あの人が俺の前に現れた

レス201 HIT数 113909 あ+ あ-


2016/06/29 14:57(更新日時)

俺は異性を好きになったことがない。

30年間生きてきたが、
まるでわからない。

だが、何だかおかしいんだ。
あの人は何者なんだ?

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No.2019517 (スレ作成日時)

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No.1

恋だの愛だの、なんじゃそりゃ…

俺は生まれてから30年
特定の女を特別に好きになるなんてことは
経験がない。

そうだ。
俺は相当の変わりもんだよ。

いつからだ?
自分が変わってるということに
気づいたのは…。

恋愛感情だけじゃない。
俺にはその他にも欠けた感情がある。

No.2

恋愛感情なんてなくても
セックスはできるんだよ。
俺は女に困ったことはない。
なんだろうな、
女ってのは、俺のように少し変わった男に惹かれるのか?

それはもう勉強済みだ。

俺は恋愛も、その他の感情についても
研究してきたつもりだ。

No.3

俺は俗に言うSだ。
それも究極のな。
だからセックスして本当の俺を知れば
女は怖くなるみたいだ。
逃げていくやつもいる。

だが、俺には関係ない。

逃げたいやつは逃げればいいんだ。
セックスの相手なんてすぐに見つかる。

No.4

女の好きっていう感情は
束縛と嫉妬が伴うんだな。
なぜ特別な存在になりたいのか。
なぜ俺の全てを知りたい?
なぜ好きとか
愛してるとか
そんな言葉を求める?

No.5

好きだから付き合ってください
だって?
でも俺はこういう男だから
あんまり期待しないほうがいい。
それでもよければ付き合ってもいいよ。

俺と付き合いたいと言ってくる女は
俺に何を求めてるんだ?

女を観察していても、いまいち読めない。
急に泣き出したり、癇癪をおこしたり
昨日は誰と何してただのしつこく聞いたり。
何で連絡くれないの?ってなんだ?
わたしたち付き合ってるんだから
せめて1日に一回くらいメールくれてもいいでしょ!って…
おいおい、俺ははじめに言ったはずだ。
忙しいから連絡できないことが多いし、
何よりオマエに好きいう感情がないことは。

それでもいいの
と言ったくせに、女はこれだからわからん。

No.6

あたし、やっぱりダメかも…別れて!

ほらなー。またか…。だから言っただろ。
人の気持ちは必ず変わる。
言葉なんてものはな、当てにはならないんだよ。全ては女がそれを証明してくれる。

好きだとか愛してるとか、所詮は
その時の高ぶった感情から発せられる鳴き声みたいなもんで、
そこに永遠や真実なんてあるわけがないんだよ。

結局自分が満たされなければ、簡単に崩れてしまうような、そんなにまでも
もろくて、当てにならない感情なんだよ
恋愛なんてもんは。

No.7

俺のこと、可哀想な人だという人もいるな。
俺が孤独に見えるんだと。
愛だの恋だのがわからないと
可哀想にみえるらしいな。
まあ、俺は家庭にも恵まれていないしな。

でも、そんなところに
母性本能をくすぐられるんだと。
女ってのは、ある意味不思議な生き物だ。
理解はできないが、ありがたいな。

こんな俺に興味をもち、近づいてくる女がいるからこそ、俺も何かと便利に使わせてもらってるしな。

No.8

顔がきれいな女、
スタイルがいい女、
優しい女、意地悪な女、
傲慢な女、積極的な女、
欲の深い女、頭のいい女、バカな女、
いわゆる天然の女…
いろいろいるもんだな。

