小愛的故事 --黒百合女学院 恋の時間割-- (確定清書版)
これはミクルや大人ちゃんねるでわたくしが書いていた
黒百合女学院シリーズの確定清書版です。
一時、忙しすぎて更新してませんでしたが、ちなみに
https://otonach.com/viewthread/2679596/
「黒百合女学院中等部 恋の時間割」
が旧シリーズです(初期版は行方不明です)。出来るだけこちらも完結させたいなと思いますが
確定清書版ということで改めて書き直してみたいな!と。
また、ミクルや大人ちゃんねるでは書いてない、某別サイトで書いていた、主人公(赤井あおい(わたくし))の、幼稚部時代の初恋エピソードも、確定清書版ということで、書いていきます。
我が頭痛と悩みの根源、エロ同人してる我がエロ姉氏みたいな文才も画才も、わたくしにはありませんが、姉氏に横取りされないうちに完結出来ればいいなあ。
ちなみに別バージョンの恋物語
https://mikle.jp/viewthread/2921306/
「神様からのプレゼントは変身能力」
も書いてます。
更新遅れがちになるかも知れませんが、アクセスいただくだけでも励みになります。共感くだされば舞い上がって、書いてない新エピソードも載せるかも知れません。
なお、ほぼ実話ですが、リアルに存在する個人や団体は特定出来ないよう脚色しております。
でも最近思うのは、小説板だけでも編集機能が欲しいですね。ミクル運営さま、改善お願いします。
では次レスから物語スタート!。
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《結婚式は高等部卒業式の日に・・・の時間》
ここは黒百合女学院山手校の隣のホーリネス希望教会。
無論、黒百合女学院牧師の牧会する教会である。
礼拝堂の重厚な扉が開く。
出て来たのは・・・
『中学生の結婚なんて違法だろ!💢』
そう、誰もが勘違いするほどに、礼拝堂から出て来た新婦は
背はかなり低く、胸の膨らみも無く、顔も幼い・・・まだメイクされてるから、それでも中学生程度には見えているものの・・・彼女の普段のスッピンの顔は、誰がどう見ても少し背の高い小学生・・・。
それでも新婦は今朝、黒百合女学院山手校高等部を卒業し、この春、黒百合女学院中央校大学に入る予定の、18歳なのである。
世に存在するロリコン男性が
「羨ま怪しからん!💢」
と花婿に対して、怒りと羨みと妬みで発狂しそうなほど、幼く清楚清純に見える。でも実は彼女の内面は悪魔なのだが、そんな新婦と手をつなぐ新郎が出て来た、礼拝堂の中から流れて聞こえる合唱は、賛美歌や聖歌ではなく
🎵掴まれた腕に振り向いて
抱きすくめられて動けなくなる
俯いた頬を手の平で掬って
くちびるを重ねた 狂おしいほど。
車を停めて海岸線歩いた
細い月が蒼く照らしてた
あなたの歩幅に合わせて歩いてみた
ねえ きっと あなたで良かった。
愛することは温かいこと
この気持ち始めてあなただけがくれたの~
数えきれないほど曲がり角くぐり抜け
そして今 あなたへと着いた
優しい背中にそっと寄り添ってみた
泣きたいほど しあわせだった。
愛する瞳 曇らぬように
あなたの笑顔をずっと守り続けたい~
負けないで どんな悲しみにも
輝く朝が来ると信じて
せつなさも喜びもあなたとならば
分かち合えるの そう永遠に~
このまま永遠に抱きしめていて。🎵🎵
