作家さんごっこ
人
m(;_ _)m どうも、はじめまして。
自己マンで書くので、気にしないで下せぇ。
新しいレスの受付は終了しました
『ハァ…ハァ…』
広大に広がるタスマニア砂漠。
世界最大と言われる砂漠を身一つで走破しようと考えた…バカ野郎がいた。
『ちッくしょう…水さえありゃ…こんな砂漠…屁でもねぇってのによ…』
バカ野郎が水を切らし…1時間程経っていた。
『ああ…目眩が…頭がクラクラして…』
バタ…
倒れ込むバカ野郎
『ここで…終わりか…こんなつもりじゃなかった…のによ。美味い酒…飲みてぇ…なぁ…』
意識が遠のいていく…
ガタガタ…ゴトゴト…
バカ野郎『…ぅ……ん…?』
何かが身体を揺らす。
その揺れで目を覚まし、周りを見渡すバカ野郎。
すぐ隣には大小、様々な大きさの樽や木箱等が無数に置いてある。
周囲と上部をカーキ色のボロい布で覆ってあり…布の切れ間から日差しが入って来る。
ガタガタ…と時より揺れ、動いて何処かに向かっている。
どうやら荷馬車の中に居るようだ。
バカ野郎『み…み…ずぅ…。』
近くある小さな樽の蓋をすがる様に開けると…中に水が入っている!
バカ野郎『み…みず…!』
バカ野郎は樽を持ち、一気に水を飲み始める。
ゴク…ゴク…ゴク…ゴク…
バカ野郎『ッぷぅ…た…助かった…。』
ガタン!ガタガタ…ゴトゴト…
バカ野郎『…ッと!』
時より、大きく揺れる荷馬車…樽や木箱がそれと同時に揺れる。
バカ野郎『荒い…運転…だな。』
そう呟き、荷馬車の先頭へゆっくりと這うように向かうバカ野郎。
バカ野郎『こ…こんな運転…すんのは、ガタイの良い…オヤジか…威勢の…い…良い若モンだな。』
目隠しとなっているボロい布をゆっくりと捲り覗くバカ野郎。
そこには、茶色のハットに茶色のベスト…中には白いシャツ。下はジーンズにウエスタンブーツを履いている…
小さな子供がいた。
バカ野郎『が…ガキ…?…ッう…。』
バカ野郎は意識が朦朧し、また気絶した。
荷馬車は止まる事なく、進んで行く。
>> 2
あれから数時間後…
???『おいッ!起きろよー!』
体を揺する子供
子供『おいってばー!』
目を覚ますバカ野郎
バカ野郎『…ぅ…ぅん?』
子供『オイラに感謝しろよー?兄ちゃんよー』
腕を組み、偉そうに仁王立ちする子供。
バカ野郎『あぁ…助けてくれたんだよな…感謝してる。…所で』
馬車から降りるバカ野郎。
子供『ホントに感謝してる?…ねぇホントに感謝してる?』
足に張り付き、見上げて尋ねる子供。
バカ野郎『(どこだ?…ここ?)』
頭をポリポリかきながら…周りを見渡す。
子供はゴソゴソと何かをしている。
バカ野郎は子供を見つめ…
バカ野郎『なぁ…ここ何処だ?』
子供『えッ!?あ、ああ…えっと…兄ちゃん…田舎モンだなー。ここはパヴァティ…豪遊の街だよ』
タスマニア砂漠から遥か東に広がる巨大なオアシス地帯の端…荒野との境目の一角に在る豪遊の街。
多くのセレブや旅行客が訪れるリゾート地でもあるこの町には、数多くのカジノや酒場等が存在する。
その為、ガラの悪い連中も多く…犯罪者も多く潜伏している。
夜にはネオンが灯り…活気がより一層に増す。
近くにはパスブル城があり、この街の治安を守っている。
>> 3
バカ野郎『ちょッと…待て…パヴァティって…?』
肩掛けの鞄から地図を取り出し地面に広げる。
子供『なに?そのバッチィ地図…雑巾みたい~キャハハ♪』
バカ野郎『ああッ?雑巾言うなッ!…てか、パヴァティは何処だッ!?』
子供は鼻を摘まみながら指差した。
子供『この辺だよ~バッチィ~』
バカ野郎『(マジか…随分離れちまったな…どうするかな…)』
地図を見つめ考え込むバカ野郎。
子供『本当にバッチィ地図だね~しかもかなり古い~キャハハ♪』
横目で子供を見つめ…
バカ野郎『(このガキんちょに…頼んでみるか?)』
子供『そうだッ!兄ちゃんお代まだ貰ってないよ~』
驚くバカ野郎
バカ野郎『はッ!?か…金取るのかッ!?』
子供『当たり前だよ~まぁ特別におまけして…1000ペタで良いよ~』
バカ野郎『せ…1000ペタッ!?ガキんちょ…ぼったくりにも程があんぞッ!』
子供『オイラだって商売やってんだいッ!』
バカ野郎『人助けに…代金なんか取るんじゃねーッ!』
子供『うるさいやぃッ!ハゲッ!』
バカ野郎『ハゲてねぇッ!…この…チビッ!』
子供『チビじゃないやいッ!…デブッ!』
バカ野郎『デブでもねぇわッ!てか、チビは認めろッ!』
子供『…………!!』
バカ野郎『……………!!』
二人の言い争いは、それから30分程続いたとさ…。
>> 4
子供『もういいやぃッ!…ぷんッ!』
そう言うと子供は荷馬車に乗り、そそくさと馬を走らせる。
バカ野郎『ったく…なんてガキんちょだ…全く…ん?』
馬車を走らせながら子供は振り向きニコッと笑い…角を曲がって消えていった。
バカ野郎『なんなん…だ…?』
ぼーっと立ち尽くす。
バカ野郎は不意に後ろのポケットに入れていた財布を…
バカ野郎『あ…あれ?…あれれ?』
バタバタと身体を探る。
バカ野郎『財布がねぇ…砂漠に落とし……はッ!』
財布を取られた事にようやく気づき…猛スピードで走り出すバカ野郎。
バカ野郎『あの野郎かッ!あのクソガキッ!』
ダッダッダッダッダッ…!