俺は何人もと付き合ってきたが、
どの女も研究材料でしかなかった。

食事をしていても、セックスをしていても、
まあ、特別な気持ちはわかない。

大事だと思えないんだな。どうでもいい存在だ。だから、乱暴なこともできる。
苦しんだり、悲しんだり、泣き叫んだりする姿に興奮するし。

相手が去っても何も感じない。

冷たい?
よく言われるな。
だからって、何を変える必要がある?
変えられないんだよ。気づいたらこの俺だったんだから。

No.9

あの人に初めて会ったのはいつだったか。
後でわかったんだが、
俺より10も歳上だった。見た目は、そんなに歳を感じないな。
一般的にいえば美人だな。それから、一般的にいえばおばさんだ。
その人は、本当の俺を知らないから
にこやかに接してくれた。
感じのいい人だな、それ以外は何も感じなかった。まあ、そのくらい普通のレベルの女だった。
初めて会った時はな。

No.10

そのおばさん。
そうだな…俺がSだから、その人はMとでも呼ぶか。

俺の仕事仲間の知人ということで、
ある日、俺の仕事を手伝ってもらうことがあった。
気がついたらもう昼飯の時間で、他の仲間は別の仕事場にいってしまい、俺はMと二人になった。
時間が時間だしな。近くにあるラーメン屋にMを誘った。

下心?

なかったわけじゃない。まあ、普通におばさんだが、普通に綺麗だし、いい人だしな。

今まで一緒に仕事をしたことはあったが、食事をしたのは初めてだった。だから、とりあえず、様子見だ。俺の得意な観察から入ることにした。

No.11

俺はチャーシューメン、
Mは普通の醤油ラーメンだったかな。

私、猫舌だから…と言って
ゆっくり食べ出したM。

俺はもともと早食いだから、どんどん食べた。

いつもなら、ここで、一緒に食べている相手には、引かれてしまうところだ。
あんまり俺が豪快に早く食べるので、
ねえ、もっとゆっくり食べてよ
とか
どうしよう…追い付けない…
とか
言われてしまうところだが。

Mは俺の食いっプリを見てこう言った。

あら、早い!それじゃ、私も頑張るからね

げっ、マジかよ。
深呼吸したMは、俺のスピードに合わせて
一気にラーメンをすすりはじめた。

猫舌だろ?(←俺の心の声)

時々、アチッアチッと言いながら、すごい勢い。
アチッって…。
普通ならここは、あっつ~い!じゃないのか?(笑)

結局Mは、ほとんど俺と同じくらいに食べ終えた。

すっごく早かったでしょ!

と、勝ち誇ったようなMを見て、俺は苦笑いした。

そ、そうだね。

この人、変わってるなぁ…。

No.12

ふとみると、Mの左手薬指に指輪が光っていた。
そうか、この歳なら、結婚してるよな、フツウは。
俺はSだが、常識くらいはしってるつもりだ。
歳上には敬語をつかえるぞ。

Mさんは、お子さんいらっしゃるんですか?

はじめて質問した。まあ、社交辞令レベルの質問だがな。
Mは指輪をちょっと触りながら答えた。

はい。中学生の子どもが一人…。

へえ。中学生の子どもがいるとは、正直驚いたな。でも、40くらいの歳ならこれもおかしくないな。

No.13

それから何の話をしたかな。
いろいろ話したが、どれもこれも話題が平凡な割には、笑ってしまった。
Mの話は、なんだ?何がおもしろいのかよくわからないが、笑ってしまう。

顔か?表情がおもしろいのか?
いや、話し方か?
ジェスチャーがおおげさ?
いや、お笑いのセンスがあったりして?

俺は話をしながら、一生懸命分析しようとしていた。

No.14

ラーメン屋を出ると、
俺たちは別々に帰った。

俺は、あんまり楽しかったので、
素直にまた話がききたいなと思っていた。
まあ、でもそんなこと言ったら、
既婚者のMに気持ち悪いと思われてしまうだけだろうし。しかも、キャラじゃないしな。
普通に挨拶して別れた。

