無理しないでね 2

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2014/08/31 07:37(更新日時)

無理しないとやっていけないよ。。
誰も助けてはくれない。
無理しないでねって言葉の意味、いつも考えてる。

無理しないでの続きを書いていきます。
書き始めてから長い期間たっていますが、必ず完結を約束します!

読んでいただける方の気持ちを大切にします。。。

批判も中傷も感想も全て受け入れます(^-^)
色んな感情を私に学ばせて下さい!

14/08/31 07:37 追記
子供の進級、進学と心の問題で少し間が空いてしまいましたが、また書いていこうと思います^_^
子供の作文の宿題を一緒に考えているうちに、書くことが好きなことを思い出しました笑
以前のように見えない感情を上手く文章に出来ないかもしれませんが、素直な心で書いていければと思います^_^
レス制限をしているので、苦情などは感想コーナーまで。。(^^;;

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No.1737105 (スレ作成日時)

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No.1

迷子さん(^-^)/

本当に本当にありがとうございます!

完結にむけてまずはこれから書く内容をしっかりと伝える為にも、少し時間を下さいね!

そう時間はかからないと思います。

気長に待っていていただきますよう、よろしくお願いします!!!

本当に感謝ですヽ(;▽;)ノ

No.2

タイトルの内容、誤りがありました 汗

無理しないで

ではなく、

無理しないでね

の内容の続きですf^_^;)

もし、読んでいただける方がいましたら

無理しないでね

を検索して見て下さいf^_^;)

何かを感じてくれればそれだけで私は幸せです!

No.4

>> 3 匿名さん(^-^)/

読んで頂いたんですかっヽ(;▽;)ノ

面白いって思って頂いてすごく嬉しいです!

貴重な時間を使って頂いてありがとうございます!

是非これからもよろしくお願いします(^-^)/

No.6

>> 5 迷子さん(^-^)/
ホントにいつもありがとうございます(^-^)/

少しづつでも書いていこうと思います(^-^)

そして、見つけて頂いてありがとうございます!

これからもよろしくお願いしますo(^▽^)o

No.7

警察が来るまで電話が切れないように必死だった。
電話を切れば闇金を追い込む事が出来なくなる。
証拠がなくなる。

子供は状況が読める訳でもなく、無邪気に遊んでいる。。。

本当なら・・この子供達と産まれたばかりの赤ちゃんと幸せな生活を送っているはずだった。

どうして私は幸せになれないの?
もっと早く誰かに助けを求めていればこんな事にはならなかったの?
誰にも相談しなかった私が自ら招いた結果がこんな状況を作っているの?

無理しないでね・・・って言葉をかけてもらえれば幸せになれたの・・・?

考えれば考える程、自分を追い込んでいた。

旦那は情けない姿で電話の応対をしている。

こんなパパでごめんね。

私は子供を抱きしめた。


No.8

警察は数分で来てくれた。
たった数分。
私には今まで感じた事がない、長い長い数分だった。

外で光っているパトカーの赤い光は過去のトラブルを思い起こさせる。

大柄の警察官が2人家の中に入って来た。
電話がスピーカーに切り替えられ、警察が録音を始めた。

どこかで見た光景。
どこかで感じた感情。

それは風俗を辞める時のトラブルと同じような状況だった。

二度と同じ思いはしない。したくない。
同じ失敗は繰り返さない。

そう思っていた。

それを見事に崩された。

一生の愛を誓った夫に。。。

急に涙が込み上げて来た。

こんな事があっても、家族の形は崩したくない。。
子供の為に、世間体の為に、私は一生このトラブルと向き合っていかなければならない。

一生、愛情を感じる事が出来ない夫。
周りから幸せだと思われるような嘘の家族の形。
いつも笑顔な優しいママ。

逃げ出す事が出来ないこの状況と未来のない未来の不安。


ただ・・泣く事しか出来なかった。

No.9

闇金は電話口で荒れていた。

警察が来たと察したようで怒りが爆発しているようだった。

それに対して警察は冷静だった。

「あんた達がやってる事は違法って解ってる?どこの会社かも知ってるし、これ以上の脅しをして、自分達で自爆するような事はしないよねえ?」

闇金は聞く耳を持たなかった。

しばらく、警察対闇金のやりとりが続いた。

もうすでに、お金を返す返さないの話ではなく、警察がきた事への怒りの感情、それに対応する警察、そんなやりとりになっていた。

「覚えてろよ!」

そんな捨てゼリフを吐き闇金からの電話は一方的に切れた。

「向こうが何かこれからアクションを起こす事はないと思うけど、念のためパトロールは強化しておきますね。」

脅しとは解っていても不安で仕方なかった。
子供にもしもの事があったら。
近所の人に何か迷惑をかける事があったら。

「もし、万が一、家に来るような事があったらすぐに連絡くれれば対応しますから。でも闇金もそんな事をしたらどんな事になるか解ってますからね。ここに来ると言うのは、自ら警察に出頭して来るのと同じような事ですよ。そこまでバカじゃないでしょう。精神的に追い詰めて行くのが相手のやり方です。気を強く持って下さいね」

その夜は眠れない夜になった。

No.10

頭では解っていても実際事が起こるとパニックになってしまう私の癖。
落ち着いて考えれば答えは見えてくるはずなのに。

冷静さが欲しかった。

どんな事にも冷静になる感情。

次の日からまたいつもと同じ日常が始まった。

幼稚園の送り迎え。
ママ友との表面上の付き合い。
昼間は下の子を公園に連れて行ったり買い物。

本当は・・笑顔を見せる余裕なんてなかった。

永遠に続く借金への不安。
どうしようもない旦那と続く婚姻関係。
壊せない、壊す勇気のない結婚生活。

誰にも話せない。話す事は出来ない。

無理しないでねって言われたくないから・・。
無理しなくなったらきっと私は全てを捨てて楽になろうとするかもしれない。

二度と同じ過ちは繰り返さないと誓ったはずの感情が、一気に崩れるかもしれない。

自らの死。

いつも死と隣り合わせの状況にいた。

だから・・誰にも話す事は出来なかった。

No.11

旦那に対しては顔を見れば喧嘩になった。

旦那そのものが確実に私の中で【いらないもの】になっていた。

旦那さえいなければ・・

私の気持ちは安定するのかもしれない。

でも一歩を踏み出す勇気はない。

今の形を崩す勇気はない。

常に怒りの感情は消えず、そのまま時間は過ぎた。

1番下が産まれて8ヶ月が経った頃、最後の試練と向き合わなくてはならなくなった。

人は強くなれる。

そして、人は裏切る。

信じる心を二度と持つ事はない。

自分を守る為、私は一生人を信じない。

人生の大きな転機を迎えようとしていた。

No.12

その日は何事もなくいつもと同じ朝を迎えた。

子供を幼稚園に送り、下の子を公園に連れて行く。

買い物をし、幼稚園のママ友と少し話をし、いつもと同じ日常を過ごしていた。


そのまま一日が終わると思っていた。

終わってほしかった。。。


旦那からの一通のメール。
淡々と書かれていた。

件名、最後のお願い。

【何度最後のお願いをした事かわかりません。
でもこれが本当の最後のお願いです。。。
明日迄に40万必要です。何も言わず貸して下さい。。。】


またか。。。

今回は怒りもなく、冷静だった。

同じ事の繰り返し。

【もう、あなたに出すお金はありません。】

返信は来なかった。

その夜、会いたくなくて、子供と一緒に横になった。

旦那は夜遅くに帰って来た。

ため息が聞こえる。

椅子に座る音。

私は旦那と向き合う事から逃げた。
逃げても何の解決にならないのは解っていた。

でも今は、向き合う事を拒否した。

そして私は眠りに入った。

旦那の感情を受け取らないまま。。。

No.13

目が覚め、そっとドアを開けると旦那はいなかった。

異様な静けさ。

いつもと違う違和感。

リビングのテーブルには一枚の紙が置いてあった。

【蜜ちゃんへ】

私宛のその手紙は、朝から私を動揺させた。

【蜜ちゃんへ。
この手紙を読んでいると言う事は、もう俺はここにはいないんだね。
今まで沢山迷惑かけました。
実は返済期限が過ぎている借金があります。昨日どうしても必要で蜜ちゃんにお願いをしました。最後のお願いを今迄何度もして来ました。でも、これが本当に最後のお願いのつもりでした。でも。。拒否されてしまいました。
パチンコがどうしても辞められなく、ようやく病気なんだと自分で認識しています。
子供の為に早く帰る事が父親のはずなのに、どうしても辞められませんでした。
俺はいい父親になれなかった。
最後まで無責任な俺を許して下さい。

後一つ、実は車を担保にお金を借りています。今車に入っている車検証はコピーです。元の車検証は借りている所が持っています。今迄黙っててごめん。

もう、俺はここにいる資格はありません。
蜜ちゃんの病気の事もやっぱり理解が出来なかった。

どうか探さないで下さい。

離婚は自由にして下さい。
それに対して文句もないし、言う資格もありません。

本当に今までごめんなさい。】


手紙の横には家の鍵や会社の物であろう鍵が置いてあった。

体が震え出す。

私は旦那の私物を探した。
部屋にはカバン、中には財布や免許証、携帯まで、全ての私物が入っていた。

この手紙は。。。私に向けた遺書なのだろうか。。。

No.14

パニック寸前の発作。

吐き気と動悸。

「どうしよう。。。」

思わず口にしてしまった不安な言葉に子供が反応する。

「ママ、どうしたの?」

ごめんね、ごめんね。。。
ただ、子供を抱きしめる事しか出来ない。

私は泣いた。

辛かったのか、自分の行動に後悔したのか、パニックのせいか、よく解らない。

しばらく、私の泣き声だけが部屋に響いていた。


「ママーおなかすいた!」

子供のその言葉に、現実に戻った。

もう、旦那はいない。
子供を不安にさせてはいけない。
母親の私がこの子達を守らなければならない。

私が今するべき事を冷静に考えた。

「今、ご飯作るからね」

今、目の前にいる子供達を守る。

私は強くなる決心をした。

私が辛くても、ボロボロになっても、無理しないといけない。

無理しないで!

そんな言葉は、もう私には必要ない。

とことん無理して私は動かなきゃいけない。

心の支えは自分の強くなる気持ち。

思い出にひたってる暇はないから。

強くなる。

子供の朝ご飯を作りながら、覚悟を決めた。

No.15

冷静を装い子供を幼稚園へ送り出す。

家へ帰ると母に電話をした。

「もしもし、朝早くごめんね」

旦那がいなくなる迄の経緯を話した。

母も動揺していた。

私はこらえる涙をおさえながら、また報告すると言い電話を切った。

次は義母へ電話。
義母は、ついにこの時が来てしまったのかと静かに怒りを表していた。

そして次にかけた先は警察。

この数時間で事件がなかったか、事故がなかったか、死者は出ていないか確認した。
事情を話すと、とりあえず署で話を聞くと言う事になり、車で警察署へ向かった。

署へ着くと小部屋へ通された。

差し出されたのは、捜索願。

名前、住所から、その時に着ていた服装や居なくなった経緯を細かく書いた。

見つかる保証はない。

警察で私に出来る事は捜索願を出す事だけだった。

「旦那さん借金かかえてるの?」

1人の警察官が言った。

旦那の残していった鞄の中にあった闇金からの請求書を見せた。

「ああ・・完全な違法だね。奥さんが代わりに払う義務はないから、こっちの方で何かトラブルがあれば相談しに来て。後・・」

私の知識が甘かった。
まさかの事を突っ込まれた。

「車を担保にいれられてるのね、で、車検証がコピーって書いてあるけど・・」

コピーで運転してはいけないと知らなかった。
私は本当に知らなかったので素直にコピーですと言い切ってしまった。

「もう、コピーって知っちゃったからね、車に乗って帰させる事は出来ないから。ここまで来たのも本当はいけない事なんだよ。ここからレッカー呼ぶから、それに乗って帰ってね」

レッカー代1万。。。

踏んだり蹴ったり。。。

帰宅後、旦那の会社に連絡をした。

今日何度話をしただろう。いなくなった経緯をまた話した。
会社の上司は私を気遣ってくれた。
実は会社にも闇金からの督促の電話がある事を初めて知った。
何か状況が変われば連絡すると電話を切った。

朝からまだ数時間しか経っていない。
こんなにも行動している自分に少し驚いていた。

立ち止まっている訳にはいかない。

No.16

いなくなってから一日過ぎた。

旦那から連絡はない。

2日、3日と経ち私は離婚した後の生活や補助金について調べ始めた。

このまま待っていても仕方ない。

もし、離婚したら、どんな手続きが必要なのか。
市役所へ行き出来る限りの情報を得た。

解った事は、離婚届が出せない事。
失踪して本人のサインが書けない。
失踪して一年経てば死亡扱いにも出来るらしい?

離婚が出来ないと言う事は、母子家庭の手当も一年間貰えない。
こちらも失踪では母子家庭と認められない。

まずは出来る事からしていこう。

旦那の携帯の解約、しかしこれも本人がいないと出来ない。
婚姻関係であるうちにしか出来ない手続きを優先した。

何とか携帯は休止という形で止めてもらった。

そして旦那の生命保険の解約。
事情が事情なので特殊な対応をしてくれた。

このまま払い続ければ、10年後には死亡扱いとなり、死亡保険金が入ってくる。
10年、家族を捨てた旦那の保険料を払い続け、旦那に縛られているのは嫌だった。
でも払い続ければ今までの借金と同額位のお金が入る事になる。

しかし・・・万が一・・・何事もなかったかのように帰ってきたら・・
お金をドブに捨てているようなもの。

何時の間にか、旦那の安否より今の生活を重視に考えていた。

これが現実。

私は現実を受け止めているだけ。

No.17

旦那から連絡はない。

このまま本当に失踪したままなのか。

まさか私がこんな立場になるなんて思ってもみなかった。

身近にアドバイスを求めてもどうにもならないのは解っていた。

私はネットの掲示板へ情報を求めた。

もしかしたら、私と同じ境遇の人がいるかもしれない。
今、私がしている事が正しい選択なのか旦那は何を思うのか、そして生きて帰ってくるのか。

私は早速書き込みをした。

【旦那が失踪しました】

今までの経緯を書いた。
数人の人からレスがついた。

皆共通して書かれた言葉は、旦那は帰ってくる。

数ヶ月後、別の土地で発見された例もあった。

忘れた頃に戻ってくる。

私は忘れた頃まで待たなければならないのか?

何故待つのか。

待つ意味があるのか。。。

今まで家族の形に縛られていた。
パパとママ、子供達、それが家族の形。
壊す勇気なんてなかった。
周りの目、子供の将来、お金の事、想像しただけでも不安だらけ。
絆はなくても家族と言う形を守っていかなければ、心身共に耐えられなくなるかもしれない。

今までの感情はそうだった。

その形が崩れ始めていた。

自分で動いて、調べて、現実を見た。

離婚した方が自分も子供達も守れるのかも。。。
きっと守れる。

もう、形にとらわれるのはやめよう。
本当の現実と向き合っていこう。

私は義母に電話をした。

No.18

「もしもし、蜜です。」

義母は連絡を待っていたようですぐに一気に話し始めた。

「蜜ちゃん、もうこのまま待っていてもしょうがないから!」

この言葉から始まり、旦那の事をクドクド言い始めた。
しかしそんなのを聞いている余裕はない。

「あの。。。」

私が言いかけた時、義母が口にした。

「離婚してちょうだい」

。。。それは私が言うセリフ。
離婚の意志は固まった。
でも離婚届が出せない。
それを言おうと思ったのに、先に義母の口から離婚と言う言葉を出された。

頼まれなくてもしたいです。

そう言いたかった。

すると義母は新たな事実を教えてくれた。

「離婚届、持ってるから。いつか、何かあった時、離婚してもらうように息子に書かせておいたの」

まさか。。
私の知らない所で。。

離婚届が作成されていた。

私がこんなにも家族を守る気持ちで今までやってきたのに。。。

用紙をもらう義母も義母だけど、書く旦那も旦那。

私の思いは何だったの。。。

いざと言う時差し出されるはずだったんだ。。


形にこだわっていた数年。。。

返して。。

No.19

今迄の結婚の形を全て否定された気持になった。

離婚届なんてただの紙切れ。

でも、人生を変えてしまう程とても重い紙切れ。

とりあえず書かせておくなんてそんな簡単な行動に出ていた義母に、旦那同様殺意を抱いた。

でももう全て現実。

今となっては都合良かったのかもしれない。

離婚は出来ない、旦那はいない、仕事をしなければ収入はなく、貯金も50万を切っている。
失踪後一年は母子家庭の手当てはなく、子供達にはパパがいない現実をあじあわせ、不幸の塊としか言いようがない生活を送っていかなければ。。。

そう思っていた。

でも、少し未来が見えてきた。

私が今するべき事は目の前の現実と常に向き合っていく事。

私は義母の家に離婚届を取りに行った。

No.20

義母は離婚届を広げ待っていた。

初めて見る離婚届。

確かに旦那のサインがあった。

どんな思いで書いたのだろう。。

「蜜ちゃん、もう息子の事はいいから。三人抱えて大変だろうけど頑張ってやっていって。本当にもうあの子は病気だから、何でこんななるまで。。」

義母は半泣き状態だった。

無言の私。
何も答えられない。

また連絡しますと言い残し、わずか数十分で家を後にした。

もう義母は他人の気がしてならなかった。

家に帰り離婚届を作成した。

淡々と。

思い残す事は何もない。

作成が終わり後は出すのみ。

婚姻関係のうちにやり残した事はないか。

他人になる旦那。
他人になる前に家族のうちにしか出来ない事はないか慎重に考えた。

感情の問題ではない。

事務的な問題。

手続き的な問題しか考える事は出来ない。

怒りも悲しみも、昔の楽しかった思い出も

もう私には必要ない。

No.21

下の子供を連れ、市役所へ向かった。

ほんの数日前に来たここで、前にも後ろにも進めない感情になった。

でも今は違う。

これで・・前に進める。

私は手続きへと向かった。

役所の人は私の顔を覚えていた。

「あ、その後どうなりましたか?」

私は離婚届を差し出した。

「幸か不幸かきちんと形にする事が出来ました」

義母が離婚届を持っていた事や、旦那がサインしていた事を話した。

「こんな言い方はなんなんですが・・良かった・・と言っていいのでしょうか・・」

私は素直に笑顔で返事をした。

役所の人は離婚届に目を通した。

不備はなく、正式に受理された。

旦那は旦那ではなくなった。
もう、家族ではない。

家族は4人になった。

これから、子供の親権や手当ての手続きなど思っていた以上の事が待ち構えている。
役所の人から説明をされ、こんなにも大変なものなのかと呆気にとられていた。

でも、もう、後戻りは出来ない。

とにかく動く。

考えている暇はない。

いつか、この事を笑って話せる日が来る。
必ず。

まずは、子供の親権を私に移す手続きをしなければならない。
元旦那はもういない為、必然的に親権は私。
その為の必要な書類や戸籍関係を集めなければならない。

離婚で苗字も旧姓に戻さない事にした。
子供の為。

その手続きをしなければ母子手当ての申請は出来ない。

とにかく一刻も早く、最低限の手続きをしなければならなかった。

そしてこの日、私は初めて幼稚園を通じて友達になったママに離婚の事実を話した。

幼稚園にも話をした。

元旦那の失踪から離婚まで。

一番上の子は年長、後4ヶ月で卒園を迎えようとしていた。
何とかここで卒園させてあげたい。

保育料の関係もあり、園には全てを話した。

子供を振り回す事は絶対にしたくない。

大人の事情で子供の心を傷つける訳にはいかない。

No.22

友達はびっくりしていた。
当たり前だ・・
でも、時々元旦那の愚痴をこぼしていた為、ついに・・と言う反応だった。

私はこれからの手続きの事を話し、幼稚園のお迎えをお願い出来ないか話をした。

「全然大丈夫!」

友達は快く了承してくれた。

幼稚園の方もかなりびっくりして言葉がなかった。

心配だったのは保育料だった。
すぐに仕事が見つかるはずはない。
今ある貯金で何とか暫くやっていかないといけない。

園は私のように突然の家族の形態が変わった世帯に対して補助がないか色々と調べてくれた。

私も沢山調べた。この時期は役所では教えてくれない事をとにかく調べ、インターネットのありがたみを感じていた。

まずは裁判所へ行き、親権の移動、元旦那の本籍地で子供の戸籍謄本を取り、裁判所へ行き、役所へ行き、また裁判所へ行き、と手続きに明け暮れていた。

この時期、引っ越しも同時にした。
実家近くの不動産屋を毎日回り、部屋を探した。

実家に入る事は考えなかった。

母も苦労している。今迄父をたたせる為に一生懸命やってきた。

母には、まだまだこれから自分の人生を楽しんでほしい。
私の勝手な事情で実家に入る事は、私自身嫌だった。
子供が小さい為、病気の時や仕事が休めない時などは確かに迷惑をかけるかもしれない。
でも、出来るだけ、甘える事なく私1人でやっていこうと決めていた。

No.23

部屋を探すと同時に保育園の下見。

働く時間を考えると保育園は避けられない。
私自身も幼稚園だったし、長男も当たり前のように幼稚園に入れた。
保育園は幼稚園よりも少し幼い印象があり、抵抗があった。

でも、実際はとても温かく、家庭生活の延長のような感じがあり、見学する保育園全てが幼稚園とは違った家庭的な良さを出していた。

長女は転園となり、次男は1歳から保育園に通う事になる。
長く通う保育園、家もなるべく近い所を探し、保育園の手続きも教えてもらった。

同時進行で色んな手続きをしていた。

一つの事に時間をかけてはいられない。

子供の親権は無事私になり、母子手当ての手続きもする事ができるようになった。

まさか私が、母子家庭になるとは思っていなかった。

世間から向けられる母子家庭に対しての目は、まだ私の心を揺れさせていた。

離婚。

シングルマザー。

自分からこんな話が誰かに出来る時は来るのだろうか。

本当に笑い話として自分の中で割り切れる日は来るのだろうか。

この先この現実がずっとつきまとう。

この決断が正しかったのかはまだ解らない。

私が何年もこだわっていた家族の形が壊れた今、子供に申し訳ない。

「何でうちにはパパがいないの?パパは帰ってこないの?」

必ず言われる日が来る。

私はなんて答えたらいいんだろう。。。

私にとっては最低な二度と顔も見たくない相手。

その感情を子供に押し付けてはいけないんだろうな。

「パパはちょっと遠い所にいるからね、なかなか帰って来れないんだよ」

これが精一杯の言葉なのかもしれない。

No.24

部屋も無事に決まった。

契約者は私にはなれない。無職で収入もない為、父に契約をしてもらった。

自分の無力さを感じていた。

誰かを頼らなければ認めて貰えない自分の存在。

私は今、1人では何も認めてもらえない。

それが現実だった。

その夜、少しつづ片付いてきた手続きの整理をしていた。

携帯電話が鳴る。。。

時間は夜10時。

画面には公衆電話の表示が出ている。

「もしもし・・・」

電話の相手は元旦那だった。

「何してんの?何電話かけてきてんの?どこにいるの?」

否定の言葉はこれ以上出てこないと言う程元旦那を責めた。

私の一方的な感情をぶつけている所で電話はすぐに切れた。

私から発信する事は出来ない。
今どこにいるのか。何をしているのか。
大事な事を聞きそびれた。

数分後。。。

家のドアを叩く音。

ドアの向こうで立っていたのは元旦那だった。

今更、何故帰って来た?!

死ぬ事も出来ず、ノコノコと帰ってきた元旦那。

怒りでどうにかなりそうなはずなのに、元旦那のどうしようもない姿に同情してしまった。

そんな自分が嫌だった。

No.25

私が旦那ではなく、元旦那になってから初めて会い、初めて向けた言葉。

「離婚届出したから」

元旦那は驚いていた。

「え?!嘘?!出しちゃったの?!待っててくれると思ったのに!」

マジかよーと言うような口調で言った。

この人は自分のした事の重大さが解っていないのだろうか。

心の中では怒りで一杯になりながらも、目の前にいる元旦那の汚い身なりを見て少し悲しくなってしまった。

ほんの少し前まで一緒に生活していたとは思えない程別人の元旦那。
今迄何処で何をしていたか聞くと、ホームレスとして生きていたと答えた。

あてもなく歩き続け、思い出に浸り、空き缶を集めそれがお金になる事を教えてもらい、自動販売機の釣り銭をあさり、店から出た廃棄物の残飯をあさる。

私は残っていた味噌汁を温めて元旦那に渡した。

「こんな温かいもの食べたの何日ぶりだろう・・」

元旦那は泣きながら食べていた。

食べながら少しづつ話しはじめた。

「俺って本当にバカだよな・・。最低の人間だよ。。。でも・・蜜ちゃんは待っていてくれると思ってた・・」

その言葉を聞いて一気に同情が私の中からなくなった。

もう、私の心の支えになってくれた旦那はここにはいない。
風俗のドロドロした世界から救ってくれた旦那は二度と帰ってこない。

元旦那が悲劇のヒロインぶっているようで言う事全てが台本通りのセリフに聞こえた。

No.26

感情に浸っている場合ではない。

これからどうするのか、携帯もなく所持金もない。
この先、何かしらの手続きで本人が必要になるかもしれない。

このまままた放浪させる訳にはいかない。

でも、家に入れる事はもう出来ない。

あれこれ考えているうちに元旦那は

「じゃあ、行くわ」

と行ってしまった。

私は・・・・

引き止める事が出来なかった・・・

次の日警察に電話をし、本人が出て来た事を伝え失踪届けを取り下げた。

会社にも連絡をした。
離婚届を出した事、本人が見つかった事を話した。

会社は私の為に凄く動いてくれていた。

退職金が出る事、退職金とは別に会社側が援助してくれる事を伝えられた。
手続きには本人が労働組合らしき所へ行かなくてはならない。

またすぐに帰ってくるはず。。

根拠のない確信がまた私の中で芽生えていた。

そして会社から驚愕の事実も知らされた。

元旦那は会社のお金も着服していた。

領収書の書き換え、偽りの申請、警察に訴えれば犯罪になる行為。

しかし会社は残された私達の事を考え、警察には言わないと言ってくれた。

私だけではなく、会社までも騙していた元旦那。

ギャンブルの恐ろしさを改めて実感させられた。

No.27

元旦那は思った通り3日後にはまた戻って来た。

戻れば優しくしてもらえる。

そんな感情があったのかもしれない。

私は心から優しくなんて出来なかった。
それでも、全ての事が片付くまで、私達の事を捨てたこの人を何とか繋ぎとめておかなければならない。

その日、元旦那を家に泊めた。
次の日一緒に退職金の手続きをしに行く為だった。

久しぶりの家。

元旦那をとりあえずお風呂に入れ、身なりをきちんとしてもらった。

着ていた服は全てゴミ袋にいれて捨てなければならない程汚れていた。

家にあった元旦那の私物はほとんど捨ててしまった為に私の大きめの服を着させた。

「何で捨てちゃったの?」

そう言う元旦那に

「必要ないから。」

冷たく答えた。

子供の顔を見ては涙ぐみ、ご飯を出してあげれば涙ぐみ、布団で寝られる幸せを感じては涙ぐみ、当たり前だった日常の幸せをようやく実感していたのか。。

もう遅いよ。

全てを失って初めて気づく小さな幸せ。
当たり前すぎて幸せを感じる事も忘れていた元旦那。

この小さな幸せは今の元旦那にとってかけがえのない大きな幸せになっているんだろう。

やっと気がついたこの幸せは明日で終わる。

もっと早く気がついていれば、何年も感じられる事が出来たはずなのに。

失う前にその幸せを感じて欲しかった。

家族の形だけではない、心の繋がりを私に感じさせて欲しかった。

もう二度と戻らない家族の形。家族の絆。

私だけではなく、元旦那もその時感じていたのかもしれない。



No.28

次の日、子供と久しぶりに対面した元旦那。

子供は無邪気にパパと呼ぶ。

今日で最後のパパ。

朝ご飯を済ませ幼稚園の支度をする。

「パパ、いってくるね!」

また会える事が当たり前のような子供の言葉に、元旦那は涙ぐみ言った。

「ママの事助けてやるんだぞ」


この言葉を最後に子供と別れた。

外に出て、子供の姿が見えなくなる迄手をふっていた。

元旦那は何を思っていたのだろう。

「パパ、泣いてたよ?なんで?」

子供が言った。

「何でだろうね?もっと大きくなったら何で泣いてたか解るかもね。」

「ふーん。。オレ、はやくおとなになりたいなぁ。」

この子は絶対に私が守っていく。

改めて心に誓った。

No.31

>> 29 わかりますよ、自分もすっごく! そういう時、「やだ~。…」と必ず泣いて正直の自分の気持ちが出、泣いてでもはってでも、確率の低い保証もない… しんぞうさん(^-^)
ありがとうございますっ( ̄^ ̄)ゞ

そうなんですよねー。。保証もないのに。。

でも私の文章で解ってもらえてホントに嬉しいです!

是非これからも読んでみて下さいっっ(^-^)

本当にありがとうございます!!!

No.32

>> 30 文章上手い 匿名さん!!!

その一言、すっごく嬉しいです!!!

