それは突然…
空想を膨らませて、おもいつくままに書いてみます…
しかも気まぐれで…
すぐに閉鎖する鴨しるないけれど…
だから…目を通しても…無駄になるかもしれないよ。
がははっ!
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クリスマスを目前にしたロフト店内は高校生を中心とした学生達で賑わっていた。
女の子同士で彼へのプレゼントを選んでいるグループ、男同士で選んでいるグループ…
皆それぞれ一年に一度の聖なる夜に思いを寄せて…ハッピーエンドに終わるラブストーリーの主人公になることを夢見ながら…彼氏彼女の顔を思い浮かべてプレゼントを選んでいるように見えた…。
亜矢は小さな箱を2つ入れた買い物袋を手にして私の方へ歩いてきた。
『1つはマスターへのプレゼント…そしてもう1つは私達の部屋に置こうと思って…小さなプラネタリウムを買っちゃった。』と言う…
『プラネタリウムかぁ…でもそれで部屋の天井に星空が広がるの?』と聞くと…
『付けてみないと分からないけど、説明書にはそう書いてあるの…』と亜矢は言う。
マスターへのプレゼントの入った紙袋を受け取り『e-touch』へと向かった。
途中…南東の空にはオリオン座の星達が静かに輝いていた…。
『こんばんは…』
…と入り口のドアを開けるとマスターはいつものように静かな口調で
『お久しぶりです。いらっしゃいませ…』と迎えてくれた。
土曜日なのに私達の他にはまだ客はいない。
私は紙袋を亜矢にそっと渡した。
亜矢は『マスター…これ…私達からのクリスマスプレゼントです。良かったらお店に置いて下さい。』とマスターに手渡した。
『嬉しいなぁ…では遠慮無く頂きます。お客様に気を使って貰って恐縮です。開けさせて貰いますね…』と包みを開けた。
『ほぉ…プラネタリウムですか…早速カウンターの上で点灯させてみましょう…』
…とコードをコンセントに差し込みスイッチをONにした。
ほのかに灯る店内の照明に霞むことなく綺麗な満天の星空がお店の天井に広がる…。
亜矢は『うわぁ…綺麗ねぇ…。お店の雰囲気を壊してしまわないかと心配だったけど、これなら大丈夫かな…』とマスターに問いかける…
『いやぁ…驚きました。こんなにも綺麗な星空が店内に広がるなんて…。こんなにも雰囲気が変わるなんて正直感動しました。ここに日付入力をするみたいなので設定してみて下さい。私は文字がぼやけてしまい…どうやら老眼が進んだみたいだな…』マスターは笑う…
亜矢は日付を設定してもう一度ONにした。
先程ここに来る時に見たばかりのオリオン座が南東の空に輝いている。
『かなりリアルで綺麗だね』と私が言うと
マスターは『店の名前を変えようかな…もっとロマンチックな《星空のe-touch》に…。亜矢さん…どうも有難う御座いました。これからはこの店を営業している時は必ず点灯させて貰いますよっ。』と言って笑った。
私は『マスター…今の店の名前を変えるっていうの…本気でしょ?』と問いかけると…
『えぇ…8割以上本気です…。』とマスターは答えた。
亜矢は『えっ…どうして?』と驚いた顔をして私とマスターとを交互に見る…
『実は…このe-touchという名前は…私の好きなゴルフに由来していまして…。私はグリーン上で芝目や傾斜、風の強さや芝の乾燥具合などを考えて打ったロングパットが、なかなかカップに入りそうで入らない…そんな時に一緒にプレイしている仲間から「ナイスタッチ!」って声を掛けられるのが最高に気分が良いのです。入りそうだけど簡単には入らない…その感じが直接カップインした時よりも好きなのですっ。だけどある日…何も知らないお客さんに「e-touch」ってずる賢いイタチから名付けたの?と聞かれてしまい…』とマスターは言った。
私はちょうどその場面に出くわしていたのだ。
『程よい力加減と正確な方向性、そして刻々と変わる気象条件までをも考えて打った一打を、他のプレイヤーが敬意をもって称える…その言葉から…良いタッチ…e-touchと名付けただけに、動物のイタチと言われてしまったことがショックでね…。何か素敵な名前があれば変えるのアリかなと…思っていたのです。』とマスターは苦笑いをする。
亜矢は『そうなんだ…e-バンクやe-モバイルのように、私はネット時代に駆けて名付けたとばかり思っていました。』と正直な感想を言った。
マスターは『もう少し考えてはみますけどね。』と笑った。
私は『何だか次にこの店に来る時には、《星空のe-toubh》っという看板に変わってる可能性が大きそう…。』と言うと
『さぁどうでしょう…』と笑うマスター…
『さてと…今夜は何をお飲みになりますか?』とマスターに聞かれて私と亜矢は
『お任せします。』と…
ほぼ同時に答え…顔を見合わせて笑った。
『では…冬限定の特別ソルティドッグを作りますよ。何が特別なのかは…出来てからのお楽しみ…』
…とマスターは言いながら棚ウォッカとグレープフルーツジュースを取り出して作り始めた。
私と亜矢は手際よく作り始めたマスターの動きに目を奪われて、ワクワクしながらカクテルの出来上がりを待っていた。
冷蔵庫でよく冷やされたワイングラスにシェイカーから静かに注ぎ込んで、そのグラスの淵に塩を持った指でスゥーっと一周なぞり、カットしたグレープフルーツを一度ぎゅっと搾ると…
