20年振りの謝罪

レス3 HIT数 626 あ+ あ-


2019/01/28 16:55(更新日時)

20代前半の頃、某県の山奥にある飲食店で住み込みでバイトをしていた。
その飲食店は、シーズン中は100人単位の団体が引っ切り無しに入る店で、店舗自体はかなり大きいもの。
そこを経営しているのが、社長のA氏。A氏は当時で40代半ばくらい。奥さんと子供が3人居た。

店で働くのは、社長と奥さん、社長の長女の高校生、バイトの俺、同じく住み込みバイトのH君、あと料理長と料理長の奥さん。
たったこの人数で100人以上の団体の相手をしなければいけない。

翌日に団体客を控えたある日の晩、H君と2人で100人〜150人の席のセットを始めると、窓の外からエンジンの掛かる音がした。

社長A氏の高級車だった。家族で、遠方の繁華街に出掛けて行った。
いつもなら、社長と奥さん、たまに高校生の娘さんと俺達バイト2人でセットするのに、俺達2人だけで席のセットする事に。
これが若い俺達には癇に障った。2人でセットするとなると、3〜4時間掛かるし、他にもやる事が山積みだったからだ。

一気にやる気を失った俺とH君は、話し合った結果、社長家族が戻る前に、ここから出て行こうという事になり、荷物をまとめて店を出た。

そのまま、タクシーに乗り駅へ向かい、実家に向かった。
H君とは、しばらく交遊はあったものの、程なくして疎遠になった。

それから約20年。俺も結婚し、子供ができ、仕事に追われる毎日。そんな中で、いつも頭を過るのはあの日の晩の事。

幼稚だった。どうせ、店を辞めるにしても店のセットだけはして行くべきだった…と。
あの後、どうなったんだろう。
夜中にセットしたのだろうか、誰か手伝いを呼んだのだろうか、と。ここ数年はずっとその事を悔やんでいた。

ある日の晩、妻に事の成り行きを説明し、店の社長に謝罪しに行きたいと話すと、快諾してくれた。
そして、先々週の三連休中日に家族と一緒に、バイトしていた飲食店がある某県に向かった。
店が今でも運営されているのはネットで確認済みだった。

謝罪とは言ったものの、どんな顔をして何を言えばいいものか、まず会ってくれるのかも分からなかった。
色々考えているうちにタクシーが店の前に着き、自分でも鼓動が早くなっているのがわかった。

外から店内を眺めると、連休中日という事もあって、お昼から大盛況だった。忙しい時にタイミング悪いかなーと思っていると、店の前で、雑誌を丸めたものでゴルフの素振りをしている白髪の男性が居た。社長のA氏だとすぐわかった。

家族と一緒に社長近づくと、「あ、いらっしゃいま…って、おい!◯◯(俺の名前)か!?」と俺の顔を覚えていた。

はい、あのその節は…と謝罪の弁を述べようとすると、社長が
家族に気づき「お、お前の嫁さんと子供か!?」と言葉を遮った。

はい。三年前に結婚して、子供も授かりました。と伝える。
すると社長「ちょっと待ってろ!」と急ぎ足で店内に戻って行った。
謝罪だけして帰ろうと思っていた俺と家族は、その場で立ち尽くしていた。

間も無くして社長が戻ってきて、「おう、寒いから店入れ!」と言い、忙しそうだからと断るも強引に店に連れて行かれた。


(続く)


No.2786564 (スレ作成日時)

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No.1

店に入り、店内を見渡すと、昔と変わらないレイアウトで、若干新装したのかなーって感じだった。

社長は奥の個室、当時従業員同士で『VIPルーム』と呼んでいた場所に俺達を誘導してくれた。

社長が「ちょっと待ってろ!茶持って来させるからよ!」
いや、お構いなく…という言葉を発する前に社長は厨房の奥に消えていった。
参ったなーと嫁を見ると、嫁は子供と興味津々で店内を見渡していた。

程なくして、やってきたのはお茶と和菓子をトレーに乗せた社長の奥さんだった。
「◯◯ちゃん、ようきたらー!」と昔と変わらぬ方言全開の奥さんは、少しシワと白髪はあったが今も変わらぬ美人だった。

あ、あの、その節は…本当に多大なご迷惑を…

と、謝罪を言い掛けた時に、奥からやってきた社長の横の人物を見て絶句した。割烹着をまとったH君だった!

え?え?H君!?状況が全く把握できなかった。
話を聞くと、H君はその後、社長に電話して謝罪し、働かせて欲しいとお願いしていたとの事。

さらに驚くべきは、Hくんの奥さんが当時高校生だった社長の娘さんだった。お子さんも生まれていた。
「俺も今やジイさんだわ(笑)」と社長が笑った。

社長、その節…いえ、あの日、団体のお客様が入ってるにも関わらず、店を出てしまい、本当にすみませんでした!
H君に全て放り出して店を出ようと言ったのも俺です。とんでもないご迷惑をお掛けしました。と頭を下げた。

すると黙って聞いていた社長が「ん?Hも同じ事を言ってたけどな(H君が俺をそそのかしたと)」言い、Hを横目で見ながら笑った。
「まあよ、確かにお前らが出て行ってショックだったし、大変だったけどよ、俺も反省したんだよ。お前らに任せっきりで遊び行ってたからなー」
すると社長の奥さん「そうらー!◯◯さん(社長)は今でもすぐ居なくなるらで!」と場を和ませてくれた。

「ところでよ、お前飯は食ったのか?食って行けよ!」と言ってくれたが、これ以上長居するのも迷惑になると思い、丁重に断った。

それから五分ほど、H君も交えて談笑し、店を後にした。
その後、少し近隣を観光してから帰路につき、帰りの車中で妻に「良かったね、謝罪できて。」と言われた時に、初めて肩の重荷が無くなったと感じた。少し、涙腺も緩くなっていた。



No.2

良かったですね。

そういうご縁を大切にし、
時々食事しに行ってあげましょうよ。

No.3

Hさんの結婚が驚きですね💦当時内緒で付き合ってたとか!?

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