離婚までの記録
まさか自分がと思っていた。
彼女に出会う前は愛するってことを知らなかった。
結婚して8年。好きな人が出来てしまった。
仮面夫婦で妻を好きではなかった。多分妻もそうだっただろう。だからと言って他に出会いなど求めてなかった。
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主さんと
恋愛しても
楽しくはない
依存心が強く
リスカするような女性より弱い
本当に強くて
頼れる男性と
本気の恋愛がしたい
主さんみたいな男性は
まともな女性もおかしくしてしまう
奥様も強くて本物の男のいうことなら聞くと思う
私なら、何もかも妻の責任にして
妄想恋愛に浸る男性は
恋愛の対象外
満足できないな
主さんはMか…
大晦日の夜。早めに布団に入り彼女とメールをしていた。
今は彼女も自分の実家に家族でいるらしい。
もうすぐ年が明ける。彼女がちょっとだけでも電話出来ないかな?と言ってきた。
いいよ。わかった。と返事をして俺はちょっとコンビニ行ってくると外に出た。
直ぐに彼女から電話がきた。
『もしもし?大丈夫?』
『大丈夫。コンビニ行くって言った』
『そっか。私も同じ』
そう言って二人で笑った。
話しているうちに12時になった。
『もう12時過ぎたね。明けましておめでとう。今年もよろしくね』
彼女がそう言って年が開けたことに気付いた。
『あっほんとだ。明けましておめでとう。こっちこそ今年もよろしく。』
『初めにKに言いたかったんだ』
彼女はちょっとはにかんだ声で言った。
『うん。最初に言えてよかった。ありがとう』
そう言ってお互い電話を切った。
妻の実家に帰ると直ぐに眠りについた。
正月休み中も暇を見つけては彼女とメールや電話をしていた。彼女は大晦日だけ実家に泊まり1日の夕方には家に帰ったらしい。
そして気付けば妻の実家から帰る日になった。
また何十キロも運転して帰らなければならない。
だが、もうここから帰れると思うと来るときよりは気持ち的に楽だ。
彼女からもう帰るんだよね?帰りも気をつけてね。とメールがきていた。
ありがとう。気を付けるよ。と返して出発した。
俺はまた何時も通りの生活が始まった。
彼女は仕事を辞めたので、体調が戻るまではしばらくなにもしないと言っていた。
彼女は正月にゆっくりするのは中学以来だから新鮮だったと言っていた。彼女は高校から専門学校の時まで六年間神社で巫女をしていたからだ。
仕事を初めてからも写真館は正月が意外に忙しいみたいで、休んだことがないらしい。
仕事を辞めた今は何もしないで日々を過ごすのが慣れないと言っていた。
勿論家事や育児はあるだろうが、いつも働いていたから空いた時間をどう使えばいいかわからないようだった。
そんな働き者な彼女はゆっくりすると言いながら、もう次の仕事を探してた方がいいかな?とも言っていた。
俺は休めるときに休んで、たまには何もしないでのんびりするのもいいと思うよと言った。
彼女はそっかそうだよねと言って笑った。
今月末にそっちに行けることになったよ。
1月も半ばになったころ彼女がそう言った。
友達がそっちにいるし、今は仕事もしていないから気分転換に遊びに行きたいって旦那に言ったら、ストレス発散にもなるしいいよって言ったんだ。ちょっと長く行けるよ。と嬉しそうに話してくれた。
この前会ってから4ヶ月。こんなに早くまた会えるなんて思ってもいなかった。しかも四泊でくるらしい。
本当に?子供は?大丈夫なの?
俺はとっさにこう言っていた。
『大丈夫。仕事またするからまだ保育園入ってるし、旦那がいるから』
『そうか。じゃあ安心だね。会えるの嘘みたいだ。だけど本当に嬉しいよ』
『本当に楽しみだね。あのね、友達とこに泊まるけど、一泊だけはKと過ごしたいな。どうかな?』
『大丈夫!わかった。なにがなんでも会社休むよ。』
そうして彼女と二度目の会う約束をした。
嬉しすぎてその日が待ち遠しくて、約束の日まで1日が終わるのがものすごく長く感じた。
とうとう約束の日になった。
俺は車で彼女を迎えに行った。
到着ゲートを見ながら待っていると、俺に気づいて手を振りながら笑顔でこっちへきた。
彼女がゲートを潜ると俺は小走りに近づいてぎゅっと抱き締めた。
どうしたの?
