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Everything Love─葛藤─

レス113 HIT数 11144 あ+ あ-

匿名( ♀ )
17/03/18 02:42(更新日時)




Everything Love☆
─葛藤─



違うスレにて再開させて頂きます。
今まで読んで頂いてた方々、突然の閉鎖…
申し訳ありませんでした。




■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□



何度目の年越しだろう。




大好きだったこの手を




この手の温もりを




ずっと感じていたかった。




14/03/20 03:17 追記
●Everything Love☆
─葛藤─
に続く話です。
小刻みになってしまい申し訳ありませんが
葛藤の続きから始まります。



14/03/21 02:38 追記
http://mikle.jp/viewthread/2074669/

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No.2074669 14/03/20 03:07(スレ作成日時)

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No.51 14/05/04 01:28
匿名0 ( ♀ )

>> 50



ココまで来たら、もう織田さんが携帯を開く事はない。
「解散したよ!」の連絡待ちになる。
………連絡が来れば、、、の話だけど。



解散場所のココは、会社からはまたまだ遠い。
ココで飲むとしたら…
いつもより早く解散しないと帰れなくなる。
それは織田さんだけじゃなく、全ての人に言える事だった。



会社のそばまで戻るのかな?
いや…あの場で言ったんだからココだよね…。
なんだか不安になる。



こんな時、行く人は聞かなくてもみんなが分かっている。
だから…
彼女達以外、誰も行く人なんていないんだ。
みんな、彼女達と飲むのが嫌だから。




1人になりたくないな………。
このまま家に帰れば、1人悶々と考えてしまう。
不安で押しつぶされそうになる。



だってさ‥
織田さんの終電がなくなる時間なんてみんな知ってる。
万が一、万が一…
「私も終電なくなっちゃった」なんて事になったら…どうするの?




心配…しすぎなのかな…。



歩きながら、そんな事を考えていたら
木村さんがブリブリ怒り出した!




「あれさ!絶対わざとでしょ!?
みんな行かないの前提で言ってない?
奴ら(男)はあいつらがいれば満足なわけでしょ?
だって普通、声くらい掛けるのが常識でしょ!
みんな行かないにしたって「行こうよ」とも言って来ないのは絶対おかしいって!!!」




「だよね!
昔はみんなに声掛けてたもんね!
口裏でも合わせてんじゃねーの?」



この現状が面白くないのは私だけじゃなかった。
みんな不満なんだ。
彼女達以外の人が行くとまるで「部外者」的な扱いになる。
それを知ってるからみんな行きたくない。




私もみんなといた方が気が紛れるし…
「ねぇねぇ!みんなまだ時間平気ならお茶して帰らない?
あんな所に行って嫌な思いするなら、違うことでお金使ったほうがよくない?」




みんなが同時に
「だよねぇ!!!」
と言った。



「でもさ、お昼あれだけ食べたからまだお腹すいてないし‥お茶でいいよね?」




約2名不満げな人がいる(笑)

No.52 14/05/04 02:02
匿名0 ( ♀ )

>> 51

「えー!あたしお腹ペコペコ(>_<)
ごはん食べたい!」


沙織がだだをこねる。


「あたしは飲みます(¯―¯٥)」


木村さんが言い張る。


「木村さんが飲みたいのは分かるけど
沙織あんだけ食べといてペコペコって(*_*)」



みんなで笑った。
結局、安い居酒屋に入る。



なんだかんだ言って、みんなそれなりに食べた。
話が盛り上がってくると木村さんお得意の妄想話が始まる。



木村さんは男連中と彼女達の話になると怒りが収まらなくなる。
ほとんど木村さんが1人でいつもしゃべっている。
みんなはそれに適当に相槌を打つ。



木村さんも何故か仕切りに織田さんの終電を気にしていた。



木村さんがトイレに行った時、吉野さんがすかさず言った。
「ねぇ…前から気になってたんだけどさ‥
木村さんって織田さんのこと好きじゃない?」



鈍感な沙織だけが
「えー!それはないでしょうよぉ!」
と言ったが、残りのメンバーは全員一致だった。



「私も思ってた!」と。



あぁ…やっぱりみんな感じてたんだ?
なんだかまた不安材料が1つ増えた気がした。



まだ携帯は鳴らない。
だよね…。
そんな早くに簡単には解散しないよね…。



こんな時、織田さんは私が気になったりしないのだろうか。
昔々は
「ちゃんと着いたか?」
とか
「帰りの電車は混むから痴漢に注意ね!」
とか、隙を見てメールくれてたのに。



そんな話はもうとっくに昔話のようだ。



「あいつらさぁ、なんで凛ちゃんにはあんな態度なんだろうね?
まぁ、私達にもそうだけど凛ちゃんに対しては別格じゃない?」



「あ!私聞いた事あるよ!
自分達より男にチヤホヤされる人がまず嫌いだし、おまけに凛ちゃん綺麗で若いから!完全に妬み!」



はい?(-_-;)
若い←しか当てはまらないし!



「え?凛ちゃんはどっちかって言ったら男嫌いだよね?
全然、男と喋んないじゃん。なんで妬み?」




「ただ気に入らないんじゃないの?」
もう別にどうだっていい。
そう思うことにしたんだ。

No.53 14/05/04 02:48
匿名0 ( ♀ )

>> 52


吉野さんが
「ごめん。あたし今日の事 家に言って来てないの。言うとうるさいから普通に仕事って思ってるから‥そろそろ帰るね」



「え?もうこんな時間だよ?
早く言えばいーのに(>_<)」



結局、みんな帰る事になった。
帰りの電車でバッタリ先輩達と遭遇する。



「あら…あなた達も別口で飲んでたのね(笑)」



「先輩達もですね( ´艸`)」



先輩達もやはり、あそこと飲むのは嫌だと。
そうなんだ。
この会社、本当はみんなお酒大好きなんだよね。
何年か前までは、みんな参加してたのに…。



空いた席に順番に座って行ったから、帰りの電車で少しバラバラになった。
私は先輩と吉野さんの向かいに1人で座っていた。



携帯が鳴る。
ラインだ。
あれ…?
もしかして、解散したの?



開くとそこには
「今、飲みが終わって これから会社付近でカラオケらしい。
また連絡するね!
凛はちゃんと着いてるのか?」


だよね…。
解散のはずがないよね。
けど、珍しくメールくれたんだ?
嬉しいはずなのに、いつもなら連絡なんて待ってても来ないのに…と、そう思うと私の勝手な不安が1人歩きし始める。



いつもない連絡が珍しく来るなんて………
なんかやましい事でもしてる?


嫌だ。
信用する以前に
こんな事をほんの少しでも疑ってしまう自分が嫌だ。


「どーせ俺は信用されてねーんだ…」
以前、織田さんが言った言葉。



信用はしてる。
けど、信用して待ってるのに約束が守れないから心配になるんだ。
毎回、もう待つのはやめよう‥と思うのに、やっぱりいつも待っちゃうんだよな‥。



徐々に最寄り駅に着いた人から降りて、この日は解散になった。



家に着きお風呂に入って明日の支度をし始めた時、



あ…!
バッグ!バッグ変えなきゃ!
と思い出し、バッグの荷物の入れ替えをしていたらラインが鳴る。



「今解散してみんな帰った!
俺はカプセルホテルに今日は泊まるね!」


ちゃんと連絡が来た。
ビデオ通話まで来た。
そして私はやっと安心出来るんだ。

No.54 14/05/04 08:50
匿名0 ( ♀ )

>> 53


極々平凡な毎日。
相変わらず織田さんは忙しい。




手帳を見ると1つだけ貼られたハートのシールもなんだかポツンと寂しげに見える。



いつからこんな風になったんだろう。
色んなシールで賑やかだった私の手帳も、今ではこんなに大人しくなった。



相変わらず喧嘩はするけど…
それでも、
毎日、顔が見れる。
2人では逢えなくても、毎日 顔が見れて
会社に行けば、織田さんの様子も分かる。




まだまだ、幸せだった。
この頃は寂しくて不安も耐えなかったけど
今に比べたら………
贅沢な毎日だった。




まだ、この先の2人を
知らない私は、
そんな贅沢にも気づかず
つまらないことで怒っては喧嘩になったりしてた。



1月の終わり。
年明けに逢えたあの日以来、逢える日は来なかった。
買い物に行くと、バレンタインのチョコレートがチラホラ並び始める。



バレンタイン…か…。
毎年、楽しみだったけど
今年はそんな楽しみよりも
渡せるのかな…これが先に思いつく。




織田さんは毎年、数名にチョコを貰うことを私は知っている。
ホワイトデーにはいつも、すっかり忘れちゃう織田さんに
「ちゃんと返しな!」と言っているから。




いつも、渡し方など気にもせず
人目なんか関係なく渡せるみんなが羨ましかった。



この状態じゃ…
渡すのは不可能っぽいな。




手にしたチョコレートを棚に戻し、
もう少し作戦を考えてみようと思い直した。




ネットで色々調べた。
私お気に入りの、あるホテルの生チョコ。
これは前の職場でお客さんにもらって以来、大のお気に入り。



賞味期限を確かめ、いつ注文すればちょうどいいのか、それをいつ、どのタイミングで渡せればOKか…念入りに考えた。



難点は、賞味期限が短いことと 8000円買わないと送料がかかる事。
色々考えた結果、渡せるチャンスは1度しかない。
3日間のどこかで渡せなければアウトだった。



生チョコは諦め、別の物にしようかとも考えたけど…私の好きな物。
それを織田さんにも食べてみて欲しかった。

No.55 14/05/04 09:17
匿名0 ( ♀ )

>> 54



次の日の午後。
何やら木村さんが例の彼女達の1人と言い争っている。
私の席の真裏での出来事。
話の内容までは聞こえないが、相手が段々と声を荒げる。



あの負けん気の強い木村さんの方が若干、感情を抑えているようにも感じた。



あまりにエスカレートして来たため、私は裏に顔を出す。
取っ組み合い‥まではいかないものの、それに近いものがあった。



みんなも気づいたんだろう。
ガヤガヤしているのが分かる。



「どうしたの?
ここ会社だよ?もう少し場を考えて冷静に話したら?」



私が余計な口?を出した。
私もとばっちりを食らうかのように
「この人には冷静になんて無理なんだよ!」



怖い目つきで木村さんが私に言った。
なら、ほっとく………か。




織田さんが私のとこに来て
「どうした?」と聞く。



理由なんて知らない。
「いきなりモメ始めた。2人共ヒートアップしてる」



織田さんが間に入り、事は一旦は落ち着いた。
それぞれが織田さんに呼ばれ、別室で話し合いをしていた。




こういう光景は女性の大好物。
みんながざわつき始めた。
特にこういった話や噂話が大好きな吉野さんが、すかさず私のとこに来て



「なになに?何が起きたの?」
と聞く。



自分が満足する情報が私からは得られなかった吉野さんは、どうしても真相が知りたい様子。
この人もまた私的には少し厄介な人物である。



偉く長かった話し合いが終え、別室から出てきた織田さんを待ち構えていたかのように
織田さんが一服に行くのを見張っているのがよく分かる。



噂好きの吉野さんは、そこで情報をゲットして
みんなに報告したいんだろう。
織田さんがフッと立ち上がった瞬間、先回りして彼女は喫煙所に向かった。



No.56 14/05/04 09:49
匿名0 ( ♀ )

>> 55



吉野さんの敗退。
予想に反して、例の彼女達も行ったようだ。
みんな考える事は同じって事か。



不満そうな顔で
「邪魔が入ったし(;-″-)」
と、吉野さんが言いに来た。




どうせ諦めないクセに。
と、心の中で呟く。



喫煙所で女性と2人で長くいられる事を私は日頃から嫌っている。
わざとか?と感じるくらい毎回同じメンバーでタバコを吸う織田さん。
喧嘩の要因でもあったよね…。



吉野さんは若干ストーカーの様に織田さんの様子を伺っては喫煙所に向かった。
私は既に、その光景が気に入らなかった。




何度目かで成功したんだろう。
2人が一緒に帰って来た姿を目にする。



あそこには行かない、って前に約束したはずなのに…そんな約束、1度だって守れてないじゃない!
そんな織田さんにも腹が立っていた。



その日の帰り、部屋を見渡すと
彼女達の姿はある。
よし!…と思い、帰宅前の一服に行った。




あ…!
ドアを開けてしまった手前、引き返す事は出来なかった。



他に誰もいない喫煙所で
隣同士に座り込み、吉野さんの携帯をのぞき込んでいる織田さん。
その距離の近さが、私の怒りに火をつけた。



こいつら…
今日何度目の一服なんだよ…!
こういう時は後の事なんてどうだっていい。



私はタバコも吸わず、喫煙所を出た。
今日は1度も、織田さんからメールが来ていない。
あれだけ一服が出来て、メール1つが出来ないなんて、そんなの絶対有り得ない!




