携帯小説「二番目の悲劇」
「二番目の悲劇」
🔯 作者@ りん
🔯 演出@ ホロロ
で、進めて参ります、長編小説です。
新しい試みですので、優しく見守って下さるようお願いします🙇
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「和美、あんたのせいだ。あんたが殺したんだ」
振り向いた和美は、心臓が凍りつきそうになった。白いハンカチの陰から、恨みのこもった赤い目が自分を見ている。
父方の伯母のひとりで、幼い頃、よくあやとりの相手をしてくれた人だった。周りの出席者がなにごとかと二人に注目する。
「おばあちゃんはね、あんたのことで泣いてたよ」伯母はいった。
「世間様に申し訳ないって、会う人会う人に頭を下げてたんだから。立派な墓なんぞ建てて偉い気になってるみたいだけど、人様のもんを盗んで稼いだ薄汚い金で建てた墓に入っても、おばあちゃんは浮かばれんわ」
和美が震えたのは、そのきつい言葉を周りの誰もが否定しなかったことだ。ま、そう言わずに、と親戚のひとりが形式的にとりなしたものの、他の人達も溜飲を下げたようだった。
和美は棺の向こう側で、
顔をひきつらせている母親を見た。
今にもこの場で白菊を散らしてわめき出しそうだった。
「お母さん、香月を早く着替えさせないと」
和美はなにも聞かなかったように、伯母の鬼を見るような目に背を向けて弟の方へ歩いていった。
親戚の視線は束になり、重しのように和美を海の底に沈める。
母親は固く唇を結んだまま、息子の喪服を取りに家へ走っていった。
わたしのせい、わたしのせいだ――。
罪悪感が砂嵐のように渦巻いて、あたりの風景を霞ませる。
家族が急死したとき、人は誰でも自分を責めると言う――。
和美の場合、それは錯覚でもなんでもなかった。
葬儀が終わって全ての人が帰るまでの間、和美は一言も口をきかなかった。
「よく我慢したね、和美。ほんとに悪かったわ」
母親が喪服の帯を荒々しくほどきながらいった。
帯が怒り狂った龍のようにうねり、パシンと畳を叩く。
「こういう時はみんな気がたってるから」母親はいった。「必ず誰かがしょうもない事を言うもんよ。義姉さんは昔からキツイお人で、私も苦労してねえ……だけど、お父さんに聞こえなくてよかったわ。聞こえてたらどうなってたかわかんないわよ。」
「ほんとにわたしが悪いんだよ、おばあちゃんをつらい目にあわせちゃって……」
和美は祭壇に飾られた祖母の写真の前に突っ伏した。すまない気持ちでいっぱいになり、今さらのように涙が溢れる。
「バカだね、和美。いやらしいことを言うんじゃないの」母親はいった。
「あんなのはデタラメ」
「え……蓜」
和美は顔を上げた。
「おばあちゃんはあんたの事、これっぽっちも疑ってなかったわよ。だいたいおばあちゃんみたいに身びいきの激しい人は、身内が目の前で人殺しをしても信じないから。おばあちゃんはね、実はちょっとボケ始めてたの」
そんな話は初耳だった。
記憶にあるのはゆったりゆったり働いている元気な祖母だけだ。
このところ忙しさにかまけて故郷に帰ることも少なくなり、一年近く祖母に会っていなかった。
「香月がいなくなって、手間がかからなくなったからかしら。どういうわけか、会う人会う人に念仏みたいに『すんませんすんません』て……ちょうど悪いことにあの騒ぎと重なって、近所の人は同情するし、いいえあれはボケなんですって言っても、姑を悪者にしてまで娘をかばうのかって悪口言われるし。」
母親は疲れたように自分の肩をどすどすと叩いた。
和美はその後ろにまわり、岩のように固い母の肩を揉み始めた。
「でも、お母さんもほんとは大変だったでしょ蓜他にも色々言われたんじゃない蓜わたしのこと」
「ううん、あたしとお父さんは別になんとも」
母親はいった。
「あと三べんくらい、あんなスキャンダルがあっても平気よ」
そう強がる母親の表情は、和美からは見えない。
少し肩の丸くなった後ろ姿からは、口に出せないストレスが立ちのぼってくるようだ。
和美は心の中で[ごめんね、そしてありがとう]と言いながら、母親の肩を揉んだ。
「お母さん、香月にはあの騒ぎの事……」
和美は香月をちらっと見ながらいった。
弟はこちらに背を向けてパソコンの前に座り、インターネットで何やら調べていた。その背中がやけに広い。
小さい時、海辺でカニさんやヒトデさんと遊んでた子供と同一人物とは思えなかった。
「ああ、言ってない」
母親は首を横に振った
「おばあちゃんのことですごく落ち込んでるから、余計な心配かけない方がいいでしょ。ま、誰かから知らされるのは時間の問題だろうけど……その時はあたしからちゃんと話すから」
それは随分申し訳ない役割だと思ったが、和美は黙っていた。自分から説明しても、うまく説明できないからだ。
和美は母親の肩を揉みながら、ふとパソコンの画面に目をやった。
美波カズ――
目に飛び込んできた活字は自分の名だ。
おそるおそる後ろから近づいていくと、なんと香月は盗作疑惑の記事を読んでいるところだった。
「か、香月、それ……」
和美は声を上げた。
香月はその気配を感じ、『ん蓜』と振り向いた。
彼の顔にはどこにも暗いものはない。唖然としている姉に向かって、素っ気なく手を動かした。
――何びっくりしてんだよ。
「だって、その記事……」
―――ああ、オネエの事なら向こうでも毎日チェックしてたよ。当たり前だろ。何のためにインターネットがあるんだよ。
ひえ~瀨っと和美はのけぞった。姉と母が傷付けまいと額を寄せて相談しているというのに、あの泣き虫の男の子はどこにいったのだろう。
親どころか、姉さえも香月の進化スピードにはついていけない。
香月はおののいている姉と母の顔を見て、呆れながら手を動かした。
――あのねえ、ぼくはもう子供じゃないんだから。じゃ、ぼくの意見を教えて欲しい蓜オネエの盗作疑惑についての考察。
それは是非拝聴したいものだ。和美は真剣にうなずいた。
――まず、エグビーの歌のことだ。もちろんぼくには歌なんか聞こえない。どんなものか想像してみるけど、やっぱりわからないんだ。
だから、あの絵の時のような単純なテレパシー説なら、笑ってゴミ箱に捨てた方がいい。
和美は隣で母親がホッとため息をつくのを聞いた。やはり心の片隅には消せない疑惑があったのだろう。
――だけど、安心するのはまだ早いよ。ぼく、チャリティーコンサートに連れていってもらった時、エグビーを見たんだ。
しかも、オネエが『あのドアを開ければ』を作る前に。
和美は衝撃に頭が痺れた。誰かが知ったら『ほらみたことか』と言うこと間違いなしの事実だ。