これからも是非読んで頂けると私はすごく嬉しいです\(^o^)/

素敵な言葉、ありがとうございました(T_T)

No.33

帰宅すると旦那は座って泣いていた。

声を出して泣いていた。

。。。私は同情はしない

「時間かかるかもしれないから、もう出るよ」

感傷的になっている元旦那に、業務的に言った。

もうここには戻れない元旦那、後から必要な物があると言われても困るからと、少ない私物を持たせた。

「引っ越しするからもうここに来ても誰もいないから」

準備をしながら感情なく言った。

「えーー?!嘘でしょ?!」

涙も止まる程驚いた元旦那。

また来る気だったのか。。。
本当にどこまで図々しいと言うか何と言うか。

怒りも悔しさも何にも感情はない。

そんな感情もう忘れた気がする。

私が思う感情は、

信じれば裏切られる。

もう誰も信じない。

それだけ。。。

No.34

感情がないながらも、頑張って頑張って、最後に子供の幼稚園での姿を見せた。

「勝手に子供に会おうとか考えないでよ、ここももう辞めるから。貴方のせいでね」

本当は卒園までいさせる。

少しでも子供から遠ざける為、居場所を特定されない為の言葉。

子供を守る為なら嘘だってつける。

幼稚園を通り過ぎ、涙ぐむ元旦那の感情を無視し、手続きの場所へ向かった。

手続きは意外と簡単だった。
本人ではなくては出来ない手続きを目の当たりにすると、本当に帰って来てくれて良かったと感じた。

手続きだけの感情。

これで退職金と会社の有難い支援金は口座に振り込まれる。
口座も元旦那の口座に振り込まれる為、カードは私が管理した。
私の口座に振り込まれたらカードは実家へ送る。

元旦那はしばらく実家に帰る事になっていた。

嫌々ながらも元旦那の母親がしばらく監視する事を引き受けていた。

携帯の解約もした。

保険の解約も。

これでもう必要ない人になった。

「じゃあ元気で。あ、会社のお金も使ってたんだって?会社側は訴えないってさ。良かったね。」

最後に浴びせた言葉は多分、元旦那を更にドン底迄落としたと思う。

もっと後悔して、もっと悲しんで、今迄の自分を否定すればいい。

どうせ、そんな感情はないだろうけど。

最後に元旦那は言った。

「じゃあ、体に気をつけて無理しないようにね。。」

今迄何度も聞いて来た。
その度に、心にもない事をと思った。
当たり前のように励ます、優しい言葉と言ってる方は感じてる。

でも、こんなにも、こんなにも、怒りが込み上げた事はなかった。

【無理しないでね】

誰のせいで無理しないといけないの?!

私はこんなにもやってきたのに!!!!

私は何も言わず元旦那と反対の方向へ歩いて行った。

無理しないとやっていけないんだよ。
本当はすごく大変だって誰かに言いたい。
でも言ってしまったら。。

私はきっと崩れてしまう。

そんな弱い自分には、人の後ろをついて歩く自分にはもうなりたくない。

この時、私は自分の感情しか考えていなかった。
相手の感情を考えられる程余裕がなかった。

その後、この時の感情を自分で反省する事ができる時が来る。

数年かけて、感情の変化が私におきてくる。

別れと出会いの繰り返しで私は成長していく。



No.36

>> 35 けいさん(^-^)/

もったいないお言葉本当にありがとうございます(T_T)

言葉で伝えるのと同様、文章で人の心を動かすってすごく難しいんですよね。
でも、私の文章を読んで、喜怒哀楽の感情をもって頂けるとしたら。。

これってすごく嬉しい事なんですよね!

その時の情景を浮かべてもらえるような、
また次が読みたくなるような。。。

そんな文章が書けたらって思っています(^-^)/

更新は不定期ですけど、是非、これからもよろしくお願いします!

本当にありがとうございます(T_T)

No.37

法的な手続きはほぼ終わり、後は細かい手続きが待っている。

まずは良く使う車の名義変更。

そう言えば。。。

元旦那は車を担保にお金を借りていた。

以前から車の調子が悪いと言っては細々したお金を私に請求していた。

領収書も見せてもらった。

確かに車屋だった為疑いもしなかった。

しかしこうなった今、疑わざるをえない。

私はネットで領収書の会社の名前を調べた。

闇金?。。。車屋?。。。

よくわからない会社。

深い溜め息が出た。

このままでは車が取られてしまうのも時間の問題。
かと言って私が立ち向かった所で、借りてる以上のお金を請求されるかもしれない。

どうしたらいいのか。。。

私に支払い義務はない事など相手には関係ない。

払えないのなら車が。。。

どうにもならない。

私は初めて父親を頼った。


No.38

父親は小さい頃から私を可愛がってくれた。

末っ子の私は待望の女の子だったせいもあり父親からは怒られた記憶はあまりない。

その愛情は、子供としてではなく、1人の人として向けられていた気がする。

ご飯粒を絶対に残してはいけなかったし、パパママと呼ぶ事も駄目だった。
自分の事を名前で呼ぶのは幼稚園の頃から注意され、いい事と悪い事の区別をしっかり教えてくれていた。

そんな父に甘えた記憶はあまりない。。
人としての愛情を受けていた私は、甘え方がよく解らなかった。
相談する事もなく、何となく父親と言う感じではなくなっていたのに気づいたのは高校生の頃だった。

好きとか嫌いではなく、父親と言う形の1人の人間。

そんな父に話をした。

「全く。。最後まで迷惑かける奴だなぁ。お父さんが電話するから。」

そう言って車屋に電話をしてくれた。

夜の世界を知っていた父は闇金などたいした事はなかった。

私が夜の街で働いていた事は知らない。。

私は父親の中では、いつまでも可愛い子供のままでいたい。


No.39

父は私の目の前で電話をしてくれた。

「私はこういう者ですが。。」

と、あくまでも丁寧な言葉使いで話を始めた。

こちら側はこんな事になっていて状況がよくわからないと言った話をしていた。
相手側の言っている事にも共感しているような素振り。

借りたもんは返す。

父と相手の気持ちは同じだった。

「うちも困ってるんですよねぇ。。全く何考えてるんだか。でもオタクが話が解る相手で良かったよ」

父は話をまとめたようだった。

怒らせず、共感し、どんな時でも冷静に。

父の姿。

幼い時の気持ちを思い出す。



休みの日にはお父さんはいない。
周りの家族はお父さんと遊べていいな。。
何でご飯粒残ってるだけでそんなに言うの?

何か。。何話せばいいんだろう。。

上手く。。甘えられない。。

でも父は、いつだって私の事を見守ってくれていた。
どんな時も正しい事を教えてくれていた。

甘える事が出来なかった私が、父の、父親としての甘えさせ方を制限させてしまっていたのかもしれない。

自分がやりたいことは突っ走ってやる。

父親に相談なんてした事ない。

だけど、もっと早くに色んな事を話していれば。。。
甘える事が出来ていれば。。。

甘える事を知らずに生きてきた。

お父さん、ごめんね。

ありがとう。。






No.40

結果的に元本は払わなくてはならなくなった。
借りたのは事実。
70000円で車が安心して乗れるのなら。。

相手の指定した口座にお金を振り込み、受取書も送ってくれた。
車検証も戻ってきた。

「ほんと。。ありがとございます。。」

父に面と向かって言うのは恥ずかしかった。

「まぁ。。いい勉強だと思えばねぇ」

父は目を合わさず軽く言った。

何だか心がとても軽くなった気がした。

そんなほっとしたのもつかの間、時々の督促の電話が私を悩ます。

「おたくのご主人の~、、、」

「うちにご主人はいませんけど?!」

そんなやりとりが続いた。

借金はあくまでも本人のもの。私が払う義務はない。
ましてやもう旦那ではない。

色々情報を集めたお陰で強気に出る事が出来た。

言葉では強くいないと、女だからとなめられる。

辛いけど、毎日ドキドキだけど、これ以上誰にも迷惑をかけたくない。

引っ越しまでもうすぐ。










No.41

幼稚園は正直悩んだ。

離婚の事実を知ってるのはわずか。
自分から堂々と公表する勇気もない。
変な噂が広まっても困る。

引っ越しと同時に変わるか、後三ヶ月通うか悩んだ。

先生や園長は卒園迄出来るだけの協力をすると言ってくれた。

通うとなれば車で片道30分。

それでも一生のうちのたった三ヶ月。

きっと後でその苦労が笑えるようになる。

私は最後まで幼稚園に通わせる事にした。


引っ越しの日に備え片付けの日々、子供は何故引っ越しをするのかわからないようだった。

「ママ、なんでここのおうちからちがうとこにいくの?」

「もっと綺麗な学校見つけたんだよ、幼稚園は最後まで行くからね!」

私は笑顔で言った。

これからもっと楽しい事が待ってるよ。
新しいお友達と新しい環境。
そこにパパはいないけど、ママも頑張るからね。

そんな気持ちを込めていた。

No.42

引っ越し当日、とても快晴だった。

近所の人は引っ越す事にびっくりしていた。

「旦那が出張で長く留守にするんです、だから何かあった時実家の助けが必要で。。」

嘘をついた。

まだ幼稚園で会うお母さんもいる。

まだ本当のことを話す訳にはいかない。

引越し先はとても良い場所だった。

ようやく元旦那関係から解放される。。

郵便物の転送は元旦那の分だけは手続きしなかった。

もう、新しい家に元旦那の影を一切持ち込みたくない。

引っ越しは無事に終わり、アパートの挨拶回りも終わった。

明日から片付けと幼稚園の送り迎え、その合間に様々な住所変更の手続き、まだ残っている離婚後の手続きの日々が続く。

まだまだ仕事を見つける余裕はない。

貯金は減っていくばかり。

仕事を見つける余裕が出る迄、とにかく動き続ける。

今はそれしかない。

No.43

引っ越して初めての朝。

いつもより早く子供を起こし、園へ向かう。

初めは大変だと思っていた送り迎えも日が経つに連れ楽しくなってきた。

途中に見える大きな富士山や、雪が降った時の景色、子供と会話をしながらプチドライブを楽しめるようになっていた。

慣れる迄は送った後家に帰らず、そのまま手続きへ向かう事が多かった。

卒園に向けての係りも引き受け、毎日、アルバムの作成のデザインなどを他のお母さんと決めたりしていた。

自分の中で少しずつ普通の生活に戻れている事を幸せに思えていた。

それでも、電話が鳴る度にあの頃の恐怖を思い出す。

もう、かかってこないと解っていても恐怖感は取れなかった。

生活に慣れた頃、一通の手紙が届く。

元旦那宛の手紙。

届くはずのない手紙が届いた。

墨で書かれた威圧感たっぷりの宛名。

中を見ると、借金の督促から始まり、脅し、私への批判の言葉などが同じく墨で書かれていた。

私はすぐに郵便局へ行き抗議した。

「何で手続きしていない人の郵便物が届くんですか?!」

郵便局の人からは謝られ、再度、二度と届かないようにしてもらった。

私はその手紙を二度と見る事はなく、ゴミ箱へ捨てた。

No.44

引っ越して一ヶ月後、インターネットも繋がった。

久しぶりにパソコンへ向かう。

登録していたサイトを開くとメールがきていた。

裕。。。

離婚をして、何の障害もない恋愛が出来る。

でも、もう恋愛をする気はなかった。

あの時、すぐに離婚をしていたら、裕とはどうなっていたのだろうか。

今はもう好きでも嫌いでもない。

昔には戻れない。

感情はない、だから私は返信をした。

その夜、久しぶりにチャットをする事になった。

「久しぶりー。」

そんな会話から始まった。

私は離婚した事を伝えた。

裕は自分にも責任があると言った。

裕は全く関係ない。
夫婦関係はその後きちんと立て直した。
お互い反省し、一から始める決意をした。

そこで裕との事は元旦那も区切りをつけた。

だから裕は関係ない。

話をしていても、裕には恋愛感情は全く出ない。

時の流れの感じた。

でも、こうやって繋がっている。

裕とだけはどんな感情があろうと時間が経とうと繋がっていた。

初めて出会ってから二年が経とうとしていた。

No.45

裕とはその後特に連絡はとらなかった。

私も毎日忙しく、手続きもようやく落ち着き子供の事メインに動けるようになっていた。

あっと言う間に二ヶ月が過ぎ、仕事を見つける余裕も出来た。

オープニングスタッフ、私にとって魅力のある仕事。

周りは高校生やら二十代前半で、場違いと思いながらも面接に挑んだ。

無事に面接に受かり、これからトレーニングが始まる。

この職場の出会いが私を変えてくれるとはその時は思っていなかった。

ここで、私は沢山の事を学び、新たな出会いをする。

この先、忘れる事のない大切な事。
忘れたくない感情。

その後、この職場は私の天職と思える場所になる。

No.46

保育園も無事に決まった。

家から近い所で、母子家庭は優先して入れてくれる所だった。

次男は一歳でここに入り、長女は転園。
最後迄卒園させてあげたかった。。

子供が幼稚園の合間に保育園で準備する物などを用意した。

仕事はオープン迄約一週間の研修があり、次男を母に見てもらっていた。

約七年ぶりの仕事。

覚える事は沢山で、研修中に辞めたいとさえ思った。

それでも生活の為、絶対に続ける。

自分一人でいる時間は何年ぶりだろう。

また、仕事をするとは思っていなかった。

時が経つのが一段と早く感じた。

そして、長男、卒園。

やっと、区切りがつく。

嵐のように過ぎて行った四ヶ月。。

人の温かさを感じた。

でも、大切な心を失った。

私はこれからもっと強くなりたい。

無理しないでとはもう言わせない。

無理なんてしてない。

無理するのが私だから。

そうしていた方が楽だから。

もっともっと無理をして、心なんてなくなった方が楽なんだから。



No.48

>> 47 まりもさん\(^o^)/
読んで頂いていてありがとうございます\(^o^)/
すっごく嬉しいです\(^o^)/\(^o^)/

自分と向き合うってとっても難しい事ですよね!
相手と向き合う事よりも難しい事で、いつも後回しにしがちです(T_T)
受け入れたくない。
解ってるけどみて見ぬふり。

ましてや向き合う事が辛い時は特に向き合えません(T_T)

でも、今の自分を受け入れる。
辛くても向き合う事で、辛い感情もポジティブな感情も全部私なんだって思うようにしています(^-^)
今の自分を認めてあげる!

それが自分にとって自分にしか出来ない愛情なのではないでしょうか?(^^;;

なんて偉そうに言いましたが、自分を受け入れる事で相手も受け入れる事が出来るのかなって(^-^)

大丈夫!
私はここにいるよ!
何があっても自分を受け入れて見失わない!

これからも是非読んで頂けるとすごく嬉しいです(^-^)
まりもさんの温かいお言葉受け止めました(^-^)/

本当にありがとうございます\(^o^)/

No.49

四月、新しい生活が始まった。

学校へ長男を送り出す。
保育園へ2人送り、そのまま約一時間かけて職場へ向かった。

母親から1人の人として切り替える。

職場は最後の追い込みに入っていった。
覚えられなくて辛い事も沢山あった。
でも、周りが励ましてくれる。

「蜜ちゃん!ファイトだよ!」

頑張ろう、出来るよ、大丈夫!

いつも励ましてポジティブになれる言葉を沢山かけてくれた。

お金だけではない、何かをここで掴める気がした。

No.50

オープンの日はすごい渋滞、雑誌などでも特集され注目されていただけあって、普段行く時間の倍はかかった。

オープニングセレモニーの後、久しぶりに接客をし、私の心も華やいだ。

外ではお客さんの整理をしてくれているスタッフがいる。

そのスタッフはさんは笑顔で会釈をしてくれた。

かっこいいー。

好きとかじゃなく、その仕事ぶりに素直にかっこよさを感じた。

オープンから数ヶ月、かなりの混み具合で、私達だけではお客さんを整理しきれない。

そんな時はいつもそのスタッフさんは手伝ってくれた。

「お疲れ様です!」

私は声をかけた。

「お疲れ様です!」

初めて声を聞いた。

少しドキドキした。

朝、準備が間に合わない時は見回りついでに手伝ってくれた。

話したいな。

素直にそんな感情が出た。

信じないとか人を好きにはならないとかそんな事は考える事もなく、挨拶だけでもしたい。

沢山の従業員がいる中でも挨拶するのは仲間内だけ、でも私は少しでもここで繋がれればもっと楽しくなれると思っていた。

「おはようございます。いつもありがとうございます!」

スタッフさんは笑顔で答えてくれた。

「いつも混んでて大変ですよね、でも頑張りましょうね」

そのやりとりだけで心が温かくなった。

深い感情になる事はない、異性に対して温かくなれる気持ちが嬉しかった。

好きになる余裕など私にはない。

でも、少しでも温かい感情になれる事が心の傷を回復してくれる。

人との触れ合いが存分に出来るこの場所できっと私は成長できると思った。

No.51

スタッフさんは朝、必ず店の前を通ってくれるようになった。

「いつも大変そうですよね」

そんな会話から始まった。

「もし良ければ今度食べに来て下さいね」

朝から笑顔になれる。

「いつも元気ですよね。俺も朝から元気でますよ!」

嬉しかった。

同僚にもウケが良かったスタッフさん。

「蜜っ、仲良しじゃん!」

「そんなんじゃないよー」

そう言いつつもかっこよくて優しいスタッフさんに惹かれていた。

心がキュンキュンする。

ただそうなれる感覚が嬉しくて気がつけば営業中も探していた。

付き合いたいとかそんなんじゃなく、初恋のような、見つけるとドキドキする感じが新鮮で楽しかった。

No.52

仕事も一ヶ月が過ぎ、大分慣れてきた。

お客さんも喜んでくれ、スタッフさんとも会話が出来るようになった。

普通の幸せ。
普通の感情。

でも一つ、どうしても捨てきれてない悪い癖。

【この人は。。風俗に行ったことがあるのだろうか】

もしかしたら私が相手をしたかもしれない。

過去の自分を思い出す。

笑顔なのに、こんなにいい笑顔をしているのに、もしかしたら借金をしてるのかも。。

人を疑う癖。

どんなに楽しくても、どんなに心がキュンキュンしても、人を疑う気持ちは変わらなかった。

その夜、裕と話をした。

裕とは特別な感情はなくなったものの、どこか切れない感覚があった。

ネットで繋がる裕と私は、心の何処かでお互い手放したくない感情があったのかもしれない。

裕も時々過去を話すものの、友達のような感覚で私に接した。

「仕事してるの?」

その言葉に正直に話をした。

「今度食べに行こうかな」

「うん、慣れた頃おいでよ」

軽いノリで話した。

「好きな人出来た?」

彼氏は作らないと話をしていた。

でも、初めて裕に言った。

「うん、実は。。」

スタッフさんが気になってる事、でも付き合うとかではなくただ話をして楽しむだけの関係でいい事を伝えた。

「そっかぁ」

裕はこの時からスタッフの人とどうなったかしきりに聞いて来た。

もしかしたらまだ私に感情が残っているのかもしれない。

でも知らないフリをした。

過去には戻らない。




No.53

スタッフさんとは以前よりよく話すようになり、趣味の話などもするようになった。

休憩時、たまたま休憩室でスタッフさんを見つけた。

そばに行き声をかけた。

「お疲れ様です、隣いいですか?」

席を空けてくれた。

「今度遊びにいきましょうよ」

話のノリでそんな事を言われた。

「本気にしちゃいますよ!」」」

冗談混じりに言葉を返す。

「本気にして下さい笑」

嬉しかった。

でも実現はしないと勝手に決めていた。

「じゃー私のアドレス教えますから電話下さいね笑」

冗談ぽく言ったけど、スタッフさんは携帯を取り出し、赤外線でいいですか?と言って来た。

2人の携帯を合わせる。

より近くに感じた。

「夜、電話してもいいですか?」

電話が苦手な私はその言葉に動揺したけど、ハイと返事をした。

夜までドキドキが続いた。

指定した時間に電話が鳴る。

かなり緊張した。

「いつも元気ですよね!本当に見てると元気が出ますよ!」

褒められた事が嬉しかった。

「蜜さんは・・あ、蜜さんって呼んでいいんですかね?皆さんあだ名で呼び合ってるみたいなので・・俺の事もジュンって呼んでいいんで」

名前を呼ばれてドキッとした。

いちいちドキドキして会話の内容がよく解らない。

「で、いつ休みですか?あわせましょうよ!一緒にご飯でも食べにいきましょう」

話が具体的になって来た。

嬉しい反面、不安感も同時に感じた。

まだパニックのなごりがある私。

それを言う事は出来ない。

電話だけでドキドキしているのに、会ったら更にドキドキする。

それに加え、電車移動や外での食事。

喜びの感情だけを感じる事が出来ない自分に少し落ち込んだ。

No.54

ジュンさんとは電話以来とても親しくなった。

お店にも食べに来てくれ、私を待っていてくれた。

会話は仕事の話だけではなく、私生活の話が中心になっていた。

「蜜~急接近じゃん!」

店の誰もがそう言った。

「好きだよっ!キュンキュンしちゃう!」

ただ話して楽しい、片思いのような恋の感覚を楽しんでいた。

しかし、オープンして半年後、ジュンさんはこの場所から仕事場が変わる事になった。

最後の日を聞いた時、何とか気持ちを伝えたかった。

あなたが好きです。

深い事は考えてない、ただその気持ちを伝えたかった。

私は仕事が終わった後、ジュンさんを探した。

偶然にも会えた。

あ。。。

本人を目の前にすると言葉が出てこない。

あの。。。

そう言いかけた時、ジュンさんから話し始めた。

「俺、今日で最後なんすよ。」

「私、さみしいです。。せっかく仲良くなれたのにお別れなんて。。」

優しく笑いかけてくれた。

その笑顔に思わず言ってしまった。

「離婚して、初めて人を好きになりました。これで終りになるなんてさみしいです!」

「終りじゃないですよ。これから始まるんです」

色んな取り方に捉えられる答え。

深くは言わなかった。

「夜電話していいですか?」

何か。。始まるような。。このままのような。。

私は待ってますと伝えジュンさんと別れた。

No.55

夜10時、前と同じく電話が鳴る。

「こんばんわ」

数時間前に会った顔が思い浮かぶ。

「ほんとにお疲れ様でした。でも寂しいです。。」

ジュンさんは優しく答えてくれた。

「お別れじゃないですよ。さっきも言いましたけど、これから始まるんです。遊びにいきましょうよ!行きたい所ありますか?」

嬉しかった。

「来週木曜休みなんですけど、蜜さん休み取れそうなら本当にどっかいきましょうよ?」

これ以上発展させない恋。

自ら発展させようとしていない想い。

それでもドキドキした。

「休み。。変わってもらいます!本当にいいんですか?」

これから始まる。

ジュンさんと木曜日に会える事になった。

本当に嬉しかった。

でも。。緊張と不安。。。

これを機に心の病から解放されたい。

会う前日は緊張のあまり何も口に出来なかった。

明日は普通な感情に戻っていますように。。。

どうか、私が私のままでいられますように。。。

明るい私でいられますように。。。

No.56

この時の私のパニックの状態は、薬を飲む程ではなく、気の持ちよう程度のものだった。

仕事をして、明るい、時には怖い、強いといった印象を持たれるようになった。

物事をハッキリ言うようになっていた為か弱さの印象はなかった。

ジュンさんにもそんな印象を持たれていた為、本来の弱さを誰の前でも出せずにいた。

でも、本当は。

まだ、当たり前の事が出来ない。

電車に乗る事も慣れない人と外食する事も、不安の原因になる。

あえて、原因になる事はしなかった。

だけど、明日一気にこなさなければならない。

それを理由にジュンさんとの約束を断りたくない。

大丈夫!

何とかなる!

心では何とかならないかもしれないと感じていた。

普通に喜べない自分が苦しい。。。

その苦しさは絶対に表に出さない。

理解しようとして気を使わせたくないから。

自分の苦しさより、相手に気を使われることが辛い。

あまり眠れないままその日を迎えた。

No.57

待ち合わせは私の地元の駅。
ジュンさんの家から1時間半はかかる。

「家の近くまで行きますよ!」

ジュンさんはいつも以上に優しかった。

私の私服姿をあまり見たことのないジュンさんは、私の事を可愛いですねと褒めてくれた。

ドキドキした。

私達は歩き始めた。

遠くも近くもない距離。

たまに手が触れ合うと恥ずかしかった。

【私にもまだこんな気持ちがあったんだ。。】

体を使って仕事をしていたとは思えない、信用する事を忘れ、1人で生きていく決意をした私に恥ずかしい気持ちがあった事に自分で驚いていた。

話をしながら店を回り、幸せなひと時だった。

「そろそろ場所変えませんか?電車で30分位の所に面白い店があるんです」

電車。。。

気が重い事を悟られたくない私は笑顔でハイ!と答えた。

ジュンさんは2人分の切符を買い一緒にホームへむかった。

大丈夫。。

大丈夫。。

No.58

動悸が激しくならないようにジュンさんと話をした。

30分、降りる事は出来ない。

出来ないと思うと不安になる。

もし、何かあったら。。。

何とか無事に目的地へ着き、冷静さを取り戻した。

その場所は初めて行く所で、興味深いお店が沢山有り、一気に気分は高まった。

「シルバー好きなんですよね?どんなデザインが好き?」

その時初めて敬語が取れたのを聞き逃さなかった。

少し。。近づいた。

「クラウン好きかな!」

入ったお店はシルバーショップ。
ジュンさんは私の為にクラウンのデザインを探してくれた。

ジュンさんもシルバーが好きで、いつも色々なデザインの物を身につけていて、その話で良く盛り上がっていた。

店の中で話は弾み、幸せを感じた。

「蜜さん、これなんかどう?」

「おー!凄いイイ!」

「買ってあげますよ」

え?!私に?!

嬉しさもあった。でも悪い気持ちが嬉しさより勝っていた。

「えー?!いいですよ、そんな悪いです。。」

本当に申し訳なくて強引にその店を出た。

人から物をもらう事は、私にとって特別な事だった。

ましてや、男性から貰うなんて事は簡単には出来ない。

私は無理矢理雑貨屋へ連れ込んだ。

ジュンさんはアクセサリーを見ながらこれいいかもと私に言った。

それはとても存在感のあるクラウンのネックレス。

一瞬で惹かれた。

「すごい・・かわいい・・」

その一言でジュンさんは笑顔になり店員さんを呼んだ。

「これ下さい!」

私は何も言う間もなくジュンさんからそのネックレスを渡された。

「記念にプレゼント」

何度も有難うございますと言い、早速つけようとした。

嬉しさと緊張で手が震える。

ジュンさんはそっと私の首に手を回した。

「つけてあげるよ」

一瞬抱きしめられたような錯覚に陥った。

このまま時間が止まってほしい。。。

段々と距離が近づいて行くのを感じていた。

No.59

食事をするのも何とか乗り越えた。

帰り、ジュンさんは最寄りの駅まで送ってくれた。

「楽しかったね!」

「ほんとっ!すごく楽しかったよ。ネックレスありがとう」

友達のような会話だった。

別れるのが惜しい。

お互いそんな雰囲気を出していた。

No.60

気分はとても良かった。

2人でいた余韻が残っている。

ジュンさんは何故私にプレゼントをしてくれたのか。

ネックレスを見ながら考えていた。

その日から、そのネックレスは私の宝物になった。

その夜裕とチャットをした。

ジュンさんと遊びに行った事を伝えると、あまり多くは語らなかった。

裕とは友達感覚でネットの世界で繋がっていた。

私の過去を知る裕と話していると楽になれた。
素の自分で話す事が出来てドキドキする事はなかった。

それは恋愛感情がない事を意味する。

でもこうやって繋がっている事に縁を感じていた。






No.61

ジュンさんとデートしてから、ジュンさんはよく電話をしてくるようになった。

嬉しかった反面、先へ進む不安を感じていた。

好きです。

しっかりと伝えた。

答えは言葉では返してもらってはいない。

行動が、その答えになっていくんだろうと感じていた。

ジュンさんは私を受け入れてくれているのが解る。

自分でも受け入れてくれている事が素直に嬉しいと感じられるはずなのに、思いは複雑だった。

自分の今の環境、過去の仕事、整形の事実、離婚、心の病。


深い仲になれば全てを話したい。
理解をして欲しい。

仕事で明るい姿しか見ていないジュンさんには重すぎる私の現実。

話せば話す程、うわべだけの付き合いしか出来ていない自分を感じていた。

そして、二回目のデートの約束。


No.62

電車での移動、外での食事、買い物をしながら話をする。

前と変わらない感情。

常に笑顔でいる自分への違和感。

全てをさらけ出す事ができないまま時間は過ぎた。

ジュンさんはプリクラを撮ろうと私を誘った。

思い出に残す事が出来る事は嬉しかった。

少しくっついてポーズをする。

次はどうしようかと言った瞬間、ジュンさんは私を抱きしめた。

一気に汗が吹き出てきた。

私はジュンさんの背中へ手を回し、顔を見上げた。

近い。。。

このまま。。キスをしたら。。どんな反応をするだろう。。

過去の私なら迷わず唇を重ねて誘ったかもしれない。

相手の反応を見る為の行動。

そこに愛はない。

でも今は出来ない。

キスをするのはこの先ずっと愛する人と決めていた。

軽はずみではもう出来ない。

ジュンさんの目は私を見ていた。

多分。。この人とはもう2人で会う事はないかもしれないとその時感じた。

No.63

帰りはまた地元の駅まで送ってくれた。

「楽しかったね。送ってくれてありがとう」

「また遊ぼうよ、次はいつにしようか?」

仕事を一日休めばそれだけ給料が減る。

平日は出来れば休みたくはなかった。

ジュンさんは平日しか休みがとれない。

暫くは会えないかな。。。
正直な気持ちだった。

それに会えば会う程微妙に距離が近くなる。

二回目のデートで、プリクラとはいえ、抱きしめられた。

三回目は何が起こるのか。

怖かったのかもしれない。

人を本気で好きになること。
全てをさらけ出すこと。
相手を信用すること。

「調整してみるね。」

相手に合わせて口約束をした。



No.64

ジュンさんを好きになってドキドキする気持ちは初めの頃より確実に薄れている。

こんなはずではなかった。

ただ、ドキドキしたいだけだった。

自分勝手な感情。

手に届かないからこそ好きになった。

でも手に届いてしまいそうな感覚になっている。
手に届けば、負の感情が私を悩ます。

恋に恋している自分が好きだったのかもしれない。

私は、全てを受け入れてもらう勇気もないくせに人を好きになってはいけない。

愛するって難しい。。。

ジュンさんとはいつからか時々メールだけをするだけになってしまった。
もっと知りたい。もっと教えて欲しい。
そんな思いはジュンさんには伝わらなかった。
ジュンさんの本心も私には伝わらなかった。