『出来上がりました。』とカウンターに置いた。
『そのまま暫くグラスを見ていて下さい。』とマスターは言った。
『おぉーっ!凄いっ!』
私と亜矢は目の前のワイングラスの表面が、下の方から少しずつ…まるで静かな湖が凍っていくような様子をじっと見守った。
ちょうど水面までグラスが凍り付くと…そのすぐ上のグラスの淵には白い粉雪のように見える塩が付いている…
『いかがですか?味はいつものソルティドッグなのですが、なかなかロマンチックな変化だと思いませんか?』
『うわぁ…素敵…何だかダンディなマスターにそう言われると、飲む前からロマンチックな演出に酔ってしまいそう…』
…と…亜矢が言った。
『これで一口飲んで暫くすると、今度は雪解けのように上から順にグラスの表面が解けていくのです。まるで初めて出会った男女の気持ちの変化を見ているような…そんな気がしませんか?』
…と、マスターは言った。
『出会ったばかりの男女の心の変化かぁ…。初めは互いに緊張しながら、ぎこちなく会話を進めて…そして次第に打ち解けて相手に心を開いてゆく…そんな感じかな…。マスターはロマンチストで人生経験も豊かだから色々な見方をすることが出来て、聞いていて《なるほど…》と思えることが多いから…ついこうしてここに足を運んでしまうんだよ…俺達は…』と言うと
ニコッと笑って『ありがとう御座います。』と言ってシェイカーを洗い始めた。
亜矢は…カクテルの揺れる表面に映る天井の星達を見ながら静かに微笑んでいた…。
『亜矢…どうかしたの?何か考え事をしているみたいだけど…』と聞くと…
『うん…真一と出会った時~今までのことを思い出していたの…。不思議と夜空の星が色々なシーンに出て来るから…。』と亜矢は言う。
2人であてもなく歩いた夜の街…初めて1つになったホテルの天井…ムーンフェイスの腕時計…そして小さなプラネタリウム…。そう考えていた時…天井に映る星空に長く尾を引き青白く光る流れ星が キラッと輝いてすうっと消えた…。
マスターが『すごいですねこのプラネタリウム…先程も気付きましたが、時々流れ星が現れるみたいです…。願い事を考えておかないと…。』と笑った。
亜矢は…マスターが思っていた以上プラネタリウムのプレゼントを喜んでくれたことと…
もしかしたらこの天井に広がる星空からお店の名前が『星空のe-touch』に変わるかもしれないということが
なぜか嬉しかった。
プレゼントは…贈られた時も嬉しいけど、プレゼントした相手が喜んでくれる姿を見ることが出来ることの方が数倍嬉しい…
今日は真一とマスターの2人が喜んでくれたので、本当に幸せな気持ちになっていた…。
『お二人の24日のクリスマスの予定は?』とマスターが聞いた。
『まだ特に決めてないけど…どうする?』と亜矢を見た。
亜矢は『部屋でゆっくり過ごすのもいいし…マスターのお店でカクテルを飲みながら沢山お話しするのも楽しそう…』と言った。
マスターは『イブの夜はお店は閉めて、親しい仲間4人と私の奥さんとで、この店で小さなパーティーをするのですが真一さんと亜矢さんもご一緒にいかがですか?』と誘ってくれた。
亜矢は『マスターの奥様も素敵な方だと思うから一度お会いしたいな…厚かましく参加させて貰おうよ。』
…と私を見る。
『本当に参加させて貰って良いのですか?』
『えぇ…ぜひ!うちの奥さんも喜びますから…』
とマスターは言ってくれた。
『じゃあ2人で参加させて貰います。』
『夜7時頃から始めるので食事をとらずに来て下さい。お待ちしてます。』
とマスターは言った。
『大人の楽しいクリスマスの夜になりそうね…。何だかワクワクします。マスター…私達が用意するものがあれば教えて下さいね。何も持たずに来るのも心苦しいし…』
と亜矢が言うと…
『う…ん…では…お2人に2~3曲歌ってもらいましょう。たしか…真一さんはギターが弾けましたよね?私と2人でセッションしながら亜矢さんのボーカルで…いかがですか?カラオケのセットも用意しますが、せっかくだから生演奏でやりましょう!』
『いいですねぇ!私も早速練習しますよ。指が動くかなぁ…』
…と私は答えた。
『私…キーボードなら弾けるよ…』
と言う亜矢に
『おっ!そこのクローゼットの部屋に有りますよ…小さなキーボードが…。本格的なライブパーティーになりそうな予感がしますね』
…とマスターは嬉しそうに言いながら奥からキーボードを持ってきた。
『場所をとるので脚は取り外してあるのですが…』
…とローランドのキーボードを持ってきた。それを亜矢の前に置き電源とアンプにコードを差し込んで…
『音が出るかなぁ…』と言いながら亜矢に促す…。
亜矢は『久し振りだから上手く弾けないかもしれないけど…』
…と細い指先で1つずつ鍵盤を押して音を確認していった。
『音は大丈夫みたい。』と言い亜矢は弾き始めた。
ディズニーの『星に願いを…』の曲が少しJazzっぽくアレンジされている…
マスターは目を閉じて亜矢のキーボード演奏に聴き入っている…
その時…天井の星空にまた1つ流れ星がキラッと輝き…消えた…
亜矢の弾く『星に願いを…』が静かに流れる店内は、カクテルバーからまるで小さな洒落たライブハウスに姿を変えたみたいだった。