時すでに遅く…曲がり角の先に、馬車の姿はなかった。
バカ野郎『ハァ…ハァ…』
ヘナヘナと座り込む。
バカ野郎『お…覚えてろよ…ハァハァ…あのガキんちょ…次会ったらケチョンケチョンにしてやるッ!…はぁ』
落ち込む背中を夕日に照らされ…なんとも悲しげであった。
>> 5
バカ野郎『もぅいい…こんな日は…酒だッ!』
そう言いながら立ち上がり、金も無いのに酒屋を探し始める。
街には大通りがあり、そこに大きなカジノや酒場が一斉に並んでいる…言わばメインストリート。
夕暮れ時になると、徐々に人で賑わい始める。
バカ野郎『デケェ…カジノだなぁ。スロットにルーレット…ポーカーにブラックジャック…その他諸々ってか。』
大通りから一本横道を行き…さらに路地を通ると、沢山の宿泊施設があるホテル街に着いた。
バカ野郎『ひゃーデケェ。こんなホテル泊まってみてぇなぁ。』
それかから暫く歩くと、青果店や雑貨屋…武器防具屋が建ち並ぶ商店街に着いた。どの店も大きく品揃えも豊富で…セレブな主婦達で賑わっている。
バカ野郎『豪遊の街で無一文かぁ…泣けるぜホントに。しかし、一々デケェなぁ……お!』
大きな酒屋の前で立ち止まる。
バカ野郎『デケェし…高そうだな…』
考え始めるバカ野郎
バカ野郎『(きっと物価も高けぇし…ツケなんてできねぇだろうな(笑)…盗むか?いや…)』
ふと辺りを見渡すと…道のちょっと先に酒場の看板が見えた。
バカ野郎『…行ってみるか』
>> 6
高級ホテルと大型雑貨店の間…4畳程のスペースに小さな酒場がある。
小さな木製のカウンターがあり、椅子が3つ。随分使い古されているようで…木は黒く変色している。
カウンターの近くに酒瓶の入った棚があり、汚い値札がぶら下がってある。
酒場には屋根も壁もなく、吹きさらしになっていてカウンターの後ろに扉があり、どうやら亭主の家のようだ。
バカ野郎『リゾートって…雰囲気じゃねぇな…』
そう言いながら店内を物色する。
バカ野郎『キタねぇな…マジで(笑)…てか、誰も居ねぇのか?』
ふと…酒瓶の棚を覗き物色する。
バカ野郎『飲めんのかな…んと?【仁とニック】…なんだこりゃ?』
酒瓶の名前に爆笑するバカ
バカ野郎『こっちは…【パイルドライバー】…なに味だよッ!』
酒瓶にツッコミを入れるバカ
???『若造…ワシの店になんのようじゃ?』
バカ野郎『…!』
>> 7
バカ野郎は驚き、声の聞こえたカウンターの方へ振り向いた。
そこには、年齢は60歳ぐらいだろうかと思われる…老人が頬杖をついて、こちらを見ている。
長い白髪で頭には赤いキャップを被り、白いタンクトップの上に赤いアロハシャツを着ている。
タンクトップに彩飾されているスパンコールがキラキラと輝いていて…なんともファンキーな老人である。
バカ野郎『い…いつから…そこに…?』
恐る恐る聞いてみるバカ野郎。
ファンキー老人『…ずっと居たがの?』
バカ野郎『…へ?』
ファンキー老人『ワシはの…このカウンターの下で寝とるんじゃ。』
バカ野郎『………。』
ファンキーな老人『………。』
バカ野郎『え―――――――――ッ!?』
驚いて目が飛び出るバカ野郎。
ファンキー老人『え――――――ッ!?』
バカ野郎の飛び出た目に驚くファンキーな老人。
>> 8
バカ野郎『あッ!?ここでかッ!?…この下で寝てンのかッ!?』
驚いてカウンターに近づき下を覗くバカ野郎。
カウンターの下には確かに布団が敷いてある。
バカ野郎『な…なんてこった…てか、家で寝ろよッ!後ろにあんだろッ!?』
ファンキー老人『あれは、ワシの家ではないぞ?雑貨屋の倉庫じゃ。』
バカ野郎『あ…?じゃあ…ホントにここで?』
ファンキー老人『スペースは有効に使わねばのぅ~ハッハッハッ!』
声高々と笑うファンキーな老人。
バカ野郎『(ボケてんのか…コイツ?)』
ファンキー老人『ところで、若造…何をしに来たんじゃ?』
バカ野郎『え…あ、ああ…酒を…飲みに来たんだけど…。』
ファンキー老人『………。』
バカ野郎『………。』
ファンキー老人『え――――――ッ!?』
バカ野郎『お前…言いたいだけだろッ!』
なんともファンキーな老人である。
>> 9
ファンキー老人『さあ、飲めぃッ!』
ドンッ…とカウンターにジョッキを置いた。中にはなんとも言えない色をした酒が入っている。
バカ野郎『………。』
そっと老人を見つめる。
バカ野郎『こ…これは?』
ファンキー老人『ワシのオススメじゃが…?』
恐る恐るジョッキを手に取るバカ野郎。
バカ野郎『(なんだよこれ…罰ゲームじゃねぇかよ…)』
ファンキーな老人は嬉しそうにバカ野郎を見つめ
ファンキー『ほれ…ぐぃっと男らしく…ほれほれ』
バカ野郎『(クソ…腹くくるしかねぇか…いったれーッ!)』
腹をくくくったバカ野郎はファンキーな老人が作った酒を勢いよく…飲み始めた。
ゴックン…
バカ野郎『…。』
ゴク…ゴク…ゴク…ゴク…
一気に飲み干し、ドンッ…とジョッキを置く。
バカ野郎『………。』
ファンキー老人『………。』
バカ野郎『え―――――――――――――ッ!?』