これが無関係だと弟はどう説明するのだろう。
――ぼくとオネエはどこかが密接に繋がってるから、全く無関係じゃないと思うよ。
でもね、ぼくはよく何かが起きる前に、先にそれが目に入ってくる事がよくあるんだ。軽い予知みたいなもんかな。
「予知蓜」和美は繰り返した。テレパシーの次は予知能力か……
どんどん訳のわからない世界に入っていく。
――うん、例えば……学校の帰りにふと金物屋の前で立ち止まって、ハンマーを見ていたりするんだ。なんでこんなもん見ているかなって不思議に思いながら家に帰る。その日は何もない。
でも、次の日、お父さんが壁を修理しようとしたら、ハンマーが折れちゃってさ。
お母さんが『香月、ちょっとハンマー買ってきて』って言うんだ。
ああ、これだったのかって――。
「えっ」母親が思わず声を上げた。「あの時そんなこと一言も言わなかったじゃない」
――そんな事いちいち言わないよ。だいたい全然役に立たないし。
これは言わないつもりだったけど……実は、オーストラリアでおばあちゃんにも会ったよ。
「いっ、いつ蓜」和美は驚いた。
――日本から知らせが来るちょっと前。ぼく、その時湖のそばのコテージで寝てたんだ。
ふと目を覚ますと、おばあちゃんが湖のほとりを歩いて行くのが見えた。
いつもの顔でのんびりと。ああ、おばあちゃんどこにいくのかな…って
「それはお別れにきたのね、予知ではなくて」
和美がいった。
――たぶん。ただそんな事があると、現実のとらえかたが、めっちゃ変わるよね。
距離なんか関係ない意識の世界があるって事がわかるんだ。こうやってぼくが生きていることも、あらゆる意識や情報の集合の結果なんじゃないかな。きっと、死ぬことも……
「でも、それとわたしの創作がどう関係あるわけ蓜」和美はいった。
――ぼくはオネエにこれから起こる事を、ちょっとだけ先に予知したんだ。そして、テレビのアンテナみたいな役割をした。ちなみに、オネエはテレビのチューナーね。
きっとトランス状態になるとテレビの解像度が高くなるんだよ。
和美は自分の心のテレビに映ったあの絵を想像した。
という事は、二度目に歌が聞こえた時は音声だけになったということか。
「じゃあ、もしも、あんたがいなくても……」
――受信したと思う。
ぼくのアンテナのおかげで少しは感度が良くなったかも知れないけど、その程度のことに過ぎない。
「それじゃ」
和美は慎重にいった。
「どこかのテレビ局みたいなもんが『疾走』や『あのドアを開ければ』の原型を発信した……蓜」
――うん。
ただし、誰にでも受信できるものではないよね。
受信者には資格がいる。感性とか、エネルギーとかあらゆるものが。
「だけど、それじゃあ……創作ってなんなの蓜」
――うーん、強いて言えば、出力と入力によって起こる反応かな。
ぼくたち人間は、情報のかたまりなんだ。それはいつも動きまくって現実をつくってる。ひとりの人間の意識世界があって、そこに入ってきたものとラブラブになったところに芸術な生まれるんじゃないかな。
母親はすでに目が点になっている。
しかし難しい話でも和美には香月の言うことならわかりやすい。
きっとニュアンスを理論ではなくイメージで受け取ってるのだろう。
「じゃあ……じゃあさ、それを発信してるテレビ局って、なに蓜」
誰か、といった方がいいのか蓜死んだ芸術家蓜
生きてる人蓜それとも芸術の神、ミューズ蓜
これはもしかして、究極の問いではないだろうか……。
和美は思わず身を乗り出していた。
香月はニヤリと笑い、こう答えた――。
――わかんない。
あまりにもシンプルな、究極の答え。
確かにそんな事がこの中学生にわかってしまったら、世界中の芸術家に対して失礼かもしれない。
和美は体と心から力が抜けていった。
わからない――。
しかし、これからも自分は、このわからなさを引きずって生きていかなくてはならないのだ。
あの二つの創作をなかった事にはできないのだから。
だがそれは、パソコンで検索したら一秒で得られるような答えではなく、人生まるごと、いや、人生をいくつ費やしてもわからないビッグクエスチョンなのかもしれない。
すると、それまでア然として二人の会話を傍観していた母親が大きくうなずいた。
「なーんか、すっきりしたわ。お母さん、香月に救われた。もう、この事では二度と悩まないよ」
そう言うと、鼻歌を歌いながらキッチンの方へと、消えていった――。
和美と香月は、お互いと母親を交互に見ながら同じ事を考えていた。
《なにがどうわかったのか、大いに疑問だ》と。
羽瀬和美がオフィスに入ってくると、出社したばかりでざわついていた社員達がふいに押し黙った。
制服を着ていない彼女の出社理由は、誰が見ても明らかだった。
スキャンダルで会社の度肝を抜いた女は、静まり返ったオフィスを横切り、部長のデスクの前で深々と一礼した。
「長い間お世話になりました」和美は机の上に辞表をそっと提出した。
部長は難しい顔でそれを受け取った。
わざとらしい慰留の言葉もなかったのは、むしろ救いだったかもしれない。
佐伯ユウはパソコンの手を止め、客観的に久しぶりの和美をじっくり見つめた。
やつれて、顔色も悪く、なにより彼女の魅力であった和やかさが消えている。
最悪だった……
かつて一度は自分が好きになった女だというのに。
初めて和美と話したのは、入社一年目の花見会だった。和美という女は、決して目立ちはしないが、ある種の男が理想の女だと言っても誰も不思議に思わないようなところがある。
宴会の席では何気なく気を配り、どんなつまらない話にも温かく、真面目に耳を傾けてくれた。
どこにも鼻にかけたところのない、素朴で気のおけない性格……。
挙げればきりがない。
たちまち好感を持った佐伯は、それから積極的に近づいていった。
仕事中に話し掛ける、
お茶に誘う、電話やメールをする、食事に誘う……常識通りの経過を踏んで、やっと二人きりで飲みにいったら、そこで逃げられた。
女心にうとい彼が、勝手にそうなる仲だと思い込んでいただけで、実は温度差があったらしい。
佐伯は尻尾をしょぼんとさせた犬のようになり、
しばらく和美から遠ざかった。そのうちに彼女の雰囲気ががらりと変わった。みるみるうちに華やかになって、彼には近寄りがたくなっていった。
そして、あの爆弾だ。
イカれた歌手とのスキャンダルが暴露され、『あのドアを開ければ』が和美の作った歌だとわかった時には、たちのわるいジョークだと思った。
カラオケのレパートリーにするほど好きな歌を、まさか惚れた女が作っていたとは……
佐伯は和美がネタになった週刊誌を買って、自分の部屋でじっくりと眺めた。
