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Everything Love─葛藤─

レス113 HIT数 11134 あ+ あ-

匿名( ♀ )
17/03/18 02:42(更新日時)




Everything Love☆
─葛藤─



違うスレにて再開させて頂きます。
今まで読んで頂いてた方々、突然の閉鎖…
申し訳ありませんでした。




■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□



何度目の年越しだろう。




大好きだったこの手を




この手の温もりを




ずっと感じていたかった。




14/03/20 03:17 追記
●Everything Love☆
─葛藤─
に続く話です。
小刻みになってしまい申し訳ありませんが
葛藤の続きから始まります。



14/03/21 02:38 追記
http://mikle.jp/viewthread/2074669/

タグ

No.2074669 14/03/20 03:07(スレ作成日時)

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No.1 14/03/21 02:44
匿名0 ( ♀ )


追記のURL
間違えました(>_<)


葛藤はコチラです↓↓↓↓↓
http://mikle.jp/viewthread/1975394



No.2 14/03/21 02:49
匿名0 ( ♀ )


Everything Love☆は
コチラです↓↓↓↓↓
http://mikle.jp/viewthread/1886962/r100/


No.3 14/03/21 03:51
匿名0 ( ♀ )





よりによって、この日は織田さんに迎えに来てもらうのではなく いつもとは違う場所で待ち合わせをした。




そこには昼間の一件など何事もなかったかの様にニッコリ笑う織田さんが待っていた。



せっかく私と逢う時間を作ってくれたんだから今日は笑って笑顔でいなきゃ!
そう自分に言い聞かせ私も微笑み返す。



年末最後の金曜日。
中に入るとパネルは真っ黒。
「あ…織田さん、満室だ」




「ほんとだ…」





どうするんだろう…。
織田さんがやや困った顔でフロントに声を掛ける。
「どのくらいで空きますか?」





「お待ち頂いている方が3組いらっしゃるので時間はちょっと分かりませんが………」




会社の人間はこの駅を使う人も多い。
普段なら、このくらいの時間帯はほぼみんな帰った後だけど、今日は年末。
忘年会や仕事納めでまだ駅周辺には会社の人間がいる可能性も高い。




こんな時、織田さんが考えてる事はすぐに読み取れる。




「移動する?」




こんな所で待ってるのは危険!ハラハラする!そう思ってるに違いない。




「だな…移動するか…!」




やはり。




次の思考回路も予測がつく。
移動ともなれば、一緒に歩いてる所でも見られたらマズい。
ここはひとまず別々に移動するのが無難だな。




「別々に向かった方がいいかな?
それともタクシー拾う?」




「タクシー乗り場辺りに誰かいたらマズいよな」




しばらく考えて
「別々に移動して向こうで待ち合わせしようか!」




やっぱり…ね…。
言うと思った。




この考えが正解で当たり前の事だ、なんて分かってはいるけど。
あまりにも私といる所を見られたくないって言うのがなんとなく切なくなった。
そんなにも私と付き合っている事に後ろめたさがあるんだと感じ取れると、立場や状況を理解出来ていても多少ショックを感じる。





「じゃあ、あの辺で待ってて!
俺は電車で向かうから凛タクシーでおいで!」





「うん」
私の顔には笑顔がなかったんだろう。
織田さんの表情が一瞬変わったのが分かった。

No.4 14/03/21 04:14
匿名0 ( ♀ )

>> 3



タクシーに乗るとラインが鳴る。
「凛…様子が変だぞ。
なんか喧嘩しそうな予感…
本当に逢って大丈夫?止めるか?」




ラインだから私が読んだ事は織田さんにも分かる。
そのまま無視しようかとも思ったけど
「逢いたい」と返事した。




「本当に大丈夫?」




「うん」
笑顔の絵文字をつけた。




この時はまだ織田さんの不安に気づけなかった。
ただ、私がいつもと違うテンションな事に心配した上での「喧嘩しそうな予感」だと思っていた。




タクシーの中でも気分はやや落ちていた。
あんなに逢いたかったクセにどこか素直に喜べないような。




待ち合わせ場所に近づいた時、歩いてる織田さんを通り越した。
携帯を片手に下向き加減で歩いてる。




気持ち…切り替えなきゃ!
せっかく逢えたのに、私がこんなじゃダメだよね…。




タクシーを降りると、ちょうど織田さんが向こうから歩いてきた。
今度は私がニッコリ笑う。
だけど今度は織田さんが不安げな顔をしている。




「タイミングバッチリだったね」
そう言うと、織田さんが私を覗き込む。




そっと手を繋いだ。
織田さんの表情が少し和らぐ。
「なんか買う?」




得意気な顔で鞄を指差す。
もう買ってあるよ!って。
待ち合わせしたこの場所はあまり人気のないスポットなのか満室になる事がほとんどない穴場。




やっと2人きりになれた。
織田さんが織田さんらしくなる空間。
誰の目も気にせずホッとする瞬間。



No.5 14/03/21 05:13
匿名0 ( ♀ )

>> 4


2人きりになると、私の気持ちも少し安定してきていた。
やっぱり逢えると素直に嬉しい。
話したかった事が顔を見て話せる。
相手の表情も分かる。
声のトーンも。




同じ職場と言うのは共通する話題も多い。
自然な流れで最近、問題児なAさんとBさんの話題になった。




私に落ち着きが戻った事で織田さんもホッとしたんだろう。
いつもの織田さんらしくなっていた。




「また言い合いしてたね…AさんとCさん」
私が言う。
この頃の職場は人間関係がかなり悪化してきていた。
時々、言い争いも起こる始末。
端から見ればお互い様な小さな小さな出来事が積もり積もって言い合いになったりする。
昨日もそんな場面があったばかり。




AさんとBさんはかなり自己中的で会社行事にでさえ顔を出した事もない。
これがベテランならまだしも新人なのに出ないから問題化されていた。
全員参加な行事でさえ出ない。






「最近Aさん調子に乗ってるよな…。
あれだけ会社行事に出ない2人がさ、昨日は来たんだよ!
来て言いたい事だけ言いまくって気分が良くなったのかカラオケにまで来たんだよ!」




ん?
昨日?




「え?昨日って?
昨日って…女もいたの?」





「え?…あれ?…そう。…あれ?
知らなかったっけ?」





動揺を隠せない織田さん。
と、同時に、昨日のあのベロンベロンの織田さんが頭に浮かぶ。
二日酔いの朝の顔。
昨日のテンションの高かったベロンベロンの姿。
女もいた、なんて一言も聞いてない。




いいんだよ、女がいたって。
別に2人きりで逢ってたわけじゃないんだから。
でもね…
私がこだわるのはそこじゃないんだ。




忙しい忙しいって…メールもほとんど出来ず、逢えないのもどれだけ気持ちを抑えて我慢している事か…織田さんには分かる?伝わる?





寂しい気持ちも頑張ってる織田さんを応援して見守って、ただ抑えて我慢して…
いつ逢えるかな…いつ、ゆっくりメール出来るかな、って…ひたすら待ち続けてる私の気持ち。




だから「喧嘩しそうな予感」だったんだね。
男と飲んでると信じて疑いもせず、連絡が来るのをただただ待っていたあの時間。
逢えなくて寂しくても
メール出来ずに寂しくても
『今は我慢の時期』だと思って逢いたいとも言えずにいた。




私を通り越して例の連中とあんなに酔う程に楽しく飲んでいたのかと思うと、
私のスイッチはオンになる。


No.6 14/03/24 02:18
匿名0 ( ♀ )

>> 5



今日は絶対喋らない。
だんまりを決め込んだ。
織田さんに背を向けて。



そーっと、織田さんが後ろから抱きしめる。
段々、ぎゅっと抱きしめてくる。



でも…
また泣き虫な私は熱い物がこみ上げてくる。
なんの涙だろう。




悔しいのかな…?…私…。
寂しいのかな…?…私…。




よく分からない涙を隠すために黙ったままシャワーに向かった。
シャワーのお湯に混ざりながら私の熱い物もポタポタと雫を落とす。





考えない様にしようと思えば思う程、いつもの二次会が頭によぎって
「あんなに酔っ払らう位、楽しい場だったんだね」と頭の中に映像が浮かんでくる。




織田さんにしてみれば、「最後は必ず連絡する」約束は果たしてるのに…って思うよね。
浮気したワケでもあるまいし!ってね。
今日こうして逢ってるじゃないか!ってね。
昨日言ったって結果は同じじゃないか!ってね。




今年最後の今日。
こんな1日になるなんて。




私にしてはいつまでも出てこないからか、織田さんが覗きに来た。
顔さえ向ける気にもなれなかった。
織田さんはしばらく眺め、諦めたのかドアを閉めた。




織田さんの事だから、もう寝ただろうとシャワーから出ると同じ様に背を向けた織田さんがソファーに座っていた。




「ね?
だから言ったでしょ?
喧嘩しそうな予感、って」



織田さんがボソッと呟く。
なんとなく開き直った台詞に感じた私は
「そうだね…私はいつも何も知らない。
彼女なのに他の人から聞いて初めて知ることばっかり」



ほらね…。
話し出したら止まらなくなるんだ、私。
可愛くなくなるんだ、私。
だっていつもそう。
私はいつだって後回し。


No.7 14/03/24 02:44
匿名0 ( ♀ )

>> 6


「アラーム何時にかける?
何時に起きればいいの?」




「俺、明日までだから いつも通り」




「え?
明日も仕事?」




「そう」




ほらね…知らない事ばっかりなんだ。
そのくらい会話がないんだよ?
気づいてる?




「じゃあ、早く寝ないと…」




私が先にベットに入る。
織田さんは普段から秒殺だけど、私はなかなか寝つけない。
頭の中に嫌な事ばかりがグルグルグルグル回転する。



こういう時はいつも思うんだ。
そろそろ織田さんを楽にしてあげなきゃ…と。
「好き」って想いだけじゃ、どーにもならない時もある。
私がこんなに縛りつけてるのは織田さんにとっては窮屈なんだ。




頭ではわかってる。
そもそも私達は間違ってるんだ、と。
でもね…
どうしても好きなの。
だから繰り返すんだ…同じ葛藤を…。




そんな事をボヤーッと考えていたら、ふと気がついた。
いつもの寝息、いびきがしない。




起きてる?




なんだか負けた気がして悔しかったけど、織田さんの方に向いた。



いつもなら速攻寝ているはずの織田さんが黙ったまま私を見ている。




「………凛…」




言葉が見つからない。




「起きてたの?」



悲しい顔で「うん」と頷く。




「織田さんは私といて幸せ?
窮屈なはずだよ…」




「窮屈なんかじゃない」




普段から口数の少ない織田さんは、それ以上何も言わずそーっと私を抱き寄せた。




そして、私を抱いたあと
嘘かと思う速さで速攻……………寝た。


No.8 14/03/25 02:05
匿名0 ( ♀ )

>> 7

私ってなんなんだろう。
あまり言葉にしたくはないけど、やっぱり体だけ?



会話がなくて寂しいのは私だけ?



私ね…
知ってるよ。



織田さんは勘違いしてるの。
私の気持ちの充電がもたないのは、抱けば満タンになると思ってる。
私が満たされないのはエッチに満足してないからだと思ってる。




逢えなくて寂しい時
「ぎゅっとしたい」
「一緒に寝たい」
ってよく言うよね。



確かに逢えば抱かれたい。
好きな人に抱かれたい。
だけど、ただ抱かれたって満たされない物もある。



幸せの絶頂で自信に満ち溢れている時ならそれでもいい。




だけどね…
大事なのは体の繋がりじゃなくて
気持ちの繋がりなんじゃないかな…?




