明日が来るなら
明日が来るなら
それだけでいい
私達元夫婦の壮絶な日々…
あなたがいて、ただただ明日が来て、また会話が出来るなら。
泣いて泣いて、涙が出なくなる位に…。
ノンフィクションです
新しいレスの受付は終了しました
アパートで暮らし始めて2ヶ月、シゲちゃんは私がお風呂に入る間、いつも携帯を片手にベランダに出ていた。
私はシゲちゃんの
「お前が覗かれないか心配だから、見張り番してやるからな~(笑)」という言葉に気を良くして何も疑いもしなかった。
毎日がバラ色、自分は凄く幸せな新婚生活を送っていると信じて疑わなかった。
そんな中、私はシゲちゃんだけに家計を負担させたらいけないと、パートに出るようになった…。
そういえば…この頃、シゲちゃんおかしかった。
パート先はスーパーだったから、土日祝日は繁忙期の為に出勤。
シゲちゃんは普通に平日勤務の土日祝日が休み。
すれ違いなんて全く私は感じなかったけど、土日祝日のシゲちゃんは退屈だったのかもしれない。
本当に私はシゲちゃんの事、何にも理解してあげられ無かったんだね。
ただ、私はシゲちゃんと一緒にいるだけで良かったから、安心しきっていたんだね。
シゲちゃんは自分の休日は私に合わせて起きて、スーパーまで送り迎えをしてくれていた。
シゲちゃんは飛び切りお洒落して送り迎えしてくれた。
普段付けないポマード?まで付けて、車の中まで片付けて…。
私の為に…………!
って…
どこまでバカな妻だったんだろう…。
間抜けな私は、パートを終えるとシゲちゃんが迎えに来てくれてている事が嬉しくて、
沢山の夕御飯の食材を買った。
シゲちゃんの好きなものも、体にいいものも…。
いや、食材ばかりじゃない、シゲちゃんに似合いそうな服、下着、靴下、あれもこれも手に取って…。
そんなんじゃダメだったんだね。
早くシゲちゃんの身体の異変に気がつかなかった私が悪かった。
どうして察してあげられ無かったのか…………!
貴方の身体が悲鳴を挙げたあの日まで私は…。
悔やまれるが、無情にも時は流れてゆく…。
パートから帰ると、シゲちゃんから毎日の帰るコール。
それに合わせ、ストックしていたビールを冷やし、おつまみを用意してた…。
シゲちゃんがいつものあの小さな路地から大きなリュックを提げて帰って来る。
今日もシゲちゃんの帰りを心を踊らせて待っていた。
結婚式が間近に迫り、慌ただしい毎日だった。
明日は休み、シゲちゃんも休み。
二人の細やかな幸せな食卓…。
シゲちゃんは冷やしてあったビールを飲み、それじゃ足りないって焼酎まで飲み、結婚式の打ち合わせ…。
しかし、お酒、飲み過ぎだなぁ…。
最近、やけに太って来たし、タキシード着れなくなっていたらどうするんだろう…。
こんな甘い新婚生活で現実味ない私は、猜疑心なんて言葉も全く知らなかった。
相手の女性がシゲちゃんを奪おうとする策略も、シゲちゃんが必死に私を守り逃げようと戦っていた事も、体にムチを打って働いていた事も全く全く気がつかなかった。
今から思えば、女がいても、シゲちゃんが居れば良かった。
ただただ、シゲちゃんさえ元気で私と娘の傍で生きている。
それで良かったのに…。
シゲちゃんを奪うのは女じゃないって事、この時の私は知る由もなく、ただ毎日が幸せだった。
既にシゲちゃんは闘っていたんだね。
様々なものと…。
結婚式の打ち合わせも大詰めを迎え、全ての支度も整った。
挙式披露宴にお招きする方々に招待状も既に送った。
後は式を待つばかり…。
シゲちゃんとの細やかな幸せな日々…。
今日も近くのスーパーでお買い物。
そして、帰るコール。慌ただしい夕食時。
新婚生活は甘くて幸せな日々…。
美味しいと評判の焼きうどんを作ってシゲちゃんの帰りを待って、今夜も家飲みに付き合う。
しかし、お酒の量が凄いなぁ…。
なんか、迎い酒って…こういうのをいうのかな。
最近、食事の後直ぐにぐったりと横になるし、ダルそう。
そうだったっ。
今度の休みも一緒だ!