ああ、このビジュアル系の男のせいで変わったのかと、げんなりした。
たまたま自分が好きになった女がこんな事になるなんて……
この時は、バカバカしくてもう二度と顔なんか見たくないと思った。
だが、時間をおいてこうして顔を見ると、予想もつかない感情がよぎった。
それは、昔住んでいた家の前を通り掛かったとき、つい中を覗いてみたくなるような《懐かしさ》だった。
「これからどうするんだね蓜」部長は辞表を受理すると、本当は和美の今後など興味もないくせに、一応社交辞令でたずねた。
「しばらく、旅行にでも行こうと思います」
和美が口にした、その静かすぎる声は、佐伯の胸にこびりつくように残った。何かがまたこの女の中で変わった。
だが、その変わりかたは嫌なものではなかった。
佐伯は現実的な男で、芸術には縁がない。
もちろん人並みに読書もすれば、映画も見るし音楽も聞く。だが、すべて人気の出たものを、世間に遅れないように追う程度だった。
要するに、自分の中にそれらを選ぶ基準がないのだ。ひとつのものに没頭するようなものがないということだ。
腹がいっぱいになれば何を食べても構わない。
生きていくために必要ないものにこだわる感覚に乏しかった。
そういう佐伯だったので、盗作問題については正直いってよくわからなかった。
ああいう自由な世界にもモラルのようなものがあるだろうか、と思っただけだ。
つまり、和美が本当にあの歌を作ろうが盗作をしていようが、どっちでもよかったのだ。
彼にとっては、あの矢ノ原とかいうコスプレ野郎の方がはるかに重大問題だった。
和美は黙々とロッカーとデスクの整理を済ませ、同僚達に軽く挨拶をすると、佐伯には目もくれずに速やかに去っていった。そのとたん、オフィスではまたひとしきり噂話に花が咲いた。
「しかしああやって見るとさ、やっぱりあんな普通の子に『あのドアを開ければ』なんか、絶対に作れっこないって感じするよな」
「でもさ、逆に盗作なんて大胆なまねが出来る人にも見えないわよねぇ」
「いや、人は見かけによらないよ。何てったって、あの矢ノ原と付き合ってたくらいだから」
「ほんとよね、あーあ、サインもらっときゃよかった」
「でも、これから和美さんを拾う男、ちょっといないわよ」
「いいじゃん、もう有名人と付き合ってんだから」
「やだ、知らないの蓜昨日のスクープ」
ひとりの女子社員がバッグからこっそりと写真週刊誌を取り出した。
社員達がどれどれと顔を寄せる。佐伯も何気なく後ろから覗き込んだ。
『またまたお騒がせ。
矢ノ原、新恋人は年上の離婚女優』
うそぉ、と女子社員達から声が上がった。
いい加減にしてぇ――。
「ほら、美波カズは捨てられちゃったのよ」
女子社員はまるで和美に天罰が下ったというように、わざとらしく残念そうにして見せた。
やっと会社にケリをつけたおかげで、和美はほんの少し呼吸をするのが楽になった。
それに、香月の楽観的な意見にも、どこかで影響を与えられているのは確かだ。
我が身が、嵐に翻弄される一枚の木の葉のようなものだとしたら、どうしてそれを責めることができるだろうか――。
その夜、電話が鳴った。
和美はボストンバッグを整理して、喪服を出しているところだった。
受話器をとる前に、一瞬矢ノ原を思い浮かべる自分を止められなかった。
胸の痛みとともに、全く別れの痛手を乗り越えていないことを知る。
『和美蓜』かすれた男の声がした。
和美はハッと口を押さえた。それは矢ノ原ではなかったが、長い間待ちわびた声だった。
「倉見、あぁ……」
言いたいことがいっぱいあったはずなのに、言葉にならない……
「もう、一生声を聞けないと思った」
『そのつもりだったさ』
倉見の声は何かをこらえてるように冷たい。
和美はこれが良い知らせでないことを予感した。
「……なに蓜 何かあったの蓜」
『マリムラが死んだよ。自殺したんだ』
パリン――。
頭のどこかで音がした。
和美は崩れ落ち、ボストンバッグの上に膝をついた。使ったばかりの喪服がその底に沈んでいる。
『致死量を超えるヤクをやったんだ』
倉見は淡々といった。
『愛人の別荘で……陽二ってやつだ。和美は会ったことあるだろう』
和美の脳は耳から入ったその言葉を解析出来ずにいた。ただ、マリムラのとてつもなかったであろう苦悩の結論は、和美をあっという間に最悪の時の自分に引きずり戻した。
わたしのせいだ、わたしの――。
『あんたには知らせておかなきゃと思って』
倉見はいった。
『俺しか連絡するやつはいねえし』
あんたのせいだ、と倉見は言わなかった。だから、かえって和美は言葉にされないその非難を抱え込む。
言わなくてもわかっているだろう、つまりそういう事だ。
『馬鹿な奴だ』
倉見は吐き捨てるようにいった。
『大バカだよ、俺達』
「ごめんなさい」
やっとのことで発した和美の声は、倉見が電話を叩き切る音にかきけされた。和美は呆然と受話器を置いた。
あまりの事に涙も出ない。彼女は自分のしたことを、自分に与えられた全ての巡り合わせを呪った。
そして、生まれてきた事を――。
死にたい、わたしも死んでしまいたい――。
握りしめた喪服には、まだ”死”が香っていた。
祖母の安らかな死に顔、
二度と動かない冷たい足
和美にわかったことは、祖母がもう傷つくことのない世界に旅立ったということだった――。
和美は喪服を抱えたまま、ぼんやりとベランダに出ていった。
眼下の世界は夜中にもかかわらず躍動している。
自分を拒絶した街――。
もう何の関係もない街。
喪服を持った手をゆらりと冷たいベランダの外に伸ばす。
強風に煽られ、黒い布がカラスのようにばたばた舞う。
手を離すと、服は狂ったように回転しながら暗い街の底に落ちていった。
20階から見下ろす夜の地面はただ黒く、遠いのか近いのかすらわからない。
和美には、その闇にしか解決がないような気がした。
浴びせられたおびただしい蔑みと、悔恨の記憶を抱え、もうこれから生きて行く希望が見出だせなかった。
彼女はもう、自分に差し延べる優しい手を思い出す事が出来なかった。
死に神の手を別にして。
死は決して遠くない……
手をほんの少しだけ……
少しだけ先にのばせば、
すぐそこにある――。
和美のマンションに向かって歩いていた佐伯は、上空から何かが舞い落ちてくるのに気付いて足を止めた。
黒いものが何度も風に煽られたあげく、街路樹の枯れ枝に引っ掛かった。
布……いや、黒い服のようだ。それがダラリと腕を下げている様は、背筋が寒くなるような気がする。
佐伯はもう一度上空に目をこらした。
一度だけ、木の葉マンションの入り口まできた事がある。