前に進む事も、後ろへ下がる事も出来ずモヤモヤした日々が続いた。

時々夜、裕とチャットをした時はそんな話を聞いてもらっていた。

裕には、複雑な心境を話す事が出来た。

私を知っている唯一の人、気兼ねなく話す事が出来た。

No.65

私の心は不安定な日々が続いた。

仕事でも上手くいかず、ジュンさんともどうなる事もなく、子供にあたってしまった事もあった。
絶対にしてはいけない事なのに、私の心は限界まできていた。

そんな時私の心を癒す女性に出会った。

彼女は私の心がどうしたら楽になるか常に考えてくれた。

私自身、変わらなくてはいけない事を教えてくれた。

いつも自分の感情を押し付け、相手を受け入れる事が出来ていない。

人を愛する事、自分を愛する事を教えてくれた。

スピリチュアルな世界。

仏教で育った私には未知の世界。

自分を癒す為、私はもっとその世界を知りたくなった。

自分を受け入れる。
不要な物を手放す。

裕はその世界を少し知っていた。

1番身近で、聞きやすい。

私は自ら裕に連絡をとった。

裕は快く手助けをしてくれた。

そして仕事の前に会う約束をした。

その時、裕が手助けだけではない感情を持っている事も知らずに。。。

No.66

待ち合わせは仕事場近くのスーパーの駐車場。

連絡はとっていたものの、2人で会うのは何年ぶりか。

「久しぶり!」

過去の事は忘れたかのような友達のような挨拶。

私は裕の車に乗った。

少しづつ話を始める。
話の途中、裕は私の名前を他の女の名前と間違えていた。

彼女が出来たんだ。。

特に嬉しい訳でも悲しい訳でもない、女がいるのならハッキリ言えばいいのに、名前を間違える度に慌てていた。

そして、時々私を抱きしめた。

これもまた、嬉しくもなかった。

何故こんな事をするのか解らない。

でも、私が誘った時点で、こうなる事は覚悟していなければならなかった。
思わせぶりな態度を私自らとってしまった。

これから、裕と私の関係はどんどん進んでしまう。

No.67

その夜、チャットで裕と話をした。

「どう?感覚解ってきた?」

「うーん、まぁなんとなくね」

「もっとゆっくりリラックスして出来れば、もう少し伝えやすいんだけど。。」

ただ純粋に伝えてくれるだけの気持ちだけではない事は解っていた。

私の中にも裕への気持ちが過去と混ざっていたのかもしれない。
浮気ではない関係になれる今、もし、感情が戻ったらどんな付き合いになるのか。
人目を気にせず堂々といられる。

でも、もう、戻れない。

私にはまだ、ジュンさんへの恋に恋する気持ちが残っていた。

No.68

何度かチャットをし、仕事前にも会った。

裕はキスを求めて来た時もあった。

その場の流れで、雰囲気で、私へ抑えきれない感情を向けて来た。

「ダメ!次にキスをする人は心から好きになって一生共にする人って決めてるから」

キスは心を動かしてしまう。
私の中で、セックスよりも繋がりを感じられるもの。

風俗の時、キスはいつも軽めだった。
強引に舌をいれてくる人は、噛み切ってやろうか。。と怒りさえ覚えていた。

セックスは相手を快楽へ導く物。
キスはお互い感じられる物。

そう感じていた。

セックスでは快楽を感じられなかった私は、1人でする事で満足していた。
キスはどうやっても1人では出来ない。

裕が強引なのは昔から。
でも私はもう強引だけでは心は動かない。
裕とキスは出来ない。

拒否をし続けた。

裕もそれ以上は求めては来なかった。

裕と再会して数日後、その夜は眠れず裕とチャットをしていた。

私はジュンさんの事を相談していた。

裕は写真があればその人の感情が読み取れるかもと言った。

そんなスピリチュアルな世界、信じない人は信じない。
でも私は以前裕にその力で救ってもらった経験がある。
その力を信じていた。

「今から行っちゃおうかな笑」

もちろん私の家は教えていない。
教えるつもりもなかったけど、裕の誘導尋問に見事に引っかかってしまった。

数時間後、裕は家にたどり着いてしまった。

裕に今、救って欲しかったのかもしれない。

No.69

「ホントに来ちゃったね」

笑いながら言った。

外で会うのとは違い、私もリラックスして無防備になっていた。

会うなり裕は私を抱きしめた。

何も言わず強く抱きしめられた。

過去を感じた。

好きだった頃、抱きしめられた感覚と同じ。

勢いでキスをされそうになったのを、私は強く拒んだ。

「イヤ!!!!」

ここまで守ってきた私の心と体、ここで許す訳にはいかない。

とりあえず家に入ってもらい話をした。

早速ジュンさんとのプリクラを見せ、何かを感じてもらった。

「相手は蜜を恋愛対象としては見ていない、これからも見ない、何か大きな過去を持っているけど、人には話さない、恋愛することが怖いのか。。でも、セックスを求めれば拒否はしないよ」

確かに私には一切手を出さなかった。恋と言うよりも本当に友達のような、純粋に遊びたいと言うような、ジュンさんの本当の感情は伝わらなかった。
でも、セックスだけは受け入れる。。。

本当にそうなのか?

信じたくはない。
信じられない。
ジュンさんは他の男とは違うと思いたかった。

でも、所詮は男。。。
求めれば拒否はしないのかもしれない。
男は皆そうなのか。。

「やっぱり恋に恋していただけなのかも。。」

裕の言葉を鵜呑みにしていた。

でももし、裕が私を諦めさせる為の言葉を選んでいたとしたら。

それでも良かった。

自分の中で、区切りをつけたかったのかもしれない。
前にも進まない、後ろへも振り向けない、自分ではどうしようもない気持ちを誰かに背中を押してもらって進みたかったのかもしれない。

裕は私を裕の膝の上へ座らせ、後ろから抱き締めてきた。

家でこの雰囲気、何だかヤバイ方向へ。。。

「蜜、俺は今でも蜜が好きだよ。別れてからずっと忘れられなかった。」

聞きたくなかった言葉。

「俺がどんな気持ちでこのプリクラを見たと思う?残酷な事するよな笑」

裕は笑いながら、少し辛そうに言った。

私は何も言えなかった。

ただ。。苦笑いをして誤魔化す事しか出来なかった。。。

No.70

私は小さくごめんと言った。

裕は私を抱き寄せた。

拒む事が出来ない。

そのまま。。。押し倒された。

「いい。。。?」

私は頷いた。

想定外の行為。
でも、想定していなければならなかった行為。

約3年ぶりのセックス。

許してしまった。

初めて経験した時のような怖さとドキドキ感。

裕のモノは懐かしかった。
私が舐めると激しく反応する。

三年もセックスをしなくても、体は覚えていた。

裕の体を私は覚えていた。

ただそこには、愛は無かった気がする。

私は興味本位、裕は快楽を求め、セックスは成り立った。

それでも、キスは拒んだ。

セックスは拒否しなくても心は許していない。

間接的に伝えていた。

キスのないセックス。

愛はない。

1人でする事に慣れていた私はセックスでイク事を望んではいない。
挿入したら相手がイクのを待つだけ。

するまではドキドキ感と少しの緊張があったものの、セックスの感覚はすぐに取り戻した。

体で会話をしていた風俗時代を思い出させた。

三年も守ってきたものが一瞬にして崩れていく。

後悔はしていない。

セックスは愛の確認の為のものではないと再確認出来たから。

No.71

愛はない。
愛はないと解っていても、流されてしまいそうな自分がいた。

もし、キスを奪われたら、私の感情はどうなるんだろう。

拒む心と奪われてみたい心が私を複雑にさせる。

複雑な心を持ったまま、次の日も裕を受け入れてしまった。

きっと何かおこる。。

No.72

裕は来るなり、また私を抱きしめた。
痛い位の力。
抵抗出来ない。。

裕の感情が読めなかった。

裕は私にキスをしようとした。
大体パターンは解っていた。

私は顔を背け、嫌と言い、手を口にあてた。

絶対にキスはしたくない。
好きになった人にしか、もうしない。


あれだけ決めていたのに、あれだけ自分に誓っていたのに、その気持ちは崩された。

「やめて!」

その声は裕には届かなかった。


強引に手をどけられ、私のキスは裕に奪われた。

裕だって解ってくれていると思っていた。
私が次にキスをする人は、生涯を共にしたい人だと伝えていたはず。


だから、奪った。
裕自身をその相手にしようと、裕は強引に奪った。

「蜜。。俺はきちんと蜜と付き合いたい。前とは違った新しい関係で蜜と一から付き合いたい。真面目に、結婚も考えている」

胸が苦しくなった。

別れたあの日から、常にいた存在の裕。
あれから五年が経っていた。

「考えさせてほしい」

そう答えたものの、私は既に裕に心を奪われていた。

裕の言葉を信じ切っていた。



No.73

月を見ながらベランダに座り話をする。

裕は昔のまま変わっていない。

姿も心も、私に対する思いも。

旦那がいながらも付き合っていた頃と違って、今は堂々と付き合える状況にいる私。
それでもすぐにYesとは言えなかった。

子供の事、信じる事、信じてもらう事、お金の事。
全てを考えて裕は私に思いをぶつけてくれたのか。
それとも勢いなのか。

その強引さは私を悩ませた。

でも、優柔不断の私にとってはその強引さが心地よかった。

私は幸せになれるのか、裕と一からやっていけるのか。

もう誰も信じないと決めた私にとって、恋愛は必要なのか。

信じれば裏切られる。

私の心は受け入れると決めていたにも関わらず揺れていた。

No.74

裕とはネットの世界で知り合った。

ネットで繋がっていた。

私の答えはネットで表した。

「答えはコメントに書いたよ」

知り合ったサイトで気持ちを伝えた。

文字なら、ストレートな言葉が表せる。
口に出して素直な気持ちを表すのが苦手な私は常に本音は文字で表していた。

直接話をすると相手の反応が怖い。

本当は口で言わなくてはいけない言葉が沢山あるのに。
大切な事は、口でつたえなきゃいけないのに。

私にはそれが出来なかった。

裕を受け入れると言う事、

それは、

裕を愛すると言う事。

離婚して三年目、私は一から裕と付き合う事になった。

結婚に向けてのスタート。
お互い同じ思いだった。

No.75

次の日も裕は家に来てくれた。

「ありがとう」

その言葉に心がキュンとなった。

2人でキスを交わす。
他人ではない恋人同士のキス。
舌を絡め、愛し合っている事が実感出来た。

その後、2人で部屋の中で音楽を聞いた。

イヤホンを2人で片方づつ耳にあて、音楽を聞いた。

茜色の約束。

裕の隣で、裕の香りを感じながら記憶する。

この曲と裕の香り。

ずっと忘れない。いつでも側に感じていたい。

ほんの少し前迄他人だった私達は、一気に愛情に満ち溢れた。

そして、体を重ねた。

裕を感じる。
セックスの気持ちよさよりも、裕の優しさを全身で感じていた。

裕とのセックスは五年前と変わらなかった。

全身を愛撫され、裕の全てを感じられる嬉しさでいっぱいだった。

「蜜、好きだよ。大切にするから」

裕の言葉に、心が張り裂けそうな位の愛が溢れた。

No.76

裕と付き合うようになってから仕事場にも会いに来てくれた。

休憩時間、駐車場へ急ぐ。

車の中でキスをし、抱きしめあう。

至福のひと時だった。

日に日に裕への思いは強くなり、独占欲も強まった。
でも、表には出さない。
そんな重い気持ちを出す事は出来ない。

数日後、裕が家に来た時、夜に裕のメールが鳴った。

女からの文章。。。
でも内容は仕事の事だった。

「会社の人だよ、あーそうなんだ」

仕事の事は私は良く解らない。
私の知らない裕がいるのが嫌だった。

仕事の人と言われ、特に疑う事もしなかった。

でも、名前に聞き覚えがある。。。
誰だったか。。。

深くは考えなかった。

数年間、私を忘れずにいてくれたはず。
まさか、他に女がいるとは思えない。

毎日のように会いに来てくれる裕を信じたかった。

No.77

付き合って初めての私の誕生日。

その日は仕事だった為、特に何もなく過ごした。

裕からは日付けが変わってすぐにメールが来た。

【誕生日おめでとう。これから沢山思い出作ろうね】

その言葉だけで嬉しかった。
会えなくても、おめでとうと裕が言ってくれたのが何よりも嬉しかった。

私のこの年の誕生日は、一生忘れられない誕生日となった。

きっと、誕生日が来る度に思い出す。

この日の出来事。

その出来事が数ヶ月後に知る事になる。

No.78

ほんの数ヶ月で、裕の事を一気に好きになっていた。

だからこそ、私の知らない裕がいて欲しくない。
全てを知りたい。


裕が家に来た時のパターンは大体決まっていた。

少し話をし、体を重ねる。
裕はそこで眠ってしまう。

少し、寂しい瞬間。

この寂しい時に、裕の携帯を覗いてしまった。
何もないと確信していたからこその覗き見。

見てしまった。。。

女とのやりとり。

思い出した。離婚して初めて会った時に間違って名前を呼んだあの名前が送り主だった。

激しい動悸がおこる。

【明日なら時間作れるけど】

裕はその人に誘いの言葉を送っていた。
よりによってその日は私の誕生日。
2人でホテルの検索をやりとりしていた。

【お風呂は広い方がいいな】

相手の返信に涙がこぼれる。

その日の流れから待ち合わせ、どこのホテルなどのやりとりが永遠と続いていた。

悔しかった。

何でなの。。何で私の誕生日なの?

隣で寝ている裕につぶやいた。

「嘘つき。。。」

女がいたのに私のキスを奪った。
私の気持ちを無視して強引に奪ったのに、その責任はとってくれなかった。

軽いパニックになる。

「これ、何?!」

裕に感情をぶつけた。

裕はメールの内容よりも、私がメールを見た事に怒っていた。

最低だ。

私のしている事も、裕の気持ちも。

No.79

「このメールは何?」

怒りと悲しみをこらえて精一杯の冷静な言葉で裕に言った。

裕は黙っている。時折ため息をつきながら言葉を探しているようだった。
何を言われるか怖かった。

「全て事実です。」

開き直ったような口調。

嘘だと言って欲しかった。
ごめんと第一声に言って欲しかった。

5年前、本気で好きになりながらも別れる事になった裕と私は、5年後、堂々とした関係を一から始める事にした。
その5年もの間、裕は私の事を忘れる事なく想ってくれていると思っていた。
私も、完全に切れる事のない裕をどこかで求めていたのかもしれない。

どこかで繋がっていた、切れることのない関係だと思っていた。

No.80

まさか私が浮気をされるなんて思ってもいなかった。

元彼女。。。

切れていないのなら、私を誘ってほしくはなかった。
忘れられない人がいるとハッキリ言えば良かったのに。

私は泣きまくった。

「嘘つき!もういい!」

裕は一生懸命謝ってきた。

「ごめん、本当にごめんね」

ごめん、なんだよね。事実なんだよね。
嘘じゃない、現実なんだ。

事実だと解っているのに、どこかで嘘だと信じたい自分がいた。

裕は私を座らせ自分と向き合わせた。

「本当にごめん、行ったのは事実。セックスもした。だけど自分はイカなかった。蜜じゃなきゃもう反応しない体になってるんだよ。ただ背中を洗ってほしかっただけ。蜜はなかなか一緒にお風呂に入れないし、会っても遅くなる。もう二度と連絡しない。本当にごめん」

言い訳にはなっていない。
私に出来ない事は他の人に求める。

「今、この人に電話して!私の前でもう会わないって言って!」

私は本気で怒っていた。

「そんなに俺が信用出来ない?そんなに俺の生活をメチャクチャにしたいの?」

裕は少し怒った口調で言った。

相手の女は仕事場の人だった。
仕事に支障が出る恐れのある行動は出来ないと言われているようだった。

「出て行って。顔も見たくない」

少し黙った後、裕は荷物をまとめ始めた。

「そうだよね、全部俺が悪いんですよね。ここにいる資格なんてないですよね。」

他人行儀の敬語。自分を守る為に自分を責める発言。

私は無言だった。

裕は出て行った。

こんなにされても、嫌いになりきれない感情。
1人になった淋しさ。

何で幸せになれないの?

No.81

1人で泣いた。
泣いて泣いて泣いた後に残った気持ち。

やり直したい。

私は裕にメールをした。

「戻って来て」

裕はすぐに折り返し電話をしてきた。

少しの沈黙。

「会いたい。これから戻る」

電話は切れた。

裕は戻ってきた。

私の目の前に座り、しばし無言。

そして私を優しく抱きしめた。

「やり直したい」

これ以上出ないと思っていた涙が溢れてきた。

多分裕は私がその言葉を待っていると解っていた。
そしてその言葉を言えばそのままやり直せると思っていたと思う。

でも元彼女と裕を切り離さなければこのままやり直す事は出来ない。

「メール。。。今、してくれる。。。よね?」

その言葉に裕の顔は変わった。

「はぁ。。。俺がここでメールしたら会社でどんな噂をたてられるか、仕事も上手くいかなくなる。それでもしなきゃいけない?」

強い口調で言われた。

私はうなずいた。

「。。。わかったよ」

渋々メールを打ち始めた。

【メールがバレて、今もめている。彼女はそばにいる。もう会わない。】

これでいいんでしょと吐き捨てるように言い、携帯を放り出した。

何故そんな態度だったのか。
怒るのは私の方なのに。
その時はそんな感情さえも起きなく、ただ、元彼女と縁を切ってくれればいいと言う想いだけだった。

そして着信。
元彼女が電話をかけてきた。

「でなよ」

裕は話す事はないと電話には出なかった。

一度切れて再度かかってきた電話。

仕方なさそうに裕は電話に出た。

「何」

冷たく反応する。

静まりかえった部屋に電話から相手の声が聞こえた。

相手は泣いている。

「嘘でしょ?」

相手の反応で、まだ相手が裕に感情がある事を悟った。

動機が激しくなるのを必死に抑えた。

No.82

この人は裕の事が好きなんだ。
だけど私も好き。
でも、もし私が相手の立場だったら、かなり辛いかもしれない。
1人で孤独に耐えながら好きな相手から負の感情を聞かされる。

泣くしか出来ない相手の気持ちを考えると辛くなってしまった。

「何でそんな女が好きなの?勝手に携帯を見る人だよ?」

相手の声が聞こえる。

批判されようが縁を切ってくれればそれで良かった。

「それでも好きだから」

裕は言った。

何故だろう、あまりキュンとしない。
いつもならそんな言葉を聞けば、胸が締め付けられるようなキュンとする感覚になっていたのに。

「じゃあお幸せにね。」

その言葉に裕は切れた。

「あーもう遅いけどね!あんたにメチャクチャにされて幸せも何もないわ!」

今の状況から逃げ出したかった。

誰が悪いのかさえ解らなくなっていた。

見てしまった私が悪いのか。
行動を起こした裕が悪いのか。
想いを断ち切れない元彼女が悪いのか。

電話は裕から一方的に切った。

イライラしてる様子。



裕と私はやはり離れる事が出来ない想いを伝えあった。

絶対にもう悲しい想いはさせない。

約束してくれた。

そのまま私達は体を重ねた。

No.83

勝手に絆が深まったように感じていた。

体を重ねる事でお互いに想いをぶつけ合う。

「愛してるから。もう蜜だけだから。」

「私だけを見ててね。。」

こんな会話が出来るのはセックスをしている時だけ。

「蜜、俺にもっと求めて。会いに来て、会いたいって言ってほしい。もっと俺を頼って。蜜はいつも1人で抱え込む。辛い時は辛いって言って。俺が何の為にいるのか解らなくなる時がある。もう無理すんな。」

「うん。。」

私は小さな声で答えた。

私にもっと甘えてほしいんだ。
確かに私は会いたいとか会いに来てとかあまり言わない。
それは裕がそこまで近い場所に住んでいる訳でもなく、子供もいて、不規則な生活をしているから気を使っての事だった。

私が体調を崩したり、子供が熱を出したりした時は夜の誘いを断った。
うつる事を考えたり、迷惑をかけたくないからと言う想いからだった。
裕はそんな私を無理していると捉えていた。

無理している訳ではない。
自分で何とかなる事は何とかしたい。
人に迷惑をかけたくない。
それに、大丈夫?と言われて体調が良くなる訳でもない。

どんな時も裕は私に必要としてほしいと思っている。
裕の想いを理解した。

理解はしたけど、それを実行する事は私には負担だった。

甘えるのが下手な私。
1人で何でもやってきた。どんな時も自分で解決出来る事はする、それが自分自身の強さに繋がると思いずっとやってきた。
結婚している時、求めても結局は全て1人で解決をしてきた。
辛いと言っても助けてはくれなかった。

どうせ言葉だけ。

大丈夫?無理すんなよ。

そんな言葉を聞く位なら辛いと言わない方がいいと思っていた。

そんな私の思いをすぐに変える事は出来ない。
でも私が変わらなければ、もしかしたら裕は求められる人のとこにまた行ってしまうかもしれない。元彼女が会いたいと言えば会いに行ってしまうかもしれない。

自分の心と裕の心。

噛み合わない、でも噛み合わさなければならない。

裏切られない為に、私は自分の心を偽らなければならないのかもしれない。

私だけを見てもらう為に。

No.84

裕は仕事上不規則な生活をしている為、週末休みとは限らない。
どちらかと言えば平日の休みが多く、私も生活費などお金の計算をしながら休みを合わせた。
それでも月に一度が限度。

夜会う事も多く、会う回数に関しては全く不満はなかった。

セックスもノーマルな感じではなく、おもちゃを使ったり、いやらしい下着を着けたりして楽しんでいた。
休みの日はラブホに行き思い切り声を出し乱れる事も多かった。

裕は優しい。なかなか甘える事が出来ない私をリードしてくれた。

「蜜はこれが好きだもんね。」
「こうされるの好きでしょ」

そう言われる度、うんうんとうなずいていた。

私の事を解ってくれていると少し嬉しかった。
好きだといい方向ばかりに考えて幸せになれる。

でも少しづつ裕への不満も出てきていた。
その幸せな気持ちを否定したく無い為に、不満を不満と思わないようにしていた。

かき消さなきゃいけない、私の気持ち。
正直辛い時もあった。





No.85

性欲が人より強い私。
ただ単に気持ちよさを求めている訳ではない。

心の繋がり。素直になれる時間。

プライベートでも仕事でも思う事は同じだった。

過去、風俗やAVを続けていたのも性欲が強いからこそだったのかもしれない。
当時演技をしていたのは、プライベートでのセックスの方だったような気がする。
お客さんとして扱う風俗はお客に求める事をしなくてもよかった。
相手の願望を叶えてあげる。
楽しんで、喜んで、その瞬間を共にしている事に満足していた。

でもプライベートは違う。
求めたくても求められない。
イキたくてもそれが出来ない。
せめて、私が奉仕して喜んでくれれば私も嬉しい。

裕はそんな私の気持ちなど理解するはずはない。

「舐めて」

この言葉から2人のセックスは始まる。

私はゆっくりと時間をかけて舐め始める。
イク事を前提としていない、愛のあるご奉仕。

しかししばらくすると寝息が聞こえ始める。
そして寝息はイビキに変わる。

何とも言えない気持ち。

完全に侮辱している。

一度や二度ではない、夜遅くに家に来た時は大体そんな行動をとった。

口でしている時だけではない。
大事な話をしている時や、会話の途中、裕はいつでも寝てしまう。
会って30分も経っていない。

「疲れているなら家で休んでね」

寝られる事が嫌で遠回しに家に来るのを拒否した事も何度もある。

それでも「眠くはないよ」と嘘の言葉を発しては夜中に家に来た。

私はそんな裕といる夜を苦痛に思ってしまっている時もあった。

先に寝てしまった裕を疲れていると思い起こす事が出来ない。

2人でいるのに孤独だった。

寂しい気持ちと苛立ち、朝まで眠れない時もあった。

それでも本心は伝えられない。

No.86

裕とのセックスは気持ちよさよりも、寝てしまわないかと言う不安の中での行為になっていた。
一番愛し合う時間のはずなのに、一番寂しく孤独な時間にもなる。
純粋にセックスを楽しめないでいた。

寂しい気持ちは裕への疑いの想いへ変わる。

信じたい、信じさせてほしい。
寂しいから、裕の想いをちゃんと受け止めていたい。

私への愛を確認したい。

何かあるなんて思っていない。
ただ、純粋に、愛されている気持ちを知りたかっただけ。

私は裕の携帯に手を伸ばした。

No.87

私と同じ携帯を使っているから使い方はわかる。

イビキをかきながら寝ている裕を横目にメールを見る。

これといって怪しい物はなく、ホッとしたのもつかの間、さかのぼって見ると元彼女とのやりとり。。。

まだやってるんだ。。。

突然の動悸と震え。

内容はたいした事ではない。

同じ職場だから、同じ職種だから、やりとりをするのは仕方の無い事。
自分に言い聞かせていた。

でも、どうしてあれだけ言い合いをしたのにプライベートでもメールができるの?
疑問でいっぱいだった。

それも送っているのは裕の方から。

それに返事をする相手も許せなかった。

やっぱり、私だけを見てもらう事は出来ないんだ。。。

メールに残る元彼女のアドレス。
見るだけで胸が痛む。

自爆行為。

見なければ、知らなければ、こんなに胸が痛くなる事はないのに。

何もないという確信が持ちたくて見ただけなのに。

確信は持てなかった。

私の前で寝ている裕を見ながらつぶやいた。

「嘘つき。。。」

No.88

この思いを裕に伝える事は出来ない。

メールを見たと解ればまた喧嘩になる。
言い合いはしたくない。

裕を背にし、横になった。

背中から感じる事はない愛情。
向き合っても感じる事はできない。

何故私と付き合っているのかさえ解らない。
そんな裕を何故好きなのか私も解らない。

傷つけられても、裕の強引なキスで全て忘れてしまう。

たまに言ってくれる、照れながら言う愛してるよの言葉で、私の心は裕から離れる事が出来なかった。

No.89

裕は何も知らない。

横になった私に気づき抱きしめてくる。

「舐めて。。」

私の感情は関係ない。裕の感情で私の頭を裕の下半身に押し付けた。

反射的に咥える私の口。

そこには好きとか愛とか存在しない。

目の前にあるから咥えてあげる。

仕事的な感情。

親しくなればなる程、素の部分が見えてくる。

心を許してくれるのは嬉しい。

でも許せるのは自分の心だけ。

私の心は完全には許させてはくれない。

好きだけど何か違う。

解ってるけど解らないフリ。

何も気づかない方が私は幸せ。

No.90

夜に来て、数時間で帰っていた裕も、日が経つにつれ朝までいるようになっていた。
私も寝不足になるのを我慢し、裕を受け入れた。

日が変わって来る事も度々あった。

「もう遅いから」

やんわりと断っているにもかかわらず、それでも会いたいと言う裕。
受け入れるしかなかった。

常に裕に重なる元彼女の影を恐れていた。

せめてお風呂に入って来てほしい。
どんなに遅くに家に来てもお風呂は入って来なかった。

来れば必ずセックスをする。
遅くに来ればすぐにでもその行為は始まる。
お風呂に入って来なければそのままでやる事になる。

私に体を洗って欲しいと言う裕の願いは殆どが叶える事が出来ず汚れたままの体。。

いつからかそれもプレイのうちに入っていた。

綺麗にするのは私の口。

耐え難い時もあった。

汚れた体を、モノを舐めて貰う気持ち、裕はどう感じていたのだろう。

私は婦人科のお世話になる事も多々あった。
それでも裕には言わない。

私の気持ちより裕の気持ちを大事にしたかった。

No.91

仕事中、眠くなるのを我慢し、これも彼氏がいる幸せなんだと自分に言い聞かせた。

私の心の病も理解してくれ、愛してると言ってくれる。
休憩の時にわざわざ会いにきてくれて、セックスも満足出来ない訳ではない。休みの日はのんびりコーヒーを飲みながらショッピングをする。

彼氏がいるからこその幸せ。

少し位不満はあっても、この人と結婚して安定したいと思っていた。

結婚となると必ず考えなくてはならないのが子供の事。

私は3人、裕は長男と同じ学年の子供がいる。

まだ長男が幼稚園の頃、不倫関係の時に会わせた事がある。
もう覚えているはずはない。

子供には何となく言いづらくその時を待っていた。

新しいお父さんとして、受け入れてくれるのか。
男の人には警戒心が強い。
子供の気持ちを考えたら中途半端に紹介する事は出来ない。

私は裕の1番になれるのか。
亡くなった奥さんを越えられるのか。
元彼女の影を消す事が出来るのか。

裕の、1番になりたかった。

No.93

自然に子供と接する事が出来れば・・

その日はすぐにやって来た。

いつものように夜家に来て、そのまま朝を迎えた。

朝、少し話をしてから外でタバコを吸っていた。

子供が起きたような音がし、部屋へ戻る。

「誰かいるの?」

子供は言った。

子供に会わせると言う事はそれなりの覚悟がいる事。

私は子供に聞いてみた。

「いつもメールしてる人だよ、挨拶する?」

うん、と言う子供の反応に私はベランダにいる裕を紹介した。

「おはよ」

裕は挨拶をした。

「誰?」

子供の言葉に、ママの友達だよと答える。

何とも言えない空気。。

ここから、子供を交えた裕との関わりが始まる。

No.94

>> 92 こんばんゎ🎵主様💕 今日1日で、満スレの①から一気に読みました。 私には未知の世界&未知の感情ですが とても興味深く読ませていただきました… ありすさん( ´ ▽ ` )ノ
読んで頂いて、しかも1の方から読んで頂いてありがとうございます( ´ ▽ ` )ノ
今、更新してたので余計に嬉しいです\(^o^)/
人それぞれ、色んな感情がありますよね!
私の感情は決して特別ではないと思っていますが、当たり前が当たり前に思えなかったり、スルーすればいい感情もその奥を深く考えたりして、深読みし過ぎなんですよねきっと(^^;;
本当の優しさってなんだろう?無理しないでの言葉って本当の優しさなのか?っていつも考えてます。
更新不定期で、内容も確認しながらは書いてますが、重複するかもしれないし、でも、読みやすいように、感情が上手く伝わるように、必ず完結までしますので!!!
これからもよろしくお願いします( ´ ▽ ` )
レス、本当にありがとうございました!

