俺は猫😺

その日は仕事帰りだった。いつも残業、残業でほぼ帰りは午前様。マジで疲れてた。

車を運転していたが 眠気が襲ってついボーッとして、注意力散漫だった。

その時だった❗❗


サッと道路を何かが横切った。
俺は慌ててハンドルをきったが、目の前に電柱が見えた。

（ヤバイ❗❗ぶつかる）

ガッーシャン❗❗❗

凄まじい音がした。

この瞬間の俺の記憶はなかった。

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どのくらいの時間がたったのかはわから ないが、俺は目をさました。

目の前に見えたのは 電柱に突っ込んで、前面が大破した俺の車。そして、パトカーや救急車。野次馬も居る。


そして、血だらけで 見るも無惨な姿になっていた俺……。

俺～⁉⁉⁉
俺はここに居るのに俺が血まみれで死んでる⁉⁉⁉

頭が混乱した。
俺は自分の死体を見てる⁉
じゃあ、今の俺は何なんだ⁉
幽霊⁉⁉

俺は混乱しながらも、もっと近くで事故現場を見ようと近づいてみた。

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もっと近づいてみると、やたらと物がデカク見えた。

野次馬もとてつもなくデカイ。パトカーや救急車もこんなにデカク見えたっけ⁉

とりあえず様子を伺ってみようと、ウロウロしていたら

野次馬の一人が、

『この白猫、この事故った人の飼い猫かな❓❓ 可哀相』

んっ⁉⁉

白猫⁉⁉
回りを見渡しても、猫なんか居ない。
何より野次馬は俺の方を見てる。

俺が猫⁉⁉
マジか⁉⁉

イヤイヤ、そんな訳ないよな。
でも、俺の目線がめっちゃ低い。地面に近いくらいだ。

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…そういえば、歩いた感じもいつもと違う。
俺は座って自分の身体を確かめた。

手がムニムニの肉球で、爪がある。

指ないじゃん⁉

身体中が真っ白い毛で覆われてる。

えっ⁉俺、こんなに毛深かったっけ⁉

白い長いしっぽがついてる。

俺、いつの間にしっぽはえたんか～⁉


一人でノリツッコミしてしまったが、どうやら本当に白猫になっちまったらしい

そして俺は、自分が救急車で運ばれるのを見守った。



そうだ、娘が心配だ。 早く自宅に帰らないと❗❗

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あの事故現場は自宅からそう遠くはない


が、猫の足で歩くには遠い。俺は急いで自宅に向かった。

猫になったこと（認めたくないけど）で、細い路地裏や家と家の隙間を通りなんとか自宅に辿り着けた。

もうすでに、朝になっていて明るい日がさしていた。
娘が心配だ。
俺は外窓からリビングの様子を見てみた。誰もいない。

てか、窓にうつった俺の姿、マジで真っ白い猫。改めて、猫になったんだと実感してしまった。


きっと、俺が運ばれた病院に行ってるんだろう。

俺は娘が帰ってくるのを待つことにした

庭先の日が当たる場所に横になった。

暖かい日差しが心地好い。
これがひなたぼっこってやつね。

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ひなたぼっこしながら、いろいろ考えた

何故、俺が猫になったのか❓

そういえばあの時道路を横切ったのは白猫だったような…。

じゃあ、事故って死んだ俺の魂が、その白猫に乗り移ったってことなのか⁉⁉

そんなことが現実に起こるんだろうか❓

それともこれは、夢なのか❓

夢なら覚めてほしい…………

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俺は歩き疲れたせいか、ウトウト居眠りし始めた頃、一台の車が自宅の駐車場にとまった。

娘の車だ。
娘は助手席に乗っていた。運転してたのは俺の姉だ。

娘は車から降りたが その顔は、泣き疲れたのか憔悴しきっていた。

俺は本当に死んでしまったんだな。一人娘に悲しい 思いをさせてしまった…。

でも、俺はここにいる。猫になってしまったけど、確かに存在してるんだ。


俺は、家に入ろうとした姉と娘に近寄り 必死に叫んだ。

『ニャーニャー』
（美久❗父さんだよ❗俺は ここにいる❗気付いてくれ❗）

姉は、
『どこの白猫かしら❓ うるさいわね💢』
娘には、全く聞こえていないようだ。
放心状態で、家に入っていった。

俺は全く相手にされなかった。

（言葉が通じないのはツライな…。）

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家の中に入れなかったので、俺は外窓からリビングの様子を見ていた。

