空を見上げて
…パパ
これから
美月のもとへ
行きます
逢えるかは
わからないけれど…
お義母さんにも
美月にも
逢えるかな…?
優月をよろしくお願いします
…ごめんなさい
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高森の両親にとっての
【ひとつの区切り】
それは高森の家に修一と私に遊びにきて欲しい
ただそれだけ
修一にとっての
【ひとつの区切り】
それは夫婦生活を再開したい
…ただそれだけ
みんな
みんな
自分のことばっかり…
自分がセックスしたいから
自分が遊びに戻ってきてほしいから
【ひとつの区切り】
そんなもっともらしい言葉を使ってるだけ
自分の都合のために
そんな言葉で
自分を正当化しようとしているだけじゃない…
四十九日は
美月が天国へと旅立った日
…ただそれだけの事
それなのに区切りをつける必要なんてどこにあるの…?
…どうして誰もわかってくれないの?
悲しくて
辛くて
悔しくて
涙がポロポロこぼれてきた
『美月の四十九日が終わったからって… そんな気にはなれないのよ… 』
私は泣きながら修一に訴えた
『…じゃあ いつならいいんだよ… 』
私が泣きながら訴えても
修一の心にはまったく届いていなかった
『妊娠中からセックスしてなかったんだよ? もう1年もしてないのに… いつまで我慢すればいいんだよ…』
修一はあきらかに不機嫌になっていった
いつまで…
そんな事を聞かれても
私だってわからない
一生修一とセックスしない
そんな事は少しも思っていない
…でも今はそんな気持ちにはなれない
1ヶ月後にはもしかしたら修一を自然と受け入れられるかもしれない
でも1ヶ月後も受け入れられないかもしれない…
『…いつかはちゃんと…』
うつむいて答える私に
『だから そのいつかっていうのは君にとってはいつなんだよ…』
修一は冷たく聞いてきた
私が修一を自然と受け入れられる日
その日がそのいつか…
でも私を“キミ”と呼び始めた修一は
私のそんな答えには絶対に納得しないのはわかっていた
だから私はずっと黙っていた
『…もういい 寝る 』
いつまでも黙っている私に
修一は怒ってさっさと寝室に入っていってしまった
修一は
セックスが円満にいってこそ夫婦の絆は強くなる
そう考える人だった
私はどちらかと言えば
夫婦の精神的な絆が深くなってこそセックスが円満にいく
そう考えるタイプだった
その違いは
今の私にとってはあまりにも大きすぎた
どちらが正しいのかはわからない
多分… どっちも正しいのだと思う
それでも修一は
私の気持ちは理解してくれなかったし
私もまた修一の気持ちを理解してあげられなかった
その日を境に修一は何度も何度も求めてきた
『会陰切開の傷が痛いから』
『具合が悪いから』
『まだ少し悪露が残っているから』
いろんな言い訳を考えて
その度に私は拒否をした
最初の頃はそれであきらめていた修一も
それが続いていくにつれて
『じゃあ 口でして』
『じゃあ手でして』
と要求するようになっていった
もともと
セックスは心と心の結びつき
と考えていた私には本当に苦痛な時間だった
性処理道具になっているような気持ちにもなった…
愛して
愛されて
そんな幸せを感じたセックスをしていた頃が遠い過去のような気がして
すごく寂しかった
そんな手段での
修一の性的欲求を解消していた私は
こんなのが続くならば修一の望み通りのセックスをした方がマシだ
そう思うようになっていた
気持ちはしたくない
身体だってしたくはない
でも性処理の道具にされるよりはマシだった
高森の実家へもまた頻繁に行くようになっていた
美月を妊娠する前は2ヶ月に1度程度だったのに
この頃はもう連休の度に行っていた
高森の両親が楽しみにしていた美月の誕生
それを叶えてあげられなかった修一なりの罪滅ぼしだったのかもしれない
お義母さんもお義父さんも私の事を責めたりすることは一切なく
それなりに気を遣っていてくれたのだと思う
でもあくまでも私への接し方は
【修一の嫁】
としての接し方だった
テレビで見るような
本物の親子
そんな感じではなく
あくまでも私は嫁だった
お義母さんは修一にベッタリで
修一もそれに対して特に嫌がりもしなかった
お茶を飲めば
修一の小さい頃の話し
『修ちゃんが絵画展で賞状をもらった時は嬉しかったわ』
『小さな時からすごく努力家だったのよ』
『反抗期なんて一度もなく素直に育ったのよ』
…行く度に同じ話しを聞かされる
『お義母様 その話しは前にも聞きましたよ』
こう言えたらどんなに胸がスッとしただろう…
でもそんな事を私が言えるはずもなく
『修一さんってやっぱりすごいんですね』
うんざりしながらも
顔では微笑むしかなかった
特にお義母さんの家族自慢にはうんざりだった
お義父さんと同じ教職の道を進んだお義姉さん
『優里子は一番上だからおっとりしながらもしっかり者なの。 学校の生徒さんはもちろん父兄の方々からも好かれていてね。』
実家から銀行員として働いている義妹さん
『この就職難の時代に真優は銀行への就職ができたのよ。 大学を出てもまともに就職できない女の人もたくさんいる時代にね。』
大学を出てもパン屋でアルバイトをしていた私には耳が痛かった
優秀な家族
お義母さんの自慢の家族
こんな事を普通に近所の人に話していたら間違いなく嫌われるだろう
それくらいの自慢
村上家とは違う
…そう言われているような気がした
そして必ず
『千春さんは幸せね。こんな優しい修ちゃんと結婚して。 千春さん幸せでしょう?』
優しく微笑みながら聞いてくるのだ
『はい とっても幸せです。』
私が微笑みながらそう答えるとお義母さんはとても嬉しそうだった
これも嫁の仕事
そう割り切らなければやっていけなかった
実際
連休の時に顔を出す程度の私は
高森家の嫁
その位置を守ることだけに必死だった
美月が元気だったなら私は
美月の母親
いい嫁じゃなかったとしても
美月の母親であることが高森家と私を強く結びつけていただろう
でも美月が亡くなった今私には
いい嫁
であり続けることが唯一高森家と私を結びつける手段になっていた
当然虚しさだってあった
今思えばなんて薄っぺらいものにしがみついていたんだろうと思う
美月を死産した負い目
実家の母が何もしてくれない肩身の狭さ
そういうものも
全部作用していたと思う
だから必死にいい嫁を演じ続けた
お義母さんのようにならなくちゃ
ただそれだけだった
高森の実家から帰った後はいつも
