～終恋～

～中学生時代～


中学２年生の時、連れのヒロキと、中学校の４階にある音楽室から、トイレットペーパーの先端だけを掴み、本体を１階の中庭に向かって投げて遊んでいた…。

それは白い綺麗な孤を描き、中庭のグランドに落ちた。

今考えると何が楽しいのか分からなかったが、当時は楽しくて笑い転げていた。
それを何度か繰り返しているうちに…。

突然中庭を横切った｛葛城｝のオデコにトイレットペーパー本体が直撃⚡した…。

（…やべえ）そう思った瞬間、｛葛城｝は顔を真っ赤にして走り出した。

気づくと３分も経たないうちに、俺達の背後に｛葛城｝は立っていた…。

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～トイレットペーパ～

《ばっちーん！》

地球の裏側まで聞こえそうな程の音が鳴り、ジワジワと頬が熱くなった…。

（ビンタされて痛い）というよりも、生まれて初めて女性にビンタされた事に対して少し…いや、かなりの驚きを感じていた。

『何でそんな事してるの！何したか分かってんの？』

オデコも赤いが、顔も真っ赤にした｛葛城｝の怒号で、我に返った。

【何しちゃってんの？アンタ？体罰って知ってる？ねぇ、タダじゃすまねぇよ！教育委員会に今からこの足で…etc.】

隣でヒロキが逆ギレしていた。そんなヒロキも頬が真っ赤になっている。

『えぇ。好きにしなさいよ。ただ、外をよく見なさい…。』

窓越しに外を見ると、中庭のグランドにツバメの巣が落ちていた…。トイレットペーパーが直撃したのだろう…。

どうやら｛葛城｝は、俺達が落としたツバメの巣にいた雛達を避難させるために、中庭にいた様だ…。

『トイレットペーパーを投げていた事…。私の顔に当てた事…。そんな事で怒ってるんじゃない…。…もう少し先を見据えて行動しなさい。』

【うるせぇ！ババァ！行こうぜ！】

ヒロキと音楽室を後にした。

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～学校崩壊～

当時通っていた学校は、荒れていた。

教師の机が毎日、外のグラウンドに捨ててあったり、校旗が燃やされたり、窓ガラスが全部割られたり…。警察も何度となく出入りしていた。

特に、生徒による教師への暴力は凄かった…。が、教師は一切生徒に手を出す事は無かった…。

当時教育の問題で《体罰》は《悪》とされていたからだ。

常にどこかのクラスの先生が暴行を受ける→他の先生が止めに入る→授業はストップし黒板には《自習》の二文字。

まさに《学校崩壊》…。

そんな真っ只中に、｛葛城里奈｝は教育実習生として昨日、うちのクラスへやって来た。

とにかく明るい女で、男勝りの性格。姉御的なオーラ。たった１日でクラスの女子と打ち解けていた。

俺はこの女性に初恋する事になる…。

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～初恋～

【…たくっ。葛城の野郎腹立つわぁ。明日、教育委員会に言ってやろうぜ！】

帰宅途中、ヒロキはそんな事を言っていた…。

「いや、それはヤめとこ…。俺等も馬鹿やったし…。」

ビンタされた後から何か心が変だ…。胸が灼ける様に熱い…。（雛が死ななくて良かった ）って気持ちからか？…いや違う。

本気で怒って、ぶつかってきた｛葛城｝のせいだ…。

【おい、どーしたんだよ！何かおかしいぞ。早く単車イジりに行こうぜ！】

「何か、体調ワリィから今日は帰るわ。」

やべえ、今度は胸が 苦しくなってきた…。

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～年上の女～

男なら一度は憧れる年上の女…。

当時14歳の私からすれば、22歳の｛葛城｝はまさに魅惑的な大人の女性。

特に身長が高いワケでも無いが、切れ長の目と前髪パッツンが似合う純和風的な顔立ち。

シャワーを浴びながら、高まる胸の鼓動を落ち着けていた。

（これって初恋なのかなぁ…。）

今まで人を好きになった事は無いが、人間の本能的にそう悟った…。









初恋は実らない。と誰かが良く言ったもので、私の初恋も見事に叶う事は無かった…。

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～ツバメの巣 ～

教育実習生の期間はツバメの巣立ちより短い…。

仲良くなり始めた頃居なくなる…。

ビンタの翌日。ヒロキは相変わらずふてくされていた。

【葛城にリベンジかまそうぜ！】

「だからヤメとけって。それより、ツバメの巣どうなったのかな…。」

【…知らね。】

学校に着くと｛葛城｝がツバメの巣を、カップ麺の容器で補強し、元の位置に戻そうとしていた。

『あっ！ちょっとアンタ達、手伝いなさいよね！ハシゴ！支えてて！』

俺は無言で、ハシゴを支えた。

ツバメの巣が直った安堵感と、胸の鼓動を隠しながら…。

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