言葉なんかなくても俺を信じろ!
織田さんはそう言うかもしれない。
けど…
どうしても不安で押しつぶされそうな時は「言葉」が欲しい時もある。




今何を感じて…何を思い…何が楽しくて、何が辛いか。
忙しくてメールでも会話のキャッチボールが出来ない。
気づけば私発信のメールばっかり。




なんだか片思いしてるような感覚に陥る。




届かない想い
伝わらない想いにまた涙がポロポロ出始める。
一度寝たらなかなか起きない人。
隣りでいびきをかいて寝ているのをいい事に今まで抑えつけていたものが一気に爆発したかの様に
流れ出た。



いい歳した女が…声を出して泣いた。





No.9 14/03/25 02:28
匿名0 ( ♀ )

>> 8




静かな部屋に響く寝息。
時計を見れば真夜中の3時が過ぎていた。
いつの間にか私も寝たんだろう。
鳴り続けるアラームで目が覚める。



あ…
織田さん起こさなきゃ。




「時間だよ!起きて!」




1度や2度じゃ起きない。
根気よく起こさないと起きてくれない。
5分置きに声をかけ、何度目だろう。
やっと起きた。




「やべー…急がなきゃな…」




朝も全く余裕のない織田さん。
軽くシャワーを浴びスーツに着替える。



私は泣いた後だけに体に力が入らず、化粧をする気にもなれなかった。




「凛?出るよ?」




「うん。
行ってらっしゃい!頑張ってね♪」



笑顔で言えた。




心配そうに
「凛は出ないの?」
と織田さんが問い掛ける。




「支度したら帰るから大丈夫だョ!
心配しなくてもちゃんと帰るから。
行ってらっしゃい!
早く行かないと遅刻するよ」




この時、織田さんは何を感じたの?
何がそうさせたの?




思いもしない織田さんの行動に私の思考能力はただ低下した。




どう見ても遅刻ギリギリの時間なのに。



No.10 14/03/29 12:14
匿名0 ( ♀ )

>> 9



スーツを着て靴まで履いた織田さんが慌てた様に靴を脱ぎ、こっちに向かってくる。




あ…
「行ってきます」のキスかな…。




私の顔をジッと見た後、キスされた。
そして、一瞬何かを考える顔をした後 またキスをする。二度目は激しく。




「行きな。
時間ないよ!」



そう言うと、慌ててベルトを外しズボンを脱いで私をベットに押し倒す。




この時、織田さんは何を思っていたの?
どーせ最後になるなら「もう1回だけヤリたい」?
「こいつとは、これで終わりだ」?




そんな事がよぎる程、余裕のない顔つきだった。
初めて見る顔つき…怖ささえ感じる。





そこに「愛」なんてモノは感じられなかった。




私をベットに押し倒すと、ちょっと強引かと思うかの様にキスをして私の向きを変えさせる。




自分の足で私の足を開かせ
まだ濡れてもいない私に
自分のアレを擦り付け………入れた。




少し大きめなアレは
興奮度が高く激しく突かれると痛い時がある。
まさに、それだった。




興奮しているからなのか
どこかヤケクソのように
荒い息づかいで何度も何度も突いた。




私の声が漏れる。
でも気持ちいいからじゃない。
突かれる勢いがあまりにも力強くて。




荒い息づかいは更に荒さを増し…激しく激しく突き続ける。
………そして………
果てた。





汗だくな織田さんは、その余韻を感じる間もなく 自分で脱ぎ捨てたズボンを履き直す。




そして時計を見て
「ヤバいな…時間…」
と、ボソッと言ったね。




そして携帯で何かをしていた。
おそらく
「急な腹痛で若干遅れます」
とでも送ったんだろう。




元々、お腹の弱い織田さんがたまに使う手。
誰も疑わない、たまにある言い訳。




No.11 14/03/29 13:24
匿名0 ( ♀ )

>> 10


「凛。
ちゃんと鍵かけてね!
あと出る時 必ず連絡入れて」
気をつけて帰ってね」




この言葉を言った時は、普段の優しい織田さんに戻っていた。
やや心配そうに言ってたね…。




ドアが閉まった瞬間に
涙が流れた。
ほんとによく泣く女。



まるで犯された様な、なんとも言えない脱力感があった。
しばらく何も出来ず、ただソファーに座りボケーッとしていた。



ふと思い出す。
今朝のあの織田さん。
初めてこういう関係になった あの日に似てる。
勢いに任せてキスされた、あの日。
もう今更止められないと言わんばかりの勢い。



初めてのあの日から
6年。
私たちの様な関係に本当の意味での「愛」なんてない事にどこか気づいていながらも信じたくなかったんだろう。


認めたくなかったんだろう。
どこかで「愛されてる」と信じていたかったんだろう。
大事にされてると、思い込みたかったんだろう。



今までの全てが私の錯覚だったのかと混乱した。



私の中の1人は冷静で
織田さんが大事にしているのは家庭や自分で
私は織田さんの性欲を満たすだけの女。
放っといても離れていかない都合のいい女。



わかってる。
でも、もう1人の私が しがみついているんだ。
そんな事に気づきながらも
自分の「好き」だけを優先して
傷つき苦しんでいる人の事など、都合よく忘れ
ただ好きだから一緒にいたいと。


「好き」と言われれば
私はまだ愛されてると自分に思い込ませ
抱かれれば、まだ必要とされてると思い込む。
バカな女だと、冷静な自分で判断出来るはずなのに…


それでも離れられないのは何故だろう。
こんな思いを何度もしながら、それでも一緒にいたいのは何故?



好きな人を失ったら辛い。寂しい。
それだけを恐れ、どこかで言い訳を探し、現実から目を背け逃げている。


本当は愛されてなんていない自分に気づきながら
離れたくない気持ちだけを最優先にしてるだけ。
愛されてると思いたいだけ。


ピンコン♪




「到着!
ギリギリセーフ!
凛も早めに出てね。
鍵ちゃんとかけたか?」

No.12 14/03/29 13:53
匿名0 ( ♀ )

>> 11




「うん…鍵かけたよ。
もう少ししたらシャワー浴びて支度して出る。
頑張ってね!」



「了解。
出る時と着いた時 必ず連絡して!」




「はいヽ(●´∀`●)」




しばらく何も手に着かず
チェックアウトが迫るとようやく重い体を起こし
支度をしてホテルを出る。




なんとなく歩いて帰りたい気分だった。
「出るよ。
頑張ってる?」




織田さんは今年最後の仕事。
どんな事を考え、過ごしていたんだろう。
「連絡して」と言われると、どこかいつも安心した。
私からメールしていいんだ!?って。




鳴らない通知音をただ待つ時間はいつも、メールしちゃいけないと思っているから
「連絡して」と言われるとただホッとしてた。




少し商店街をブラブラと歩きながら家に着く。




「無事、着いたからね♪」




「はいよー!
疲れただろうから 少しゆっくりしてなo(^-^)o」




「うん」




そこからメールは途切れた。
いつもと何も変わらない流れ。
次、メールが来るのは夕方ないし夜だろう。




今年最後の帰り道のメール。
そして、今日が終われば逢えない、顔が見れない、メール出来ない長い長い10連休に入る。
こんな時はいつもラブラブなメールで
「また○○日ね♪」で閉めていたのに…。



そのメールは予想よりやや早めに来た。



No.13 14/03/30 15:25
匿名0 ( ♀ )

>> 12


「前嶋さんと玉木屋に寄り道してる。
解散したら連絡するね!」




この時までは普通だった。
いつもと変わらないメール。




それから何時間か後に
「解散した!」

と、メールが来た。
すっかり飲んでると思い込んだ私には、予想より早いメールだった。



私の中で
「昨日1日」をやり直したい気持ちが大きかった。
だから…
ほんのちょっぴりの期待を込めて



「そのまま帰るよね?」
と、返信した。



こんな時、素直に言えないのが私。
「少しだけ逢いたい」
って素直に言えたら…。



思わぬ返信に戸惑った。



「今日逢ったら凛は喜ぶのか?」



どういう意味だろう…。




「うん…少しだけでも逢いたかったな…」



私にしては素直に言ったはずなのに…。
もう一度聞かれた。



「今戻ったら喜ぶ?」



喜ぶ?………って…。
当たり前じゃない。
逢えるなら、ほんの少しでも逢いたいに決まってるじゃない。


「今どこにいるの?」



「もう○○駅…」



○○駅って…もう半分以上、帰っちゃってるんじゃん…。
私に「解散した!」って送ってきたのは電車に乗ってから随分経ってたんだね。



「もう○○駅なのか…
なら逢いたいけど我慢する」



きっと織田さんは…
電車に乗ってから しばらく考えてメールをくれたんだろう。



どう切り出そうか、なんて言おうか、
私の反応を予測しながら。
織田さんの中で1つの決断を、覚悟を決めていたんだろう。



No.14 14/03/30 19:36
匿名0 ( ♀ )

>> 13
今日のメールは、返信がいつもより早く感じた。
だいたい○○駅からの場合、途中で寝ちゃう事も多く 5~6回 多くて10数回のやり取りで着く。


けど…
このメールだけは、返信に少し間が空いた。



「今回のタイミングは俺もくじけそう。
忙しくても逢うタイミング作っても喜ばないし
寝たら泣くし…
原因は分かるが、ちょっと辛い」


忙しくてもタイミング作っても…


織田さんは何故私が泣いたか分かってるんだろうか?



「逢えた事は嬉しかったよ!
泣いた理由は…」


なんとなく危機を感じた。
本音を言えば、次に返ってくる言葉は予想がつく。
でも…
わかって欲しい私の願望があったのも事実。
織田さんが何故わかってくれないんだ?って思うのと同じように。


「何故泣いた?」


正直に答えよう。
分かり合えないら…
一緒にいたって繰り返すだけだから…。


昼間の一件の事から
逢えない、メールも来ない、話せない、
それでもずっと織田さんを陰ながら応援してた。
今は「逢いたい」って言っちゃいけない時期なんだと思うから我慢して見守ってた。


織田さんは私が会社で話し掛けるとすごく嫌な迷惑そうな顔をする。
でも、違う子とはすごく楽しそうに話してる。
私が知らなくて他の人から知らされる織田さんの近況だっていっぱいある。


彼女なのに
他の人から彼氏の事情、近況を聞かされて知るなんて寂しい。
それって私には話せない事もみんなには話してるって事だよね。私が知らないどこかで。
その位、会話がないって事でしょ?私達。


やっと逢えて嬉しい時に
私が逢いたいの我慢して待ってる間に先に他の女と楽しく飲んでたの聞かされて喜ぶと思う?