こういう時は瞬間的に織田さんが大嫌いになる。



No.57 14/05/04 10:34
匿名0 ( ♀ )

>> 56


逢えてないし、話も出来ていない。
私も気持ち的にゆとりがなかった時期でもあった。


忙しさを理由に
「放置ばっかでごめん」と口にはするものの…
思いやりとか、そんな物が感じられない。




本音は寂しいクセに
どこか意地を張り、この日は絶対メールはしない!と決め込んだ。



なのに、織田さんからもメールはない。
それが余計、ムカつくと言うか悔しいと言うか………寂しかった。



深夜になって
「お待たせ!そろそろ寝るぞ~」
とメールが来た。



既読になるから私が読んだ事は分かるはずだ。
この、何も触れても来ないメールが更に私には不愉快だった。
なんか…感じないのか?
そんな感じ。



「おやすみ」
一言だけ送信する。
だが、私はまた眠れない夜になった。



次の朝も起こさなかった。
私もこうなると意外と頑固だ。
この日は運よく外回り。
外回りの方が、色々見なくて済む分 気が楽でもある。



いつもならモーニングコールがあるはずなのに、それがない。
そんなの気づいてるはずなのに、織田さんからは一切メールもなく15時が過ぎる。



いつからか、日中のメールもない事が普通になっちゃったね。
早めに終わった私は、こんな事を考えながら公園で時間を潰していた。



帰社し報告書をあげ、帰宅する前
いつもの習慣で、懲りない私はまたもや あの喫煙所に行ってしまった。
バカな私…。



また…か。
私がドアを開けた瞬間2人が私を見る。
また隣同士にいる。



私は黙って2人の反対に立ち、タバコに火をつけた。
気を使ったのか吉野さんが私に話しかけてきた。
と、同時に
「ほら、見て!」
と、織田さんに携帯を指差し見せている。




私があんなに近い距離で男と話してたら…
間違いなく怒るクセに。
抵抗感もなく携帯を覗く織田さんの姿が、やけに切なかった。




バカにしやがって。



逢えなくて20日目。
もうすぐ3週間だよ?織田さん。
逢えない日々のこんな光景は、別れをふと考える
そのくらい私にはダメージが大きかった。


No.58 14/05/04 21:49
匿名0 ( ♀ )

>> 57


家に帰っても、まだ、モヤモヤする。
今までの色んな事を思い出す。
今までに織田さんから言われた言葉の意味などを考えていた。



するとメールが鳴る。
ラインではなくメール。


誰だろう?



「凛………話したい事があって。
急だから無理ならいいんだけど…少し出て来れる?今、○○にいる」



今、って事は…
きっと大事な話だね。



「すぐ行くよ!」



この子は私の数少ない友達の中の1人で、まぁ私と似たような恋愛をしてる。



ご主人の浮気の相談をされて以来、色んな話を聞いてきた。
今の彼氏と、私達の付き合い始めた日が偶然にも半年違いで日付だけ同じ日だった。



旦那に浮気されてやせ細って…でも、なんとか復縁はした。
けど…寂しさから辛さから…彼女も旦那と同じ事をする事になる。
その相手と言うのが、ご主人と彼女と私の共通の知人なのである。



「待たせてごめんね!
家大丈夫なの?」


「うん。
ごめん、凛と逢うから!って出てきちゃった」


ご主人とは何度か逢ってるからご主人も私と!と言うと安心するらしい。


「そっか。
で、またなんかあったの?旦那と」


「ううん…旦那じゃなくて…
賢也と別れちゃった…」


私は内心、ホッとした。
自分の事は棚に上げて言うけど、あまり良い関係ではないとずっと思ってきた。


「突然、なんで…?」


「私さ、やっとスマホに変えたの。
で、やり方を旦那に教えてもらってたらね…
見られちゃったんだ…メール。
消したつもりが消せてなかったみたいなの」


「で、認めたの?」


「ううん…なんとかごまかした。
けど、しつこく電話かけられちゃって…
たぶん、ビビっちゃったんだろうね。
今朝、『今日、少し会おう』って言われて…
さっき『もうこれ以上は無理だ』って言われちゃった…」


私達が 6年半とちょっとだから…7年か…。
ご主人と彼は先輩と後輩で、お互い知ってて飲みにも行く仲なんだ。
彼氏としては、バレるのは恐ろしいはずだもんね。


「もうその前から、潮時かな‥って思ってはいたの」

No.59 14/05/05 02:57
匿名0 ( ♀ )

>> 58

潮時。
なんだかこの言葉が私の胸に深く刺さった。
私も少しだけ感じていた事だったから…。



「辛い?」



「辛いって言うかムカつく!
このタイミングで?って思っちゃう。
メールがないと寂しいって言うから‥なるべく寂しい想いはさせないようにメールしたりしてたのに‥結局、ヤバいと思ったら逃げるんだ?って」


もう8年位前の話だけど
気が強いと思ってた彼女が、旦那の浮気を知って結構な修羅場になったあの時。
ふと、あの頃の彼女の姿が目に浮かぶ。
多少ふっくらしてた彼女が激ヤセし、偶然にも浮気相手の車が私達の横を通った時があった。


体中が震え、気持ち悪くて立てない…と声を震わせた彼女。


また、あの頃の様にならないか心配だった。



あの頃は「ショックが大きすぎて辛い」と言っていた。
「ムカつく」位なら………大丈夫かな…?


「私、賢ちゃんと話そうか?」


「ううん…平気!
ちょっと様子みてみる。
もしかしたら、今は焦ってるだけかもしれないし‥時間が経って旦那からのアクションもなくなれば‥もしかしたら…とも思うんだ」


「長いもんね。
そんな簡単には壊れない…か」


「でもね…
考えてみたら、メールもいつも私発信だったんだよね。
賢也からは、ほとんど来なくて…私がメールすると返ってくる感じだったの」


なんだか、私達にも同じことが言えるな…と思いながら聞いていた。


『潮時』
『私発信』
なんとなく不安が走った。


メールが減ったのも
あまり逢えなくなったのも
愛情表現をしなくなって来たのも


もしかしたら…私達も…潮時なのかな。


織田さんは彼女に逢ったことはないが、たまに話に出すことがあったから彼女達の存在は知っている。


「負けたくないねぇ」
(先に別れたくない)と、いつも言う。
同じ立場だけど共感は出来ないと言っていた。


彼女達の別れを知ったら
あと半年後に…私も…振られたりする?



「凛、ありがとうね、聞いてくれて。
また連絡するね!なんか変化があったら知らせる。
じゃ、あまり遅いと疑われるから帰るね…」

No.60 14/05/05 03:15
匿名0 ( ♀ )

>> 59


気がつけば、いつの間にか
私達も逆転した様に思う。




付き合い出す前、付き合い出した頃は
織田さんからバンバン、メールが来ていた。
逢いたがるのも、織田さんから素直に言ってくることが多かった。



いつからか、私ばかりが不安になり弱音を吐いては織田さんに『絶対、別れない!』と言われて来たのに………
今じゃ『自信がないなら長くは続かないぞ』とか『2人共踏ん張れなきゃ意味がない』とか、そんなことばかり言われてる気がする。



想いの強さ、余裕、が‥いつからか逆転したような。
疲れてきちゃったのかもしれない。
私は重いもん。
あまり『逢いたい』と言う感情がなくなって来たんじゃないかな。



あと…
面倒くさいんだろう。



そんな事を考えながらトホトホと歩き帰宅した。
今日の怒りは、ほんの多少だけど和らいだ。



でもね…
鳴らないの。
ラインがね…鳴らない。



いつもこんな風に
私ばっかりが待っている。



片思い。
そんな感覚。


No.61 14/05/05 18:16
匿名0 ( ♀ )

>> 60
私発信。


この言葉が妙に引っかかっていた。
いつも、大抵 待ちきれずに私からメールする。


今日はちょっと、織田さんからのメールを待ってみようかな。


メールしたい気持ちを抑え、明日の支度や家事を済ませた。
まだラインは鳴らない。


このまま…鳴らなかったらヤダな…。
やる事を済ませた私は、母とサスペンスを見ていた。
なかなか面白い。


でも、ちゃんと携帯の存在は忘れてはいない。


「お母さん、これ何時まで?」


新聞を見て母が
「11時まで」
と言う。


11時か…。
まだ終わらないだろうな…
これ終わったら何をしようか…。


そんな時、鳴った!
ラインが鳴った!


あれ?
もしかして今日は帰るのかな?


ラインを開くと
「もう少し掛かるから、先に風呂入ってて」
と。


「わかった(*´∀`*)ノ
あ…
ねぇ…1つだけ聞いてもいい?」


「ん?どうした?
あ…一服の事か?(>_<)」


あっ!!!
せっかく、忘れてたのに。


「残念!違いました!
ねぇ…
私達ってさ、どっちからメールする事が多いと思う?」


「なんだ?いきなり。
うーん…
俺だろ!…なんで?」


ん?
あれ?
俺?