その時…ドアがガチャっと開き1組の若いカップルが入ってきた。
『いらっしゃいませ…』と静かにマスターが言う。
若い2人は少し戸惑うようにドアの所に立ち止まっている。
マスターは『こちらへどうぞ…』と声を掛け
『今夜はラッキーですよ。素敵なピアニストの奏でる素敵な曲が聴けますから…。』…と微笑んだ。
亜矢の弾く曲が静かに終わると…
店内に皆の拍手が響き渡った。
もちろん…その若いカップルも一緒に立ったまま拍手をした。
何も知らないカップルは『ここでは時々こうして生演奏が行われるのですか?』
…と聞いてきた。
『いえ…今夜は特別なんですよ。だからお二人はラッキーなのです。お飲み物はどうしますか?』
とドリンクメニューを差し出しながら言った。
『お勧めは…冬限定のソルティドッグになりますが…いかがですか?』と言うと
『ではそれを2つお願いします。』とカップルは注文した。
マスターは私達に軽くウィンクしてカクテルを作り始めた。
『亜矢さん…リクエストしても良いですか?《Misty》か《Old Love》をお願いしたいのですが…』
マスターは亜矢の《星に願いを》を聴き、亜矢なら弾けるだろうと思ったらしい…。
『間違えるかもしれないけど…』
…と言いながら亜矢は《Old Love》を弾き始めた。
亜矢の弾く哀愁を帯びて流れるピアノの音に合わせてマスターは歌を口ずさんだ。
原曲が誰の歌なのかは知らなかったが、確かクラプトンのアルバム『UNPLUGED』で聴いたことがある曲だった…。
マスターの甘い声がゆっくりとしたこの曲にマッチして、店内は一気に大人の雰囲気に包まれていった。
カップルの女性が『何だか素敵な大人の皆さんの中で、こんな私達が浮いてしまっているみたいで…羨ましいのと、恥ずかしいのと…ちょっと複雑です。でも…皆さんみたいな大人になりたいなぁ…。』と言った。
マスターが私に向かって話を振ってきた…
『真一さん…どうします?素敵な大人だって…私達…。そう言われたら真一さんも黙っていられないでしょ?一曲歌って下さいよ…』
…と奥からギターを持ってきた。
『えっ……』と私が戸惑っていると亜矢も…
『私も聴いてみたいな…真一の歌…』
…と笑いながら言う。
『じゃあ…尾崎豊の《I love you》を唄おうかな…弾ける?』っと亜矢の方を見ると…
亜矢は黙って頷いた。
私はギターを抱えてポロンと爪弾き、指を動かした。少し弾いていると直ぐに指がスムーズに動き始めた。
『準備完了…では…』と亜矢と目を合わせてワン・ツゥ・スリー…
I love you~今だけは悲しい歌…聴きたくないよ…
I love you~逃れ逃れ辿り着いた…この部屋…♪
私はこの曲に今の気持ちを乗せて精一杯唄った…。
亜矢の弾くピアノの音はどこか切なくて…
私の胸を強く締め付けた…。
パチパチパチパチ…と拍手をされて歌い終わると…
カップルの男性から『すごいですね…思わず聴き入ってしまいました。』と言われた。
マスターも…『本格的なライブが出来そうだよ。』と誉めてくれた…
その横で亜矢は…ウンウンと2度大きく頷いた…。
私は喉がカラカラに乾き…マスターにブランデーを注文した。
照れ隠しのつもりで…
マスターが『じゃあ今度は順番からいくと…亜矢さんの番ですね。何を歌ってくれますか? 若い2人も安心していたらダメですよ。今夜は順番で歌うという決まりになっていますから…今決まったのですが…』と笑った。
『うふふ…何にしようかな…』と亜矢はその気になっている。
若い2人も知らず知らずに私達のペースに飲まれてしまっている…。
亜矢が考えているとマスターが竹内まりやの『駅』を亜矢にリクエストした。
亜矢は『多分大丈夫だと思う。』と答えた。
マスターにギターを渡して演奏が始まる…
~1つ隣の車両に乗り…俯く横顔見ていたら…
思わず涙…溢れてきそう~♪
切ない大人の恋の歌だ…。
隣の若い女性も…きっと頭の中に切ない映像が浮かんでいるのだろう…カウンターに頬杖をつきながら亜矢の歌う姿をジッと見ていた…。
~それぞれに待つ人の元へ…
帰って行くのね…振り向きもせずに~♪
パチパチパチパチ…
店内にはそこにいる全員の温かな拍手が響き渡った…。
羨ましいなぁ…大人のいけない恋の歌をこんなに素敵に歌えるなんて…と彼女は亜矢に憧れるような眼差しを送っていた。
彼氏が『俺達もこんな雰囲気の夫婦になりたいね。』
…と言うと彼女は…
黙って大きく頷いていた。
『あははっ!それが…この2人はまだ夫婦じゃないんだよ。私もそろそろ結婚の報告を受けるんじゃないかと…首を長くして待っているんだけど…君から真一さんに言ってくれないか…早くしないとマスターに亜矢さんを奪われるぞってね…』とマスターが言った。
亜矢はポッと頬を染めて俯いている…。
私は『マスター…亜矢のことをずっと…永久に愛していくというのはもう決めているのです。それは亜矢も分かっていてくれてる。ただ…タイミングと言うか…きっかけが…。ねっ亜矢…』と言うと…
亜矢も『そうなの…私もずっと真一を支えたいと言うか…支え合いたいと思っているから…あとは私達2人のタイミングがバチッと合えば…それだけなの…』と答えた。