忙しくて疲れてるのはわかる。
でも、何の会話もなく する事だけして寝かれたら…変な事 考えるのおかしいかな?」



長いメールになった。
でも寝ずに待っててくれた。


「俺が悪いんだよ。
わかる。
でも本当の意味で俺の立場も理解して欲しい。
…無理か?」


この言葉を…
言われるのは2回目だった。







No.15 14/04/04 05:52
匿名0 ( ♀ )

>> 14

俺の立場…
既婚者であって上司。
決してバレてはいけない関係。
そんなの分かってる。



「それは分かってるつもりだよ
でもね…
バレないためなら相手を傷つけても
『仕方ない』『耐えろ』と言うのには限界がある。
私がどれだけ辛くて悔しい思いをしても
『我慢してくれ』『耐えろ』『しょーがねーだろ』って言うのは勝手な考えなんじゃない?
私が辛いのをわかってる上で織田さんも考えを少しでも変えられないなら続けられないと思う。


好きだから耐えてきた。
悔しい思いをどれだけしても。
でも好きな女が辛いと言う事を分かってる上で
あえてしているなら我慢にも限界がある」




終わる事が怖くて
自分の考えを、気持ちを、今までは極力、抑えてきた。



けど…
バレたくないから私を傷つけてでも
自分を守るためなら私が嫌がる事も承知の上でする。
私はそれだけの価値しかないんだと
改めて思い知った。



「仕事が減る事はこの先も見込めないし
今の環境は差ほど改善されるわけでもない。
もう『それでも耐えてくれるか?』って自信も減ってきた」



仕事?
そんな事が言いたいわけじゃないんだよ。
ただ、忙しいって言うなら頑張れる。
今までだって見守って支えてきたつもり。
返信を打っている途中で再びラインがくる。




「どうしたいかは決めてくれ!
俺が決めるほど役目を全う出来ていない」



別れるかは私が決めろ!と言う事か…。




この時 思ったんだ。
「はい、じゃあ別れましょう」
と私が言えば、簡単に別れられる、って事なんだね…織田さんは。


次々にラインが来る。
普段なら言葉を選び選んで返信の遅い織田さんが次々と送ってくる。


「俺は、仕事とプライベートを両立する力量がないのかもしれない。
結果がそう出てる」



この言葉を聞いたら…
私も決断の時なんだ、と思った。
これで答えがはっきりしたら、私は不要だと判断しよう。




「織田さんはどうしたい?
私が決めるとしても、その返事がまず聞きたい」



No.16 14/04/04 06:25
匿名0 ( ♀ )

>> 15


「どんなに辛くても考えるから
好きなんだな、と自分でも思う…」



「それは今も変わらず?」



「当たり前だ」




今まで口にした事がなかった事を伝えた。
これを言ったら余計に意識して、その人を見られるのが嫌だったからあえて黙ってきた事。




「ねぇ…
織田さんは知ってる?
○○さんと織田さんは、デキてるって噂が広がってる事。
は?って思うかもしれないけど
私以外にも織田さんとお気に入りメンバーの仲を疑ってる人はたくさんいる。


私だけの勝手な妄想なんかじゃないんだよ
織田さんは私が他の男にボディタッチする事をひどく嫌うよね?
無意識かもしれないけど、あのメンバーと織田さん しょっちゅうしてるんだよ。
あれだけの人達が関係を怪しむくらい別格に仲良しに見えてるんだよ?周りから。


みんなそんな話を毎日してる。
それでも信じてる。私はね。
だから余計に我慢してる時にあんなに酔ってハイテンションだった織田さんが悔しかった」




どんなに信じてたって
実際に見た光景、耳にした会話をリアルに聞いたら…信じていても挫折しそうな位 ショックだったりする。


そんな時、色々話したくても
織田さんは忙しくて会話も出来ないじゃない?
悶々とした気持ちをずっと引きずって
それでも信じてきたの。



いきなり「話すな!」とかは言わないけど
相手を思いやるとか
相手の気持ちを考える、とか
そういう気持ちがないなら私も耐えていける自信は正直…ない。
この10連休、お互いに本当に必要な相手なのか考える為には いい期間なのかもしれないね。




随分、長いメールになった。
とっくに織田さんは最寄り駅に到着していた。
話す時間がないんだからメールで言うしかないんだ…私たちは。



「もう着いてるでしょ?
帰りな(﹡ˆ︶ˆ﹡)♬*」






No.17 14/04/04 13:24
匿名0 ( ♀ )

>> 16


こんな事を言ったって
変えられない事くらいわかってた。
相手がいての…話だもの。
ここまで来たら、手遅れなんだ。
ここ最近の職場は大きく2つに分裂していた。
会社の飲み会にも誰も行かなくなっていた。



みんな面白くないから。
男性が例のメンバーだけを可愛がり、上司部下の関係を超え友達のようになっているから。
そんなのは外でやれ!
仕事は仕事で持ち込むんじゃねー!って。




今までの中で1番最悪な現状だと思う。
私だけの嫉妬ではなく…
大問題なんだよ、って気づいて欲しかった。
途中、数名新人が入っても みんな現状が見えてくると辞める。
理由は、大変だからなんかじゃない。
この雰囲気に耐えられないからだよ。



仲がいいメンバーがいたっていいと思う。
それを仕事に
誰が見ても分かるように持ち込むからダメなんだよ。
面談がいい例だった。
今までの面談は「早く終わらせたい」思いで
長く語る人なんかいなかったじゃない?
それが今回は短い人でも30分は話してたよね?
みんな言いたい事が山済みってこと。




もともと私が入社した7年前は
織田さんは人気者だった。
誰からも好かれる部下が親しみやすい、相談しやすい、信頼出来る上司だった。



どこから歯車が狂った?
私はいつでも、そんな織田さんを誇りに思ってた。




この先の私達はどうなるんだろう…。

No.18 14/04/04 13:49
匿名0 ( ♀ )

>> 17

いつもなら
「また明日ね♪」
で、1日が終わるメール。



10日後には…
もうただの上司と部下に戻るかもしれない。
これでよかったの?…凛。



以前、織田さんが言った言葉を思い出していた。




「なにが悲しくて
人に左右されなきゃならないんだ!」




実際に、私は逃げようとしていた。
辛さから。
織田さんを信じる気持ちに自信が持てなくなっていた。




しばらくメールが来なかったから
帰ったんだな…と思った。



忘れてたよ。
織田さんは黙っちゃう事を。
すぐに言葉を返す人じゃないんだった…。




「ごめん」
と言う意味のスタンプが送信されて来た。




この「ごめん」はどんな意味なんだろう。




「答え…かな?」



「いや…違う」



言葉の少ない織田さんに、これ以上は言わなかった。言えなかった。
言ったら酷く傷つける気がした。




泣いてるブタのスタンプを返した。
私が出逢った頃より太ったのを理由に
いつもブタの絵文字を使ってきた。



しばらくスタンプだけのやり取りが続いた。
こんな事を続けていても意味がないと思い…切り出した。




「織田さんの気持ちが固まったら教えて」




長いような短いような6年間。
終止符は、こんな形で後悔しないんだろうか。
次に来る織田さんの返信が怖くて怖くて仕方なかった。



でもね…
私はそれを受け止めるしかないと
覚悟を決めた瞬間でもあったんだ。


No.19 14/04/05 23:47
匿名0 ( ♀ )

>> 18


今年最後のメール。
この先、もっと辛い日々が待ち受けているとも知らずに…


本当に今年、これが最後の会話になるんだね。




この…
返信を待つ時間が
たまらなく不安で
今、隣りにいない事が
更に私を不安にさせた。



ずっと開きっぱなしにしていたラインを一旦閉じた。
通知音と同時にバクバク鳴り続ける心臓の音。
大きく深呼吸をして
ラインを開く。



織田さんはどんな答えを出したんだろう。
この瞬間、喧嘩の原因を思い出し
『こんな些細なつまらない喧嘩』で
あっけなく6年間が終わってしまうかもしれない危機感にほんの少し…後悔し始めた私がいた。

  


織田さんからの返信には
「凛がどうしたいのかがわからない。
これ以上、耐えてもらえるのか。
自信が溢れ出てこない」




と言った内容が書かれていた。




「別れよう」
「おしまいにしよう」



そう言われるんじゃないか…と言った不安に
ほんのちょっぴり、消えそうで消えなかった小さな光が灯った気がした。



素直になろう。
織田さんの為、とか
私がいない方が、とか
そんな言葉じゃなく、私の思いのままを伝えよう。




「私は…
織田さんが私を必要としてくれる限り
好きだと思ってくれてる限り………
別れません!」



返信はすぐに来た。
「ありがとう。
なら、俺も頑張る!
今まで以上にもっと頑張る!」





雨続きだった空にほんの少し明るい太陽が顔を出した瞬間だった。



No.20 14/04/12 12:41
匿名0 ( ♀ )

>> 19



連休初日。
この仕事に就くまで長い連休なんて無縁の世界で生きてきた。
ボーナスだって蓮が生まれる前の会社でもらったっきり縁がなかった。
休みなく働いた若い時に比べて
今は安定した職場。


人間関係に問題があっても
辞められない理由はそこにある。
この歳での再就職…
まず同じ様な条件で見つけるのは不可能だろう。



7年経てば、こんな長い連休の過ごし方にも慣れてはきたけど…やはり長いと感じる。



初日は、昨日の件もあり
なんだか何もやる気が出ない。
大掃除 買い出し 洗濯 年賀状…
いっぱいやる事があるのに。



喧嘩の後の連休は前から嫌いだった。
お互いに、「考える時間」が出来るから。
昨日は一旦、仲直りしたものの
冷静に考え直したら…「やっぱり!」…
なんて事があるかもしれない、と不安になる。



今頃…何をしてるのかな…。
休みの間は、気持ちを切り替えるだろうから
私の事など忘れるのかもしれない。



そんな事を
昨日のラインを読み返しては考えていた。


毎年、チャンスを見ながら
「あけおめ」メールはくれるけど
休み中はメールがないのが基本。



少し重い体を起こし
洗濯を始めた。


No.21 14/04/13 10:37
匿名0 ( ♀ )

>> 20



洗濯が終わり軽く掃除。
ふと目に付いた…手帳。
黒い手帳が6冊、一番最初の年だけ手帳が違ってピンク。
サイズ•形は同じ。




並んだ手帳に今までのほぼ全てが書いてある。




ピンクの手帳に手が伸びる。




出逢いから、の手帳。




この頃は…
楽しかったね。




仲良しだったよね。




『逢えた日』のハートのシール。




1ヶ月で今の倍以上、逢ってたね。




手帳の横には手帳用のシールボックスがある。
凝り性の私は、それにハマると集めたくなるクセがある。
手帳を書き始めた頃、『その日1日』がパッと見て分かりやすいように…シールで分別するために何種類かのシールを集めた。←(子供か?(笑))





そう…。
あの頃は、使う頻度が高かったから
楽しみで可愛いシールを見つければ よく買ってたよね。




今じゃもう…あまりにも使わなすぎて
シールは減らず、買い足す事もなくなった。




時の流れと共に
少しずつ…少しずつ…冷めていくものなんだろうか。



飽きてくるものなんだろうか。




もうそれほど、私を必要だとは
感じなくなったのだろうか。




随分長い時間、手帳を眺めてたら
もういい加減早く掃除を終わらせないと
夕飯の買い物にいかなきゃならない時間だった。




サッと手帳を元に戻し
掃除機をかけ、買い物へ行った。



休日には、ほとんど鳴る事のない携帯は
こんな時はいつも、ほったらかしにしてある。


No.22 14/04/13 10:49
匿名0 ( ♀ )

>> 21



買い物の途中、携帯を忘れた事に気がついた。
でもまぁ‥たいしたメールも来ないだろうからいっか!と買い物を続けた。




帰宅して買ったものを片づけ、一服しようと居間に座った時‥携帯が点滅している事に気づく。




どーせくだらないお知らせメールか何かだろ‥




あれ?
違う!
ラインだ ∑(・ω・*)




休み中はメールしない約束。
とは言え、メールしない•電話しない←これは私から!って意味で織田さんは自分の都合さえよければメールも可能なわけで。





なんだろう‥‥‥‥。
昨日の件でモヤモヤしているから
一瞬、不安がよぎる。


No.23 14/04/13 11:49
匿名0 ( ♀ )

>> 22




「凛…
浮気してないか?」





ん?
なんだ?…このメール…‥。




見れば40分前に送信されたもの。
どんな状況でラインしたのか分からないから返信に戸惑う。




40分も経ってたら…
場所も変わってるかもしれない。
タバコを買いに行く、とでも言って送ってきたメールなら…もし今、家だったらマズいよね?