思わず立ち上がるバカ野郎。
バカ野郎『なんでッ!?なんでッ!?こんな美味いのなんでッ!?』
ファンキー老人『ワシのオススメだからじゃわい』
そう言ってクールに気取るファンキーな老人。
バカ野郎『おやっさんッ!もう一杯くれッ!』
ファンキー老人『よし、それでこそ男じゃ!』
それから数時間…バカ野郎は酒を飲み続けた。
ファンキーな老人とも、すっかり打ち解け…仲良くなり、二人で酒を飲み…語り合った。
>> 10
バカ野郎『…ッぷは――ッ!ウメェェッ!』
あれから相当飲んだバカ野郎。
小さなカウンターはジョッキやグラスで一杯になり…行き場ない空ジョッキやグラスは、バカ野郎の周りに転がっていた
ファンキー老人『何度見ても良い飲みッぷりじゃの~』
ファンキーな老人は、かなり出来上がっているようだ
バカ野郎『まだまだ…こんなのぁ…量の内じゃねぇよ…へへ』
と…顔を赤らめ、自慢気に言う。
???『そこの青年。』
ボロ酒場に鉄の鎧を身に纏った男が3人近寄って来る。
その真ん中の男…兜を着用していない、色白で長い黒髪の男が話し掛けてきた。
バカ野郎『…あッ?あんだよ?』
不機嫌そうに振り向くバカ野郎
黒髪の鎧男『あまり…飲み過ぎないようにしてくれ。街の治安の為にもな。』
バカ野郎『…あぁ。』
そう言うと鎧男に背を向け、酒を飲むバカ野郎。
鎧男『………。』
ファンキーな老人に目を向け。
鎧男『ご老人…貴方も、程々に。』
軽く会釈するファンキーな老人。
鎧男『では…。』
そう言い…ネオン灯る街へと消えていった。
>> 11
バカ野郎『…なぁ、おやっさん。』
ファンキー老人『…なんじゃ?』
黒髪の鎧男を見ながら…
バカ野郎『ありゃ…なんだ?』
ファンキー老人『なんじゃって…あやつらはパスブルの兵士じゃよ。』
バカ野郎『(パスブル…?あぁ…ガキんちょが言ってたような…。)』
ファンキー老人『…なんじゃ?どうかしたか?』
バカ野郎は周りを見渡しながら…
バカ野郎『いやぁよ…なんで兵士がこんなに多いんだ?』
ファンキー老人『………。』
バカ野郎『実は、ちょっと気になっててよ…さっきから、やけに多く見んだけどよ。』
ファンキー老人『今は警戒を強めとるんじゃよ…あんな事件があったんじゃ。無理もないわぃ。』
遠くを見つめ語る老人
バカ野郎『…事件?』
>> 12
ファンキー老人『この街はの…今では豪遊の街…リゾート地と言われておるが、昔は違っての…』
バカ野郎『おっちゃん…おかわり。』
ファンキーな老人『………。』
バカ野郎『ん?…どした?』
カウンターのグラスを掻き分け身を乗り出す老人。
ファンキー老人『随分飲んだが…金は持っておるのか?』
物凄い目で、バカ野郎を見つめる。
バカ野郎『(ヤベェ…)』
一気に酔いが覚めるバカ野郎。
ファンキーな老人『持っておるのか…持っていないのか?』
ズイズイと寄ってくる!
バカ野郎『い…今は…も…もも持ってない…ハハハ。』
ファンキーな老人『なぁ~ん~じゃ~とぉ~?』
バカ野郎『ま…待ってッ!待ってくれッ!今は…ないけど…もも…持ってるんだッ!両手じゃ抱えらんないくらいな…ハハハ』
必死にファンキーな老人をなだめるバカ野郎。
ファンキーな老人『どーッ!こーッ!にーッ!あーッ!るーッ!?』
ズイズイズイズイ寄ってくる!
バカ野郎『い…いや…あれだ、ちょっとッ!待ってッ!ぎ…銀行だッ!銀行にあるんだッ!両手じゃ抱えらんないからよ…ハハハ』
ファンキーな老人『………。』
バカ野郎『(ヤベぇ…絶対に…信じねぇよな…このじぃさんが…信じるわけねぇ…。)』
バカ野郎の毛穴から、汗がほとばしる…!
ファンキーな老人『………。』
バカ野郎『………。』
ファンキーな老人『え―――――ッ!?お前金持ちかッ!?』
バカ野郎『(し…し…し……信じたッ!?)』
>> 13
ファンキー老人『しかしのぅ。』
顎を手で擦りながら、首を傾げるファンキー老人
ファンキー老人『なぜ…そんなに金を持っておる?』
バカ野郎『…あ?』
ファンキー老人『ボロい灰色の…なんじゃ…コートかのぅ?胸には、鉄の胸当てか?…それに…』
バカ野郎の服装を上から下へ舐めるように見るファンキー老人。
バカ野郎『…う!(ファッションチェックかよッ!)』
ファンキー老人『…汚い迷彩の…軍パンに、ブーツかのぅ?…とても、金を持っておるとは…。』
バカ野郎『み…見た目で判断してんなよ…おやっさん!』
バカ野郎は立ち上がり、コートの背中に刺繍された紋章を見せる。
ファンキー老人『…?』
バカ野郎『これはな…魔法学校を卒業した者しか貰えない…特別なコートなんだ。』
ファンキー老人『なんとッ!おぬし…魔法使いかのッ?』
>> 14
ファンキー老人『魔法使いは、高貴で皆が憧れる職業と聞くわぃ…王国の戦闘員や守備隊の他、教会や聖域に勤める者が多く…働く所に困らぬと。』
バカ野郎『詳しいな…おやっさん。』
そう言い、下に置いてあるグラスやジョッキを拾ってカウンターに置くバカ野郎。
ファンキーな老人『何故に魔法使いのおぬしが、こんな場所におるんじゃ?