マスターは『そうか…私は今夜…なかなか煮え切らない2人の背中を後ろから押すことが私の仕事だと思っていましたが…心配はご無用でしたね。と言うか…ご馳走さまでした。』と笑った。
私はマスターの気持ちを嬉しく思い、素直に受け止めることが出来た。
やはり…1人の男として亜矢を安心させる為にも早く結婚というセレモニーをすべきかな…と考えるようになっていた。
しかし…その一方で…私はいつも頭の片隅に無理やり追いやっていた不安が…少しずつ顔を現すのを感じていた…。
クリスマスのパーティーが終わったら、私のこの不安な気持ちを亜矢にぶつけてみよう…。言葉にしなければ何1つ変わらず…このままズルズルと…亜矢を縛り付けるだけになってしまう…。
私はもともと…古いタイプの男で、結婚する時は相手の女性の両親からも認められ、祝福される中で結婚したいと…思っている。
しかし…住む世界の違う亜矢の両親には会える筈もなく…結婚の許しさえ貰うことが出来ない…。
そんなことを考えながら目の前のブランデーグラスに手を伸ばし、ひとくちゴクッと飲んだ…。
程良い甘味と豊かな香りが口の中にひろがり、喉を熱く焼き尽くして胃の中まで到達した時…
亜矢からの手紙に書いてあった言葉が頭の中をよぎった。
私はその手紙をジャケットの胸ポケットからそっと取り出して読み返してみた。
『真一も男だからと頑張りすぎずに…』
そうだ! 私の漠然とした男としての…理想の結婚までの道筋にこだわりすぎているから…亜矢の御両親にも祝福されて…ということに…。
亜矢を幸せにし、いつの時もこの優しい笑顔を俺が守ることが出来たのなら…きっと亜矢の御両親も安心してくれる筈だ…
そう思えた…。
今夜のマスターは相変わらず上機嫌で、まだ夜も9時を少し回っただけなのに…
すでに通りに掲げられた『OPEN?』の看板は『CLOSED!』に掛け替えられていた。
今夜はこの雰囲気を壊したくない…
マスターのそんな何気ない気遣いが…
やけに胸に染みた…。
『さぁ次は君の歌う番だよ。それよりも今更だけど名前を教えて貰えますか?』
…とマスターが聞くと
彼は『俺は孝弘で…彼女は幸子です。』
…と少し照れたように自己紹介をした。
隣の彼女はペコリと微笑みながら頭を下げた。
私は初々しいこの2人に自分の若い頃を重ねて見ていた…。
『では孝弘さん…何を歌うか決まったかな?』
…とマスターが聞くと…
『さん付けで呼ぶのは止めて下さい…孝弘!でお願いします。なんだかよそよそしくて…仲間に入れなくなりそうだから…。では…少し古いけど《離したくはない》を…歌います。』
…と孝弘は言った。
マスターは『真一さん弾ける?私は聴けば分かると思うけど、ちょっと…』と言って私にギターを差し出した。
私は『たしか…《T-BOLAN》の唄だよね?』
…と確かめて適当にコードを弾きながら口ずさみ…
『たぶん大丈夫。亜矢は?』と聞くと
『私もたぶん…大丈夫!』と笑った。
では…ワン、ツゥ、スリー…はい…
今おまえをこの腕に抱きたくて…Oh…切ないよ~♪
孝弘の歌うこの唄も…愛する女性への想いがかなり込められていて…切なかったけど…本当に名曲だと…私は思った…。
~こんなに…
everyday…everynight…
勇気づけてくれた…
everyday…everynight…
……離したくはない~♪
孝弘が歌い終わり、亜矢の方を見ると…
エンディングのソロを弾く亜矢の瞳が…
ほんの少し…
潤んでいる…
そんな気がした…。
パチパチパチパチ…
孝弘は気持ち良さそうに歌い終わったみたいにフゥーっと息を吐いた。
『生演奏で歌うなんて初めてだったけど、カラオケなんて比べ物にならない程気分が良かったです。』
…と言った。
亜矢はキーボードを弾き終わると…
天井に広がる星空をを見上げ…一生懸命に溢れてくる感情を堪えようとしていた…。
私は亜矢の肩をそっと抱き寄せて…亜矢の頭を撫でた。
そして…『何も心配しなくていいよ…』と小さな声で亜矢に伝えた…。
亜矢は私にもたれながら小さくコクっと頷いた…。
『あ~やさん!』
…と…元気な声で横にいるさっちゃんに呼ばれて亜矢が振り返ると…
さっちゃんは『良ければ、メールアドレスを交換して下さい…大袈裟だけど、亜矢さんなら何でも相談出来そうな気がして…。』と言った。
亜矢は『えっ…私が?』と…驚きながら…
『私の方が年上だけど…私がさっちゃんに頼ってしまうと思うけど…それでもいい?』と笑い、互いのアドレスを交換した。
私はその光景が微笑ましく…自分のことのように嬉しかった。
『では…次は私の番…』とさっちゃんは元気良く言うと…
『私も竹内まりやの《元気を出して》をお願いしますっ。』と言った。
亜矢は『私もその唄大好きなんだ。』と言いながらキーボードを弾き始めた。
もともと私自身も竹内まりやが好きで、不思議なピーチパイからずっと全てのアルバムを持っていた。
また…私は歌を聴く時は歌詞よりもその曲のメロディーラインに惹かれて聴く時の方が多い。
特にこの《元気を出して》という歌は歌詞の内容は失恋した女性への応援歌のような内容なのに…
不思議に私には全ての人に対する応援歌のように思えるのだ。
涙など見せない…
強気なあなたを…
そんなに悲しませた人は誰なの?