もう何もかも考えたくなくて
唯一の趣味ともいえる洋裁に没頭した
美月の
肌着
ベビードレス
スタイ
を作ったミシン
美月を失ってしばらくはミシンを見るのも辛くて物置の部屋に閉まったままだったが
ただ何かに没頭したくて
ミシンを引っ張りだしてきた
初めのうちは
余っていた布を使って自分で使うためのエプロンを縫ったりしていた
【Beautiful Moon】
美しい月
美月
三日月が目を閉じながら微笑んでいる
そんな月と
Beautiful Moon
という英語を刺繍してエプロンを作った
そのエプロンを着てみると
なんだか美月が本当に側にいてくれる気がした
新しく布を買うお金もなかったのでハンカチに美月のマークを刺繍したりしていた
私が悲しんで泣いているだけではなく
何かに没頭しているのが嬉しかったのか
修一も布を買うお金だけはわずかだが出してくれるようになった
カバン
ポーチ
巾着
帽子
チュニック
全部全部美月のマークを入れた
それを刺繍している時だけは
本当に心から優しい気持ちになれた
時折聞こえてくる
赤ちゃんの泣き声
子供の騒ぐ声すらも
優しい気持ちで聞くことができた
実際に赤ちゃんを見たり
妊婦さんを見るのはまだ辛かったが
赤ちゃんの泣き声を聞くことには
あまり辛さを感じなくなった
そして洋裁のおかげで
私は昼夜逆転の生活を直すこともできた
昼間は裁縫に没頭した
何も考えなくて済んだから
できあがれば嬉しかった
それに比例して
美月を想って泣く日は以前に比べたら
あきらかに少なくなっていった
…私はそれが辛かった
私はかたときも美月を忘れたことなんてない
美月を失った悲しみは時間が経っても
まったく変わらない
一生泣き暮らして
人生を終えることになってもかまわない
そう思ってもいた
なのに…
たかが裁縫をしたくらいで
立ち直りつつある自分が
許せなくて
苦しくて
悲しかった
それでも裁縫をやめて
部屋で何もしないでいれば
それもまた苦しくて
悲しみに押し潰されそうで
切なくて
辛くて仕方なかった
だから結局また裁縫をして気を紛らわせた
その繰り返しの日々だった
身内以外の人と関わっていくのはまだ辛かったし
本音をさらけだせるような
この気持ちを黙って聞いてくれる友人もいなかった
修一以外の誰とも話さない日なんてザラにあった
むしろそれが普通
そんな日々は美月の一周忌になる頃まで続いていた
美月の一周忌がきた
私達と高森の両親、実家の母はお寺にいた
相変わらず高森の両親は実家の母を無視していた
…もう両家の仲の修復は無理だろう
私はあきらめていた
痴呆が進み寝たきりになった祖母は叔母の家に引き取られた
同じく痴呆が進み徘徊行為や暴言、あげくには便を壁に塗りつけたり
母や祖母の使っているコップにわざと便をいれたりして
もう誰も手をつけられなくなった祖父は施設にいれられてしまった
母は美月が亡くなった当初はあまり出歩くこともせず
真面目に祖父母の面倒を見ていたようだったが
2人がいなくなった今はまた毎日飛び歩いていた
私が引きこもっていた一年
私の中で時間は止まったままでも
確実に私以外の人達には時は流れていた
それでも
私だってやはり泣くことはもう少なくなっていた
涙は確かに今でもしょっちゅう流していた
でも声をあげて泣くことはもう何か月もない
私の中にもやはり時は流れていた
一年前の今日のことは昨日のことのように思いだせるのに
思いだす
その時点でもう
今現在の悲しみ
ではなくなっているのかもしれない…
一周忌が終わって少し経った頃
修一の転勤が決まった
同じ県内だったが
今住んでいるところから車で2~3時間かかる場所だった
高森の家からも3時間くらいのところにあるその場所
今までよりも
高森の実家にずっとずっと近付いた場所
そこに転勤が決まったことは
修一も高森の両親もそれは大喜びしていた
義妹の結婚が1年後に決まり
1年後には夫婦2人で暮らすことになる
その状況での修一の転勤は
特にお義母さんにはたまらなく嬉しかったに違いない
転勤先の営業所の近くには
今まで住んでいた社宅よりもさらに古い社宅がある
部屋数も今のところとは変わらないが
世帯数は今のところより少し多いらしい
…もう社宅は嫌だった
毎日毎日
飽きもせずに井戸端会議をする母親達
夏場に窓をあけていると全てが丸聞こえだった
仲がいいフリして
実は文句を言いまくっている
あの人の夫はどうだ
あの人の子供はどうだ
家を新築するために
社宅を出る
そんな人は噂の恰好の餌食になる
同じ会社ゆえに
いろんな詮索がつきまとう
…だから社宅に引っ越すのはもう嫌だった
ただ社宅は家賃が半端じゃなく安かった
古い社宅ではあったが1万円もしないくらいだった
同じ敷地内にある駐車場を一台借りても1万5000円でお釣がきた
貯金と節約が趣味の修一が
私の気持ちを理解してくれるか…
それだけが問題だった
私もなかなかその事を言い出せずにいた
『普通のアパート住まいなんて贅沢だ』
そう言われるような気がして…
でも
『次は社宅はやめよう』
意外な事に修一は自分からそう言ってきた
『社宅は人間関係が面倒だから…』
修一はそう言っていたが
よく考えてみれば思いあたる節はある
同じ会社に勤める社宅の人達の出勤時間はほとんど全員が同じ時間に社宅を出る
『パパ~ いってらっしゃ~い』
『パパ~ 早く帰ってきてね~ 』
『パパ~ おみやげね~』
幼い子供を抱いた妻達が毎日見送りに外に出てくるのだ
父親の姿が見えなくなるまで手を振り続ける子供達
一度だけ
『さすがにあの光景を見るのは少し厳しいな』
と修一が漏らしたことがあった
修一は毎日 毎朝
その光景を見ながら
仕事へ行っていた…
どんな思いだっただろう…
胸が締めつけられた
…修一だって辛かったんだ
私が逃げ出したあの光景から修一は逃げ出すことすらできず
泣きたい日も
苦しい日も
いつもじっと我慢して仕事に行ってたんだ…
修一の気持ちを思ったら
かわいそうで
胸が張り裂けそうだった…
私だけが辛い
修一は立ち直ってる
修一なんて何もわかってくれない
そう思いこんで
修一を恨めしく思った時もあった
苛立った時だってあった
でも分かってないのは私の方だった
…ごめんなさい修一
…心の底から申し訳なく思った
罪滅ぼしのつもりではなかったが
その日を境に私は修一の求めには素直に応じるようになった
新しい引っ越し先を選ぶにあたって
社宅には入らない
そういう修一に高森の両親は
『援助するから私達が遊びに行った時に泊まれる部屋が欲しい』