』
ファンキーな老人はカウンターのグラスを片付けながら、バカ野郎に問いかける。
バカ野郎『まぁ…あれだ、皆が皆そうじゃねぇよ。』
頭をポリポリとかきながら、周りを見渡すバカ野郎。
すっかり日は落ち辺りは暗くなっていた。
街は活気を増し…人々の楽しそうな声が、何処からか聞こえてくる。
バカ野郎は、落ちていた最後のグラスをファンキーな老人に手渡すと…
バカ野郎『おやっさん…金は必ず明日払うから…今日はつけといてくれねぇかな?』
ふぅ…と、ため息を吐くファンキーな老人。
ファンキー老人『わかったわぃ…必ずじゃぞ?』
少し笑いバカ野郎を見る。
バカ野郎『ああ、必ず払う…ありがとう。』
ファンキーな老人に頭を下げるバカ野郎。
>> 16
ロキ『はぁ…。』
ため息を吐き、うなだれるロキ。
ロキ『飲み過ぎた…てか長居し過ぎだ…マジで。』
明るい間に街を探索しようと思っていたロキだが、その時間を汚いバーのマスターと過ごしてしまったと後悔していた。
ロキ『金は…どうすっかな。
このまま逃げるか…いや、あのおやっさんは良い人だし…。』
立ち止まり、考えるロキ。
ロキ『まぁ、どっちにしても…金がねぇとな。』
そう言うと、ロキはメインストリートへと向かう。
メインストリートは先程とは打って変わり、大勢の人で溢れている。
セレブ達を乗せた馬車が走り、旅人や詩人がお酒を片手に歌い踊っていて…ガラの悪い連中も沢山集まっているようだ。
ロキ『こりゃあ…スゲェ人だな、とりあえず見て回るか。』
>> 17
ロキ『さっすが…豪遊の街って言われるだけあるな。』
メインストリートを歩きカジノや酒場を物色するロキ。
ロキ『よし…ここは男らしく、カジノで勝負して…って掛金すらねぇんだなぁ…オレ。』
悲しげな表情を浮かべるロキ。
ロキ『………。』
ロキの頭にガキんちょの顔が浮かんでくる。
ロキ『あ…の…クソガキ!』
込み上げてくる怒りを、必死に抑えようとするロキ。
ロキ『ああーッ!…クソッ!考えても仕方がねぇ!』
と、独り言を言いつつ渋々と歩くロキ。
暫く歩くと一際大きな酒場を見つける。
ロキ『デケェな…今までのもデケェが、こっちはもっとデケェ。』
酒場の看板を見るロキ。
ロキ『【ハウス10ボス】…変わった名前だな…ちょっと行ってみるかな。』
ロキはハウス10ボスへと入って行った。
>> 18
ロキ『ひやぁぁ…こりゃスゲェな。』
ハウス10ボスの中に入り、まずロキの目に飛び込んできたのは巨大な螺旋階段。
店の中央にドンッ!…とそびえ立ち、ぐるぐると渦を巻いている。
螺旋階段には彩飾が施され、深紅の絨毯が敷かれている。
内装もとても綺麗で美しく、アンティーク製の机や椅子…本革のソファ等が様々な場所に無造作に置かれ…セレブ達はそこに座り、楽しく談笑している。
机には高価なボトルが沢山開けられて…どうやら話も弾んでいるようだ。
ロキ『どんだけ金注ぎ込んでんだ…ここ。』
贅沢極まりない酒場の造りに、言葉を失うロキ。
酒場をフラフラと歩くと、店の奥に巨大なカウンターを見つけた。
そこで酒を注文するようで、人が沢山集まっている。
ロキ『オレも…飲みてぇ…。』
ふと、上を見上げるとシャンデリアが綺麗に輝いている。
そのシャンデリアを呆然と見つめるロキ。
ロキ『豪遊の街の名は…伊達じゃねぇな……よし!』
ロキはそう言うと螺旋階段の周りを回り、周囲を見渡し始める。
>> 19
螺旋階段の近くには、パスブル兵士の駐在所がある。
その為、この酒場には悪い輩やゴロツキ共は好んでは近づかないようだ。
1階をぐるりと見て回るロキ。その目は鋭く、ギラギラと輝いている。
ロキ『…違うな。』
ふと、天井を見上げるロキ。
ロキ『ここ、3階建てだったっけな……よし、上行ってみるかな。』
そう呟き、螺旋階段を上がるロキ。
ロキ『しかし、豪華すぎる…酒場には勿体ねぇ内装だなぁ…ホントに。』
螺旋階段の手すりを触りながら、周りを見渡すロキ。
ロキ『高級フレンチでも…やりゃあ良いのによ。』
階段を上がり2階に着くと、ロキは周りを同じく見渡し始める。
2階も1階同様に酒に酔ったセレブ達が楽しそうな声を上げている。
ロキ『………。』
ロキは2階を歩いて回る。
酔っ払いに絡まれながらも、目を鋭く光らせ何かを探している。
ロキ『チッ…ダメだな…3階に賭けるしかねぇな。』
ロキは3階へと向かう。
>> 20
3階に上がると、ロキは同じく周りを見渡す。
ロキ『………おッ?』
ロキが見つめる先に、1人の男がソファに座り酒を飲んでいる。
ロキ『よし…勝負してみっかな。』
ロキは男の元へと歩みよる。
その男は、少し色黒で上下金色のスーツに身を包んでいる。
エナメルの様な…ツルツルでピカピカと光る黒い靴を履き、頭には…長ーい長ーいシルクハットを被っている。
とても、異様な服装をしたジェントルマンである。
ロキ『すみません…ご一緒して、宜しいですか?』
ロキは迷わず、痛いジェントルマンに声をかける。
痛いジェントルマン
『ん…ああ…構わんぞ。』
ロキ『ありがとうございます。』