終わりを告げた恋にすがるのは止めにして…
振り出しから…また始めればいい~♪
根っから元気なさっちゃんの声が、この曲を歌うと…シックな大人のバラードのように聴こえるのが不思議だった。
ふとマスターを見ると…
決してお客さんの前では煙草を吸わないのに、今日は…とてもくつろいでいるのか…煙草を口にくわえながら目を閉じて聴き入っている。
さっちゃんの歌が終わり、静かに亜矢のピアノの音がフェードアウトしていき…
店内には何とも言えない温かな一体感が生まれ…
そこにいる皆が初めて会った若いこのカップルとも自然に打ち解けいた。
『孝弘達もイブの夜にこの店に来ないか? 内輪のパーティーをするので…。ここにいる真一さんと亜矢さんも来るからさ…』とマスターが誘った。
孝弘とさっちゃんは向き合ってから…
『ぜひ参加させて下さい。嬉しいな…』
…と本当にこの店を気に入ったみたいだった。
多分…亜矢も私も…弟や妹が出来たようなそんな気持ちになっていたと…思う。
すでに夜も11時を過ぎようとしていた。
亜矢が『今夜は本当に楽しかったね。私にもこんなに元気で可愛いさっちゃんという友達が出来たし…クリスマスイブの夜が今から待ち遠しいなぁ…。』と言うと…
孝弘が『いえ…こちらこそ…初めて入ったこのお店で、こんなにも素敵な大人の人達に出逢えて…本当に楽しかったです。』と言った。
さっちゃんは『私達も大学を卒業して社会人になったら亜矢さんと真一さんみたいな大人のカップルになりたいな…。また亜矢さんにメールして教えて貰わなきゃ。』と笑った。
マスターが『イブの夜はタンバリンとマラカスとギター、キーボード、マイク、アンプ…全部用意するから内輪のミニライブにしよう。真一さんもギターを持ってきてよ。』と言った。
『亜矢の言うように私も今からワクワクしますっ。早くイブにならないかなぁ。』と私は言って亜矢と席を立ち…
『ごちそうさまでした。おやすみなさい…』
…と店を後にした…。
店を後にして肩を並べて駅への道を歩いていた…。
頬に突き刺さるような冷たい北風は少し弱くなっていたが、空に輝く無数の星達の姿は厚い雲に隠れてしまっていた。
指先の感覚も麻痺してしまう…そう思える程に今夜の名古屋の街は冷え込んでいる。
『亜矢があんなにピアノが上手なんて…全然知らなかったよ。俺…まだ亜矢のことを知らなすぎなのかも…。』
…と言うと亜矢は
『私…小さい頃からピアノを習っていたの。それでアメリカにいた時に少しでもお金を貯めようと思って…アルバイトで夜にホテルのラウンジやバーでピアノの弾き語りをしていたんだ。でも何も実績の無い私は必死に練習して…1時間で4ドルという条件で始めて…1ヶ月後には聴きに来てくれるお客さんが少しずつ増えて1時間10ドルにまで支配人が値上げしてくれたの…。その時は誰も頼る人のいないアメリカでただ生きていくことに必死だった。』
…と亜矢は言った。
『そうなんだ…。でも俺は亜矢に限っては新たな発見はいつも新鮮な驚きと言うか、それが嬉しい発見なんだから…尊敬してしまうよ…。』
亜矢は『私の方こそ今日は真一のギターの弾き語りを見て感動したんだよ。普段こうして話している時の真一の声も、何とも言えない甘い雰囲気のある大好きな声なんだけど、歌っている時…特に高い音の時に少しハスキーになるのが…聴いていてゾクゾクしちゃって…』と亜矢は笑った。
『じゃあ…イブまでにあと3日しかないけど2人でレンタルスタジオで少し練習してみようか!他の皆をあっと驚かせてみようよ。』と言うと…
『皆を驚かせると言うよりも、私自身…心の底から久し振りに音楽を楽しみたいって思ったから…大賛成!!』
…と…亜矢も嬉しそうに言った。
互いに新たな一面を見つけたことを…私と亜矢は素直に喜びながら歩いていた…
気付けば…白く小さな粉雪が静かに降り始めていた…。
駅前の広場に近くに連れて少しずつ若者達の歌う声が聞こえてきた。
大学のゼミかクラブのクリスマス会でもあったのだろう…
7~8人でほろ酔いで肩を組みアカペラ で唄っている。
聞き覚えのあるメロディー…
亜矢が『ビリージョエルの……《For the longest time》ね…懐かしい…』と言った…。
亜矢はピアノを弾くので余計に懐かしく感じたのだろう。
その時に…亜矢の携帯電話が鳴った…。
『あっ!さっちゃんからメールが来た。』と亜矢が言った。
亜矢は暫く携帯を眺めて、時々うふふ…と笑っている。
『ん?さっちゃん何だって?』と私が問いかけても…
『ちょっと待ってて…うふふ…女同士の内緒の話だから…』と教えてくれない。