結婚式の式中ではキリスト教会らしく、またクリスチャンスクールらしく、皆で賛美を歌ったものの、新婦が長年、聖歌隊に参加して来たための、新婦の好み『谷村有美の『恋に落ちた』』の聖歌隊合唱での送り出しなのだ。
そして、『谷村有美の恋に落ちた』合唱が終わった瞬間、花嫁がプーケを空高く放り投げる。
その、しあわせのプーケを二人同時に掴んでしまい、睨み合い火花を散らす若い女性がふたり・・・
>> 1
しあわせのプーケを二人同時に掴んでしまい、睨み合い火花を散らす若い女性・・・ではなく女学生が二人・・・。
二人はこの結婚式の主役、新婦と一緒に今朝、黒百合女学院山手校高等部を卒業した、新婦の同級生だった住吉うなと梅宮サナ
新婦、赤井あおいへの彼女たち二人の、六年余りの百合な初恋は、結局は実らず、あおいは12年越しの交際の一回り上の男性との初恋を実らせてしまい
しかも、その男性は自分たちの教師でありながら、あおいを巡る二人の百合な初恋のお邪魔者。この二人の恋敵。この二人にとって今日は来て欲しくなかった悪夢の日。
なのに、決意すれば行動は早い、竹を割ったような、誰もが彼女の内面は男の子か?と思うような性格のあおいは、「急がば回れ」ではなく「善は急げ」と言わんばかりに
卒業式の今日、憧れの瞬お兄ちゃん、黒百合女学院高等部の真鍋瞬先生と結婚式を挙げたのだ。
それでも、うなもサナもあおいが大好きで、卒業式から結婚式に向かうあおいの、ウェディングドレスへの着替えからメイクから全てを手伝っていたのだけれど。
「サナっ!てめぇはお嬢様なんだから、花くらい幾らでも買えるだろーが!。何でお嬢様のくせに庶民ぶりっ子してプーケトスに参加してんだよ!」
サナにぶつけられる、うなの罵声。
サナも負けじと
「あらぁ、うなちゃん、あなたのいつもの「国民平等!差別反対!」は口先だけの嘘八百だったのかしらぁ?。お嬢様でも欲しいものは欲しいの!。お嬢様差別断固反対っ!」
火花を散らして、大好きなあおいのバージン最後の思い出となるプーケを奪い合う二人。
昨夜も結婚式の最後の打ち合わせに、あおいの家に来ていた二人
あおいの部屋で、あおいと知り合う前の、あおいの幼いときのアルバムを見つけたサナは
「あおちゃん、この写真一枚一万円で売って!。全部買う!。だってだって、わたくし、あおちゃんが大好きなんですもの!」
これをうなが指を喰わえて黙って見ているはずもなく
「サナっ!てめぇはあおいの大切な思い出を札束で買うのかよ!。てか、わたしだってあおいが大好きなんだよ!独り占めにするんじゃねえ!」
並の男では勝てない、武術はかなりの腕前のうなとサナは、あおいの目前で殴り合いの奪い合いを演じたのだった。
>> 2
六年と少し前
百合の意味で同級生のあおいに一目惚れして
愛してしまった二人。
あれから二人はあおいに
何度も告白めいた事はしていたのだが。
サナはあおいを理想のお婿さんとして。
うなはあおいを理想のお嫁さんとして。
あおいに何度か告白めいた事はしていたのだが
「やだぁ!わたしみたいな悪魔のどこがいいのよ!。もっといい人いるでしょ!。わからないかなぁ、二人のすぐ側に・・・」
あおいにそうはぐらかされての連続で。
と言うのも
『うなとサナはお似合いなのにねえ。性格は真逆でも波長ピッタリなんだし、二人は百合なんだし・・・。なんでわたしに告ろうとするかな?。似合いの相手は目の前なのに。昔から『喧嘩するほど仲は良し』って言うのにねえ。恋は盲目か(笑)』
あおいはそう思っていたからで。