No.15

午後の仕事を早めに切り上げて
家に帰ってきた俺は、
スマホのチェックをしていた。
明日の仕事のスケジュールやら、いろいろだ。

ふとMの顔が頭に浮かんだ。

おもしろい人だったな。ああいう人もいるんだな。
俺は職業柄、沢山の人を見てきたつもりでいたが…。

No.16

よく、会ったとたんビビっときたとか、
赤い糸を感じたとか
胸が苦しいとか、キュンキュンするとか?
そういった非科学的な現象を
あらゆる人たちから聞いたりするし、
恋をしている人間の、突然興奮して
大声をあげてキャーキャー言ったり
跳び跳ねたりする姿も見てきたりもしたが、

まるで理解ができない。

あれは、なんで恋愛の話になると
男も女も、興奮したり、顔を赤らめたりするんだ?
ドキドキするって、それは心臓に異常をきたしているんだろう?

No.17

でもな、俺だって人間だ。
そういう感情とか、症状とか、
一体どんなものなんだろうなんてことは考えて、
ちょっと経験してみたかったりもした。

でも俺には無理だった。
縁のない世界だった。わからないものは仕方ない。割りきるしかないだろう。

ずっと諦めてきたんだ。
そして、いろんな女から諦められてきたんだからな。

恋愛なんて知らなくても生きていけるさ。
生きてきたんだしな。

No.18

Mと2回目に会ったのは、現場での仕事の時だ。ラーメン屋の時とは感じが違っていた。

その日は、黒髪を1つに束ねていた。
凛々しくて、男の俺からみてもかっこいい。
男らしくも見える。

改めて気づいたが、
Mは、すらりとした長身で、手足が長い。

言っておくが、このくらいの女性のチェックは
いつでもしている。
Mに限ってのことではない。

それから、べつに、年上に弱いわけでもない。
俺は年下だろうが、年上だろうが、分け隔てなく、どの層の年齢とも付き合ってきたしな。
50を越えた女性ともベッドを共にしたことだってある。

No.19

Mは、俺に気づくと、にこにこと近寄ってきた。

先日はありがとうございました。

Mは、そう言って丁寧に頭を下げた。

No.20

俺とMは、職場が違うんだが、
ジャンル的に同じところがある。
出会いも縁だな。仲間の知り合いっていう出会いも、まあ、ありがちなことだがな。

No.21

その日は、同僚もMも含め3人で飯にすることになった。
現場近くのファミレスだ。
話の内容は仕事のこと。まあ、当然だな。
Mは、聞き上手だが、
自分の意見もきちんと言える。
観察中の俺としては、

この人はバカじゃないな

と感じた。

No.22

俺は、バカは嫌いだが、
利口すぎる女もいやだ。どこか
自分の知識を鼻にかけて威圧的な女は
この手でそのプライドをズタズタにしてやりたくなる。
まあ、バカな女は相手にもしたくないから
利口な女の方が、関わりがいがあるというものだ。

Mは、どんなタイプだ?

利口だが、本当の利口なタイプだな。
本当に利口なやつは、自分を出しすぎない。
でも隠しすぎない。

話はどんどん膨らむ…
話が終わらない。おもしろい。
Mの考え方は、おもしろい。

No.23

この時、
自分の中に不思議な感覚が襲ってきたのを
今でも覚えている。
不思議すぎてわけがわからなかった。

この人と関わることは、俺にとってきっとプラスになるに違いない。

そんな感じだったのか…
それから、今振り返ると多分あの時に
直感的に

この人なら俺をわかってくれるかもしれない

と感じたんだろうな。

それと同時に

この人を俺の思い通りに動かしてやりたい

とも思ったな。

でも、あの不思議な感覚は、今でも説明が難しい。

No.24

これから
連絡をとりやすいように…ということで
どちらからともなく
連絡先の交換をした。
メールアドレスと電話番号。

まあ、ここからが俺の腕の見せどころか…。

俺!いつもの調子を取り戻せ!

とにかくこの女と寝てみなければ
はじまらないだろう?