『えっ!?俺達に内緒事は無しだよね?』と笑いながら言うと…
『仕方ないなぁ…返事をしてから真一にも見せてあげるね。でもさっちゃんはマスターと私達2人に強烈なインパクトがあって、脳天に雷が落ちたような衝撃を受けたって言ってるよ。』
…と亜矢は笑う。
『えっ!それって…いい歳したおじさんがギター片手に歌ってるけと…笑っちゃうってこと?』と問いかけると…
『憧れるって…』といって笑いながらさっちゃんに返信を打ってる…。
亜矢はさっちゃんに返事を書いて送信ボタンを押した。
『さっちゃんがねぇ…どこで真一に出会ったの?とか付き合って何年経つの?とか…沢山質問してきて…あの年齢の頃の自分を思い出してたの…。でも…一番聞きたかったのは…どうすれば真一みたいな素敵な男性と恋することが出来るのか?っていうことみたいだよ。』と笑う。
『えぇ~っ!?彼…孝弘の方が余程格好いいのに…』と言うと…
『多分ね…真一のそういう所が格好いいと思うのよっ。私もそうだから!』と亜矢は言った。
『ん…よく分からないけど…世の中には鈍い男に惹かれる女性もいるということだけはよ~く分かりました。』と私も笑った。
『あとね…さっちゃんがこんな私に…人生の先輩として色々と教えて下さいだって…。そして真一にも何かの機会に孝弘くんに女性に対する優しい接し方を教えて欲しいって…。真一が私を見る時の目がすごく優しくて亜矢さんはすごく幸せそうに見えるからって言ってたよ。』と亜矢が言った。
『俺なんて…偉そうに教えることなんて何1つ無いのになぁ…。俺は本当の男の優しさっていうのは厳しさの中にあるものだと思ってるし…。今の若い女性は口先だけの優しさを男の優しさだと勘違いしていることが多いからね。そういう話なら孝弘に男同士で話すことは出来るけど…。俺は男には男の愛情表現があるように、女性には女性にしか出来ない細やかな愛情表現があるはずだから、俺が思う本当の男の優しさとは何か…を孝弘に話すことくらいしか出来ないよ。』と言った。
『うんうん…今、真一が言ったことをそのまま孝弘くんに話してあげれば良いと思う。それで十分伝わると思うから…。』と亜矢は言うと…
少し恥ずかしそうに…
『最後にさっちゃんったら、亜矢さん…早く子供を作っちゃいなよ!そうすれば真一さんも亜矢さんとの結婚にまっしぐらだと思う…。それに真一さんと亜矢さんの遺伝子を一日も早くこの世に誕生させるべきだ…なんて言ってたよ。』と少しはにかみながら亜矢は言った…。
『俺と亜矢の子供…きっと亜矢に似て可愛い子なんだろうなぁ…。』
…と小さな男の子とキャッチボールしている姿が頭に浮かんだ。
『亜矢…俺、今夜も…亜矢が欲しくなってきた…。』
…と言うと…
亜矢は
『うん…私はいつも…真一が欲しい…の…。』と言ってくれた。
電車の中からは、街の灯りに照らされて小さな白い粉雪が少しずつ家々の屋根を白く染めていくのが見えた…。
真っ暗な部屋に戻り2人で軽く飲み直そうと…亜矢は冷えたビールとグラスを持ってリビングへ来た。
私はソファーに腰を降ろして手首から亜矢に貰った腕時計をはずし、その文字盤の月を見ていた。
『気に入ってくれたみたいで嬉しい…』
そう言う亜矢に
『ずっと大切に使わせて貰うよ。子供が大きくなったら渡せるように大切にしなきゃね。』
…と答えると…
『真一は私との子供…欲しい?』
と言うので私は…
『亜矢に俺の子供を産んで貰いたいんだ。俺達の愛の結晶を…。亜矢となら笑顔の絶えない明るい家庭を築くことが出来るし、そんな家庭で育った子供達は絶対に天真爛漫な子供に育つからねっ。』
と言うと…
『嬉しい…なんだか私…夢を見ているみたい。初めて体験した男の人とこうして将来のことまで話し合うことが出来るなんて…。運命を信じて待っていて本当に良かった…。』
…と亜矢は私にもたれ掛かってきた…。
亜矢の柔らかな髪が私の頬をくすぐる…
亜矢を抱き寄せて…
『亜矢…俺とずっと一緒にいてくれるかい? 俺に黙って突然姿を消したりしない? 俺…それだけが…怖いんだ…。』
…と正直に俺の気持ちを亜矢に伝えた。
『私は何処にも行かないよ。行く所も無いし…たとえこれから先、真一と大きな喧嘩をしたとしても…私は真一から離れない。だから安心して…欲しい…。私…真一がこうして思ったことをそのまま言葉にして言ってくれるのが本当に嬉しいの…』
と亜矢は言ってくれた。
『少し格好悪いけど…今のは俺からの正式なプロポーズのつもり…。亜矢が受けてくれたと思っても良いんだね?』
…と言うと亜矢は黙って小さく頷いた…。