痛いジェントルマンは快くロキを受け入れる。
随分と酒を飲んでいる様で、アンティークの机には空のボトルが沢山置いてある。
ロキは痛いジェントルマンの向かいのソファに座り、また直ぐに声をかける。
ロキ『いやぁ…しかし、素晴らしいお召し物ですね!』
痛いジェントルマン
『………。』
ロキ『(…う!…し、失敗したか?)』
痛いジェントルマンはロキを黙って見つめる…と。
痛いジェントルマン
『よしッ!…君が気に入ったッ!!』
ロキ『…ッ!』
>> 21
突然の大きな声に、ビクッ…と驚くロキ。
痛いジェントルマン
『このファッションセンスが理解出来るとは…なかなかのハイセンスだッ!!』
ロキ『あ…ありがとうございます。(てか、声でけーよッ!)』
痛いジェントルマンは満面の笑みを浮かべ、ロキに大声で話しかける。
痛いジェントルマン
『実は…このスーツはオーダーメイドなんだッ!!見たまえ…素晴らしい作りだろうッ!?』
ロキ『お…オーダーメイドッ!?ま…マジっすかッ!?』
わざとらしく驚くロキ。
痛いジェントルマン
『そうだッ!マジだッ!!…このスーツには、私しか似合わんッ!!』
ロキ『スゲェっすッ!カッコイイっすッ!!』
痛いジェントルマン
『いやッ!…君はホントに、センスが良いッ!!君が気に入ったッ!!』
どんどんヒートアップする痛いジェントルマン。
無理矢理ヒートアップさせ…頑張るロキ。
痛いジェントルマン
『実はなッ!実は…この帽子も…ッ!』
ロキ『オーダーメイドッ!?』
少し食いぎみに言うロキ。
痛いジェントルマン
『そうだッ!さすがだッ!…君はホントに、見る目があるッ!!』
ロキ『あ…ありがとうございます。(辛い…(泣)』
>> 22
痛いジェントルマン
『よしッ!ホントに君が気に入ったッ!!…気に入ったぞッ!!…いや、もう好きだッ!!』
そう言うと、痛いジェントルマンは金のスラックスの後ろポケットから、金色に輝く長財布を取り出す。
ロキ『(キターーーーッ!!)』
長財布の中には、札がギッシリと詰まっている。
ロキの目が、金色に輝く…!
痛いジェントルマン
『さあッ!これで君も…ッ!
成り上がってみよッ!!』
痛いジェントルマンは、財布から1000ペタ札を差し出す。
ロキ『………。』
1000ペタ札を受け取りジッと札を見つめるロキ。
痛いジェントルマン
『いやッ!!今日は良い日だッ!!ハッハッハッー!!』
そして、1000ペタ札越しに…痛いジェントルマンの金色財布を見つめるロキ。
痛いジェントルマン
『…んんッ!?どうしたッ!?』
ロキ『え?あ、いや…あの…ハハハ…いやぁホントに良い日ですねッ!…ハハハ~。』
暫し…笑い合う2人。
ロキ『そうだッ!もっと…立って見せて下さいッ!』
立ち上がるロキ。
痛いジェントルマン
『よしッ!良いだろうッ!…見ろッ!…見てしまえッ!!』
同じく立ち上がるジェントルマン。
ロキ『…はッ!こ…この靴もッ!まさかッ!』
痛いジェントルマン
『もちろんオーダーメイドだッ!!』
それから1時間…ロキは誉めて誉めて誉めまくった。
>> 23
ロキ『ふぅ…疲れたマジで。』
ハウス10ボスから出るロキ。
この1時間で心なしか…ゲッソリして見える。
ロキ『あの金ピカ野郎…話が長ーし、声でけーし…でも。』
そう言い笑うロキの右手には…なんと金色に輝く財布がッ!
ロキ『面倒だから…丸ごと貰ったぜぃ♪ちょろいもんだ♪』
ポツ…ポツ…
ロキ『…あ?』
店を出て直ぐに、雨が降り始める。
ロキ『ッたく…雨かよ…。』
ロキはコートのフードを被り、小走りに路地へと入って行く。
ロキ『さすがに…ちょっと離れた方が良いよな…。』
ザ―――――――――…
雨は次第に強くなる。
ゴォン…ゴロゴロ…
闇空には、雷が轟始める。
ロキ『こりゃ…ひでぇ雨だ。』
細い路地に入ると、街灯もなく真っ暗で先が殆ど見えない。
その路地は人が2人やっと通れる程の幅で狭くなっている。
ロキ『………ん?』
雷鳴が轟く刹那…細く暗い路地が照らされる。
照らされた路地の先に、誰かが居るのが一瞬見えた。
ロキが近づいても、動く気配がない。
ロキ『おい…?』
???『………。』
ロキは更に近づき、男に話かける。
ロキ『ちょっと…どいてくれねぇか?』
???『有り金…全部置いてけ。』
ロキ『…あ?』
>> 24
ロキは暗闇の中で何かが光るのが見えた。
???『…聞こえなかったか?有り金置いてけ…。』
ロキ『…!』
空が光ると、それが鉄爪の刃だと…はっきり見えた。
その男は、肩から腕そして手にかけて鉄当ての様な…ガントレットを身につけ、手の甲に3本の長い刃が付いている。
ザ――――――――――…
雨はより一層強くなる
ロキ『断るって…言ったら?』
???『………。』
ゴゴォン…ゴロゴロ…
雷鳴が雨空に轟いた…
その刹那!右腕の爪付の鉄甲で襲いかかる!
ロキ『ッ!!』
ヒュッ
ロキは顔に向かって来る鉄爪を間一髪…身体を反らして避ける
ロキ『(は…早ぇッ!)』
…ドゴォンッ!
空を切った鉄爪は、そのまま路地の壁に突き刺さる!