「シゲちゃん、今度の休み何処か行きたいな。」
私は、シゲちゃんを誘って何処かへ行きたかった。
「うん、ええよ。マイホームの下見でもするか?」
思わない言葉に驚きながらも、嬉しさが込み上げる。
「…………!えっ!マイホーム?」
「うん。まだ先だけど、いつかは持ちたいし、親も頭金出すから下見しようや。」
シゲちゃんが微笑む。
私は幸せの絶頂期を噛み締めていた。
今日はマイホームの下見デート。
嬉しくて朝からワクワク。
シゲちゃんの運転する車に颯爽と乗り込み、目的地の(桜ヶ丘)を目指す。
少し郊外の閑静な住宅街。
バブル期に次々に建てれた住宅がこの不景気で売却され、沢山のまだまだ綺麗な中古住宅が売に出されている穴場だ。
BGMもケツメイシの
「さくら」
桜ヶ丘団地もいいけど…帰路についた私達は住宅の事、結婚式の事、そして家族計画など話が盛り上がっていた。
そして、私の好きな町を通り過ぎてゆく…。
「私、桜ヶ丘も好きだけど、この町もいいなぁ。この辺でも探さない?」
何気なく私が言った。
すると、シゲちゃんの顔色が一瞬「キッ」っとひきつり、怖い声で「いや、ここはアカン…………!」
と…。
普通のようで、普通じゃないシゲちゃんの一言に妙に何か引っかかってしまう…………。
そんなこんな私達は結婚式を迎えた。
ウェディングドレス姿の私を見て、父親の目が潤んでいた事を忘れられない。
母は温かく、慈しむように私に言葉をかけてくれた。
シゲちゃんのタキシード姿…………。
今でも覚えてる。
首から
「日本一の幸せ者です!」という私の手作りの首飾りを付けて披露宴会場に登場。
恥ずかしいけど、会場の皆が笑っていて、私達に温かい声を投げ掛けてくれた。
夫婦っておかしい。
普通の何気ない事をよく覚えていて、皆が一様に鮮明に覚えているような事を覚えてなかったりする…………。それだけ現実味があり、生活を共にしていくからだろうか…………。
または、そういうのが「愛」と呼ばれるものなのか、「絆」と呼ばれるものなのか。
例えば、私は自分のウェディングドレスよりもシゲちゃんのヘアスタイルが何時もと違っていて可笑しくて、面白くて仕方無かった。「ちょっとボリュームありすぎ~(笑)」って笑っていた顔を思い出す。
「ネイルなんてしてたらお米磨げん!」って前日に無理矢理ネイル剥がしてしまった事とか…………。
ウェディングドレスでも、華やぐ会場でもない、そんな普通の何気ない変化や出来事が思い出される。
だが、恋人はどうだろう…?。
X'mas、誕生日、休日…。
遊園地、カフェ、ホテル、旅行、バカンス、ディナー。
特別なプレゼントにサプライズ、ジュエリー、ブランド品…。
そんな特別がぎっしりだ。
だから恋愛は楽しい。
しかし、結婚は楽しいか…。
違う。
結婚はかけがえのない者同士が同じ目的を持ち、歩んでいく大事業なのだ。
甘いだけじゃ成り立たない。
愛人の事も私は、所詮甘いだけのいいとこ取りの存在としか思ってなかった。
だけど、あの人は違った…。
あの女性は私よりももっと辛い思いをしていたのだ。
そして、シゲちゃんの事もよく分かっていた。
だからこそ、シゲちゃんは彼女の存在が怖かったのだろうか…?。
ストレスは病魔の大好物なのに…。
私達はアパートでの暮らしも板につき、田舎者の私も少しづつ都会の暮らしに馴れてきた。
相変わらずパートにも通い、僅かな稼ぎは生活費に充て二人のごくごく普通の何気ない毎日が過ぎてゆく。
だけど、やっぱり私がお風呂の時はベランダに出るシゲちゃん…。
見張りなんて言ってたけど、どうなんだろ?