「え?私じゃない?」


「だって、俺からメールしないと朝だって凛からはしないし、夜だって俺待ちじゃない?
多分、総合的には俺な気がするけど。
なんかあったのか?」


「うん…ちょっと考えてて。
長くなるから今度逢えたら話すね!」


「また変な事、考えてんじゃないだろうな?(-_-#)」



「あ…違う違う!
そういう事ではない。
ごめんね‥邪魔して。
じゃ、先にお風呂入るから頑張ってo(^-^)o」


「はいよー!」


私の考えすぎか…な。
『凛だろ!』と、言われなかった事にホッとした。
私は絶対、私だと思ってるから。



お風呂から出ると、ビデオ通話が鳴る。



「お疲れ様!」 


「さっきの気になる(-_-;)
で、ライン見てみたけど、やっぱり俺だったぞ。
だからなんなんだ?」

No.62 14/05/06 00:30
匿名0 ( ♀ )

>> 61

当たり前だ。
今日はあえて待ってたんだから。



「今日ね…
話があるって言われて。
○○ちゃん、別れちゃったって!」



「そうなんだ。
あれは露出しすぎだもん。短命だよ」



短命とか言ってるけど、私達より長いのに。




「でね…
言ってたの。
メールもいつも私発信ばかりだったし、正直‥メールも面倒くさかった…って言われちったんだ、って。
それ聞いたら私も妙に不安になっちゃって」


何やら笑っている。


「凛は影響受けすぎ!
前から言ってるだろ。
何も心配することないし、自信持ってくれって。
面倒くさいなんて思ってないぞ?
いつも待たせてばかりでごめん、って思ってる」




「そっか…ごめん。
なんか唯一、似た立場だったから別れたって聞いたら少し気になっちゃって。
『潮時』かな…って思ってた、って言うから…
私達も長いし…」




「どちらかが『潮時』だ!と思ったら続かないんじゃないかな。
俺は思ってないぞ!
凛には沢山寂しい想いをさせてるけど、長く続けるには、慎重にならないとダメなんだ。
旦那が疑うくらい家でもメールばっかりしてる様じゃダメ。
それじゃ短命なんだ。
寂しい想いをいっぱいさせるけど、それで凛が潮時と感じるならダメになるぞ?
俺は長く一緒にいるためには我慢するとこは我慢して…慎重に、が大事だと思ってる」




「ちゃんと考えてくれてるんだね。
ごめんね‥」




「前から言ってますが?(-_-;)
…支えられてるよ、凛には。
俺がもっと色んな面で器用に出来たらいいんだろうが…」


「不器用だもんね( ´艸`)」
と、ツッこんだ。



「まだ頑張るの?」



「うん!終わんのか心配だから出来る時はなるべく進めたいんだ。先に寝ていいからね!」



「わかった。邪魔してごめんね」



「いや…励みになるよ。
さて!凛の顔見たから、もうちょい頑張るか!」




今日の会話で私の気持ちがどれだけ落ち着いたことか。
やっぱりね…
私は思うんだ。

会話って大事だ、って。



No.63 14/05/06 17:52
匿名0 ( ♀ )

>> 62

それから数日後。
「中川さんも見ます?」


嫌な予感。
「見る見る!」



見たくもないけど
その場のノリってヤツに乗るしかない。
どーせ、私が嫌がるモノだろッ…。


「さっき、報告する事があってメールしたら
こんな返事が来たんですよ(((*≧艸≦)ププッ」



「何これ?」



「超ウケません?
一体、織田さんのスマホにはどんだけ写真が入ってんだ?って言う‥ね!」


彼女達の中の1人の変顔写メだった。


くだらない。
「超ヒマですよね!
織田さんも、こんな写メ送ってきて」




この会話だけでも私にとっては
気に入らない所が3つある。




まず、あんたは忙しくてメール出来ないんじゃないのか?ヒマだ!って言われてるぞ(-"-;)



2つ目…何故、変顔とは言え 女の写メなんか残してんだ? (-"-;)




3つ目…あんたは社内連絡まで社用じゃなく個人携帯でしてんのか?(-"-;)



バレないとでも思ってんだろ?
私この子と仲悪いはずだしね。



織田さんのこういう所が嫌い。
仕事と遊び(プライベート)の線引きが出来ないところ。
部下に甘すぎるところ。




女心を知らなすぎるところ。




私も気難しいのは認める。
こんな些細なことで?って思う人もいるだろう。




けどさ、
仕事中、「忙しい」「バタバタしてた」
そればっか言うじゃん。
私にはメール1つよこさないクセに、こんなくだらないメールしてんの?



それも、慎重に、我慢するとこは我慢して…ってことか?



意味が分からん。
どーせ私のヤキモチなんけどね。


寂しいじゃん…なんか、さ。



ねぇ…知ってる?



この子…
織田さんのこと好きって噂がある子だよ?
知ってるよね…前に話したから。


私にさ…
「するな!」って言うことは
自分もしない!
それって誰でも分かるルールなんじゃないのかな?


ムカつく。


私がこんな事でモヤモヤしてるとは知らず
「今日、逢うか?」
とメールが来た。
約1ヵ月振りだった。

No.64 14/05/10 13:49
匿名0 ( ♀ )

>> 63
ずっとずっと逢いたかった。
どれだけこの言葉を待っていたことか。


でもね…
素直になれない。
昼間の一件で。


「今日は逢わん(-"-;) 」


意味が分からない織田さん。


「そうか…
凛、もっと喜んでくれるかと思ったのに…」


織田さんの反応でふと我に返る。
嬉しくないわけない。


「嘘だ!
逢うに決まってる♪ ♬ ヾ(´︶`♡)ノ ♬ ♪」


「なんだ?
どっちなんだ?(-_-;)
逢いたくないなら逢わなくてもいいぞ」


あ…
ヤバい…怒らせた…。


「逢いたかったョ…ずっと」


「よし、決まり。
支度したら教えて。
迎えに行くね」


「はーい♪」


「凛、今日は飯も付き合って」


「うんッ!」


昼間の件は黙ってた。
嫌だけど…
なかなか逢えない日の喧嘩は辛い。


私の大好きなニッコリ笑った織田さんが向こうから来る。
「お待たせ (﹡ˆ﹀ˆ﹡)」


「お疲れ様♪」


いつもの居酒屋に入る。
「なかなか逢えなくてごめんね。
今日は絶対!と思ってたのに、凛、逢わないって言うから焦ったよ。
あれ…なんだったんだ?」


「ん?いーよ。
せっかく逢えたのに喧嘩になるもん


「ん?(-_-;)
いいならいーが…。
なんかしたかな?…」
ちょっと考えていたけど分からないようだった。


ま、そんなモンだ。
悪気なんてないんだろうから。


「今日は大丈夫だったの?
仕事一休み?」


「今日は凛、逢いたいだろうな…と思って前から決めてたよ。
今日は絶対!って。
ダメになったらへそ曲がり凛になるから黙ってたけどね」


ん?
なんで今日なんだ?


「今日…なんか意味があったんだっけ?」


「あーーー!!!
忘れてる?
もしかして忘れてる?
いつも怒るクセにもしかして忘れてる?」


え??? (・_・)......?


「あッ………!
ごめん(>_<)」


月の記念日だった。
この日付だけは、逢えなくても覚えてて欲しい、と言うのが私からの要望。
私のほうが珍しく忘れてるなんて…。

No.65 14/05/15 03:05
匿名0 ( ♀ )

>> 64


前から言ってるけど
私はこの時間が好き。



向かい側に1対1で、織田さんがいて
誰にも邪魔される事なく話が出来る。



たわいもない会話。
愚痴、今日嬉しかったこと、今日悔しかったこと………前から話したかったこと。
メールじゃなくて直接話したいこと。



時間が足りないくらい。



メールより
表情がわかる。
声のトーンがわかる。
ちょっとした「間」的なことがわかる。



場合によっては、嘘や動揺、ごまかしだって見抜けることもある。



ずっと逢えるのが待ち遠しくて
逢いたい気持ちをグッとこらえて
「今日!」って日はめちゃめちゃ嬉しかったはずなのに…



最近ね…
ちょっとだけ違った感覚になって来てる自分が分かる。



「どう?仕事は進んでる?」




「いやぁ…参ったよ。
もう時間がないのに、まだ○○の段階(T_T)」




これを聞いただけで先が読めてしまう。



ほらね…
「これが終わったら」って毎回言うけど
その課題は形を変えてエンドレスにやってくるの。


どーせ今の仕事が例え無事に終わったとしても、「忙しくて」の理由になる課題がまた次から次へとやって来るんだ。



心の中で
[今その段階じゃ…厳しいんじゃないか?]と感じた。
けど…
1番身近で頑張ってる姿を知ってる私がソレだけは言ったらいけないと思ってる。
支えになって励ましながら、時にはケツを叩いて、見守っていかなければ…。



期日は迫っている。
日に日に、その日は近づいてくる。



[今日…逢えたら…次はまた…1ヶ月後くらいまで逢えなそうだな…]



最近は、逢えると分かった瞬間に、
まず、そう思うようになった。



それでもね…
まだ幸せだったんだよ。
だって、例え2人きりじゃなくたって
毎日、顔が見れたから。
織田さんの様子が分かったから。





そんな幸せは
まだこの時の私には理解出来ていなかった。
平凡な日々。
近くにいられることが、ただ、幸せだった…って。



No.66 14/05/15 03:37
匿名0 ( ♀ )

>> 65



「なかなか厳しいけど…踏ん張りどころだね。
またしばらく逢えないと思うから、バレンタイン…早めに用意すればよかったな…
今日逢えると思ってなかったから、間に合わなかった(;_;)」




「バレンタイン?
まだまだ先だぞ?早すぎるだろ。
大丈夫だよ。
その前には必ず時間作るから!」





嘘つき。
わかってるんだから。
自分の都合で、理由なんか後付けで
自分の言った言葉なんて都合よく忘れちゃうこと…。



「みんなが織田さんにチョコあげてるの知ってる(T_T)
みんなより絶対先にあげたい。
だって…彼女だもん、私が…」



みんなは、時間、場所、人の目を気にせず渡せるからいい。
私は………
こうして…コソコソしないと…
渡せないんだ。



「大丈夫だよ。
そんなに心配しなくても、ちゃんとその前に逢えるから!」



「わかったぁ」


織田さんはある事に気を焦らせていた。
私を含む、ほぼ全員が「絶対ソレはない!」と思っていたけど…。


今思えば、
この時すでに、その事実を知っていた織田さんは…焦って当たり前だった。
毎日、家にも帰らずやり通す理由はそこにあったんだ。


織田さんに逢えた時
時間が足りないと私が感じるのと同じように
この頃の織田さんもきっと…そう思っていたんだろう。
元々、不器用な織田さんに
その足りない時間をうまく使い分けるのは至難のワザだったよね…。


あれも欲しい
これも欲しい
あれもやりたい
これもやりたい


欲がいっぱい出るか
もうダメだ…と諦めるか。


織田さんは前者だったんだろう。



「凛、今日は随分長い間待たせちゃったしさ。
特別な日だから少し贅沢しようか?
まぁ…空いてれば、の話だけど」



「何?何?( ´艸`)」


そろそろ出るか!の合図。
ニヤッとする織田さん。


「前から凛が気になってた部屋!
早めに行けば空いてないかな?」



それか………!



これだけ長く付き合っていても、旅行さえ行った事のない私たち。
そこは、いつも行くホテルの最高級の部屋だった。

No.67 14/05/15 04:13
匿名0 ( ♀ )

>> 66
私はこの日を忘れないだろう。


あまり使いたくない言葉だけど…
バレたあの時以来、デートと言うデートが出来なくなった私たち。
食事する事が唯一の贅沢だったね。


その贅沢が、1日で2個味わえたあの日。


最後の思い出作り…
の…つもりだったんだね…。


気になってはいたものの
高いのと、いつも空いてないこともあり
今まで入った事のなかったこの部屋。


ホテルに入って真っ先に2人共、パネルに目がいく。


あ………!