No.25

それから
メールのやりとりが始まった。
内容はいたって真面目。
仕事に関係した話ばかりだ。
仕事に対しての情熱は、同じものを感じた。
Mの文章はとても丁寧で、読みやすく、
興味深い内容だった。

俺は、正直、
今までの女とのメールには疲れていたんだ。
くだらない絵文字やら、顔文字やら
そんなものを入れないと、感情を表現できないやつらばっかりだったし、
しかも、内容がほとんどのないのに
つながっていたいだけのメールなんかも
うんざりだった。

Mとのメールは、一週間に一度あるかないか、
二週間くらいあくときもある。
それくらいが、心地よかったし、
内容が濃いのでメールが楽しみでもあったな。

No.26

俺は、何とかMのプライベートを知りたかったが、なかなかその話題にはならなかった。

なんだろうな。
この女はスキがないのか。

だだ、ひとつわかったことがある。
Mの旦那は、2年前に他界していた。
事故でとしか言わないから別に詮索しなかったが。
まあ、これで、もし俺がMと何かあっても
不倫にはならないわけだな。
別に俺としては不倫になろうが構わなかったが。

Mは、きっと死んだ旦那のことを今でも想っているんだろう。
指輪を外していないということは
そういうことだろうな。

No.27

俺は、その日も別の女を抱いていた。
俺を求める女の気持ちはわからないが
利用してやる。

俺の言う通りにするんだな。

女も性欲の、かたまりだ。
セックスをして、生きていることを実感したいのか?
俺を独占しているような錯覚で満足しているのか?
俺がおまえを好きになると思うか?
こんなセックスくらいで?

俺は、ただ、俺の存在を確信するだけで
おまえのことは何とも思っちゃいないんだ。

こんなことで愛を確かめあってるやつらが
滑稽でもあり
羨ましくもあるな。

No.28

俺は、Mと寝てみたかった。
どんな感じ方をするのか見たかった。
喘ぐ声も、顔も、調べたかった。

だから、仕事の打ち合わせにこじつけて
二人で会う約束をしたわけだ。

Mは、何も疑う様子もなく承知した。

でもな、いきなり襲うほど俺はバカじゃない。
1回やるだけの女はいきなり襲うが
Mのような女には、そのやり方は利口じゃない。

No.29

待ち合わせたのは、いつか昼飯を一緒に食べたファミレスだった。

俺の方が遅れた。

Mは、

こんにちは

と気持ちいい笑顔をみせた。

俺は、素直に、綺麗な顔立ちだなと思った。

1対1で向い合わせで座ったのは
はじめてだった。
ラーメン屋ではカウンターだったし
その次は、二人きりじゃなかったしな。

Mは、化粧してるんだろうか。
…いや、しているな。
ナチュラルメイクってやつか?
目のまわりに線をかいたり、つけまつげをつけたり、一切していない。
こんなシンプルなメイクなのに、綺麗にみえるのは、顔立ちが整っているからなんだろう。
なんてことを、考えたりしていた。

No.30

あ、まただ。
なんだ、この感覚は。

Mといると、いつもの調子が狂う。
俺がリードしているようで、Mの雰囲気に飲まれる。
でもこの感覚がなぜか気持ちいい。

Mは、しっかりした印象だが、なにか
抜けている。マヌケ…?
ドジっぽいし、落ち着きはないし
相変わらずおもしろい。
それなのに、なんだろうな。
この安心感は。

俺は、母親の愛に飢えて育ったから
この人に母を求めているのだろうか?