と言ってきた
夫婦2人ならば2DKほどのアパートで充分だが
高森の両親の事を考えて3LDKのアパートを探した
職場にも近く
あまり騒音のしない場所
マンションならわりといい物件があったが
アパートとなるとなかなか見つからなかった
3LDKのアパートなんてそうそうあるわけもなく
結局妥協して職場までは少し距離があるが3DKのアパートに決めた
うちを含め4世帯が入るアパート
うちは2階だったが
すぐ下の家には三輪車が置いてあったから
きっと幼い子供がいるのだろうと思った
引っ越しの挨拶をした時にも
『うちは1人小さい子がいるのでご迷惑をかけるかもしれません』
と言われたので
ある程度のうるささは想定していたが
実際入居してみたらそこのお宅の夫婦が共働きで子供も保育園に通っているらしく
朝の7時くらいから夜の7時くらいまでその子はいなかった
帰ってきてからしばらくはバタバタと足音が聞こえたり
子供の声も聞こえたが
たいして気にもならない程度の音だった
社宅にいる時は
あんなに子供の声が嫌でしかたなかったのに
いざあまり子供の声が聞こえなくなると
不思議な事に少しだけ子供の声が懐かしく思えた
他の2世帯もまだ子供がいなかったようで
夫婦共働きだったみたいなので
昼間は本当に静かだった
子供の声にストレスを感じなくなり
ゆっくりと昼間過ごせることで
少しずつだけど
『子供が欲しいな』
そう思えるようにもなってきた
引っ越しをして2か月が経った頃
私は母や高森のお義母さん、美月の葬儀の時にお見舞いにきてくれた叔母達に
美月のマークの入った小さなポーチを作っていた
そのポーチを実家に送ったところ
母はとても喜んで
近所の商店街で洋服や雑貨を扱う店を開く友人にポーチを見せたらしい
そこでその母の友人から
『良かったらいろんな物を作って、うちの店に置いてみない?』
という嬉しい申し出をいただいた
金額は私が設定していいと言ってくれたし
品物を店に置くお金はいらないとも言ってくれた
美月のマークをとても気にいってくれたらしい
私は嬉しくてさっそく修一に話し
修一も
『そういう事なら』
と快諾してくれた
品物が売れたら返すから
という約束で布を買うお金も少し貸してもらえた
その日から昼間は裁縫に没頭した
楽しかった
好きな事に没頭できる分だけ
修一にも優しくなれた
自分のものを作っていた時も楽しかったが
私が作ったものを誰かがお金を払って買ってくれるかもしれない
売り物にするためには丁寧に作らなければいけない
その適度な緊張感もまた心地良かった
修一からお金を借りることができた私は
100㌫リネンのブラックウオッチの生地を買った
私が大好きな柄だし
ブラックウオッチなら年齢を問わずに使ってくれるんじゃないかと思った
ポーチ
膝かけ
巾着
ティッシュカバー
美月のマークはタグを別に買って
そこに刺繍をして縫い付けた
それが一番細かい作業で大変だったが
その時は少しも大変だなんて思わなかった
初めて店に置かせてもらった時は3000円くらいしか利益にならなかったが
毎月ほんの少しずつ利益が増えていって
それが本当に嬉しかった
お店の人から
『次はこんな柄のこんなものが欲しいって言ってたわよ』
と聞けば
できるだけ要望にも応えた
材料さえ用意してくれれば要望通りに作ってあげたりもした
お客さんのお孫さんが幼稚園で使う靴袋やスモック
お手伝い用のエプロン…
子供のサマードレスを作ったこともあった
不思議なことに
仕事だと思うと
子供の物を作ることもそんなに苦痛ではなかった
そんな風に洋裁を仕事にして
洋裁に没頭してる間にあっという間に1年近くがすぎる
…そして美月が亡くなってから2年が経った
本来ならば美月の3回忌にあたるが
高森の両親は毎月のようにこちらに泊まり来ていて
美月のお参りのために度々お寺に出向いていたため
あらためて3回忌をすることはしなかった
母もお盆やお彼岸の時にはお寺に行って
その度に美月が納骨されている場所にお菓子とかをお供えしてくれていた
だから美月の命日も
私と修一だけで美月の元へ行った
美月の遺骨を前に2人で手をあわせる
…みーちゃん
…今日でもう2年が経ったよ
天国でママとパパのこと見ていてくれている…?
みーちゃんがもう2歳になると思って
ママ今日はちょっとしたおやつを持ってきました
チョコレートです
きっとすっごくおいしいよ
もう2歳だから
たまにはチョコを食べたっていいよね。
チョコレートまた持ってくるね
だからその時までいい子に待っていてね…
愛してるよ…
私は美月のために買った
子供用のキャラクターのついたチョコレートを美月の眠る納骨堂の中に置いた
…悲しい
そういう思いは今でも間違いなくあるが
美月に語りかけている時だけは
私は母親だった
…だから優しく穏やかでいられた
お寺からの帰り車の中で
『千春はこういう言い方されると嫌かもしれないけど…』
修一がゆっくりと話し始めた
『美月が亡くなってもう2年経つし、もうそろそろ次の子供の事を考えてみないか?』
修一はそう言ってきた
修一が最初に言った通り
『美月が亡くなってから2年経つし』
この言葉は確かに嫌だった
何年経とうが私は
『何年経ったからこれをしよう』
そんな事は絶対に思えない
…でも
子供を作ることは嫌じゃなかった
むしろ素直に
“子供が欲しい”
そう思った
だから
『…そうだね。 また授かれるように頑張ろうね 』
と微笑んだ
修一は私の言葉を聞いてすごくすごく喜んでいた
そしてまた美月の時のように
私達は真剣に子供を望み始めた
美月の時は
私の排卵日に修一の出張が重なったりしながらも
3ヶ月で美月を授かれることができた
また今回もそのくらいで授かれるだろう…
いや…
しばらく修一の出張はないみたいだし
もっと早いかも
そんな期待でいっぱいだった
子供を真剣に望み初めたその月
排卵日が終わってから生理予定日まで本当にドキドキした
基礎体温も測っていたから
その行為を持った日は排卵日であることは間違いない
念には念をいれて
排卵日数日前から行為をした
…赤ちゃんを授かっていますように
毎日祈っていた
生理予定日当日から検査可能な判定剤も買って準備した
そして判定剤をしようと決めていた生理予定日当日…
…朝いつものように基礎体温を測ると体温はガクンと下がっていた
生理くるんだ…
なんともいえない悲しい気分になった
まだ子供を望み始めた最初の月なのに
下がった体温を見て泣けてきた
……なんで?
………なんで?