少し窓を開けてシゲちゃんの様子を見た。
…………。
…………。
携帯…?。
シゲちゃんの右手には携帯。
まあね…。そりゃあある事だよね。
でも、入浴中のベランダ&携帯は毎日だった…。
一体、携帯で何してるんだろう…。
Mail?サイト?
気になるなぁ。
携帯の事は気にはなるけど、まあいいや…。といった感じで敢えて聞こうとはしなかった。
時は流れて、自然と赤ちゃんがほしくなってきた二人…。
だけど、なかなか授からなかった…。
トラック運転手だから夜間に出ていく事や、早朝から出ていく事が多くてなかなかタイミングがつかめなかったのもあるが、田舎で産まれ育った私は、都会の暮らしは馴れてきたと言っても負担になっていたのは確かだった。
そんな中、パートから帰宅した私に父から電話が掛かってきた。
母親の容態が思わしくなく、また倒れて入院したと…。
そして、検査の結果
ガンが転移し、もう外科的手術も不可能であり、余命が僅かだと…。
泣いている私を帰宅したシゲちゃんが優しく温かく抱き締めてくれた。
今でも忘れない。あの優しさと安堵感を。
それはどんな精神安定剤にも勝るものだろう…。
化学なんかじゃ説明の付かないものだった。
皆様 ありがとうございます。
現在、実家に帰省しており、なかなか空いた時間がなくレスが滞っており ご迷惑おかけしております。
落ち着くまで暫く時間がかかりそうです。
ご了承ください。
- << 77 お忙しい時は無理せず 自分のペースで書いていって下さい 私達は早く読みたい気持ちはありますが 無理強いはしませんから、まとまってからで充分です ただ一つ、言わせていただくなら やはり皆さんが仰いますように 「本スレと感想スレを立てて 本スレは主さんのレスのみ」 のほうが 読者は離れていかないし、待つ事も苦にはなりません むしろ確実に読者は増えますし スレに読みやすさと、まとまりが生まれると思います 主さんの新レスを楽しみにしている分だけ、 感想レスのみだった時のガッカリ喪失感は かなり大きいものです(笑) 主さん 御一考いただけましたら幸いです
>> 75
皆様 ありがとうございます。
現在、実家に帰省しており、なかなか空いた時間がなくレスが滞っており ご迷惑おかけしております。
落ち着くまで…
お忙しい時は無理せず
自分のペースで書いていって下さい
私達は早く読みたい気持ちはありますが
無理強いはしませんから、まとまってからで充分です
ただ一つ、言わせていただくなら
やはり皆さんが仰いますように
「本スレと感想スレを立てて
本スレは主さんのレスのみ」
のほうが
読者は離れていかないし、待つ事も苦にはなりません
むしろ確実に読者は増えますし
スレに読みやすさと、まとまりが生まれると思います
主さんの新レスを楽しみにしている分だけ、
感想レスのみだった時のガッカリ喪失感は
かなり大きいものです(笑)
主さん
御一考いただけましたら幸いです
私は、母親の心配をする傍ら、パート勤務も続けていた。
休日は決まった様に母親の下に見舞いに行っていた。
パート先の店長も理解してくれて母親に何かあったら直ぐに向かう事を快諾してくれた。
そんな中でも私は、シゲちゃんとの子供、未来を願っていた。
夫婦となったからには、シゲちゃんとの生活、将来も考えていたからだ。
だから時々、パートが終わってから妊娠検査薬を買いにドラッグストアに立ち寄った。
だが、なかなか陽性反応は出なかった。
余命幾ばくもない母に孫が出来たという知らせだけでもしたいという気持ちも多少あったが、何よりシゲちゃんとの間に赤ちゃんが欲しかった。
私のシゲちゃんに対する感情は確かに、「愛」であった。
出会った頃の癒しや 、漠然とした感情ではない。
シゲちゃんを夫として本当に愛していた。
忘れられない日
パート勤務を終えて、アパートで妊娠検査薬の陽性反応が出たあの日、あの瞬間を…。
涙が出る程嬉しかった。
直ぐにシゲちゃんにメールで報告した。
帰宅したシゲちゃんは心底喜び、その日は浮かれていたのを…。
夫婦が最大に盛り上がる人生イベント到来!