そう言いながら彼女も抱き締め返してくれた。
会いたくてたまらなかった彼女が今自分の手の中にいる。それだけで嬉しくて涙が出てきた。
自分がこんなにカッコ悪い奴だったなんて初めて知った。
彼女は俺の涙に気づいて優しくキスをして大好きだよと言って笑った。
その後二人で車に乗るとデートしたいなと彼女が言った。
じゃあどこに行きたい?と聞くと、カラオケっと楽しそうに答えた。
そんな彼女が愛しくてたまらなかった。
運転中も二人はずっとお互いの手を握りしめていた。
カラオケに着くと彼女はちょっと恥ずかしいと言いながらも直ぐに曲を入れていた。話していると全然感じないが、選曲をみて今更ながら年の差を感じた。(彼女は23、俺は31だ) 彼女は年のわりにしっかりしている。
俺はカラオケなんていつぶりか思い出せないくらい前に来たので何を入れていいかなかなか決まらなかった。
そんな俺の横で彼女は楽しそうに歌っている。歌もうまい。歌っている間もやはり手は繋いだままだ。
カラオケの後はご飯を食べに行った。
女性がどんなところがいいのかわからなかったからデパートに行った。
ドリアとか食べたいなKは?と彼女が言ったので、洋食系のレストランに入った。
席について注文すると、彼女が
『本当に楽しい。今すごく幸せだよ。』
と言ったので。
『俺もだよ』
と答えた。
食事の後はデパートでぶらぶらウィンドウショッピングをした。
子供みたいにはしゃいでいる彼女は本当に可愛かった。
それに時々
『K疲れてない?楽しい?』
と気遣ってくれるのが嬉しかった。
その後は彼女が行ってみたいと言っていた東京タワーに行った。
生憎の雪で遠くまでは見えなかったが、彼女はすごく嬉しそうだった。
楽しい時間はあっという間に過ぎるもので、気付けば辺りは真っ暗になっていた。
俺たちは今夜泊まるホテルに向かった。
俺は会社に泊まると言ってあった。忙しい時期なので会社に泊まることは珍しくなく、妻は何も疑っていなかった。
ホテルに着くと
『何か頼もうか?お腹空いたでしょ?』
と彼女が言った。
『そうだね。ピザとか頼もうか?』
と言いながらルームサービスを頼んだ。
その時、彼女の携帯が鳴った。旦那からだった。彼女は携帯を持って違う部屋へ行った。
何を話しているのか気になってしょうがない。
10分後、彼女が戻ってきた。なんだって?と聞くと 、ちゃんと着いたかご飯食べたのかって心配だったみたい。と言った。
彼女の旦那は彼女が好きなんだなと思った。
そう考えるとモヤモヤして彼女を抱き締めたくなった。強く抱き締めていっぱいキスをした。
放したくない。ずっとこうやっていたい。
愛してる。妻にも一度も感じたことの無い感情が込み上げてきて彼女にそう言った。彼女は私もといってくれた。
そして肌を重ね合わせ、何度も何度も彼女の名前を呼び愛してると言いながら二人で愛し合った。
こんなにも衝動的に誰かを求めて、誰かを愛しいと思い愛してると言ったのは初めてだった。
見つめあっては微笑んだ。愛してると言ってはキスをした。その夜、二人でずっと抱き合って眠った。
彼女が愛しくてたまらない。
『絶対に一緒になろう』
『うん。絶対だよ。』
彼女は眠そうな声で答えた。
翌朝目が覚めると、彼女の寝顔がそこにあった。
なんだかそれだけで幸せだった。
しばらく眺めていると彼女が目を覚ました。
少し眠たげにそしてはにかみながらおはようと言った。
彼女がとてもいとおしかった。
おはようと言いながらぎゅっと抱き締めてキスをした。
彼女と居られるのは今日のお昼までだ。
お昼からは彼女は友達と待ち合わせこれから二泊するらしい。
それまでずっと二人で抱き合いながらお互いの色々な話をした。
ホテルを出る際に彼女が子供の事心配だから電話してくるね。と言ってちょっと離れた場所で電話し出した。
子供の事だから仕方ない。旦那に電話するのは少々嫌だが、子供の母親である彼女からしたら当たり前だと思った。
一度写真で見せてもらったことがあるが、彼女の子供は彼女に瓜二つで本当に可愛かった。もうすぐ二歳になるからお土産たくさん買わなきゃと嬉しそうだった。
そんな子供の事を嬉しそうに話す彼女が俺は微笑ましかった。
電話が終わり彼女がこちらに駆けてきた。
このまま離したくはないが、彼女は友達との約束もあるのでそうもいかない。
待ち合わせ場所まで送る車の中で、やっぱり二人はきつく手を握りあっていた。
待ち合わせ場所に着くと、まだ友達は来ていないみたいだった。
俺は彼女の友達と鉢合わせしたらマズイと思い帰ろうとすると彼女はどうしたの?
と聞いてきたので理由を言った。
彼女は笑って、大丈夫。友達も知ってるから。と言った。
少し驚いたが、俺を隠さずに居てくれたことへの嬉しさもあった。(実は前に彼女が来た際、空港に見送りに行った時に俺も会社の同僚に話したのだが)
しばらく待つと男の子二人と女の子が一人来た。
彼女の専門学校時代の友人らしい。
俺は軽く挨拶をしたがなんだか照れ臭かった。
彼女は本当に楽しかった。ありがとうと言うと、ぎゅっと抱き締めてまたねと言いなが友達と去っていった。
彼女の姿が見えなくなると急に喪失感に襲われた。
ずっと一緒にはいられない現実に無理矢理引き戻されたようだった。
会社に今日も休みをとっていた俺はぶらぶらと時間を潰した。その間彼女は豆に何処にいるよ~とメールをくれた。
夜になってきて家に帰るのが益々いやになっていた。
だが今日は帰らなければならない。
はぁっっと深いため息をついて俺は家路についた。