まだ、あのスキャンダルが発覚する前で、和美の事が吹っ切れずにふらりとやってきたのだが、その時は、幸か不幸か留守だった。
ベランダに干しっぱなしになっていた洗濯物をぼんやりと眺めていた覚えがある。
今、その部屋には明かりがつき、ベランダから身を乗り出す人影が見えた。
今度は、全身からビシャっと音を立てて汗が吹き出た。その光景を一目見たとたん、佐伯はこれから何が起ころうとしているのか察知した。
それは決して勘がいいとかではなく、テレビで何度も見た自殺のシーンにそっくりだったからだ。
そんなドラマみたいな事が現実にあり、何の因果かその場に立ち会ってしまう人間もいる。
今、和美を救う判断は、彼自身に委ねられた――
佐伯は想像力がない分、実務には非常に長けていた。それからの彼の行動には、全く無駄というものがなかった。
佐伯はマンションに駆け込んで、まずエレベーターのスイッチを押し、たまたまやって来た若者に、事故があったからエレベーターを止めておいてくれと叫び、廊下を一目散に走って管理人室へ飛び込むと同時に事情を話しながら身分証明証を出すと、壁から勝手に予備キーを外した。
管理人の静止も聞かずに、訳もわからずエレベーターを止めている若者の所へ戻ると「20階だ」と告げると、佐伯は和美の部屋のベランダの方向を考えながら、動きやすいように上着を脱いだ。
エレベーターの扉が開くと、佐伯は陸上選手の如くダッシュし、和美の部屋のキーを開けて土足で飛び込んだ。
「和美さんっ晙」
目の隅を猫が走った。
リビングのカーテンが風に煽られている。
その向こうにまだ和美はいるのか、それとも遅かったか――。
プルルル……。
その時、部屋の電話が鳴り出した。
宙に浮きかけた和美の足がびくりと震え、バランスを崩す。
佐伯はまさに滑り込みで彼女の胴を掴んだ。
冷たさと血の温もりがまだ半々に混じった体を……
和美は自分をがっちりつかんで震えている男が、誰だかわからなかった。
男は腰が抜けてしまったらしく、そのまま動けずにいた。
二人はもつれあったまま、放心状態でベランダに倒れていた。
「離して、離して――」
和美は虚ろな声でいった。「ダメだ、死んじゃダメだ」男はさらに腕に力を込めた。
「違う……電話、電話に出なきゃ」
電話は不自然なほど長い間鳴り続けている。
男がようやく硬直した腕をほどくと、和美は夢遊病者のようにフラフラと歩いて行って受話器をつかんだ。自分がなにをしているのかもわからないまま……
『和美蓜ごめんごめん、寝てたんでしょ蓜』
電話は母親からだった。
『なんかよくわかんないけど、香月がオネエに電話しろっていうのよ。まさか、病気とかしてないわよね蓜』
「こっちは何も異状ないよ、大丈夫。」
和美のボーッとした声を、母親は寝ぼけてると解釈したようだった。
電話を切ってからようやく、自分が死にそこなった事を悟った。
和美はベランダに近付き、ベゴニアの鉢植えと一緒に無残に転がっている男に気付いた。
「あなた、もしかして佐伯さん蓜何でこんな所にいるの蓜」
それからの一週間、和美は椎間板ヘルニアで自宅にふせっている佐伯を毎日見舞った。
佐伯はいつまでも和美が[またやる]のではないかと心配していたが、彼女はもう死ぬ気は失せていた。
死に神はあの時、和美の渇ききった心をひとなですると、一瞬にして去ってしまったのだ。
その間、マリムラの死は週刊誌を騒がせていた。
一部の記事によると、HIVに感染している事がわかった直後の自殺だったという。
葬儀は親族によって密葬にされ、業界人は誰ひとり出席しなかった。
その死を巡って、またインタビュアーがインターホンを鳴らすようになったが、和美はほとんど自宅にはいなかった。
佐伯の部屋はひとり暮らしの男性らしく、ほどよく散らかっており、おかげで和美は毎日することが出来て救われた気持ちだった。
佐伯は口数の少ない、気を使わなくていいタイプだ。
どこか父親に似たところのある彼の看病をしていると、和美はこのところ久しく感じたことのない安らぎを覚えた。
そのおかげで佐伯はすっかり元気になり、彼女がお詫びにプレゼントしたネクタイをしめて出勤するようになっても、相変わらず彼の部屋を行き来するようになった。
しかし、和美にとって東京の空が暗いことに変わりない。
心は完全にすっきりと晴れ渡ることはなかった。
街に流れる矢ノ原の歌や、剥がれかけた桜のポスター、そんな失ったばかりの過去に触れるたびに和美の傷はじくじくと痛んだ。
転機は突然やってきた。
佐伯の存在に励まされながらも、鬱々とした日々が半月ほど続いた、ある日の事だった。
「え、今何ていったの蓜」掃除機をかけていた和美は聞き返した。
佐伯が部屋に帰ってきて、ドアを開けるなり何かいったが、うるさいモーター音にかき消されてしまったのだ。
「僕と一緒にロサンゼルスに行かないかって言ったんだ」
佐伯は大声でいった。
「今日、海外赴任の辞令が出た」
……騒音の合間に聞きたい台詞ではなかった。
和美はあっけにとられて掃除機のスイッチを切った。
二人の間にしばし、クイズの答えを探るような沈黙が流れた。
これは単なる海外旅行のお誘いでないことは、和美でもわかった。
佐伯の言葉の意味するところに『結婚』の二文字を見いだし、驚いたのは和美の方だった。
「あなた、ほんとにわかってるの蓜」和美はいった。「わたしはあんなスキャンダルで会社を辞めたのよ。そんなことしたら、会社の人に何て言われるか――」
「言わしてもらえば、僕だって一生に一度くらいは人の噂になってもいいように思う。そうすると……自分の……妻の命も救ったことになるわけだ」
そう言うと、佐伯は純情にも頬を染めた。
和美はこれまでに感じたことのない静かな感動を覚えていた。
恩を愛とは勘違いできない。
救われた命は救った人に捧げるわけではない。
その時和美を動かしたのは、ずっとこの人のそばにいたいという、ただ純粋な衝動だった。
「でも……」和美はいった。「あなたは許せるの蓜あんなことを蓜」
「僕はずっと前から君を知ってるよ」
彼は静かにいった。
「笑顔で……ぼちぼちと、さ」
笑顔――。
笑顔でいられたらいいな。
ぼちぼちとのんびり過ごせたらいいな。
一生に一度の返事を待ち、体を固くして玄関にたたずんでいる男を見て、日本のどこにも身の置き所のない女はまぶしそうにまばたきした。
ずっと昔からそこにいてくれたような気がした。
第三部
庭の白いベンチで眠るキャラはグリーンにくっきりと映え、その優美な背中のカーブ越しに遠く海が光る。
日本から持ってきた唯一の財産は、つらいときにずっと側にいてくれたこの猫だけだった。