しかし…あの女性にとってそれは最大のピンチだった。
シゲちゃんは永遠に私と生まれくる子供のものになる…。
あの女性は、何を考えたのか…。
段々とお腹の中に命が宿ったと感じる迄に時間はかからなかった。
酷いつわりが襲って来たのだ…。
毎日毎日吐くばかり…。終いにはお茶すら受け付けない。シャンプーや、歯みがき粉の匂いまで受け付けない体になり、1ヶ月で7キロも減る。
パート勤務はもう無理だ。
私は退職を余儀なくされた。
- << 97 目のかゆみが何とか落ち着いてきたころ、今度はトイレでシゲちゃんが私を呼んだ。 見ると、真っ黄色で、少しドロッとした感じのおっしっこが出ていた。 身体もかゆいと言っていた。 私は母を胆管、肝臓ガンで亡くしているので、シゲちゃん症状はもしかしたら、肝臓が悪くなっていて、黄疸が出ているんじゃないのか?と感じたから、病院へ行くように説得をした。 しかし、シゲちゃんは断として行こうとしない。 あんなに食べていたご飯も小食になってきた。 「絶対に肝臓が悪いんだ・・。」母の入院前の状態と似ている・・。 嫌な予感がする・・。 早く病院へいってほしい。何度も、何度も言って聞かせたが、逆切れ気味になって無理してまで仕事に行こうとする。 12月で忙しいのは分かるが、もう一人だけの身体じゃないということをわっかってほしい。 「バタンッつ!」ふっ切るようにしてシゲちゃんは仕事に行った。 その日、帰宅してシゲちゃんは仕事中にミスをしたことを弱弱しく、悲しそうに 話してくれた。 いつものシゲちゃんらしくない、弱く、脆い一面を初めて感じて、とてつもなく 自分も悲しみと不安がよぎった。 あれは、これから訪れることへの神様の忠告だったのかもしれない・・。 「今日な、荷物を運んでいたら、二号線で荷物がバラバラに飛んで行って、 一個一個トラックから降りて車の間をひろってあるいたんよ・・。 轢かれそうになって怖かったわ~大変やった・・。ああ~疲れた・・。 ユリ、眠い。疲れた・・。」
胎動も感じる様になった。
相変わらず、酷いつわりに苦しみながら毎日毎日吐くばかりだったが、シゲちゃんがとにかくよくサポートしてくれたおかげで頑張れた。
しかし…お風呂の時間はやっぱり携帯ばかり見てる…。
一体、何なんだろう…。
パートを止めてからはシゲちゃんの休みの度に母親に会いに行き、帰りに住宅展示場や、土地、中古住宅を見て回ったりして二人の時間は流れていった。
今日も母親に会いに行き、帰路についた。
シゲちゃんが不意に携帯を手に取った。
助手席にいた私は、妙に気になった。
フッと一瞬、携帯画面が見え、女の名前が…!
私は、シゲちゃんの携帯を見せてと言って
奪うように手に取った。
「ルミコ」…………。
メール本文↓
残念ながら陰性でした。
心配かけてごめんなさい。
またお話し聞いてくださいね。
何なの…………。
これ!