そのパネルの灯りは明るかった。


織田さんが私の顔をニッコリとして見る。
「空いてるね………!」


気になっていたその部屋は、パネルのほんの一部から想像していたより遥かに良い部屋だった。


「旅行に来てるみたい♪」


「すげーな!この部屋!」


「大満足だ♪」


織田さんが安堵の表情になる。


「凛!露天風呂入ろう!」


もっと時間があったら…最高なのに。
この部屋、本当に旅館の離れみたいな作りになっている。
ちょっとした旅行気分が味わえる。


記念日でさえ、こんな贅沢した事がないのに…
なんで今日?


その理由に「疑い」なんて全くなかった。


「いつも貧弱なデートしかしてないから
すげー贅沢に感じるな」


「ほんとだね」


「ごめんね…」


ごめんね?
私は、こうして…あの時、捨てられずに今もこうして一緒にいてくれてるだけで幸せです。
と、伝えた。


ホントはね…
たまーに思う時がある。
まだ日が浅かったあの時に、あのタイミングで離れてたらよかったんじゃないか…って。


日を重ねる毎に
離れるのが辛くなるように思うから。
そして…
その日は、
必ず来ることもわかっていた。



「ずっと一緒」なんて淡い夢にすぎないと。



「この岩風呂、2人だとやっぱり狭いね」




「私たちに、高級なのは合わないのかもね(笑)」



「またここ来たい?」



「うん!記念日はここに。
それには貯金が必要になるね!」




その日は、2度と来なかった。

No.68 14/05/18 06:36
匿名0 ( ♀ )

>> 67



やはりこの日もいつもの如く
やる事をやり終えると即座にいびきをかき始める織田さんだった。



でも…
今日は私の為に時間を作ってくれて食事も出来たし、寝不足の中で疲れてるのも知ってるから不満はなかった。



ただ、いつもに比べたら早めに逢えた事で 
時間はまだ早かった。
私は、これもまた礼の如く…眠れない。



携帯をイジりながら一服する。



しばらくすると…
「やべー!今何時?」


珍しく織田さんが目を覚ました。



「23時。大丈夫!寝てな(*^^*)」




「ごめん…また寝ちゃった(>_<)」




「寝てていーよ。疲れてるんだから
大丈夫!今日は怒らないから (((*≧艸≦)」



ベットから立ち上がり織田さんも一服し始めた。



「せっかく逢えたのに寝てたら時間の無駄だ…
ごめん…」



「ねぇ…織田さん…
2人の写真が欲しい」




私たちは長い付き合いの中で
まともに映っている2人の写真を持っていない。
『証拠』になるような物は、持ちたくないから。



けど…
私は違う。
私は思い出は残せるの。
織田さんと違って、消去しなくていいから。




「この寝ぼけ面でいいのか?(笑)」




「うん!」



この綺麗な部屋で
初めてまともな2人の写真を撮った。




「またしばらく逢えなくなるから
寂しくなったらコレを見て頑張るんだ」




織田さんが私の髪を優しく撫でる。
普段あまりされないこの仕草にドキドキした。




いつでもそうだった。
余裕の織田さんと
いつも不安が抜けない私。



私たちの未来は
私次第だって事を私は知っていた。



残った時間を目一杯、一緒に過ごし
この日が終わる。
次に逢えるのは…また長い長い先の話になるだろう。



「織田さん…ありがとう!」



「また必ず時間作るからね!」



No.69 14/05/19 02:51
匿名0 ( ♀ )

>> 68

期日は刻々と迫っていた。
ある程度の予定を立てながら進めていた織田さんに、時に予期せぬ出来事が起こったりして なかなか思うようには進まない。


普段は隠してるけど
私にはわかる。


焦りからイラつく事が多くなった。
バレンタインはもうすぐ。
言いたいけど…言えなかった。


今の織田さんに
バレンタインなんてどうでもいい話。
そんなことにこだわっているのは私だけで
約束なんて頭からすっかり抜けちゃってるよね…。



こっちは注文しておいたチョコレートが予定通り届いた。
生チョコだけに賞味期限が短い。
あらかじめ希望の日は伝えてあった。
その日を逃したら………アウト。



チョコに添えるメッセージカードを作っていると携帯が鳴る。



「ダメだぁ~。
集中力切れた。何してた?」



「お疲れ様。
パソコンでカード作ってた!」


密かな合図を送る。


「カード?
誰かの誕生日かい?」



ほら…
やっぱり忘れてる。


「違うョ!
頑張ってる織田さんに…」



「俺!?
…ありがとう。
楽しみにしてるよ」


全く気がつかない様子。
なんとなく、希望を無くした感じがした。


「今日はもう寝る?」



「凛、ちょっと待ってて」



ん?
なんだろう。



ビデオ通話だった。
織田さんの顔が映る。
照れ屋な織田さんはだいたい初めは変顔をする。



「あのぉ…凛さん、
ちゃんと約束覚えてますからね!
言っておかないと泣くからね ´艸`)
タイミング見て、いつかは未定たけど」



「ぷっ…
今思い出したクセに(笑)」



ちょっと照れ笑いをする。
でもいい。
思い出してくれたから。



なんだかホッとした。



「凛寝よう!
いつも遅くまで待たせてごめんね」



「ううん…好きで勝手に待ってるだけ。
寝よっか」



こんな日は、逢えなくても気持ちがポカポカと晴れる。



だけど、安心したのは当日までで
結局…賞味期限は切れて終わったんだ。





No.70 14/05/26 02:22
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>> 69

ちゃんと約束は守ってくれた。
だけど、逢える日は織田さんの都合に合わせるから…いつも突然決まる。



賞味期間も迫ったこの日は、休日前だった。
次の日は朝からバタバタ忙しいと言われていただけに予想外の日。
おまけに結構遅い時間からの合流になった。




私の目的は1つ。
チョコを渡すこと。



部屋に入り、真っ先にチョコを渡す。




ただ、私は1つミスをする。
いつも色々調べ、色んなパターンを考えてからプレゼントなんかは渡すはずなのに。
まさにこれは計算外だった。



去年のバレンタインを思い返す。
去年は同じホテルのブランデー入りのトリュフをあげた。



数が少なかったこともあり、一緒に食べて…その日の内に食べ切った。



だが、今年は生チョコ。
去年に比べ数も倍以上入っている。
せいぜい2人で食べても半分も食べきれない。




織田さん…きっと…困ってるよね…。




「織田さん…これ…
明日持って帰れないよね…」



まだバレンタインには少し早い。
職場のおばさんに貰ったと言うには不自然すぎる。



織田さんは少し苦笑いをしながら
「せっかくもらったんだから後で食べるよ!」



気を使っているのがわかる。



「無理しなくていいよ。
食べきれない分は私持って帰るね!」




………これ以降、結局、時間に追われ
チョコは封を開けられる事なく終わった。




次の朝、用があって早く帰らないと…と言っていた織田さんは案の定、なかなか起きれず…
起きてからバタバタと支度をし、チョコの存在なんてすっかり忘れて帰って行った。



せっかく用意した可哀想なチョコ。
仕方なく持ち帰り、次のチャンスを待ってはみたものの…
結局、期限は切れ
バレンタイン当日、織田さんは 5人からチョコをもらっていた。
それがなんだかとても切なかった。






No.71 14/05/26 02:53
匿名0 ( ♀ )

>> 70

それから数日が経ち、都内でも大雪が降る。
「凛、今日はこれから雪がすごくなるみたいだから早めに帰りな!
終わりそうか?」


織田さんからメールが来る。
何故だか私はいつも決まって雪の日は外回りに当たる。
雪が大の苦手だと言うのに。



「もうちょっとかかりそう(>_<)」



「そうか…気をつけて頼む!
内勤の人達はみんな先に帰らせるから…
外勤の人達も戻った人から順に帰らせる。
だから凛も慌てずに戻って来たらすぐ帰りな!」



「うんっ」


雪がまだサクサクしてる内に頑張って終わらせないと暗くなって怖くなる。
頑張って早めに終わり戻ろうとすると、偶然にも先輩に会う。



「ずるくない?
普通、外勤が戻ってから一斉に帰すのが当たり前じゃない?」



あ…
確かにそうかも。


「あ…そうですよね。
大変な思いして頑張ってるのに…」


「でしょ?
ねぇ…ちょっと一服して帰ろ!」



この雪の中…一服か…。
でも、必死に頑張ったから私も一服したかったのは確か。


グチグチ言う先輩の話を聞きながら公園で一服を済ますと、突然 先輩が
「じゃ、帰ろ!」
と、いきなり歩き出す。


鈍くてトロい私は、雪にビビりながらも慌てて先輩を追いかけた。


会社に戻ると、もうみんないなかった。
が、同じく外勤だった人がまだ2人帰って来ていない。



必死に頑張って帰ってきた時に誰もいないのは寂しいだろうな…と思い、報告を済ませ喫煙所に向かう。
時計を見る。
そろそろ帰って来るだろう。
と、思い…タバコに火…………!!!




ない…



ない…



ない…



織田さんに初デートでもらったタバコケースがない…。
タバコケースには、同じく織田さんにもらったジッポも入っている。



どこだ?
最後にタバコを吸ったのは、あの公園。


あれから既に1時間以上経っている。
しかもこの雪。
ウチとは正反対にある。



でも…
そんな事に構ってはいられない。

「織田さん(>_<)
もう一度、今日のとこに行ってくるね!」


No.72 14/05/27 01:39
匿名0 ( ♀ )

>> 71



織田さんは近くに誰かいるときは絶対にラインを見ない。
そんなのは既にわかってる。
別にいいんだ…今見なくたって。



ただ、万が一…見つからなかった時に
『探しには行った』事だけは知っててもらいたい。


すると織田さんが喫煙所に来た。
「2人も無事に帰って来たよ!」



「よかった!
じゃ、私急いで行ってくるね!!」



まだラインを見ていない織田さんには訳が分からず (・_・)......ン?って顔で



「どこに?
せっかく来たのに…」
と、膨れっ面をする。



あ…そっか。
みんなが帰った今日は…
外部が来ない限り、2人になれるチャンスなのか…。



わざわざ来てくれたんだね。



「あのね…タバコケースがないの。
ジッポも入ってるのに。
鞄のタバコ入れてる所のファスナーが開いたままになってたから多分どこかで落としたんだと思う(;_;)
だから、探しに行ってくる!!!」




「おい!
この雪だぞ?
そんなのまた買ってあげるから諦めなよ!
危ないから行くな!」




「ヤダ…ゆっくり歩くから…大丈夫」



「いいよ~やめなって!危ないからヤダよ
あんなのまた買えばいいんだから」



何度もこんなやり取りをした後、
「わかった(T_T)
じゃあ、やめる…」と言い、織田さんの言うことを聞いたフリをして会社を出た。



初めっから まっすぐ帰るつもりなんかない。
だって…思い入れがあるものだもん。
諦め切れなかった。



運よくタクシーが人を降ろすのが見えた。
ダッシュ!!!