そして、あおいの結婚式前夜の今宵、あおいの部屋を訪れた二人は、あおいのアルバムを見つけてしまって。
かなりの武術の腕前の二人は、大好きなあおいの写真を巡り、殴り合いの奪い合いを演じてしまったのだ。
あおいへの最後の告白の機会だったかも知れないのに。
そして結局、ちびっこな体型なのに道場の娘ゆえ、この二人よりはるかに強いあおいを怒らせてしまい
「うるさーい!。あんた達いい加減にしなさいよっ!💢💢。何度も言ってるでしょ!。わたしはノーマルだぁ!。前もって言っておくけどね、わたしの結婚、邪魔したら、あんた達、死ぬよ?」
- << 5 「うるさーい。わたしはノーマルだ!。あんた達いい加減にしなさいよ。明日のわたしの結婚、邪魔したら、あんた達、わたしの手で死ぬよ?」 ついに、ブチっ💢とキレたあおい。 でも怒りながらも 「写真、ちゃんと焼き増ししてあげるから・・・ わたしのことそんなにまで・・・ サナちゃん、うなちゃん こんな悪魔なわたしを好きになってくれて ありがとね。わたしも二人が大大大好き!」 「でも、わたし、お兄ちゃんが、真鍋先生が好きなの 藍子お姉ちゃんが死んで失語してた あの日のわたしを守ってくれたみたいに わたしも・・・ 暖かい気持ちを一番はじめにくれたのは 真鍋先生、わたしのステキなお兄ちゃん・・・」 「だからごめんね・・・ でも二人が大好きだから、今日だけ特別に・・・」 「昔の恋人ごっこみたいには キスはもう、くちびるには出来ないけど 最後のキスしてあげるね。二人が大好きだから」 大好きなあおいに長いこと、長いことハグされ ほっぺにだけれどキスしてもらった、サナとうな。 それで『あおいの結婚式が終わるまでは』と 大人しくしていた、サナとうなの二人だったのだが 男性にバージンを捧げる前のあおい バージンのあおいとの、最後の思い出の品 あおいの投げたプーケトス 幸せのプーケを火花を散らし奪い合う、サナとうな。 それを微笑みながら、しあわせいっぱいな顔で眺めるあおい。 「ハレの結婚式でケンカはダメ!」 サナとうなによる、プーケの奪い合いをやめさせようとする、ゆかり・みずき・美佐・カネコ・敦子の、あおいの仲良しグループの、あおい組の面々。 今日の結婚式前に卒業した、黒百合女学院山手校での、あおい組の九人での、楽しかった日々が鮮やかによみがえる。 高等部でのあれは楽しかったね 中等部でのあれは何月だったかしら 初等部でのあれは何年前だったかしら みんなみんな、たいせつな宝物 恋物語は過去に遡る・・・ 「わたしの夢。 黒百合女学院初等部一年一組 赤井あおい わたしはお姉ちゃんのお兄ちゃんが大好きです。真鍋のお兄ちゃんは毎日遊んでくれて勉強教えてくれます。わたしは可愛いお嫁さんになって・・・」
>> 3
六年と少し前
百合の意味で同級生のあおいに一目惚れして
愛してしまった二人。
あれから二人はあおいに
何度も告白めい…
「うるさーい。わたしはノーマルだ!。あんた達いい加減にしなさいよ。明日のわたしの結婚、邪魔したら、あんた達、わたしの手で死ぬよ?」
ついに、ブチっ💢とキレたあおい。
でも怒りながらも
「写真、ちゃんと焼き増ししてあげるから・・・
わたしのことそんなにまで・・・
サナちゃん、うなちゃん
こんな悪魔なわたしを好きになってくれて
ありがとね。わたしも二人が大大大好き!」
「でも、わたし、お兄ちゃんが、真鍋先生が好きなの
藍子お姉ちゃんが死んで失語してた
あの日のわたしを守ってくれたみたいに
わたしも・・・
暖かい気持ちを一番はじめにくれたのは