咄嗟に口にする。
シゲちゃんの表情がみるみるうちに鬼の形相になる。
「何でもねぇ!ユリ、お前俺を信用出来んのか!」
詰め寄る私に、シラを切り逆上する夫…………。
ルミコって誰?
陰性って何が!
一気に青ざめる二人…。
夫婦のピンチだった。
いろんな思いが駆け巡る…。
確か、まだ付き合い始めの頃にメル友がいるって言ってた…。
お風呂の時間は決まってベランダで携帯ポチポチ、メール。
嫌な胸騒ぎがする…。
何なの…………。
陰性って。
何かの血液検査?
それとも、妊娠検査?
妊娠検査なら…………。
シゲちゃんと…。
えっ!どういうつもり?
私はまだ妊娠初期。
ルミコって女性が妊娠検査したという事は、私が妊娠陽性になって1~2ヶ月後…!
どうして…!
いや、シゲちゃんに限ってそんな筈はない!
私達は夫婦として歩み始め、マイホームまで生まれくる我が子の為に探し、赤ちゃん用品を見に行ったりしてる。幸せな家庭に、よりによってそんな!
そんな話をシゲちゃんとすると、シゲちゃんは真っ向から断固否定する…。
だけど、今までのシゲちゃんを見て、私にはどうもそんな不真面目な所が見当たらない。
仕事もやり手だし、家庭一番という思いがひしひしと伝わってくる。
何かの間違いだろう。
私は、シゲちゃんをそれ以降責めたりはしなかった。
それは、シゲちゃんがきちんとした人間だと信じて疑わなかったからだ。
それからというもの、私の悪阻は悪化の一途を辿るようになった。
母親は大学病院から 自宅近くの市民病院に移され、最期までの時を過ごすようになった。
毎日毎日二日酔い状態の私…。つわりをナメていた。はっきり言って、出産より嫌だ。
目が覚めれば異様な吐き気、もう何日もまともな食事がとれてない。
シゲちゃんは気を利かして買い物をしてきてくれた。
ある日、シゲちゃんはゲーゲー吐いている私に「食え食え!吐いてもええから、食わなアカン!」と無理矢理
お好み焼きを目の前にデーンと置いた。
つわりの時にコッテリ係はかなりキツイ!
私は、食べれないと拒否したが、シゲちゃんは箸を持って口に無理矢理お好み焼きを入れようとする。
咄嗟に、「こんなの食べれんわー!」
そういった。
なのに、「皆我慢して食べとるんや、〇〇ちゃんも(会社同僚の嫁)〇〇も(シゲちゃんの妹)」!
私は、シゲちゃんが他の女性を引き合いに出したのがこの時、無性に腹が立って仕方無かった。
そして、ルミコが頭を過った…。
その瞬間、
「うるさい!」
そう叫んでシゲちゃんが飲んでいたビールをシゲちゃん目掛けて引っかけてしまった。
「こぉのクソガキがぁー!」
シゲちゃんは怒りもしたが、その後寂しそうに座ったままビールを拭いて、テレビを付けて一人きりでお好み焼きを食べていた。
あの日が忘れられない日になりました。
初めてのケンカでした。
あんなほのぼのした愛情のあるケンカが出来るのなんて、冷めた夫婦ではない事です。
ケンカももう出来なくなって6年…。
未だにあの頃が本当に幸せだったと感じます。
丁度その頃、母は地元の市民病院で最期までの時を迎えていた。
私は、悪阻に苦しみながらも、母との一分一秒を共に過ごしたくて、足繁く母の病室を訪れた…。
母に妊娠していた事は伝えていた。母はいつも 元気で可愛いい赤ちゃんが生まれますように…。そう言って私とお腹の中の子を気遣ってくれた。
悪阻で苦しい事を察して、母はよく
「5ヶ月に入ったら安定期、きっと落ち着く」
そう言って励ましてくれた。
「安定期になったら、今度は何でも美味しくなって、びっくりするくらい食べれるよ」
まだこの頃はこんな会話が出来ていたのに…。
夏。
その夏は例年より遥かに暑い夏だった。
シゲちゃんがうちわを片手にお見舞いに来てくれた。
地元の花火大会は病院の屋上から見た。
明日は念願の安定期突入日!