家に帰っても彼女の事ばかり気になってしまう。
時々くるメールに返事をしながら会いたい気持ちでいっぱいだった。
家の中では相変わらず妻との会話もなく、子供達はもう眠っていた。
もうだいぶ前から我が家はこんな感じだ。
夫婦の会話と言えば子供の事か業務連絡のような内容のみ。すっかり冷めきっていた。
だがきっと夫婦仲がよかったとしても、彼女に出会ったら好きになっていたと間違いなく言える。
夫婦仲がよかろうが悪かろうが、俺は絶対に彼女を愛しただろう。
理由はないが何故かそう確信できた。
遅い夕食を食べ終わると妻が片付ける。
俺はそのまま携帯を持って風呂に入った。
何だか彼女といた時間がものすごく遠く感じる。今頃友達と楽しく飲みにでも行っているのだろう。
風呂から上がると妻と子供が寝ている部屋に行き俺も横になった。
寝室では俺だけ別に寝ている。元々性欲処理のために月一しか妻を誘うことはなかったが、彼女と出会う前と合わせて、もう8ヶ月は誘っていない。
妻はどう思っているのだろうか。妻が断る事もあるので俺が諦めたと思っているのか、仕事が忙しいからだと思っているのか。
何も言わないが、もしかしたら気付いているのかもしれない。
彼女と出会ってからは彼女の事で頭が一杯で色々不審な行動もあっただろう。タバコを辞めたのも不思議に思っていたと思う。
疑っている可能性は高い。
もし妻にばれたら…
その方が楽かもしれない。その方が自分で言うより早い。
ばれなくても近い内に言おうとは思っているが。
ただ、俺が離婚すると彼女が困るかもしれないと言う不安もある。
責任を感じてしまったり、彼女も離婚を無理に考えるのではと思うと妻に言うタイミングが見つからない。
俺の離婚のせいで彼女の意思に反して離婚するような事になってはいけない。
彼女は俺と一緒になりたいと言ってくれているが、実際に彼女がどうしたいのかは怖くて聞けずにいる。本気だといってくれている言葉を信じるが、子供もいるわけだし今すぐではないと思う。
それに例え俺が離婚しても彼女の責任ではない。彼女がいなくても俺達夫婦は別れていただろう。
直ぐではなくとも子供が高校を卒業した後くらいに離婚すると思っていたからだ。子供が居ない家に妻と二人で暮らすなんて考えただけでも耐えられない。
そんな未来がちょっと早まっただけだと考えればいい。
ただ彼女にそれをいってもきっと自分を責めるだろう。
俺は彼女に自分をせめてほしくない。
そんなことを考えながら気付けば眠りに落ちていた。
翌朝目が覚めると彼女からメールが数件届いていた。
昨日はオールでカラオケにいたらしく、今すごく眠いよと書いてあった。眠いと言いながらも、今日もそのまま遊ぶらしい。
流石に二十代は若いなと思った。
楽しげな彼女のメールを見ているとこっちまで楽しい気持ちになる。
楽しそうだね。短い時間だし友達とたくさん遊べたらいいね。今日も楽しんで。
通勤電車の中で彼女に返信するとすぐに返事が来た。
うん。お土産Kにもたくさん買うから。またメールするね~。
俺は会社が休みなら彼女と居られるのになと考えながら仕事に就いた。
昼休みの時間になると彼女から電話がきた。
友達と遊んでいたので電話はこないと思っていたから驚いた。
『お仕事お疲れ様。今ね浅草に来てるよ~浅草行きたいって言ったらマニアックって言われた(笑)すごく楽しいけどKの声が聞きたくなっちゃったんだ』
受話器越しに楽しげな彼女の声が聞こえる。
『そっか。楽しんでるみたいでよかった浅草もいいよね。電話くれてありがとう。俺も声聞きたかったけど邪魔しちゃ悪いと思ってかけられなかった』
『そうなの?邪魔なんかじゃないよ。いつだってKと話したいんだから。気にしないで電話してね。友達もわかってくれてるから』
(いつでも話したいから気にしないで電話して)彼女にそう言われて本当に嬉しかった。
『わかったよ。そうする。ありがとう。大好きだよ。』
『私も大好き。お昼からもお仕事頑張ってね。じゃあまたね』
そう言って電話が切れた。
やはり彼女の声を聞くと落ち着く。
ずっと聞いていたくなる声だ。
電話を切ると俺は早めに仕事に戻った。
明日は彼女の帰る日。また空港に見送りに行くために明日の分まである程度の仕事は終わらせなければならない。
その日俺は終電ギリギリまで仕事をした。
次の日、今日は彼女が帰る日だ。
何時の飛行機で帰る?
メールで聞いてみた。
おはよー。飛行機は5時の便だよ。
すぐに返事がきた。
俺は今回も見送りに行きたいと思ってと返した。
本当!?仕事は大丈夫なの?嬉しい。もう会えないかと思ってたから。Kが来てくれるなら友達と早めにわかれて空港に向かうよ。
そんなやり取りをして空港には3時に待ち合わせる事にした。
俺は前回事情を話した同僚にまた頼み込んだ。
同僚は本当に好きなんだなと言って引き受けてくれた。
2:50分。空港に着いた。彼女は電車で来ると言っていたので駅で待っていた。
電車が入ってきて人が下車し始める。
俺は人混みに目を凝らし彼女を探した。
『K~』
俺が見つけるより早く、彼女が俺を見つけて手を振りながら駆け寄ってきて直ぐに俺に抱き付いた。
『会いたかった』
そう言って顔を上げた彼女に俺はキスをした。
その後は彼女のお土産選びに少し付き合って後は空港のベンチで腰掛け話をした。
友達と遊んだことを彼女は楽しそうに話してくれた。
話している間も二人は寄り添い手をきつく繋いでいた。
笑いながら話しているがきっと二人の心の中は同じだ。
離れたくない。もっとずっと一緒にいたい。