そればかりだった
そして翌日生理がきた…
修一は
『まだ一ヶ月だろ? 焦らない 焦らない』
と慰めてくれた
…わかってる
…わかってるけど
生理がきた事がショックで溜め息ばかりが出てきた
『妊娠してしまえば俺の実家にもまた行けなくなるんだから、のんびり自然にまかせようよ』
あまり慰めにもならないその言葉も
修一なりの慰めの言葉だったらしい
次の月は
排卵判定剤というものまで購入した
排卵判定剤と基礎体温まで測って行為を持ったのに
やっぱり次の月も予定日通りに生理がきた
その翌月も同じだった
まだ3ヶ月しか経っていないのに
私は妊娠できないのかもしれない
そんな不安が広がった
たった3ヶ月と言われてしまえば
本当にたった3ヶ月なのだ
でも子供が欲しい私にとっては
3ヶ月も頑張っているのに子供ができない
そう思っていた
その頃
【あまり行為を持ちすぎても妊娠しにくいらしい】
妊娠を望む人達が集まるサイトの中でのその言葉が目に入った
…そうなんだ
念には念をいれて排卵日数日前から行為をしていたが
もしかしたらそれが悪かったのかもしれない…
目から鱗のような言葉だった
だから私は排卵日前に修一が求めてきても拒否をした
『あんまり行為をしすぎても良くないんだって。』
そういう私に
修一は少し不満そうだったが
妊娠するため
と排卵日当日までなんとか我慢してくれた
…それなのに
やっぱりその月も生理が来た
その頃から
私はすごくイライラするようになっていた
趣味と実益を兼ねた洋裁も
あまりヤル気が起きなかった
布を広げてみるものの
どうしても作る気分になれなくて
また布を畳んで閉まう
そんな日が続いていた
高森の実家には相変わらず連休になれば行っていたし
高森の両親も一か月に一度は2泊くらいで泊まりにきていた
『その日は私の排卵日だから来ないでください』
そんな事を言うわけにもいかず
排卵日と高森の両親が来る日が重なった日は
誰かに八当たりすることはしないまでも
すごくすごくイライラした
その頃の私にとって一番大切なのは排卵日だった
修一と私の気持ちが愛で結びついて
そしてそれがセックスに結びつき
その結果 2人の愛の結晶である赤ちゃんを妊娠する
そんな夢のような
そんなキレイ事は
もう心の中にはまったくなかった
…とにかく排卵日
排卵日以外には修一とセックスをする気にもならなかった
排卵日になれば
修一が仕事でどんなに疲れていても
私から頑張って誘った
『仕事で疲れてるから無理だよ』
拒否されると消えたくなった
『今日じゃないとダメなの! 』
仕事の疲れですでにウトウトしている修一にそう言っても
『…明日 明日は必ず… なっ? 今日は無理なんだよ』
そう言って修一は背中を向けて寝てしまう…
…明日なんて意味ないのよ
…明日なんて絶対に絶対にしないから
…修一が自分から子供が欲しいって言ったんじゃない
…今日じゃなきゃ意味がないのに
背中を向けて眠る修一に腹がたって何度も蹴りたくなった
【排卵日以外にセックスをする事なんて無意味なこと】
修一が求めてきても
相手にもしない私に対して
修一も当然ストレスを溜めていた
『小作りのためにだけなんてセックスしたくない。』
そう言われた事もあった
『俺は千春とセックスしたい時にしたいんだよ。 そんな“排卵日排卵日”って義務みたいなセックスは嫌なんだよ』
修一のその言葉にはショックだった
…俺がしたい時?
何よ…それ…
排卵日で私がしたい時には拒否するクセに…
その時はお互いに余裕がなくてお互いの気持ちを理解できなかったし理解しようとすらしなかった
…子供が欲しい
その気持ちは
間違いなく私も修一も同じはずなのに…
どうしてこうなってしまうのか分からなかった
…本当に子供が欲しいと思っているの?
修一の態度に何度も疑問を感じたこともあった
ネットでマカがいいと見れば修一に買ってもらおうと頼んだり
精がつくものを作って夕食にだしてみたり
冷やすと不妊の原因になると聞けば必要以上に暖めてみたり…
私ばかりが頑張っている気がして
悔しくて
情けなくて
何度も涙を流した
ケンカも何回もした
『こんなにイライラしている君を抱きたいと俺が思うとでも思っているのか?』
『信憑性もないネットの情報を鵜呑みにするな。もし妊娠しやすくなるのが事実ならば、それはなんの実験データに基づいているんだ?』
この言葉を言われる度に
何も反論できなくて私は泣いていた
そして修一は決まって
『今後のためにお互いの改善点を考えよう。』
と言うのだ
『お互いの改善点』
そんな事を言っても
自分は悪くないと思っている修一は
私が改善するべき点
結局それだけで話しはいつも終わっていた
子供を真剣に望み初めてから半年が経った
焦れば焦るほど
私はイライラして
修一との仲はギクシャクしていった
高森の両親は相変わらず毎月きていたし
私達も毎月泊まりに行っていた
いずれは同居
結婚前から修一にはそれとなく言われていたし
義妹が結婚して家を出ていった今
高森の両親も最近はよくいずれする予定の同居の話しを持ちだしてきた
『修一の会社が私達の住む県にはないから、私達が家を売ってあなた達のところに行こうと思ってるの』
『お墓もそっちで買う予定よ』
ことあるごとに
長男
跡継ぎ
と修一に自分達の老後を期待していた
当然修一の妻である私にもその両親の期待はのしかかってくる
修一も
『俺は高森家の長男だから』
とことあるごとに言ってきた
長男の修一のもとへ嫁いだのだから
高森の両親の老後をみるのは私の務め
わかっているけど
まだもう少し先の話しになるであろう話しをわざわざ今しなくても…
それもまたストレスだった
それに追い討ちをかけるかのように
実家の母から
『自宅と店が競売にかけられることになった』
と連絡がきた
父が亡くなって入った生命保険のお金で全部借金を払うと聞いていた私は
『なんで…!? 借金払い終わったんじゃなかったの…!?』
とひどく驚いた
父が亡くなって入った7000万
私の結納金や叔母達に借りていたお金を返したら5000万ほどが残ったらしい
そこから今後自分が生活していくために3000万を取ったら残りは2000万しかない
銀行から借りたお金は総額約5000万…
『借金は全部保険金で返済して、後はパートとかしたらいいじゃない!』
私はそう言ったが
母は自宅の固定資産税や市・県民税、年金まで滞納していて
とてもそれだけでは借金は追いつかないと言っていた
自宅と店が競売で売れれば借金も半分以下に減る
そうしたら後は一生かけて少しずつ残った借金を返していくと母は考えていた
『残った借金は私が亡くなった時点で千春や雅樹が財産放棄すれば帳消しになるから』
と私達はなんの心配もいらないとも言っていた
自宅の競売のことよりも
今後の母の方が私は心配だった
私は長男の嫁として修一の両親をみなくてはいけない
あれほど母を嫌っている修一と修一の両親は
私が母の手助けをしてあげることには間違いなく反対してくるだろう
『…で 自宅が売れたらどこに住むの?』
『とりあえずどこかアパートでも借りることにするわ』
母はあまり自宅を手放すことには悲しんでいなかった
『…雅樹がいるじゃない。 この際だから雅樹と同居したら? あそこの家なら新しいし、お母さんの部屋くらいあると思うよ。』
私は何も深く考えずに弟と同居することを勧めてみた
弟夫婦は奥さんの実家が持っている土地に最近家を建てたばかりだった
私の住んでいるところからは遠かったため新築祝いには行っていなかったが
弟が送ってきた写メからしてかなり広そうな家だった
だから新しくアパートを借りるくらいなら
弟の家に身を寄せたらいい
そう考えのだ
兄が音信不通な今
実質上は弟が村上家の跡継ぎになっていた
父の喪主も務めたし
叔母達も弟が跡を継ぐと思っていた
だから弟と母が同居するのは当然だし
弟夫婦が母の面倒をみるのもまた当たり前のことだと思っていた
ところが
母からは私が思いもしなかった答えが帰ってきた
『…実はね 黙っていたわけじゃないんだけど雅樹のところに3人目ができたのよ。』
…私はあまりの驚きに言葉を失った
『…で、3人目も産まれるし… 私の事までは迷惑かけられないから… それに私は1人の方が気楽だし。』
3人目…
私は美月を失った上に
まだ妊娠すらできないのに…
弟夫婦には弟夫婦の考えがあるのは分かっている
でも…
…私にはなぜか許せなかった
最低かもしれないけど
弟の奥さんの妊娠に喜ぶことなんて絶対にできなかったし
お腹の子供に対しても無事に産まれてきて欲しい
そんな事も思えなかった
無言のままの私に
『私は1人で大丈夫だから。 今友達の…不動産会社をやっているあの山崎さんに家も探してもらってるの』
母は大丈夫だから
そう笑っていた
『…そう わかった。 また何かあったら連絡ちょうだい』
私はそう言って電話を切った
電話を切った後
しばらくは何もできなかった
悔しさとか
嫉妬とか
苦しさとか
そんなのが全部重なりあって
今までに経験したことのないような
黒くて大きなモヤモヤが渦巻いて
それが巨大化して
どうにもならない感情に押し潰されそうになっていた
…なんで?