しかし…。
その日、母は他界してしまいました。
シゲちゃんとの間に授かった子の安定期を母も待ち望んでいたかのように…。
私は太陽を失った地球のようだった。
だけど、そんな私を蘇生させてくれたのは、シゲちゃんとお腹の中の我が子だった。
ただ二人が傍にいるだけで、折れてしまいそうな心は救われた。
家族って、本当に本当に濃いなと感じた。
苦楽を共にしてこそ、家族が成り立つと言うのが身に沁みて分かった気がします。
>> 88
私は、母親を若くして奪った「癌」という病魔が心底憎かった。
手厚い看護を施しても飽くなき闘いを次々に強いてくる悪魔。
癌なんて、この世から消えてしまえばいいと幾度となく思った。
私の非力な願いも希望も打ち砕く悪魔。
母は近い将来、おばあちゃんになるのを夢見ていた。
長年、年金を滞納なくずっと納めて来て、びた一文貰えず、老後の父親との第2の人生も無く天国へ旅立った…。
無念は痛いほど感じたが、あの悪魔を止める手立てが無かった。
そんな憎い悪魔は私を嘲笑うかのように、次なるターゲットを探していた。
また、ルミコも同じ人物を狙っていたのだ。
何も知らない私は、シゲちゃんとお腹の中に宿る我が子が支えてくれるおかげで、母親の死を段々と受け入れられるようになり、私達家族の新たな生活は落ち着きを取り戻していた。
母親の四十九日も無事に終えて、私のお腹はだんだんと大きくなっていった。
既にパートも辞めて、専業主婦になった私は、それなりに妊娠生活を楽しんでいた。
母が言っていたように安定期に入ってからは何でも美味しくなって食べれるようになった。
産婦人科のマザークラスに行くのも楽しくなり、帰りにはシゲちゃんが向かえに来てくれ、時にはシゲちゃんの実家に立ち寄って、義両親とお茶をしたり、出掛けたりと、細やかな幸せを感じていた。
アパートでの暮らしは、今から思えば夢物語のような甘い生活だった。
シゲちゃんにお弁当を持たせて送り出し、昼間は本屋さんや、スーパー、赤ちゃん用品を見て回ったり、散歩したり…。
夕方はシゲちゃんの帰りが待ち遠しくて、携帯のメールを度々チェック、帰宅時間に合わせて夕御飯を作り、ベランダに腰かけて、あの路地からリュックを背負ったシゲちゃんが歩いて帰宅するのを待つ。
シゲちゃんが帰宅すると嬉しくて、ちゃぶ台に沢山のおかずや飲み物が並ぶ。
いろんな話をしながらテレビを見て笑ったり、ふざけたり。
夜はゴミだしに一緒にいった。お月さまに照らされた二人の影と電信柱…。
ああ…あの頃に帰りたい…。
母が他界したのが8月。
出産予定日は、歳を越して1月の末。
秋も深まり、晩秋の頃だった。
シゲちゃんは私の体を気遣い、いつも休みの日は終日私と出来る限り一緒にいてくれて、買い物につきあってくれたり、マイホームを見に行ったり、ベビー用品を購入しに行ったりして、夫婦間係も安定期だった。
しかし、トラックの仕事は時間が不規則で長距離の仕事が入ると夜中や早朝に出て行く事もあった。
ある日、シゲちゃんは夕食を食べてから仕事があるからといって出て行った。
二時間位で帰る筈が、三時間、四時間経っても帰らない…。
五時間程経って、携帯に着信があった。
「もしもしユリ、今日は帰れんわ。すまん!」
「えっ?どしたん、シゲちゃん」
いつもの取引先の会社にトラックで荷物を運んだが、シャッターに鍵が掛かっていて、荷物搬入ができないと言われて、私はすんなりとシゲちゃんの言う事を信じた。
シゲちゃんが一晩中帰らなかったのは、後にも先にもこの時だけだった…。
だからこそ、何も疑う事もしなかった。
「まあ、そんな事もあるかな~」位にしか思って無かった。
それに、波風なんて全く立たない生活、もうすぐ生まれくる我が子に夢を膨らませて、人並みな幸せを感じていた。
実家の父も姉も、シゲちゃんの義両親も義妹夫婦との関係も良好で、皆が私達家族の船出を支えていてくれていて、私はこんな平穏無事な生活がずっと続くと信じた。