姉が電話で、俺の葬儀の話をしていたが、美久はずっとソファーに座ってぼんやりしている。

それから30分くらいで続々と俺の身内が集まって来た。

葬儀の話や、美久のこれからの話、俺の家の話をしていたようだが、よくは聞こえなかった。

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次の日、俺の遺体が 家に運ばれた。

俺は美久が心配で、ずっと家から離れなかった。

葬儀は身内だけで質素に行われた。
会社の奴も何人かは来てたみたいだな。

俺の遺体が入った棺 を身内が運んで、俺の遺影を美久が胸に掲げているのをみるのはとても辛かった



俺は火葬場で焼かれ灰になった。肉体は 本当に滅んでしまったんだ。


でも、俺は死んでしまったけど、俺の魂はこの白猫に生きてる❗❗

このことは、落ち込んでる美久に知ってもらいたい。

葬儀が終わり、家に集まっていた身内も 皆帰って行った。
俺の姉だけは美久が心配だからと残ってくれたらしい。

また家の中を覗いていると、姉が『ちょっと買い物に出掛けて来るね』と美久に 話していたので、俺は家の中に入るチャンスだと思い、姉が玄関のドアを開けた瞬間、スッと家の中に入った。

姉は、
『キャッ⁉ またあの白猫⁉⁉なんなのよ⁉⁉ コラっ❗❗家に入るな💢💢』

姉が俺を追いかけてきたが、俺はそれを振り払い美久の居るリビングに走った。

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リビングには俺の遺影と遺骨の前で、呆然としていた美久がいた。もう涙も枯れてしまったらしい…

俺は、
『ニャーン』
（美久❗）
と美久に呼びかけた

美久の反応はない

『ニャー、ニャー』
（美久❗俺だ❗父さんだ❗）

何度も叫ぶ。

姉は、『なんなのよ💢この猫💢うるさい』そう言って俺を捕まえようと、必死だ

俺は姉から逃げながら、美久の正座してる膝にのって、大きな声で、

『ニャーニャー』
（起きろ～❗❗❗
美久❗❗いつまで寝てんだ❗❗）

と叫んだ。

美久は、ハッとして


『えっ⁉⁉お父さんの声がした⁉⁉⁉お父さん⁉どこっ⁉⁉⁉』

毎朝、俺に起こされてた美久はこの声には気付いたようだ（笑）

『お父さん⁉⁉どこ居るの⁉⁉』
美久はキョロキョロしているが、膝にのってる俺には気付かない。

『ニャニャだよ』
（ここだよ）

美久は膝にのってる俺を見て、キョトンとした。

『……お父さん⁉
……が白猫になってる⁉⁉⁉⁉』

『え”～～～⁉⁉』
美久は目を丸くして驚いている。その声を聞いた姉もビックリしている。

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『ニャニャニャン』
（美久❗俺の言ってることが解るんだな❗❗）
（まず、落ち着いてくれ。）

