孤独

レス3 HIT数 517 あ+ あ-

名無し
2018/12/23 03:31(更新日時)

「ただいま」
ドアを開けると仕事帰りの格好の中年女が上がり込んでくる。
「おかえり」
俺は中年女の荷物に目をやる
「終わったら食べよう」
そう言って女は前に俺が好きだと言ったモンブランの入った箱を俺に手渡す。
俺はもう一つの袋が気になっていたのだがそちらの方の説明は敢えてなかったようだ。
女は慣れた様子で袋を持ったまま浴室に向かう。
女がシャワーを浴びている間に戸棚から薬を取り出しながらもうそろそろこの女とも終わりかなと考える。
由香と知り合ったのは半年前、図書館の駐車場で車をぶつけられたのがきっかけだった。
修理代のやり取りを行う際に連絡先を交換し最後の支払いの際に向こうから訪ねられた。
「毎週金曜日の閉館時間前に来られてますよね、私も仕事の最終日に本を借りるんです家帰ってもやる事なくて」
「そうなんですね、僕も一人なんで似たようなものです」
一人という言葉に由香の態度が変わったように思えた、礼儀正しい事故の相手から一人の女としてのメッセージが送られてくるようになった事を覚えている。
そして修理代の支払いを振り込みではなく手渡しで行いたいと言ってその週の金曜日の閉館時間前に図書館の地下駐車場で待ち合わせをした。
現れた由香はコーヒーを片手にドーナツの紙袋を持って俺の代車の助手席に乗り込んできた。