No.96

裕も子供と関われるのが嬉しかったみたいで、一緒に出かけたいと言った。

さりげなく遊ぶには子供にとって公園が1番いい。

家から少し離れた大きな公園。

それは数年前、初めて子供を交えて一緒に遊んだ場所。

辛い時は無理すんなよ。
そう言ってくれた場所。

その時裕は私と子供の写真を撮ってくれた。

私の後ろ姿の写真はとても気に入ってくれていた。
別れた時もその写真を出会ったサイトに載せていた。

【本当に好きだった。でも相手は旦那さんがいる人。最後の答えは彼女がだした。】

それを読んだ時、本当に愛されていた事を実感した。

今よりもずっと。。。


過去の記憶が蘇る。

まさかまたここで子供達と遊ぶ日が来るとは思ってもいなかった。

ただの遊びではない、私の中での緊張。
今後の繋がりを左右する大事な日。

やっぱり色んな事があっても、私は裕が好きなんだ。
だからこそ、子供達にも裕を好きになってほしい。

メールで連絡を取り合いながら合流するまで、私の緊張は続いていた。




No.97

>> 95 お返事ありがとうございます💕 私は平凡な専業主婦です。 考えてみると、いつもフツーに「無理しないでね」って言ってしまってます。 でも主様に… ありすさん(^-^)
私も平凡すぎる主婦でした 笑

平凡ほど幸せな事はないですよ(^-^)/

ないものねだりなのかもしれませんが(^^;;

素敵なお言葉ありがとうございます
ヽ(;▽;)ノ

そんな心を持てるありすさんにも同じ言葉をお返ししますね!

感謝ヽ(;▽;)ノ

No.98

広場の向こうから子供と歩いてくる裕。

数年ぶりに見る裕の子供はとても大きくなっていた。
お互いの成長が時の流れを感じさせた。

また、ここから始まる。

私は子供とバドミントンをしていた。

「一緒にやろうよ!」

自然と裕親子を誘う事が出来た。

そこからは裕も子供達も自然と会話する事が出来、周りから見れば家族のような光景。

いつか、本当の家族になって、公園で遊びたい。

強く感じた。

愛ではなく、母親としての感情だったかもしれない。

本当の父親ではほとんど出来なかった事。

裕に、旦那さんではなく、その時は父親としての愛情を求めていたんだと思う。

2人でいる時のちょっとした嫌な事も、子供と関わる事で忘れる事が出来た。

No.99

子供と接してる時の裕の姿は父親のようだった。

私の子供達も、裕!と自然と名前で呼び、打ち解けていた。

一通り遊びそろそろ帰ろうかと言った時、一緒にご飯食べたい!と子供が言い出した。

子供からそんな言葉が出るのが嬉しかった。

裕はいいよと言ってくれ、少し車で行ったファミレスへいく事になった。

いつもは少食な娘もこの日は一人前きちんと食べた。
雰囲気でこんなにも食欲が増してくれる。

いつもゆっくり食べられないだろうと裕は自分が食べ終わると子供の相手をしてくれた。

一日で子供はこんなにも受け入れてくれている。

今日が楽しかったから、この先もずっと受け入れてくれる。

そう、単純に思っていた。

No.100

帰り、車へ戻ろうとした時、裕の子供と私の一番下がいない。

何処へいったか探していると、二人とも車へ戻っていた。

裕は自分の子供に激怒した。

「危ないじゃないか!」

確かに暗い駐車場で遊んでいた2人は危なかった。

でも、裕のその怒り方は子供達にとって今までの楽しさを全て奪うような怒り方。

それぞれのしつけ方があるから私も口出しは出来ない。

でも、明らかにうちの子供達の顔はこわばっている。

子供の中にあるトラウマ。。

言葉にしなくても感じる子供の心。

もうそれ以上怒らないで。。。

子供の為にその場をすぐに立ち去りたかった。

No.101

「じゃあ、またね。」

言葉少なにバイバイを言う裕。

明らかに子供の行動に機嫌が悪くなっている。

私の子供がどういう心でいるか解ってはいない。

私も言葉少なく車に乗った。

しばらくの沈黙・・・。

「あの子かわいそうだね」

娘がぽつりと言った。

「うーん。でも危ない事したから仕方ないのかもね」

フォローするが、子供にとっては怒る=怖い。としか思えていなかったのだと思う。

「楽しかった?」

気分を変えて話をする。

もっと遊びたかったなあ。と無邪気な次男。
うん、楽しかった!と長女。

・・・・うん、まあ・・。

楽しかったと言わなきゃいけない雰囲気にはっきりとそうは言えず、明らかに言葉を選んでいる長男。

また遊ぼうねという言葉にも、長男は
「機会があればね」
と、YesともNOともとれない返事をした。

複雑な子供の心を理解している反面、また遊びたいと言う言葉を期待していた為、少し残念な気持ちになった。

夜、裕とメールで話をした。

【最後ごめんね、怖がらせちゃったかなあw】
【ちょっと・・ね。】
【うちのが連れ回したんだろうね、ごめんね】
【私も目離しちゃったからさ】
【俺も怒る時はちゃんと怒るからさ、蜜の子供達も悪い事したらちゃんと怒らせてね】

父親代わりとしての気持ちだったんだと思う。

今は怒ってくれる優しさという段階ではない。
子供の目線に合わせて接してほしいだけ。

【楽しかったって言ってたよ。また遊ぼうね】

長男の気持ちは伝えなかった。

今はまだ、伝えられる段階じゃない。。

No.102

それ以降、裕は子供達と遊びたがった。
でも私の子供達の反応はイマイチ。
私も子供が受け入れられていない気持ちは解っていた。

やんわりと断り続けた。

今は2人の時間をもっと過ごしたい。

毎日のように家に来る裕を受け入れた。

裕は私を抱きしめる。

「もう一回初めから子育てしたいな」

そんな話もするようになっていた。

子供と触れ合った事で子育ての意識が高まったのかもしれない。

セックスをしている以上妊娠の可能性はゼロではない。
でも裕は前から種なしだと言っていた。

「今まで中だしした事も正直何度もあったけど、一度もできなかった」

他の女との事を普通に話す。

「そう」

関心のない返事を返す。

裕はよく過去の女の事を話した。
もちろん奥さんとの事も。

「どんな人だったの?」

幸せな時の話を聞く。
ほとんど喧嘩せず、仲がよく、お互いエッチが好き。

平凡な幸せ。

もし、奥さんが生きていたら、人生違っていたかもしれない。

そして、そこに私はいない。

時々私の存在が裕にとって何なのかわからなくなる。
何を求められているのか、私は何を求めたいのか。
裕の優しい言葉も受け入れられない事もある。


無理すんなよ。
辛い時はもっと頼ってほしい、1人で悩んだりしないで。


相談してどうなるの。
頼ってどうなるの。
無理してないのに何で無理しないでなんて言うの。

受け入れられない自分がいた。

裕もまた、本当の幸せを掴みきれず私に言った。

「蜜といると楽しいし安心できる。でも、幸せって思えない。幸せの意味が解らないんだ。」

いつかは離れてしまうかもしれない、もう、この世にはいない最愛の人のように、いつかは消えてしまうかもしれない。幸せを感じる事を怖がっていた。

私はここにいるのに。。。

No.103

何も解決しないまま、何も本音を語らないまま、理想の付き合いだけで付き合いは続いた。

裕はSM好きな所があり、セックスにも取り入れる事も多くなっていた。

縛られ、押さえつけられ、自由を奪われる。

高校生の時に初めて体験した快感を思い出す。

その時だけは、お互い心から愛し合っていた。

いやらしい姿をカメラにおさめ、裕はSNSに投稿していた。
皆に見てもらう事で彼女がいる事の喜びをかみしめていたのだと思う。

裕との愛の確認は言葉よりも体を重ねる事で確認していた。

少しハードな裕とのセックス。
時に優しく、好きだよと囁いてくれる。

そんな状態の時は、私も心が解放される。

「裕との赤ちゃんがほしい。。。」
「作ろうか」

愛の形を残したい。

でもお互い素に戻ると、現実的になる。

「ちゃんと順番通りにしたいよね」

現実、お金の話しや生活面の話は深くは話していなかった。
これからきちんと話していかなくちゃいけない。

子供の事、これからかかるお金。

裕の女関係。

「もう蜜だけだよ、他とどうこうなるのってもうめんどくさいしさすがにもういいわ。」

その言葉は信用していいものか。

裕の為に、全てを尽くしていいものか。

頭では解っていても、不安はつきまとっていた。


No.104

付き合って半年が経とうとしていた。

一生忘れられない。

一生忘れてはいけない。

そんな出来事が起こる。

裕、どうして最後まで守ってくれなかったの?

No.105

裕は子供達と遊ぶ事が多くなると考え、今までの五人乗りの趣味たっぷりの車を乗り換えると言い始めた。

「二つの車で別れて行動するのはつまんないじゃん。皆が乗れるように大きいやつにしようかなぁ」

私は落ち着いてよく考えてと引き止めた。
安い買い物ではないし、裕が車を乗り換えてから二年も経っていなかった。

何よりも子供達がまだ心を開いていない。

「まだ会う機会も少ないし、急ぐ事はないよ」

でも裕はローンや乗り換えの事を細かく言って、損はしないと言った。

「それにどっちみち結婚すればこれじゃ乗り切れないんだし、後で買うなら下取りで高く売れるうちに今乗り換えた方がいいからさ」

結婚。。。

うちの為に乗り換えたら、結婚はほぼ決まったようなもの。

今のままじゃ、私にその覚悟がない。。。

とりあえず落ち着いてと言う言葉を言い続けた。

しかし数週間後、裕はファミリーカーを契約してしまった。

もう、前に進むしかないのか。。。

No.106

購入後は車の内装やどこに行きたいなど話が盛り上がっていた。

裕の嬉しそうな顔を見たり、うちの為に買い替えてくれた事が嬉しくなってきて、私だけを見ていてくれていることが実感出来た。

ここまでしてくれている裕をもう疑ったりしない。

この人と結婚する。

形にしてくれている裕とちゃんと向き合い愛していく事を心に誓った。

納車日はディーラーに一緒に行った。

初めての車の助手席は私。

「蜜の指定席だよ」

「他に乗せたら許さないからね!」

「蜜にはすぐバレるからきをつけよ笑」

そんな会話をしたのは本当に久しぶりだった。

このままいつまでも、私だけを見ていてくれるよね。

他の女に手を出したりしないよね。

約束だよ。

No.107

私の中で結婚を意識していた反面、経済的な事や子供の学校の事で具体的には前に進めなかった。

裕とのセックスの最中、私は口にした。

「裕との赤ちゃんが欲しいな」

自分でも何故そんな事を言ったのかよくわからない。

今はそんな状況じゃないのは解ってる。
だけど、前に進みたくて、裕と一緒にいたくて、言葉にしてしまった。

「作ろうか」

そんな言葉を返してくれた。

でも、きちんと結婚してから子供がほしい。

「俺は子供が出来にくい体質だから、いざ欲しいとなっても出来ないかもしれないしね」

もし、妊娠したら、すぐにでも籍をいれると2人で誓っていた。

最愛の家族に先に旅立たれた裕。

最悪の別れ方をした私。

お互い、幸せな結婚生活を望んでいたのは確実だった。

一緒にいたい。

沢山の子供に囲まれて賑やかな家族になりたい。

夫婦になりたい。

気持ちは同じだったはずなのに、気持ちだけでは何も解決出来ない現実がある。

その現実は現実に経験する事になる。

No.108

裕はダイエットの為、病院から中性脂肪を抑える薬を処方してもらっていた。
効果はあるという言葉に、痩せたい私は少し裕から薬をもらった。

「蜜は太ってないよ、でも飲んでみたらまた違うかもね?」

中学生の時からコンプレックスだった体型。
当時60キロ近くあり、エステにも通っていた。
食べたいけど食べられない。
限界になると食べても食べても食欲はおさまらない。
吐く事も出来ず過食を繰り返した。

AVで見られ、風俗で体を出す事によって、一気に痩せていったものの、出産時には70キロ。
産んで46キロまで落ち。。

私の体はその増減についていけなくなり、痩せにくい体になっていた。

私にとって太る事は生活にも性格にも支障がでる。
人と会いたくなくなり、自分を責める。
痩せる事へのこだわりは人とは違っていたように思う。

痩せる薬なんて夢のような薬!

その時は軽い気持ちでもらった。

でも、裕と私の体型は明らかに違う。
裕の体型で出された薬を私が飲めば、当然異常が起こる。

飲み始めて2.3日後、体に異常が起こった。

No.109

突然の出血。

生理が来たのが二週間前。

また生理が来てしまったと私は思った。

「また生理が来ちゃったみたい。不正出血にしては鮮血なんだよね。。」

「血液をサラサラにするみたいだから、そのせいかも。飲むのはもうやめときな」

お腹が痛くなる訳でもなく、出血以外は何も症状はなかった。

そんな状態でも裕は求めてきた。

「生理中なら尚更妊娠の確率は低いよね」

裕の求められるまま体を重ねた。

愛してるから。

そんな言葉を言い、裕は私の中へ出した。

愛されてると言う安心感は生理中だからこそのものだった。

「もし、できちゃっても産んでくれるよね?」

私はうなずいた。

裕の言葉はできないと思っていたからこその言葉だったように聞こえた。

No.110

一ヶ月後、生理前になっても、何も不調がない。
生理前はイライラと腹痛で生理中より辛い症状が出ていた。

「先月2回生理が来たから今月は遅れてるんだよ」

裕に伝えた。

一週間遅れ、あまりにも何も症状がない。
それから数日後、明らかに症状がでてきた。

妊娠。

寝起き時の異様な暑さ、胸焼けのような胃のムカつき、ダルさ。
妊娠を三回も経験してればわからない訳はない。

裕には言わず、その夜妊娠検査薬を買いトイレへ行った。

表示されるまでの緊張。

わずか数秒、終了を待たず結果を確認した。

赤い線。

うっすらと表示される陽性の線。

先月の二回目の出血は生理ではなかった。
そしてぴったりと排卵と重なっていた。

私は裕へメールを送った。

No.111

【実は、検査薬やってみたの。線がうっすらなんだけど出てるみたい】

【え?まじで?!】

【写メ見てみて】

【うーん。微妙だね、明日看護師にみてもらうよ】

裕から結婚の言葉はなかった。

次の日、看護師が妊娠してるのは確実だと言っていたとメールがあった。
そして夜、家に来て話をした。

「どうする?」

裕は私に答えを求めた。

「正直悩んでる」

私は言った。
裕がおめでとうと言ってくれれば、お腹をさすってくれれば、そんな言葉は出なかった。

「実は俺もなんだよね。まさかできるとは。。妊娠しないと思っていたけどもう体が回復してたのか。。」

妊娠をすれば産むのが当たり前だった私にとって、今の状況は正しい判断が出来ない。

「今回は無理かも」

言ってしまった。

「うん。でも、俺は産んでほしいな」

裕の言葉に心は動かされなかった。

ずるいよ。何で1番に言ってくれなかったの?
私が産めないと言ったからそんな綺麗事言ってるんでしょ?


初めに裕の言葉が聞きたかった。

俺が守るからと言ってほしかった。

私だけではこの子を守ってあげられないの?

ごめんね、ママは強くなれない。

後で後悔するのはわかってる。
後悔しない答えを出したいよ。

でも、でも、こんな弱いママの所へ来て幸せなの?

こんな私の思いも綺麗事なんだと自分でわかっていた。。


守りたい気持ちと守れない気持ちが頭の中でゴチャゴチャになっていた。







No.112

お腹の子はどんどん成長していくのが解っていた。

本来なら後二週間位は様子を見て病院へ行く。

今はまだ赤ちゃんの袋が見えるか見えないかと言う時期だった。

でも今は、事実をすぐに確認しなければいけない。

次の日、仕事の帰りに1人で産婦人科へ行った。

婦人科ではお世話になっていた。
まさか、産科で来院するとは。。



「子宮の壁が厚くなってきてるし、尿検査も陽性だから妊娠はしてると思うけど正常にしてるかどうかは袋が見えないとわからないなぁ。」

「そうですか。。。実は今回は事情があって。。。」

「まぁ、どっちにしても一週間後には袋が見えるはずだから、確認しないと処置もできないからね。また一週間来て」

「その時に、処置する事は可能ですか?」

「できるよ。でも後一週間あるからよく考えてね。失ってからは戻せないから」

わかってる。。
失ったら戻らない。
だから。。。
本当は。。。

産んであげたい。

でも次来る時は。。。





No.113

次の検診まで裕と毎日のように夜話をした。

産んで欲しいと言う綺麗事と今回は。。を繰り返す。

時間は待ってくれない。

私はこの時、裕との今後の付き合いも考えていた。
産めるのに産まない選択をすると言う事は、この先この人とはもう一緒にはいる事が出来ない。

「この先、裕と一緒にいられる自信がない。。」

正直に言った。

やっぱり産んで欲しいと裕は言った。

もう、裕への気持ちさえもなくなってきていた。

前回の検診の時にもらってきた中絶同意書。

私は裕に渡した。

裕はサインした。

後はその日を待つだけ。

費用は出すからと言った裕。

私はうなずく。

結婚を考え、車を乗り換え、子供達とも仲良くしたいと遊んでいたのは何だったんだろう。

これを機に結婚しようときちんと言ってくれなかった。

私は全てを捨ててこの子を守れないのか。

まだ、ここにある命。

最後まで私は迷っていた。

No.114

前日。

裕はお金の事を相談してきた。

「あるはずだったお金が用意出来なくて。。どうしたらいいか考えてるんだ」

「そうなんだ。。困ったね」

「金融から借りるのは抵抗あるし、とりあえず蜜に立て替えてもらって少しづつ返していくようかな」

お金の事は前から気になっていた。
自分の欲しい趣味にはお金をかける。
でもデートの時やホテル代はたまに金ないやと私が出していた。
お金の管理がよくわからなかった。

今回の費用、11万5千円。

私の貯金では楽に払える金額だった。

でも、このお金の重み、私は決して出すとは言わなかった。

裕はずっと用意出来ないと悩んでいた。

お金の価値観が明らかに違う。
無いと言えば私が出すと言うと思っていたのかもしれない。


何とか用意すると言ったものの、用意出来ないらしい。

「やっぱり金融からは借りられない。。蜜に立て替えてもらわないと。。」

自分を守りたがる裕。

だんだんと本性が出てくる。

私はきっぱり言った。

「立て替えることは出来ない!」

裕は渋々記念コインを両替すると言い当日持ってくると約束した。

このまま、逃げるかもしれないと思った自分がいた。

覚悟は出来てる。
怖いけど、一度は逃げられた私。

でももう別れは決めてる。

逃げたければ逃げればいい。

それまでの男。

私は密かにお金を自分で用意していた。

命とひきかえの重い重いお金。





No.115

当日、朝8時に病院の予約をしていた。

7時半には裕は家へ来る事になっていた。

子供達を送り出し保育園も送った。

7時40分。

裕は来ない。。。

電話をしても出ない。

やっぱり逃げたんだ。。。

私の中で怒りがこみ上げてきた。

1人病院へ向かう。

受付を済ませ診察台へ上がる。

超音波をあてながら先生が言う。

「袋見えてるね。わかる?順調は順調なんだけどなぁ。」

本当に辛かった。
本気で迷った。

3人を産んだ時の事を思い出した。

計画的ではなかったものの、実際超音波で見ると愛おしい我が子。

袋の状態から赤ちゃんの姿になり、検診に来るたびに大きくなっている。

胎動を感じる頃になると更に実感する我が子の存在。

出産の痛み。

対面した時のこれ以上ない最高の幸せ。

何が正しいのかわからないながらも育ててきた。

個性豊かな3人。

この子は、どんな子になるんだろう。

産まれて来たら幸せになれるのかもしれない。

「じゃあ、処置するけどいい?」

待って下さい!と思わず言ってしまった。

「もう一度だけ、お腹の超音波見せてもらえませんか?」

画像には小さな命が写っていた。

言葉が出ない。

先生は画像を消しながら言った。

「色んな事情があるよね。これからはちゃんと幸せにならなきゃダメだよ。二度と同じ事は繰り返さない。さぁ、処置を始めよう」

自分を責めた。

子宮を広げる注射はとても痛かった。
でも、こんな痛み、痛みじゃない。

処置は終わりまた夕方来て本格的な処置がされる。
それまでの間一時帰宅をする事になっていた。

病院を後にする。

何も考えられない。

帰宅してもまだ裕は来ていなかった。

数十分後電話が鳴った。

「ごめん、寝坊した」

約束の時間から1時間が経っていた。

No.116

呆れた。

「もう病院行って薬入れて来たから。急がなくていいよ」

裕は銀行があいたらお金を両替してから来ると言った。

しばらくして家へようやく着いた。

「。。。ごめん」

私は苦笑いをした。

家に上がろうとしない裕。

どうぞと言いとりあえず座らせた。

少し前までとは違った他人行儀な態度で接する裕。

お金をテーブルへ置いた。

「12万両替してきた。いくらだっけ。」

私は金額を言った。

裕はうつむきながら言った。

「もう、決めてるんでしょ?別れる事」

「まだどんな感情になるかわからない。でも、そうなると思う。」

少しの沈黙。

「今の俺はここにいる資格ないね。外で時間潰してるから。金も一万両替してくる」

イライラは最高潮だった。
今までこんなに裕への嫌悪感を抱いた事はない位の感情。

処置後の検診代、今までの婦人科代、保険も効かない事もある。それは全て私の支払い。裕はあくまでも処置費用しか払うつもりはなかったらしい。少し多めに渡す気遣いもない。

自分の体は自分で守れ。

そう言われているようだった。

そうだよね。自分でしか守れないのに。流されて、優しい言葉に騙されて、傷つくのは自分なのに。
信じないと決めていたのに、どうして信じてしまったんだろう。何でこんなに我慢しないといけないんだろう。

いつまでたっても強くなれない。

そんな自分が本当に嫌だった。

No.117

時間が経つにつれ、痛みが増してきた。

出産間近に似ている痛み。

裕は出たまま戻って来ない。

電話をし、呼び戻した。

「仕事場に書類を書きに行かないといけなくなった。運転出来ないから一緒に行ってもらえる?」

仕事先から連絡があり今日中に行かなくてはならず、車で40分の所へ行く事になった。

着く頃にはまともに歩くのが苦しい程、子宮の痛みは増していた。

書類を書き、マネージャーと少し話をする。

「蜜さん、すごい辛そう。。」

辛いのは私じゃないんだよ。これからその時を待っているこの子なんだ。

「大丈夫だよ、いってくるね」

マネージャーだけは事情を知っていた。仕事も暇だった為休みをもらえた。1人でも知っていて貰えていると気持ち的にも楽だった。

店を出てまた自宅へ向かう。

車の中では無言が続いた。
時々大丈夫?と声をかけてくれた。

重い空気は気持ちを更に重くさせる。

その時まで後4時間。

No.118

家には戻らず軽く軽食を済ませた。

私は絶食を言われていた為何も食べなかった。

時間は過ぎていく。

こんなに沈黙が多い2人の時間は初めてだった。

そして裕は言った。

「やっぱり産まないか?」

ここに来てなぜ?!

もうそんな言葉聞きたくない!
そんな事思ってないくせに。
心からそんな気持ちないくせに!
それが出来ないからこそそんな事が言えるんだ。

上辺だけの言葉。

いつだってそう、口だけで何も行動しない。
行動しようとすると必ず私が悲しい思いをする。
だから何も期待しない。

その言葉が私を苦しめる!

無責任な優しい言葉が私をとことん追い詰める!

裕は何もわかってない。

私の思いの半分も理解していない。

[無理しないで]

結局はそんな意味のない言葉と同じ。

言うだけなら何とでも言える。

考えてるフリをして言葉だけで逃げる。

言葉の責任なんてとるつもりもない。

そんな言葉ならもういらない。

もうこれ以上私を苦しめないで。。。

No.119

裕の言葉に私は首を振った。

時間は過ぎていく。。。

その時間まで車で2人で話をした。

「もう、別れは決めてるんでしょ?」

「わからない。その時にならないとわからない。必要と思うかもしれない、そばにいて欲しいと思うかもしれない。だけど、、、もう無理だと思うかもしれない。」

曖昧な返事をした。

実際どうしたらいいのか、どうしたら幸せになれるのかわからなかった。

でも今はそんな事より、今も生きている、ここにいる、お腹の子への罪悪感でいっぱいだった。
こんな時に幸せになる方法なんて考えられない。

裕はため息をついた。

そして、時間はきた。

No.120

既に支えられないと立っていられない位痛みがあった。

私は裕に寄りかかり一歩づつ病院へ歩いた。

これから待ち受ける事は二度と経験してはいけない。

強く誓う。

診察室へ呼ばれ、裕は処置が終わった頃に迎えに来るように看護師さんから説明を受けていた。

「いってくるね」

「待ってるから」

その一言だけ交わした。

私は診察室へ入り、診察台へ上がった。
そしてまた激痛を伴う処置をされ、隣の部屋へ移動した。

大きなソファーへ座らされ、手際よく、何人もの看護師さんが入れ替わり私への処置を施した。

麻酔が効きやすくなるように肩に注射され、点滴開始。

「辛いです」

言葉にしてしまった。

「女はね、辛いの。傷を負うのも女だよ。もう辛い事はしないよ」

「。。。そうですね」

決して非難の言葉ではなく、優しく、心に響く言い方だった。

しばらく横になり、30分後移動を始めた。

支えられながら二階へ上がる。

持ってきた手荷物を出し、下着を外すように言われバスタオルを腰に巻く。

隣の処置室の中は何人もの看護師さんが私を待っていた。

[裕、私裕と幸せになりたかった]

心の中は裕への気持ちがいっぱいあった。

そして、1人の看護師さんへ手を引かれ、処置室へと向かった。

「じゃあ、行こうか」

No.121

扉を開けると手術室の雰囲気に動悸が激しくなった。

「ここに横になってね」

分娩台。。。

まだ姿のない子をここで。。。

そして一度目の麻酔が打たれた。

先生が入ってくる。

「お酒飲むんだっけ?強そうだよなぁ」

先生はいつもの口調でリラックスさせてくれた。

お酒が強いと麻酔の効きが悪いらしい。

「じゃあ、そろそろ頑張ろうか」

二度目の麻酔が打たれた。

「少し眠気感じて来たかな?」

看護師さんの言葉に、あまり。。と言った。

「どの位で効くかなぁ。」

と言われた瞬間、体が重くなってきた。

その姿を見た看護師さんが私に言った。

「ゆっくり一緒に10数えて下さいね」

ゆっくりと、1から数え、私は8辺りで意識が遠のいた。

でもまだ残る感覚。

酸素マスクがつけられ、バスタオルがとられた。

「では始めよう」

その言葉を最後に意識を失った。

No.122

意識が戻ったのは処置後、先生が抱き上げベッドへ移動される時だった。

「わかるー?これからベッドへ移動しますね」


移動後持参した下着をつけられタオルケットがかけられた。

「終わったからね、麻酔が切れるまで休もうね」

意識はあるものの、意思表示は出来ない。

看護師さんは一旦外へ出ていった。

何も考えられなかった。

私はまた眠りについた。

No.123

数時間後、看護師さんの呼びかけに目を開けた。

涙が出ていた。

「そろそろ落ち着いたかな?」

片付けをしながら私に話しかける。

「あの。。。」

たどたどしい口調で言った。

「赤ちゃん。。。形があったんですか?」

「出てきた時は形はなかったよ、血の塊かな」

「そうですか。。。」

こんな事聞く人はいないだろうけど、でも、どんな姿をしていたのか、どうしても聞きたかった。

看護師さんからジュースを手渡され、今後の話をされた。

「しばらく出血が続くからね、一週間後必ず来ること!必ずだよ!今後の為にも自分の体の為に必ず来てね!」

私は頷いた。

「これが飲めたらそろそろ行こうか」

ゆっくりと手渡されたジュースを飲んだ。

お迎えの人に連絡するように言われ裕へ電話した。

「終わったよ」

裕はお疲れ様と言った。

まだ麻酔が少し残ったまま看護師さんに支えられながらロビーへ向かった。

裕は待っていた。

看護師さんからまた説明を受け、私は裕に支えられた。

裕、私辛かった。。。

No.124

病院を後にし、ゆっくりと車に向かう。

「大丈夫か。。」

裕の心配そうな顔は今まで見たことのない嘘のない感情が伝わってきた。

麻酔はまだ完全に覚めず車で少し休む事にした。

「別れるのか?」

「今は何も考えられない」

そんな会話をしながらも、私の心は裕を必要としていた。

「ごめんね」

裕は言った。

裕だけの責任じゃない。自分の体を把握しなかった私もいけない。

「同じ子は来てくれないかもしれない。だけど、もう一度、失った子のために2人でやり直したい。」

思いは複雑だった。

No.125

今の私は弱かった。

何が大切なのか、自分はどうしたいのか、幸せになってもいいのか、私は生きていてもいいのか。

これからの事も決してプラスに考える事は出来なかった。

早すぎる後悔。

大切なものを守れなかった私に強さなんてない。

裕との会話に答えは出せなかった。

家の前まで送ってくれた裕は心配そうにしていた。

「1人で大丈夫か?」

当たり前の言葉なのに、何度も聞いている〔大丈夫か?〕なのに、やっぱり初めて聞くような響き。
素直に聞き入れたくなるような心からの言葉。

今は私だけを見てくれている。

確信はないけれど、確かにそう感じた。

もっと早くその心からの愛情を私に向けてくれれば、こんな選択はしなくて済んだのかもしれない。

裕と一緒にいればきっとずっと辛くなる。
喧嘩をすればこの時の事を思い出し責任のなすりつけあい
になるかもしれない。

もう、終わりにした方がいいと決めている反面、心からの裕の愛情を感じてしまった今、側にいてほしいと思う気持ちも生まれてきてしまっていた。

No.127

>> 126 名無しさん(^-^)
レスありがとうございます!