…美久は大きく深呼吸した。そして気分を落ち着かせて、

『本当にお父さんなんだね❗お父さんの声が聞こえる❗』

俺の猫語は、美久にしか通じないらしい

姉は心配そうに、美久の様子を見ている
きっと頭がおかしくなってしまったのかと思われたにちがいないな。

そんなことは後にして、俺は美久にこれまでのことを話した

事故のこと。
なぜか白猫になってしまったこと。

美久は真剣に話しを聞いてくれた。

そして膝にのっていた俺をギュッと抱きしめて、

『お父さん❗帰って来てくれてありがとう❗❗スゴイモフモフしてあったかい。
お父さん、生きてる
』

手の平の肉球を触って、
『プニプニしてて触り心地最高❗』

俺は弄ばれた（笑）

……が、そんな俺と美久のやりとりを見ていた姉が、

『美久チャン。どうやらとても疲れているようね。今日はもう休んだら❓』
『その猫も、どこの猫かよくわからないし、早く家から出しなさい。』

姉は、美久に抱っこされた俺を引き離そうとしたが、

『この白猫はお父さんなの❗❗ 私はお父さんと離れたくない❗❗ ここでお父さんと暮らすの❗❗』

美久がスゴイ剣幕で言ったので、姉は驚いて
『もう、わかったから。今日は休みなさい』

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姉はそう言って、買い物に出ていった。

『お父さん❗一緒にこの家に住もうね。私一人になっちゃったと思ったけど、お父さん帰って来てくれたからまたこの家でお父さんと生活出来るね。ほんと、嬉しい。』
美久はギュッと俺を抱きしめて離さない。てか、めっちゃ苦しいんですけど💧
どうやら美久は、この家を売って叔母さん（俺の姉）のマンションで暮らすという話になっていた。

まあ、一軒家に年頃の娘が一人暮らしっていうのは物騒なことだ。

俺が居るならこの家でも安心……

なのか⁉⁉俺は猫だぞぉ～⁉ 番犬ならぬ番猫ってか⁉

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『でも、お父さんが居ても現実にはペットってことで一人暮らしと変わらないから、叔母さん達に反対されるよね⤵』

（確かに。）

『叔母さんのマンションはペット禁止だしなぁ⤵』


…


……

………

（そうだ💡）

（姉貴にこの家に住んでもらうのはどうだ❓）
（姉貴は独身だし、この家のローンも俺が死んだこと（悲）で チャラになったし、姉貴がこの家に住めばマンションの家賃かからないだろ❓
そう姉貴に伝えてみろよ。）

『そうだね。叔母さんが一緒なら心強いかも。叔母さん帰って来たら、交渉してみよう』

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買い物から帰って来た姉貴に、早速美久は一緒にここに住んでほしいことを伝えた。

すると結果は、

あっさりオッケー。

マンションの家賃結構高いからね。


なんかやっと安心したせいか、
お腹が『ぐるる～』となった。

そういえば、ここ2日何も食べてなかったな。

（美久、何か食べ物ないかな❓お腹すいた💧）

『お父さん。何食べるの❓キャットフード❓』

（う～ん💧）
（とりあえず魚とかある❓）

『叔母さんがお刺身買ってきたから、それ食べて。あ～でもイカとかタコって猫にあげちゃダメだったよね❓
イカとタコは食べちゃダメだよ～。』

（へ～い）

それから、三人で夕食を食べた。

俺は一人で床で食べるのは嫌だったからいつも座っていたダイニングテーブルの椅子に、座布団を重ねてもらい、ちょこんとその椅子に座った。

そして皿に分けてもらったお刺身を両手で掴んで食べ始めた

『お父さん。器用だね❗ 超頭のいい猫チャン❗』

（さすがにはしは使えないから、手づかみで行儀悪いけどな）

この動作に姉貴もさすがに驚いて、

『ほんとに人間みたいだね』

少しだけ俺の存在を認めたようだった。

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ケース1

『育児放棄』



俺が白猫になって一ヶ月ほど過ぎた。
猫生活にも馴れてきたが、俺は猫らしくなかった。

朝起きたらまず新聞をとってきてテーブルで読む。ページをめくる時は肉球をペロッと舐めて、めくる。その辺りはおじさんだよね💧

朝はコーヒーとパン食べてたけど、猫になったから今は猫用ミルクと猫用ご飯。
ご飯はツナ缶ぽいのがオススメ。ドライフードは固いし、食べてるとパサついて喉が渇く。

毎朝、『目覚ましテレビ』を見るのも日課だ。器用にリモコンの電源を爪で押してテレビをつける。
まあ、最初はつけるのに苦労したが、馴れたらリモコン操作も出来るようになった。

あと、トイレも猫用の砂トイレなんては使わない❗❗
俺はトイレに行き、便座にまたがり用をたす。ウォシュレットで尻を洗い、キチンと尻もふく。

もう、この動作を見ていた姉貴はさすがにこの白猫はただ者じゃないと思ったのか、いつの間にか猫の俺のことを、

『康裕』（俺の名前）と呼ぶようになった。

美久は『お父さん』
と呼んでいる。

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俺は猫なので仕事してないけど、姉貴はバリバリのキャリアウーマン（保険のおばちゃん）。
美久は看護師。