……なんで私には赤ちゃんができないの?
弟ばかりが幸せなのが悔しかった
……いや
本当は弟じゃない
………弟の奥さんだ
弟の事はやっぱりいつだってかわいかった
なんでも話せるような
そんなに仲の良い姉弟関係ではなかったけれど
でもやっぱり私にとっては大切な弟…
弟の幸せを妬む気なんてない
弟にも向けられないやり場のない苦しみは
結局他人である弟の奥さんに向けるしかなかった
それでも弟の奥さんのメールアドレスも携帯の番号も知らない
結局は弟に嫌味のようなメールを送ることでこの気持ちを解消するしかなかった
【実家が競売にかかってるの知ってる?】
そこから始まり
【あんたの奥さんの実家と仲良くするのは結構だけど、あんた達夫婦はお母さんを見る義務があること忘れないでよね】
それを弟に送信した
弟からは結局なんの返信もこなかった
それもまた腹だたしかった
…修一の両親は私と修一がいる
いつかはこちらで家を建てて同居する
修一の両親は老後の心配なんて何もしなくてもいい
…弟の奥さんの実家だってそうだ
弟家族が近くにいて
姪達もしょっちゅう実家に顔を出してるようだ
それに修一の両親と同じで
経済的にも困っていないだろう
…それなのにうちの母は
実家の母だけが不幸のような気がした
夫婦仲も悪く
経済的にも借金だらけで
その上 こんな年齢になってから自宅が競売にかけられて……
実家の母を思うと
いたたまれない気持ちでいっぱいだった
でも私には何をしてあげることもできなかったし
それが悔しくて
情けなくて…
そんなやるせない気持ちは
結局また弟に嫌味のようなメールを送ることでしか晴らせなかった
それでもやっぱり弟からは返信はこなかった…
それから3ヶ月が経った頃
私と修一の結婚を賛成してくれて
私達兄弟をすごくかわいがってくれた千恵子おばさんが亡くなった
膵臓癌だった
幼い頃からかわいがってもらったこともあって
私は修一に
『おばさんの葬儀の手伝いがしたい』
と頼んだが
村上家との関わり
それを無駄な事と考え
付き合いを避けていた修一は私が頼んでもいい顔をしなかった
修一が首を縦にふらなければ私は亡くなった叔母の元へ駆け付けることすらできない
……ごめんね千恵子おばさん
………ごめんね
心の中でずっと謝り続けていた
ところが母からの電話で
『千恵子さんの葬儀の喪主だけど、敏一さん(千代子おばちゃんの旦那さん)になったから』
と一本の電話が入った
千恵子おばさんは生涯独身だったため
本来ならば弟である私の父が喪主を務めるべきだが
父も亡くなっていたために
千恵子おばさんと特に仲が良かった千代子おばちゃんの旦那さんが喪主をすることになったのだ
それを修一に一応伝えると
『……手伝いに行った方がいいな』
喪主が千代子おばちゃんの旦那さんだと知った途端に
修一の態度が180度変わった
…理由はわかっている
おじさんは修一の会社の得意先の所長だから
修一は自分自身の点数を上げるために
手伝うと言っているのだ…
他の人が喪主ならば絶対に修一自ら手伝うなんて言わないハズだ
でも私にとっては修一の動機がどうであれ
叔母の葬儀の手伝いができる事は本当に嬉しかった
翌日のお通夜
私達は手伝うためにお昼すぎにとりあえず叔父のもとへ行った
亡くなった叔母は独身だったため
全てを親戚で手伝わなければならない
お通夜の受付
お通夜、葬儀、いただいた香典などの会計
葬儀までの間のロウソク番
そしてお通夜と葬儀中に喪主を務める叔父の自宅にいる
高齢で寝たきりになっている叔父の母の世話…
とりあえずまだ決まっていないことはこれの倍くらいはあった
修一は
『会計は俺と千春でやります。 受付も。』
と申し出た
その場に一緒にいた母は
『ロウソク番と敏一さんのお母さんの世話を誰に頼もうかしら…』
一番体力の使う役目だけが残っていた
『…雅樹にさせたらいいわよ』
私は母にそう言った
母は
『そうね。それは雅樹にさせるわ。』
とさっそく弟にメールをしようとしていた
『…真耶さんには敏一おじさんのところのおばあちゃんの面倒見てもらえば? お通夜やお葬式の時に子供達がうるさくしても迷惑でしょ?』
私は見たくなかった
お腹の大きな弟の奥さんの姿を…
美月が産まれていれば同じくらいの年頃だった野映の姿を…
母は私のことがあったからか
妊娠している弟の奥さんが老人の面倒を見ることでまた美月のような事が起きたら…
と心配していた
私はそれもまた悔しくて
腹だたしかった
『オムツとかは替えなくてもいいから。ただ留守番してくれるだけでいいから』
叔父がそう言ってくれた事で
母もなんとか納得したらしく
その件も雅樹にメールしていた
ところが弟から母の元へすぐ返信があり
【俺は通夜の番をするのは全然かまわない。 でも妊娠中の真耶がなんで敏一おじさんとこのばあちゃんの面倒見なきゃダメなんだよ!】
とあきらかに怒っているような文面だった
【里桜と野映はどうするんだよ!】
あきらかに怒っている弟に母はあわてて
すぐに弟に電話をかけた
敏一おじさんや他の親戚に聞かれないようにと母は席を外した
私は自分の言ってしまった事に少し負い目もあって
母の電話の内容が聞きたくて一緒に母についていった
『もしもし 雅樹?』
母が電話をかけると
やはり弟は怒っていたようだった
『……千春と修一さんだって手伝うんだから。 あんたもお世話になったんだから手伝うくらいしなさいよ。』
母もまた弟に何かを言われたことで苛立っていた
『え? 千春? 千春と修一さんは受付と会計。 それに千春が“真耶さんに面倒見てもらったら”って言ってたんだから。 お母さんだって反対したんだからね!』
母はそれが決まった時の状況を詳しく弟に話し始めた
オムツを替えなくてもいい