段々と大きくなるお腹。希望も夢も膨らんでくる・・。部屋には育児雑誌、ちょこちょこ二人で出掛けて買いそろえたベビー用品・・。私は自分の家族を持った喜びと、人並みな幸せに浸っていて、いつの間にか「ルミコ]なんていう女性の存在すら忘れかけていた。
毎日の近くに買い物に行く時間も楽しくて仕方なかった。
シゲちゃんが早く帰宅した日には一緒に歩いて買い物に行き、ご飯を食べて夫婦二人での水入らず」の団欒を楽しんだ。
安定している職務も任せられてきたし、その上、上司がマイホームを購入するなら、土地を提供してくれる話まで出てきた。しかも、その際はシゲちゃんの両親が家の頭金をかなり出すというのだ。
私たちは夫婦としても、家族としても、「一世帯」として歩み始めたのだ。
夫婦が手を取り合ってこれから自分たちの世帯を築いていくんだと実感して来た時だった。
結婚は自分たちだけでなく、それを取り巻くにとたちによっても成り立っている。
そして、公認の元支えられている。
出産、マイホーム、育児、生活・・。どれも大きなライフイベント、大事業だ。
結婚の重みを改めて感じ、そのパートナーに恵まれてことを心の底から感謝した。
11月22日・・。この日は「いい夫婦」の日。シゲちゃんは私を食事に誘ってくれた。と言っても、近所のよく行くラーメン屋さんだ。そこのラーメンは本当においしくて好きだった。
仲良く会話しながら行ったなあ~。クリスマスも近いからお店の前にはクリスマスツリーが出してあって、そのころはまだ珍しいLEDのブルーのとってもお洒落なツリーで、二人でツリーについて話したね・・。
特別な高級レストランとかじゃないから余計と今も切ないんだろうね・・。
夫婦って不思議。恋人とか彼女時代は華やかで、ちやほやされているころが記憶に残るのに、夫婦はこんな日常の何気ない記憶を思い出しては懐かしんだり、故人を偲んだり・・。
そういえば、この日いつもは替え玉を注文するのに、お腹一杯といって
食欲がなかったね。
あんなに好きなラーメンなのに・・。
少し食べて、もうお腹パンパンて言った・・。
おかしいのはそれだけではない。
家に帰ってから、シゲちゃんは目がかゆい、かゆいとしきりにいっていた。
翌日私は近所のドラッグストアーに目薬を買いに行った。
しかし、その目薬はなんの効果もなく、余計と痒みは増していって、目は段々と
周りの皮膚が爛れていった。
食欲も次第になくなってくる。
ちょうどそのころ風邪気味だったからだとシゲちゃんは言い張って仕事には毎日
出ていた。だけど、なんだか嫌な予感がしていた・・。
>> 81
しかし…あの女性にとってそれは最大のピンチだった。
シゲちゃんは永遠に私と生まれくる子供のものになる…。
あの女性は、何を考えたのか…。
…
目のかゆみが何とか落ち着いてきたころ、今度はトイレでシゲちゃんが私を呼んだ。
見ると、真っ黄色で、少しドロッとした感じのおっしっこが出ていた。
身体もかゆいと言っていた。
私は母を胆管、肝臓ガンで亡くしているので、シゲちゃん症状はもしかしたら、肝臓が悪くなっていて、黄疸が出ているんじゃないのか?と感じたから、病院へ行くように説得をした。
しかし、シゲちゃんは断として行こうとしない。
あんなに食べていたご飯も小食になってきた。
「絶対に肝臓が悪いんだ・・。」母の入院前の状態と似ている・・。
嫌な予感がする・・。
早く病院へいってほしい。何度も、何度も言って聞かせたが、逆切れ気味になって無理してまで仕事に行こうとする。
12月で忙しいのは分かるが、もう一人だけの身体じゃないということをわっかってほしい。
「バタンッつ!」ふっ切るようにしてシゲちゃんは仕事に行った。
その日、帰宅してシゲちゃんは仕事中にミスをしたことを弱弱しく、悲しそうに
話してくれた。