二人とも日中家に居ない。
家に居てもつまらないので、毎日家周辺のパトロールをしている（ただの散歩）


そう、少し気になる家があるんだよな。

俺の家から200㍍くらい離れた所に、古びた平屋の県営住宅数件あるのだが、そのひとつが気になるのだ。

いつも外から中を覗くと2～3歳くらいの女の子が一人で遊んでいる。部屋の中は散らかりほうだいで コンビニ弁当の空や マックなどのゴミばかりだった。

他に誰も居ないのか❓
俺は心配になり、一日中その家周辺にいた。
昼になっても誰も帰ってこない。

お昼ご飯はどうしてるんだ❓キチンと食べてるのか❓

ますます心配になった。

俺はずっと誰かが来るのを待っていたが、夕方頃に一台のスポーツカーがその子の家にとまった。

助手席から派手な格好をした女が降りてきて、手にはコンビニ袋を下げていた。
どうやら弁当らしい

ようやく母親が帰って来て、俺は安心して帰ろうと思ったが 、数分もしないうちに母親が家から出てきて、またスポーツカーの助手席に乗ってどこかに行ってしまった…

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（おいっ💢あんな小さな子供残して、あの母親はどこに行ったんだ⁉⁉ 弁当だけおいて、もう夜になるって言うのに💢💢）
夜になると、その子はキチンとカーテンを閉めて電気をつけていた。
あんな小さい子が一人でいるなんて、可哀相すぎる。


俺は窓にカリカリと爪を立て、必死に叫んだ。

（ひとりはこわくないか❓ ここを開けてくれ❗❗）

ニャーニャー騒いでると、やっと気付いてくれたのか、女の子はカーテン越しに 俺の姿を見た。

『あ～猫チャンだ❗カワイイ～。』

そう言うと、女の子は窓を開けてくれた

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中に入ると、ほんとに酷い状態だ。コンビニ弁当の空やマック、カップラーメンの容器が至る所に転がっていた。 服は脱いだまま山のように重なっていて、洗濯もされてなさそうだ

女の子は痩せていたが元気そうだった。

『猫チャン、こんばんは。遊びに来てくれてありがとう。私の名前は、亜梨子（ありす）。4歳だよ。よろしくね。』

驚いたことに2～3歳くらいにしか見えなかった亜梨子は4歳だと言う。 栄養がキチンととれてないから普通の4歳児より小さいんだろう。

亜梨子はとてもいい子だった。
『猫チャン、お腹すいてる❓お弁当一緒に食べよ。』
お皿を持ってきて、お弁当のオカズとご飯を取り分けてくれた。はしの持ち方がおぼつかず、なかなか大変そうだ。

『あっ。あと、お喉がかわくから、お水も持ってくるね。』

感心するほど気が利く。

俺は亜梨子と一緒にコンビニ弁当を食べた。
コンビニ弁当は味付けが濃い⤵ これを毎日子供が食べたら、体に悪いことは母親なら知ってるはずなのに。

亜梨子は一日、一食 のようだ。ペロリとお弁当をたいらげた

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お弁当を食べ終えると、亜梨子は空の容器をそのままにしてテレビを見ていた。

どうも、片付けると言うことが出来ないらしい。まあ、あの母親が手本なら仕方ないな。

俺は大きな袋を見つけ、空の容器を入れ始めた。一つずつ口に加えて片付けるのは大変だ。

今日はもう夜なのでとりあえず亜梨子が寝るスペース分だけ片付けた。

他は明日また片付けよう。

そういえば、お風呂はどうしてるんだ❓

俺は風呂場に向かった。 風呂場の電気のスイッチをジャンプしてつける。もう、高いスイッチには慣れっこだ。風呂場はなぜか綺麗だった。 どうやら余り使ってないらしい。

亜梨子はお風呂にも入れてもらってないのか⁉⁉

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亜梨子はテレビを見ながらウトウトし始めた。
もう、子供は寝る時間だ。
お風呂は諦めて、俺は洗面台から子供用の歯ブラシを加えて 亜梨子に渡した。