真鍋先生、わたしのステキなお兄ちゃん・・・」
「だからごめんね・・・
でも二人が大好きだから、今日だけ特別に・・・」
「昔の恋人ごっこみたいには
キスはもう、くちびるには出来ないけど
最後のキスしてあげるね。二人が大好きだから」
大好きなあおいに長いこと、長いことハグされ
ほっぺにだけれどキスしてもらった、サナとうな。
それで『あおいの結婚式が終わるまでは』と
大人しくしていた、サナとうなの二人だったのだが
男性にバージンを捧げる前のあおい
バージンのあおいとの、最後の思い出の品
あおいの投げたプーケトス
幸せのプーケを火花を散らし奪い合う、サナとうな。
それを微笑みながら、しあわせいっぱいな顔で眺めるあおい。
「ハレの結婚式でケンカはダメ!」
サナとうなによる、プーケの奪い合いをやめさせようとする、ゆかり・みずき・美佐・カネコ・敦子の、あおいの仲良しグループの、あおい組の面々。
今日の結婚式前に卒業した、黒百合女学院山手校での、あおい組の九人での、楽しかった日々が鮮やかによみがえる。
高等部でのあれは楽しかったね
中等部でのあれは何月だったかしら
初等部でのあれは何年前だったかしら
みんなみんな、たいせつな宝物
恋物語は過去に遡る・・・
「わたしの夢。
黒百合女学院初等部一年一組 赤井あおい
わたしはお姉ちゃんのお兄ちゃんが大好きです。真鍋のお兄ちゃんは毎日遊んでくれて勉強教えてくれます。わたしは可愛いお嫁さんになって・・・」
- << 7 《あおい七歳 恋の始まりの時間》 京都市内の某産科病院。さっきまでの土砂降りも一転、空は快晴となり、白い月が青空に浮かんでいる。多分、離れた場所からこの病院の方角を眺める人の角度によっては、上空に虹があったかも知れない。 桃子の出産、長女藍子、長男貴志、次女碧(みどり)に続いて生まれそうなのは・・・。 すでに三人の子の父なのに、七人の孫の祖父なのに、出産に慣れないと言うよりは、産科に男の居場所はなく、落ち着かない男たち。 桃子の夫、つまり赤ちゃんの父の幸一郎と祖父の晋太郎は、病院外のパーキングで缶コーヒーを片手にタバコを燻らせていた。 六人の孫娘が生まれたときは、何故か土砂降りだった赤井家。と言うか、女の子が生まれるときは何故か雨降り・・・近年、そんな歴史の赤井家。 その二十九代当主の祖父の晋太郎は、女の子が生まれるはずと、予感していたらしいが、その予感も的中。 「晋太郎さん!幸一郎くん!生まれたぞ!女の子だ!」 そう叫びながら来たのは、黄大泉こと赤井晋太郎の、黄家八極拳の同門の師兄弟の、渡忠人先生だ。 明治初期に旧武家の赤井家に婿入りした、台湾人の黄響鐘。その名字が黄家八極拳の宗家の黄四海と同じなのは、たまたまの偶然の産物なのだが。 ともあれ台湾では黄大泉の武名で割と有名なる、祖父の赤井晋太郎。 日台混血時の赤井家当主であり、赤井家再興のお姫様、赤井葵から、また赤ちゃん誕生に合わせるかの晴天と青空に浮かぶ月から 赤ちゃんを赤井あおい、武名を黄蒼月と命名したのである。 そして、いつしか時は流れ、あおいは青空に浮かぶ月のような色白の、これぞ旧武家の末娘な、蝶よ花よと、甘やかされたお嬢さまに育っていた。そんなクリスマス間近 時は・・・ 『わたしの夢 黒百合女学院初等部一年一組 赤井あおい わたしは藍子お姉ちゃんの大好きだったお兄ちゃん、真鍋の瞬お兄ちゃんが大好きです。 お兄ちゃんは、いつもわたしをお風呂に入れてくれます。お兄ちゃんは毎日、わたしに勉強を教えてくれて、遊んでくれます。わたしはそんな優しいお兄ちゃんが大好きです。 わたしはお兄ちゃんのお嫁さんになって、美味しい料理をたくさん、たくさんたくさん、作ってあげたいです・・・』 時はこの作文の半年前に遡る。