10歳も年上。そうかもしれないな。

俺は、Mを観察しながら
自分のことも、そう分析した。

No.31

俺は、いまだかつて
年上の女に、この言葉を当てはめたことがあるだろうか。

かわいい人だな

俺は、素直にそう思ってしまった。
かわいい服装の女や、可愛さを演じる女なら
山ほど見てきた。

しかし、かわいいという言葉が
当てはまるのが、この40歳のMだなんてな…
おかしいだろ?
俺も自分で笑えたよ。何を血迷ったことを考えているのか…。

でも確かにかわいい人だ。
子どものように純粋な感性をもちながら、
男のような論理的な考え方もする。
理性と感情のバランスがとてもよく、
相手をスッと受け入れ、また、相手からも受け入れられる…
反応が素直で、嫌味や、いやらしさがなく、
そこに裏を感じない。
わざとらしくない。

そこに、人としてのかわいらしさを
感じた。

こんなに誉めても、何もでてきやしないのに
俺は、ここまで観察していた。
心の中だけだがな。

No.32

だいたい、いつもなら
二人で食事する段階で
女が俺を好きになるパターンで、

そのあとは別に苦労もしないで
セックスにもちこめるはずなんだが。

Mはもう少し時間がかかりそうだな。
俺は、そう思っていた。

でも強引ではあったが、
次もまた二人で食事をしたいことは
伝えて、OKの返事はもらえた。

これからだな。



No.33

噂によると
Mは、かなり人気者らしいな。

女性からも好かれているらしい。

男性からも人気があり、年齢関係なく
みんながMのまわりに
集まるんだとか。

そりゃそうだろう。
俺だって、また会いたい、話したいと
思うんだからな。

なんだろうな、
男性に人気があるわりには
媚びてない。
男らしさがある。
だから女性からも人気があるんだろう。

チラッチラッと聞くMの噂が
嬉しかったりもした。

No.34

俺の仕事は変則的で
平日は夕方から夜まで入ることが多く、
土日祝は、朝から夜まで仕事になることがほとんどだ。
だからMと会えるとしたら
平日の昼間しかない。
平日だって朝から仕事のこともあるから、なかなかMとのスケジュールも合わない。

そうなると、電話やメールで話すことが多くなった。

No.35

俺は、Mと話しているうちに、
自分のことを知ってほしいと思うようになっていった。

そうだな…肝心なことは、だいたい話したと思う。
自分のことを知られるのは怖くなかった。
Mなら俺を受け入れてくれるように思えた。
俺の生い立ちも、この普通ではない本性も
話した。

Mは、驚いた様子もあったが、淡々と自分の中でかみ砕き、理解し、返事をしてくれた。
そして時々質問もしてきたな。
俺は、それに対して正直に答えた。
電話やメールは顔が見えないが
誠意をもって接してくれることが
嬉しかった。

それと同時に、Mの身体を手に入れるのも
時間の問題だろうと思ったりもした。
まあ、それが一番の目的だからな。
とにかくMを手にいれたかった。

今思うと、その時の俺は、今までの俺に似合わず必死だったな…(笑)

No.36

久しぶりにMに会えた。
時間的には忙しく、昼飯だけでもということで…。

その日に何を話したのか
あまり覚えていない。

飯のあと少し時間があったので
俺の車でそのへんをドライブすることになった。
というより、ドライブに誘ったんだ。

あっという間に時間は過ぎて
またもとの駐車場に戻ってきた。

それじゃ、またね

とMが挨拶をした時だったかな…
俺は、Mの首筋に手をまわし、Mを引き寄せた。
多分Mは、びっくりしていたんだろうが
抵抗をするスキを与えないように
俺は、Mにキスをした。

柔らかい唇だった。

Mが下を向き、俺の胸をそっと押したので
二人の唇は離れた…

No.37

Mが言った。

好きでもないのにどうして…?

俺に恋愛の気持ちがわからないことを
知っているMにとっては、
このキスの意味がわからなかったんだろう。

俺は、正直に答えた。

したくなったから、したんですよ。
ダメでしたか?

Mは、眉間にシワをよせた。
そして言った。

あのね、私、おばちゃん…ですよ…

No.38

俺は、その時、はじめて
Mが、俺との年の差を意識していることを知った。

それと同時に俺の頭に少し血がのぼるのがわかった。

あなたの、どこがおばちゃんなんですか?