奥さんや子供達の食事もおじさんの家に用意しておく
母はそう言って
なんとか弟に頼んでいた
私はなんとなく
弟と顔を合わせづらいな…
とバツが悪い気になってそのまま親戚のいる部屋へと戻った
それからしばらくして
『雅樹夫婦も手伝うことになったから』
と母は部屋に入ってきた
私達が会場に着いてから1時間後くらいに弟も会場に着いた
あきらかに不機嫌そうな弟は
私と一緒にいる母のもとへ来て
『なんなんだよ あの食事。 コンビニのオニギリだけだろ! 子供達の夕飯はコンビニのオニギリだけかよ!』
弟は奥さんと子供達を千代子おばちゃんの家へ送った時に
私達が用意する
そう言った食事を見たらしい
バタバタしていたのもあってコンビニでオニギリを大量に買って
台所に置いておいたのを見たのだ
『一日くらいコンビニのオニギリでも死なないわよ』
私と母はそう言ったが
『とにかく通夜振る舞いが一段落ついたら真耶と子供達をここに連れてくるからな』
と怒っていた
……ここに来るんだ
………逢いたくない
私はただそれだけだった
お腹の大きな妊婦さんを見るのは辛い
いくら身内でもやっぱり辛いのだ……
そんなのは私の勝手だとわかっているが
それでもほんの少しでいいから弟には私の気持ちをわかって欲しかった
…でも弟にとって一番大切なのは弟の家族
奥さん
子供達
…そしてお腹の赤ちゃん
通夜の受付時間になった私は
やりきれない気持ちで受付に立った
お通夜が終わり
通夜振る舞いが始まった
千恵子おばさんの会社の元同僚の方もたくさん弔問に訪れてくださった
そして弔問客が帰って親戚だけが残った頃を見計らって
弟は奥さんと姪達を連れて会場に来た
そして私の目に飛びこんできたものは
3歳手前になる野映だった
眉毛の形
薄い唇……
…美月によく似ていた
村上家の血筋なのだろう
美月の眉の形と薄い唇は私によく似ていた
美月の従姉妹にあたる野映がその血筋をひいているのは不思議ではない
野映に逢うのは
野映が産まれた時にお祝いを持って行ったきりだから
約3年ぶりだった
『のえ もうお腹ペコペコだよ!』
弟に抱かれながら文句を言う姿は
すっかり1人前のおしゃまな女の子だ
…美月もこんな風に育ってたのかな
……あんな風にしゃべっていたのかな
………美月もあんな風に私達に抱かれていたのかな
姪の姿が自然と美月と重なっていく…
私にとって美月を失ってからの日々は
それほど長い時間には思えなかった
でも姪の成長した姿を見て
初めて美月を失ってからの時間がいかに長かったのかを思いしらされた気がした
それから少しして
千恵子おばさんの御焼香を終えた里桜と弟の奥さんがこちらの会場へと入ってきた
………大きなお腹
……見たくなかった
…でも目をそらせない私もいた
遠くの席にいる私と一瞬目が合った弟の奥さんは頭を下げてきた
その瞬間
私は頭も下げずに目をそらしてしまった
無視してやろうとか
意地悪してやろうとか
そういうつもりはなかった…
…でも
やっぱり悔しかったし
悲しかったし
辛かったし
切なかった
もっと義姉である私に気を遣ってくれたっていいじゃない
そうとも思った
そんな私の何かを察知したのか
弟家族は私からかなり離れた席に座った
それでも
いくら遠い席とはいえ小さな会場では
少し大きめの声なら当然こちらにも聞こえてくる
『あら~ 3人目? 』
『何か月なの?』
『次は絶対男の子だね。』
叔母や叔父は
弟の奥さんの妊娠した姿を見て喜んでいた
『7ヶ月なんです』
弟夫婦はあの時と同じく
幸せそうに微笑んでいた
『俺も次は男の子がいいと思ってるんですけどね』
…弟にとって
実の姉である私の気持ちなんて
たいしたことではないのだろう
…みんな私の気持ちなんて考えてくれない
『そのお腹の出っ張り具合は間違いなく男の子だわ! おばちゃんが保証する! よかったね~ 雅樹(笑) 』
『芳子さんも幸せだねぇ』
叔母達に羨ましがられて母もまた嬉しそうに笑っていた
…私は何も聞こえない
……私には何も見えない
何も聞こえないフリをして隣りに座る修一と話していたが
本当は1秒でも早くこの場から逃げ出したかった…
同じ気持ちだと思っていた修一にも申し訳ない気がした
でも修一は
『俺挨拶してくるよ』
そう言って弟の奥さんの元へ行ってしまった…
……挨拶するべきなのは向こうからでしょ?
実際お腹の大きな姿で挨拶にこられても
私にとっては辛いだけだが
何もかもが悔しくて
弟の奥さんを悪者にすることで
私はなんとかその場にいることができたのだ
修一はすぐに私の元へ戻ってきたが
私は修一のこともやっぱり恨めしかった
…なんで挨拶なんてしにいくの?
通夜の始まる前に弟に逢った時
修一は弟を無視していた
…なんで弟の奥さんには挨拶しに行くのよ
叔母も弟夫婦も修一も母も
そこにいる全ての人達に対して私は許せなかった
『いつまでも子供達が騒いでいてはご迷惑なので…』
そう言って弟の奥さんと姪達が帰った時は心底ホッとした
でも野映とお腹の大きな弟の奥さんの姿を見たことで
少しだけ気持ちはラクになった感じはあった
姿を見るまでは
いろんな事を考えてしまって
嫉妬とか
悔しさとか
そういうどす黒い感情に心を奪われていたが
案外実際目にしてしまった後にはあまり考えなくなったのも事実だ
それでももちろん心から祝福なんてできない
…でも嫉妬してももうどうしようもない
その現実を受け入れられたような気がしたのだ
それからは心も穏やかに暮らせるようになった
叔母の葬儀が終わったその月の終わり
私は風邪のような身体のダルさが続いていた
基礎体温を測っていても
なかなか妊娠しない虚しさから
基礎体温を測るのもやめてしまっていた
…でも生理は2日ほど遅れている
“もしかしたら…?!”