>> 5
「うるさーい。わたしはノーマルだ!。あんた達いい加減にしなさいよ。明日のわたしの結婚、邪魔したら、あんた達、わたしの手で死ぬよ?」
つ…
《あおい七歳 恋の始まりの時間》
京都市内の某産科病院。さっきまでの土砂降りも一転、空は快晴となり、白い月が青空に浮かんでいる。多分、離れた場所からこの病院の方角を眺める人の角度によっては、上空に虹があったかも知れない。
桃子の出産、長女藍子、長男貴志、次女碧(みどり)に続いて生まれそうなのは・・・。
すでに三人の子の父なのに、七人の孫の祖父なのに、出産に慣れないと言うよりは、産科に男の居場所はなく、落ち着かない男たち。
桃子の夫、つまり赤ちゃんの父の幸一郎と祖父の晋太郎は、病院外のパーキングで缶コーヒーを片手にタバコを燻らせていた。
六人の孫娘が生まれたときは、何故か土砂降りだった赤井家。と言うか、女の子が生まれるときは何故か雨降り・・・近年、そんな歴史の赤井家。
その二十九代当主の祖父の晋太郎は、女の子が生まれるはずと、予感していたらしいが、その予感も的中。
「晋太郎さん!幸一郎くん!生まれたぞ!女の子だ!」
そう叫びながら来たのは、黄大泉こと赤井晋太郎の、黄家八極拳の同門の師兄弟の、渡忠人先生だ。
明治初期に旧武家の赤井家に婿入りした、台湾人の黄響鐘。その名字が黄家八極拳の宗家の黄四海と同じなのは、たまたまの偶然の産物なのだが。
ともあれ台湾では黄大泉の武名で割と有名なる、祖父の赤井晋太郎。
日台混血時の赤井家当主であり、赤井家再興のお姫様、赤井葵から、また赤ちゃん誕生に合わせるかの晴天と青空に浮かぶ月から
赤ちゃんを赤井あおい、武名を黄蒼月と命名したのである。
そして、いつしか時は流れ、あおいは青空に浮かぶ月のような色白の、これぞ旧武家の末娘な、蝶よ花よと、甘やかされたお嬢さまに育っていた。そんなクリスマス間近
時は・・・
『わたしの夢 黒百合女学院初等部一年一組 赤井あおい
わたしは藍子お姉ちゃんの大好きだったお兄ちゃん、真鍋の瞬お兄ちゃんが大好きです。
お兄ちゃんは、いつもわたしをお風呂に入れてくれます。お兄ちゃんは毎日、わたしに勉強を教えてくれて、遊んでくれます。わたしはそんな優しいお兄ちゃんが大好きです。
わたしはお兄ちゃんのお嫁さんになって、美味しい料理をたくさん、たくさんたくさん、作ってあげたいです・・・』
時はこの作文の半年前に遡る。
>> 7
🎶聖し(きよし)この夜 星は光り
救いの御子(みこ)は 馬舟(まぶね)の中に
眠り給う(たもう) いと安く
聖しこの夜 御告げ(みつげ)受けし
牧人(まきびと)たちは 御子の御前(みまえ)に
額ずきぬ(ぬかずきぬ) 畏みて(かしこみて)🎶
京都の街はクリスマスシーズン真っ盛り。クリスチャンホームのあおいのお家の赤井家の邸宅、旧武家屋敷も、クリスマスを迎え、全能の父なる神に感謝しつつも、どことなく浮ついていた。
赤井家では、自前の会社も経営しているが、塾と道場も経営しているせいで、この時期は出入りする子どもや若者が非常に多いためである。
そして、この日は、クリスマス前の最後の日曜日、クリスマス礼拝と、教会日曜学校のクリスマス会、そして聖歌隊によるクリスマスイヴ降誕コンサートの練習から帰宅した頃である。