ロキ『…ッ!!』
???『………。』
ズボッ…
突き刺さった鉄爪を抜く、謎の男。
ピカッ…ゴゴォン…!
空に雷鳴が轟き光った…その時、男の顔が照らされる。
男は顔に鉄仮面を付けていた。
ロキ『な…なんだ…お前ッ!一体…何モンだッ?』
鉄仮面の男『オレを…知らないのか…?』
ロキ『…ッ!?』
鉄仮面の男『それは…好都合。』
そう言い…鉄仮面の男はロキに再び襲いかかる!
>> 25
ロキ『ちょっとタンマッ!!』
手を付き出すロキ
ピタッ…と止まる鉄仮面男
ロキ『言っとくが、オレは…魔導師だ…。』
鉄仮面男『…!?』
ロキ『接近戦は…不向きでよ…へへ…。』
鉄仮面男『………。』
ゆっくり後退りするロキ
ロキ『1つ…提案があるんだけどよ…なぁ…?』
鉄仮面男『………。』
ロキ『は、離れて…た…戦わないか?』
更に後退りするロキ
鉄仮面男『笑止ッ!!』
そう言い放ち、猛スピードで襲いかかる…鉄仮面男!
ロキ『うおぉぉぉぉぉぉぉッ!!』
そう叫び、猛スピードで逃げるロキ
ダッダッダッダッダッダッダ
ロキ『ハァッ…ハァッ!…ッん、ハァハァッ!』
細く入り組んだ路地を走る
ロキ『(なんだッ!なんだよ…アイツッ!…鉄爪で壁に穴開けるとか…反則だろーッ!!)』
振り返るロキ…鉄仮面男は猛スピードで追ってくる。
ロキ『ちッ…くしょうッ!ハァッ!ハァッ!…振り切れねぇッ!』
鉄仮面男『(接近戦は不向き…それでオレの鉄爪を避けた。あの反応スピード。コイツは…)』
ロキ『(あの怪力に…この運動能力。動体視力もハンパねぇッ!アイツは…)』
ロキ『只者じゃないッ!』
鉄仮面男『只者じゃないッ!』
>> 26
雨が降りしきる中…必死に逃げるロキ。
突然の雨に驚き、人々は近くの酒場やカジノに入り雨宿りをしているようで、人で溢れていたメインストリートも今では閑散としていた。
ロキ『ハァッ!ハァッ!…人が居ねぇ…ハァハァッ…あ?』
振り返ると鉄仮面男が居ない。
ロキ『ハァハァ…ふ…振り切れたか?』
周りを見渡すロキだが、鉄仮面男の姿は確認できない。
ロキ『とにかく…もう少し離れるか。』
ロキはメインストリートを跨ぎ、入り組んだ路地を進み…何処かに身を隠そうとしていた。
ロキ『ハァ…ハァ…ここまで来れば…大丈夫か。結構中心から…離れちまったな。』
鉄仮面男『何が…大丈夫なんだ?』
ビクッと驚き、振り返るロキ。
ロキ『なッ…!』
鉄仮面男『オレから…逃げられると思うな。』
ため息を吐き、鉄仮面男にガン飛ばすロキ。
ロキ『ホントに、しつけぇ…野郎だな。』
身構える鉄仮面男。
鉄仮面男『………。』
ザ―――――――――…
ゴォン…ゴロゴロ…
ロキはコートの袖を捲り、少し笑う。
ロキ『仕方がねぇな…相手してやるよ。』
>> 27
鉄仮面男『…フン。』
鉄仮面男はロキに真っ直ぐ向かって行く。
ロキは右手を鉄仮面男に掲げ…念じる。
ロキ『ファイヤーボール…!』
鉄仮面男『…!』
ロキの掌が赤く光る…が!
プスン!…プスプス。
ロキ『………。』
鉄仮面男『………。』
ロキ『え――――――――――ッ!?』
と、叫ぶロキに容赦なく右腕の鉄爪を振り回す!
ロキ『…ッと!』
ブォン!…と、空を斬る鉄爪…ロキは身体を反らし、避けてみせる。
鉄仮面男は振り回した勢いを生かし、そのまま身体をグルン…と回してロキの腹部に回し蹴りを叩き込む!
ロキ『ぐッ!?』
ドンッ!…とロキにヒットし、ロキは3メートル程飛ばされる。
ロキ『いッ…てぇ…あの野郎…なんて馬鹿力だ…。』
鉄仮面男は追撃を浴びせようと、ロキへと向かってくる。
ロキ『…くッ…そ!酒飲み過ぎて…魔法が使えねぇじゃねぇかよッ!』
ロキは立ち上がり、右手を近くにある大樽に掲げ…念じる!
ロキの掌が紫色に光る…!
ロキ『ディプレストッ!』
すると、大樽が光り…浮かび上がる。
ロキ『お…!こっちは使える!』
鉄仮面男『…!』
ロキは大樽に掲げた手を、鉄仮面男の方へ振る。
すると、大樽が猛スピードで鉄仮面男に向かって飛んでいく!
鉄仮面男『…フン!』
ズバッ!
飛んできた大樽を鉄爪で下から上に切り裂く鉄仮面男。
すると、樽の中から大量の水が飛び出し鉄仮面男に降りかかる。
バシャアアン…!
鉄仮面男『………。』
>> 28
ロキ『ハッハッハッ!中身確認しろよ…単細胞ッ!びしょ濡れじゃねぇかッ!』
鉄仮面男『てッ…めぇ…ッ!』
鉄仮面男は猛スピードでロキに向かって行く!