私は祈るような気持ちで
用意してあった妊娠判定剤を片手にトイレに入った
尿を判定剤にかけてから
ずっとずっと
…お願いだから陽性になって
祈っていた
すぐに結果が出た
……陽性
妊娠してる。
間違いなく妊娠してる。
あまりの嬉しさで全身に鳥肌がたった
…美月が戻ってきてくれた
嬉しくて
嬉しくて
私はすぐに修一にメールをした
【今妊娠判定剤をしたら陽性でした 妊娠してたよ 美月が戻ってきてくれたよ 】
数え切れないほどのハートマークをつけて送信した
すぐに修一からも
【よかった 本当によかった よかった】
私に負けないくらいのハートマークをつけてメールが送られてきた
本当に嬉しかった
…でも喜びの裏側にはやっぱり不安もあった
…またあんな事になってしまったら
…万が一また亡くなってしまうような事があったら
妊娠して飛び上がるほど嬉しいのに
不安は常につきまとっていた
そんな私を見て
『今度は総合病院で診てもらおう』
と修一は言ってきた
渡辺産婦人科の先生はとても良くしてくださって
私達も感謝しているが
少しでも最先端の医療を行っているところ…
修一がそう考える気持ちもよく理解できた
妊娠を修一が高森の両親に告げた時
一番最初に言われたこと
『今回は私達が手伝いに行くから』
私ももちろん今回は里帰りをするつもりはまったくなかった
…もう後悔はしたくない
その一心だった
病院では以前に死産している事を伝え
心配だから検診の期間を短くして欲しいと頼みこんだ
先生も
『そういう事なら…』
と理解してくださった
心拍が確認できた頃からつわりも始まった
美月を妊娠した頃よりも慎重になっていたため
昔の半分の距離になったとはいっても
高森の実家に帰ることもなくなった
とにかくみんなが心配して慎重になっていた
修一も
『とにかく寝ていた方がいい。 俺がやるから』
そう言ってくれていた
つわりがヒドい時には高森のお義母さんが
『手伝いに行こうか?』
と言ってくれたが
『ありがたいけど、お母さんが来ると千春が寝てられないから』
とお義母さんの申し出も断ってくれた
あれだけお義母さんを一番に考えていた修一が
今は私だけを見つめてくれている気がした
妊娠した嬉しさはもちろんだが
やっと私だけを見てくれた気がして
本当に嬉しかった
美月の時とは違って
今回は本当につわりがキツかった
普段は感じないような
冷蔵庫の匂い
水の匂い
部屋の匂い
そんな匂いまで感じて気持ち悪くてしかたなかった
家事が何もできずに寝てばかりで修一にも申し訳ない気持ちでいっぱいだったが
修一は私の身体が一番大切だと優しくしてくれたし
つわりがキツイのは赤ちゃんが元気な証拠
なによりその言葉をお義母さんから教えてもらったこともあって
私はそのつわりの辛ささえも幸せだった
つわりもピークを迎えた頃
母から
【昨日雅樹のところに無事赤ちゃんが産まれました 2944㌘の男の子です 名前は鐘 です 】
とメールがきた
鐘…?
…カネ?
…ショウ?
読みがなが書いてなかったので
まったく読めなかった
でもつわりがキツくて正直言って弟の子供の名前なんてどうでも良かった
私もつわりでお祝いには行けないし
修一が1人でお祝いに行くわけもない
結局弟に
【長男誕生おめでとう】
とメールでお祝いを伝えた
しばらくしてから弟から
赤ちゃんが退院した事と赤ちゃんの写メが送られてきた
【鐘 あつむ です。真耶に似てます 】
鐘と書いて あつむ
『へぇ… そんな風にも読むんだ 』
そんなものだった
つわりがピークをすぎた頃
また修一の転勤が決まった
今度の営業所の場所を考えると弟の家から車で10分くらいのところに住むことになりそうだ
ピークがすぎたとは言っても
つわりはまだ辛かったし
引っ越しの準備もままならない状態だったので
新しい家を決めるのも運送会社に引っ越しの手配をするのも全て修一がやってくれた
妊婦検診に通っている今の総合病院から
転居先の近くにある大学病院への転院も決まった
新しい家は3LDKの築2年の賃貸マンションだ
前回と同様に高森の両親に
『援助するから広い家』
それで見つけたのがそのマンション
私が妊娠した今
世帯数が多くて子供がたくさんいるマンションでも修一にはもう気にはならなかったのだろう
運送会社のおまかせパックとかいう
全て荷造りをしてくれる夢のようなプランにお世話になって
私は引っ越しの時ものんびりしていられた
つわりが治まって少し経ったころ
…ポコ
…ポコ
お腹の中に泡があるようなそんな感じがした
以前に経験したことのある感覚…
……胎動だ
美月を死産したとはいえ
一応経産婦になる私
胎動も美月の時より早い時期に感じることができた
嬉しかった
美月がお腹の中で亡くなってるとわかった日
この胎動を感じたくて
どのくらい泣いたか分からない
その胎動を今また感じることができた
もちろん臨月の時の胎動と5ヶ月の胎動ではまったく違う感覚だが
私には胎動を感じられた喜びだけで涙が溢れてとまらなかった
…でも
胎動を感じるようになった事でまた私の中に不安と恐怖がよみがえる
また突然動かなくなったらどうしよう…
胎動を初めて感じられた日から
私の頭の中は
胎動の有無
それだけになっていった
毎日毎日
赤ちゃんが動く度にその時の時刻と何回くらい動いたのかを記録した
動く間隔がいつもより少しでも開けば不安でしかたなくなった
とにかく無事に産まれてきて欲しい
ただただその一心だった
本来なら7ヶ月に入る少し手前の時期は検診の間隔も1ヶ月に1度だが
私は大学病院でも頼みこんで2週間に1度の検診にしてもらっていた
『赤ちゃん元気ですよ』
エコーを見ると
赤ちゃんは元気に動いている
それを見ると安心する
でも自宅に戻って
少しでも動かなくなると不安でしかたないのだ
…何かにすがりたい
でも…
神様なんていない
神様なんてこの世にはいない
美月を失ってから
すっかり神様の存在を否定するようになった私には
すがれるものが
信じられるものが
何もなかった
先生の
『大丈夫ですよ』
その言葉だってそうだ
美月の時だって
最後の検診の時にはちゃんと動いていて
『赤ちゃん大丈夫ですよ 元気ですよ』
先生は確かにそう言っていた
…でも突然亡くなった
先生が悪いわけではないけれど
先生の言葉すらもう信用できなかった
信用できるのは赤ちゃんの胎動だけ
そんな私は胎動に一喜一憂し
幸せな妊婦生活
とはとても言い難い生活を送っていた
それでもそんな私を修一は優しく見守ってくれていた
妊娠9ヶ月になる頃に 大学病院で行っている
妊娠後期の妊婦のための母親学級に出席した
出産にむけての呼吸法
おっぱいマッサージの方法
産科病棟、NICU(新生児集中治療室)などの見学や説明があった
そして一枚の紙が渡された
【バースプラン】
より良い出産ができるために自分が望むことを書くのだ
参加した人のほとんどが書き終えると手をあげて発表していた
『なるべく自然にまかせたいので促進剤や会陰切開などの医療行為は極力避けたい 』
『好きな音楽を聴きながらリラックスした状況で出産したい』
『アロマオイルをたいて好きな香りに包まれて出産したい』
みんなそれぞれが描く理想の出産をそこに記していた
そのバースプランを助産師さんに提出して母親学級は終わりとなる
…最後まで残った私は結局何も記さないまま提出した
『…高森さん? なにか要望とかはないの? 応えてあげられるかは分からないけれど、自分の望む出産方法を書いていいのよ?』
助産師さんは何も書いていない用紙を見て
心配して声をかけてきてくれたのだ
私は黙っていた
『高森さん…?』
助産師さんが心配そうに私の顔を覗きこむ
『…私は… ただ… この子が…無事に産まれてくれたら… 生きている赤ちゃんを抱くことができたら… それだけで… いいです…… 』
ずっとずっと抱えてきた不安が爆発したように
助産師さんの前だと言うのにポロポロ涙がこぼれてきてとまらなかった
『……高森さん 』
助産師さんは背中をさすり続けてくれた
『…どんな出産でも…生きていてくれたら… 産声を聞けたら… 私は… それで…………』
後はもう言葉にならなかった
アロマなんていらない
音楽なんていらない
どんな医療行為をされてもいい
無事にこの子が生きて産まれてくれたらそれだけでいい…
『…高森さん 辛かったね 不安だったね…』
助産師さんは私の背中をさすりながら続けた
『でもね… 赤ちゃんは今こうやって頑張って生きてるのよ? 赤ちゃんを信じてあげましょう? 』
……この子を信じる
神様じゃない
先生でもない
信じて
すがれるものが
こんなに近くにいたんだ…
助産師さんのその言葉は私に希望の光りを与えてくれた
助産師さんのその言葉をきっかけに
私はすごく前向きになれた
後数週間しかない出産予定日までの日々
…ごめんね
毎日苦しかったよね?