『猫チャン、ありがとう。亜梨子、キチンと歯磨きするね』

亜梨子はキチンと歯磨きをし、俺が片付けたスペースに布団を敷いて眠りについた。
俺は亜梨子の布団にもぐり、亜梨子を暖めた。

亜梨子は、
『いつもはクマチャンと居るんだけど、今日は猫チャンも遊びに来てくれたから楽しかったよ❗』

俺の隣にそのクマチャンは寝ていた。
薄汚れたくまのヌイグルミだった。母親に買ってもらったものだろうか。
ずっと離さず、大切にしていた。

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人の布団の中って、とても暖かくて心地好い。俺も眠りについた。
俺の家では、ペットベッドに寝ている。
美久は一緒に寝ようと言ってくれたが、さすがに娘の布団で寝るのは抵抗があったので断った。




朝になった。

まだ母親は帰って来てない。

（あの母親は何やってるんだ💢）

まだ、亜梨子は眠っている。
時計を見ると、午前6時15分。

そろそろ帰らないと、美久が心配してるだろう。

俺はそっと布団から抜け出し、窓から外に出た。

（またすぐ会いくるからな。）

俺は急いで自分の家に向かった。すると
『お父さ～ん❗』
美久が走ってくるのが見えた。
美久は俺を抱き上げ、ギュッと抱きしめた。

『お父さん❗心配したんだよ❗どこ行ってたの⁉』

（ごめん。ごめん。ちょっと女の子の家に居たんだ。）

『女の子～💢💢⁉⁉』

（誤解しないでくれ💧 小さい4歳の女の子の所だよ）

俺は詳しい状況を家に帰ってから美久に話そうとしたが、美久がもう仕事に行く時間と言うことで、仕事から帰ってきたら話すことにした。

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美久はキチンと俺の朝食を準備してくれていた。

亜梨子は朝ご飯食べてないんだよな。

俺は急いで朝食をたいらげ、亜梨子に何か食べ物を持って行ってあげようと思った。

キッチンで食べ物を探していると、姉貴が買っておいた菓子パンがあった。

俺は菓子パンを口に加え、また亜梨子の家に向かった。
菓子パンは結構重い💧 なるべく引きずらないように気をつけて運んだ。

途中、学校に行く近所のガキどもに遭遇してしまい、

「この猫、パンくわえてる。魚じゃなくてパンだよ。パン。
変なの～。」

一人のガキが俺のパンをとろうとしたので、俺は必死にパンを守ろうと、ガキどもを威嚇した。

『フギャーーー』
（とるんじゃない❗）

「こわ～い。もう、 ほっといていこうよ。」

ガキどもの撃退に成功した❗

俺は急いで亜梨子の家に向かった。

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亜梨子は起きていた

キチンと布団を畳み
クマチャンと遊んでいた。

俺は窓から入り、亜梨子に、

『ニャニャ～ン』
（お邪魔します。また来たよ。
と言った。

亜梨子は、
『猫チャン、また遊びに来てくれたの❓
嬉しい🎵』

俺はくわえてた菓子パンを亜梨子に差し出した。

『亜梨子に持って来てくれたの❓ありがとう。』

亜梨子はパンを受け取ると、袋を開け食べはじめた。

『猫チャンも一緒に食べよう。どうぞ。』
俺もおすそ分けしてもらい、パンを食べた。 う～ん。太りそう。

さて、朝ご飯もすんだ所でまた片付けを始めるとするか❗

俺はゴミ袋に菓子パンの空袋を入れた。
俺は次々にゴミを口にくわえ片付け始めた。
それを見ていた亜梨子も一緒にゴミを片付ける。

二人（一人と一匹）で片付けてもなかなかゴミは減らない。

（後で美久にも手伝ってもらおうかな💧）

亜梨子は片付けをやめていた。 テレビのNHK教育番組に夢中だ。
そ～いえば美久もよく見てたな。

とりあえずご飯を食べるテーブル回り、寝室である和室のゴミは片付けた。

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次に、洗濯だ。
そのへんに散らかってる服は汚れていて洗濯されていない。

俺は亜梨子の服だけ引っ張っていき、洗面台の脇に置いてある洗濯機に次々いれた。母親のもあったが、あんな女の物の洗濯はしたくないのでほおっておいた。

洗剤はもしかしてないかも…と不安に思ったが、洗面台の下にあった。
粉末洗剤のスプーンをくわえ、洗剤をひとすくい。
なかなか難しい💧

洗剤の入ったスプーンをくわえて洗濯機にジャンプする。
…やっぱり、少し洗剤がこぼれてしまった。
洗濯機に洗剤をふりいれ、フタをし、スタートボタンを押した。

よし。洗濯もオッケー。

亜梨子はテレビに夢中だ。テレビの子供たちのダンスを真似して一緒に踊っている。

カワイイな。昔の美久を思い出した。

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脱水が終わり、洗濯物はあとは干すだけになったのだが、干すのがまた大変💧