咄嗟に出た言葉だった。

俺も普通に40歳はおばさんだと思っていたかもしれない。
だが、Mは、おばさんなのか?
誰が何と言おうと、俺にとっては
Mは、おばさんじゃない。
一人の女性だ。

No.39

笑いたいやつは
笑えばいい。
キモいと思いたいやつは、思えばいいんだ。

でも俺は、40歳のMを求めている。

俺を感じている時のMの顔が見たい
感じているときの声がききたい
身体に触れたい、身体を確かめたい。
Mをめちゃくちゃにしたい。
いじめたい。壊したい。

それが俺の本心だった。

No.40

俺がキスをしたことで、
もうMが会ってくれなくなるんじゃないかと
心配になった。

別れ際、Mが

またね

と言ってくれた。
俺は、ホッとした。

No.41

Mと会えるときは、
どんな短い時間でも嬉しかった。

二人だけになれるときはキスをした。
Mは、いつも遠慮がちだったが、俺を受け入れてくれた。
そんなMが新鮮だった。毎回、まるで初めてキスをするかのように反応していた。

俺はもういい加減、我慢ができなくなっていた。

あなたとセックスがしたい

ついに言ってしまった。
Mは、困ったような顔をした。そして
俺を見つめた。

あなたは、私に何を求めていますか?

わからない。俺もあなたに対しての感情がわからないんだ。
あなたとセックスをしてみないとわからない。

正直な気持ちだった。

Mは、うつむいて考えていたが、小さな声で言った。

いいですよ…。

この時、Mがどんな気持ちだったのか、俺にはどうでもよかった。
セックスすることを許してくれたことが嬉しかったんだ。

No.42

ホテルに入った。
Mは、明らかに緊張していた。

部屋の入り口に立って

やっぱり、やめて、他のことしませんか

そうMが言った。
おもしろい人だな…
他のことって、何をするんだろうか…

ためらっているMの手をひいて
ベッドまで連れてきたが、立ったままだ。

とりあえず、座って話しませんか?

俺が言うと、少し安心したように
Mは、ベッドに腰かけた。

No.43

ここまで来て、ベッドに座ってお話するだけ
なんてあるわけがないだろう。
心の中でそう思って
Mの身体を優しく倒した。

Mは、小さな声をあげたが、
俺はキスで口をふさいだ。
舌を絡ませたが、Mは、抵抗しなかった。
首筋に舌を這わせると、小さくのけぞった。

俺はどうやって彼女の服を脱がせたのか
覚えていない。俺にしては珍しく興奮していたし、緊張もしていた。

Mの身体を見て俺は思わず言った。

とってもきれいです…

Mは、首を横に振った。

でも、お世辞ぬきで綺麗だった。

No.44

本当はもっと、普段他の女にしているように
痛めつけてやりたかった。
泣くほどにいじめてやりたかった。
だが、必死で抑えた。
これで嫌がられたくなかったからだ。

Mの感じる顔を見て、感じる声を聞いた。
そして肌を感じた。
それだけで、その日は充分だった。

思ったとおり、Mは、感じやすい体だった。
俺の肌にピッタリ合う…そう思った。
そして今まで体験したことのない安心感があった。落ち着く…。

また次も会ってほしい…。

答えはまだそれしか出せなかったが。


No.45

Mに会えない日が続くと、イライラするというか、落ち着かなくなる。
これは、俺にとっては珍しい感覚だから
俺は俺自身を分析しようと必死だった。

考えてみればMに出会ってから、
不思議な感覚ばかり。どれもこれも、初めて経験する興味深い感覚だ。

俺はMを好きになったんだろうか?
いや、まさかな…。
まだわからない。これだけの情報じゃ、恋とは判断できないじゃないか。

普通のやつらは、どこから、どう、恋愛だと区別してるんだ?どういう状態になって、相手を好きだと判断する?
俺にはわからん…好きという感覚がわからない。

毎日考えてもわからないから、
流れに身をまかせるしかないじゃないか。

俺はMが、今どこで何をしているのか気になるが、Mは、俺を一体どんなふうに思っているんだ?