ママがいつもいつもあなたの事を心配ばかりしていたから
お腹の中にいても苦しかったよね?
安心できなかったよね?
ママこれからはずっと笑っているから
約束するからね…
私はお腹の赤ちゃんにたくさん謝った
ストレスは良くない
妊娠の雑誌にも書いてあった
こんな後期になって
やっと分かるなんて……
自分自身を反省しつつ
私はミシンに向かった
肌着
スタイ
ベビードレス
出産までの間にどれくらい作れるか分からないが
とにかく頑張って作り始めた
美月のことがあってから
あまり早く赤ちゃんのものを用意しない方がいいような気がして
今回はまだ名前すら真剣に考えていなかったが
その日からものすごく真剣に名前も考え始めた
今どき珍しく性別を教えてくれない病院だったため
まだどちらなのかは分からない
でも女の子だった時の事を考えて
美月のために買ってあった洋服を引っ張りだしてきて洗濯をしたりした
…美月が着ることのなかったベビー服
高森の両親がたくさん買ってくれたベビー服を見ると
あの時の事が思いだされてやはり辛い
でも一歩を踏み出さなきゃ何も進まない
今こうやって
お腹を元気に動く新しい命
私はこれからその命を信じて生きて行く
…そして予定日まで2週間を切った
一秒でも早く産まれてきて欲しかった
毎日毎日
『早く出ておいで』
お腹に声をかけた
修一も言葉にこそ出さなかったが不安だったのだろう
毎日仕事を早めに終わらせて帰ってきていた
高森の両親も私の出産予定日に合わせて
それよりも少し早めに手伝いに来てくれた
みんなが
無事に産まれてきてくれるように
ただただそれだけを祈っていた
難産でもいい
どんなに苦しくてもいい
生きて産まれてきて………
そして予定日2日前の夜中
寝ていると尿がもれたような感覚に目を覚ました
『……?』
寝返りをうつとまた尿がもれたような感覚がある
破水……?
修一を起こさないようにトイレへと向かった
向かう途中もチョロチョロと生暖かい液体がでてきていた
……破水だ!
『……破水したみたい』
寝ている修一に声をかけると修一はすぐに飛び起きた
病院に破水した事を伝えると
すぐに病院に来るようにと言われた
リビングの隣りで寝ている修一の両親にも伝えると
やはり2人とも飛び起きて
『すぐ病院に行かないと!』
まだまだ陣痛もきていないのに
今まさに産まれるかのようにあわてていた
『お母さん達は寝ていていいから』
修一は苦笑いをしながら2人に自宅で待機するようにと言っていた
そして病院へ向かう
秋も終わり冬を迎えるこの季節
夜中の風は冷たかった
凜とした空気の中
空を見上げれば
美しい月
美しく街を照らす月が
優しく輝いていた
『…ゆづきってどうかな? 優しい月でゆづき 』
私は修一にそう言った
今まで考えた名前は確かにあった
女の子なら
美紗
美歩
男の子なら
郁月 かづき
美月の名前から一文字ずつとった
そんな名前を2人で考えていた
でもあの月を見たら
優月
その名前が浮かんできて
それ以外は考えられなくなった
男の子でも
女の子でも
優月なら通用する気もした
修一もまた
美しく優しく照らす月を見ていた
『…優月 優しい月で優月か… いいね すごくいいよ! 』
修一は大賛成してくれた
私はお腹の赤ちゃんに
『決まったよ 名前… 優月だよ… 高森優月 だよ…』
お腹を撫でながら
声をかけた
病院に着き
内診を受ける
『破水してますね。 このまま入院ですね』
私はそのまま入院になった
案内された個室に入り
布団に潜る
まだ陣痛は来ていないから
今のうちにたくさん寝ておこう…
修一にも一度自宅に戻るように伝えた
その日は日曜日だったため
修一はまた昼過ぎくらいに病院へやってきた
『陣痛はきた? 』
『たまに痛みはあるけど…… それが続かないのよ(笑)』
美月の出産の時とは違って
私達は笑顔だった
優月もまだ時々動いたりしている
昼の3時頃になると
本格的な陣痛が始まった
………この痛みだ
子宮がキューッと収縮する痛み
…あの痛み
でもあの時よりは全然痛くなかった
…あの時は心もすごく痛かったから
今は心が痛くない分だけ陣痛もラクに思えた
夕方になると待ち切れなくなった高森の両親も病院へやってきた
美月の時と同じようにお義母さんは私の腰をさすり続けてくれる
『…もうすぐ優月ちゃんに逢えるからね。 頑張ってね。』
修一は両親に名前を優月に決めた事を話したようだった
美月の時はいくつかの候補から高森の両親に最終的に決めてもらったが
今回は私達で決めた
それも私は嬉しかった
修一がお義母さんから
少し親離れできたような気がしたから
夜8時になると陣痛はピークを迎え
子宮口も全開になったのを助産師さんが確認して
隣りの分娩室へと修一と一緒に移動した
……痛い
………痛い
一度経験しているとはいえ
やはり気が狂いそうになる耐えがたい痛みだ
痛みで思わず悲鳴をあげる
よくテレビで
うーん… うーん…
と唸りながら静かに冷静に出産するシーンを見るけれど、
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まさに
死にものぐるい
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36レス 952HIT コラムニストさん -
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347レス 4103HIT saizou_2nd (40代 ♂)
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