亜梨子に手伝ってもらうしかないな。

亜梨子はテレビを見るのをやめて、クマチャンとお絵かきをしていた。

亜梨子が書いていたのは、クマチャンと白猫の俺だ。上手に書けてる。その絵には『わたしのおともだち』と書かれていた。 亜梨子は字もキチンと書けるお利口さんなんだね。

『ニャ～ニャ～』
（亜梨子～❗）

『は～い。猫チャンどうしたの❓』
亜梨子が答える。
『ニャッ⁉』
（えっ⁉）

亜梨子は猫語がわかるのだろうか❓

『ニャニャンニャン』
（洗濯物を干すの手伝ってほしいんだ。）

『亜梨子の服、キレイキレイしてくれたの❓』

なんか、会話が成立してる…。
亜梨子は猫語がわかる天才児かもな（笑）

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亜梨子は洗濯物を洗濯機から取り出しカゴにいれ運んだ。

外に出て、物干し竿に干そうとしたが、亜梨子は小さくて届かない。
亜梨子は家の中から 椅子を持ってきて、椅子に登り洗濯物を干した。パンパンしてキチンとシワを伸ばしていた。
こういうのは母親がしてるのを見て覚えたんだろうな…。


洗濯物を干すのは俺には無理なようだ💧
全部、亜梨子が頑張って干した。

今日は天気がいいから良く乾くだろう。

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そろそろ昼になる。
母親はまだ帰って来ない。今日も夕方にお弁当届けにくるだけなのだろうか❓

亜梨子は菓子パンを食べたからか、お腹を空かせた様子はない。

お絵かきを終えて、今度は絵本を読んでる。

いつも一人ぼっちでこんな風に過ごしているのか…。

俺は亜梨子の隣に座りずっと一緒にいた
もちろんクマチャンも居る。

暖かい日差しが気持ちいい。
ついついウトウトと居眠りしてしまう。
亜梨子も眠いようだ

俺達はいつの間にか 寝てしまった。

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………ブロロロ…

車の大きなマフラーの音で俺は目が覚めた。

母親が帰ってきたらしい。

亜梨子はまだ眠ってる。

ガチャガチャと乱暴に鍵を開けると、母親は家に入ってくるなり、

「亜梨子💢💢外に洗濯物干しっぱなしじゃないの💢💢何勝手なことしてんだ❗❗」

亜梨子を怒鳴りつけた。
亜梨子は驚いて飛び起きた。

そして、母親は亜梨子の隣にいた俺の姿に気付くと益々怒りが増したのか、

「亜梨子💢💢あんたあたしが動物嫌いなこと知ってんでしょ⁉⁉なんで猫なんか家に入れてんだよ💢」

母親はすごい形相で亜梨子の胸ぐらをつかみ、頬をビンタした。

俺は一体、何が起きているのかパニックになった。

母親は怒り狂って、物を俺に投げつけてきた。

「ママ、ごめんなさい。亜梨子、もうお外出ない❗❗勝手なことしないから❗❗
猫チャン、いじめないで❗❗お願い❗❗」
亜梨子は必死に母親の腕にしがみついて 母親を止めようとした。