日当たりの良いリビングの窓際で、夫のサマーセーターを編んでいた若妻は、しばし手を止めて童話の挿絵のような光景に見とれていた。
初めての外国暮らしに不安を覚えていた佐伯和美を迎えたのは、サンタモニカの海を臨む丘に建つ、この白い一軒家だった。
レンガの階段を上がると、真鍮のノブがついた両開きのドア、その向こうには広々とした玄関ホールが広がる。
リビングには吹き抜けがあり、大きなファンがゆったりと回っていた。
三つのベッドルームは
それぞれサーモンピンク、ペパーミントグリーン、レモンイエローを基調としており、夫婦はバスルームとウォークイン・クローゼット付きのレモンの間を使用している。
白いタイル張りのキッチンには、食洗機やオーブンなどの設備が完備され、六角形のダイニングルームに面していた。
居心地の良いロフトは佐伯が気に入り、書斎にしている。
この街の規模からすると、決して豪華でも近代的でもないが、東京だったら億の値段がつく邸宅だ。人間たちも猫もいっぺんでこの家が大好きになった。
その家から少し行ったところに、パームツリーに囲まれた小さな教会があった。
二人はそこでささやかな結婚式を挙げた。
和美が幼い時から夢見ていたのとはまるで違ったが、今の彼女の心に染みる簡素な式だった。
にこやかに祝福してくれた牧師の腕には、十字架と女の名前のタトゥーが彫られていた。
和美の生活のすべてが変わった。
これ以上ないくらい新しくなった。
何と言っても、記憶と猫以外はすべて日本に置いてきたのだから……
和美はこの丘の家を愛し、英語が話せない事もあって繭のように閉じこもった。
国際的な大都市の中で、小柄な日本女性はおびただしい異邦人のひとりに過ぎない。
目立たず、振り向かれず、いつ消えても誰も気にしない淡い存在なのだ。
そんな環境の中、和美の世界は夫のユウに対してのみ、真っすぐに開かれた。
狭く、平和な夫婦関係と家庭、それだけが彼女の望むすべてだ。
静かな療養生活を必要とする心に傷を負った者のように、家庭生活こそがなによりも彼女のヒーリングになったのだ。
日本との理想的な距離を手に入れた和美は、移りゆく時間を味方にして、過去をゆっくりと消化していった。
佐伯ユウは、そんな和美との結婚生活に満足しているようだった。
基本的には亭主関白だが、休みの日には二人てスーパーへ大量の食料を買い出しに行ったり、夜には映画を見に行ったりする。
ベタベタし過ぎない、ほどよい距離のある夫婦関係。
誠実で、口より行動が率先するユウの人柄はロサンゼルス支社でも結構評判がよく、英語圏での仕事にもすぐ慣れていった。
しかし、いち早くアメリカに順応してみせたのは、何と言ってもキャラだった。彼女は半年後にはもう、玉のようなアメリカンショートヘアとのハーフを産んでみせたのだ。しかもそれは、日本にいるミチの出産日と同じだった。
生き物が増える。
それ以上奇跡的な創造はありえない。
芝生の上をキャラと三匹の雑種の子猫がじゃれあっているのを眺め、ユウは決心したように言った。
「よし、僕たちも作るか」
電話に出た母親の声には、喜びの中に当惑が入り交じっていた。
『ちょっと和美、どういうこと蓜 双子なんて、うちの家系にはいないわよ。そっちの脂っこい食べ物のせいかしらねぇ』
「もう、なに非科学的な事言ってるの」
和美はユウと顔を見合わせ、幸せそうに笑った。
キャラから後れをとること半年、和美に宿ったのは二つの命だった。
妊娠を知った時、彼女の目の前に現れたのは、どこかあの創作の嵐に似た、ただスタンスの違う長い長い道だった。
しかも、今度の《作品》は自分の意志と生命力を持っている。
それはなんと恐れ多い、
なんと身近な奇跡なのだろう……
慣れない土地で初めての、それも二人分の出産準備に追われているうちにあっという間に臨月となり、和美はユウの立ち会いの元に出産に挑んだ。
しかしそれは、あの創作の陶酔とは月とスッポンの動物的体験だった。
揉みくだかれ、闘っているのは精神だけでなく、和美の肉体そのものなのだ。
命からがらの思いで二人の男の子を産んだ時には、新たにこの世のメンバーになった二つの魂に、すっかり自分を持っていかれたような気がした。
それまでの『忙しい』は一体何だったんだろう……
そう思うほど、多忙な日々が始まった。
兄は武史(たけし)、弟は洋史(ひろし)と名付けられ、和美は本能のおもむくままに子育てにのめり込んだ。
親業――。
これほどポピュラーでありながら難易度の高い仕事があるだろうか蓜
和美はこれこそ自分の天職だという気がした。
年中寝不足で、妙な夢を見る暇もなくなり、芸術どころかテレビもろくに観られない。
彼女の世界で事件といえば、自分の子供にまつわる事だけ。
それ以外の社会的出来事には、興味を持とうにも頭にその隙間がなかった。
しかし、子供を持ったおかげで必然的に行動範囲は広くなり、わずかづつ外との交流が生まれてきた。
ベビースイミングで知り合ったリンダ・マルーフは同い年の女の子のママで、東洋文化に興味のある聡明な女性だ。
最初に会った時から和美にたどたどしい日本語で話し掛けてきて、互いの家を行き来する仲になるまでそう時間はかからなかった。
二人の間の障害はただひとつ。
リンダが事あるごとに日本に関する質問をすることだった。
「ねぇ、カズミ、仏像と地蔵はどう違うの蓜」
おかげで和美はいまさらのように日本文化について、何も知らない自分を悟り、慌てて勉強させられる事となった。
だがそれ以外、日本も、ドラマチック過ぎる思い出も、すっかり和美に対して影響力をなくしていった……
毎晩、甘い香りのする二人の宝物にサンドイッチされて眠りにつきながら、和美は今のささやかな幸せに感謝した――。
ダイニングルームの大理石のテーブルには、リンダの愛がテンコ盛りになった大きなデコレーションケーキがうやうやしく飾られていた。
それは、甘そうなストロベリーやラズベリーであふれ、シンデレラの如く着飾ったスーザンよりも、子供達の熱い視線を浴びている。
だが、子供達はしつけのいい犬のように”おあずけ”をくらっていた。
和美はユウとプールサイドでバーベキューを楽しみながら、リンダ達と仏教の話題で盛り上がった。
リンダはクリスチャンだが、いわゆるニューエイジの考え方に傾倒しており、最近は瞑想クラブに通ったりチャネリングの会に出席して自分の過去世を探ったりしている。
近年、日本でも霊能者が市民権を得つつあるが、アメリカときたらそんなもんじゃない。
サイキッカーが設立したヒーラー養成の大学を政府がちゃんと認可し、大学卒業資格が取れるほどなのだった。