私は亜矢の頬に流れ落ちた涙の跡を手で拭いて…
亜矢にキスをした…。
亜矢も両腕で私の体をきつく抱き締めてきた…。
私は左右に顔の向きを変えながら亜矢の上唇と下唇とを交互に唇で挟むように重ね合わせた。
半開きになった亜矢の口から熱い吐息と共に柔らかな舌先が少しずつ出てきて…
互いにそれを絡ませた…。
『あぁ…真一…私…また感じちゃうよ……昨夜したばかりなのに……』
『亜矢にもっと感じて欲しいんだ…俺の前でだけ……』
唇を耳の後ろへ移動させ、亜矢の真っ白なうなじに舌を這わせる…
亜矢は体を少しくねらせて…ズボンの上から優しく私の物をさする…。
『もう元気になってる…今日は私から先にしてあげる…』
そう言うと亜矢は私のベルトを外してズボンとパンツを膝まで降ろして硬くいきり立った物を優しく両手で包み込んだ…。
『熱くなってドクンドクンと脈打ってる…』
…と言って亜矢はそっとその先にキスをした…。
亜矢の舌先が円を描くように動きながら私を深く吸い込み…ズズズ…と音を立てながら顔を離す…
私は…うぅぅ…と自然に口から声が漏れた…。
リビングの間接照明にほんのりと亜矢の妖艶な横顔が浮かび上がり…
私はこんなにも素敵な女性とこれから一生…恋に落ちることの出来る幸せを改めて噛み締めた…。
冷え切っていたこの部屋も、エアコンから吹き出される温風のせいか…体の奥から湧き上がる熱い気持ちからくるのか…すでに温まり…
私は熱い物を放出したくなっていた…
『亜矢…ありがとう…交代しよう…出てしまいそうだよ…』
…と言うと亜矢は…
『気にしなくていいよ…沢山だして…』
と言いながら舌先と顔の動きをより激しくする…
私は目を閉じて…再び亜矢に全てを委ねた…
そして…熱い私の思いと共に全てを亜矢の口の中に放出した…
天井には亜矢のセットした星空が静かにきらめいていた…。
亜矢の柔らかなセーターを脱がせ…少しタイトなスカートを降ろすと…
見事に均整のとれた下着姿の亜矢の躰が現れた…。
私は亜矢をソファーの上に四つん這いにさせて…小さなピンクのパンティの上からそっとクレバスの上を指でなぞる…
ピンクのパンティはみるみるうちにクレバスの部分だけ色が濃くなり…指先にも温かな湿り気を感じた…。
あぁぁ…と切ない喘ぎ声を漏らす亜矢…
背中のホックをはずすと…その豊かなバストが静かに揺れる…
私は床に膝を付けて亜矢の横から胸を触り…背中からヒップにかけて指先を触れるか触れないか…という微妙なタッチでそっと撫でながら、こちらを向く亜矢に再びキスをした…
体をピクンと反応させて亜矢は体を反らせる…
あぁ…気持ちいぃ…
と…声を漏らした…
パンティを静かにさげて両足首から抜き取り…張りの良いヒップに舌を這わせる…
舌は少しずつ…確実に真ん中に近寄り…
亜矢の敏感な蕾に辿り着いた…
あっ…あぁぁ…
亜矢はもっと舐めて…とでも言うように腰を上に突き出して体を反らせる…
ここ…一番気持ちいい?と聞くと…
ここだけじゃなく…真一に触られるところ…全部…気持ちいぃ…と答える亜矢…
口をすぼめて蕾を吸い込みながら舌先を細かく振動させて転がす…
あっ…ダメ…あぁぁ…
このまま…真一が欲しい…
そう言われて私は…
静かに温かな亜矢の泉の中に、熱くなった私自身を差し込んだ…。
体中に微弱な電気が流れるような…そんな快感を味わいながら亜矢の秘部が私を歓迎してくれている…
入り口から次第に奥へと向かい…内部の柔らかな襞がきつく締め付けてくるのが分かる…
亜矢の反応をたしかめながら少しずつ体を動かすと…
その動きに合わせるように亜矢が声を漏らす…
亜矢は…あっ…あっ…と…途切れ途切れに声を上げて…
そのままの姿勢でシーツをきつく握りしめて…
い…イ……イクゥ…
…と絶頂を迎えた…。
私は…それを確かめてから…亜矢の中にすべてを放ち…
暫くの間亜矢の躰に後ろから覆い被さるように重なったまま…
余韻に浸った…。
重くないかい?と亜矢に聞くと…
大丈夫…そのままでいて欲しい…
亜矢は肩で息をしながらそう答えた…。
テーブルの上の亜矢に貰った腕時計の三日月は…まるで恥ずかしがるように…
半分近く姿を消していた…。
『真一…風邪ひくからシャワーを浴びてベッドで寝た方がいいよ…。』
どうやら私は亜矢に覆い被さったままで寝てしまったらしい…
『ご・ごめん…俺寝てしまった…。重かっただろ?』 と言うと…
『真一が少しずつ小さくなって…ポロッと抜けてしまったのに動かないから…』
…と亜矢は笑った。
『小さくなって抜けた?亜矢がペッと吐き出したの間違いじゃない?』