…ガシャーン…


母親が投げつけた灰皿で窓ガラスが割れた。

俺は、恐怖のあまり その割れた窓ガラスから外に逃げた。


必死に走って逃げた


……なんて母親なんだ。
子供相手にあそこまで普通怒るか❓❓

尋常じゃない……

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俺は自分の非力さに腹が立った。

俺は猫だと何も出来ないのか❓
亜梨子を助けることも出来ないのか…。

俺が人間の男だったら助けることが出来たはずだ。

今の俺は無力だが、
亜梨子をあのままにしてほおってはおけない❗❗


俺は、自宅に帰り美久に助けを求めることにした。


自宅に帰ると、美久は夕飯の支度をしていた。


俺の姿を見た美久は驚いて、

『ちょっと、お父さん、足スゴイ血出てるよ❗❗喧嘩でもしてきたの⁉ 大丈夫⁉』

さっき、割れた窓ガラスをくぐった時、足を切ってしまったらしく後ろ足が血まみれになっていた。


（俺は大丈夫だ❗❗ それよりも、近所に住んでる虐待されてる子供が心配なんだ❗ 美久、一緒に来てくれないか⁉⁉）

俺は、これまであったことを美久に急いで話した。

美久は驚いて、

『それは大変❗早く亜梨子ちゃんを助けにいかないと❗でもその前に、お父さんの傷の手当しなきゃ❗』

美久は慣れた手つきで、俺の足の手当をしてくれた。


『お父さん❗行くよ❗』


美久は、俺を抱っこすると急いで家を出た。

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外はすでに日が沈み暗くなっていた。

亜梨子は無事だろうか❓



亜梨子の家の前に着いたが、あの派手なスポーツカーはもうすでになくなっていた。

母親は居ないのだろう……。

亜梨子はどうしてるんだろうか❓

俺は、美久から飛び降りて亜梨子の家の中の様子を伺った。

暗くて、ひっそりとしている。

さっきの割れた窓ガラスはそのままだ。
あの母親は片付けもしないのか💢
俺は割れた窓ガラスから中に入り、
『ニャ～ニャニャ～ン』
（亜梨子～⁉居るのか⁉大丈夫か⁉）

と亜梨子を呼んだ


………………

返事がない………

居ないのか❓❓


美久は割れた窓ガラスから、手を入れて 窓ガラスの鍵を開け中に入った。


「亜梨子ちゃん、居るの❓❓私、白猫チャンのお友達の美久って言うの」
「亜梨子ちゃん、居るなら返事して❗❗」


…

……

………


やはり、返事がない居ないのだろうか❓



美久は家の電気をつけてみた。



すると、
和室の押し入れに中から開けれないように突っ張り棒がしてあった。

この押し入れの中に亜梨子が居るのかもしれない。

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美久は恐る恐る突っ張り棒を外して、押し入れの戸を開けた




……………⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉



そこに亜梨子は居た

口はガムテープで塞がれ、手を縛られて いた。
顔は殴られたようで赤く腫れていた。
ぐったりしていて、応答がない。

酷い。
酷すぎる。
なんでこんな酷いことをするんだ。



美久は驚いて、
「亜梨子ちゃん、しっかりして❗❗お姉ちゃんが病院に連れて行ってあげるから❗❗」

美久は、亜梨子の口のガムテープをはがし、縛られていた手のロープをほどき、亜梨子を抱き抱えた


俺はどうすることもできず、ただ亜梨子を心配するだけだった。


美久は携帯を取り出し、自分の勤務している病院に電話し、救急車を呼んだ。



救急車がくる間、美久は懸命に亜梨子に応急処置をしていた


美久が看護師で本当に良かった。
俺、一人（一匹）ではどうすることも出来なかった。



10分ほどで、救急車が到着した。

美久は救命救急士に
状況を詳しく話し、救急車に乗り込んだ


俺も乗り込もうとしたら、

「なんだ⁉⁉この猫は⁉⁉シッシッ❗❗あっちいけ❗❗」

…俺は人間じゃないから救急車には乗れないのか…。
つくづく、猫になったことを後悔した⤵

「お父さん、亜梨子ちゃんは私がついてるから大丈夫だよ❗
あとで、電話するから家で待ってて❗」

美久はそう言って、俺を心配させまいとしていたようだ。


俺と美久のやり取りを救命士は不思議そうに見ていた。

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救急車は病院に向かった。

俺は美久に言われたとおりに、自宅に帰り、美久からの電話を待った。

家に帰ると、姉貴が帰っていたらしく、

「美久は夕飯作ってる途中で、どこ行っちゃったの⁉」
と騒いでいた。

俺は、状況を話そうとしたが、

『ニャ～ニャ～』
としか聞こえないらしく、

「康裕、私には猫語はわからないわ～。」

姉貴はため息をついて、美久が作り途中の夕飯の支度を始めた。

姉貴が夕飯の支度を終える頃、自宅の電話が鳴った。

姉貴が出ると、

「あ～っ、美久❗❗どこで何してるの❓❓
えっ❓❓お父さん❓
あ～康裕❓康裕に変われって❓」

美久からの電話だ。
姉貴に受話器をテーブルに置いて貰い、俺は、受話器に耳を傾けた。

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『ニャニャニャ』
（もしもし）

「あっお父さん❗
亜梨子チャン、大丈夫だよ。熱があってぐったりしてたけど 点滴したら、だいぶ落ち着いてきたよ」「ケガの方も処置してもらったから、明日には腫れもひくだろうって。」