マズい状況なら
返信が来ない事で既にブロックしてるかな?




内容が内容だけに
あまり返信が遅れれば
心配性の織田さんの事だから…
変に疑ったりしないか気になる。




迷ったが返信した。




「浮気なんかしないよ!
どうした?」




私の心配をよそに、返信は早く来た。




「変な夢見た(:_;)」




織田さんはたまに言う。
「変な夢」「嫌な夢」を見た…と。
そのたび夢占いの本が読みたいと思う。



私が浮気する夢って…
どんな意味があるんだろう…




「どんな夢?」




「凛が俺を横目にフッて笑って
他の男に肩を抱かれて2人でどっか行っちゃう夢。
俺は一生懸命、『行くな!』って訴えてるのに
他の奴に邪魔されて凛のとこに行けないんだ!」




前にも確か似たような夢見たって言ってたよね?




「心配しなくても家だよ」




めったにしないが、安心して欲しいと思い
写メを添付した。



「よかった(:_;)
ありがとう。
休み中も浮気は禁止だからね!」



「はい!何も心配いらないよ!」




「わかった。
じゃ、また連絡するね」




短い会話ではあったけど
メールが来た!
それだけで私の心がどれだけホッとしたことか。
素直に嬉しかった。




織田さんも昨日の件で
どこか…少し…不安でもあったのだろうか。



また連絡するね!
とは言え、今日はもうラインが来ない事くらい
わかってはいた。
織田さんは私の気持ちを確認すると
ホッとして「約束」とか大事な事を
都合よく忘れちゃう人だもんね。


No.24 14/04/13 15:27
匿名0 ( ♀ )

>> 23



夢の内容が気になる。
バカだな…私。



スマホだってパソコンだってあるじゃん!
本なんて買わなくたって。




『浮気される夢』
検索 ‥‥ポチッ!




『恋人に浮気される夢』
■相手に対して不安を抱えている。
■相手の気持ちをしっかり理解出来ていない為、不安を抱えている事を暗示している。
相手をもっと理解するようにとの警告。




『不安』………かぁ。
夢占いなんて信じてる訳ではないけど
織田さん的にはどう捉えるんだろうか。



そんな夢を見て
まぁ不安と言うか心配でメールくれたんだろうから少しは当たってるのかもしれないね。




年明け逢えたら、この結果を見せてあげようと思った。
忙しい忙しいで私の気持ちを考えてるのか…疑問もあったから。
また喧嘩になるかもしれないけど。




この日から4日間、こんなのは初めてでビックリする程 約束通り毎日メールが来た。
夜中私が起きている事を分かっているのか…
決まって夜中にメールが来た。


長い会話は出来ないけど
その気持ちが嬉しかった。


4日目のメールは昼間に来た。
写メ付きで。



こういう無神経さが織田さんらしい。
旅先からの写メだった。




家族旅行………か…。
幸せな家庭があるのに…
何故、私といるんだろう。
何故、私にこの写メを送って来たんだろう。



この理由は後に理解出来た。
休み明けに、ね。



その後、2日間メールは無く
翌日から仕事だという日に再びメールが来た。
旅先にいた初日を除いた2日間はメールがなかった、という事になる。



あ…
違った!
ちゃんと「あけおめ」メールはくれたんだ!

No.25 14/04/13 18:02
匿名0 ( ♀ )

>> 24



私の肩を抱いていた男…
それは誰でもいいとして
止めようとする織田さんを邪魔する者達。
それは誰を意味しているんだろう。




前嶋?
それとも………



彼女達?




この頃から私はちょっとした不信感を抱く。
信じる気持ちとぶつかり合う感情。
織田さんが大事なものって………?




2つの噂が飛び交うようになる。




「角田って織田さんが好きらしいね!」




「平野は前嶋の女かと思ってたけど
本命は織田さんだってね!」




どちらにしても耳をふさぎたくなるような話。
私達の関係なんて、みんな知らないから容赦なくそんな話ばかりしてくる。




女は噂話が大好きな生き物。
織田さんの話じゃなければ、正直私も興味深い話題だろう。




でも…
聞きたくない。
知りたくない。




お願いだから…
それ以上、言わないで…




年明け、織田さんは1つの大きな仕事を任され
いつもに増して、より一層忙しい日が続いた。
トータルで考えても、家に帰るのは週末位だった。



こんな時に限って
噂話は大きく大きく広がって行った。




仲良しの紗織が私のとこに来る。
「ねぇ凛ちゃん、あの人達なんでみんなして織田さんの旅行の写真、デスクに飾ってあるの?」




旅行の写真?




見るとそこには私に送ってきた写メと同じ写真が飾られていた。
私でさえ、まだ差ほど織田さんと会話もしていないと言うのに…。

No.26 14/04/14 03:17
匿名0 ( ♀ )

>> 25



そういう事か。
私に送る前に…
彼女達と何らかのやり取りをした訳ね…


で、私が知る前に彼女達が知ってたらマズいと思って慌てて私にも写メを送ってきた…って訳か。
そうだよね…
知らなかったもの。
旅行に行くなんて。


家族と旅行に行く事に対しては何の不満もない。
貴重な連休だもの。
子供達だって冬休みのパパとの思い出は大切な物。
普段、家にほとんど帰らない人なんだから。



でも…
どうしても気に入らない事だってある。



なんでいつも彼女達が優先で私が我慢しなきゃならないのか。



バレないため?



最近ね…
感じるの。



織田さんが一生懸命バレないように頑張るのは…
私との関係が壊れたくないからじゃなくて



彼女達に知られたくないから…なんじゃない?



自分を必要以上に慕ってくれる可愛い部下達。
いつでも楽しく付き合ってくれる飲み友達の彼女達。
金魚の糞みたいにいつもあなたの後をくっついて歩いてる可愛くて仕方ない彼女達。



敵に回したくない彼女達。



私と付き合ってる事が彼女達にバレたら…
自分を支持してくれる
自分の味方でいてくれる
自分の言うことを素直に聞いてくれる
可愛い部下達を敵に回すもんね。



自分の『汚点』を知られたくなんてないよね。



だから?
私が嫌だと分かっていても
「俺が角田さん辺りを構ってるのがちょうどいいんだよ」
なんて言ってたけど。



私が悔しかったり辛かったりするのを知ってても止めないのは、そういう事?



誰にも話せず1人悶々と悩むのは
自分がしてる事の罰だから仕方ない。
だけど…
織田さんを好きだから
誰にも取られたくないから
人を憎んだり、嫌ったり、彼女達に対しても自分の個人的な感情で「嫌な奴ら」と思ってしまう自分もなんだか嫌いになっていく。



自分がどんどん嫌な女になっていく。



「紗織…
バカみたいだね!
ファンクラブみたいだね」


「結婚してる人のファンクラブ作ってどーすんのさ。バッカじゃないのぉ!」


No.27 14/04/19 06:02
匿名0 ( ♀ )

>> 26
この年明け1月から3月末まで
辛い日々が続いた。
織田さんは朝から、みんなが帰宅する時間まで毎日通常の業務をこなし、みんなが帰宅した後は任された仕事に専念した。
明け方まで。


その任された仕事には期限があった為
毎日会社に泊まり込んだ。
織田さんの中の『勝負』だったんだろう。
期限は3月末。
3月に入ると、いよいよ追い込みにかかり
土日でさえ帰宅しないようになる。
31日間連続勤務。
睡眠は1日約3~4時間。


彼のこんな毎日を知る人間は私しかいない。
男の見栄なのか、織田さんはみんなの前では「全然へっちゃら!」のような態度を取る。


今…私に出来る事って…なんだろう…。
仕事を手伝ってあげたいくらいだけど それは出来ない。
ならば、何が出来る?


あからさまに表立って何かをしてあげる事は立場上出来ない。
それもまた私的には悔しい部分でもあった。
 

結局、何も出来ないから…
夜は極力私も起きて「適度な休憩」をさせる為に途中途中メールを入れたり励ましたり。
そして朝が最も苦手な織田さんを起こす役にもなった。


栄養管理。
家に帰らないとなれば、おこづかいが底を突くのも早いはず。
毎日コンビニのおにぎりやカップラーメンが夕飯になる。


お弁当でも届けたいくらいだけど…
そんな事は出来もしない。
せいぜい出来る事と言えば、栄養ドリンクや野菜ジュースなどをこっそり冷蔵庫にしまっておく位しか出来なかった。


とは言え、私も若くはない。
自分の仕事もある。
夜中3時、を限度に…毎日相談役に徹した。
朝は6時には起きて織田さんを起こす。
織田さんと共に睡眠時間は1日平均3時間位だった。


何もしてあげられないから…
せめて一緒に辛さを味わう、共に頑張る、
勝手な自己満に過ぎないけど
「一緒に頑張ってる感」が、少なからず私にはあった。


内心…
なぜ、織田さんだけが1人でこんな事までやらなきゃならないのか疑問もあったけど。


この期間中は
もちろんの事、メールも電話も 逢うことも…ほぼ不可能に近かった。


我慢。
今が踏ん張り時、お互いにそんな事を思い合って過ごした日々でもあった…ね。

No.28 14/04/19 19:29
匿名0 ( ♀ )

>> 27



お正月、最後の1日にこんなメールが来た。




「ギュッとしたい」

「一緒に寝たい」

「会いたい」



喧嘩して連休に突入したせいだろう。
『俺は休みの間でも凛を忘れてないからね!』って…アピールのようにも思えた。


バカな私は、こんなメールをもらうと
また都合よく自分勝手に解釈し期待が膨らむ。
休みが明けたら………



逢えるかな…。





実際に逢えることはなかった。
もう既に、任された仕事の事で頭の中は一色。
たまに感じる。
亡くなった父に似ているところ。




『こう!』と思ったらそれしか見えなくなるところ。



父もそうだった。
何か気になりだしたら周りが何を言っても耳に入らない。



考えたら、血液型も一緒。




この頃の職場は、やたらと皆 帰る時間が遅かった。
定時は一応17時なのに、遅い時で21時位まで残る人もいた。
まぁ決まった人達でごく一部だけど。




残業代も出ないのに
何故そんな時間までいるのか…他の人達の間では毎日のようにランチタイムの話題になる。




私と織田さんの考えが同じ部分が1つあって。
私はくだらない話で盛り上がっている『雑音』があると仕事に集中出来ない所があり、よく仕事を家に持ち帰る。


この話をした時、織田さんは大きく頷き


「俺もそう。
だから、この仕事はさ!
みんなが帰らないと出来ないんだよな…
あっちこっちでくだらない問い合わせばっかりしてくるから…みんながいると進まないし出来ないんだ!
細かい計算式とかさ、集中しないと出来ない仕事だからさ」



みんなはそんな事 知らないから
毎日のように遅くまでいる。



と、言うことは
その分、織田さんがその仕事に取り掛かれる時間も遅くなると言うこと。



「みんな仕事が終わったら早く帰るように!」
って言ったら?