深いですね。。でもお気持ちは伝わりました!
繰り返し読ませて頂きました。

そう、繰り返してはならないです。。

後、名無しさんの表現の仕方素敵です!

私ももっと表現を学ばなければ伝わりにくくなってしまいますね(^^;;

最後まで気長にもし読んで頂ければとても嬉しいです!!

レス本当にありがとうございました!

No.128

次の日の夜、裕は話をしに家へ来た。

会話は少ない。

「今でも蜜への気持ちは変わらない、一から始めたい。」

しばし沈黙。

「このまま一緒にいたら私が辛い。」

はっきりと言った。

「次はきちんとした形で産ませてあげたい。もう、迷わないから、蜜とこれからもずっと一緒にいたい」

涙がこぼれた。

やっぱり今の私は弱い。
いつもならそんな優しさは受け入れられないくせに、今は素直に受け入れている。
失う事の辛さに心が崩れていた。

もう、失いたくない。

「裕、私やっぱり後悔してる。もう、後悔したくない。」

裕の胸で私は泣いた。

No.129

裕は私を強く抱きしめた。

「蜜。。ごめんな」

涙が止まらなかった。

1人でも生きていける強さが欲しいといつも思っていた。
でもいつからか1人のさみしさを覚えるようになっていた。

裕と出会ってから。


この先裕は私を前よりも大切にしてくれるような気がした。

「これからも裕と一緒にいたいよ。私だけを見てくれる?」

涙を流しながら言った。

「当たり前だろ。蜜以外もうどうでもいいから」




もう一度、裕とやり直そう。

幸せをつかむまで、家族になるまで、ゆっくりでいいから進んでいこう。


同じ過ちは繰り返さない。


裕は優しくキスをした。
胸がキュンとなるような、これからの幸せを暗示するような、優しい優しいキスだった。

No.130

その後も裕は私の体を気遣いながら会いに来てくれた。

「まだ、しちゃダメなんだよね?」

裕も男。性欲を我慢するのも限界がある。

医者からは一週間後の検診が終わるまでセックスは禁止されていた。

その前に私自身、セックスが怖くなっていた。今してもいいと言われてもそんな気分にはなれない。

その事はきちんと伝えた。

「蜜がオッケーを出すまで我慢するよ」

裕はそう言ってくれた。

No.131

一週間後、病院へ診察に行った。

異常はない。

「色んな理由があるけれど、もう済んでしまった事。ちゃんとこれからは幸せにならないとダメだよ。」

先生の言葉は身にしみた。

これからしばらく妊娠しやすい体になってるから避妊はしっかりする事。体力的にも精神的部分も無理をしない事。

先生に何度も言われた。

妊娠しやすい体で性欲もないのにセックスなんて出来ない。

心の奥底で、裕に対する不安もあった。

他の人に性欲を向ける事。

でも、今は自分の体と心は守りたかった。

守れるのは自分しかいない。

傷つくのも自分、守るのも自分。

どうあがいても、自分の事は自分でしか守れないんだとこの時確信した気がする。

No.132

この出来事があってから、私は裕のメールを見るのをやめた。

裕の態度は明らかに以前と違う。

予定など細かく教えてくれるようになった。
会社の人にも私の事を結婚前提の人だと言ってくれているようだった。

元彼女の影も感じられない。

夜は毎日のように来て、休みの日は誘ってくれた。

常に一緒にいる感じが私を安心させた。

しばらくたった頃、私達は体を重ねた。

裕の愛に答えたかった。

避妊はきちんとした。

しかし。。。



最後にゴムが破れてしまい、避妊は失敗してしまった。

次の日に緊急避妊薬を病院へもらいに行き対処した。

通常の倍の量のピルの成分が入った薬は、人工的に生理を引き起こさせる。

「きちんと体のリズムが整うまでセックスはやめよう」

愛に答えると言う言葉で正当化してしまった快楽。

もう、過ちは繰り返してはいけない。

大きく反省した。


No.133

その後、私は三年働いた職場を辞めた。

仕事に関しては前からずっと悩んでいた。

でも裕に相談しても自分の納得する答えはもらえなかった。

最後は自分で決める。

悩んで悩んで辞める事を決意した。

好きを仕事に出来た三年は私を大きく成長させた。

これからは自分と子供の生活の為、収入メインの所を探す。

収入に関してははっきり言って赤字だった。
でも、お金では得られない物を得る事が出来ていた。

現実を見る。

今の生活、現状を受け入れる。

また、好きを仕事に出来る日が来るまで。


私は一歩を踏み出した。



No.134

仕事が決まるでの数週間、毎日求人を見たり自ら歩いて探したりした。

裕の誘いも断った。

いくつかの求人の中で時給が良い所の面接をした。


そして以前よりもかなり給料が良い所で採用された。

始めての職場、始めての職種、出来るか不安いっぱいだった。

でもやるしかない。

例え自分に向いてなくても、生活を守るため、自分が本当にやりたい事をやる為、自分で踏み出した一歩を無駄にしない為に頑張るしかない。

その気持ちの中に正直裕はいなかった。

頑張れと言う言葉さえも届かなかった。

強くなりたい。

誰にも頼らないで生きていけるようになりたい。

そんな気持ちでいっぱいだった。



No.135

仕事は今までに経験した事がない程精神的にハードな物だった。

初めはお昼を食べていたものの、午後眠くなってしまう為食べる事ができなくなっていった。

夜は今まで通り裕は来ていた。

正直辛かった。

少しでも早く寝ないと仕事に支障が出る。

解ってくれているのか解らない。

来ればほとんど体を求めてくる。

求めてくる割にはセックスの最中にイビキをかき始める。

悲しみと苛立ち。

疲れているなら来なければいいのにとさえ思った。

それでも来る裕。

好きだけど、必要だけど。。。。

何故か愛されている実感がなかった。

No.136

セックスに対する恐怖心は抜けなかった。

怖い。

どんなに優しくされてもどんなに良いムードになっても、セックスでの快楽は得られなくなっていた。

私の中でこの行為はもう必要ない。

もっと違う形で私を支えてほしかった。

でもそんな事は言えない。

他に求めてしまう。

セックスの恐怖心と元カノに求める恐怖心。

笑っていないとダメだった。

精一杯裕の前で可愛い女でいないといけなかった。


「無理するなよ」

もうそんな言葉は私には届かない。

もっと楽になりたい。

No.137

慣れない仕事と裕との時間。

昼も食べず夜はお酒を飲む日々。

体は疲れ、体重も一気に落ちていった。

どんなに辛くても、仕事は辞める訳にはいかない。

お金の為。

自分で選んだ道。

そして転職してから初めてのお盆休みが来た。

以前の仕事とは比べ物にならない位の長期休み。

嬉しかった。

このお盆休み、裕は家へ泊まりに来る事になった。

子供達もお客さん感覚で泊まりに来る事を楽しみにしていた。

裕の子供も一緒に来る。

少しの間家族になれる。

今までの嫌悪感は忘れる程一緒に過ごせる事が嬉しかった。

仕事が休みと言う安心感からか私にも余裕があり、裕をすんなり受け入れられた。

No.138

休みに入る前に2人で計画を立てた。

行きたい所、普段経験出来ない事、2人がいれば出来る事。何をしようか話をした。

私達家族四人と裕と子供。六人分のお金は大分かかる。
お金の事も話しておきたかった。

細かい内訳を話始めると裕はとりあえず多めに用意しておくからと言いお金の事はあまり話せなかった。

一番肝心な所。

お金の事はきちんとしたかった。
元旦那のトラウマ。
お金の切れ目が縁の切れ目だと思っている。
それ位お金の事はシビアになっていた。

その時に考えればいいと言う裕の考えは納得出来なかった。

でもそこでキツく言いすぎてもまたトラブルの元になる。

楽しいお盆休みを過ごす為、極力トラブルがおこらないように自分なりに努力するつもりだった。

そして長いお盆休み。。。

最初で最後のお盆休み。。。

No.139

久しぶりに見る裕の子供。

母親がいたらこんな感じなのかなと思うような事を沢山経験させてあげたかった。

料理を一緒にしたり、話を聞いてあげたかったり。

もちろん裕との時間も大切にしたかった。

初日は皆でプールへ行った。私1人ではなかなか連れて行って三人を見る事が出来ない。

うちの1番上と裕の子供は同じ年だった為、裕が2人を見ることになり、私は写真と下2人を見守る事にした。

何年ぶりかの市民プールはとても賑わっていた。

周りから見れば普通の家族に見える私達。

そんな形がとても嬉しかった。

しばらくの間家族ごっこが出来る。

まだ家族にはなれなくても、これを機にもっと深く踏み込めればと思っていた。

私は裕と家族になろうとしていた。

No.140

プールで思い切り遊んで楽しい時間を過ごし、夕方、帰り支度を始めた。

歩きながら裕が言う。

「うちの子はやっぱり1番長く潜れるよな」

裕は子供にいくつか習い事をさせていた。

うちは何もしていない。

こう言う発言は時々あり私の感情を負にさせる。

何となく、うちの子供達と比べられているようで嫌だった。

「スイミングに行ってるんだから当たり前じゃない」

軽く言った。

長男も人並み程度に泳げる。

自分の子供は確かに可愛いし褒めてあげたいのも解る。
でも、その後の相手へのフォローが裕にはない。
子供の心が解らないのか。。。

裕の言葉に何度となく長男が違和感を感じてるのを私は見逃さなかった。

No.141

その夜は皆で夕食を作る事になった。

裕の子供に、やってみる?と聞くとやると言うのでやらせてあげた。

私の子供達も手伝いをし、皆で食事をする。

当たり前のようで当たり前ではない光景。

裕と料理の最中に話をした。

「やっぱり味付けとか蜜が決めて手際良くやってくれるのが嬉しいよな」

「私は基本薄味だからね。好みがあったら言ってね」

「俺はその人の味が食べたいんだよね。蜜はそれをしてくれるからさ、変な話、元カノは料理全くダメだったからさ、手際良くないし。」

本当に変な話を聞かされた。

何で比べるのか解らない。

「今まで手際良く作ってくれる人がいなかったのね」

そう言った。

「うーん、まぁ、奥さんはそれが唯一できたんだよね。今までで手際良くやってくれたの奥さん位かなぁ。」

はぁ。そうですか。

また比べられてるんだ。

蜜は蜜だからと言いながらも何処かで比べてる。

その時私は見て見ぬフリ、聞いて聞かないフリをした。

幸せを感じてるにはそうする事しか出来なかった。

No.142

食事が済み子供達が遊び始める。

裕は携帯をいじったりパソコンをいじったりしていた。

私もそれを覗いたり、2人の空間を楽しんでいた。

裕の子供が私達の方へ来て、何してるの?と言う。

「ほら、皆と遊んできな。関係無い事だから」

裕は子供にむかって言った。

子供に対する接し方、考え方は私とは違う。。。

夜になり、ようやくホッと一息ついて私達も少しはくっつける。
その時間を邪魔されたくないような言い方。

私の子供達はそんな裕を見て、裕に話しかける事はしなかった。

この人は遊んでくれない人。

子供の中でそんな感情が出ない事を祈っていた。

No.143

その夜は裕も疲れたのか、子供達が寝てから横になるのが早かった。

私も横になろうと早めに家事を終わらせた。

一段落して寝ようとすると、裕は私の顔を裕のモノに近づけ、舐めてと言った。

誘われればその気になる。

私は舐め始めた。

初めは大げさに気持ちいいと言っていたものの、案の定寝始めてしまった。

もっと2人の夜の時間を楽しみたかったのに。

寂しくなる。

そして、ずっと封印していた悪い感情が出てしまった。

裕の携帯。。。

見たらいけない。

信用してるなら見たらダメだ。

でも、寂しさが不安に変わる。

私は裕の携帯に手をのばしてしまった。

No.144

ロックはかかっていない。

メールを開く。

仕事や学校関係の人からのメールばかりだった。

裕の様子を見ながらメールを見る。

あまり過去までさかのぼると、起きそうな時に元に戻せない。

元カノからのメールは見つからないまま私は携帯を閉じた。

ホッとした。

そして裕の隣で眠りにつく。

幸せだと感じていた。

本当に私だけを見ていてくれているんだと。

その先にあるメールを知らないまま。。。

No.145

朝起きると裕は求めてきた。

昨日のメールの安心感からか、私も嬉しかった。

しかし隣の部屋では子供が寝ている。
いつ起きて来るかわからない。

「まずいよ」

私は言った。

案の定、裕の子供が起きてきた。

「まだ早いから寝てな!」

裕の言葉に子供は、うーん。。と、もう眠くないような素振りを見せた。

「昨日遅かったんだからまだ寝てなさい」

その時は私ももっと2人でいちゃつきたいから正直まだ起きてほしくなかった。

裕は舐めてと続きを始めようとする。

「もう起きてるからダメだよ」

その言葉も聞かず強引に私の顔をモノに近づけた。


私は舐めた。。。

何か。。。違う。。

No.146

子供達の話し声が隣の部屋から聞こえてくる。

2人の時間は中断した。

私は母親モードになり朝ごはんの支度、洗濯などを始めた。

裕は携帯をいじりながらパンを食べる。
子供達はテレビを見ながら。

子供達が話しかけても裕は半分流していた。

この人は本当に私達と家族になりたいのか。
ただ、家族という形がほしいのか。

よくわからない。。

二日目も出かけ、楽しい時間を過ごし、夜は居酒屋へ
行った。

その夜、裕と愛し合った。

この時だけは、裕の事を心から愛していた。

No.147

次の日は裕が用事がある為、子供だけ預かる事にしていた。

裕が出かけてからうちの子供達と遊んでいる。
長男とはあまり関わる事なく、一番下と遊んでいた。
好みは一番下と同じだった。


なるべく寂しい思いをさせないように私も沢山話しかけた。

「パパいなくて寂しい?」

「別にー」

「パパと一緒に寝てるの?」

「寝てないよ、いつもばあちゃんと寝てる」

「パパと一緒に寝たい?」

子供は首を振った。

「そっか。」

裕は、仕事、学校関係や私生活でのとある活動を忙しくしていた。
夜は私の所へ来る事も多く、子供と過ごす時間が少ないように思えた。

子供は寂しくないのか。
それが当たり前なのか。

裕の求める物は何なのか。
誰を大切にしたいのか。
何が1番なのか。

子供と話をして沢山の疑問がまた増えた。

No.148

遅くなりながらも子供達は寝、裕は帰って来た。

ご飯を用意しておかえりが言える。

そんな幸せに浸っていた。

結婚していた時はそれが当たり前だったのに。

当たり前の事すぎて幸せに気づけなくなっていた。

今、それに気づけた。

裕と色々と話をした。

「明日、子供と朝散歩してくるよ。2人の時間もそろそろ必要かなって。」

「うん、そうだね」

たった3日で2人の時間が必要と言う裕。

私にとっては疲れも何もなかった。いつもの生活に2人増えただけ。大家族に憧れていたから楽しいと言う気持ちだけだった。

でも裕は違う。

一気に大人数と過ごす戸惑いと疲れ。

この3日で何となく見えてきた未来。

一緒にはなれないかもしれない。
この人とは結婚出来ないのかもしれない。

二月に経験した大きな出来事の時から違う道に進んでいたのかもしれない。

その夜、裕が寝てしまった後、私は再び裕のメールを開いた。

No.149

過去へさかのぼる。

携帯を持つ手が震える。


そして、見つけてしまった。。。

元カノとのメール。

私が妊娠した事、それに対して元カノが結婚しないの?と書いている。

【向こうに出来ないと言われてしまったからね】

裕の返信。

その後もメールは続いていた。

【彼女とはどう?】

【うーん、もうあの事があってからぎくしゃくしてるからダメかもね】

もう一度やり直したいと強く言い、やり直してきたのに、元カノにはそんなメールを送っていた。
元カノに誘われる為の口実を作っているようだった。

動悸と震え。

ひどすぎる。

その後元カノと途絶えていたメールも裕から送っていた。

【おはよう。彼氏とは大丈夫なの?】

何故裕が関わるのか、何故メールをするのか。。。

元カノも拒否する訳でもなく返信している。

怒りはマックスになり、裕につぶやいた。

嘘つき。。何でなの。。?

裕は起きた。

No.150

もう怒るのにも疲れた。

「ねぇ。。何で。。。?」

裕の携帯を持ちながら言う。

裕は私がメールを見たとすぐに悟った。

「はぁ。。。またかよ。。。」

「何でもう駄目かもしれないなんて元カノに言ってたの?やり直したいと何度も言ったのに、嘘だったんだ。そんなに元カノに誘われたかったんだ」

自分が悪いと裕は半分呆れながら言った。

「じゃあ何で別れなかったの?何であの時別れるって言わなかったの?!」

涙が止まらない。

やっぱり裏切られた、信じていた、信じようとしていた気持ちは崩れていった。

体を気遣いながら、無理するなよと言いながらも、元カノには気をひかせるような言葉。

こんなにも、こんなにも、悩んで悩んで毎日涙を流し、どうしたらいいのか迷っていた。
お酒の力を借りて考える事から逃げるしかなかった。
何が幸せなのかわからなくなっていた。

それでも、裕が別れたくないと言った。
1人で無理するな、頼ってくれ。
そう言った。

自分が愛されていると感じた。
その言葉を、もう一度信じてみようと思った。

そして裕は。。。

私を裏切った。

信じれば裏切られる。

やっぱり、同じ事の繰り返し。

これを機に、私の心は裕から少しづつ距離を置き始めていた。

No.151

裕は無言でタバコを手に取り外に出て行った。

しばらくすると戻って来て言った。

「もう帰った方がいいか」

自分勝手な言葉に冷静に返した。

「何時だと思ってんの?子供の心まで踏みにじる気?!」

「もう、一緒にいたくないんだろ?許せないんだろ?じゃあ俺はここにいる資格なんてない。子供起こして連れて帰るから」

子供達に罪はない。

明日には帰る事になっている。

最後まで、いい思い出にしてあげたい。

「明日は普通に過ごす。子供達の前で変な行動しないで。何もなかったように接してよ」

「じゃあ朝まで車で寝るわ、どうせ一緒にいたくないんでしょ」

裕の投げやりな言葉に腹が立った。

No.152

お互い無言になる。

とりあえずは子供達の気持ちを尊重したい。

次の日を無事に終わらせて楽しい思い出として残したい。

私達はお互い背中を向けて寝た。

次の日の朝、裕は機嫌が悪かった。

子供にあたる。

何となくお互いギクシャクした一日を過ごした。

そして夕方、そろそろ家に帰る時間になった。

子供達が遊んでいる中、リビングで二人で話をする。

「今日が最後って事なんだろ?」

私がYesと言わないのを解って言っているようだった。

私は裕から離れられない。

そう裕は思っていた。

私は答えなかった。

こんなにひどい事をされても、何故か全てを嫌いになる事は出来ない。

裕を失うのが怖かった訳ではなく、ただ、失うと言う感情が怖かったのかもしれない。

裕とはもう会えないのかもしれない。

そう思うと別れと言う気持ちを選ぶには私にはかなりの負担だった。

No.153

「俺は蜜が嫌いになっても好きだから」

そう言い残し裕は帰って行った。

私が裕の事を嫌いにならないのを解っているから出た言葉のような気がしてならなかった。
いつもそうやって私の心を迷わせる。

冷静に考えれば矛盾している。
好きなら何故元カノと連絡を取りたがるのか。
私を不安にさせるような事をするのか。
自分の行動に責任がとれていない。

それでも好きだと言う。

裕の好きは何なのか。

でも、その時の私はただ目の前からいなくなってしまった現実が寂しいと言う気持ちしかなかった。

いなくなった途端涙か溢れた。

そして。。。

子供の前で初めて本気で泣いた。

心配そうに長男が声をかけてくれる。

「ママ。。。どうしたの?」

私は長男を抱きしめた。

ごめんね。。。

「ママ、泣かないで、大丈夫だよ」

長男はそう言いながら一緒になって泣いてしまった。

なんて情けない母親なんだろう。。

子供の泣く姿を見て我に返った。

「もう、大丈夫だから。ママ、頑張るからね」

子供の前で涙を流すのはこれが最初で最後。

私は、強くならなきゃいけない。

No.154

その後裕から普通にメールが来た。

何事もなかったかのように。

私も普通に返事をした。

私は何がしたいんだろう。

ただ、裕が私だけを見てくれればそれだけでいいのに。

何故私だけを見てくれないのだろう。

不倫の関係の時はここまで独占したいとは思わなかった。
お互いやっと堂々と付き合える関係になったのに、何故裕はよそ見をしてしまうのか。。。

裕のメールを見るから私が信用出来なくなる。

メールを見るのはマナー違反だと解っていた。

でも、これから裕ときちんと付き合うには裕が元カノと切る事を自分で確認して信用したい。

裕のメールを見なければ信用出来ない。

何もないと信じたい。

信じてきちんと心から好きだと確信を持ちたい。

私は究極の監視を始めてしまった。

No.155

私と裕の携帯は同じ機種だった。
メールの使い方は解っている。
設定で、パスワードを入れないと受信出来ない機種。

私は裕のパスワードが単純でほぼ同じ物を使っている事に気づいた。

もしかして。。。

私は自分の携帯に裕のアドレスと思いついたパスワードを入れてみた。


認証された。。。

No.156

次々とメールが受信される。

以前見てしまったメールも再度受信された。

私が仕事で裕が休みの時は暇だったのだろうか。

【お茶でもどう?】
【結婚前の最後の遊びになんてね】
【前の熱いキスまた味わいたいなぁ】

見たくなくても見てしまう。

見て落ちる。

自分を追い込む。

その度に心で裕に問いかける。

結婚してもしなくても、裕はずっと遊んでいたいんだよね。

私は遊びから帰る場所なんだよね。

だからずっと1番にはなれないんだよね。

私だけを見てくれないんだよね。。。

でもそれは過去の話、今はメールもしていないし、来てもいない。

このまま少し様子を見る事にした。

No.157

その日から裕のメールを見るのが日課になった。

自分が情けないし最悪だと思いつつもメールを見る事でしか信じる事が出来なかった。

そしてしばらく何事もなく過ぎて行った。

ある日、裕は飲み会に行くと言った。

車で行かなければならない距離、帰りはどうしようかと悩んでいた。

「蜜に会いに来たいなぁ。迎えにきてー笑」

「夜はねー。子供達置いてはいけないよ」

だよな、と言い、タクシーにするかと言っていた。

そしてしばらくしてメールが鳴る。。。

「飲み会でそっちの方行くんだけど車出せない?」

それは元カノにあてたメールだった。

「話したい事があるんだろ?聞くけど」

誘っているのかなんなのかよくわからない。

「どうしようかな」

元カノも断る事はしない。

「その気があるなら」

裕は返信した。

私は言葉を失った。

この日を境に、愛情の方向が間違った方へと向って行く。

そして、愛情の愛は無くなり、情だけが残っていった。

No.158

裕と会う度何度も聞きたくなる。

「元カノを誘ったのは何故?」

何日経っても何か月経ってもどんな感情になっても変わらない元カノの存在は私にはどうする事も出来ない。

裕が大丈夫と言えばその言葉を信じるしかなかった。

でも、信じても元カノは裕の近くに常にいる。

出会った時より確実に壊れていく私の心。

それなのに《さよなら》と言えない。

もう繋がっているのは体だけだと自分で解っていた。

No.159

もうすぐ私の誕生日。

一年前の出来事が思い出される。

その辛い気持ちをこれから何十年と背負っていかなければいけない。
でも、年を重ねるごとにこの思いは薄れていくはず。。。

そう、信じたい。。。

でもまだ一年。昨日の事のように思い出される。

「誕生日プレゼント何がいい?」

裕は気を使ってくれた。

あまりプレゼントをする人ではない。
自分の好きな事だけには多額のお金を投資する。
パソコンは買えるけど、ホテル代は出せないような人。

「何でもいいよ」

私もプレゼントを貰う事に慣れていない為本当に何でも良かった。

「次の休み一緒に見にいこうか」

「ありがと」

少しだけ嬉しかった。

こんな当たり前の事が嬉しかった。

No.160

裕のメールの受信は続けていた。
怪しいメールはない。

受信を続けて数日、過去のメールを何度も見返し、元カノと連絡をとるタイミングが解ってきた。

自分が休みで私が休みをとれなかった時。
夜、私が先に寝てしまった時。
裕が私の家に来たくても私が拒否をした時。

誕生日を目前にどうしても心の整理をつけたかった。

見るのが辛くても、受け入れたくなくても、現実を受け入れなければ前に進めない。

話し相手、寂しさを埋める相手に元カノを選んでいる裕はこの先もずっとやりとりを続ける。

私がどう思うかなんて関係ない。

裕は裕の思う行動でこの先も元カノと繋がり続けていく。

これが現実。

私はメールの受信をやめた。


求めても求めても答えてくれない裕。
こんなに求めているのにもっと俺を必要として欲しいと言う。

裕にとって何が一番大切なのか私にはわからない。

ずっとずっと、裕の大切な事、わかる事が出来なかった。

やっぱり一番にはなれなかった。


誕生日少し前に私達はお互い休みをとりプレゼントを買いに行く事になった。


覚悟は・・出来たよ。


No.161

待ち合わせは初めて待ち合わせをしたゲームセンターの駐車場。

そこは元職場の目の前。

懐かしい。

ドキドキしたあの時。

仕事に来る度駐車場を見てはドキドキしていた。


裕は既に着いて待っていた。

「おはよ」

笑顔で言ってくれた。

店はまだ開いていない時間だった為、少し車で行ったカフェでコーヒーを飲む事にした。

2人で1つのパンを注文した。
こういう何となくな幸せを感じられる事が幸せだった。

「欲しいもの決まった?」

「何でもいいんだよね、何が欲しいのか自分でもわからなくて笑」

「あはは、何でもいいんだよー」

実は前々から靴が欲しかった。それも真っ赤なハイカットのスニーカー。
何処を見てもそんな靴はなく、ネットでも検索していた。

「前に靴がほしいって言ってたじゃん?ネットで俺も調べてみたんだけど、こんなのどう?」

裕は携帯の画面を見せてくれた。

イマイチしっくりこない・・

「ここのサイト種類あるからさ、蜜も見てみな」

私も携帯を取り出し検索を始める。

2人でいるのに別々の事をしているみたい。

しかも裕はいつの間にか携帯ゲームをしていた。

「これもう少しで倒せるんだけどなあ!これだけやっちゃうからもう少し待ってね」


ふう・・・・

苦笑いしか出来ないや・・

No.162

タバコを吸いながら裕が携帯ゲームを止めるのを待つ・・・。

「俺さ、こういう時間が好きなんだ。何をする訳でもないけど、蜜と一緒にコーヒー飲みながらまったりするの。」

「へえー・・そうなんだ。」

今のこの状況、私がいてもいなくても変わらないような気がする。

早く会いたいからと待ち合わせたものの、ワクワクする話をする訳でもなく、裕は携帯ゲームに夢中になっている。
私はそれを見て見ぬふりをしながら黙って待っている。


・・・仕事・・休まなければ良かった・・・

本気でそう思っているとも知らず、私が喜びそうな言葉をかけてくれる。

『私とゲームとどっちが大切?』

心の中で裕に問いかけていた。

その気持ちが表情に出てしまっていたのか、裕は私をチラっと見てゲームを止めた。

「そろそろ店も開くし行こうか」

私達はカフェを出て、プレゼントを見にショッピングモールへ向かった。

No.163

「何か気になったのあったら言ってね。」

裕はそう言い店内を歩いた。

しばらくして知り合いらしき人を見つけたらしく私の手をひっぱり足早に歩いた。

「見られちゃマズイの?」

「そういう事じゃないんだけどさ、噂されると恥ずかしいし。結婚するまではね。でも蜜は可愛いし、思い切って紹介しちゃおうかなあ」

笑いながら言う。

私は・・笑えない。

先がどうなるかなんてわからない。

とりあえず、何を買ってもらおうか選ばないと。

裕の言葉にはあまり反応せず店を見ていった。

なかなか決まらない。

「財布は?」

裕が財布を手に取り言った。

今まで安物の財布ばかり使っていたからかすぐに破れたりしてしまっていた。

私は財布に決めたものの、なかなか良いのが見つからない。

しばらく歩くと自分では絶対に買わなそうなブランドの店を見つけた。

見るだけでも・・と思いながら見ていると理想の財布を見つけた。

赤っぽい、あまり人が持っていなさそうな財布。
値段を見ると12000円だった。

「これがいいけど、でも高いから」

「いいよ、あ、結構いいお値段だ笑」

やっぱり悪いからと思い別の物にしようとした。

「蜜が気に入ったならそれにしなよ。誕生日なんだから!」

嬉しかった。

この財布を持てる事が。



No.164

財布は丁寧にラッピングをしてもらった。

車の中で裕に渡された。

「ありがとう」

私は言った。

冗談まじりに裕が言う

「もうしばらく金つかえねーぞ」

冗談でも普通そんな事を言わない。相手がどう思うかなんて、私がどう感じるかなんて考えもしないで出た発言は私を呆れさせた。

でも買ってくれただけでいいか・・

今日は絶対に決めるつもりだった。
絶対に私に為にプレゼントを買ってもらうと決めていた。

もう、先はないから。

今日、この日しかないから。

思い出が欲しい訳じゃない。

私の為に、お金を使わせたかっただけ。



時間は過ぎ、私の車がある駐車場へと向かった。

緊張・・

今日だから私は言う。

もう、愛情はない。

No.165

駐車場に着き私は呟いた。

「私に隠してる事ない?」

冷静に。。。

落ち着いて。。


「なんだよ、いきなり。隠してる事?ないよ?」

何事もないかのように答える裕。

何も確信がなければ、そっか・・で済まされてしまいそうな程真顔。

でも、確信があるからこそ、裕の反応が許せない。

私は黙る。。。

「言ってくれないとわかんない」

裕は言った。

「本当にないの?本当に?ねえ、去年の誕生日、私が何をされたか、忘れてないよね?」

消えないトラウマ。

私の誕生日に裕は元カノとラブホに行った。

裕はまたその事かと言うような顔になり説明し始めた。

「前にも言ったけど、セックスはしてない。でも本当に悪いと思ってるって謝ったでしょ?その事と何か関係があるの?元カノとはそれ以来連絡してないよ。」

「わからないの・・・?」

「わからない」

「そっか・・」

私は帰る支度をした。

「蜜、何か知ってるのか?」

その言葉に反応はしない。

「子供のお迎えがあるから帰るね」

そう言って車から出ようとした時、裕は私を抱き寄せた。

「蜜・・お迎えお母さんに頼めないかな・・ここで蜜を帰したくない。」

頼めないし頼みたくもない。

「無理だよ」

きっぱり断った。

一緒にいる時間に意味はない。

私を帰したらここで終わると解っているのか、ただそんな演技をして私の感情を引き戻そうとしているのか、裕はずっとお願いをしてきた。

「もう行かなきゃ」

私は冷静だった。

抱きしめられても、行かないでと言われても、もう愛情はないんだと感じていた。





No.166

「終わりにしよう」

そう言い残し私は車を降りた。

裕の顔を見る事なく、車を走らせた。

信号待ちの合間合間でメールを作成する。

「最後まで本当の事を言ってくれなかったね。私は裕とまた出会い付き合った事を後悔していません。強引に裕がキスをしてきて新たに始まった私達。楽しい事もあったけど辛い事も沢山ありました。最後まで、元彼女との縁を切ってくれなかったね。裕のそばにいるべき人は私じゃなく元彼女なんだろうね。」

「なぜ・・もう何もないと、連絡もとっていないと言っていたのに、飲み会の時の迎えを頼んだのですか?しかもあなたから。誘っているのはいつもあなたなんですね。断らない元彼女もどうかと思うけど。何故この事知ってると思う?私はあなたのメールを受信してました。最低でしょ?だから全部知ってる」

「もうこれで終わりにしよう。元彼女とお幸せに。」

裕からの返事はなかった。

これで終わったと思った。

私は大丈夫!!と車の中で何度も言った。

涙が止まらいのは別れが寂しいからじゃない。

今まで当たり前にあったものがなくなった。それだけの悲しみ。

私はこれで本当に強くなれるの・・?