だけどそれを言ってしまうと泣いてしまいそうで、お互い言わないでいたんだと思う。
楽しい時間は本当にあっという間で、もう搭乗を告げるアナウンスが聞こえた。
繋いでいた手を更に強く痛いくらいに握りしめた。
今度こそは泣かないつもりだったのに、気付けば涙が溢れていた。
『酷いなぁ。笑ってるKの顔を覚えていたいんだから。ほらっ笑ってよ?』
彼女は俺の涙を拭いながら少し震えた声で言った。
彼女も必死に涙を堪えて笑ってくれてるのに、俺はまた情けなくなった。
『ごめん。我慢したんだけど。頑張って笑うよ』
そう言って無理に笑った俺の顔は、多分とても変な顔だったと思う。
そうしている内に、搭乗する方は急いで手続きを済ませて下さいと言うアナウンスが流れた。
二人は立ち上がりぎゅっと抱き締めあって何度もキスをした。
だがもう時間だ。
『また絶対会えるよ。サヨナラじゃないから。またね』
彼女が言う。
『うん。サヨナラじゃない。また会うんだから。』
俺が言うと二人はゆっくりと体を離し彼女は何度も振り返りながら搭乗口に向かった。
彼女はゲートに入った後もずっと手を降り続けていたが、とうとう見えなくなってしまった。
我慢していた涙がどっと溢れた。
絶対にまた会える。いや、絶対にまた会うんだ。
そう自分に言い聞かせながら、俺は同僚の待つ車に戻った。
その日の夜に彼女から無事に家に着いたよ。とメールがきた。お疲れ様。ゆっくり休んでと返したが、その後返信が無かったのをみるときっと疲れて寝てしまったのだろう。
俺もいつも通りに家に帰った。
こうしていると、彼女が来て一緒に過ごしたなんてなんだか夢だったんじゃないかと言う気がする。
だが夢じゃない。Kにお土産だよと空港でくれたストラップが現実だったことを証明している。
もう彼女に会いたくてたまらない。
次はいつ会えるだろうか。そもそも次はあるんだろうか。
考えるほど不安ばかりが込み上げてくる。
俺は布団に潜ってどうしたらまた彼女に会えるか考えてみた。がその日はそのまま眠ってしまった。
翌日からはまたいつもの日時に戻った。
彼女は仕事をやめたので気ままな専業主婦になった~人生でこんなに何もなくゆっくりするのは初めてだよっ。とおどけていた。
昼休みにいつものように電話をすると彼女が眠たげな声でおはよーと言った。
旅行で疲れて今まで眠っていたらしい。
疲れてるならまた今度にしようか?と尋ねると、ダメっ!やだ。話したいもん。と受話器越しに叫ばれた。
彼女のそんなところが可愛くてしょうがない。
改めて旅行中の話を色々聞いた。
話を聞きながら、何故だか段々切なくなってきた。
こんなにも彼女の声を近くに感じるのに、会うこともできないほど遠くにいる。
声を聞いていると会いたくてたまらなくなる。
次の約束も出来ない関係がもどかしい。
昼休みが終わる時間になり、俺はまた夜かけるからと言った。
だが彼女は少し気まずそうに
今日はちょっと…私が旅行行ってたから、今日は旦那が早く帰ってくるみたいなんだ。
と言った。
そっか。じゃあ仕方ないね。また今度だね。
平然と答えたが心の中はざわついていた。 わかっていることとはいえ、現実を突き付けられると苦しい。
彼女は本当にごめんね。と何度も謝りながら電話を切った。
仕方ない。仕方ない。
俺はそう自分に言い聞かせながら、嫌なことを忘れるためにがむしゃらに仕事に取り組んだ。
その夜は彼女の事が気になってしょうがなかった。
今頃旦那と過ごしていると思うと泣きたくなってくる。
何をしているのか。知りたいが知りたくない。
夜中になっても眠れずにいると、彼女から電話がかかってきた。
旦那がいるのになんで…と思いながらもすぐ電話に出た。
『もしもし?今日は無理じゃなかった?何かあった?』
彼女の返事はない。
『もしもし?聞こえてる?どうかした?』
やはり彼女は何も言わない。
携帯を耳から離し、通話になっているか確認したがちゃんとなっていた。
俺はもう一度声をかけた。
『おーい。もしもし?何かあった?ちゃんと聞こえてる?』
すると小さな声で
『聞こえてる』
と答えた。
『よかった。こんな夜中にどうした?旦那は?』
『うん…ちょっと…』
答えた彼女の声がなんだかおかしい。
『………泣いてる?』
彼女に聞いたが、彼女は何も答えない。遠くで少し鼻をすする音が聞こえる。
彼女は受話器越しに泣いていた。
『どうした?何があった?旦那と何があった?』
彼女は小さな声で
『Kには言えない…言えないよ…』
と言った。
その言葉に俺は少し察しがついた。
『俺には言えないって………大丈夫。俺は大丈夫だから。何があったかちゃんと話して』
そう言うと彼女はゆっくり話始めた。
『今日はね…旦那が早く帰ってきて…………私が何日もいなかったから寂しかったって………それで……………それで……子供が寝た後にテレビ見てたのね…………そしたら旦那が……嫌だって言ったのに…………』
彼女は嗚咽を堪えながら続けようとしたが、それを俺が遮った。
『わかった。わかったからもういいよ。無理しないで』
『ごめんね。ごめんね……嫌だって言ったのに……そんな人じゃないんだけど、なんでかな……本当にごめんね。K怒る……よね……?ごめんね』
彼女は何度も何度も俺に謝った。
『わかった。もうわかったから大丈夫。謝らなくていいよ。俺は怒ったりしないよ。Mが悪い訳じゃないから。本当に俺は大丈夫。』
そう言いながら俺も涙がこぼれていた。
その後は暫く二人とも何も話さずにお互い泣いていた。
一時間程して彼女がKも明日仕事だしそろそろ帰らなきゃと言った。