ロキ『この雨じゃ…びしょ濡れもクソもねぇか…!』
そう呟くと、ロキは近くにある木箱に右手を向ける。
ロキ『(コイツは典型的な、猪突猛進型…距離さえとれば。)』
ロキ『ディプレストッ!』
鉄仮面男『フン…またそれか…三流魔導師がッ!』
ロキの右手が紫色に光り、木箱が浮かび上がる。
ロキ『三流言うなッ!…この単細胞ッ!』
ロキは浮かせた木箱を鉄仮面男に向けて飛ばす。
鉄仮面男『…フン』
向かってくる木箱を上に軽く飛び上がり避け、そのままロキに襲いかかる鉄仮面男。
鉄仮面男『何度も同じ手がッ!…通用すると思うなッ!』
ロキ『ッ!』
右腕の鉄爪を振りかぶり、ロキを狙う…!
ロキ『ディプレストッ!』
鉄仮面男『なッ!?』
ピタッと空中で動きが止まる鉄仮面男。
鉄仮面男『ぐッ!?身動きがッ!?』
ジタバタもがく鉄仮面男。
ロキ『へへ…捕まえたぜ…単細胞。』
>> 29
ロキは鉄仮面男に向けた右手を上に少しずつ上げて行く。
ロキ『ちッ…きしょう!お、重てぇ…!』
鉄仮面男は高く高く…雨空へと上がって行く…!
鉄仮面男『く…ッ!』
ロキ『いい眺めだろ…?単細胞ッ!…へへ。』
空高く…10メートル程上がった鉄仮面男。
ロキは右手を止めて、周りをキョロキョロと見渡す。
ロキ『(さて…どうすっかな…壁にぶち当てるか?…いや。)』
鉄仮面男『………。』
鉄仮面男は、何やらカチャカチャと右手のガントレットを触っている。
ロキはキョロキョロしていて気がつかない。
鉄仮面男『単細胞はテメェだッ!三流がッ!』
カチッ!…という音と共に、鉄爪が1本飛び出し、ロキに向かう!
ロキ『…あ?』
ドスッ!…
飛んでくる鉄爪に反応して身体を動かしたロキだか、
避けきる事ができず…鉄爪はロキの右膝に突き刺さる!
ロキ『ぐあぁあッ!…痛てぇッ!』
右膝を手で抑え、痛みを堪える様にうつ向くロキ。
魔法の拘束が解けて、落下する鉄仮面男。
スタッ…と着地し、ロキに近づく鉄仮面男。
鉄仮面男『残念だったな…。』
ロキが見上げると、目の前鉄仮面男が立っている。
ロキ『…爪が…と、飛ぶって…反則だろ。』
鉄仮面男『フン…飛ばないって、誰が言ったよ?』
そう言い、爪をロキの顔に当てる。
鉄仮面男『終わりだな…三流。』
>> 30
ロキ『…くッ!』
鉄仮面男『…死ね。』
鉄爪を振りかぶりロキの顔に狙いを定め…右腕を振る…!
ロキ『ッ!!』
???『そこまでだッ!』
ガキィィィンッ!
白く輝く長剣が鉄爪を受け止め、弾く…!
鉄仮面男『…ッ!?』
ロキ『あ…ッ!?』
そこに現れたのは、あのボロ酒場で会った黒髪の鎧男だった。
黒髪の鎧男『いたぞッ!!ここだ―ッ!!』
黒髪の鎧男の声と共に、パスブル兵が一気に集まってくる。
細い路地は完全に包囲された。
黒髪の鎧男『鉄爪仮面、今日こそ大人しく…捕まってもらう。』
ロキと鉄爪仮面の間に割って入る黒髪の鎧男。
ロキ『て…鉄爪…仮面…??(ダセェ…。)』
鉄仮面男改め、鉄爪仮面は背後に迫るパスブル兵を横目にロキを見る。
鉄爪仮面『命拾いしたな…三流。』
そう言うと、鉄爪仮面は高く飛び両側の路地の壁を交互に蹴って上へと登って行く。
それをポカーン…と見つめるロキ。
ロキ『す…スゲェ。』
黒髪の鎧男『上に逃げるぞッ!逃がすなッ!』
パスブル兵達『…ハッ!』
一気に屋上まで上がった鉄爪仮面は、一度こちらを見下ろすと何処かへ消えて行った。
パスブル兵は散らばり鉄爪仮面を追って行き、その場にはロキと黒髪の鎧男…そして数人のパスブル兵だけとなった。
>> 31
ロキ『いッ!…てぇ…。』
右膝を抑えて座り込むロキ。
黒髪の鎧男『大丈夫か?』
ロキの膝を見る黒髪の鎧男。
黒髪の鎧男『これは……手当てが必要だな。』
ロキ『い…いやッ!だ、大丈夫だ…ハハハ…このくらい。』
ロキはゆっくりと立ち上がり、足を引きずる様に歩きだす。
黒髪の鎧男『………。』
急いでこの場から去ろうとするロキ。
そのロキに声をかける黒髪の鎧男。
黒髪の鎧男『ところで、君は…オーダーメイドが好きかな?』
ビクッ…と驚き、立ち止まるロキ。
黒髪の鎧男『ハウス10ボスで盗難があってね。』
ゆっくりとロキに歩みよる…黒髪の鎧男。
ロキ『え?と、と…盗難があったんですか…?いやぁ…ホントに、世も末ですね…ハハハ。』
黒髪の鎧男『丁度…君と同じ服装をした人を探していたんだ。』
ロキの前に立ちはだかる黒髪の鎧男。
ロキは必死に視線を反らす。
ロキ『ハハハ…す、スゴい偶然ですね…ホントに…ハハハ。』
黒髪の鎧男『………。』
ロキ『ハハハ…ハハ…。』
黒髪の鎧男『何か…知ってるよな?』
ロキ『…はい。(泣)』
>> 32
ここはパスブル城の地下。
あれからロキは、城の地下牢獄へと連行されていた。
カチャ…キィィィ…
牢の鍵をあけ、扉を開くと…錆び付いた丁番の鈍い音が響く。
黒髪の鎧男『よし…入れ。』
ロキ『………。』
ロキは牢の中へと入る。
黒髪の鎧男『目隠しを取ってやる…妙な真似はするなよ。』
ロキは目隠しされ、腕を後ろに回され手枷を付けられていた。
ロキ『この状態じゃ…何も出来ねぇよ。』
黒髪の鎧男はロキの目隠しを取ると、牢の扉を閉める。
ガシャアアン…!