No.167

家に着き家事を終え子供も寝静まった。

頭は空っぽ。

誰であろうと何であろうと失うのは辛い。

そこに裕からのメール。

「お前、本気で言ってんのか?」

怒りがおさまらないようだった。

私は無視する。

「俺は別れたくない。こんな別れ方をするのは納得出来ない。今でも蜜が好きだから、何をされても蜜が好きだから」

無視を続ける。

「メールの受信は許せない。でも俺が言えた事じゃないから何も言えない」

一方的にメールを送りつけてくる。

いつもだったらここで愛されていると勘違いし、本当は別れたくないと言っていた展開。

返す言葉はない。

しばらくすると裕は家に来てしまった。

もう会いたくない。でもうるさくすると子供も起きてしまう。

鳴り止まない電話。

私は、ドアを、開けてしまった。

No.168

裕は真顔で私を見つめた。
悲しみも怒りもない何を考えているのか解らない顔。

そして。。

私の首元の服を思い切り掴み声を押し殺して言った。

「お前、自分が何をやってるのかわかってるのか」

私は何も言えなかった。

何も言いたくなかった。

何でこんな人を好きになってしまったのか。

自分が憎かった。

涙を流す事しか出来ない。

裕は掴んだ首元を離し抱きしめた。

「最後に。。お願いがある」

No.169

「こんな形で最後にするのは納得出来ない。蜜の気持ちはもう否定しない。最後に笑ってさよならしたい。もう一度だけ、デートしてほしい。」

最後の最後に笑顔で別れる事が出来るのか。

会えばきっとセックスだってしてしまう。

感情がなくたって私がセックスを出来る事、裕は解ってる。

愛情を確認する為じゃない。


裕とセックスをしても私の気持ちは風俗と同じ。

愛のないセックスプレイ。



2人で会う事に。。意味はあるのか。

No.170

Yesの返事がすぐに出来なかった。

裕の腕は更に私を強く抱きしめた。

呼吸が出来ない位強い力。

そして片方の手をパンツの中へ入れてきた。

その指は強引に私の中へと入れられた。

やめて!!!

出来る限りの力で拒否をする。

「本当はこうやってされたかったんだろ?!」

もう、裕の中ではプレイに入っている。

愛とか好きとかそんなの関係ない。

もうAVの中の世界。

玄関で、抱きしめられ、強引に。

そして部屋の中へ引っ張っていかれ押し倒された。

両腕を押さえつけられキスをされる。

もう、この人は彼氏じゃないと思った。

キスがしたくないのが何よりの証拠。

私は顔を背けた。

やめて。。。

その言葉は、プレイにしか受け取ってもらえない。

私の心は裕のプレイでかき消されていた。

本当は、こんな事したくない。

愛のないセックスなんてしたくない。

でも、相手が望むなら、愛がなくたって。。

少し我慢すればいいだけ。

それで気が済むのなら。

私が少し無理すればいいだけ。





No.171

抵抗はしなかった。

何でこんな事するの。。

その言葉に裕は動きを止めた。

「人形とセックスしても面白くも何ともないわ」

その言葉に深く傷ついた。

私の事を人形と言った。

どんな時でも感情は持っていた。誰に対しても心の中で深く考えていた。感情を見せないフリをしても感情はあった。

吐き捨てるように言ったその言葉に対しての怒りが込み上げて来た。

「帰って」

好きでもないこの人といる意味はない。

裕は部屋から出て行き荒い運転で帰って行った。

No.172

《さっきはあんな事して本当にごめん。やっぱり俺は蜜が好きなんだ。何を言われても蜜の事が好きなんだ。でも蜜はもう決めてるんだよね。もし、許してくれるのなら、これで最後にする。最後にするから俺のわがままを聞いてほしい。。。最後に笑顔でさよならしたい。》

裕からのメール。

こんな言葉信用出来ないしするつもりもない。

裕は変わってしまった。

私の事を忘れずずっと想い続けてくれていたあの頃。
強引な中にも優しさがあった。

不倫をしていた時、私が家族の元に帰ると決めた時も私の幸せを一番に考えてくれた。

付き合っていくうちに結婚も考えてくれた。

でも、今の姿が本来の姿なのかもしれない。

気づかなかった本当の裕の姿。

裕は今、別れと言う現実の中で苦しんでいる。

私は、裕を否定する事も受け入れる事も出来なかった。

少し・・考え・・メールの返事を送った。

No.173

《もう二度とあなたを好きになる事はないけど、これで本当に最後にしよ。私も人として最低な事をしていたから裕の事責める事は出来ない。》

もう、無視をすればいいのに、相手にしなきゃいいのに、信用とか愛とかそんな気持ちは全くないものの、すっきりしたかった。

今までの事を忘れ、笑顔でさよならを言って最後にしたかった。

裕はありがとうと言い、メールは終わった。

2人で会う日まで挨拶程度のメールは来ていた。

私もそれには返信していた。

メールだと穏やかな裕。

でももう本来の姿を知ってしまった。

ここから愛が戻る事はもうない。

No.174

休みを合わせ最後の日となる日を迎えた。

待ち合わせはいつもの24時間営業のスーパー。

裕は既に着いていた。

何やら書き物をしているようだった。

私が着くと車から降りてきた。

「おはよう」

優しく挨拶をしてくれた。

暗くならないように極力明るく話すようにした。

「おはよ。今日車よく見たら傷だらけだったー。」

裕は自分の車から磨き用のセットを取り出し傷を磨いてくれた。

「最後のご奉仕笑」

冗談まじりに言う。

最後じゃないよ。。。。

その言葉を待っているかのような言い方だった。

磨き終わると私は裕の車に乗った。

「これ、見て。」

裕から見せられた手帳には私の誕生日が記されてあった。

何を言って欲しいのか解らない。。

それに私が来た時に書いていたのが見えていた。

前から記してあった訳ではなく、今ここで書いた物。

今日が最後の日なのに何故私の誕生日を書いていたのだろう。

言葉が見つからず、苦笑いしか出来なかった。

こんなに派手に書いてあるのに、蜜の事こんなに思ってるのに本当に最後なの?

とでも言いたいのだろうか。

最後は笑顔でってお互い決めたはず。

最後の日は、今日。

その現実は変わらない。

No.175

車の中で話をする。

「この車も無駄になっちゃうなぁ。。」

出会った当初は少し小さめの車だった。
私や子供達とも接するうちに家族を意識し車を買い替えた裕。
買い替える事には私は反対していた。早まらなくても、一緒になってからでも遅くはない。そう伝えた。

全てを受け入れる事に抵抗があった。
全てを信用しきれないでいた。
常に別れと隣り合わせのような気がしていた。

でもそんな事は伝える事は出来なかった。

そして、裕は次の日、車を契約してきてしまった。

もう、離れられない。。。

そんな不安が私を襲っていた。

別れをきちんと切り出せなかったのは車のせいもあるのかもしれない。

私達の為に買い替えた車。

別れを決意してもその想いが邪魔をした。

案の定、最後の日も言われた。

「ごめんね」

そう言う事しか出来なかった。

No.176

私達はいつもの、デートコースと同じく朝のカフェに行った。
これで最後の2人のコーヒー。

裕から出る言葉は別れを意識している事ばかりだった。

「行ってみたいとこがあってさ」

「へぇーどこ?」

「あっ。。もう今日でおしまいなんだっけ」

ワザとらしく付け足した。

その言葉を聞く度にイラっとする。

最後の最後まで私だけを見てくれなかったクセに。。

もう遅い。

「蜜は頑張り過ぎちゃうから心配だなぁ。俺がいなくて本当に大丈夫?笑」

ええ、大丈夫ですとも。

もう、寝不足からも元カノからも解放されたいわ。

「大丈夫じゃなくても大丈夫にできるようになる。」

こう答えた。

思わせぶりな言葉で彼の答えを待つ。

「無理して別れなくてもいいんじゃないの?俺は蜜の支えになっていきたいよ。これからも」

いつもの喧嘩後の反応だった。

私のたった一言で裕は私が本当は別れたくないと感じとったようだった。

今日一日、裕の感情に付き合ってあげる。

別れは現実。

だけど今までどんなに私が裕のはっきりしない行動で悲しんできたか。
裕の感情に合わせてあげる。

そして。

最後は突き落としてあげるから。

No.178

>> 177 ママちゃんさん(^-^)レスありがとうございます!
批判的なレス頂いたのは初めてなのでドキドキしています。
本当の話かは最初から読んで頂ければわかるかと思いますが、きっとママちゃんさんが読んだらかなり気分を害されるかと思います^^;

子供の事はあえてあまり書かないようにしています。
母親としてではなく、この女が出会った男に対して感じた女の心を特に出したいので。。。

ママちゃんさんの感情は当然の事です^^;
そう思う方がほとんどだと思います。

そういったご意見が頂けてとても良かったです!

少しでも読んで頂いて本当にありがとうございました!

これから読むには更にママちゃんさんが気分を害されてしまうかと思いますが(・_・;

貴重な感想、心に重く受け止めさせて頂きます!


No.180

>> 179 ママちゃんさん(^-^)

色んな思いがありますね。。

悲しくさせてしまってゴメンナサイ。

でも私はどうしても完結したいので書き続けます。。

少しでも読んで頂いて本当にありがとうございました(^-^)

No.182

>> 181 匿名さん(^-^)
レスありがとうございます(^∇^)
とても嬉しいお言葉頂きまして(つД`)ノ

感想スレについては色々思ってはいたのですが。。
立てるほどでもないかなとか。
でも、スムーズに読んで頂くにはどうかなとか。

感想スレたてると、そっちが気になってしまいそうで
^^;

でもそういったご意見頂けましたので検討してみますね!

本当にありがとうございます(^∇^)!!

No.184

>> 183 名無しさん(^-^)

レスありがとうございます!

あぁ。。。

ほんとありがとうございます(;_;)

No.186

早めに店を出て、向かった先はディスカウントストア。

よく2人で行った店だった。

いつものように手を繋ごうとする裕。
私もいつものように繋ごうとした。

「あ、もう別れるのに繋ぐのっておかしいか」

何も言わず私は手を繋いだ。

ホッとする裕の顔。

「あ、この香り。。。」

私は香りが好きだった。日常の香りで記憶を残していた。

その香りは出会った頃裕が車の中で使っていた香り。

香りで記憶が蘇る。

裕の事を愛していた頃。

「これ、初めの頃車の中で使っていたよね。何だか思い出すな。もうこの香りも嗅げなくなっちゃうのかなぁ」

冗談まじりに裕に言った。

「またこの芳香剤使って蜜の気持ち取り戻そうかな」

裕も冗談まじりに言った。

記憶は蘇っても、気持ちまでは復活しない。

心でそう思いながらも、

「そんな事言ったら忘れられなくなっちゃうから 笑」

と心にもない事を言って裕を喜ばせた。

No.187

>> 185 最初からずっと読ませてもらっています。 感想が入ると読みづらいと思ってましたが蜜サンを応援している者もいることをわかっていただきたくてレス… 匿名185さん(^∇^)
嬉しいレスありがとうございます!

読みにくいのは少し前にもご指摘頂きました( ;´Д`)
ごめんなさい( ;´Д`)
そしてフォローのお言葉もありがとうございます!

感想スレ。。少し検討してみます。

少しでも読みやすいように、話の中に入り込んでる頂けるように。。

必ず完結しますので今後ともよろしくお願いします(^-^)!

No.188

ゆっくりと歩き店内をまわった。

交わす言葉は少ない。

しばらく歩き私達は店を出て移動した。

「どこいく?」

「一つ行きたい所があるんだ」

裕は行きたい所があるらしい。いいよと裕に任せた。

着いた先は公園。

初めて来たのはもう5年前。

この時初めて裕は私の写真を撮ってくれた。

子供同士も初めて会わせた。
まだ小さかった子供は今、その時の記憶はない。

休みを合わせて来た時はシートに二人で座りのんびり過ごした。

もう二度と二人でここへ来る事はない。

「なつかしいなあ、あの頃がね」

「そうだね」

暖かかった。

心も和んだ。

私は裕に思い切って聞いた。

今なら・・どんな答えも受け入れられる。

自分の気持ちがもうブレないからこそ。。。

最後にきちんと聞きたい。

元彼女とのこと。

奥さんのこと。

私の存在が何だったかのかと言うこと。。。

No.189

「裕にとって元彼女って何?」

裕は冷静に答えた。

「上司、嫌われたら仕事がやりにくくなる。それに今は違う場所だから会う事もない。」

「前も聞いたかもしれないけど、もう一度聞かせて。どうして私の誕生日にホテルに行ったの?」

聞かない方が幸せなのかもしれない。でも一生消えないトラウマなら本当の気持ちを知っていた方がいい。

「聞いてどうするの?俺が何を言っても蜜の気持ちは変わらないんでしょ?何を言ってももう信用もしてくれないんでしょ?」

それが答えなの。。?

私は沈黙した。

「蜜が俺の事を必要としているのか解らなかった。夜も会いたいと言ってくれない。一緒にお風呂に入れる事も少なくて・・。ただ、背中を流してほしいだけだった。でも蜜は子供が起きるからって家でなかなか一緒にお風呂に入る事も出来ない。そんな事が重なって、ユキに彼氏の事で相談があると前から言われてて、寂しさに負けて誘った。」

裕は元彼女の事をユキと言った。

離婚してから再会した、スーパーの駐車場の車の中で何度も言われた。

{ユキ}

間違える度慌てていた。

その時から度々耳にしたユキ。

段々とその名前は言わなくなり、元カノと言ったり名字で言ったりしていた。

今、久しぶりに聞いた。

ユキ。

今、自然と出ていたこの名前。

ああ・・裕は裕の意思でユキと言わなくなったのではなく、私が嫌な思いをしないように無理してユキと呼ばなかったんだ。

裕に気を使わせていたんだ。

名前を言わなくなった事、心の中で少し喜んでいた。

その感情を今、全部否定する。

「で、何したの?」

冷静に聞いた。

「確かにセックスした。でも俺は立たなくてイク事もなかった。好きとか嫌いとかそんな感情もない。蜜に対しては本当に罪悪感を感じていた。」

確か・・セックスはしていないと言っていたはず。

もう、どうでもいいけど。

イク事がなければ許されるのか。
イク事が全てなのか。


体で繋がりユキの心を惑わす裕。

裕がユキに私の事をどういっていたのか解らない。

でもこれは、後に全てがはっきりする。

ユキと私の不思議な繋がりで。




No.190

「裕は私とのセックスだけじゃ物足りなかったの?」

率直に聞いた。

私はどんなセックスも抵抗がなく、殆ど裕の要望に応えていたつもりだった。

恥ずかしい姿を写真に撮り裕のブログにアップする事も否定しなかった。

見てもらう事で快感を味わう裕。

「そんな事ない。蜜とのセックスは本当に満足するよ。でも、ユキは胸が大きくて・・全体的にボリュームはあるけど。」

ああ、おっぱいですか。

裕にはもう少しぽっちゃりしてた方がかわいいと言い続けられていた。

私は太る事が嫌だった。

ずっと抱えてきたコンプレックス。ようやく自分を受け入れられる位の体型に近づいて来た。

こればかりは裕の言葉を素直に受け止める事が出来なかった。

その結果浮気をされた。

胸は小さいより大きいのがいいのは解っている。

でも裕は大きすぎるのは嫌だ、蜜のがちょうどいいと良く言っていた。

私を喜ばすだけ喜ばせ、自分は理想の体の相手とセックス。

ああ・・バカらしい。



No.191

裕があまりにも正直すぎて思わず笑っていた。

「あー。私大きいおっぱいに負けたのね 笑」

冗談ぽく言った。

「蜜はどんどん痩せていく。あまり食べないし痩せ方も病的な感じで心配なんだよ。仕事変わって大変そうだしここのとこ一気に痩せていってるし。。いつも頑張りすぎちゃっててそんなに無理しなくてもいいのに・・」

心配している事をアピールしてフォローしている。
頑張り過ぎないで、無理しないでと優しい言葉を選んでいる。

もう裕の優しいフリをしている言葉は届かないよ。

もう届いてるフリしなくていいんだ。

無理しないでって言葉に複雑な思いを抱かなくてもいいんだ。

もう、誰にも言わせない。

「無理しないでね」

私は無理してなんかいない。私のやるべき事をやってるだけ。

少し、心が、楽になった。


No.192

やっと本当の裕の想いが解った気がする。

時間は過ぎ、車に戻った。

「他にどこか行きたい所ある?」

「もう少し話がしたいかな」

私は答えた。

裕は車を走らせた。

「最後に・・蜜を抱きたい」

きっと、こう言われると思っていた。

私は何も答えなかった。肯定も否定もしない。

「いいかな」

私は何も答えない。

「あ、俺、金ないんだ」

かなり引いた。今までにない位。

裕は私も裕とセックスしたいと思っているに違いない。

だからお金がないと言えば私が出すとでも言うと思っていたと思う。

今までホテル代は私が払う事も度々あった。

夜、いつも私の所へ通ってくれるガソリン代と言う名目で。

今、私がお金を出す意味は全くない。

出すつもりもない。

私は苦笑いした。

「戻ろう、話ならどこだって出来る」

私達は待ち合わせた駐車場へ向かった。

着くとエンジンを止め裕は座席を倒した。

妙な静けさ。

本当はもっと早くこうやって話すべきだったのかもしれない。

「・・・本当に今日で終わりでいいの?」

私に問いかける。

「もう、決めた事だから」

もう今までの私とは違う。

迷わない気持ちを裕にしっかりと示す。

「最後に・・舐めて」

裕はズボンのベルトを外し始めた。

No.193

私はうつむいたまま何も言わなかった。

裕はベルトを外しズボンを下ろした。

何も言わない私の頭を強引にモノに近づけた。

私は・・・

裕のモノを舐めた。

優しさを感じさせない愛情のない口での行為。

私はこの行為で失うものはない。

だから舐めた。

ひとつのプレイとして。

裕は私の頭を押し奥まで咥えさせた。

ほんの数分、私が舐めている間に裕はいびきをかき始めた。

それに気づいた私はモノから口を離し裕の顔を眺めていた。

いつもこうなるのが嫌だった。

嫌で嫌でたまらなかった。

裕が寝てしまわないか毎回悩むのが本当に嫌だった。

それでも私はその事を口にしなかった。

見て見ぬふりをしていた。

それも今日で限界。もう、こんな感情二度と感じたくない!

「もう、いい加減にして!!!!」

私の感情は爆発した。

「私がどんな気持ちでいるかわかってんの?!咥えさせるだけさせといて何いびきかいて寝てんだよ?!しかもこんな日まで???!!!裕にとって今日っていつもと変わらない日なんだね!私は最後だから気を使っていたつもりなんだけどね!」

ごめん・・・と裕は小さい声で謝った。

「もう話す事ないなら帰るわ。じゃあ元気でね」

帰る支度をして車から降りようとした。

裕は思い切り私の手を引っ張り抱きしめた。

「ごめんね・・蜜・・いかないで・・」

子供のお迎えの時間が迫っていた。

「もう行かなきゃ」

「蜜、やっぱりもう一度蜜の事抱きたい。後2時間俺に時間をくれ。」

後2時間・・。

ラブホに行って2時間のうちにセックスをしたいとでも言っているのか。

時間は沢山あった。

正直ラブホに行く時間もあった。

でも裕はお金をケチり最後のチャンスを逃した。

大切な感情よりも数千円のお金を選んだ。

「無理だから」

きっぱりと断った。

「俺は別れたくない!蜜をこのまま行かせない!」

裕は子供のようだった。

駄々をこねる子供のよう。

「お願い、もう一度だけチャンスがほしい。もう二度と他の女に手は出さない。蜜の事絶対に悲しませないから、お願い」

自分の想いを私にぶつけてくる。

初めからこうやって言ってくれれば良かったのに。

{これでいいの?}

自分が迷う時はいつも私に判断をゆだねる。

{蜜はこれがいいんだろ}

自分勝手な感情を私に押し付ける。

思えば裕は自分の感情は私にあまりぶつけてくれなかった。

あ・・・・

感情をぶつけない事・・・

これって私も同じ事してる・・。



No.195

>> 194 名無し194さん(^-^)
レスありがとうございます!

精神的な病気は目に見えない物だからこそ本人しか辛さはわかりませんよね。

この小説の1にも精神的病気を患っている時の状況が書いてあります。

人それぞれ、病気の辛さは違いますが出口の見えない不安は計り知れないと思います。

まぁ。。この主人公は頑固と言うか、素直じゃないと言うか。。^^;

こんな題名の小説を書いておきながら何なんですが、どうかご無理をなさらずに。。

読むには辛い内容ではなかったですか?
それにもかかわらずご意見本当にありがとうございました!

No.196

蜜より(^-^)

読んで頂いて本当にありがとうございます(^-^)!!

なるべく中身に入り込んで頂けるよう、ご意見やご感想も大切にできるよう、感想スレを立たせて頂きました^^;

内容が内容なので色々と突っ込みたくなる事もあるかと思います(・_・;

もし、何かありましたら感想スレへよろしくお願い致します^^;

No.197

裕は必死だった。

私はきつく抱きしめられたままどうする事も出来なかった。

「蜜。。結婚しよう」

何を血迷ったか裕の口から出た言葉は

結婚。

あの時。。。

最大のきっかけの時。。。

妊娠した時。。。

言ってくれなかった。。。

結婚。

それを今、別れを決意している時に裕は口にした。

「蜜、お願い。約束する、絶対蜜を悲しませない。もう一度だけチャンスをくれ!蜜と別れたくない!結婚しよう!必ず幸せにするから!」

裕は同じ言葉を繰り返した。

抱きしめられている手から悲しみが伝わってくる。

「もう、本当に行かなきゃ。」

「嫌だ!蜜が考えなおしてくれるまで離さない!」

裕はもう正常ではなかった。

私は抱きしめられている腕に手をまわし裕を抱きしめた。

「ここで一度終わりにしよう」

迷いはない。

「終わりにしたらもう次はない!」

「そんなのわからないよ。今回だって一度きちんとサヨナラをしてまた出会った。それでお互い好きになった。どこでどうなるかわからない。」

裕は全く納得していない。

「このまま付き合っていても、裕は同じ事を繰り返す。私もどんどん嫉妬深い嫌な女になっていく。とりあえず一度リセットしよう。もし、それでも、やっぱりお互いが必要だと思えば、必然的にまた会えるはずだから。」

私は。。平凡な幸せがほしいだけ。
子供にパパと言う存在を感じてほしいだけ。

嫉妬、借金、ギャンブル、不倫、浮気。

そんなトラブルなんてもううんざり。

「考えなおしてくれるまで俺は蜜を離さない!」

こんなに必死になってくれた事なかった。

失うとわかって初めて出た感情なのかもしれない。

私は裕にキスをした。

長いようで短いキス。

唇と唇を軽く合わせるだけ。

言葉ではもう伝わらない。

本当は愛を確認するキスだけど、最後のお別れのキス。

本当に大切な物は何なのか。

誰に必要とされたいのか。

ちゃんと自分を見つめなおしてね。

あなたを好きになった事、後悔していない。

私も、前に進むから。

唇から、そう、伝えた。



No.198

子供のお迎えの時間は本当にもうギリギリだった。

私は裕から離れ荷物を手にした。

裕が言う。

「何で好きじゃないのにキスするの」

「したかったから。」

そう答えた。

「もう、何を言っても駄目なんだろ。行けよ!」

悲しみから怒りに変わっていた。

裕の中では、また仲直り出来ると思っていた。
別れと言うのは言葉だけだと思っていた。

私の気持ちが本気だとわかると酷く悲しみ取り乱し、そしてそれは怒りに変わった。

私は車をおりた。

勢いよく走り出す裕の車。

怒りが、その運転の荒さで伝わった。

私はずっと執着していた物を手放した。

手放さないと新しい物は入ってこない。

本当に手放す事の大変さを知った気がする。

私の心に、もう裕はいない。

No.199

別れたら、きちんと心が離れたらその事を伝えようと思っていた人が私にはいた。

ユキ。

裕の元彼女はずっと私の中で引っかかっていた。

ユキのアドレスは嫌でも覚えている。

私はユキに長文のメールを送った。

《突然のメールで申し訳ありません。》

丁寧な文を使いながらも隠さず私の心情を表した。

裕と別れた事、誕生日にホテルに行かれて悔しかった事、あなたが裕に送ったメールで苦しんだ事。

そして、そばにいてあげるのはあなたです。と送った。

返事は全く期待していなかった。ユキがどう思っても私はどうしてもユキの存在が悔しかった事を本人に伝えたかった。

最後の最後、自分の気持ちに確信が持てた時にユキに伝えたかった。

もう、戻らない為にも、ユキに伝える事で自分の気持ちをブレさせたくなかった。

1時間もたたないうちに、ユキから返事が来た。

《まだお付き合いは続いていたんですか?もうとっくに別れていると聞いていました。》

あぁ。。。やられたな。。

No.200

私が妊娠した時に関係が悪くなり、その後も修復出来ず別れたと聞いていたと教えられた。

春頃、裕の地区の運動会に行ったらしい。

私は呼ばれる事はなかった。

私は思いを綴っていくうちに、ユキの女の切ない感情を受け入れていた。
あんなに憎かったユキ。
直接話せばユキも私と同じような不信感を持っている事に気付いた。

返事は来ないと思っていたメール。

しかし、話は恋愛観や子供の事までするようになった。

子供の為に、子供を大切にしているお母さん。

ユキへ対する印象は変わっていった。

裕が、どれだけ自分勝手に相手を振り回していたのか話す度に怒りが強まる。

ユキとのメールはこれをきっかけに続けられた。

裕を手放した私は新たな誘いを二人から受けていた。

手放した事で新たな人との出会い。

ドラマのようなあり得ない出会い。

もう一つは、慣れない会社での異動先で同じ部署になった会社の人。

一から恋愛をするのはもう抵抗があった。

でも、まともに、楽しく、ただ普通に話せる事が嬉しかった。
会話のキャッチボールが楽しかった。

私は笑顔を取り戻していった。

No.201

ドラマのような出会いは良く行く車用品店だった。
オイル交換からタイヤ交換など車に無知の私は近くの店に良く行き相談していた。

大体仕事の帰り。

制服のまま行く事が多かった。

その日も車検の相談に行き見積もりなどしてもらう事になった。

店員は若い男の子。
普通にかっこいい男の子で一生懸命説明してくれた。

「個人的には買い替えもアリだと思いますよ!売り上げにならないけど 笑」

そんな事を言われ値段や車種の話をしていた。

「お子さんかわいいですね!」

やんちゃな子供の事を気にしてくれていた。

「もし買い替えるなら、知り合いが働いてるとこがあるので話できますから」

親身になってくれていると思った。

「でもねぇ。。うちは四人しかいないから大きいの買っても維持が大変だし、何せお金かかるしね」

そうなんですか?とシングルだと言う事に気づいたようだった。

仕事も自転車で行ける距離だし、前より車使わないしと話をすると

「あのお店辞めたんですか?」

と言って来た。

あれ?私の事を知っている。。

「何度かお話しているんですよ。覚えてないですよね?」

と店員。

確か一度話しかけられた事は覚えていた。前の仕事は結構有名な店だった為、制服のロゴを見て話しかけてきた。

それ以外は全く覚えていない。

その時の印象もない。

その後、店内で見積書を出してもらい、住所や電話番号を書く。

「知り合いに連絡とれたら携帯に連絡してもよろしいですか?」

何の疑いもなく承諾した。

その夜、携帯にメールが来た。

No.202

《突然のメール失礼致します。本日はご来店有り難うございました!知り合いと連絡とれたので試乗も含めご来店お待ちしておりますとの事です。》

丁寧な営業文だった。

《有り難うございます!知識がないので色々アドバイスして頂いて感謝しています。》

そんな会話をした。

日にちやら車の事やらメールをし続けていた。

《ところで、私の事良く覚えていましたね》

接客業を長い間していた私にとって、常連客の顔を覚えるのは大切な事だった。
この店員も常連客を覚えるのが得意なのだろう。
接客の仕事を頑張っているように見えた。

私は何度も通っていた事を覚えていてくれて嬉しかった事と前の職まで知っていた事に驚いていてこんなメールをした。

《覚えてますよ!何度も話しかけてますもん!それに。。。実は。。。》

《はい?どうかしましたか?》

《ずっと、あなたの事気になっていたんです。最近来ないなと思っていたのですが転職したんですね。でも、今日、来てくれて、やっと会えた!!って嬉しくて!自分からあなたの担当を引き受けたんです!》

えーーーーー?!!!!