帰って大丈夫?帰れる?俺が聞くと彼女は、大丈夫…じゃないけど帰らないと。彼女はそう答えた。
じゃあまたね。
そう言うとお互いに電話を切った。
俺は怒りと悲しさとやるせない思いで一杯だった。
彼女が辛い思いをしてるのに俺は側に行ってあげることも出来ない。
彼女の旦那が許せないが口を出すこともできない。
彼女があんなに俺を思って謝って苦しんでるのに、大丈夫だってうまく伝えることさえ出来ない。
こんな自分が悔しくてたまらない。
今すぐ彼女の元へ行ってしまおうか。
でもそれは余計彼女を苦しめるかもしれない。
あれこれ考えて意気地のない自分に腹が立つ。
彼女はちゃんと家に帰れただろうか。
帰って大丈夫だっただろうか。
その日はそのまま朝まで眠ることはできなかった。
結局一睡もできぬまま気付けば空がしらみ始めていた。
仕事に行く気にならないがそんなわけにもいかない。
仕方なく準備をして出勤した。
昼の時間になって彼女に電話するかどうか迷っていた。
今日はやめておこうと思った時に丁度携帯が鳴った。
彼女からだった。
『K?お仕事お疲れ様。昨日は夜中にごめんね。今朝はちゃんと起きられた?』
『大丈夫だよ。Mこそ……あの後ちゃんと帰れた?』
『うん……』
何を話せばよいかわからず、暫く沈黙が続いた。
『あのさ…』
彼女が沈黙を破って話始めた。
『私、Kの事が大好きだよ。本当に愛してる。それが言いたかったんだ』
彼女はそう言った。
『うん。俺もだよ。何があってもそれは変わらないから』
俺がそう言うと彼女は『うん』と何度もうなずいた。
電話を切ると俺はため息をついた。
きっと彼女は辛いだろう。
その夜彼女からメールが届いた。
『旦那が帰ってきて昨日の事を謝ってくれたよ。無理矢理ごめんって。なんだか不安だったからって言われた。もしかしたら薄々気づいてるのかもしれないな…』
『そっか…他には何も言われなかった?』
『他は…愛してるって言われたかな。でも返せなかった。もう嘘つくのは辛い。旦那にもこのまま隠しておくのは悪いから。ただ、私がもし離婚ってなったときにKに負担かけたくない。私が別れたからってKも別れなくていいんだからね?子供さんもいるんだし、一番に考えてあげてね』
彼女はそう言った。
『俺も同じこと考えてた。もし俺が離婚してMが自分のせいだって思ったらどうしようって。俺達同じこと考えて悩んでたんだね』
『そうなんだ。なんだか二人して笑っちゃうね』
そんなやりとりをした。
まだ会社にいたので、メールのやり取りが終わると残っていた仕事を片付け家路についた。
家に入ると、リビングのダイニングテーブルに妻が腰かけていた。
『ただいま』
いつものように顔を合わせないまま言った。
妻は下を向いたまま黙っている。
『何かあったか?』
そう聞くと妻は口を開いた。
『なにか私に言うことがあるんじゃない?』
もしかしたら彼女の事がバレたのかとドキッとした。
『別に何もないけど』
そう答えると妻は叫ぶように言った。
『別に無いわけ無いでしょっ!あなた浮気してるでしょっ』
あぁ、やっぱりバレたのかと思った。
『あなた女がいるんでしょ。わかってるのよ。正直に言ってみなさいよ。』
妻が捲し立てるように言う。
『その通りだ。』
俺は認めた。バレてしまったならもう隠す必要はない。
『最低!どうせエッチしたかったんでしようセックスレスだから。その女に会わせなさいよ!!』
『エッチが目的じゃない。浮気じゃなく本気だから。彼女には絶対に会わせられない。』
『何でよ。本気ってバカじゃないの?そんなことあるわけないじゃない。なんでその女に会わせられないのよ。じゃあ電話番号教えなさいよ。』
『彼女とは別れられないし、会わせられない。番号も教えられない。彼女を傷付けたくないから』
俺がそう言うと、妻は泣きながらひたすら俺を罵っていた。
妻にバレた。だが意外と動揺はしていない。卑怯かもしれないが、自分から言わなくて良くなったことに少しホットしていた部分があった。
昨日彼女が旦那と色々あったばかりのこのタイミングでバレるとはなんだか見計らったかのようだと思った。
妻は何度も同じことを繰り返し言ってくる。
『遊びなんでしょ?子供はどうするの?別れるんだよね?離婚はしないからね。相手の女に絶対会わせてもらうから。あなたは最低。酷い。』
『彼女には会わせられないし別れることもできない。』
俺も同じことを繰り返し返していた。
二時間ほどして流石に疲れたのか妻は何も言わなくなった。
何も言わずにただ俺を睨んで泣いていた。
『ごめん。』
俺がそう言うと
『謝ってほしくなんかない。』
妻はそう言って寝室へと入っていった。
その夜俺はリビングのソファーで寝た。
次の日の朝、俺の出勤時間に妻は起きてこなかった。
当然だ。俺も顔を合わせなくていいことにほっとした。
仕事に向かう電車の中で彼女に言うべきか考えた。
彼女はどう思うだろうか。きっと凄く心配するだろう。
無駄に心配かけたくい。俺は彼女には言わないことにした。
その日の昼もいつものように電話で話した。
女性の勘は鋭いとは本当で、彼女は俺の様子が変だと感じたのか何度も何かあったの?と尋ねた。
何でもないよ。ちょっと疲れてるんだよと何とか誤魔化した。
今日は仕事に集中出来なかった。
帰ったらきっと妻がまた待ってるだろう。
どう話せばいいか色々と考えたが答えは見つからない。
そんなことを考えている内に、気付けばあっという間に帰宅する時間になっていた。
家路に向かう足が重い。家には帰りたくないのが本音だが逃げるわけにもいかない。
