西新宿刑務所

何日この動作を繰り返しているのだろう。

当初は、２，３ヶ月で元の生活に戻ってしまうのかな？　もっと長く続けばいいのに。そんな風に思っていた。

実際にコロナで亡くなった方たちもいるわけで、そんなことはおおっぴらに発言できるわけもない。

特に、ワタシのアイドル的存在だったコメディアンである志村けんさんが亡くなられたという訃報には言葉を失ったし、身近な所では、飲食業を営んでいる友人らの悲痛な声も聞こえてくる。

でも、外出自粛で家から出ない生活が、なぜか「楽だなぁ」と思っていたワタシがいることは間違いなかった。

嘘はつけない。

２，３ヶ月と想定していた自粛は、いまだに続いている。もう半年？　それ以上？

幸いにも、ワタシはこのお部屋で、仕事ができ、生活の糧を得ることができている。

同じ風景、同じパソコンの画面を、毎日見続けながら。

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こんな生活ができているのは、ワタシが勤めている会社が、もともとテレワーク中心だったから。

普段からこういう環境で過ごしていた。だから、なんの違和感もなかった。

世間、世の中が、テレワークに移行しなければ！　みたいなニュースを見聞きする度に、ようやく時代が、はんぶん強制的に、そういう風になってきたんだなって、ちょっと他人事っぽく思っていた。それと同時に、ようやく時代がこういったワークスタイルに追いついてきたのね、そんな風に思っていたりもした。

ワタシの生活は何も変わらない。変わらなかった。変わるはずがなかった。

その、はずだった。

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西新宿という街は、大変賑やかだ。

人混み、車の多さ、頻繁に鳴り響くパトカーや救急車のサイレンの音。
これを書いている今も、まさに救急車のサイレンが。

オフィス街と飲食店街、そして首都東京の中心部である東京都庁。

静けさを感じられるのは新宿中央公園ぐらいだろうか。

公園の外周をジョギングするのは心地が良い。皇居ランよりも、新宿中央公園ランを推奨したいぐらいだ。

閑話休題。

自宅のデスクの目の前には、そんな賑やかな西新宿の街が広がる。

日本の中心であるトウキョウト、トウキョウトを司る都庁、都庁があるシンジュクク、ニシシンジュク。

そこに、いま、まさにワタシがいる。生活の拠点として選んでいる。住んでいることをステータスに感じていたところもあったのかもしれない。

でも、毎日、ベッドから起き上がり、カーテンとパソコンをあけ、同じ風景、同じ画面を見続けて、生きるだけ。

ワタシの人生の目的って、なに？

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犯罪を犯したことはない。ちょっとした信号無視みたいなものを除けば。

犯罪を犯す人の心理はわからないけれど、実際に発覚して、捕まって収監された後の生活、いわゆる刑務所での事を考えたりはしないのだろうか。

執行猶予ってものもあるけれど、犯罪を犯した人は、年齢によっては少年院や、刑務所に入ることになる。

最近は、芸能人のクスリの事件なども頻繁に目にするけれど。

ワタシに関係することとして考えたことはないので、詳しくは知らない。知ろうともしたことなかった。

でも、毎日同じ時間に起床し、同じ作業を行い、同じ風景を見て、同じ時間に就寝することの繰り返しなんだろうなぁ、つまらない人生なんだろうなぁ、と。

犯罪を犯したとはいえ、とても大変な毎日なのだろう。それが、罪への償い。しっかり更生して出てきてもらいたい。

あれ？　

毎日同じ時間に起床し、同じ作業をし、まったく、まったく同じ風景だけを見て、同じ時間に就寝する。その繰り返し？

ワタシの今と、何が違うの。

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自問自答する日々。

シンジュク、ニシシンジュクという街に住み、なんだか心地よくなっていたワタシが居たはずだった。

なんとなくステータスにも感じていた。

でも、実際は？

ワタシは、毎日同じ窓から同じ風景を見ながら、キーボードとパソコンの画面を通じて、仕事をする。

メールやチャットツールでやり取りしていると思っている人は、本当に実在するのかすら怪しむようになってくる。

そんな疑念すら抱く。何かがおかしい。

長い期間、同じ場所、同じ部屋に閉じ込められ、同じ風景を見続けさせられている。

不要不急の外出「自粛」だけど、これってホントウに自粛なのだろうか。

自由とは？　

ここにワタシの意思はあるのか？

ワタシの人生の目的って、なに？

ここはニシシンジュク刑務所。西新宿刑務所。

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完

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次スレで短編書き始めてみましたのでよろしければ。↑の方にリンクがございます。

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