「みんな一生懸命仕事してるのに、それは言えないよ…」




どこをどう見たって
仕事なんて誰もしちゃいないよ。
そんなの織田さん以外、みーんなわかってるのに何故織田さんはわからないんだろう。


No.29 14/04/19 19:52
匿名0 ( ♀ )

>> 28



私もちょっとだけ冷静な目で観察してみた。




みんなが遅くまでいるのは
あわよくば男と飲みに行くためだろう!って話題になってたけど…


ちょっと違う気がした。
残るメンツ的に、対立してる者同士。



これは…
監視!
監視し合ってるんだ、絶対!



お互いが
「絶対に隠れて飲みになんか行かせねーぞ!」
とか
お互いの会話を盗み聞きするため。



よく見れば、お互い負けず嫌いな彼女達は冷たい目付きで相手をチラチラ見ては様子を伺っている。



なんだか、そんな彼女達はどうでもいいけど
ハッキリ言わない織田さんにイライラが募る。



自分の仕事が進まないんだから言えばいいのに。
ってね。
まぁ、それが織田さんの優しいとこなんだろうけど…私の考えは、上司なら厳しくするとこは厳しくしないと!って常に思っていた。



甘すぎるから
みんなが成長せず、
友達のように接するから女の嫉妬が始まる。
上司なんて、厳しくていいんだよ。




これは私の考えだから、実際 織田さんには言わなかったけど…いつも心の中で思っていた。



噂が広まると…
信じていても時には不安で心配で
そんな噂の当事者達を残し先に帰宅するのは、私にはとても気掛かりだった。



「ねぇ…織田さん。
1つだけお願いがあるんだけど…」



No.30 14/04/19 20:43
匿名0 ( ♀ )

>> 29


「メールなんてしてる余裕がない事は分かってるんだけどね…この3つだけは約束して欲しいんだ」



「なんだい?」



•「起きたョ!」
•「寝るぞ!」
•「みんな帰ったョ!」


「この3つだけは、毎日メールが欲しい」



「わかった!約束ね(*˘︶˘*)」


これには理由がある。
朝、前嶋と他の男性の会話が聞こえたんだ。
「あいつさぁ‥朝の遅刻だけ何とかなんねぇのかな…毎日遅刻だろ」


すぐに織田さんの事だと悟った。
あんた達はいいよ、毎日定時に帰るんだから。
とは言え、やはり遅刻は良くない。
どんな理由であろうと社会人として、上司として。



だから、朝起こした後 二度寝がないかを確認するための「起きた!」
このメールが無ければ、根気よく私が起こすしかない。


「寝るぞ!」は、1日の睡眠時間を確認するため。
寝た時間が分かれば「起きた」の時間でどのくらい寝れたのかが判る。
休みがない分、多少でも寝かせる必要があるから。


3つ目はただ私自身の為。
ただ単にホッとしたいだけの理由。


果たして、守れるんだろうか。


まだ1月の初旬。
始まったばかりの頃は、約束通りキチンとメールが来た。



逢えなくてメールもままならない事への罪悪感からなのか、寝る前には必ずビデオ通話が来た。
この時間がたまらなく嬉しかった。


「いい加減 寝ないとね!」
と言ってもなかなか切れない2人。
最後は決まって私から切った。
寝かせないと身体が心配だったから。



時には疲れすぎてビデオ通話もなく
「ダメだ~限界!寝る」
と言って速攻寝ちゃう日もあった。
それはそれでよかった。
ちゃんと寝てくれる方がよかったから。




こんな毎日が続く中…
ラインが鳴る。

あ…
「みんな帰った」かな?



時計を見ると、いつもよりずっと早い時間だった。
ラインを開くと、そこには………



「今日は久しぶりに帰るよ!」の文字。
何かあったんだろうか?


毎年忘れてて私が教えて「ハッ!」として思い出すくらいなのに…今回に限って、私が忘れてた。


No.31 14/04/20 11:24
匿名0 ( ♀ )

>> 30
「今日はカミさんの誕生日なんだ(>_<)
ごめんね…」



あ…!
奥さんの誕生日か…忘れてた。



「謝ることないョ!
ちゃんと覚えてたんだね!
…プレゼント買えたの?」



少し言葉を濁すかのように
「プレゼントは買えなかった。
だから早く帰って飯に…」



昔々の事をふと思い出した。
その昔、取引先に行った織田さんが 閉店セールをしてるお店を見つけ『全品半額』になってたから凛に似合いそうなのがあって買ったんだ!
今度、逢えたら渡すからね (*´∀`*)ノ



…と、言って鞄にそれをしまっておいたのを奥さんに発見され、
同じセリフを言って仕方なくカミさんにあげちゃった…ごめん(:_;)


って事があったよね。
女はさ…
プレゼントの中身なんかより
「覚えててくれた事」や「サプライズ」が嬉しいもんなんだよ。
その気持ちがね。



「ねぇ織田さん!
○○駅にお店あるじゃない?
なんか買って行かなくていいの?
待ってるから見て来たら?」



私へのクリスマスプレゼントがなかった事を気にしてるんじゃないか…と思ったから聞いてみた。



「そっか…ちょっと見てくるか!
すまない」



長年連れ添った奥さんだもの。
好みはよく分かるでしょ。
いい物があるといいね。



「お待たせ!
すまないね…」



罪悪感でいっぱいなんだろうか。
「ごめん」「すまない」ばっかり。



「いいの見つかった?(*˘︶˘*)」




「カミさんはブランド志向だから、あまり安っぽいのは好まないんだが…小遣いくれないんだから仕方ない!安もんだけど買ったよ」



「気持ちだから…なんだって喜ぶよ(^-^)
あとは食事して、今日は家事手伝うとかね」



「だな!ありがとう(:_;)」



全然平気だよ!
なんて感じの返信を試みるものの…
やっぱり奥さんには叶わないのだと痛感していた。



これが仮に私の誕生日だったとしても
織田さんはこの行動には出なかったはず。
忙しい事を理由に「すまん」で済まされただろう。

No.32 14/04/20 11:45
匿名0 ( ♀ )

>> 31


次の日、木村さんに
「時間ある?」
と、聞かれた。



木村さんのお誘いは『話したい事がある』時。
妄想癖の激しい彼女の話は正直、聞くのが怖い。
何度も何度も振り回されてきた。




臆測を確信に変えて話をするから…信じる気持ちが時に『不安』に変わるんだ。
でも…
何度か当たっていた事実もある。
だから余計に怖いんだ。



知らなくて済む事なら…私は知らないままでいたほうが幸せな場合もある。
木村さんは織田さんが最も嫌がる人。
木村さんとの寄り道にはいい顔はしない。



今日はなんの話なんだろう…。




織田さんが仕事に集中する時間帯だから
「少しなら平気ですよ!」
と言い、お互いお腹がすいてた事もあり中華屋さんに入った。




「木村さんごめんね。
母に夕飯いらないってメールだけしていい?」




「あ~ごめんごめん!
メールしな!」




こっそりと織田さんにメールする。
「木村さんとご飯食べて帰るね!」




すぐに返信が来た。
「男はなしだろうな?
適度に切り上げて帰れよ!長くなるから」




「了解。
木村さんと2人です」




さて、今日はどんな話が待っているんだろう。
「一杯だけ!」
と言い、ビールを注文する木村さん。
なんだか嫌な予感が走る。


No.33 14/04/20 12:24
匿名0 ( ♀ )

>> 32
前半戦はただの愚痴だった。
不平不満がかなり溜まった様子。
こういう時は決まって、対立している彼女達の話がメインになる。


「あいつらさぁ…
昨日も飲みに行ったよ、絶対!」


「誰と?」


「決まってんじゃん!織田さん達と、だよ!」


織田さん達?
昨日、織田さんは奥さんの誕生日で早帰りした。
メールしてたから、そんなはずはない。
何故、そう思ったんだろう?


「なんで分かるの?」


「中川さん、早く帰ったから知らないでしょ?
あいつらが集団で帰った直後に織田さんがスーツ姿で速攻帰ったんだよ!
タイミング的に間違いない!

だってね…
その前に織田さんが角田の耳元でコソッと何か言ったの私ちゃんと見たもん!」


ふーん…。
コソッと…ね。
前も確か言ってたよね?
そんなに何をコソコソ話してんだろ?



木村さんは声のトーンが上がり興奮して話す。
何がそこまで気に入らないのか理解出来ない。
自分の男ならまだしも…
何の感情も持たない男が自分の嫌いな女達と飲みに行く事がそんなにも嫌な事だろうか?


私なら、前嶋が誰と飲みに行こうが興味ない。
それは別の男でも同じ。
嫌なのは織田さんが…と言う事だけで。


今日はそんな話くらいで解放された。
気になる話は『コソッと』の話くらいで済んだ。


その夜、紗織からメールが来た。
「凛ちゃん今日、木村さんとお茶して帰ったの?」


「うん!時間ある?って聞かれたからさ」


「昼のランチ、凛ちゃん来なかったからだね。
たぶん同じ話を昼にもしてたよ!興奮状態で」


「飲みの話?」


「うん!やっぱり同じ?」


「だね…」


「なんでそこまで気になるのか意味がわからんのだけど。私なら『あら、そうなの』としか思わないんだけどな」


同じ考えだ。
ちょっと聞いてみよう。


「嫉妬かね?それ以外、何がある?」


「あたしも思った!
嫉妬じゃなきゃ何も気にならんでしょーに」


「それってさ‥
織田さんか前嶋が好きって事か?」


「そりゃ知らんが…
そーじゃなきゃ、全てを知っていたい、とか?」

No.34 14/04/20 22:57
匿名0 ( ♀ )

>> 33


入社して間もない頃は、木村さんと織田さんと3人でよく飲みに行ったよね。
月に2•3回は行ってた気がする。
若かった事もあるけど、明け方まで飲んで歌って…してたよね。



私達が付き合い出した事もあるけど、その頃いた上司が織田さんに言ったんだ。
「女性と個人的に飲みに行くのはやめろ」って。
それから飲みに行く事はなくなった。



数年後その上司もいなくなり、形を変えて また再び飲みに行く機会が出来始めた。



でも…その相手は木村さんじゃない。
木村さんが嫌う例の彼女達。



飲み仲間をいつしか取られたような感覚なんだろうか。



「そんなに飲みたけりゃ自分から誘えばいーんでないの?」
紗織が言う。



私が感じるに…
木村さんはプライドが高いから、自分から誘って断られるのが嫌なんじゃないだろうか。
彼女達とは行くクセに自分が誘って断られたら…と考えるから。



周りがそこまで考える程、木村さんの男と彼女達の関係を探る言動は日に日に鋭くなって行った。
私なんかより、ずっと…監視の目であの人達をよく見てた。



ある日、木村さんが私の横を通り過ぎる時にボソッと耳元で呟く。
「見ててみ!あいつ毎回あーやって織田さんの後ろで仕事やってるから。
その内、コソコソ始まるよ、絶対!」




見ると確かに後ろにいる。
背中合わせに。
でも…彼女の隣にも人がいる。
それでもコソコソ話すのか?