かなり驚いた。
何て返信すればいいんだろう。。
いや、恋愛とかそんなものじゃなくて、ただ何かわからない事を良く聞くから印象が強かったんだ。

《そ、そうなんですか?!でも今日見た通り私には三人子供がいてしかもシングルなんですよ。年もあなたといくつ離れてるか 笑。私話すの好きなのでおしゃべりだから印象に残ってたんですかね。》

《お子さんかわいいですね!また是非連れて来て下さい!話が好きなのはとても良くわかりました。さすが接客業って感じです!年齢とかそんなの関係なくないですか?普段のあなたを見てイイなって思ったのだから》

何か。。この展開は。。何。

《よろしければ仲良くなりたいです。蜜ちゃんって呼んでもいいですか?!》

今時の若者はこんなにも早い展開を不自然だと思わないのだろうか。

聞くと彼は23歳。私より何歳年下なんだか。

わーいわーい!とお花が付いて来そうなメールを見ながら対応に困っていた。

そこへ、裕からのメール。

《時計返して下さい》

お揃いで裕と付けていた時計。裕からもらった物だった。
まあ、新しい彼女にでも渡したいのか。。
それ位にしか思わなかった。

久しぶりのメールは私のつかぬまの安定を乱した。

返すのは構わない。でももう会いたくないし返しようがない。

《これから行く。》

そのメールを最後に返信は途切れた。

どうしようもない恐怖を感じた。


No.203

このままでは終わらないとは思っていた。

私は裕からメールが来た事を会社の人に伝えた。

会社の人は細井さん。もう働いて7年目。私が異動した場所にいて、何も解らない私に優しくしてくれた。

入った時から何ヶ月経っても会社に慣れなかった私。
お金の為にと愚痴る事なく働いていた。
覚えが悪く落ちこぼれの私に一つ一つ優しく教えてくれた。

「この仕事、花嫁修業になりますね」

初めてそんな冗談を交えて話かけられた時思わず言ってしまった。

「もう、花嫁にはなりませんよ。こりごりです」

そうですね〜と軽くかわす事も出来たはず。
でも、何故か細井さんには本音で返事をしてしまった。

この言葉から離婚していると察知したらしい。

そんな話から少しづつ話をするようになった。

裕と別れてから細井さんに裕の話もするようになった。

男の立場から意見をもらえる事が出来てすごく参考になった。

この人は私の話をきちんと聞いてくれる。

親身になってもらえた記憶がない私にとって、良き相談相手になっていた。


《いつかは話をしなければならないと思っていました。今日、その日のようです。きちんと話をつけてきます。》

細井さんにメールをすると、すぐに返事をしてくれた。

《大丈夫?!心配だよ。どうなったか落ち着いたら教えてね!》

23歳クンへの返事も忘れ、私は携帯を置いた。

時計さえ返せばいい。

それ以外に何も話はない。

呼吸が荒くなる。

一生のうちの数分だけ!
もう、最後にしたい。。。
しっかりして!

自分に言い聞かせた。

裕の車が駐車場に入ってくるのが見えた。

怖くてたまらない。。

No.204

家には入れる訳にはいかない。

玄関の前で待機をした。

裕がゆっくりと近づいて来る。

足音が止まった。。

私は深呼吸し玄関の戸を開けた。

生気のないない裕の顔。

裕は車に向かって歩き出した。

私の足はなかなか前に進んでくれない。

「話、しないの?」

無表情で私に言う。

進まなきゃいけない。
進まないと何も変わらない。

また、深呼吸をし、裕についていった。

後部座席のドアを開け裕は中に入り投げやりな感じで座った。

沈黙。。。

私は時計を後部座席へと置いた。

「もう、返したから。じゃあ。」

家に向かい小走りに戻りかけた時、裕は勢いよく私の元へ走り腕を掴んだ。

「舐めた真似してんじゃねーぞ?!」

私は車へ戻され無理矢理後部座席へ押し込まれた。

No.205

>> 204 裕が何故切れているのかわからない。

時計は返した、もう話す事もない。

そんな私の態度に怒りを感じているのだろうか。

そして裕は私の上に覆い被さり無理矢理キスして来ようとした。

とっさに手で口を隠した。

愛のないキスは嫌い。

仕事でもキスは極端に少なかった。

しかし裕は私の手を無理矢理口から離し唇を押し付けてきた。

無理矢理入れようとする舌。

思わず顔を背ける。

「やめてっ!!!!」

もう裕に私の声は届いていなかった。

No.206

裕の手が私の服の下に無理矢理入って来る。

激しく胸を揉まれた。

その手は股に移動し下着の中へ突っ込まれた。

「こうされるの好きなんだろ?!」

その行動に優しさなんてない。

「中で出してやろうか!子供でも作ればもう逃げらんないだろ!まあ・・俺は逃げられるけどな!」

最低の発言だった。

もう、話す価値もない。

裕はそのまま私の中へ挿入した・・・。
拒否することも、受け入れる事も出来ない。

最後のセックスは最低のセックスだ。

頭の中に浮かべていたのは細井さんの姿だった。

話をするだけ、きちんと終わりにする為だと言っていた。
こんな事をしたなんて言えない。

何だか、細井さんを裏切っているような、やり切れない気持ちでいっぱいだった。

でも、どうする事も出来ない。
私が少し我慢すればいい。

裕の発言は最低だけど、本気で中出しなんてするつもりがないのはわかっていた。

そんな事を言って私をいじめている快感。
自分はSだと主張する行為。
そんな自分を演じて楽しんでいるだけのようだった。

表情も変えず裕のされるがままにしていた。

「やっぱり人形相手なんて気持ちよくもないわ」

そう言いさっさと服を着た。

もう、解放して・・
私を自由にして・・




No.207

裕は車を降りタバコを吸いはじめた。

私は服を元通りにした後外に出た。

裕は私の返した時計を手に取り外に投げた。

「こんな物、いらねーよ!」

はぁ?何しに来たのよ?
内心そのパフォーマンスに苛立った。

「蜜が持ってない時計なんて意味ない」

元々は一万ちょっとの物、それを私が持ってるのがもったいないと思って取り返しに来たはず。
お揃いの時計を持ってるのが辛くてじゃなく、一万ちょっとの時計を持ってる事自体がもったいないと思っていただけだったと思う。

返してと言われた時、初めて私は借りてた事に気づかされた。
くれたんじゃなかったのね。

何かセコイ人だ。

そう思った。

私は時計を拾い裕に渡した。

「次の大切な人に渡してあげなよ」

裕はまた投げ捨て、いらねえ!と言った。

「じゃあ、私、行くから」

そう言い残し家へ向かった。

裕は私の手を掴み車まで引き戻し車のボンネットに私の体を叩きつけた。

そして髪の毛を掴み振り回された。

「何で俺がこんなに好きなのにわかってくれないんだよ!!」

愛情は暴力に変わった。

私は涙した。

「何で。。こんな事するの。。」

裕は私から手を離した。

私は走って部屋へ戻った。

怖くて怖くて仕方なかった。

裕は勢い良く車を走らせて行った。

行ったのを確認し、外に出て時計を探した。

やはりない。

いらねえ!とかっこよく投げた時計はしっかり持って帰っていた。

大げさなパフォーマンスをしたにもかかわらず、しっかり持って帰っていった時計は感情で取り戻したいと思った訳ではない事がここでわかった。

No.209

>> 208 さゆきさん(^-^)
1でレス頂けましたよね(^∇^)!
読んで頂けていてホントに光栄です(^-^)

よろしければ感想ご意見スレたてましたので気になる事があればそちらでもお待ちしております(^-^)

長々と続いていますが、読んで頂ける方が1人でもいる限り、イヤイヤ、いなくなってしまっても、書き終える事が私のケジメなので続けて行こうと思っていますので、また長々とお付き合いお願い致します!

ほんと読んで頂けて嬉しいです!!
ありがとうございます(^∇^)!

No.210

部屋に戻り細井さんにメールをする。

《終わりました》

それしか送る事は出来なかった。

返信はすぐに来た。

《お疲れ様。大丈夫?》

大丈夫ではない。でもどう返信していいかわからない。心配はかけたくないし自分の事は自分で片付けなければならない。

返信する事は出来なかった。

《心配してたよ。今日はゆっくり休んでね》

細井さんは遅い時間にもかかわらず起きて待っていてくれた。

これで終わったとは思えない。
裕がここで終わるとは思えない。

終わったと言う報告以外は送る事が出来ないまま次の日を迎えた。

No.211

朝、23歳クンからメールがあった。

《おはようございます。昨日メール途切れちゃいましたね。今日も頑張って下さいね!また夜メールしてもいいですか?》

《ごめんなさい。またメールしますね》

一言メールを送った。

裕とあんな状態にならず綺麗に切れていればこんな複雑な気持ちにはならず楽しくメールが出来ていたのかもしれない。

23歳クンのメールは新鮮だった。

細井さんとの関わりも新鮮だった。

ただ、普通の話が出来る事が嬉しかった。

深入りすればそれだけ悩みも多くなる。
この二人とは深入りはしたくない。

そう感じた。

休みたい感情をおさえ仕事に行くと、細井さんは1人で仕事をしていた。

「おはようございます」

笑顔で言った。

細井さんはすぐにそばに来て

「大丈夫?!」

と心配そうに言ってくれた。

頷く事しか出来ない。

その優しさに抱きしめて欲しいくらいの感情が溢れ出ていた。

でも、それは出来ない。

一から話すには私は重過ぎる。

優しい細井さんに甘えたらいけない。

口を開けば涙が溢れそう。

何も言わずその場を去り仕事についた。

No.212

仕事は上の空だった。

早く終わらないかな。。

朝からそんな事ばかり考えていた。

黙々と仕事をする細井さんを周りにバレないように目で追っていた。
話がしたい。。

細井さんは心から優しかった。

そんな細井さんも大きな悩みを抱えていた。

細井さんには家の長男と同じ学年の子がいる。元奥さんと三人で一緒に暮らしている。
少し前に離婚していた。
でも、持家があり子供もまだ小学生の為同じ家に住み、お互い交替で子供の世話をしていた。
どちらも出て行くことが出来ず、離婚していても結婚生活と変わらない生活をしていた。

もう一度、元嫁の気持ちを取り戻したい。

細井さんは私が離婚している事を知った後、気持ちを打ち明けてくれた。

同じ屋根の下に暮らして11年。
記念日には必ずプレゼントを送り気持ちを伝えてきた細井さんの一途な想いを応援したかった。

こんな優しい、一途な人と結婚していた奥さんが羨ましかった。

細井さんには幸せになって欲しい。

自分の事でも大変なのに私の事に巻き込みたくない。

仕事が終わり外に出ると雨が降っていた。

少し前に細井さんが傘をささず歩いていた。

私は小走りに近寄り自分の傘に入れた。

「風邪ひいちゃいますよ」

びっくりした細井さんは笑顔でありがとうと言ってくれた。

この人の笑顔本当に素敵だ。

心が、キュンとしていた。

No.213

車の前まで傘をさしてあげ、立ち話をした。

「濡れるから少し入りなよ」

細井さんは車の中へ入れてくれた。

手、冷えちゃったねと言いながら私の手を握り暖めてくれた。

その手は冷たい。

私よりも冷たいかもしれない。

でも、その心の暖かさが手を通して伝わった。

私は昨日の事を話した。

言えない事は言わない。
聞かせたくない事は口にしなかった。

「時計、なくなっちゃった」

大切な人と同じ時間を刻んでいた時計をなくし、本当に終わったのだと伝えた。
それは最悪な終わり方だったとも伝えた。

「そんな大きな意味のある時計だなんて知らなかったよ。そんなものなくなってよかったじゃない。本当に頑張ったね」

そう言いながら頭をなでてくれた。

暖かくなった手は私の頭を優しく包み込んでくれた。

「何でそんな奴の事好きだったの?」

「さりげなく手を繋げる所とか、こうやって腕を組みながら歩けたり。。」

そう言いながら細井さんの腕に私の腕を絡ませた。
その行動に驚きもせず、私の話をとてもよく聞いてくれた。

私は少しでも近づけた事が嬉しかった。

「てか、そんなの当たり前じゃね?」

見た目はクールで手も繋がなそうな人。
好きだよなんて言ってくれなさそうな人。
なのに、手を繋ぐのすごく好きと言った。

「私も好きなんです!愛情繋ぎ知ってますか?」

そう言いながらまた細井さんの手をとり、指を絡ませる愛情繋ぎの実演をした。

手を、繋げた。。

胸がキュンとなる。

手を繋いだだけで胸のハートがいっぱいになる。

中学生の頃の片思いの気持ちを思い出した。

現実のドロドロとした関係を一瞬だけ忘れさせてくれた。


No.214

子供のお迎えの時間が迫ってきた。

聞いてくれてありがとうと言い車から降りた。

現実に戻る。

今日の夜は何もありませんように。。

ここの所状況が目まぐるしく変化していて心が乱れていた。
何が正しいのかよくらわからなくなっていた。

その夜、23歳クンからメールが来た。

《車検の見積もりが出来ました!いつ頃次来ますか?》

仲良くなりたいと言う23歳クンに対して敬語も使わなくていいしあだ名で呼んでいいよと言った。仲良くなれば私にもメリットがあると思っていた。

《じゃあ敬語使わない。お店だとゆっくり話せないから蜜ちゃんちいきたい。どのへん?》

車検の話をしに来る事は嫌ではなかった。
少しでも安くしてくれると言った23歳クンの気持ちは嬉しかった。
しかし家に来るのは抵抗がある。

《イヤイヤ、家汚いから。近いうちにお店行くよ》

《だいじょーぶ。蜜ちゃん大変。普段の生活みてみたい》

特徴のあるメールだった。
返事のしづらいメール。

《無理無理、それに遅くなっちゃうから、それにすっぴんは見せられないから笑》

そんな私の言葉は聞いちゃいない。

《うん。で、おうち大体どこ?住所わかるよ。すっぴんでも可愛い。自然な蜜ちゃんもみたい。》

断っても言い続けてくるだろう。
この、何と言うか、言い放つ文章。
とりあえず自分の気持ちは言う的な文章に私はのまれていた。

車検も近いしいいか。。。

私は23歳クンが家に来る事を許可した。

車検の見積もり書に住所や電話番号を書いている。住所を辿れば家に来れる。
断っても断っても結局来ちゃったと言う展開は嫌だった。

それに少しでも好意を持ってくれているなら悪い事はされないだろう。

そんな考えだった。

夜中の12時を過ぎ、 23歳クンは走り屋のような車で現れた。
さすが車好きと思わせる派手なステッカーが目立つ。

「来ちゃった」

「来ちゃったね 笑」

何とも言えない空気の中家の中へ案内した。

ダボダボのスウェットに帽子を目深に被り、一生関わらないであろうタイプの23歳クン。顔はかっこよかった。

2人でソファーに座り見積もり書を広げ日頃の事など交え話をした。

「蜜ちゃん彼氏いるの?」

あぁ。。面倒な質問。

「いたけど別れたよ。まだドロドロしてるけどね。リンちゃんはいるんでしょ?」

苗字の漢字の読み方を変えてリンと呼んだ。

「リンちゃんってなんだよ笑。女みたい。俺も少し前に別れたんだ。」

メールとは違いハッキリと話す口調にギャップを感じ可愛いかった。

「結構イケメンだから途切れないでしょー」

そんな冗談を言いながら、仕事に対しての話やお互い接客好きな話で盛り上がった。

一時間半程して遅いから帰りなと言いリンを見送ろうと立ち上がろうとした。

「ねぇ。。ぎゅーってしていい?」

急に上目遣いで甘えた口調になる。

は?

状況が読めない。






No.215

特にくっつく訳でもなく(当たり前)微妙な距離をとり話をしていた。
淡々と話す姿に外見ではわからない真面目さや、自分はこうありたいなどの気持ちを話してくれた。

こうやって話す事が出来るって幸せなこと。

相手の気持ちを聞いてそれに答え反応してくれる。
会話が成立しているあたり前な事が嬉しかった。

だからそのまま何事もなくバイバイをするつもりだった。

しかし突然のリンの言葉。

緊張気味に甘えたような口調でお願いされた。

「変な事言ってごめんね。ぎゅーってしたいだけなんだ。ずっとずっと気になってたから。」

その申し訳なさそうな言い方が妙に可愛いかった。

「う、うん。いいよ。」

私がそう言うとリンは私を抱きしめた。

抱きしめる腕がかすかに震えている。

こんな男の子もいるんだ。。

新鮮だった。

「やっと、抱きしめられた。。」

リンは耳元で囁いた。

No.216

想われる事の喜び。

こんな若い男の子に今、私は抱きしめられている。

ドキドキとかキュンとかは感じないものの、この年齢になってこんなにも年下の男の子からこんな事されるなんて思ってもいなかった。

震えている腕は次第に強く私を抱きしめた。

「ああ・・嬉しい。夢見てるみたい。」

リンは呟いた。

抱きしめるだけで喜んでくれる、そんなリンが可愛かった。

「ありがとネ」

私も小さな声でリンに言った。

リンの腕の力は抜け、私の顔を見つめた。

「な、何?」

嫌な予感がする。

私の言葉に反応する事なくリンの唇が私の唇に近づいて来る。

とっさに口を手で覆った。

「待って、落ち着こう!キスはダメでしょ!」

「どうして?何でダメ?」

何の為のキス?また、裕の時のようにキスを奪われてそこから恋が始まるの?

そんな訳ない。

「ダメなもんはダメ!ぎゅーってするだけって言ったでしょ?!」

「うん。でもチューしたい。」

「ダメダメダメダメダメ!!無理無理無理無理!!」

口を手で覆ったまま拒否し続けた。

「ダメなんて言わないで・・・」

リンのその寂しそうな口調に力を入れていた手を緩めてしまった。

そして私の頬を両手で優しく撫でた。

「お願い。俺の事嫌いにならないで。」

その言葉にどんな反応をしたらいいのか戸惑った。

私を見つめるリン。

そして・・・



リンの唇は私の唇に重なった。

No.217

愛情のないキス。

私は目を閉じる事も出来ず体は硬直していた。


ほんの少し前まで全く話した事のない他人だったリン。
なのに、たった数日でキスをしている。

こんな事になるなんて想像もしていなかった。

リンの感情は次第に高ぶっていった。

リンの手は・・私の胸に・・・。

「待って、待って、ほんと落ち着いて!どうしたの?もう、やめようよこんな事!」

「イヤ?」

「無理!」

リンの手を払い、きっぱりと嫌だと言う意思表示をした。

「ごめんね、ごめんね、嫌いになっちゃった?」

何なのこの子は?嫌いとか好きじゃなくて、大事なのは車検の金額なの!

心の中で突っ込みたくなった。


この時の私は細井さんの事が頭の中にあった。

今までに出会えなかった、この先も出会う事はないと思っていた、顔も性格も理想の男性。

でも・・

細井さんの事は好きになってはいけない。

一緒に住んでいる家族がいる。
形は離婚していても、やり直したいと思う相手がいる。


目の前にいる相手は私の事を気にしてくれている。

同時に二人の男が目の前に現れた。
裕への想いを断ち切ってから急に。

好きな人を想う事、愛する事、もう全てに疲れていた。

愛情ではない友情、男女問わず人と関われる事をただ楽しんでいたかった。

リンの行動は楽しむ域を超えていた。
細井さんへの想いは友情ではなくなりかけていた。

やっぱり、男と接すると言う事は不要な感情が付き物なんだ。

「私は嫌いにはならないよ。」

私はリンに微笑んだ。

No.218

「良かった・・」

私の色々な感情をリンは知らない。

「ねえ?なんでキスしたの?」

ストレートに聞いてみた。

「だってずっと気になってた人がそばにいるんだよ?好きな人を目の前にしたらキスしたいって思うじゃん。」

「最初からするつもりだったんだ?」

そういう訳じゃないと慌てている姿が何だかかわいい。

「あのねえ、私はリンちゃんより10以上年上なんだよ?もっと若い子周りに沢山いるでしょ?私なんて相手にしてたら彼女できないぞ。」

子供をなだめるような口調で言った。

「年なんて関係なくない?蜜ちゃんの事、年とかそんなの関係なく好きになったんだもん。蜜ちゃんは可愛いよ。話も上手いし人当りもいいし。俺は彼女いらない。何か俺ってすぐ飽きられちゃうんだよね。」

真面目な表情で話し始めた。

「俺って変なんだよね。友達からもよく言われる。言われた事とか言った事すぐ忘れちゃうしさ。友達にも呆れられてる。お前変な奴って。だから彼女が出来て色んな事求められても少し経つと忘れちゃう。そんで喧嘩したり。」

変な奴だとは感じていた。。。汗

「仕事してる姿からはそんな私生活想像もつかないよね。説明も上手いし丁寧だし、すごく話しやすいって思ったよ。」

「説明が長いって嫌がるお客さんもいるんだよね。だから丁寧すぎるのもダメかなあって思ったりしてる。でも蜜ちゃんは話す事が好きだってわかってたし、実際この前お店で話した時、蜜ちゃんと話すのすごく楽しくてすごく幸せだったんだ。」

リンはリンなりに色々な感情の中で生活している。

話を聞いていると芯はしっかりしているような感じがした。

「そう言ってくれてうれしいよ。私も元彼に散々悩まされてねえ・・。何せ私の誕生日に他の女とラブホにいっちゃうような人だったから。」

嫌な思い出、でももう過去の事。

「うわあ・・ありえねー・・・」

当たり前の反応が嬉しかった。

ありえない事をありえないと思ってくれる気持ちが嬉しかった。

「もう過去の話だけどね、向こうは今になって何だかんだ言ってくるけど、もう全て手遅れだからね」

ああ・・何だか気持ちが重たくなってしまった。

私の表情を見てリンはまた、私を抱きしめた。

私は、抵抗しなかった。



No.219

そのまま私は押し倒された。

「こんな事しちゃダメだよ」

リンはまた私にキスをした。

リンの手が、私の下半身を触り出す。

押さえられない感情が爆発しているようだった。

「嫌ならやめちゃう?」

もうこんなやりとりは飽きる程経験してきた。

好きでもない人とするこんなやりとりは快楽でも何でもない。

「舐めて・・嫌なら無理しなくていいから」

リンはズボンを下ろした。

さすが若いと思わせるリンのモノ。

愛情の感情を失った私にとって舐める行為は過去の私の感情を思い出させた。

愛がなくても、好きじゃなくても、

相手が求めるのなら

私は相手の感情に合わせる。

舐める事なんてたいした事じゃない。

「無理しなくてもいいよ」

久しぶりにこの言葉を聞いた。

しかもこんな状況で。

そんな言葉も、もう聞き飽きた。

私はリンのモノを咥えた。

No.220

「すごい、上手いね」

リンはそう言いながら息を荒くしていた。

リンのモノからは石鹸の香りがした。

その香りは準備の整った香り。
舐めてもらうための香り。
石鹸の香りは私にとって複雑な思いを抱かせる香りになっていた。

何の感情もなく、ただ目の前にあるモノを舐めるだけ。
何も難しい事はない。
咥える事も舐める事も感情さえ持たなければ簡単な事。

リンの手は私の下半身へ。
私の中へ入ってきた。

駄目といいながらも、気持ちいいと感じなくても、指は容赦無く私の中を掻き回す。

「あ。。。」

小さく声を出してしまった。

でもそれはただの癖。

「気持ちいいんでしょ。やめてほしくないならやめないでって言ってみな」

私は黙っていた。

「黙ってたらやめちゃうよ?ほら、ちゃんと言わなきゃ!」

そう言いながら激しく私の中を掻き回した。

リンは意外とSっ気があるセックスが好みらしい。

言葉で攻める快感。

「言わないなら入れちゃうよ!」

言っても言わなくても挿入する事に変わりない。

だったら私はSになる。


「入れたいなら入れたいっていいなさい」

リンは更に興奮しているようだった。



No.221

裕との切れているのか切れていないのか微妙な関係。
細井さんに対する複雑な気持ち。

そんな想いを抱きながら目の前にいるカーショップの店員と今セックスをしている。

特に気持ちいい訳でもなく、リンの性欲のはけ口となっているだけだと感じていた。

セックスをすると男の本性が見える気がする。
どんなに優しくても、好きだと言ってくれても、自分勝手なセックスをする人は気持ちが冷める。
元々挿入が気持ちいいと思えない私は更に気持ちが冷める。

「あ、イキそう!口に出していい?!」

挿入してわずか数分でリンは絶頂を迎えようとしていた。

いいよ、と私が言った直後、リンの液体は私の口の中へ。

「飲んで!!」

飲んでと言われても飲めるような美味しいものではない。
リンの液体ははっきりとマズイ物だと感じた。

初めて付き合った人の液体を初めて飲んだ時、とんでもない位に気持ち悪くなった記憶がある。3、4日何も食べられない位に胃のムカつきに悩まされた。

その時の気持ち悪さを思い出した位だった。

私は何も言わずリンの手に液体を吐き出した。

「わあーちょっとー!俺の手に出すなんてひどいよー」

慌てて自分で拭いていた。

「自分で出したものは自分で処理しないとね」

ちょっと意地悪そうに私は言った。


リンは行為が終わると私を抱きしめ帰っていった。

No.222

1人になり、虚しさだけが残っていた。

何故拒否できなかったのだろう。
何故拒否しなかったのだろう。

リンの事を好きになりたかったのか。
リンとセックスする事でお互いの感情が深くなれると思ったのか。

私は何を望んでいるのか自分で解りたくなかった。

携帯を見ると裕からのメール。

【蜜、ごめん。あんな形で最後にしたくないんだ。もう絶対にあんな事しない。欲を言うならマジで最後に蜜の事抱きたい。それが叶わなくても普通に話をして最後にしたいんだ。お願い、もう一度だけ、本当に最後にする。蜜に会いたい】

裕の最後のお願いを何度も言う事自体信用は出来ない。

裕に対する気持ちは恐怖に変わっていた。

もう、返信も出来ない。

メールを読みながらぼーっとしているとリンからのメール。

【今日はありがと。何かごめんね。自分でも何であんなことしたのかわかんなくて。でも、何か目の前に蜜ちゃんがいたら何か気持ちがおさえられなくて。またメールするね。おやすみなさい】

新しい人との出会いがほしかっただけ。
深入りしたいなんて思ってない。


自分にそう言い聞かせていた。



No.223

私はユキにメールを送った。

【遅くにごめんなさい。今最近知り合った男の人と話してました。でもまた元彼からメールが来てて。。はぁ。】

ユキとは裕と別れてからメールを続けていた。
きっかけはきちんと気に入らなかった相手に思いをぶつけてすっきりしたかった私の勝手な行動だった。
しかしいつの間にか子供の話や裕の納得いかない行動などの話で盛り上がり、メル友状態になっていた。

ユキは裕の事となると文句を言いながらもまだ未練があるように思えた。
でも、ユキには彼氏がいる。
ユキの複雑な感情が見え隠れしていた。

【今日は夜勤なの。まだメール来るの?相当あなたの事が好きなんだね。もう受け入れる事は出来ないの?】

【もう無理ですよ。早く終わりにしたいです。。夜勤なんですね、頑張ってくださいねー!ユキさんはもうメールしてないんですか?】

【ありがとう。今はもうしていないよ。それに今の彼を大切にしたいし。。娘もあの人の事は受け入れられないみたいだしね。明日は子供の試合があるの!楽しみなんだ!】

子供が大切なのが伝わる。

時には、こんな髪型にしてあげた、ルーズソックスデビューしたなど細かく教えてくれた。今の彼氏に対する気持ちやこれからの事、自分のやりたいこと、課題なども打ち明けてくれるようになり、いつか会ってみたいとさえ思うようになっていた。

共感出来る内容にユキへの憎しみはなくなっていた。

裕の事を話せる唯一の相手として友達でいたいと思っていた。

私はユキに今の状況を話した。

会社で仲良くしてる人がいる事。
でもその人を好きにはなってはいけない事。
リンの事。

【お互い自分の気持ちに正直でいたいね】

女だから分かり合える事が嬉しかった。

No.224

次の日は祭日でも会社は出勤だった。

いつもならだるい出勤。

でも今日は違った。

この日、細井さんとお茶する約束をしていたからだった。

前から仕事が終わった後お茶しようと誘われていたものの、お迎えが。。と断っていた。でも、少しづつ話すうちに本音で話せる楽しい人と思うようになり会社の事も色々と教えてくれていた。