いつものシゲちゃんらしくない、弱く、脆い一面を初めて感じて、とてつもなく
自分も悲しみと不安がよぎった。
あれは、これから訪れることへの神様の忠告だったのかもしれない・・。
「今日な、荷物を運んでいたら、二号線で荷物がバラバラに飛んで行って、
一個一個トラックから降りて車の間をひろってあるいたんよ・・。
轢かれそうになって怖かったわ~大変やった・・。ああ~疲れた・・。
ユリ、眠い。疲れた・・。」
- << 104 それからは、どんどんと体調が思わしくないと訴える。しかし、病院へは一向に行こうとしない。口うるさくいってもただただ一日、一日が虚しく過ぎていくだけだった。お腹の痛みを段々と訴えるようになっていったが、仕事だけは休もうとはしなかった。 腹痛と目のかゆみ、黄疸であろうということは、素人の自分が見ても明らかに分かるほどだった。 ある日、帰宅してからしんどい、お腹が痛いと言ってすぐ横になった。 ご飯も食べようとしない・・・。 流石に心配で病院に行くように諭す・・。 最初は聞く耳の持たない感じだったが、私の気迫にやっと観念したのか、重い腰をあげた。 しかし、病院に行くのには条件が合って、本人で行くという・・・。 わたしがいたらいけないといった。 私は納得できなかったが、病院に行くのが先決と思って、しぶしぶ頷いた。 この時に、多分自分でも分かっていたのか・・・・・? 自分があまり病状が良くなく、進行しているということを・・・・。 あれは・・確か、夜中に掛りつけの救急を受診した。 暫く帰ってこない・・。 刻一刻と時間が過ぎていく・・・。 時計の針と睨めっこしながら、午後11時頃たどたどしく帰ってきた。 私は力のない声と、弱弱しい動作に、いつもと違った嫌な予感が差す。 本当に嫌な・・・それでいて、何故か強い焦りの様なものを感じた。 「何かがおかしい・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!!」 こんな嫌な焦りは初めてだ。 一体、何がこんなに不安で・・・ 何でこんなに焦るんだろう・・・。 本人は何てことは無いといって、とりあえず寝ると言っているが・・・・・。 布団を敷きながら、言いようのない不安と、焦りと、嫌な予感に苛まれる。 体調が悪くなってから、もう随分と長いこと快方には向かっていない。 いや、それどころか・・どんどんと悪くなっているではないか・・・・。 このままでいくと、この人は本当にどうなるのか・・・・。 本当のことが知りたい。
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500レス 3255HIT 作家さん -
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フーリーヘイド ~読む前の注意書きと自己紹介~
やはり女性は私に気が付いている様である。 とりあえず今は、 …(saizou_2nd)
500レス 5781HIT saizou_2nd (40代 ♂) -
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今日もくもり
たまにふと思う。 俺が生きていたら何をしていたんだろうって。 …(旅人さん0)
41レス 1334HIT 旅人さん -
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おとといきやがれ
次から老人が書いてる小説の内容です。(関柚衣)
9レス 291HIT 関柚衣
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11レス 255HIT 社会人さん (20代 女性 ) -
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