彼女のためでもあるんだと言い聞かせながらなんとか家に向かった。
家に帰るとやはり妻が待っていた。
俺の顔を見るなり罵り始めた。
『稼ぎも少ないくせに女なんか作ってバカじゃないの?女に金かけるな。あなたなんかエッチしたいだけの最低な奴。何にもしないくせに。女と早く別れなさいよ。どうせその女もろくな人間じゃないのよ。早く別れて。』
他にも色々言っていた。俺は何も言わず黙って聞いていたが、それがまた気にさわったようだ。
『なんで黙ってるのよ。何かいったらどうなの?別れるって言いなさいよ!』
そう言いながら妻が側にあったテレビのリモコンを投げつけ、それが俺の頭に当たったが妻は構わずに続けた。
『早く何かいったらどうなのよ!言い訳くらいしたらどう?』
『彼女とは別れない。お前と離婚するつもりだ』
俺がそう答えると、妻はすぐには意味が呑み込めなかったようでしばらく沈黙が続いた。
『はっ…?今何て言ったの?』
妻は面食らったような表情で聞いてきた。
俺はさっきと同じ言葉を繰り返した。
『彼女とは別れない。お前と離婚するつも……』
『何考えてるの!?離婚って?嘘でしょ?』
俺が言い終わるか終わらないかの間際に妻が遮った。
『女と別れずに私と別れるって言うの?女を選んで家族を捨てるの?』
『……そうだ』
『は?嘘でしょ?』
『嘘じゃない。本気だ。彼女を愛してるんだ』
『愛してるって…そんなわけない。離婚?絶対にしないからね!!もし離婚するって言い張るなら慰謝料請求してやるから。子供達が可愛くないの?』
『お前が別れないって言うなら調停になってもいい。もう一緒にはいられない。子供達は可愛いが仕方ない。』
『バカじゃないの!最低!調停?離婚なんて同意しないからね。無理矢理離婚になっても慰謝料たくさん貰うから。子供にも絶対に会わせないわよ。それでも私と別れるなんて言うの?』
『そうだ。もう何を言われても俺の考えは変わらない』
俺がそう言うと妻は真っ赤な顔でこちらを睨み付けた後、バンッとドアを激しく閉めてリビングを出ていった。
俺はハァッーとため息をついてソファーに横になった。
二階から妻がバンッと寝室のドアを閉める音が聞こえた。
かなり怒っているようだが当然だろう。
だがどれだけ話合おうがもう俺の気持ちは変わる事はない。
慰謝料を支払うことになっても子供達と会えなくなってもそれだけは言える。
例え彼女と一緒になることができなくても、俺はもうこの家族を続けていくことは出来ない。
静かになったリビングの天井をソファーに寝転んで見上げながらいつもと変わらずに彼女にメールを送った。
妻にバレたことは言わない。彼女のせいではないから気を使わせたくなかった。
しばらくメールのやり取りをした後風呂に入って今夜はソファーで寝ることにした。
多分このまま寝室で妻や子供達と寝ることはないだろう。そんな事を考えながら眠りについた。
次の日の朝もやはり妻は起きてこなかった。
いっそのこと夜も先に寝てくれたらとも考えてしまうが、それでは話が先に進まない。
とりあえず、仕事中は何も考えずに仕事の事だけに集中することにした。
昼休みには相変わらず彼女に電話をする。
毎日の事だがこの時が一番安らげる時間だ。
だが今日はちょっと違った。
女の勘は鋭いとはよく言ったものだ。
彼女は妻にバレた日からずっと何かあったの?と聞いてきていたが、今日はいつめよりしつこく聞いてきた。
『ねえ。何かあったよね?絶対変だもん。この前からなんかいつもと違う』
『そんなことないって。普通だよ』
『怪しい。もしかしてさ……奥さんにバレたとか…?』
『……えっ!?バレてないよ。なんで!?』
とっさに答えたが声が多少裏返ってしまった。
『やっぱり……』
彼女は俺の声が裏返ったのを聞き逃さなかった。
もうこれ以上は嘘を突き通せないと思い、仕方なく全てを彼女に話した。
彼女は黙って俺の話を聞いていたが、全てを聞き終わると口を開いた。
『やっぱりバレちゃったんだね。だけど、なんで嘘ついて隠してたの?』
俺は素直に答えた。
『Mに気を使わせたくなかったんだよ。Mはきっと自分のせいだと思うだろうと思ったから言いたくなかった。だってもしMがいなくても、遅かれ早かれ俺はあいつと離婚してただろうから』
俺はそのまま続けた。
『それに、俺が離婚することでMが自分も離婚しなきゃって強制みたいになるのが嫌だった。MにはMの家庭があるわけだから。』
しばらく沈黙が続いた後彼女が話始めた。
『でも…今離婚の話が出てるのは私のせいなのは事実だよ。私と会ったことがバレたから離婚の話になったんでしょ?それに、何にも知らないでKと話してたなんて何だか寂しいよ。何でも言ってよ。気を使ったりしないで。こんなに愛してるんだから全部ちゃんと話してほしい』
彼女はそう言いながら声が少し涙ぐんでいるようだった。
『ごめんよ。Mが自分のせいだってM自身を責めてほしくなかったんだ。結果的に傷つけてしまってごめん。もう何も隠さないから。全部話すから。だけど、自分を責めないでほしい。俺の家庭はMに会う前から壊れてたんだから。だからMは自分を責めないで』
『私こそごめん。今大変なのはKなのに感情的になっちゃって。私のせいじゃないって思うのは無理だけど、責めたりはしないようにする。』
『わかったよ。じゃあもう時間だから』
そう言って電話を切った。
そのすぐ後に彼女からメールが届いた。
『奥さんは何て言ってるの?Kは大丈夫?私が言うのも変なんだけど、子供さんもいるんだから子供さんを一番に考えて後悔しないようにね』