この日なら子供達は実家に泊まりに行く事になっていたので誘いをオッケーした。

初めて2人でちゃんと話す日。

朝、リンからメールがあった。

【おはよ。今日もがんばろ。夜またいきたい。】

【エッチしに来たいの?話ししに来たいの?】

率直に聞いた。

【ただ会いにいきたいだけだもん。でも、蜜ちゃん目の前にしたら。。】

【今日、会社の人にお茶に誘われてるんだ。だから無理だよ。】

他に話したい人がいる事を伝えた。

【嘘?!行かないで!いっちゃやだよ】

【なんで?】

私のメールに返事はない。
私はリンと付き合ってる訳でもない。
それに話をするだけ。
それをリンに制限されるのはおかしい。

夜勤明けのユキからもメールがあった。

【仕事終わったよー。今日も仕事だったよね!頑張ってねー!】

私は今日会社の人とお茶しながら話す事を伝えた。

【蜜ちゃん楽しそうだね。いいなぁ、楽しんできてね】

いつもと違う。何だか心がワクワクしていた。

職場に着き細井さんと挨拶を交わす。

「おはようございます」

その後小さな声で細井さんは言った。

「今日大丈夫?」

私は笑顔で頷いた。

会社が終わるのが待ち遠しい。

No.225

仕事もスムーズに進み仕事も終わりに近づく。
終わりの鐘と共に細井さんは私の所へ来て道の確認などした。
場所までの道がよくわからないことを伝えると、
「じゃあ後ろからついてきなよ。」
と言ってくれた。

ただついていく事だけなのに、何だかとてもドキドキした。

ロッカーに行きメールを開くとリンから数通のメールが入っていた。

【やっぱり行っちゃうの?】
【えーん。行かないで】
【さみしい】
【会社の人って一緒に住んでる人も子供もいるんでしょ?そんな人と何を話すの?俺は相手はいないもん!】

ただ話をしたいだけだから行って来ると簡潔にメールをした。

現に本当に話がしたいだけだった。

何か奥深い感情を感じる細井さんとは深い話が出来ると感じていた。


細井さんは駐車場で待っていてくれた。
じゃあついてきてねと言いお互い車に乗り込む。

細井さんの運転はゆっくりで信号も気にしながら走行してくれた。

そんな優しさに心が暖まる。

No.226

20分程で現地に着いた。

お疲れさまとお互い言い中へ入る。
カウンターでメニューを見ながら何がいいか2人で悩んだ。

その時の私達の距離はとても近く、腕が触れ合う程。自然とその距離を受け入れていた。

やっぱり細井さんのそばにいると心が暖まる。

メニューも決まり財布を出すと、
「いいよ、俺が誘ったんだから」
とお金を払ってくれた。

申し訳ないからと言ったものの、その払い方があまりにスマートで、素直にお礼を言った。

たいした事ではないのかもしれない。
でも、このたいした事のない事に小さな幸せを感じた。

最近感じる事が出来なかった気持ちだった。

席に座り話を始める。

会社の事、元奥さんの事、子供の事、私も大好きなシルバーアクセサリーの話や趣味の話、全ての話に会話のキャッチボールが出来た。

話すだけ、聞くだけではなく、意見を言い合いそれに共感し、笑顔になる。

話す事が大好きな私は本当に幸せな時間だった。

No.227

「今度もし良かったら子供のクリスマスプレゼント選ぶの一緒に行ってもらえないかな?」

突然の次の誘い。その場では私でいいんですか?と軽く流した。
一緒に住んでいる人が引っかかる。
やり直したいと言っているのに私を誘う事が少し理解出来なかった。
複雑な関係にはなりたくない。

もし、本当に私と一緒に出掛ける事が出来るのならそれはとても嬉しい事。

私は考え過ぎなのだろうか。。

ただ、友達としての誘いなのに深く考える必要はないのだろうか。

もう、誰も好きにならない。
男と女の友情は成立しない。

細井さんの幸せの近道には、私は入り込んではいけない。

No.228

楽しかった時間はあっという間に過ぎていった。

私達は店を出て外でタバコを吸った。そこでも話は盛り上がり帰るタイミングを見つけたくない程だった。

「じゃあ、そろそろ行きますか」

細井さんが言い、車へ向った。

「今日は本当に楽しかったです。ありがとう。」

私は別れ際に言った。

細井さんは手を差し出し握手を求めてきた。

私はその手をしっかりと握る。

。。。離したくない。。。
この人を抱きしめたい。

一瞬、思ってはいけない感情を持ってしまった。

「ありがとう!」

そう言い、私の手を離した。

私の歪んだ感情は必要ない。
細井さんのありがとうは友情への一歩が成立するのかもしれない、そう思わせてくれる言い方だった。

細井さんは車が見えなくなる迄見送ってくれた。

幸せ。

それしか言葉は見つからない。

しかし、その幸せもつかの間だった。

裕からのメール。

【待ってるから】

その一言で、すぐに意味がわかってしまった。

裕は家の駐車場にいる。

私が帰るのを待っている。

私は恐怖で一気に動機がしてきた。

No.229

蜜より( ;´Д`)

すみません、誤字に気づきました。

動機→動悸

大変失礼致しました( ;´Д`)

No.231

>> 230 深愛さん(^-^)レスありがとうございます!

すみません、少し間が空いてしまって。。

毎日更新が出来ず本当申し訳ないです。

また頑張って書き始めますのでどうぞよろしくお願いします!

No.232

家に近づく程動悸は激しくなる。
あそこを曲がれば。。。

車が家の敷地に入るとやはり裕の車が停められていた。
私は足早に家の中に入った。

電気をつけて数分後、ドアをノックする音が聞こえる。

私は聞こえないフリをした。

携帯の電源も切った。

ドアは何度もノックされる。

怖い。。。

無視をしてお風呂に入った。
するとお風呂の窓をノックしてきた。

もう本当にやめて。
これ以上私の心を不安定にしないで。

シャワーの音で誤魔化す。

その後しばらく静かになったのもつかの間、お風呂から出て電気を消すとまたドアをノックしてきた。

もう、どうにもならない。。。

私は着替え、ドアを開けた。

裕は柱にもたれうつむいていた。

その姿は演技に見えてならなかった。

私が何も声をかける事もなく呆れた態度を見せていると裕は車に向って歩き始めた。
その姿を黙って見ていると

「話、するんでしょ?」

と少し怒った口調で言ってきた。

話なんてしたくない。
でも仕方がない。

裕の後ろを歩き車へ向った。

後部座席に2人で座る。

「で、やってきた?」

裕から発せられた私への言葉。
セックスしてきたんでしょと言わんばかりに笑いながら言った。

やはり、この人は最低の人間だ。

No.233

「久しぶりに他の男とやってどうだったの?」

鼻で笑ながら裕が言う。

「会社の人はそんな軽い人じゃないから」

裕は今日私が会社の人と会う事を知っていた。

私はネット上で誰にも言えない自分の心を吐き出していた。
嬉しい事。
悲しい事。
ムカついた事。

裕に対する怒りや、気持ちの変化などもその中で言っていた。
裕は必ず私の言葉を見つけ出す。
時にはネット上で返事をもらう事もあった。

別れてからも、もう気持ちがない事を解ってほしかった為にネット上から想いを発信していた。

新しい出会いも全て隠さず言う事で裕に気持ちがない事を再確認してほしかった。

「随分楽しみにしてたんだね。てかさ、離婚してるにしろ、相手と一緒に住んでるんでしょ?子供も。それってハッキリ言って不倫とかわんねーじゃん」

「私は付き合うとかそんな事考えてない。会社の人が幸せになって笑顔でいて欲しいだけ。もし好きになっても片思いでいいから。そんな事ないけど。あのさ、やってきたとか言うの失礼じゃない?!」

細井さんを悪く言っているようで相当ムカついていた。

「あのさ、何しに来たの?もう返す物もない、気持もない、ガソリンもったいないだけだから。」

少しの沈黙の後、裕は私を抱きしめた。

私は体全体で拒否をした。

「蜜、怖がらないで。この前の事ちゃんと謝りたかった。俺は蜜に嫉妬してる。今、蜜の心にいるのが俺じゃないのが気が狂いそうな位に嫌だ。」

私は何も言葉を返せなかった。

「蜜、今だけでいい。目の前の俺だけを見てて欲しい。演技でもいい。もう一度、蜜の優しさに触れたいんだ」

裕は演技でもいいと言った。

だから、私は、演技をした。


裕を抱きしめた。

No.234

裕の抱きしめる力はとても強かった。

私も裕の体を強く抱きしめた。

今、私の中に私はいない。

自分がどんな表情をしているのかがわからない。

「蜜、キスして。」

その言葉にドキドキもしない、嬉しさも感じない、怒りも憎しみも感じなかった。

言われるがままに私は裕にキスをした。

舌を絡め合う濃厚なキス。

「蜜。。やり直したい」

きっとその言葉が出ると思っていた。
私の行動を伺いながらその言葉のタイミングを狙っていた。

私が拒否をしない事で、裕への気持ちが少しづつ戻っていると感じていたと思う。

やっぱり裕は私を見ていてはくれなかったと確信した。

表情も感情も、何も感じてくれてはいなかった。

その時の私は自分の顔が何処にあるのかわからない位無表情だった。
行動は演技出来ても、表情までは演技する事が出来なかった。
気持ちがないのに笑顔なんて作れる訳がない。

そんな私の表情を見る事もせず、ただ、行動だけで、しかも自分で演技でもいいと言ったはずなのに、何か勘違いをしている。

私は無言で首を横に振った。

「別れてからずっと蜜の事ばかり考えて、何も手につかないんだよ。他の男と2人きりで会ったりとか、嫉妬ばかりして。蜜さえ居てくれれば何もいらない。」

少しの沈黙の後、私は口を開いた。

「誕生日に元カノとホテルに行った。ずっと繋がってた。連絡しないでと言ってもメールをしていた。もう全てが遅い。私がどんなに求めても私だけを見てくれなかった。誰に必要とされたいのかわからない。必要とされたいのは私だけじゃないってわかった。もう、気持ちは戻らない」

裕は泣いていた。

「裕、強くなって。本当に大切な物が何なのか良く考えて。」

「蜜は。。会社の奴の事が好きなの?幸せにはなれないよ、絶対に。不倫の先に幸せは絶対にない。いつかは家族の元に帰る。もう充分わかってるだろ?」

不倫じゃない。
家族の元に戻るなんてわかってる。
離婚届けなんてただの紙切れだから、気持ちがあればまた紙切れ一枚で婚姻関係になれる。細井さんの幸せを願ってる。

「裕には関係ないから。」

細井さんへの想いを裕に話す必要はない。

「蜜は誰にも渡したくない!」

裕はそう言い、服の中に手を突っ込んで来た。

この展開ももう飽きた。

いちいち裕の感情に付き合うのもバカバカしい。

「触らないで!」

私はその手をはねのけた。






No.235

怒りと恐怖で動揺していた。

いつもならこのような時持っていない携帯が、たまたまポケットの中に入っていた。私は落ち着きを取り戻す為、送られてきたメールをチェックした。

どんな相手に対しても一緒にいる人の前で携帯をいじるのは好きじゃない。
相手がいるのに、携帯を見る事でその瞬間は一人の世界に入ってしまう。
相手には関係ない世界。
相手にも、何かあったかな?と思わせたくない。

相手が彼氏なら尚更だった。

二人でいる時は二人で同じ事を共有していたい。だから時々カフェなどでカップルがお互いに携帯をいじっている姿を見ると何だか悲しくなる。

私も裕がよく私の前でゲームを始めたりする事が嫌だった。

二人でいるのに、私が見えていない。。。


でも、今は違う。

二人で居ても気持ちは別々、むしろ、嫌ってくれた方が都合がいい。


たまったメールが次々と受信される。

[蜜ちゃん、メールちょうだい!!!]

リンからのメールもあった。
・・・・今は軽く無視。

[今日はありがとう!]

細井さんからのメールもあった。でも今は・・・。

[私はあなたに謝らなければならない事があります。]

気になるメールが入っていた。

私はそのメールを読み始めた。


No.236

[私はあなたに謝らなければならない事があります。実は、今までのメールを、全てあの人に見せてしまいました。どうしても断り切れず、どうしても嫌われたくなく、あなたとのやり取りを全て見せてしまいました。本当にごめんなさい。あなたから返事を貰うのはとても怖い。だから返信はしないで。]


ユキからのメールだった。
ユキは子供思いできちんと自分の考えを持っているにも関わらず男に対しては弱い心を抑える事が出来ない人だとわかっていた。
私とのやりとりは、ママ友と言うか、メル友と言うか、相談したりアドバイスしたり。。

メールをするきっかけは怒りをぶちまける為だったのに、いつの間にか仲良くなっていた。

裕の事も2人で話した。

裕の事になると口数は少なくなる。
彼はあなたしか見えてないから。
それが決まり文句だった。

ユキの事を完全に信用していた訳じゃない。
でも、悪い人ではないと感じていた。
私が心を開く事でユキも本音を言いやすい状況を作ってきた。

でも。。。


ユキは私を裏切った。


細井さんと会う事も、細井さんに対する気持ちも、リンの事も、裕には本当に気持ちがない事も、今の状況も、全て裕に筒抜けだった。

No.237

あの頃の気持ちが蘇る。

私を置いて2人で会ってた頃の嫌な気持ちが。。。

裕にもう気持ちは無くても何故か悔しい。

「全部知ってるんだね。」

私は呆れたように言った。

「何が?」

俺は何も知らないと言うような言い方だった。

私は何も言わずため息をついた。

沈黙。。。

「。。。彼女を責めないでほしい。俺が無理矢理言わせただけだから、ユキは何も悪くない。」

彼女、ユキ、ユキをかばう裕。
その一つ一つに苛立ちを感じた。

「またホテルでも行って話したの?2人で。そんなに好きなら付き合えばいいじゃない。何でここにいるの?ユキさんだって裕の事忘れてないんでしょ?まだ好きなんでしょ?好きだって言ってくれてるんだし、一度は好きになった相手なんだから付き合ってみればいいでしょ!彼女を責めないで?責める気持ちなんてないわ。むしろ正直に言ってくれたユキさんが偉いと思う。黙ってればわからないのに。」

一気に言い放った。

ユキに対しては確かに苛立ちもあった。
でもそれ以上に裕の汚いやり方に苛立ちを感じていた。

ユキの気持ちを利用している裕が許せない。

「で?またやってきたの?!そんな話をしながら!?」

「確かに。。セックスはした。自分の気持ちを確かめる為にも。でもやっぱりユキじゃダメなんだってはっきりわかった。それに。。。」

こいつはアホか。
何で私にそれを言う?!

裕は話を続けた。

「蜜を幸せに出来るのは俺じゃないかもしれないって諦めも今はある。でも、少なくとも会社の奴より俺は蜜を幸せに出来る!蜜はこのままじゃ絶対幸せになれない。幸せになれないのに黙って見ているなんて出来ない。一緒に住んでるんだよ?!口では何て言ってるか知らないけど、相手とセックスだってしてるんだよ?!」

「もうやめて!!聞きたくない!!裕がそんな事言う権利ない!会社の人とは恋愛感情なんて持つつもりない!!」

私は泣いていた。裕の自分勝手な言葉に、現実を突き付けられている言葉に。

その姿を見た裕はまた私を抱きしめた。

もう突き放す気持ちさえ残っていない。

人を愛するとどうして最後には幸せにはなれないんだろう。。。

裕は私にキスをした。

No.238

私は抵抗しなかった。

涙がとまらず、どうにもならない。

もう、何だっていい。

裕の手は私の服を一枚づつ脱がしていった。

胸を揉まれても何も感じない。

手は私の下半身へ。。。

裕の指が私の中へ入ってくる。

「人形とセックスしたってつまんないでしょ。私、人形だから」

泣きながら言う。

「俺は今の蜜も愛してる」

何も感じない。嬉しくも悲しくもない。
今の私は本当に人形になっていた。

裕のモノが私の中に入ってくる。

「子供作っちゃえば蜜はもう俺のものになるよね?」

その言葉に我にかえった。

「やめて!もう裕の事愛してない!」

思い切り抵抗した。

「やめない!ずっと蜜としたかった。」

裕の力にはかなわなかった。裕はそのまま動き続けた。

「中に出すよ。。。」

耳元で言った。

「やめて!!!!」

そう言うのと同時に裕の液体は私のお腹に放出された。

私は裕とセックスをしてしまった。

No.239

「今日やっぱり蜜が好きだって事確信した。でも、蜜が幸せになるのに俺が邪魔なら俺は身を引かなきゃいけない。でも、会社の奴に渡す位なら俺は身を引かないから」

「もう、疲れた。。帰る」

何も考えたくなかった。

「また連絡する」

裕はそう言い素直に私を家に向かわせた。

家に戻り考えた。

何で私はこんなに弱いんだろう。

自分を責めた。

今日、細井さんと会ってすごく楽しかった。次に誘われた事も本当に嬉しかった。頭では踏み入れてはいけないとわかっていても、心はもっと親しくなりたいと感じていた。

人を好きになったって幸せになれるとは限らない。

同じ事の繰り返し。

もっと細井さんと親しくなれば、私は必ず傷つくのはわかっている。

人を愛する事が、私が強くなれない原因なのかもしれない。

もっと、自分に強くなりたい。

誰に何を言われても、動じない心がどうしても手に入れられない。



No.240

ぼーっとしながら携帯を開き返信を始めた。

【おつかれー。今日はなかなか楽しかったよ。】
リンに送った。

【今日はありがとう。最後の握手とっても嬉しかったです。何か久しぶりに会話のキャッチボールが出来て嬉しかったぁ。話せるって本当いいですね。】
細井さんにも送った。

細井さんはすぐに返事をくれた。

【俺もすごく楽しかったよ。こんなに話せる人いなかったから。蜜ちゃんとはまたゆっくり話したいなぁ。あ、クリスマスプレゼントいつ見にいけそう?予定教えてね】

細井さんのメールにまた、涙した。

私もすごく楽しかった。
憧れの細井さんと会社を離れ話せる事がとても嬉しかった。こんなにも素敵な人が身近にいる事が幸せだった。

でも、今、私は裕と。。。

そんな状況は細井さんは知らない。

でも、細井さんももしかしたら今日、一緒に住んでいる人と私と同じ行為をしたのかもしれない。

考えたくないことばかり頭に浮かんでくる。

付き合ってる訳じゃないのに。

細井さんは私のものではないのに。

何故か心が苦しい。



No.242

>> 241 旅人さん。

きもちわりぃですよねぇ(^^;;

人それぞれ感じ方は違うのでその感情を否定は全くしませんが、見ている方が不快になる言い方は辞めて頂きたい。


自分で書いていてもきもちわりぃのわかってますから。

これからもきもちわりぃのは書き続けます。

なので見ない方がよろしいです。

No.243

蜜より(^-^)

削除されたレスがありますが、見て不快な思いをされた方がいたら申し訳ありませんでした。
一つのレスで荒れていくのは1番嫌なパターンなので( ;´Д`)

内容が内容なだけに、批判覚悟で書いています。
アホと吐き捨てたい気持ちもとてもわかります。
批判を批判はしません。人それぞれの感情は自由なので(^-^)
それに自分自身が1番批判したいです笑

でも、ほんの少しでも見ていてくれている方の為にも批判は感想スレの方に書いて頂きたいと思います。

どうかこちらには見ていてくれている方の為に書かないで下さい( ;´Д`)

よろしくお願いします。

No.244

裕からのメールは続いていた。
もう、返信はしなかった。

メールに振り回されるのも嫌だった。

しかし裕は予告なく家へ来た。近所迷惑も考え仕方なく会わなければいけない。

「何」

冷たく対応した。

生気の感じられない目。本人は毎日眠れないと言う。寝不足な日々だと言う事をアピールしていた。

そんなの私には関係ない。

特に何を話す訳でもない。

何がしたいのかわからず裕は帰って行った。



No.245

次の日も家へ来た。

この日は玄関に立ちつくし何か言いたそうに私をにらんでいる。

「何」

変わらない態度でいると、

「俺の事、顔も見たくない程むかつくんだろ?嫌いで仕方ないんだろ?」

と静かにキレていた。

私は何も言わないまま目をそらす。

「ねえ、一緒に死んでよ」

いつもなら演技としか捉えられない言葉もこの時はさすがに本気で怖くなった。

「包丁どこにあんの?貸してよ。蜜の事刺して俺も死ぬから」

裕は家に勝手に入ろうとした。

「やめて!包丁なんかない!」

裕の腕をつかみ思い切り引っ張った。裕の力には全く及ばないものの、引きとめる事しか出来ない。

「一緒に死のうよ?!蜜といられないなら生きてたってしょうがない!!」

何で私が一緒に死なないといけないの?!
狂ってる。。
この人はもうおかしい!!

本気で刺されそうな状況になっていた。下手に刺激すると本当に殺されるかもしれない身の危険を感じた。

私が必死になっている姿に今度は首に手をかけてきた。

「殺したいほど蜜が好きなんだ・・」

裕の中にこんな人格がいるとは思っていなかった。

別れてから少しづつおかしくなっていく。

そんな姿を見るのが嫌だった。



No.246

「裕、もうやめようよ」

泣きながら訴える。

こんな私の言葉も裕には届かない。

何で好きでもない相手にここまで振り回されないといけないのか、心はかなり疲れていた。

弱くなっている人を放っておけない私の性格を知ってる裕は自分の弱さを最大限私に見せつけていた。

蜜がいないと・・蜜がいないと・・

そんな事ばかり言う裕がうっとおしい。

「もう帰ってよ・・」

その言葉にうつむきながら車へ戻る。

何も解決はしていない。だからまた裕は来る。

お酒の瓶を片手に持ち、車を降りすぐにそのお酒を口にする。
寝不足とお酒で言っている事もわからない。

こうやって自分の弱さを見せる事で、私がいないと生きていけないんだと言う感情を持たせる事が狙いだったと思う。

こんな状況が数日おきにしばらく続いた。

No.249

>> 248 匿名さん(^-^)読んで頂いてありがとうございます!
どうなりますか。。。ね^^;
更新まちまちですが、よろしくお願いします(^-^)

No.250

時間が経つにつれ、リンとのメールのやりとりも減っていった。
元々車検の話から一気に話が進み複雑な関係になってしまった。
車検は他の車屋に頼む事にし、リンにもそれを伝えた。
家に来たいだの、会社の人と仲良くしないでだの言うわりには、リン本人の生活は全く言わない。

あまり興味もなかった。

メールを返信しない事でリンとは自然に連絡を取らなくなった。

結果的にはやり逃げになってしまったのかもしれない。

でもポツリポツリと自分の日々の気持ちを話していたリンは悪い人ではないと思っている。

裕よりもまともに会話が出来たこと
私のままで会話が成立していた事。

それはやり逃げよりも私の心に響いていた。







No.252

>> 251 名無しさん(^-^)
会話って大切ですよね。
今はメールやインターネットでしか自分が出せない世の中になってきていますが、人と人とのリアルなコミュニケーションは何にも変えられない大切な物だと思っています。

続きは想像通りか違うか何とも言えませんが^^;
批判も覚悟で書いています^^;

よろしければ引き続きよろしくお願いします( ´ ▽ ` )

実は生意気ながら無理しないでね感想スレも立てさせて頂いております^^;
この本スレでは色々な感情を持って頂けるように私のみの投稿に制限する事にしました^^;読んで頂いてくれている方からご意見頂けたのでそのような形にする事にしました(^-^)
全ての感情は間違いではないと思っていますので、気になる事があればそちらでお待ちしております( ´ ▽ ` )ノ

読んで頂いてありがとうございます(^-^)

No.253

裕に別れを告げて何日経ったのか。。

一年2か月の間、付き合っている時には見る事のなかった姿を数日で見せつけられた。

愛が残っていない私には迷惑な行動ばかり。。
少しでも愛が残っていれば同情していたかもしれない。

こんな状況がいつになったら終わりになるのか。

「前に進もうよ」

こんな言葉しかかける事が出来なかった。

No.254

3日程裕からの連絡はなくなりこのまま私の存在を忘れてくれる事を願った。

4日目、メールが来た。

【今までの事、本当にごめん。もう絶対あんな事はしない。このまま会えないのはやっぱり辛い。ちゃんと顔見て謝りたいんだ。時間・・作ってくれるかな】

これが本当の裕の気持ちでもそうでなくともどちらでも良かった。

でも、私なりに、きちんと納得してほしいと言う気持ちがあった。

裕が落ち着いてくれないと話にもならない。

今がちゃんと区切れる時ではないかと感じた。

【わかった。今日時間空けとく。】

もうこのままズルズルとしたくない。

今日で決めなきゃいけない。

私には新しい時間が始まってるから。

No.255

夜、裕は気まずそうに会いに来た。

「・・・・ごめんね」

きちんと目を見て謝ってくれた。

「もっと自分を大切にしなきゃ。」

身も心もボロボロになってく姿は見ていて気持ちいいものではない。

もっと自分を大切にしてと何度言った事か。。

少し呆れ気味に言った。

「自分が情けないよ。でも蜜が他の人と幸せになるのが凄く嫌で・・。自分が一生幸せにするつもりだったから。会社の人とはどうなったの?」

「気になる?別に何もないよ。」

「その人は絶対止めた方がいい。蜜は相手がいて好きになる事がどんな事か解ってるだろ?最後に戻るのは蜜の所じゃないんだ。離婚してたとしても一緒に住んでいる以上体の関係だってあるはずだろ?そんな奴を好きになっても蜜は絶対に幸せになれない。そんな奴に渡す位だったら俺が・・・・」

言いかけて言葉につまる裕。

「裕に幸せにしてもらおうとは思ってませんから 笑」

「あ・・やっぱり・・。結構傷つくなあその言葉。しつこいようだけど今でも蜜が好きなんだからさあ。」

「ごめんねえ。私は好きじゃなくて。」

冗談ぽく話せた事で裕の張りつめていた気持ちがほぐされた気がした。

ベランダに座り話をする。

「星が綺麗だねえ」

そうだねと二人で星を見上げた。

「付き合った日も星が綺麗だったよな。」

沈黙が続いた。。。

「子供、大切にしてあげてね。夜来てくれるのは嬉しかったけど、いつも子供が気がかりだった。実家にいるからこそ出来る行動。いつまでも現状に満足してないで、私と結婚考えてくれてたなら一歩踏み出してほしかったよ。子供と二人頑張ってほしかった。」

「それはちゃんと考えてる。仕事の事もあるけど、時期を見て実家を出て二人で暮らしてちゃんと子供と向き合おうと思っているよ」

私は、そう・・・と軽く返事をした。

そう思ってる、するつもり、時期を見て、全て理想の未来の形。

その為に行動している訳ではない。

いつかいつかと言ううちに時間は経って理想の未来は今の現状に飲まれてしまう。

それが現実。

でも、もう私には裕がどういう行動をとろうと関係ない。

私が想っている事を伝えて聞いてくれればそれで良かった。

No.256

「これ・・」

裕は私に腕時計を差し出してきた。

少し前にも差し出してきたその時計は裕が私につけていてほしいと付き合っている時に渡してくれたお揃いの物だった。

あまり時計をつける事がなかった私は時計を貰ってから毎日のようにつけるようになっていた。
時計の便利さを実感し、何より裕と同じ時間を同じ時計で刻んでいる事が嬉しかった。
私にとってなくてはならない物になっていた。

しかし、別れてから返せと言われて返したものの、こんな物いらねえと言い投げ捨てたり、ちゃっかり投げ捨てた時計を拾って帰ったり・・・。

そんな時計への執着は既に無くなっていた。

それに・・


私には新しい腕時計があった。


裕はその事を知らずに時計を差し出してきた。


私は首を横に振った。

「もう、いらない」

「やっぱりこれ蜜に持っててほしいんだよ。」

「もう、いらない。新しい時計持ってるから」

あっさり断った。

返せだの持っててほしいだのその時の感情でコロコロ行動が変わる姿に呆れていた。

「そっか・・」

裕は諦めた。

「蜜、ハグしていい?好きじゃないのはわかってる。わかってるけど蜜の事抱きしめたい」

「ダメ」

私の返事と同時に裕は私を抱きしめた。

「ごめんね、蜜」

息が苦しくなるほど強く抱きしめられた。

「キスしたら怒る?」

「怒る!」

その言葉と同時に・・

何故かお互い目を閉じなかった。

そして偶然にもその時流れ星が空を通り過ぎた。

あ・・・・・

お互いびっくりして笑ってしまった。

「流れ星なんて何年ぶり?!綺麗!」

月や星が好きな私はテンションが上がった。

「これは二人で幸せになれって事だよ!」

その言葉に私は苦笑いをした。



No.257

本当に綺麗な流れ星。

裕の事が大好きだったらどんなにロマンチックだったんだろう。

もう、私の心に裕はいない。


「じゃあね」


その言葉を最後に裕とは二度と会う事はなかった。

大好きだった一年ちょっと。
元彼女との関係に嫉妬し、奥さんを超えられない自分が嫌になり。。
私は必要なかったのではないかと言う気持ち。

今となっては、どこが好きだったのかも思い出せない。

さよならを告げてから心の支えになってくれたのは細井さんだった。

No.258

相手を好きになると自分だけを見て欲しくなる。
自分だけを見てくれていても、それが本当に自分だけなのか不安になる。
不安になるから、相手の見えない所で色々探ってしまう。

そんな事を繰り返しているうちに、自分が何故相手と一緒にいるのかわからなくなってしまう。

男がいなくたって、私は1人でやっていけるはず。

男だけが全てじゃない。

そんな気持ちになると優しい言葉をかけてくる人がいる。

そこから付き合いが始まる。。

そんな繰り返しは私にとって必要なのかと考えてしまう。

もう二度と人を好きにならないと何度決めたことか。

そんな意思も相手の言葉に、行動に崩されてしまう。

相手の気持ちばかり考えて、いつからか、自分の本当の気持ちが表に出せなくなっていた。

本当の自分の気持ちさえわからなくなっていた。

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