とは行っても、雪の中だから普段で言えば やや小走り程度だけど、なんとかタクシーに乗れた。



公園のちょっと手前で降ろしてもらい、歩いた道を探しながら歩く。
既に暗くなったその道に小さな黒い影が見えると全てがタバコケースに見えてしまう。



何度「あッ!!!」と思ったことか…。
結局、目に付くもの全てがハズレだった。



もうあの公園にしか希望は残っていなかった。


「凛、無事着いたか?」
織田さんから確認のラインが来る。

No.73 14/05/28 02:01
匿名0 ( ♀ )

>> 72


返事に困った。
素直に言ったら怒るだろうな…(>_<)
でも、もし見つかったら報告したいし………
迷った挙げ句、



「諦めきれなくて探しに来てる…
ごめんなさい」



と、返事した。



案の定、
「バッカも~ん!
怪我でもしたらどうすんだ!」



の、返事。
でも、この「バッカも~ん!」はサザエさんの真似で織田さんがたまに使うセリフ。
…って事はセーフだ。
マジ切れではない。



返事をする前に公園に着いた。




タバコを吸った場所はアソコだ!
近くまで行く途中で、暗い中に影が見えた!



あ…!
先輩に「帰ろッ」と言われた時、慌ててタバコをしまったのを鮮明に思い出した。




その影の前にたどり着くと、積もった雪の中にひょっこりタバコケースの一部が頭を覗かせていた。




あった!!!!!
あったョ…織田さん(;_;)



びしょ濡れになってはいたものの
タバコケースもジッポも無事だった。
座った椅子の下にひょっこり隠れていた。



ポケットにしまったのは覚えている。
そこで「帰ろッ」と言われ、ファスナーを閉め忘れたんだろう。
そして、立ち上がった瞬間 キチンとしまいきれていなくて落ちたんだな…きっと。




「織田さん!
あったョ!!!
見つかった!よかったぁ(;_;)
無事見つかったから帰るね♪」



「そんないい加減ボロボロになったやつ、
なにもこんな日に探しに行かなくたって また買ってあげるのに…まったくバッカも~ん!
凛、危ないからタクシーで帰れ。
お金は明日渡すから」



「お金なんていらないよ。
拾えたらタクシー乗るね!」



でも、雪と言うより吹雪のような降り方。
タクシーは捕まるはずもなく、電車を乗り継いで帰宅した。



「無事着きました」




「よかった。
あんまり心配させないように!」



「はーい…ごめんね」



初めてもらったプレゼント。
ホントに見つかった瞬間の嬉しさを私は忘れない。
思い出の大切な宝物だから。


No.74 14/05/30 23:26
匿名0 ( ♀ )

>> 73


ラストスパートに入る前に
出来るだけ私と逢う時間を作ろうと考えていたんだろう。
逢えるのも2~3週間に1度のペースになっていたのに私の予想に反し、また逢える時間を作ってくれた。




「凛、この前はごめん。
まだ食べられるから…チョコください!」




「え…
ヤダ…賞味期限過ぎたヤツなんて…」



「大丈夫!せっかく用意してくれたのに無駄にしたくない…ちゃんと食べる!
…あッ!別の男にあげてないだろうなぁ?(-_-;)」




「まさか(^-^;
あげる相手なんていないよ」



「じゃあ用意して待ってて!」




「はいッ♪
…あ…ごめん。少しゆっくり支度して(>_<)
ちょっとだけ時間ちょーだい。
まだなにも支度出来てないから…」



「はいよ~!慌てずに ( ✿˘︶˘✿ )」




とっさに思いついたんだ。
織田さんがよく会社で夕方になると食べてるお菓子がある。
あれなら、今日食べられなくて会社に持ってっても不自然じゃないだろう。



その代わり、色気も素っ気もないバレンタインになっちゃうけど…織田さんが好きで買うくらいだから無駄にはならない1番無難なもの。



慌ててコンビニに走った!
運よく織田さんの好きなお菓子は2種類ともバラ売りしていた。



あとは私の得意分野!
元々、凝り性な私は…ラッピング用品なら家にいっぱいある。
あとはセンス。



このありきたりな2種類のお菓子をなるべくオシャレに飾るには………


思い出した!
バレンタインにチョコと一緒にあげようと思ってたラルフのハンカチタオルがあるんだ!



籐のかごにキレイに飾り付けし、なんとかプレゼントらしくなった。


「お待たせ!出れます」



「よし!じゃ…向かうね!」




バレンタインは既に過ぎた。
他の人より遅いバレンタインになっちゃったけど…渡せてよかった (*´∀`*)♬✧*。



早速それを開ける織田さん。



No.75 14/05/31 00:02
匿名0 ( ♀ )

>> 74

一見オシャレに見えるソレは…
きっと織田さんの期待に反してるに違いない。


「あれ?
これ…こないだのと違くないか?」



「うん…賞味期間切れちゃったから…
今度は頭使ったの( ´艸`)」



ニコッと笑い封を開ける。
そのニコッと、が…爆笑に変わる。



「おー!!!
こりゃー頭使ったなぁヾ(≧з≦)ゞププッ」



「間違いないし、会社に持ってっても自然だと思ったの」



「俺の好物だもんな!
これなら間違えなくごく自然だ!
ありがとう(笑)」



「タオルはね、こっそり私と色違い( ´艸`)」



「凛は何色?」



「当ててみ?」


織田さんは私の好みを当てられるだろうか。
ずっと昔、私の好きな色は?の質問をハズした織田さん。
あれから数年。
ちょっとは私の好みを理解してるのだろうか。



すかさず
「赤と白!」
と答えた。



当たりだった。
織田さんは紺と黒で私は赤と白。



「すごい!当たり ゚.*・。゚♬*゜」



勝ち誇った顔。
ほんわか幸せな気持ちになる。



「凛…実はさ…
今日は話があるんだ」


もう少しで3月になる今日。
「嫌な話?(;_;)」


「別れるとかじゃない。
けど…凛にとっては辛い話だと思う…」



「なにそれ…
なら聞きたくない(>_<)」


「俺もさ…
ずっとタイミングを考えてて。
でも必ず言わなきゃならない話だし事実だから先に話しておきたいんだ。
これからの事も含めて…」



こういう時、女は勘がいいのは何故だろう。
織田さんの話しっぷりから考えて、2つの事が頭によぎった。



「奥さん?」
こっちじゃないだろうな…と思う方から聞いた。



「いや…そうではない」
織田さんの顔がいつもとは違う。
真剣な顔。
言い出しにくそうにしている。
きっと言いにくいんだろう。
何故なら…自分が1番ショックだから…。




「もしかして…人事?」




「…まだ、絶対に誰にも言っちゃいけない話なんだ」


  • << 78 「わかった。…もしかして… 決まったの?」 「うん…3月31日付けで移動が決まった。 まだ俺と上の人しか知らない。 この話が流れたら俺はクビだ。 だから、発表があるまで黙っててくれ…」 「もちろん。 ………辛くなる…な。 あと1ヶ月しか一緒にいられないね…」 「ココではね。 でも大丈夫!会いに来るから! それに…凛にとっては心配が減るだろ? …これでよかったんだよ…」 とても寂しそうな顔だった。 私にとって本当によかったんだろうか。 確かによく思ってた。 一切、口にした事はなかったけど… 織田さんが移動になれば… 私が仕事を辞めれば… この「嫉妬」や「心配」「不安」から解放されるのに………って。 目の前で嫌な光景を見ることもなくなる。 知りたくない話も耳にしなくなる。 辛さから解放される………と。 これは、密かにそんな事を少なからず望んでしまっていた私への罰のように思えた。 実際に離れる現実を知ると ひどく不安が押し寄せてきた。 これを期に 織田さんが私から離れて行くんじゃないか…って。 長年勤めたこの職場から去るように 新しい道へ進むために 私からも去って行ってしまうんじゃないか…って。

No.78 14/06/24 01:53
匿名0 ( ♀ )

>> 75 一見オシャレに見えるソレは… きっと織田さんの期待に反してるに違いない。 「あれ? これ…こないだのと違くないか?」 …



「わかった。…もしかして…
決まったの?」




「うん…3月31日付けで移動が決まった。
まだ俺と上の人しか知らない。
この話が流れたら俺はクビだ。
だから、発表があるまで黙っててくれ…」




「もちろん。
………辛くなる…な。
あと1ヶ月しか一緒にいられないね…」




「ココではね。
でも大丈夫!会いに来るから!
それに…凛にとっては心配が減るだろ?
…これでよかったんだよ…」




とても寂しそうな顔だった。




私にとって本当によかったんだろうか。
確かによく思ってた。
一切、口にした事はなかったけど…




織田さんが移動になれば…
私が仕事を辞めれば…
この「嫉妬」や「心配」「不安」から解放されるのに………って。



目の前で嫌な光景を見ることもなくなる。
知りたくない話も耳にしなくなる。



辛さから解放される………と。




これは、密かにそんな事を少なからず望んでしまっていた私への罰のように思えた。



実際に離れる現実を知ると
ひどく不安が押し寄せてきた。



これを期に
織田さんが私から離れて行くんじゃないか…って。
長年勤めたこの職場から去るように
新しい道へ進むために
私からも去って行ってしまうんじゃないか…って。



No.79 14/06/29 03:39
匿名0 ( ♀ )

>> 78



織田さんは残された仕事をやり遂げる為に日々必死だった。
諦める事なく、投げ出すことなく、最後の最後まで。
睡眠時間を削り、土日も休まず。



意地もあっただろう。
こんな時期に移動を決められた事も悔しかったに違いない。



私は私で、そんな事を理解しながらも…寂しさでいっぱいだった。
残された1ヶ月、織田さんをココで見ていられる1ヶ月を大切に過ごしたい。



だが、仕事の事で頭がいっぱいの織田さんは、とにかく仕事をやり遂げる事で一杯一杯。
朝起こすとこから始まりメールは日々2~3回が日常的になる。



寂しかった。



例の彼女たちはたくさん接点があるのに…。



最後まで私は
密かに…
その姿を見ているしか出来ない。
声を出すこともなく。



こんな日常だから
もちろん、逢うことも出来ない。



これからはきっと無理だろう、と予想したんだろう。
3月初め、織田さんは会議の為 1日不在だった。


No.80 14/06/29 04:15
匿名0 ( ♀ )

>> 79
だいたい会議の後は飲み会の流れが多い。
メールがなくても、その流れは理解出来る。


[どーせ遅くなってベロベロで連絡出来なかった]
流れだろう。


なんせ飲みに行くことすら久しぶり。
飲まされるがままに断らず飲み続ける織田さんはいつも酔いつぶれる。
だから『飲み』って聞くと、いつも嫌な気分だった。


でもまぁ今日は女はいない。
久しぶりに発散して来な♪とメールした。



ピンコン♪



予想に反し、意外に早くラインが鳴る。



「帰り道 (*´∇`)ノ
せっかく早めに抜けられたから逢わないか?
たぶんなかなか逢えなくなると思うから…」



断る理由なんてない。
嬉しかった。


「うんッ!」



この日は色んな話をした。
これからの事も…。



「移動先はもう言われた?」


以前、移動の話を織田さんから聞いた時はまだ『詳細は未定』と言っていた。
でもよく考えてみたら、移動だけが決まって 移動先が決まってないなんて、あるかな?と思った。



織田さんが少し重い口を開く。



「移動先は○○、仕事内容は○○。
これからは手に職を持つ。技術専門職になる」



えっ(T_T)って気持ちが隠せなかった私に
更に話は続く。


「遠くなるぞ。
これから資格を何10個も取らなきゃならない。
日々新しい事を覚えなきゃならない。
…その代わり、仕事はしばらく定時で上がれる。
…耐えてくれるか?」