俺は直ぐに返信した。
『あいつは怒って今のところ話し合いは出来ない感じだよ。俺は離婚するって言ってる。子供の事はあるけど、もう家族は続けられないから。』
送信すると俺は仕事に戻った。
夜になり携帯を見てみるとまた彼女からのメールがきていた。
『離婚するの?本気?別れたらきっと子供には会えないんだよ?それでもいいの?すぐに答え出していいの?よく考えて』
それを読んでなんだか彼女は俺が離婚するのが困るのかなと考えてしまった。
『ちゃんと考えて出した答えだよ。Mは俺が離婚すると困るの?なんだかそんな言い方だから…』
送信するとすぐに彼女から返信がきた。
『困るとかじゃないよ…Kは子供さんの事大好きでしょ?だから後悔してほしくないだけ。私も子供いるからさ…だから子供さんを一番によく考えてほしいだけだよ』
『わかった。ただ、多分俺の考えは変わらないと思う』
俺が返信すると
『そっか。それでももう一度よく考えてね。私はKがどんな結論を出してもKを愛してるのは変わらないから』
そう返事がきた。
『うん俺もMを愛してる。Mの言う通り、もう一度よく考えてみるよ。またメールする』
そうメールをすると俺はそのまま家に帰った。
家に帰るとやはり妻が待っていた。
リビングに入った途端に色々愚痴や文句を言われた。
俺はずっと黙って聞いていた。
それでも構わず妻は俺を罵り続けている。
『不細工の癖に不倫なんて最低男。最低な父親よ。死ねばいい。女もあなたも。いい加減に女と話をさせなさいよ!番号教えなさい!』
『それだけは絶対に出来ない。』
そう言うとますます妻は怒りを増した。
『女にも慰謝料請求するわよ!いいの?お金請求されたら女は逃げるかもよ?』
『彼女はそんな人じゃない。それに彼女の分まで俺が払う!』
この一言に妻はブチキレた。
聞き取れない程に何かをわめきながら側にあるものを片っ端から投げつけてくる。
しばらくして投げるものが無くなったら妻は座り込んで泣き出した。
『どうして?どうしてなの?』
そう呟きながら泣いていた。
『ごめん』
俺はそう謝る事しかできなかった。
一時間ほどしただろうか、妻は立ち上がり寝室へと出ていった。
俺は妻の投げたものを拾って片付けた。
その日はそのまま風呂も入らずに寝てしまった。
家に帰っては喧嘩する。そんな日が続いた。
そして妻にバレてから一週間たった頃だった。
何時ものように家に帰ると今日は妻がいなかった。
先に子供達と寝たようだ。
少しほっとしてふとテーブルを見ると、そこには白紙だが離婚届が置いてあった。
俺は妻が離婚に同意したんだと思い、離婚届に名前を書いて判を押した。
そしてテーブルの上に置いたまま次の日出勤した。
その夜、家に帰るとまた妻が待っていた。
そして俺の名前が書き込まれた離婚届を持って怒鳴り始めた。
『なんて判まで押してあるの?本気で離婚する気なの!?』
『置いてあったから同意したんじゃないのか?そう思って書いたんだ』
『違うわよ!一応貰ってきただけ。本気で書くなんてあなた最低よ!そんなに別れたいなら別れてやるわよ!最低男。女も死ねばいい。』
妻はそのまま俺と彼女を罵り始めた。
ずっと黙って聞いてきたが、俺もつい言い返してしまった。
『お前だって悪いだろ!休みも全然休ませてくれないし、セックスだってずっと断り続けるし。会話だって子供の事以外無かっただろ?それで夫婦なんて言えるのか?お前もいつだって自分の事ばかりで俺を責めるだけじゃないか。』
言った後に後悔した。これじゃまるで妻と不仲だから不倫したみたいになってしまう。
不倫になったことと妻との事は関係ないのに、毎晩罵られ彼女まで色々言われカッとなって妻に言い返してしまった。
案の定妻はこう返してきた。
『私が悪かったからあなたは不倫たって言うの?相手が嫌になったら不倫してもいいっていうの!?』
『違う!ついカッとなって言ったがそれと彼女とは関係ない。お前になんの非もなくて夫婦仲がよくても俺は彼女を好きになった』
そう言ったが今更意味がない。
『はっ?意味わからないわよ!』
そのまま二人で言い合いになってしまった。
そしてとうとう俺は我慢しきれなくなって家を飛び出してしまった。
俺の実家は近い場所にあるので、歩くには遠いが俺は実家に向かった。
俺の母親は前に彼女に会いに行くとお金を借りに行ったときに全てを話してあるので察して、とりあえず家に入れてくれた。
そしてそのまま俺は実家に泊まった。
その日から俺は家に帰らなくなった。
逃げているのはわかっている。
だがどうしても妻と顔を合わせたくなかった。
ふとあの離婚届はどうしただろうと思い出した。出しただろうか…
そんなことを実家のベッドの上で考えていると携帯が鳴った。
俺は彼女からだと思いすぐに出たが電話の相手は妻だった。
『帰ってこない気なの?』
『ああ。もう疲れた』
『疲れたってなによ!あなたが悪いんじゃない。逃げるの!?』
『どう思ってもらっても構わない。お前と顔を合わせたくない。それに離婚届も書いたしな』
『あんな離婚届出さないわよ。絶対に別れないから。あなた子供達の事は何とも思わないの?』
『お前がどう思おうともう戻れない。子供達には会いたいし寂しい思いをさせて悪いが、どうしてもお前に会いたくない』
『……やっぱり最低ね。』
そう言うとブツッと電話が切れた。
その直後だった。また携帯が鳴った。
また妻かと表示を見ると今度は彼女からだった。
電話が彼女からだと分かり急いで取った。
『もしもし?K?』
何時もの彼女の声が聞こえる。
『もしもし?こんばんは。急にどうした?』