「それがね、この前チャネラーに尋ねたところによると、わたしは日本人だったこともあるんだって」リンダは目を輝かせて言った。
「どうりでジャパンフリークなはずよ」
「なにしろイクラだってタクアンだって食べられるんだからな」
リンダの夫が茶化す。
「そのうちきっとアワオドリを踊り始めるぞ」
「ねぇ、今度カズミもチャネリングに行かない蓜きっとわたしと何か深い因縁があると思うのよ」
おかげで和美は四年ぶりに才蔵爺さんの事を思い出した。
連鎖的に矢ノ原が、そしてマリムラの亡霊が過去から蘇ってくる。
さらにあの二つの創作が、まるで他人事のように。
しかし、和美はやっと整理整頓した今の現実的な意識の棚に、余計なものを足す気はなかった。
「きっとリンダさんがお姉さんで、わたしが出来の悪い妹だったに違いないわ」和美はごまかした。「未だにコンプレックスを引きずってるもの。あんまり思い出したくない過去世ね」
子供達の楽しそうな歓声が響いてきた。
双子達は親にまとわり付かず、日米入り混じった言語を操りながら他の子供達と遊んでいる。
プロのベビーシッターとシェパードが見張っているので、和美はすっかり安心して任せきっていた。
「前世ですか」
佐伯ユウが拒絶反応すれすれの顔をして言った。
「それは一つの考え方ですね」
「ほら、信じないインテリはみんなそういうのよ」リンダは面白そうに笑った。
「別に無理する事なんかないわ。わたしは自分の信じてるものだけが真実なんて、これっぽっちも思ってないから。必要な時には、自然にいろんな世界が向こうからやって来るもんよ」
だとしたら……と和美は思った。自分にとって必要な時はもう終わったのかも知れない。
今は正直いって、見えないものなんか信じない現実的な囲いの中が居心地がいい。
和美はユウに向かって信頼の眼差しを投げた。
大丈夫、わたしはあなたと一緒だから――。
と、その時、けたたましい悲鳴が上がった。
我が子の声――。
振り向くと、積み上げられたブロックの城の前で、兄の武史が両手を頭にあてて泣きわめいていた。
「ダメッ、ダメダメッ、ノォーッ晙」
しかし、誰も怪我をしていないし、トラブルが起きた様子もない。
他の子供達もシェパードもベビーシッターも、皆あっけに取られて武史を見つめている。
「洋史はどこ蓜」
和美ははっとして言った。いつの間にか姿が見えない。
その時、武史は母親の顔をぱっと見た。
やけにくっきりした目。
その瞬間、和美は息子の視線がビー玉のように飛んで来て、自分の眉間に当たったような気がした。
『ケーキッ晙』
武史は一声叫び、サイレンのようにウワンウワン泣き始めた。
「ヒロシのバカァ」
ケーキ蓜
ケーキがどうしたのか蓜
急いでダイニングルームに駆け込んだ一同は、そこに武史が予告した事件を目撃した。
「Oh,myGod晙」
リンダが叫んだ。
「スーザン晙」
ケーキの上には、ロウソクとフルーツの代わりに、スーザンお嬢様の両手が載っかっていた。
この日の為に着たピンクのドレスも、花を飾った金髪もクリームでめちゃめちゃだ。
そして、その隣ではクリームで顔を白塗りにした洋史が、壊滅的打撃を受けたケーキを手づかみでせっせと口に運んでいた。
テーブルの下には、二人の二才児がない知恵を絞って犯行に使用したらしい、怪しげな段ボールが転がっていた……
「イッツ、マイン晙」
集まって来た大人達を見回し、スーザンは胸を張って主張したのだった。
親バカのマルーフ氏が喜々としてビデオを回し始めたのは言うまでもない。泣き出したのは他の子供達だけ、大人達はパーティーにうってつけのハプニングに涙を出して笑い転げた。
「カズミ、素晴らしい警報じゃない」
リンダが涙を拭きながら言った。「あなたの双子ちゃん達、感度がいいのね」
「なんのこと蓜」
和美は右手で洋史の顔のクリームを、左手で武史の涙を拭きながら言った。
「まさか母親のあなたが気付いてないわけないでしょ蓜 双子にはよくあること、テレパシーよ」
和美ははっとした。
とっさに香月と自分の密接な関係を思い出す。
今の今まで、それと我が子達の関係を比べてみた事はなかった。
微塵も疑いを持っていないリンダのその態度に、佐伯が思わず苦笑をもらした。
「そんな、ちょっとした偶然ですよ。テレパシーなんて……」
リンダは家の中で不思議な生物を見つけたようにまじまじと佐伯を見た。
「だったら今、息子さんが叫んだケーキという言葉を、あなたはどう解釈する蓜」
「そういうのを日本では『虫の知らせ』と言うんです」佐伯は方をすくめて言った。
「その『虫』っていうのがいったい何の事か、あなたは一度でも考えた事ないの蓜」
佐伯のごまかし笑いは通用しなかった。真剣に考えた事なんかないのが丸見えだ。
「ええと、なにしろ僕は現実的ですから……そうだな、たまたま武史がケーキを食べたくなっただけじゃないかな」
「ノー、あなたはちっとも現実的なんかじゃないわ。今、目の前で起きた事実すら固い頭の中から締め出してる」
佐伯は一瞬ムッとしたが、すぐに気を取り直したようだった。
アメリカの自由主義の中では、はっきりと考えの違いを主張する人間との適当な付き合いも覚えなければならない。
「それじゃあリンダ、テレパシーってなんですか蓜」佐伯は質問した。
「テレパシーとは、二つの意識が時空を超えて起きるコミュニケーションのこと」
リンダは料理のレシピのようにさらさらと語った。「潜在意識がキャッチして、顕在意識に伝えるの。愛情や理解によって、知らないうちにお互いの思考を送っていたりするのよ」
佐伯が言葉に窮して和美をちらりと窺う。
彼女は否定するでも肯定するでもなく、二人の話を面白そうに聞いていた。
「ここに面白いことが書いてあるわ」
リンダはマガジンラックから一冊の本を抜き、ページをめくる。
「ええと、『生理学的な観点からすると、血液中の血漿にテレパシーの送受信を可能にするような振動数が作り出されるのである』――」
「血漿に蓜」
佐伯は思わず言った。
「そんなバカな……」
「これは有名な超能力者の本なの。彼は催眠術でトランス状態になると、全知全能の神のような人になったのよ。医学のことも哲学のことも、みんな答えられたの」
「寝てる時だけ蓜」
和美ははっとして言った。「普段はどうなの蓜」
「ごくごく平凡な人だったらしいわよ。三児の父親でね。彼は人類の意識下には、大いなる想念の河が流れていると考えたわ。その河は本来誰にでもアクセスできるものだって。彼のいう河はアカシックレコードといって、この宇宙の全てが記録されている普遍的な記憶の事なの」
和美の記憶の底に沈んでいた過去の事件がゆっくりと浮上してきた。
和美は夢中で崩れたケーキをぱくついている武史と洋史を見た。
