真夏の思い出 フィクション

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2025/08/14 09:31(更新日時)

大会に向け、張り切っていく。
手を広げ、魚をイメージする。
そう先輩はアドバイスしてくれた。
『高一で初心者、それで水泳部ってふざけてんの?』
当時一番のエースだった人が言った。
無理もない。この学校の水泳部は
二年連続で全国を連覇している名門だ。
でも僕は本気だった。あの日の
オリンピックの中継を目の当たりにして、
いつか、自分も金メダルを取りたいと思った。コーチの指示で僕はエースのお手伝いに
任命された。
エースは僕をストレスのぶつけ場にした。
毎日練習が終わると、お前のせいでタイムが遅れた、彼女に振られた、などの理由で
一時間以上殴ってくる。ついに僕の顔は
青びょうたんのように腫れ上がり、
周りからは避けられるようになった。
そんな日々を過ごしていたある日、
隣りの学校から二年生が転校してきた。
奇遇にも、その二年生は水泳部に入部してきた。その人はまさに天使のようだった。
エースが僕を殴ろうとすると、先輩は
僕を庇い、『お前ストレス発散したいだけだろ。なら俺を先に殴れ!』とエースに
言い放った。それからも僕は先輩に何度も助けられた。そして、いつしか先輩に憧れ、
恩返ししたいと思うようになった。
それから僕はより一層真剣に練習をした。
練習後も、市民プールに行き、毎日2000mは泳いだ。そして二年生になり、いよいよ
試合の時がきた。先輩に言われてきたことを思い出し、スタートの瞬間を息を殺して待った。ピー、という音が鳴った。水に飛び込んでいく。序盤は下位だったが、先輩が重視していた"加速"を使って一位を泳ぐエースを
魚雷のように追い抜き、市内大会で優勝することができた。
試合後のインタビューで、どうやって、
初心者から這い上がってきたのか質問された。僕は客席から見守る先輩を見つめて言った。先輩のおかげです、本当にありがとうございます!と。
先輩は、涙を流していた。

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No.4347262 (スレ作成日時)

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