』

言って、課長が 病室から出て行った。


琉美は

混沌の誘いに意識を委ね…再び 眠りに堕ちていた

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