…と、大きな音が牢獄に響き渡る。
黒髪の鎧男『あの時…酒場で忠告したはずだがな…。』
そう話かけながら、牢の鍵を閉める黒髪の鎧男。
黒髪の鎧男『とにかく、頭を冷やし…罪を詫びる事だな。』
ロキ『………。』
黒髪の鎧男『後で医者を連れて来よう…傷の手当てをせねばな。』
そう言うと、黒髪の鎧男は階段を上がって行く。
ロキは何も言わず、辺りを見回す。
牢獄内は、2、3個の松明の明かりだけで…とても暗く…牢の中には、汚い便器と薄汚れたパイプベッドが置いてある。
ロキ『なにやってんだ…オレは…ッつ!…痛てぇ。』
右膝の痛みを堪え…ゆっくりとパイプベッドに腰を下ろすロキ。
ロキ『…はぁ。』
出るのは、ため息ばかりだった。
新しいレスの受付は終了しました
お知らせ
小説・エッセイ掲示板のスレ一覧
ウェブ小説家デビューをしてみませんか? 私小説やエッセイから、本格派の小説など、自分の作品をミクルで公開してみよう。※時に未完で終わってしまうことはありますが、読者のためにも、できる限り完結させるようにしましょう。
- レス新
- 人気
- スレ新
- レス少
- 閲覧専用のスレを見る
-
-
私の煌めきに魅せられて 感想スレ
0レス 24HIT 瑠璃姫 -
都市伝説よりも怖いこと。
2レス 80HIT 自由なパンダさん -
人類最大の難問解明
2レス 142HIT なかお (60代 ♂) -
小説 嘘つきは北進のはじまり酉肉威張ってセクハラ
7レス 124HIT 小説家さん -
束の間の現実逃避 無意味な文字の羅列 幸せへの片道切符
4レス 99HIT 小説好きさん
-
小説 嘘つきは北進のはじまり酉肉威張ってセクハラ
残業10時間未満とかどうしたらそうやって平気で嘘つけるのか良心もモラル…(小説家さん0)
7レス 124HIT 小説家さん -
満員電車とアタシとイケメン痴漢
見たいと思うテレビも無いし… 女子バレーやってるけど…それほど……(匿名さん85)
113レス 3185HIT 修行中さん -
私の煌めきに魅せられて
なんかよくわかんなくて次スレ?になっちゃったけど感想がほしくなりまして…(瑠璃姫)
105レス 1348HIT 瑠璃姫 -
私の煌めきに魅せられて 感想スレ
0レス 24HIT 瑠璃姫 -
都市伝説よりも怖いこと。
今まで生きていた中で一番怖かったです。夜のおトイレより怖かった。(自由なパンダさん0)
2レス 80HIT 自由なパンダさん
-
-
-
閲覧専用
🌊鯨の唄🌊②
4レス 154HIT 小説好きさん -
閲覧専用
人間合格👤🙆,,,?
11レス 176HIT 永遠の3歳 -
閲覧専用
酉肉威張ってマスク禁止令
1レス 215HIT 小説家さん -
閲覧専用
また貴方と逢えるのなら
16レス 495HIT 読者さん -
閲覧専用
今を生きる意味
78レス 552HIT 旅人さん
-
閲覧専用
また貴方と逢えるのなら
『貴方はなぜ私の中に入ったの?』 『君が寂しそうだったから。』 『…(読者さん0)
16レス 495HIT 読者さん -
閲覧専用
🌊鯨の唄🌊②
母鯨とともに… 北から南に旅をつづけながら… …(小説好きさん0)
4レス 154HIT 小説好きさん -
閲覧専用
人間合格👤🙆,,,?
皆キョトンとしていたが、自我を取り戻すと、わあっと歓声が上がった。 …(永遠の3歳)
11レス 176HIT 永遠の3歳 -
閲覧専用
酉肉威張ってマスク禁止令
了解致しました!(小説好きさん1)
1レス 215HIT 小説家さん -
閲覧専用
おっさんエッセイ劇場です✨🙋🎶❤。
ロシア敗戦濃厚劇場です✨🙋。 ロシアは軍服、防弾チョッキは支給す…(檄❗王道劇場です)
57レス 1435HIT 檄❗王道劇場です
-
閲覧専用
サブ掲示板
注目の話題
-
結婚、見る目が養われる頃には相手がいない。
結婚というものは、世の中の事をよくわかっていない若いうちじゃないと出来ないものだとつくづく感じてます…
17レス 448HIT 匿名さん (40代 女性 ) -
好きって言わせようとしてくる
あくまでも冗談の言い方で、私に好きって言わせようとしてくる男性がいるのですが、何考えてるんでしょうか…
15レス 370HIT はぐみ (30代 女性 ) -
店員を気に入ってる?
先日旦那と買い物に行ったのですが、若い?20代後半〜30代前半ぐらいの女性のレジに並びました。 …
8レス 231HIT 主婦さん (30代 女性 ) -
仕事に対して色々言われた
付き合って半年の彼氏と別れるか悩んでいます。 医療事務の仕事をしています。 休みも収入も少な…
12レス 304HIT 恋愛好きさん (20代 女性 ) -
世帯年収1,500万円は負け組?
東京で世帯年収1,500万円って負け組なんですか? アラフォーだと世帯年収で2,000万円が普…
10レス 195HIT ちょっと教えて!さん (30代 女性 ) -
年金制度教えてください
なぜ障害基礎年金+老齢厚生年金の組み合わせはOKなのに、老齢基礎+障害厚生年金はダメなのですか?
9レス 167HIT おしゃべり好きさん - もっと見る