何気なく木村さんを見ると
「ほら!ちゃんと見てろ!」と目で合図。



隣りに座ってた人がその場を去ると…




見た。
確かに見た。
私も…見た。




織田さんが角田に耳元でコソッと何かを言った。
真顔だった。
角田は前を向いたままニコッと笑っていた。
織田さんはそのまま真顔でその場を離れて行く。




これ………か。
木村さんが言いたかったのは。
妄想じゃなかったんだ………ね。




今度は携帯が鳴る。
「見たでしょ?
今日、意地でも最後まで残らない?
あれ、絶対飲みに行く合図だから!」



木村さんからだった。


No.35 14/04/20 23:39
匿名0 ( ♀ )

>> 34 怖いもの見たさ、って
こういう事を言うのかな…。

今日は織田さんの娘さんの誕生日。
織田さんは絶対に早く帰るはずなんだ。


こういう日は私も決まって早く帰る。
普段より早く帰宅するから帰り道のメールのスタンバイをするために。


よく考えたら…
帰宅する振りで 1時間半弱、私とメールして…私を安心させ、「着いたよ」と言った後 飲みなり彼女と合流する事なんて いくらでも可能だよね。


不意を付いて、私が遅くまでいたら…
動揺でもするのかな…。


忙しい事を理由に
メールも減った。
逢う回数も減った。
お金がないってよく言う。


もしかして、
私は…



騙されてるの?



こんな時は嫌な方向ばかりに考えが行くもの。
また木村さんの妄想癖が始まった!
くらいに思えたら楽なのに。


この目で見てしまったから…
なんだか不安と悲しみ、怒りが混ざり合う。


「私、そんな遅くまでいるほど仕事やる事ないんだけど…(*_*;」


「大丈夫!
仕事なら私が振るから」


結局、木村さんの押しの強さに負け 珍しく私も最後まで居残りになった。


私が帰った後のここは…
毎日どんな光景なんだろう。


そろそろ織田さんが帰ってもおかしくない時間になる。
家族の誕生日には、この位の時間には会社を出るはずなんだ。


すると織田さんが部屋を出た。
あ…
帰るかな?


10分程経ってコンビニの袋をぶら下げた織田さんが再び入ってきた。
まだ仕事着のままだ。


残っているメンバーに何やらお菓子を配り始めた。
何やってんだか(*_*;
こんなんじゃリラックスして みんな帰らない訳だ。
遅くまでいてもいい、って思うはずだよ。


織田さんはコンビニで買ったおにぎりとサンドイッチを食べ始めた。


今日は織田さんが1番可愛がってる下の子の誕生日だよ?
もしかして…
忘れてる?


一服に行き、織田さんにメールした。
「帰らなくていいの?
今日、誕生日でしょ‥下の子の」


返信はない。
仕方なく部屋に戻る。


戻った時、既に彼女達は帰った後だった。

No.36 14/04/23 03:15
匿名0 ( ♀ )

>> 35


「あっ!
やべー!俺、帰らないと!」



織田さんのデカい声が聞こえた。



「いきなりなんだよ?」


隣りの人に突っ込まれる。



「今日、娘の誕生日だった。
忘れてた!」



慌てて片付け帰る。



「私もう帰るよ?」
木村さんに合図を送るように私も帰り支度を始めた。



「あ…中川さん待って!
私も帰るから」


え…
私、急ぎたいのに…(>_<)
急がないとメールが出来ない。
お茶でもしよう、なんて誘われたら断れなくなる。


更衣室で送ったんであろうメールが鳴る。
「凛、ありがとう!
すっかり抜けてたよ…急いで帰るねm(_ _)m」



「ごめん!お待たせ」



返信を送る隙なく木村さんと帰る事になる。
その時ちょうど織田さんと会社の出口で鉢合わせになった。
慌ててる様子に、確かに見えた。



「2人は寄り道かい?
気をつけて帰ってね!」



織田さんは足早にその場を去った。



「ね?
絶対さっきの嘘だよ!(娘の誕生日)
あれね、飲みだよ。合流するとこ見られない様に急いでたでしょ?」


「そうなんだ?」



「だって…中川さんが一服してる間に奴らが部屋出たら、織田さんの携帯鳴ってさ。
そのメール読んで、いきなり叫んだから間違いないよ(-_-;)」



相変わらず、すごい観察力。
これに私は騙されて何度 喧嘩して来たんだろう。
今回はね…
そのメール…たぶん私からのメールだよ。


と、心の中で言った。
私が不安でたまらなくなるくらいなのに、これだけ気にしている木村さんは…疲れちゃったりしないんだろうか。
精神的にそんなに気にしてると疲れ果てる気がしてならない。


そこまで気になる理由は…
どこにあるんだろう。



私のジーパンのポケットの中で携帯が鳴る。
駅に着いたんだろう。
こういう時の私は、ごめんなさい。
木村さんの話より、携帯が気になるんだ。


早く解放してくださいと願ってしまう。
「木村さんごめんね。
蓮からメール来たから先に帰ります」



嘘つき女。

No.37 14/04/26 02:55
匿名0 ( ♀ )

>> 36

結局、木村さんと駅まで一緒に帰った。
その間、メールが出来なかった為 メール出来る時間は 1/3に減った。



「お疲れ様でした!」



「また今度ゆっくりお茶しようね!」



「はい♪」




木村さんが離れてくのを見送り携帯を見る。



「凛も帰宅するようで安心したが…
寄り道か?」



木村さんと寄り道してると思ってるようだ。
「今別れたよ!何とか逃げ切った!」




「俺が帰ったあとに凛が会社に残るのは嫌だ。
特に木村さんが一緒だとね」



「ん?
どうして?」



「木村さんはすぐ男と絡む。
飲みに行くために。
凛は断れないから、そーなったら絶対一緒に行くだろ(-"-;)」




………それは、…織田さんじゃん!
断れないのは、そっちじゃん。



あ…
断れないんじゃないね…
断らない、の間違えだった!




「そんな日、めったにないじゃん
今日もお茶断ってバイバイしたよ」




「それでいい。
俺以外の男と飲みに行くのは禁止だ(`ε´)」




自分勝手だな…
自分の事は棚に上げて。



でも…
普段、ヤキモチを妬くのは私ばかり。
たまに、こうしてヤキモチを妬かれたり心配されたりするのも悪くない。
…と言うより、むしろ嬉しい。




私が他の男と飲むのは嫌なんだ?
こんな事でしか、自分の存在価値を確認出来ないような気がするから。




「たまにはヤキモチ妬くの?」



わざと聞く。
安心したいから。
ホッとしたいから。



ちゃんと想われているのか…どうか。




「当たり前だ(-_-#)
もし行ったら、ヤキモチと言うより怒る!」




うん、わかってるよ。
だから私は行かない。




私は約束は破らない。




No.38 14/04/26 03:31
匿名0 ( ♀ )

>> 37


『すぐ男と絡む』
って事は、少なからず織田さんも絡まれてるって事だろう。



「私が帰ったあとは毎日絡まれてるのか?(-_-#)」




今度は逆襲だ。




「あの人はしつこいんだよ。
飲みに行こう!とかではなく、仕事の事であーでもない、こうでもない毎日言ってくる」



「だから毎日遅くまでいるんだろうね」




「知らないが、結構みんなウンザリしてるよ、男連中は。前嶋さんもアイツとは絶対飲みに行かないって言ってる」




納得。
だから、飲みに行くのは彼女達なのね。
でも、どちらの言ってる事、やってる事に賛成かと聞かれれば、どちらかと言うなら私は木村派である。



必ず喧嘩になるから言わないけど、男目線と女目線の考え方の違い。
私が言えば、ただの嫉妬としか解釈されないだろうから言わないけど、これ以上 彼女達と特別に仲良くするのは…この先の仕事に必ず影響が出るぞ!と常に感じてはいた。




「私も織田さんが他の女と飲みに行くの嫌だ」




「バカやろう!
俺に今、そんな時間あると思ってんのか?
凛が1番よくわかってるはずだぞ」




うん、わかってるよ。
私にだって逢えないくらい…だもんね。
けどさ…
そんな時に限って行くじゃん。
今までだって何度も。




「わかってるけど…
コソコソ話したりしてるの見たら不安になる」



「コソコソ?」




「うん、コソコソ。
耳元で」



織田さんには何のことだかサッパリ分からない様子だった。
深い意味はないのかもしれない。




「よく分からんが、なーんにも心配いらないよ。
俺はなんとか踏ん張って仕上げなきゃなんないミッションがあるからな!
今はそんな余裕もないから心配するな」




「うん!頼むぞ( ̄^ ̄)ゞ」




織田さんが駅に着く。
これからケーキを囲んでHappy Birthdayだね。



No.39 14/04/26 04:21
匿名0 ( ♀ )

>> 38

ウチの会社は大きいから喫煙所が何ヶ所かある。
2フロアー毎にあるから計5ヶ所かな。



ウチの課の人間が行く場所は決まっていて、みんな4階に行く。
本来なら1番近くに喫煙所があるにも関わらず。
その習性は私が入社した時から変わらない。
1番人が来ない穴場の場所だから、だと思う。




そこは今、彼女達の憩いの場になっている。
仕事中でも1時間位、戻って来ない事もある。
ベテランさん達も、もう呆れて注意する人さえいない。
だからやりたい放題。
それを上司である前嶋や時に織田さん、他の男性が一緒になって一服してるから喫煙者=悪。の様になってきた。




いつからか、彼女達以外の女性はあまり4階には行かなくなった。
みんな1番近くの喫煙所に行く。
ただ、ここは違う課の知らない男性がいっぱい来る。
私1人で行くには少し抵抗がある場所とも言える。




私が織田さんが4階に行くのを嫌うように
織田さんも私がそこへ行く事を嫌った。



1人で4階の喫煙所に行った時、織田さんと彼女達が楽しそうに話している所に遭遇し そんな時の彼女達は私を気遣う事もなくあからさまに背を向けて話を続ける。
織田さんも同様に…。
まるで部外者はお断り!と言わんばかりに。



その光景に出くわすのが嫌で私は4階には行かないと決めた。




ある時 織田さんが言った。
「あそこは男ばっかりだから行くな。
俺がそっちに行くから凛は4階に行って欲しい」




私が傷ついて
行かなくなった事に織田さんは気づいてた。
でもね…
肝心な事には気づかないよね。
何故、みんな4階に行かなくなったのか…って。




そこにもっと早く気づいて
行動に移せていたら…
職場の雰囲気も多少は今と違ってたんじゃないか、とも思う。



あの日、あの上司が言った
「特定の女性と個人的に飲みに行くのはやめろ」
は、これからの職場を予測した忠告だったのかもしれない、と今思う。

No.40 14/04/26 05:11
匿名0 ( ♀ )

>> 39



逢えなくて何日経っただろう。
毎日明け方まで頑張ってる織田さんを知ってるだけに「逢いたい」は言ってはいけない言葉だと思っている。



逢えないと言うより、逢わないことが織田さんの気持ちの様にも感じていた。
逢いたい気持ちがあれば、どんなに忙しくても逢うチャンスなんて作ろうと思えば作れるものだから。