『ニャニャった』
（良かった）

「あと、先生が警察に通報したから、警察も来てるんだ。私これから警察に状況伝えなきゃいけないから電話切るね❗」

「今日は病院に泊まるから、落ち着いたらまた電話する❗

『ニャニャった』
（わかった）

『ニャニャ、ニャ』
（すまない。美久）
「大丈夫。心配しないで。」

そう言って、美久は電話を切った。


亜梨子が無事だったのは、安心したが俺も病院について行きたかった。

警察に詳しく亜梨子が受けてきた虐待のことを話したかった


…人間に戻りたい…

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俺は、電話が終わったことを姉貴に伝え受話器を元にもどしてもらった。

「もう、康裕と美久で一体何してるの❓私だけ仲間外れ❓」

姉貴が少し不満げな顔をして俺にむかって言った。

そうだった💧姉貴には全く状況を伝えていなかったんだ…。



う～ん⤵言葉は通じないし、どうやって今の状況を伝えたらいいのやら。


…

……

………

あっ⁉ そうだ❗❗
このてがあった。



俺は、テーブルの上においてあった、ノートパソコンを開き キーをたたいた。

猫の手でも、パソコン打てるのね～。


カタカタカタカタ。
次から次へと文字を打ち込む。


猫がパソコン操作してるなんて、人間が見たら驚くだろう。

てか、姉貴も驚いている。

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「はぁ～、本当にスーパー猫チャンだね
テレビに出たら有名猫になれるよ」

「で、なんて打ち込んでるの❓」

姉貴が文字を読み始めた。

《近所の団地の子供が、母親に虐待されて怪我をしていたので救急車を呼んだ。美久は付き添いで、今日は病院に泊まる》

姉貴は状況を理解したらしく、

「その子供の容態はどうなの❓」

俺は文字を打つ。

《大丈夫。心配ない》

「そう。良かった
康裕、今度からパソコンで会話出来るわね。私、康裕の言葉を聞けて嬉しいわ」

《俺ももっと早く思いつけば良かったよ
姉貴、よろしくな❗❗》

「ところで、その虐待うけてる子供ってどの辺りの子供❓」


《2軒隣の平屋の団地に住んでる女の子だよ》

「……。あっ、もしかして佐々木さんて言う人かな❓すごく派手な格好した若い女の人いるでしょ。
その人が虐待してたのかしら❓」

そういえば、郵便受けに小さく「佐々木」と書いてあったような気がする。

《たぶん。その佐々木さんだと思う。》

「佐々木さん、ゴミの出し方テキトーで区長さんに目つけられてたんだよね。私区長さんと仲良くなったから、「ほらあの人よ～。いつも派手な格好して男に送ってもらってるのよ」とか言って事細かく教えてくれるんだよねぇ。」

恐るべし。
オバサマ方の情報網
俺の方が長くこの家に住んでたけど、仕事ばかりであまりご近所さんとの付き合いがなかったな。もっと近所にも目を向けるべきだったんだな。
…反省……

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『ぐるる～』
俺の腹が鳴った。

その音は姉貴にも聞こえたらしく、

「康裕、お腹空いてるのね。今日は奮発してお刺身あげるよ～」

マグロとサーモン
俺の大好物だ。

俺は刺身を食べつつ 亜梨子にも何か美味しい物を食べさせてあげたいなぁ～と考えていた。


美久に亜梨子の好物を聞いてもらって差し入れしようか…


亜梨子に会いたいな

でも、病院は猫入れないよな⤵


亜梨子のことを思うと、大好物の刺身もあまり喉を通らなくなってしまった。


今日はもう疲れたから寝ようか…。

俺は姉貴に疲れたからもう寝ることを伝え、ソファーのペットベッドでうずくまった。

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