この双子にもそんな能力があるのだろうか蓜
親の知らないうちに、二人で心のキャッチボールをしているのだろうか蓜
「逆上がりや水泳みたいに、本当はほとんどの人が出来ることなんじゃないかしら」リンダは言った。
「ただヨチヨチ歩きから全米代表オリンピック選手まで、能力の差が大きいんだわ」
きっとそうなのだろう、
と和美は思った。
リンダの言う通り、双子たちにはちょっとセンスがあるのかも知れない。
だが、もしそうだとしても、母として和美の望むことはひとつだった。
頼むから、そのせいで誤解を呼ぶような事は起こらないで欲しい――。
絵だの歌だのを無意識でテレパシーで送りあったり、力をあわせて磁石のようにインスピレーションを引き寄せないでもらいたい。
それで、人生を大きく狂わせてしまうことのないように――。
「和美、おまえはどう思う蓜」佐伯が和美に助けを求めた。
「テレパシーとか、あると思うか蓜」
和美はにこやかに笑って答えた。
こだわりも、余計なガードも、取り繕うことも忘れて。
「もちろんよ」
佐伯家に天使のような女の子が産まれたのは、双子たちが4歳になって、『ママ、赤ちゃんはどこから産まれてくるの蓜』と答えにくい質問をするようになった頃だった。
和美は理想的な二男一女に囲まれ、母として、妻として、平凡な女の生涯を着々と歩んでいった。
時々双子が口を使わずに話しているのを目撃し、
はっと身をこわばらせる事はあったが、心配するような事件は何も起きず、大きくなるに従って次第にその回数も減っていった。
香月は姉がアメリカに定住したことを大いに活用し、年に一度は佐伯家を訪れて長期滞在するのが恒例となった。
子供たち……特に双子は、この口のきけない叔父に異様になついた。
時には双方の両親達が孫の顔を見に訪れる事もあり、佐伯家は賑やかなバカンスのステーションともなった。
和美はそこで人間と動物、花や野菜を増殖させ、豊かに成長させていったが、芸術と名のつくものには一切手を触れなかった。
――月日が過去の事件をすっかり風化し、和美の中でも夢のようになった頃、CMの海外ロケで北村ミチがロスにやってきた。
女優としてすっかり地位も安定して、ひとり息子も小学生になって子役デビューしたという。
大翔は女優の夫という、うらやましがられがちで
実は難しい立場に潰れることもなく、自分の事業を着実に拡げていた。
「そうそう、伊達先生はあたし達の母校の校長になったよ」
ミチは土産話に花を咲かせた。
「飯山満は日仏合同制作の芸術映画を作ったけど、『映画になってない』とか酷評浴びちゃって。才能は一種類しかないことを証明した感じかな。」
「それから倉見くんの事なんだけど、心配しないで。スタジオミュージシャンとして、ちゃんと活躍してるわよ。この前あたしが出たドラマの音楽も担当してくれたし。」
「よかった」
和美は心から言った。
「でも、矢ノ原は人気が長続きしなかったよね。いつの間にかどこかに消えちゃった。そのうち『あの人は今』シリーズにでてきそう」
尋ねにくい事も向こうから言ってくれるのが、ミチのありがたいところだ。
「それから紫苑はヨーロッパ留学から帰って来て、東京で個展を開いたわ。作品は完売だって」
「へえ、よくそんなことまで知ってるね」
和美は感心して言った。
「うん、実は見に行ったの」ミチはけろりとして言った。「紫苑もいたわよ」
有名女優のくせになんて大胆なのだろう。
和美は昔のように、ミチが来客の注目を奪わなかった事を祈った。
「そ、それで蓜」和美は身を乗り出した
「うん、相変わらず美人だったよ」ミチは言った。
「誰もそんな事聞いてないよ。 ね、なんか話した蓜」
「遠くから目と目で、じーって話す感じ。複雑な想いが二人の女の間を去来したけど」
想像しただけで冷や汗が出そうなシーンだ。
もしそれが言葉になっていたら、昼メロのシナリオが一本できていたかも知れない。
「絵はね」ミチはいった。「さすがにどれも良い絵だったよ。昔みたいに気負いがなくって、それでいてダイナミックで。若い人達に人気なのも良くわかる。 でも……」
ミチはある種、懐かしい目で和美を見た。
少女時代の情熱的な、感情を隠す事を知らないキラキラした眼差しで……
「『疾走』より凄い絵はなかったわ」
そうして、またたく間に十年が過ぎた――。
和美の娘、マリナはすでに耳に三つのピアスの穴を開け、さらにヒップへタトゥーを彫りたいと言い出し、父親と喧嘩をする……
そんな年頃になった。
一時はコンプレックスだった”サラサラの黒髪”も、今ではセクシーなかき上げテクニックを身につけている。
保守的な母親との会話は次第に少なくなっていた。
そんなある日、和美はマリナの部屋の前で懐かしい音を耳にし、はっと立ち止まった。
『あのドアを開ければ』だ。
和美の中で時間がテープのようにシュルシュルと巻き戻った。細胞たちが一瞬ざわめき、また黙ろうとする。
あのCDは全部捨ててきたはずだ。和美は娘の部屋のドアをノックする自分の手が、かすかに震えているのを見た。
「なあに、ママ」
娘がドアを開けたとたん、懐かしい音が大きく和美の顔の前に迫った。
それは無防備にたたずむ彼女の体の隅々にまではいりこもうとしてくる。
それはまるで、母と子のように、かつては一体だったもののように――。
「マリナ、そのCDどうしたの蓜」和美は何気なくいった。
「ママ、今はもうパソコンで聞けるのよ」
マリナは髪を揺すって笑った。
「でもこれ、すごく古いCDだけど。この前、日本からの留学生アユミに借りたの。良い歌でしょ蓜」
「……マリナ、この歌好き蓜」
「うん、すごく」
マリナは言い切った。
「アユミが口ずさんでたのを聞いて、わざわざ借りたくらいだから。あたし、センチメンタルなのは好きじゃないけど、なんかこれは懐かしくて泣けるの」
和美は限りなく素直に頷いた。かつて、自分の生み出した音に向かって。
「そう」
和美はかみしめるようにいった。
「私も好きなのよ」
「え、ママ知ってるの蓜」マリナは目を輝かせた。「ひょっとして、若い頃CD買ったとか蓜」
娘の心を捉えるチャンスだ。思えば、和美は子供達の世話ばかりで、一緒に音楽の話をしたこともなかった。
娘も、『ママはそういうものはわからない人』と最初から諦めている。
もし、この曲を作ったのが自分だと告白したら……
もし、実はこの曲を作ったのが自分だと告白したら、マリナは母親を見直すだろうか蓜
このところ『家事しかできないオーソドックスな母親』への尊敬が薄れ、
将来は音楽関係の仕事に就きたいという夢を抱き始めた娘が、母親の大それた秘密の過去を知ったら。