…と言うと…
『私は絶対に吐き出さないもん…ずっと真一と繋がっていたいから…』
…と亜矢は照れながら言った。
2人で笑いながらもう一度軽くキスをしてシャワーへと向かった。
心地良い気だるさに包まれた体に、少し熱めのシャワーはとても気持ちよかった。
>> 196
イブの前日のこと…
仕事ももうすぐ終わり…という時に亜矢が…
『さっちゃん達が明日のパーティーでまた唄うことになるなら、一緒にカラオケでも行きませんか?ってメールが来たけど、どうする?』と言ってきた。
私は『どうせ今から亜矢と練習スタジオに行くから、さっちゃん達も来ればいいよっ。ちょっとメールしてみてくれよ。』と言って帰り支度を始めた。
駅前のロータリーでさっちゃん達と6時に待ち合わせをすることになり私と亜矢は大きなギターケースを抱えてロータリーへと向かった。
日までは寒波が流れ込み冷え切っていた街中も、北風も弱く穏やかな夜を迎えようとしていた。
『明日も今夜みたいな天気だから…今年はホワイトクリスマスっていう訳にはいかないね…。』という亜矢に…
『オーストラリアじゃ海辺にサンタがやって来るくらいだし…サンタのおじいさんも今年は風邪ひかなくていいんじゃないかな。』
…と私は言った。
そこへ…遠くから手を大きく振りながらさっちゃんと孝弘が歩いてくるのが見えた。
亜矢も私の横で大きく手を振り返して笑ってる…。
『こんばんは…先日はありがとう御座いました。』
と、孝弘が好青年らしくはっきりとした口調で言った。
私は『こちらこそ楽しかったよ。礼を言うのは私達の方だよ。それよりも明日の夜をより楽しく過ごすか…今はそれが一番大切なことだからねっ。』
と私が言うと孝弘はうんうん…と頷いた。
ふと横を見るとさっちゃんが亜矢の耳元で何かを言い…亜矢が『えぇーっ!』っと言いながら笑ってる。
『真一さん…ちょっと亜矢さんに付き合って貰って買い物をしたいんだけど、30分くらい良いですか?』
と…さっちゃんが言う。
私は『じゃあ俺達は先にスタジオに行って指を温めてる…帰りにジュースを買ってきてよ。喉が乾くだろうからさ…』と言い女性陣と別れ孝弘とスタジオへ向かった。
その頃…亜矢とさっちゃんは…
大人の女性のランジェリーショップへと向かっていた。
さっちゃんがクリスマスの夜に孝弘へのサプライズに少しセクシーな下着で臨みたいと…言ったのだ。
どちらかと言えば…セクシー系というより見た目は可愛い女の子系なのに、性格はさっぱりしたタイプのさっちゃんは…先日、初めて亜矢に会った孝弘から
『どうすれば亜矢さんみたいな大人の女になれるのか…色々教えて貰えよ』
と言われたらしいのだ。
それで…とりあえずさっちゃんに一緒について来て貰い下着を選びたかったらしい…。
『あっ…これなんか亜矢さんにピッタリだと思う!お淑やかな亜矢さんが服を脱ぐと…こんなにセクシーなんて…私が男ならその場で押し倒すこと間違いなし!』とさっちゃんは笑う。
真っ赤な上下お揃いのセクシーな下着だった。ブラとTバックのパンティ、そしてガーターベルトにストッキング…。
亜矢は想像しただけで頬がピンクに染まった。
『さっちゃんならこっちかな…』と亜矢が指差す。
淡いブルーの上下で胸元を強調するようなデザインで小さめのメッシュのパンティのセットだ…。
『学生さんには、あまりにもセクシー過ぎる下着よりも、可愛いくてちょっぴりセクシーな感じが良いと思うよ。特に孝弘くんを見てるとそんなのが好みじゃないかなって思う。』
と言うと…
『やっぱり亜矢さんに一緒に来て貰って良かった。私…さっき亜矢さんに勧めた赤の上下を買おうと思っていたから…』と笑いながら言った。
『じゃあ…私も思い切って買っちゃおうかな!』と亜矢も真一へのサプライズを想像した。
亜矢は妹みたいなさっちゃんと2人で下着を買い、真一達の待つスタジオへと急いだ。
途中さっちゃんが『ねぇ…亜矢さんは明日のパーティーにさっきの下着を付けて来る?』と言うので
亜矢は『うふふ…帰ってから着替えるのも可笑しいから、パーティーには付けていくと思う…。』と答えると…
『あっ!その《うふふ…》が大人の女性の魅力の1つだ…私なら《がははっ…》ってなっちゃうから…』と笑う。
『さっちゃんはさっちゃんで私には無い魅力が沢山あるんだから、もっと自信を持たなきゃダメだよ。若さと、明るい笑顔と愛くるしい雰囲気はさっちゃんの最大の魅力だからねっ。』と亜矢は言った。
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