『どうもしないけど、声が聞きたくて…何かないと電話しちゃダメ?なんちゃって(笑)あっもしかして家だった?大丈夫?』
その言葉にハッとした。まだ家を出たことを彼女に言っていなかった。
『何もなくてもかけてきていいよ。俺も嬉しいから。あのさ、実は俺………』
俺は彼女に家を出たことを説明した。
『えぇっ!?でも実家って…親とかは?それに子供さん達はいいの?』
『まあ親には一度言ってあったから。もう毎晩言い合うのに疲れてしまったんだ。子供には本当にすまないと思ってる』
『そっか…辛いね。ごめんね…私のせいだよね』
彼女は暗い声で言った。何となく泣いているような声だった。
『Mが謝ることないよ。俺が悪いんだから。俺が逃げたんだよ。Mは何も悪くない』
『でも……もし私に会わなかったらこんなことにはならなかったよね…Kも苦しまなくてすんだのに…そう思ってしまうよ。実際そうだし。』
『バカなこと言うなよ!』
彼女の言葉に俺は怒鳴っていた。
『そんな悲しいことこと言うなよ!会わなかったらなんて一度も考えたことない。Mのせいで辛いなんてそんなことあるわけないだろ!Mと会えて本当に人を好きになる気持ちがどんなものかわかったのにっ!……そんなこと言うなよ…』
気付けば俺は泣いてしまっていた。
『ごめんね。会わなかったらよかったなんて、そんなつもりで言ったんじゃないよ。ごめんね…ごめんね…Kに会えて幸せだよ』
彼女も泣いていた。
そのまま二人とも泣いていた。
彼女はきっとまた自分を責めるだろうと考えると胸が痛んだ。
しばらくして『もうそろそろ寝ようか』と言った。
『うん…』
彼女は小さく返事をしてまたねと言って電話を切った。
俺はそのまま直ぐに眠ってしまった。
それから毎晩妻から電話がきた。
だいたい内容は同じだ。
『あの女と早く別れて。離婚なら慰謝料たくさん貰うからね。子供にも二度と会わせない。』
だいたいそんな感じだった。
そして俺も毎回
『彼女とは何があっても別れない。慰謝料も払うし子供達に会えなくなる覚悟も出来てる。最低で構わない』
そういったやり取りを毎日続けていた。
彼女はと言うといつも俺を心配していた。子供に会えなくて辛いんじゃないか、このまま離婚になるんじゃないか、本当に後悔しないようによく考えてねと言っていた。
そんな日が 3ヶ月程続いた頃だった。
彼女がまた働くことになった。
パートだが、彼女の好きな雑貨屋さんで働けるらしく彼女は喜んでいた。
仕事が決まった日に電話で
『お金貯めてまたKに会いたいな』
そういってくれて俺は凄く嬉しかった。
俺も彼女に会いに行くためにお金を貯めていたが、小遣いだけではなかなか貯まらない。
だが彼女に早く会いたい。彼女もそう思ってくれている。
俺は仕事が終わった後に深夜のバイトをすることにした。
勿論会社にバレるとやばい。
だが彼女に会いに行くためにはしないと無理だ。
俺は意を決してバイトを始めた。
仕事の後に深夜のバイトをして、寝る時間もなくまた仕事に行く毎日が始まった。
かなりキツかったが彼女の為だと思うと頑張れた。
彼女は俺の体の心配ばかりしていた。
そんな優しさがまた嬉しかった。
そんなある日、何時もの妻から電話がきた。
また同じように文句ばかりだと思っていたが違った。
『今度の休みに子供達と会って』
そう言ってきた。どうやら子供達が俺に会いたいと言ったようだ。
『わかった』
俺はそう言って直ぐに電話を切った。
子供達に会えるのは嬉しい。だがあの家に行くのは複雑な気持ちだった。
とりあえず、彼女にも子供達と会うことを伝えた。
彼女は嬉しそうに
『会えるの!?本当によかったね!久々だもんね。いっぱい遊んであげてね。』
と言った。なんだか俺より嬉しそうにしている彼女が可愛かった。
日曜日、子供達と動物園に出かけた。
妻からはお父さんは仕事だと聞いているみたいだった。
その日はいっぱい遊んだ。久々会う子供達は可愛かった。
無邪気にはしゃいでいる子供達を写メで撮った。
あっという間に時間は過ぎ、家に帰る時間になった。
気は向かないが、子供達を帰さなければいけないから仕方ない。
家につくと子供達を妻が迎えた。
俺はついでに着替えなどを取りにいこうと家にはいった。
寝室で服を詰めていると妻が入ってきた。
『また実家に行くの?本当にもう戻らないつもりなの?』
『そうだ』
『私達もう一度どうにかやり直さない?』
妻の意外な言葉に驚いた。
『はっ?今何て言った?』
『だから私達やり直さない?子供達のためにも』
妻がそんなことを言うなんて驚いたが、俺はそんな気持ちは微塵も無かったので正直に答えた
『それは無理だ。出来ない。彼女とは別れられないし、例え彼女と別れたとしてもお前とは絶対にやり直せない』
俺がそう言うと妻は黙って部屋を出ていった。
そのまま顔を会わすことなく俺は実家へ帰った。
その日の夜彼女と電話した。
彼女は今日子供達と遊べてよかったね。どうだった?何したの?
嬉しくてしょうがないというように彼女は忙しく聞いてきた。
そんな彼女を俺はますます好きになっていった。
彼女の為にも早く離婚したい。だが今日の妻の言葉を思い出すと相当な時間がかかりそうだ。
これからどう進んでいくのか、全く先が見えなくて不安だった。
あまり言わないがきっと彼女もそれは同じだろう。
俺がしっかりしなければいけない。
彼女に今日の事を話ながら俺はそんなことを考えていた。
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