離れてみないと実感が沸かず、空想の世界でイマイチ想像がつかない。
ただ、遠くなる…逢えなくなる…そんな事ばかりが頭をグルグル回っていた。


精一杯出た言葉が
「織田さんが頑張ってるんだから私も頑張る!」
だった。



「織田さんが離れていかないか…不安…」



「何も心配いらないョ!
今、凛が俺から離れたら…孤独に押しつぶされる。凛がいなかったら今の仕事、俺はここまで頑張れなかったと思う」


何故かこの言葉にすごく安心した。
私がいる事は、織田さんの邪魔になる。
そんな思いが強かったから………。

No.81 14/06/29 04:35
匿名0 ( ♀ )

>> 80



一番不安なのは織田さんだろう。
20年位続けたここから離れ、この歳から新たな場所で新たな仕事に就く。
知る人は誰もいない。



織田さんの移動先は遠い。
「織田さんさ…移動希望出してたの?
前に聞いた時と仕事内容も場所も全然違うよね?」



「希望を出したのは去年。
今年はこれ(今やってる仕事)があるから出さなかったんだ。
皮肉だよな…こんな時期に。
場所だって内容だってどれも希望に当てはまらない」



「だよね…
もし移動になるなら○○がやりたいって言ってたもんね…場所も…」



織田さんの希望が通れば、私の自宅から近い場所だった。
移動先は私も行ったことのない土地。
ただ、織田さんにとっては場所的には家から近くなる。
今まで1時間以上かけて通ってた事を思えば、織田さん的には好都合なはず。




だけど…
方向的に今と逆の電車になる。



逢うためには、2時間近く電車を乗らないとならない。
何よりも…
自宅の最寄り駅を通り越さないと来れない。



遠距離とまでは言わないかもしれないけど
不安が一気に私を襲う。

No.82 14/06/29 04:56
匿名0 ( ♀ )

>> 81



織田さんは元々、不器用な人。
2つの事を同時に出来ないような。
1つ考え出したらまっすぐそれしか見えなくなる。



「織田さん…」



「大丈夫。
何も心配するな!大丈夫だから」



いつでも織田さんはそう言って私を安心させてくれたよね。



『大丈夫!何も心配するな』




この言葉はある意味いつも私を安心させる魔法の言葉のようだった。
これを聞いてどれだけ今まで救われて来たんだろう。



織田さんを信じて…
私も頑張ろうと決めた。



織田さんに必要とされる限り…側にいたい。



「頑張ろうね!」



「しっかり頼むよ!」




この日から、何か不安が巻き付く感じかと思えば
『こんな嫌な気分もあと少し』
なんて…意地の悪い事を考える私もいた。



会社で接点がなくメールもほとんど出来ない中、例の彼女たちとの姿を見ては、こんな事を思っていた。



あと少しの我慢。
………なんて。



逢えてしばらくは気持ちにも余裕が持てる。
でもそれは、逢えなくて話せない日を追うごとに寂しさと混ざり合い不安に変わっていく。



最後くらい近くにいたい。
会社でも、普通にみんなが出来るやり取りを織田さんとは出来ない私。
会話も出来ない中、顔さえ見れず終わる日もあった。



こんな毎日同じ場所にいるのに寂しいと感じてしまう私が…離れても大丈夫なのか…と、ふと考える毎日だった。


No.83 14/06/30 02:53
匿名0 ( ♀ )

>> 82



時間が許す限り、織田さんはビデオ通話をしてくれた。
日中や夜メールが出来なくても、寝る前のこの数分間が私の心を満たしてくれる。
これがあった日はホッとして良く眠れたよね。



この1ヶ月間は織田さんと同様に私も睡眠時間は1日平均2~3時間。
頑張ってる織田さんを手伝う事が出来ない代わりに一緒に頑張りたかったんだ。
ただの自己満足にすぎないのだけど。




最初は気を使って
「凛は先に寝ろ!」
と、言ってくれた織田さんだけど
何度言っても寝ない私に諦めたのか、途中からは
「寝るぞ~!凛も寝よう」
と、言うようになっていった。



もうすぐ世間ではホワイトデー。
織田さんがホワイトデーなんて覚えてるはずがない。



最初から諦めてはいたが、やはり少し寂しさもあった。
今年は考えてみたらクリスマスプレゼントもなかった。
こんなのは初めて。




ホワイトデー当日になって、寂しさが増す。
仲良しの沙織が
「ほら、お返しはコレだったョ o(*^▽^*)o~♪ 」
と、見せてくれた。



義理チョコには、キチンとお返しがあった。
私にはないのに…。



まぁ渡す手段もないからな…とは思いつつ
やっぱり寂しい。



その夜、耐えきれずに言った。



No.84 14/07/01 03:04
匿名0 ( ♀ )

>> 83


「ねぇ…織田さん…
その仕事が終わるまで、私は彼女じゃない事にしたら楽にならない?」




ホワイトデーが貰えなかったから、こんな事を言ったわけじゃない。
一緒にいると…つい、期待してしまうから。



今日は逢えるかな?
今日は電話くれるかな?
今日はメール出来るかな?
話せるかな…と。




それが段々と
織田さんの負担になっていくのが怖かった。



私がいるばかりに
織田さんが余計に疲れてしまうんじゃないか…って。



重いんだ…私は。
自覚してるから、怖かった。




一時的に、これが終わるまでなら耐えられる。
『やり遂げる』事をお互いの目標にすれば
織田さんが私から、居なくなるわけではないのだから…頑張れる、と思った。




「なにバカな事を言ってるんだ?
凛がいなくなったら支えがなくなる。
なにを支えに頑張ってると思ってるんだ!」




例えば、この言葉が
嘘だったとしても………。




嬉しかったよ。



ほんの少しでも
自分の存在を
認めてもらえた気がした。




涙が出そうなくらい
嬉しい言葉だった。




この時どれだけ私がホッとしたことか。




あ…まだ私は、
織田さんの側にいていいんだ。



ってね。
こんな私でも、側にいる事が、
ほんの少しでも支えだと感じてくれてるんだ…
ってね。





この時は、まだ…
そう感じてくれていたのは
嘘じゃなかったのかな…。


No.85 14/07/05 02:48
匿名0 ( ♀ )

>> 84



しばらく時間はスローに流れ
織田さんがここにいるのも、あとわずかになる。



相変わらず、なかなか思うように進まない仕事。
それに対し、色んな部署から送別会の誘いが来る。



そんな事は予想範囲内だったけど…
織田さんは少し困惑ぎみ。
でも、断らない。



そりゃそうだよね。
長年お世話になった人達に断れないのは当然。



そんな事もあり、もう仕事は無理だろう…と、私は半分諦めていた。




何のために…
ここまで頑張って来たんだろう…。
寂しい想いをしてまで。



でも、織田さんは諦めなかった。
最後まで。
だから私も応援した。
見守った。



『絶対無理でしょ!』
と言う周りの声がどんなに多かろうが、せめて私は応援しなくちゃ!と言う想いが強かった。




もう何日逢えてないんだろう…。
これだけ逢えない日が続くとなかなか手帳を書く気にもなれずにいた。



『寂しい』は、今は言ってはいけない言葉。



考えてみたら…
いつだって私はそう感じていたよね。
例えば私が口にしたとしても



「今は耐えてくれ」



って、織田さんはいつもそう言った。




そして平気で連絡なしに朝が来る。
「昨日は誰とどこにいたの?」



こんな言葉さえ、私はいつも心の奥にしまい込んだ。



「俺は信用されてないんだ」
そう言うのがわかってたから…。

No.86 14/07/05 03:13
匿名0 ( ♀ )

>> 85
『依存』『執着』『嫉妬深い』『重い』『自分勝手』………どれも私に当てはまる言葉。



わかってるんだ…頭の中では。
でも、一歩を踏み出す勇気がない。



この頃の私は不安でいっぱいだった。



織田さんが離れる事はもちろんだけど…
こんなに逢えず、コミュニケーションもままならない寂しさの限界も近い中… 耐えられるんだろうか。




必ず、織田さんの送別会はある。
それが1番の気がかりだった。



仲良しの彼女たちを目の前に
自分の感情を最後まで押し殺す。
それが今の私に出来るだろうか…。



例えば、前日に充電を満タンにしたとしても…目の前で見るのは辛いんだ。
何度言っても分かってはもらえなかった事だから今更何を言ったって無駄な事くらい分かる。
相手が居ての事だから。



日に日に、そんな不安は強くなる一方だった。
でも…
これを我慢したら…
もう終わるんだ。
腹ん中で煮えくり返りそうな怒りの感情を
笑ってごまかすこの辛さも。
自分で引きつっているのが分かるくらい不器用な私が、今まで散々我慢した日々も。



あと少し。
もう少し。



織田さんを応援する気持ちと常に同時進行していたこの想い。



No.87 14/07/05 03:45
匿名0 ( ♀ )

>> 86



土日がくる度、申し訳ない感じがして仕方なかった。
織田さんは休みも取らず頑張ってるのに。



私には…何も出来ない。
何もしてあげられない。



そんな時、ラインが鳴った。
「凛、最後にさぁ…
みんなに何かあげたいんだけど、女性に何をあげたらいいか分からないから一緒に考えて欲しいんだ!」




え?
今更そんな…。
時間、足りるんだろうか。



「今日出掛けるから見て来ようか?
いいのがあったら写メする?
あ…誰かいる?」



「大丈夫!
悪いけど頼む。写メちょうだいm(_ _)m」



あまり普段、頼られる事がないから正直嬉しかった。
こんな事くらいしか役に立てないから。



私はさっさと自分の用事を済ませ、織田さんに頼まれたものを探しに歩き回った。
何ヶ所回っただろう。
足がパンパンだったけど苦にも感じなかった。



「予算が分からないから、何通りか写メ送るね!
で、男性のはいいの?」



「あ~そうかぁ…!
それも見れる?
大変だったら無理しなくていーぞ」




「大丈夫だョ!」



散々歩き回って気がついた。
在庫確保もしなきゃならない。



「ねぇ…在庫あったら買っとく?
いいのがあれば」



いくつかの写メと一緒に聞いてみた。



「あぁ…予算の交渉、カミサンにしなきゃなんないから今日はいいや。
ありがとう!助かった!」






そっか…



見るだけ見ても…
最後は『カミサン』なんだよね…。



何のためにいっぱい歩いて在庫まで聞いて
まとめて買ったらいくら?とか聞きまくって…



バッカみたい(笑)
結局、何のためにもならないじゃない…。




最初からカミサンに頼めばいいのに。
って気持ちが、何故か怒りよりも寂しく思えた。



勝ちたいなんて思ったことはないけど
やっぱり勝てない。
必ず最終駅は『カミサン』なんだよね…。



私は途中で下車した時の『寄り道』にしか過ぎない。
ブラブラ散歩して休憩して、美味しいもの食べて帰宅する。



途中駅。

No.88 14/07/05 04:12
匿名0 ( ♀ )

>> 87



帰りの電車の中で考えていた。




そうか…!
私の早とちりだね。
「考えて!」って言われただけなのに勝手に選んだりして…バカだな、私。



この日、私は織田さんへの餞別を買った。
毎日、身につけるもの。
『離れても、私を忘れないでね』って密かな願い。


最後はきっとみんなも何かしらあげるだろうから渡せるかな…と。




その夜、更に追い討ちをかけるようにショックな事が私に降りかかる。




今日は日曜日。
誰もいないこの日がチャンスだったんだろう。




ピンコン♪




あ…織田さんだ!