あとは三日後の24日の降誕礼拝を残すのみ。
時はすでに夕闇の夜であった。
家族や親戚、赤井家の使用人、すべてが音楽好きのために防音加工された離れの中、あおいと姉のみどりが歌っている。
あおいの通う黒百合女学院山手校の、幼稚部と初等部の合同のクリスマス会で、あおいの年長さんクラスが歌う聖歌の練習に、下手ながらもなんとかピアノは弾ける、九つ上の姉のみどりが付き合っているのだ。
「あおいもなかなか上手になったわね~」
「へへーん!。だって毎日練習してるもんっ!」
「じゃあ次は「もろびと来ぞりて」やるよ」
🎶諸人(もろびと)来ぞりて 迎え奉れ(まつれ)
久しく待ちにし 主(しゅ)は来ませり
主は来ませり 主は 主は来ませり
平和の君なる御子(みこ)を迎え
救いの主(ぬし)とぞ 誉め讃えよ(たたえよ)
誉め讃えよ 誉め 誉め讃えよ🎶
離れの防音室の扉が開く。
顔を覗かせたのは、あおいの一回り上の長姉の藍子だ。
「あおい~わたしの部屋にいらっしゃい。あなたへのクリスマスプレゼントのワンピースドレス出来たから。裾はまだ仮縫いだけど、サイズ確かめたいの」
>> 8
夜が明ける。今日は月曜日の朝。
「あおい~美佐ちゃんも
起きなさいったら
今日はクリスマス会だよ~
早く支度して幼稚部に行かないと
ケーキなくなっちゃうよ?」
ママ代わりにあおいを揺り起こす、一回り上の姉の藍子。
「ん、んーん
やだぁ!寒いよ~まだ寝たい」
「ふーん、幼稚部のクリスマス会、行かないんだ?
サンタさんに明後日、プレゼント貰わないんだ?」
「だっ!ダメぇ!
それはイヤ。絶対にヤだ!」
「でしょ~
ほら、抱っこしてあげるから
ベッドから出なさい」
「んー眠いんだけどな。藍子お姉ちゃんおはよ
ねえねえ、あのワンピ着せてっ!あれで行くっ!」
「はいはい。じゃあパジャマとおパンツ自分で脱ぐの」
パジャマを脱がせパンツ穿かせ、ワンピ着せる藍子。
赤井家の広い広いダイニング、と言うよりは、昔ながらの大広間。と言っても二十畳近くあるが・・・。いちばん遅くに目覚めたのは、二番目の姉のみどりだ。
祖父の晋太郎。祖母の桐子、父の幸一郎。珍しく朝に在宅の母の桃子、兄の貴志は全寮制高校でいないが、長姉の藍子。祖父の早朝拳法教室に通う、初等部の従姉妹の紫蘭と青蘭の双子。
あおいの遠戚かつ同級生で、ママが不在がちの立花美佐。
そして末娘のあおい。
祖父の晋太郎と父の幸一郎の家業のひとつが武術家のため、ママ桃子がパティシエのため、朝は早い赤井家。
その月曜日の朝食メンバーの皆が揃う大広間に、次姉のみどりが眠い目を擦りながら顔を出す。使用人がまだ来ていない、朝早い時間のため、ママ桃子がみどりのお茶碗にご飯を盛り付けながら
「ねえ、みどり、あなた中学はもう昼までなんだから、今日はあなたがあおいと美佐ちゃんを迎えに行ってね」
「うん。わかってる。あおい、今日はわたしがお迎えだからね。美佐ちゃんもママがダメだったらわたしだからね」
「わ~い!今日はみどりお姉ちゃんがお迎えだぁ」
「だけどね、予定はいつ変わるか、わからないんだから、みどりと藍子、ちゃんと連絡取るのよ。あおいも、藍子お姉ちゃんがお迎えかもだからね」
「はーい!」
ハモるかのような、娘たちのお返事。
「じゃあママ、仕事行くわね。おばあちゃん後をお願いします。藍子、あおいが間に合うように幼稚部にね」
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