かつてこの歌を作り、その歌が全国で大ヒットしたことを知ったら、そして――。
和美は、むなしく首を振って、娘の不思議そうな顔の前でドアを閉めた。
懐かしい音が……
過去が……
夢が……
また遠くになった。
その時、和美は庭の水撒きをしながら、カモメ舞う海を見ていた。
海は20年前と少しも変わらず、それを見ている彼女はいつの間にか目尻に小じわの浮かぶ43歳になっていた。
何時もかたわらにいてくれたキャラは、もうこの世にいない。
代わりにそっくりなキャラJr.がベンチの上で目を細め、和美を見守っていてくれた。
突然、ひとつの人影が目に飛び込んできた。
彼女は「あっ」と声をあげて手からホースを落とした。
方向を失った水しぶきが猫を直撃し、キャラJr.はギャーギャーわめきながら逃げ出した。
しかし、和美はありえないものに目を奪われていた。
――香月だ。
白い砂浜に、香月がぽつんと立ってこちらを見ていた。
今は日本で聾唖学校の講師をしているはずの弟が。
相当距離があるはずなのに、少年のような笑顔が望遠鏡で覗いたようにはっきりと見える。
その顔はまるで、『ほら、やっぱりそうだったろ蓜』と言わんばかりだった。
中学生の香月の思い出がよぎる。
オーストラリアでおばあちゃんに会ったよ――。
香月が死んだ蓜――。
それは、やはり弟から姉への最後の通信だった。
登校途中、生徒達の列に車が突っ込んだ時、香月はとっさに一人の子供を庇って即死したのだった。
和美は20年ぶりに海辺の街に帰った。
幼い頃に遊んだ海岸は整備され、新しい店やロッジが建ち並んでいる。
故郷の街並みは、もはや異国のようだった。
変わっていないのは、
相変わらず優美なホテル・シーサイドと、とうとう由緒ある建物となった『民宿味里』くらいのものだった。
懐かしい潮の香りがする小雨の中、『味里』の前には香月の死を悼む焼香の列が延々と続いた。
駆け付けた大翔は男泣きし、ミチは遺影に向かい手話で別れを告げた。
誰もが香月を好いていた。どこかで彼に感謝していた。
決して前に立つ者でも名士でもなかったが、彼の短い人生は周りの空気を確かに浄化していたのだった。
葬式が済んだ次の日、香月のアルバムを引っ張り出してきたのは父親だった。
幼い香月のイタズラ写真を見て、彼は涙を浮かべながらクックッと笑い声を立てていた。
たちまち、和美と母親もアルバムを取り囲んだ。
町内運動会の写真。
オーストラリアの写真。
和美が知らない恋人との写真があった。
短い歴史の記録ひとつひとつを指さし、家族達は泣き、笑った。
しかし、以外にも多かったのは、香月が撮った姉の写真だった。
いつ撮られたのかわからない和美の笑顔が、アメリカに行ってからも一年刻みに並んでいた。
「香月は心配していたのよ。あんたの事」
母親がぽつりといった。
「また変な事が起こりゃしないかって。だから、毎年毎年アメリカに見張りに行ってたのよね」
そうだったのか――。
いたたまれなくなった和美は、アルバムに突っ伏して号泣した。
香月という性能の良いアンテナは、実はその能力を悔やんでいたのかも知れない。
そして偶発的な能力を弟が自覚した為か、あの二つの事件以降、奇妙な創作の嵐は訪れなかった。
彼女は今になって、弟はある意味で本当に我が身の一部であった事を思い知った。
たとえ、あの盗作事件が香月の能力に関係があったとしても、それはふたつの魂が強く呼応した証拠ではないか。
だったら、それでいい。
それで満足だ――。
このささやかな人生には、そんな風に激しく燃える生の瞬間があってもいいではないか。
そして、香月は永遠に逝ってしまった。
もう二度とあの創作の時はありえない。
おしまいなのだ。
どんなに求めても。
どんなに愛しても――。
和美は心を決め、今は香月の部屋になっている部屋にひとり足を踏み入れた。
カビ臭い天袋を開けると、一番奥に黄ばんだ布の包みが眠っていた。
17歳の時に自ら封印した、あの『疾走』だ。
和美は置き去りにした魂のかけらに静かに再会した。
二十数年ぶりに日の光を浴びると、それは再び美しく輝き始めた。
香月とわたしとがつながっていた最高の証。
もう、悔いも悩みもこだわりも消え去った。
それが世間に盗作と言われた事すらも、今ではかけがえのない想い出だった。
和美は『疾走』を大切にアメリカへ持ち帰った。
機内でも”おくるみ”に包んだ赤ん坊のように、自分のそばから手放すことは出来なかった。
それは和美にとって確かに命あるものだった。
ある晴れた日曜日、やっとリビングの壁にそれを飾る決心がついた。
フックに額をかけようとして、和美が思いきり背伸びをしていると、大学生の武史が後ろからひょいと手を伸ばした。
「おっと。俺がやってやる……」
そのまま武史は化石になった。
自分が飾ったばかりの絵を目の前にして、あんぐりと口を開けている。
和美はそんな風に固まった人間を久しぶりに眺めた。
この絵を描いた当時は、何度こんな光景を見ただろう。
この絵は生まれて初めて、なにかを人にもたらすことの感謝を和美に教えてくれた。
そのうち、呼ばれもしないのに腰にタオルを巻いた洋史がバスルームから出てきた。
シャンプーの途中だったらしく、白い泡がフットボールで鍛えた筋肉にポタポタ落ちている。
弟は兄と並んで、黙って絵を見つめた。
二人とも同じように腰に手を当て、首を少し右に傾けて。
双子達は無意識に同じポーズをとっている事があった。
「……この絵、香月おじさんの形見蓜」
武史が静かにいった。
「そうよ」和美はいった。
「へえ、どうしてプロの画家にならなかったのかな蓜」
洋史が感心したようにいった。
「俺、気に入っちゃったな。今まで、自分に絵がわかるなんて思わなかったよ」
かつて、この絵が生まれた時、たくさんの人に言わせた言葉ではないか。
和美はもう自分が何者で、何歳で、どこにいるのかわからなくなった。
そこへ、ヘッドフォンをつけたマリナが、露出した腹を揺すりながらやって来た。
ピアスがヘソの横で揺れている。
マリナは泡だらけの洋史を見て肩をすくめた。
「もう、お兄ちゃん、何やってんの――」
そこで彼女は絵に気付き、目を細めてヘッドフォンを外した。
「……どうしたの、この絵蓜」
誰も何も言わなかった。
そこへ、今度は庭からユウがやって来て、ベランダからひょいと顔を覗かせた。
「なんだなんだ、みんな揃って」
家族達は黙りこくっている。ユウは子供達の視線の先を追い、そしてその絵を見つけると、無意識に帽子を脱いだ。
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