「今さ…片づけしてるんだけど…
あ…身辺整理ね。
凛さ、凛携帯…悪いんだけどやめない?」




ちょっと前から織田さんは凛携帯を解約したがっていた。
ラインするようになってから使ってないから無理もない。
持って来て、隠して、また持ち出してはしまって…の、繰り返しじゃ負担…だよね。



私は寂しい時たまにメールをしていた。
家にいる時はラインは出来ないから。


きっとそんなメールも読んでないんだろう。
もうこれ以上、「持ってて」とは言えない。



「わかった。
デスクの引き出しに入れといて♪」



寂しくなんかない!………振り。
本当は寂しさで熱い物が込み上げてくる。
だって、2人を繋いだ思い出の携帯だもの。



「ここにしまったからねm(_ _)m」
写メ付きのメールが来た。



たかが携帯を返されただけ。
でもそこには、織田さんが撮った私の写真や動画、今までのメール…色んな物が詰まっている。



なんとなく…



『捨てられた』



そんな気分になった私はおかしいだろうか…。
思い出ごと全部…捨てられた。




そんな気がした。



No.89 14/07/06 06:02
匿名0 ( ♀ )

>> 88



本当に寂しかったのは翌日。
朝会社に着いて身支度をして…落ち着いて…周りを確かめて、例の所を見た。



小さな黒い布の袋の中に凛携帯は確かに入っていた。



こうやって持ち歩いてくれてたんだ…。




頭の中で私が常に言ってきた言葉がグルグルと回りだす。






『凛携帯を解約する時は「別れる時」だョ!』






別れてはいないが、実際に返された。
もう『不要だ』ということ。
返されたのは携帯だけど…
この中に私の写真も2人の動画ある。



織田さんは、もうこれを見る必要もなくなったんだね…。




でも…
これでいい。



証拠隠滅。
その日の内にラインさえ消してブロックしてしまえば証拠はなくなる。



実際、何度か考えたことがある。
もし例えば、帰り道 織田さんが車で事故って…万が一の事があった時、必ずいずれは凛携帯は見つかる。


ロックしているとしても、あんな形で車に隠されていたら確実に怪しむだろう。
そしてまず、私を疑うはず。



そんな形で発覚する危険性も100%ない!とは言えない。


そんな形で発覚したら…
悲しむ人が必ずいる。





これでいいんだよ…凛。




織田さんにメールした。
「携帯受け取ったからね!
あ…写真とかどうした?」




「そのままにしてある!」




その日、帰宅してまず携帯を開いた。




思ってたより
写真や動画はいっぱいあった。




織田さんとラインをする為に変えたスマホ。
織田さんがいなければ変える時はもっと後だったと思う。



ラインさえ出来なくなれば…連絡手段はない。




このガラケー、私が使うのもいいかもな。…
織田さんがいらなくなった代わりに…



私はきっと、そこまでしないと織田さんからは離れられないと分かっていた。

No.90 14/07/07 02:46
匿名0 ( ♀ )

>> 89
何年か前、織田さんが深夜に単独事故を起こした時の事を思い出していた。



その頃はまだ凛携帯でやり取りしていた。



朝になり、いつもの様にメールが来る。
そこには何枚かの写メ。



え…?



怪我した写メと大破した車の写メ。



「事故ったの?」



「昨日の帰り、事故っちまった…でも、無事!」




「よかった(;_;)」



すると、もう1枚の写メ。



暗闇の中、凛携帯を握りしめている。
すぐ横には、その衝撃を物語る様に車があった。


「事故った時、凛携帯がどっかに吹っ飛んじゃってさ…必死で探したよ!
見つけた時、嬉しくてさ。思わず撮ったんだ!」



「そんな怪我したのに…そんなのよかったのに…
ありがとう。
怪我は平気なの?」



「大丈夫(^_^)v」



あの時、あんなに大事にしてくれていた凛携帯。



今同じ状況になっていたら…
同じ様に探してくれたんだろうか…。


ちょうどいい機会だから
放置した………かな?




翌日、早い時間にラインが鳴った。
「今日は久しぶりの帰宅。
今日はいっぱいメール出来るね♪」



あ…今日は帰るんだ?



「なんかあったの?」



「カミサンに頼んだみんなに配るやつ、取りに帰らないと。
あと、俺さ…車ダメにしちゃって一時的に親父の車借りるんだ。
だから、今車がなくて…凛携帯しまう場所がなかったんだ。
会社にしばらく置きっぱなしにしてあったんだけど…新しいとこ行ったらロッカーとか、どんな状況か分からないし。
1番に、ちゃんと使ってあげられてないから意味ないかな、と。
………ごめんな」



やっぱり私は何も知らない。
そうだね…理由を聞いたら仕方ないのかな、と思えた。


「車新しくなったら凛乗せてあげたい。
前から乗りたがってたから」



「うんっ!乗せて (*´∀`)♪
でも、そんなチャンスあるのかな?」



「チャンスは必ず作る!」




チャンスは必ず作る。
その日は訪れるのだろうか。

No.91 14/07/08 01:17
匿名0 ( ♀ )

>> 90



あとほんの数日で織田さんがここからいなくなる。



分かっていても、まだ日数が残ってた間はあまり実感がなかった。
嘘もすぐ見抜かれてしまうくらい不器用な人なのに、織田さんの移動に気づいている人はいない。



むしろ織田さんは安泰、
前嶋が移動じゃないか?と言う噂が立っているくらいだった。



本当は私も1番それを望んでた。
女好きで裏表の激しい前嶋が移動して、以前いた厳しくて女性を飲みになど誘わない上司が来ればいいのに…って願ってた。



でも…事実は事実なんだ。
今更、誰も変えることは出来ない事実。




「織田さん、寂しい?」




「そりゃね…寂しいと言うより孤独感が強い。
凛まで離れないでくれよな…!」



「当たり前。
ねぇ…織田さんは心配?」



「凛のことか?」



「うん…これだけはして欲しくない!とか、ある?」




「仕事関係の行事なんかに出席するな!とは言わないよ。
…でも、ボディタッチとかはヤダ。
仕事外で男と飲みに行ったりするのもヤダ。
…でも、俺は信用してるよ。凛のことは」




今のこの職場の状況を知っていて、私を残していく方が不安や心配は大きいだろうと思った。



お互いに『見えない環境』は同じだけど…色んなパターン、どの時期にどんな行事がある、なんて事も全て分かっているだけに心配かな…と思った。


「私は大丈夫!心配しなくても裏切ったり絶対しないから安心してね」



こんな会話をしていると段々寂しくなってくる。
7年も一緒にここにいたんだもんね…。
いずれこんな日が来ることは分かっていたけど、それがホントになると寂しくて。



寂しいと言うのか、心細いと言うのか。



私が恐れている送別会も数日後。
こうなると、私より何年もの間 ここで織田さんと一緒に働いてきた先輩たちがうらやましかった。
私なんかより、仕事仲間としての織田さんを私よりいっぱい、いっぱい見て来たんだもんね。


思い出は私よりいっぱいあるんだ。



発表の日が日に日に近づく。

No.92 14/07/11 22:34
匿名0 ( ♀ )

>> 91


ある日の帰り道。
たまたま木村さんと一緒になった。




「ねぇ、中川さん。
移動の発表って毎年いつぐらいだっけ?」




ド、ドキッ Σ( ̄ロ ̄lll)




凛、
冷静に…冷静…に、だぞ!




「あ…もうそろそろですよね。
はっきりとは覚えてないけど…」




「だよねぇ…
ねぇ、誰も動かない年ってあり得る?」




「過去に何回かありましたよね!
なんかありました?」




「いや…
織田さんの移動もアリ?どう思う?」




更に…ドキッ ∑(°口°๑)❢❢

コラッ!…凛、…冷静にね!




「織田さんは動かないんじゃないですか?
なんで?」




木村さんは何が言いたいんだろう。
何を聞きたいんだろう。




「え?
中川さん気づかない?
織田さんの机の上、すごい綺麗になったと思わない?

なんとなくだけど…織田さん、移動なのかな?と思って」




相変わらず、すごい観察力。
私は余程の用がない限り、織田さんとは絡まない。
増して、机の上なんて見た事もない。

No.93 14/07/12 09:37
匿名0 ( ♀ )

>> 92


「織田さん今大事な仕事抱えてるから移動無さそうだよね、ってみんな言ってたけど…どうなんだろ」



「織田さんはあれ、終わらないよ!
絶対できっこないよ!
あんなしょっちゅう奴らと飲んでて終わるわけないよ!」



しょっちゅう?
奴らと飲んでて?


何を根拠にそんなこと言ってるんだろ?



「そんな飲み歩いてるの?」



「あ…そっか。
中川さん朝の織田さんの顔ってあんまり見る時ない?
いっつも二日酔いの顔だよ。
そういう前日って必ず奴らは飲みに行くから一斉に帰るし、全部お見通し (¯―¯٥)」




「ふーん…そうなんだぁ」




木村さんは何故そこまで気になるんだろうか。
何故、織田さんが彼女たちと飲みに行くことがそんなに気に入らないんだろう。




好き………?





その夜メールで聞いた。

「織田さん片づけとか整理出来てるの?
机の上とかは最後までなかなか出来ないよね?」




「片づけなんか全然出来てない
机なんてホント最後だな~」



だよね。
やっぱり木村さんの妄想だよね。


この妄想に振り回されるのも…あと少し。




あと少し、だと…思ってた。
この頃は。


No.94 14/07/14 02:54
匿名0 ( ♀ )

>> 93


別れの予感。



この頃はまだ、そんな予感さえ感じてなかった。




なかなか逢えなくなるな…寂しくなるな…色んな事が変わってくるだろうな…
そんな不安はあったけど。



現実になるまで、その厳しさには気づけなかった。




むしろ、織田さんの言葉を鵜呑みにしていた。
バカな私………。




『移動したら女性とは誰とも一切連絡は取らないよ。逢う事もない。それをするのは凛だけだ』



『移動したら、今よりいっぱいメール出来るよ』



『俺がいなくなって浮気は許さないぞ!イチャイチャ禁止!どんなに些細な情報でもあらゆる手段で耳に入ってくるんだからな!』




まだこの時は、ちゃんと想われてるって感じてた。
例えそれが錯覚だったとしても。




そして…
遂にあの日が明日に迫った。


朝の全体朝礼で発表がある。
全ての部署の移動が発表される。
淡々と名前が呼ばれる中、織田さんはどこら辺で名前があがるんだろう。



その時 私は…
どんなリアクションをしたらいいんだろう。



泣かないように!
それだけは気をつけないと、…と思っていた。





「いよいよ明日だね…
寂しい?」



「だねぇ…
寂しいと言うよりはもう前に進むしかない、って気持ちも切り替わってきたかな。
…誰も寂しがる人なんていないよ (b゚v`*)」




『誰も寂しがる人なんていない』




そんな事ないョ…織田さん。



この言葉がやけに寂しく感じた。


No.95 14/07/15 02:12
匿名0 ( ♀ )

>> 94


そして…
朝が来た。

いつもと変わらない朝。




「時間だよ~!
今日は大事な日なんだから起きて!!」




「はいよ~ (´0`)zz
ねみぃ~!」




「二度寝しないでね!」




「はい‥ちゃんと起きたぁ(^_^)v」




会社に着いても、いつもと何も変わらない。



時間になり、みんなが5階へ移動する。
さりげなく私は、織田さんの姿、顔が見える位置をキープした。



これくらい…いいよね…?
せめて、大事な日くらい
顔ぐらい見たっていいよね…?