逢わない事は今織田さんが逢いたいと思っていない事だと私なりに解釈し「逢いたい気持ち」は心にしまう。




手帳を見ながら、最後に逢った日から何日経ってるかを指で数える。
喧嘩した年末…あれから2週間が経った。
「ギュッとしたい」「一緒に寝たい」は言葉だけで期待を膨らませるだけで現実にはならない。




私ってなんなんだろう。
私は本当に必要とされてるんだろうか?
こんな事ばっかり考えていたよね、毎日。




逢えなくて16日目の夜、いつもより早くメールが来た。
「今日は早くも断念!
資料不足で先に進めん(>.<)
寝たかな?」




「起きてるよ(^-^)ノ」




するとビデオ通話が来る。
こういう日は待ってて良かったと思う。



「何してた?」




「手帳つけてた」




「しばらく逢えてないね」



「うん…16日間、かな」



「ごめんな…待たせてばっかりで」




「ちょっと寂しいけど…でも大丈夫」



こんな会話を少しした後、急にふと思い付いたかのように織田さんが言った。



「仕事も進められないし、せっかくいつもより早い時間だから逢うか?」




ヤッタ!
新年初だった。
私が夕飯は済んでいた事もあり、食事はやめ すぐに迎えに来てくれた。
しばらく逢ってない時の『この日』は嬉しさも倍増で…今まで悩んでた事もふっと吹き飛ぶから不思議。



「お疲れ様o(^-^)o」




私が大好きな笑顔で
ギューッと私を抱きしめる。
何度かキスをしてお互いの定位置に座る。
テーブルを挟んで近況を話す。
身体を重ねる事も嬉しいけど、何より嬉しいこの時間。



「あ…もうすぐだね!バスツアー」



No.41 14/04/26 05:29
匿名0 ( ♀ )

>> 40



一瞬、織田さんの顔が曇る。



何?




「バスツアーの日さぁ…」




「ん?」




「俺、グループ分けさせてもらえなかったんだ…前嶋さんが全部決めた。
凛、嫌がると思う…」




「え?グループ行動なの?
いつも自由なのに?」



「うん…飯とかは自由なんだけど、施設見学が班分けされるんだ…」




言いたい事はすぐにわかった。
「彼女達と私が一緒なんだ?」




「うん…」



一気に行きたくなくなった。
でもこれも仕事の一貫。
「仕方ない…よ…」




織田さんは自分の無力さを悔やむように
「ごめんな」
と言った。



どうせそういう時は織田さんの近くにはいられない事もわかってる。
1日だけの我慢だと自分に言い聞かせる。




「俺はなるべくベテランと行動するからね!」



「うん(^-^)」




普段、織田さんを待つ時間は長いのに
こういう日はあっという間に時間が過ぎる。




「織田さんほとんど寝てないんだから そろそろ寝ないと!」



またしばらく逢えない日を思い合うように
何度もお互いの温もりを感じあった。
結局、仕事してる時と変わらない時間になってしまったが幸せを感じる一時だった。



No.42 14/04/27 14:16
匿名0 ( ♀ )

>> 41



バスツアー当日。
朝は集合場所まで仲良しさんと行く。
現地に着いたら………私だけ別…か。
みんなが楽しみにしているバイキング形式のランチの話で盛り上がる。
私だけはランチでさえも楽しみとは思えず。




現地に着くとグループが発表された。
やはり私だけがポツリと彼女達のグループに組み込まれていた。
仲良しさんが私を見て
・・・(-_-メ)←こんな顔をしている。
沙織は
「凛ちゃ~ん…………可哀想」と言った。




仕方ないよ。
割り切るしかない。



3ヵ所に分かれ見学が始まった。
予想はしていたが、誰1人、私に話しかける人もなく彼女達はサッサと喋りながら歩く。
振り返って私を見る事もなく。
私はそんな彼女達の後を黙って歩いていた。




途中で他のグループの人達とすれ違う。
みんな違和感を感じるんだろう。
可哀想に…と言った顔で私を見る。



最後に男性陣とすれ違った。
彼らを見つけた彼女達は声のトーンを上げ、嬉しそうに彼らに駆け寄る。
ニコニコと話しかける。
話しかけられた織田さんが…そっと私を横目で見た。



大丈夫だよ…こんなの毎回だもん。
慣れっこだよ。
と、心の中で織田さんに言うものの…
イジメられっ子がみんなに見て見ぬ振りをされ助けてももらえない、そんな感覚と似たような情けなさがあった。



私が彼女達に何をしたって言うの?




見学が終わった時、
「10時半出発になりますので、10時半にはバスに戻ってください。その間にトイレや一服は済ませてください」
と連絡があった。



トイレはいいけど一服がしたい。
誰にも相手にされない私は1人、喫煙所を探し一服に行った。




………が、
方向音痴な私は、バスがどこにいたか分からなくなった。
ウロウロしてる間に時間ばかり過ぎてく。



ヤバい。
時間が………(>_<)




織田さんに電話して聞こうと思ったけど
そうだ………私からは織田さんの携帯に電話しちゃいけないんだ…。
なんだか寂しいと言うか、惨めと言うか、情けなさでいっぱいになる。


No.43 14/04/27 14:46
匿名0 ( ♀ )

>> 42



こんな大きな建物でいつまでも迷ってても仕方ない。
従業員の方に出口までの行き方を聞いた。
すると
「何番出口ですか?」
と、聞かれた。



何番出口?
知るか…そんなもん(>_<)



沙織に電話をかけ迷ったから、と出口を聞いた。
このやり取りを織田さんは聞いたんだろう。
折電が来た。



「今、どこにいる?
近くに何がある?」



場所を伝えると
「その場から離れないで待ってて!
今行くから」



はぁ………
なんて情けない女なんだろう。



走ってくる足音が近づく。
織田さんが苦笑いをして来てくれた。



「すみません(T_T)」




「凛………無事でよかった。
大丈夫か?」



「迷惑かけて…すみません。
大丈夫です」



「ヒドいよな…みんな」
ボソッと織田さんが呟いた。




織田さんとバスに戻った時
「大丈夫~?」と、みんなが一斉に私を見る。
先輩達は「お馬鹿さん」と私をからかった。



でも、彼女達だけは違う。
冷ややかな目で私を見る。



そして最後に乗った私は、必然的に空いていた所に座る。
私の後にバスに乗り込んだ織田さんも、必然的に私の隣りに座った。



これがまた、彼女達には面白くない事も このバカな私でもよく分かる。
どうせ、作戦?とでも勘ぐっているんだろう。



こんな事でもなければ、織田さんが私の隣りに座るなんて事は有り得ない。
けど、成り行き上ここしか空いていなかった事が彼の気を強くさせたのか…
彼女達に無視されてる私を不憫に感じたのか…
この時の織田さんは必要以上に私に密着した。
服は着ているが、お互いの温もりを感じられるくらい肌が触れる距離だった。



もう大丈夫だからね!
と言う様に…
誰にも見えない角度で私の手を触り「キュッキュ」と2度、手を握った。



みんながいる所では絶対に私には近づかない織田さんが、こんな事をするなんて本当に珍しかった。



この時の織田さんは
何を思っていたのだろう…。




No.44 14/04/27 20:46
匿名0 ( ♀ )

>> 43
バスで移動し次はみんなが待ちに待ったランチタイム。
施設見学が思っていたより短く、移動距離の方が長かった。
ランチなんていいから…ずっとバスに乗っていたい、そんな気持ちだった。



バスの中では寝てる人、隣りの人と喋ってる人、後ろは集団でお酒を飲んでいた。
カラオケも始まって、バスの中は賑やかだった。



賑やかになったら、織田さんが話しかけてきた。



「さっき、なんで俺にすぐ電話しなかった?」


「あ…真っ先に織田さんに電話しようと思ったの。
でも…ほら…私から織田さんの携帯に電話するの…禁止なんだ…って思って…」



少し悲しい顔で
「それを気にしたのか…ごめん。
あーいう時は別!かけていいからね」



小声での会話。
「そっか……ごめんね…心配かけて」


「いつもあんな感じなのか?」


「ん?なにが?」


「角田さん達。
中川さん、独りぼっちに見えたから」


前から言ってるでしょ。
それでも織田さんは
「その位でちょうどいいんだ」
って言い続けて来たじゃない。
私とは接する事を避け、彼女達と仲良くするのが ちょうどいいって織田さんいつも言うじゃない!



「私は嫌われ者だから仕方ないんです」



「あれはちょっとヒドいな…」


私は黙った。
今更………?
今更、気づいたの?
でも私の話だけでなく、織田さんが自身の目で見たから説得力があったんだろう。



「これからは自由行動だからね!」



「うん…」


少しは分かってくれたかな?
どうして私が彼女達を嫌うのか。
私が何かをしたなら仕方ない。
でもね…
違うんだよ。


こっちから挨拶をしても返事はない。
私には絶対、話しかけて来ない。
本当に何の根拠もなく無視されてるの。
いつも私は蚊帳の外で背中を向けてバリアを張られる。


最初はそれでも気を使って私から話しかけたりしてた。
でもね…
無駄な努力だったの。
だって…聞こえてるはずなのに無視されるんだから。


挨拶以外、私も気を使うのは辞めたんだ。


No.45 14/04/28 04:09
匿名0 ( ♀ )

>> 44


みんなが待ちに待ったランチタイム。
ホテルに到着する。


ここからはもう織田さんとの接点はないだろう。
でも、いつもに比べたら…隣りに座れただけでもラッキーだった。


ランチタイムは十分と言えるほど時間の余裕がある。
結構よく食べる人が多いから、バイキングはみんな楽しみにしていた。
前回の時は高級すぎて私にはあまり……だったけど今回は店の前にある看板?を見ると前より私好みのメニューだった。



ほぼ貸切状態の店で席は自由となると…
仲良し組の誰かが1人だけ違うテーブルに座る事になる。


「どうしよっか?」



「2、3に分かれたら?」



「でも、くっついて空いてるテーブルないよ…」


みんなで店内をキョロキョロ見回していると、私を可愛がってくれてる先輩が
「中川さん!
ココ空いてるから座ったら?
ココで良ければ!」
と声をかけてくれた。


先輩達も2個に分かれちゃったんだ…。
そこには2人しか座っていなかった。


「あ…じゃあ私ココ座らせてもらうから大丈夫!みんなあそこ空いてるから4人で座りな!」


結局ここでも私は1人、別行動になった。


織田さんはどこに座ってるんだろう。
その時、織田さんが店内に入ってきた。
やはり席を探している。
ここでもまたして先輩が織田さんを呼ぶ。
「ココ空いてるよ!」


織田さんが一瞬、私を見て戸惑った感じがしたけど…先輩が声を掛けてくれた事により、またも一緒のテーブルで食事する事が出来た。


嫌な事もあったけど
今日はなんてラッキーな日なんだろう♪


「2人共早く取りに行っといで!」


こんな時は世話好き大先輩に感謝☆感激だった。


「中川さんはやせっぽちだから、いっぱい食べな♪」
と言って織田さんが悪戯で私のお皿にいっぱい料理を乗せてきた。


「ちょっとぉ!こんなに食べられないよ」
私も仕返しにいっぱい乗せた。


「全部食べられなかったら罰ゲームね!」

こんなやり取りがプライベートではなく、会社行事で出来たのは初めてだった。
いつも私を避ける事に気を使う織田さんとは少しだけ違う気がした。

No.46 14/04/29 05:19
匿名0 ( ♀ )

>> 45


テーブルに戻る。
織田さんが私の前にいる。
2人の時とは違って何故か少し緊張している自分が分かる。
どこかで「見られてる感」さえ感じる。


「あっ…これ上手いなぁ。
中川さん!これ上手いよ!入ってる?」


豚の角煮。
私は年を取るに連れ肉のかたまりが苦手になった。
特にこの脂身が…(>_<)


「あ…ないねぇ!
食ってみ!上手いから!」


織田さんは角煮が好き。
いっぱい持ってきた内の1つを私のお皿に乗せてくれた。


うわぁー…
こんな事を人前でするなんて…
今日の織田さんはどうしたんだ?