おいおい…やはり調子がおかしいぞ。

俺は、今まで付き合ってきた女のことに、
興味なんかなかったはずだ。
相手が俺をどう思おうが、
関係なかったじゃないか。

そんなことを考えながら、俺は日々を過ごしていた。

No.46

Mに会える日は、嬉しかった。
そして同時に体が欲しかった。

Mは、俺を受け入れてくれた。そのたび、俺は彼女とひとつになる安心感を得ていた。

俺は、このMの体が欲しいだけなのか。
それとも、Mの心が欲しいのか…。
いや、両方?

Mの、亡くなった旦那は、俺のモノより
大きかったんだろうか。
俺は、旦那よりも上手くできているだろうか。
旦那はMと、どんなセックスをしていたんだろうか…。

考えるとジリジリする。
…で、これが、男女の特別な嫉妬というのか?
俺には、この嫉妬というやつも
初めての体験だな。

嫉妬…やきもち…
いつも受け身の立場だったが、反対の立場になると、
結構しんどいんだな。

人に執着すると、嫉妬がおこる…
俺はMに執着しているのか?
Mがいい。
Mじゃなきゃいやだ。
これは、立派な
Mに対する執着だよな。

冷静に理論的に…俺は、いつもの俺を保ちながら、分析を続けていた。

No.47

俺は、とりあえず自分の気持ちはわからなかったが、
Mには、俺のことを好きになってほしかった。

他の女のように、電話やメールをしてきてほしかったし、
俺のことを気にかけてほしかった。

Mから連絡をしてくることは
ほとんどなかった。
他の女のように、会いたいなどとは
いっさい言わない。

Mは、俺に会いたいと思わないんだろうか。

皮肉なもので、どうでもいい女からは
連絡がくる。
今までは、いいように利用してやったが、
今となっては、M以外の女を抱くのは
疲れさえ感じている。

どんなに女たちが俺を求めようが
俺が求めているのは、Mだけだった。

今までの俺を知っているやつは
きっとびっくりするだろうな。

俺は確かにMにこだわっている。
生まれてはじめて、女にこだわっている。

No.48

俺はこの先、結婚なんかする気はなかった。
それはそうだよな。
人を好きになれないのに
結婚なんかできるわけがない。

俺はいつだって自分のことが一番大事だし
自分のためだけに生きてきたからな。

でも、俺はMと結婚したくなっていた。

ついに、酔った勢いでMに電話していた。

俺と結婚してほしい

ドン引きだよな…
この俺がプロポーズなんて。
しかも、俺の全てを知っているMに…。

Mは、言った。

酔ってるからそんなこと言ってるのね。
あなたは、私を好きではないでしょう?

好きとか、愛してるとか言えれば、
俺のことを受け入れてくれるのか?
好きだ
なんて言葉は、いくらでも言える。

俺はあなたのことが好きだよ

Mは、うーん…と悩みながら少し笑った。

あなたに、好きがわかるの?

俺は言った。

わからない。

俺は正直だ。わからないものは、わからない。
好きという感情がわからない。

No.49

これじゃ、ちっともSじゃない…
俺は、こんな俺じゃなかったはず。

くそっ…

こんなに、女に振り回されるのは
はじめてだから
生活のペースまで狂ってきた。

No.50

自分を取り戻すために、違う女を抱いた。
いつもの乱暴で冷酷な俺になる。
セックスをしていても、この女にはなにも感じない。
女が悲痛な顔をするのが、たまらなく快感なだけだ。
この女の命さえも俺が支配している気になる。
そこにゾクゾクするな。

ここまではいつもと同じ。
だが、ここからがいつもと違う。

俺の中に、寂しさがある。
Mを抱いたときには、安心感があった。

余計にMを思い出した。

Mの全部が、俺を離さない。
温かさ、優しさ、Mには溢れている。
人としての魅力。女性としての魅力。
全てがそろっている。
Mの存在感が俺を変えていく。

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