仲良しの沙織が
「凛ちゃんみっけ♪」
と、言いながら私の隣りに立つ。
反対側の隣りには吉野さん、その向こうに木村さん。




いよいよ、移動する人の名前と場所が淡々と読まれ始めた。
静かだ。
みんな黙って聞いている。
なんだかとても不思議な雰囲気に感じた。



驚く声も何もない。
あまりにも淡々としたこの発表は、よく聞いていないと聞き逃す可能性もある。



私はふと、織田さんを見た。
姿勢よく、前を向いて立っている。
その姿がとても凛々しかった。



「○○部 織田 敦、○○○部○○営業署………
○○部 林 孝太郎、………」



あ…呼ばれた!




そう思った瞬間、静まり返ったこの部屋が一瞬にしてざわめき始めた。


あまりのざわめきに部長の声が一旦止まる。
と、主任がみんなを
「静かにしなさい」と言う顔で見た。




ざわめきが収まると、また部長が続けた。
織田さんは動揺する素振りもなく、前を見ていた。



その時、私の左から吉野さんが腕をツンツンしてくる。


「ん?」と、吉野さんを見ると
顎で「見てみ (¬_¬)」との合図。




その瞬間、私の目に入ったものは未だかつてない異様な光景だった。
毎年あるこの形式でも見たこともない光景。


No.96 14/07/16 01:46
匿名0 ( ♀ )

>> 95




泣いてる。
彼女たちが泣いてる。
特に角田と、織田さんが本命かと噂されている彼女がしゃがみ込んで号泣している。



パッと織田さんを見ると
一瞬、彼女たちを見て すぐに前を向いた。




私だって…
泣きたいほど寂しい。


でも、ここで泣くわけにはいかない。




彼女たちは朝礼の最後まで泣いていた。




そんな彼女たちを大半の人達が冷ややかな目で見ていた。

朝礼が終わり、各部屋に戻る。
当然のように織田さんの周りは彼女たちで囲まれている。
なかなか部屋には戻って来なかった。




織田さんや彼女たちが戻って来ない部屋では、コソコソと何やらみんな話している。



「ねぇ、何あれ?
まるで女?って感じだね。
本当に付き合ってんじゃないの?」



そんな声が聞こえたかと思うと、大先輩が言う。



「今まで誰が移動になったって泣く人はいなかったよね!あれは異常だわ!」



「そりゃあんだけ別格に可愛がられてりゃ寂しいでしょーよ。
今まであんな一部だけ可愛がる上司だっていなかったじゃないよぉ!」




とても複雑な心境だった。




さっきまであれだけ泣いてた彼女たちが今度は笑いながら織田さんと部屋に入ってきた。



「まだ最終日まで3日間あるので挨拶は最後にしてもらいますが、織田の移動が決まりました。
急ではありますが…」


前嶋が送別会の話をし始めた。




この日のランチは、朝の話題で持ちきりだった。
みんな面白くない様子。

「ねぇ…
織田さんの送別会、みんな出ないって言うのはどう?
いい加減、分からせないとダメよ。
どれだけ悪影響与えてるのかって」




え…
送別会…出ない?
彼女たちが気に入らないのは分かるけど…



No.97 14/07/17 02:21
匿名0 ( ♀ )

>> 96



木村さんは?
もし…もしも好きだったら…


出る…よね?



「木村さん、出ないんですか?」




「あたし?
もちろん出ないよ!
あんなの見たら参加する気も失せる。
予想つくじゃん!
つまんない送別会になるよ、間違えなく」



…え?
出ない?
………そんな。最後なのに。



「吉野さんも?」



「出なーい!欠席 (¯―¯٥)」




織田さん最後なのに…。




「凛ちゃんは行くのぉ? (๑°o°๑)」




吉野さんに聞かれた。

「行こうと思ってるけど。
でも…みんな出なくて彼女たちの中に私1人ポツンとならヤダな…
…でも、少なからず、お世話になった人だし行くつもり…」



すると吉野さんが、
「偉いね!凛ちゃんは!
あんなに冷たくされてたのに!
普通なら大嫌いでしょーよ。
あいつらにも意地悪されてんのに?行くの?」




「だって…嫌いなのと送別会は別じゃない?」




黙って聞いてた沙織が
「あたしも行くよ。
だって、一応、上司じゃん!」




よかった…。
沙織がいくと聞いてホッとした。



こんな会話をずっとしていたら
ふと気になった。



もしも織田さんが
本当に私達の関係を悟られない為に、彼女たちとあえて仲良くしていたんだとしたら…


ごめんね。
織田さんの送別会にみんなが出ないと言い張るのは少なからず私にも責任があるね…。



関係を知られない為にしてきた事が裏目に出る。



ランチタイムが終わり仕事に戻ると送別会の回覧が回っていた。
まだ、出席の欄には彼女たちの名前しかなかった。


No.98 14/07/21 02:52
匿名0 ( ♀ )

>> 97



付き合い始めた頃、
『信頼出来る上司』で、人気者だった織田さん。



今、彼女たち以外に
彼を良く言う人は少ない。




みんな仕事面では1番尊敬し、信頼してる。


ただ…
以前の織田さんに戻って欲しかったんだと思う。
1人1人に気を配り、ちゃんと部下の立場になって色々考えてくれる‥間違ってる事は自分を犠牲にしてでも上司に反論し、みんなの為に動いてくれた。



部下の対立にも間に入って、両方の意見を聞いた上で解決策を色々考え、実行するような人だった。



みんな何だかんだ言っても、織田さんの事が嫌いなわけじゃない。
けど、考え方が彼女たち寄りになりすぎた織田さんや前嶋が憎たらしいだけ。




私にはそんな気がした。
前嶋が来てから、織田さんは変わった。




私たちに喧嘩が多くなったのも、彼女たちと必要以上に仲良しになったのもそれから。




「織田さんが居なくなれば多少変わるんじゃない?
今のこの状況も…」




そんな会話がこの日から溢れかえっていた。


No.99 14/07/21 07:48
匿名0 ( ♀ )

>> 98



回覧板の参加者が増えていかない。



どうしようかなぁ…と帰る前、一服に行く。
私の後ろ姿を見たのか、珍しく織田さんが1人で来た。


喫煙所には2人きり。



「号泣してたね…」




「してたねぇ…
あっそ‥ (¬_¬ )
って顔をされるよりは…まぁ嬉しいよね」



と、苦笑いをする織田さん。




嬉しい…だろうね。
涙に弱いもんね…。




「でも…凛は嬉しいでしょ?
心配が減るだろうし!」




何もわかっちゃいない。



「複雑だよ。
毎日見れてた顔が見れなくなる。
逢えなくてもココに来れば顔は見れたのに。
もう毎日顔が見れなくなる。
寂しくない訳ないじゃん」




「そっか…」



少し寂しい顔をしたね。




「…送別会が不安だな…」




私はそう言い残し、喫煙所を出た。
どーせ、もうすぐ彼女たちが来るんでしょ、ココに。




『嬉しい』



この言葉がやけに悔しかった。




喫煙所を出てエレベーターを待っていると彼女たちのデカい声が聞こえる。
やっぱり来た…ね。



もう行動がすぐ分かるようになった。




私は階段で下りた。
その時ラインを送る。



「ホントに泣きたいのは私なんだから(T_T)
どんだけ我慢してるか…」




すると返事はすぐ来た。


「わかってる(;_;)」




あら?
彼女たちがいたらラインなんて見ないはずなのに。



立ち止まってラインを打っていた私。
ふと見ると私のちょっと後ろに織田さんは立っていた。



切なそうに私を見てる。


「凛、今日逢おう!」



「え?大丈夫なの?」




「逢いたくてたまらん
凛に触れたくてたまんない」



私に断る理由などない。
ずーっとこの言葉を待っていたんだから。



No.100 14/07/23 00:30
匿名0 ( ♀ )

>> 99


「織田さんまだアレ終わってないでしょ?
少しでも進めてからでいーよ!
もう時間ないんだから」




「あ…アレ、後任者に任せろ!って前嶋さんに言われたんだ。
せっかくここまでやったのにさぁ…
でも何とか完成形までは出来たから。
凛も色々付き合ってくれてありがとな!」



「おっ!
いつの間にかそんなに進んでたの? ヾ(・・;)
すごいじゃん♪
正直、厳しいんじゃ?って思ってた」



「凛にも毎晩あんなに遅くまで付き合わせたからね‥頑張ったよ!」




「おめでとう♪」



こんな会話をメールでした後、いつもより少し早めの合流で逢えた。




一足先の
2人だけの送別会…ってとこかな。




ちょっと久しぶりすぎて
お互いに恥ずかしい感じがしてた。




「ねぇ…織田さん。
お願いがあるんだけど」



「なんだね?
送別会、浮気禁止令かい?
なぁーんにも心配いらないよ(^_^)v」




「それも!だけど…
もう1つ。
織田さんが使ってた物!
何かちょーだい。
離れても頑張れるように織田さんが使ってたものが何か欲しいの」




「おー!
じゃ、コレ∑(◕ฺˇ∀ˇ◕ฺ)」




差し出された物はパンツ…



まったく (-"-;)





「何がいいか考えとくよ!」




「約束だよ♪」




送別会は不安でいっぱいだけど
織田さんの最後だから…
織田さんが悔いのないように楽しんで。
でも、私との最小限の約束は破らないでね。



最後くらい…
私の監視を気にせず織田さんの思うように…
と伝えた。




でも内心、とにかく不安で仕方なかった。


  • << 101 織田さんの最終日と送別会は運悪く金曜日だった。 次の日が休みともなれば 2次会どころか朝までの可能性もある。 よりによって木村さんも吉野さんも結局、欠席。 私の周りは皆、1次会で帰るだろう。 最後まで家で妄想と不安との戦いか……。 彼女たちもそうだけど 織田さんは酔うと妙に女性との距離が近かったり私にはダメと言うくせに結構、身体の接触が多くなる。 私が1番嫌なところ。 触るのも触られるのも嫌。 「酔っ払ってた」は私からすれば、ただの言い訳。 だって他の男性たちはしないもん…。 結局、送別会には本当に彼女たちが気に入らない人以外は参加になった。 よかった…人数が増えて。 私はもちろん沙織の隣りに座る。 沙織と座る時はいつも奥の端に座る。 私の反対側の隣りには吉野さん、木村さんと仲良しの飯田さんが座った。 織田さんの席はもちろん、既に用意されている。 彼女たちがいるテーブルに…。 そんなのみんな予想していること。 私なら… 付き合いの長い先輩方のテーブルに行かせるのにな…なんて考えていた。 そして織田さんが入って来た。 あっ!!! 私があげたYシャツにネクタイ。 前に 「これ着てくのカミサンいい顔しないんだよな」 って言ってたけど、着て来てくれたんだ(*˘︶˘*)♡✧ みんなからの誕生日プレゼント! って口実まで2人で考えて渡せたYシャツとネクタイ。 これを見た瞬間はなんだか嬉しかった。 きっと私のことを考えてコレにしてくれたんだろう。 ✧✧✧✧
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