「どうせなら『あ~ん』ってやってあげないと(笑)!」
先輩が茶化す。



やめてくれ(*_*)
照れてしまうじゃないか…


「あ…そうだねぇ!
ほら『あ~ん』して♪」



調子こいた織田さんがノリに乗った。
こんな時は私も乗ったほうがいいんだろうか?
あまりにも有り得ない状況に戸惑ったが、されるがまま そのノリに便乗した。



ならば私も!
悪戯好きの私は織田さんの苦手なニンニクの効いた物を『あ~ん』した。


「あー!これニンニクじゃんかよ…(>.<)」



思わずニヤけてしまった。
早食いの織田さんはあれだけ盛ったのに既に食べ終わっている。



見るとニヤニヤした織田さんが私のお皿を見ていた。
「早く食わないと罰ゲームだぞ!」


「だってぇ…量が(>_<)
私スイーツが食べたかったのに、これじゃスイーツ食べる前にギブアップしそう」



先輩達がゲラゲラ笑いながら救いの手を差し伸べてくれた。


「あー!反則だぞぉ!」


「食べたい物を食べさせてあげなさいよ(笑)」



織田さんも残っていた私のお皿の料理を食べてくれ
「よし!じゃあ、スイーツ取りに行くぞ!」


先輩達のおかげで
今日は私、大満足です。


スイーツの所で織田さんが
「中川さんと全部同じの食べよっかな」
と、私と同じお皿が2個出来上がった。


さりげなく
「今日は珍しいね…大丈夫なの?」
と聞くと


「たまにはいいだろう。
いつも我慢ばっかりさせてるからね」

No.47 14/04/30 03:07
匿名0 ( ♀ )

>> 46
スイーツと言っても私はあまりケーキやタルト ババロアなどは沢山は食べられないから、フルーツやヨーグルト 白玉などがメイン。


「中川さん…女性ってこういう時、ケーキがメインなんじゃないの?普通…」


織田さんが不思議そうに言う。
これだけ長く一緒にいても私の好みをあまり知らない織田さん。



「ケーキ乗ってますョ?…2個!」



先輩達と最後にコーヒーをゆっくり飲んでいると
「2時出発なので2時にバス集合でお願いします」
と連絡があった。


すかさず先輩達が
「中川さん迷子になるから一服するなら織田さんと行っといで!ちゃんとここまで送ってもらいな!待ってるから」
と言って笑った。


「あっ…行く?」



今行ったら………
食後だから、いっぱい人がいるだろう。



「まだ時間あるから…もう少ししたら行こうかな。織田さん行きたかったら先にどーぞ」



「今混んでそうだしね!
後で一緒に行くよ♪迷子になるからね( ´艸`)」


しばらくネタにされそうだ……。


一服に行くまで先輩達を含め4人で色んな話をした。
途中から段々と職場の雰囲気について織田さんに説教が始まったから私は話を遮るように
「織田さん…タバコ吸いに行きたいです」
と話を横切る。



「あっ…行こっか!」


ごめんなさい。
先輩…。



「いや…助かった。
話し始めたら長いからな…あの人達は…」



うん。
嫌そうな顔してたもん。



途中で可愛いショップがあってバッグに目がいった。
「あ…あれ可愛い♪
ちょっと待ってて」



眺めていると横から
「欲しいの?」
と、織田さんが聞いてきた。



「欲しいけど…我慢♪我慢♪」


織田さんがバッグを手に取り、会計に行く。
え…
そんな事までして平気?
建物自体が広いから近くには誰もいそうにないけど…いつもの織田さんなら、絶対しないこと。



「はい、遅くなったけど…クリスマスプレゼント!誰かに聞かれたら自分で買ったって言っといて!」



「ありがとう…」
なんだか私のほうが拍子抜けする感じだった。




No.48 14/04/30 21:26
匿名0 ( ♀ )

>> 47



今想えば…
この頃から知ってたんだね。
織田さんは…




私達の未来を。



だから…




普段なら絶対しないことを
2人の胸に焼きつけるように。




お互いの心の中に




深く深く




刻み込むように。




でも…




この時の私は…




まだ…何も知らなかった。




ほんの少しの




織田さんの変化に




気づいてさえ、いなかった。




ただ…




嬉しくて




この先の2人に



不安など




感じてもいなかった。




「織田さん…
ありがとう♪
明日から、さっそく使お (*˘︶˘*).。.:*」



No.49 14/04/30 22:15
匿名0 ( ♀ )

>> 48

喫煙所に行くと、私の読みに反して例の彼女達と前嶋がいた。
暇を持て余し、ずっとここにいたようだった。



私を見る目が痛いほど鋭い。
織田さんと一緒に来た事が気に入らないんだろう。


私が手に持っている袋を横目で見ているのが分かる。
でも何を聞いてくる訳でもない。
得意技の背中向け攻撃で織田さんを囲む。


こうなると、織田さんもふと我に返ったように普段の織田さんに戻る。
誰一人、私の存在など気にもしない。



タバコ吸ったら…
先輩達の所へ連れて帰ってくれるんじゃなかったの…?



さっきまで、あんなに幸せだった気持ちも
彼女達がいると いつも台無しにされる。



でも…
いいよ…今日は。
さっきまで、私に幸せを与えてくれたから。


背中を向けている彼女達とゲラゲラ笑いながら夢中で話している織田さんだから…
私が今、サッといなくなっても気づかないだろう。


私は1人…
黙ってその場を去った。



安心しきって織田さんに付いて来ちゃったから、正直、帰り道に自信はなかったが あの場には一分一秒たりともいたくなかったんだ。



とりあえず、さっきのショップまで行ってみよう。
そこで帰り方を聞けばいい。
少し早歩きでショップまで向かった。


あ…
ここからなら分かりそう!
トホトホ1人歩いた。



人影もあまりない平日の館内に
走ってくる足音が響く。



「まったく!また迷子になったらどーすんだよ」



息を切らした織田さんだった。



「あ…ごめんね。
楽しそうに話してたから悪いと思って…」


「馬鹿だな…ちゃんと連れて帰る約束だったのに」



「なんて言って来たの?
気分悪くしてるんじゃない?」



「○○さん達にガードマン頼まれてるから!
って言って来たよ!心配しなくても まぁ大丈夫だろ!」


先輩達の所に無事戻ると
「ちゃんと帰ってきたね(笑)
解散までずっと一緒に行動したら?」
と、また茶化された。



ここからは自由行動。
観光。
さっきの雰囲気からして、織田さんの周りは彼女達で囲まれるだろう。


No.50 14/05/02 02:51
匿名0 ( ♀ )

>> 49

どうして
何故………


こんなに大好きになれた人が
既婚者なんだろう。


なんで
どうして…


既婚者なのに
こんなに大好きになっちゃったんだろう。


自分が『割り切り』なんて出来ない事を分かっていながら…どうしてここまで踏み込んでしまったんだろう。


織田さんと付き合った事を後悔なんてしないけど、長くなればなる程…
依存しすぎてる自分が自分を辛くさせる。



織田さんといると、幸せだな‥と思える時間より
辛い、寂しい事の方が断トツ多い気がするのに…
1人になるのが怖い。
失うのが何より怖い。



織田さんといると、素直なありのままの自分でいられるってずっと思ってた。


怒ったり泣いたり甘えたり、
そう言った自分をずっと抑えつけて我慢して踏ん張って…いつも人の顔色をうかがってたような私が、織田さんの前では素直になれた。




でも…
本当は…やっぱり違う気がしてきた。
いつもどんな私でも受け止めてくれる織田さんだけど…



私はやっぱり
失うのが怖くて
本当に言いたい事は心の奥底に飲み込んでいる気がする。



近い将来………
今よりもっと深く悩む時期が来る事を
この頃の私はまだ知らなかった。




毎日、会社に行けば、あたりまえのように顔が見れた。
喧嘩しても、普通に顔を合わせなければならなかった。



これが『贅沢』だって事に
この頃の私は、まだ気づけていなかった。



毎日、顔が見れるのが
当たり前になっていたんだね…。



そして、
織田さんがいなくなれば
彼女達への嫉妬心からも、心配事からも、解放されると思い込んでいた。



失ってから気づく
本当に大切なもの。


それは、当たり前だと思っている時には
なかなか気づけないもの………なんだね。



自由行動になり、
さっきまでの時間は、やっぱり夢だったのか?と感じるくらい、織田さんは普段の織田さんに戻った。


解散の場所が近づいた時
「このあと食事に行ける方は是非、行きましょう!」
と、連絡が入る。


知らなかった。
肝心な事はいつも知らないんだ。

  • << 51 ココまで来たら、もう織田さんが携帯を開く事はない。 「解散したよ!」の連絡待ちになる。 ………連絡が来れば、、、の話だけど。 解散場所のココは、会社からはまたまだ遠い。 ココで飲むとしたら… いつもより早く解散しないと帰れなくなる。 それは織田さんだけじゃなく、全ての人に言える事だった。 会社のそばまで戻るのかな? いや…あの場で言ったんだからココだよね…。 なんだか不安になる。 こんな時、行く人は聞かなくてもみんなが分かっている。 だから… 彼女達以外、誰も行く人なんていないんだ。 みんな、彼女達と飲むのが嫌だから。 1人になりたくないな………。 このまま家に帰れば、1人悶々と考えてしまう。 不安で押しつぶされそうになる。 だってさ‥ 織田さんの終電がなくなる時間なんてみんな知ってる。 万が一、万が一… 「私も終電なくなっちゃった」なんて事になったら…どうするの? 心配…しすぎなのかな…。 歩きながら、そんな事を考えていたら 木村さんがブリブリ怒り出した! 「あれさ!絶対わざとでしょ!? みんな行かないの前提で言ってない? 奴ら(男)はあいつらがいれば満足なわけでしょ? だって普通、声くらい掛けるのが常識でしょ! みんな行かないにしたって「行こうよ」とも言って来ないのは絶対おかしいって!!!」 「だよね! 昔はみんなに声掛けてたもんね! 口裏でも合わせてんじゃねーの?」 この現状が面白くないのは私だけじゃなかった。 みんな不満なんだ。 彼女達以外の人が行くとまるで「部外者」的な扱いになる。 それを知ってるからみんな行きたくない。 私もみんなといた方が気が紛れるし… 「ねぇねぇ!みんなまだ時間平気ならお茶して帰らない? あんな所に行って嫌な思いするなら、違うことでお金使ったほうがよくない?」 みんなが同時に 「だよねぇ!!!」 と言った。 「でもさ、お昼あれだけ食べたからまだお腹すいてないし‥お茶でいいよね?」 約2名不満げな人がいる(笑)
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