緋い月の夜

親と大喧嘩して
家を追い出されたり
(理不尽な親の八つ当たりで)

交通事故に
遭いそうになったり
(信号無視andｽﾋﾟｰﾄﾞ違反の車にはねられかけた)

あまつさえ大量のｺｳﾓﾘに
群がられた経験まである
(ｺﾝﾋﾞﾆ行った帰りに何故か)

こんな事があるのは
決まって緋い月の夜だ
見上げて見れば
空に浮かぶ｢ｿﾚ｣は不気味に
笑っているようにも見える

この日に起こったﾄﾗﾌﾞﾙは
小さな事から大きな事まである

どれもよくないことで
嫌な思い出だ



だから私は
｢緋い月｣が大嫌いだった―…

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>> 1 私は櫻井 咲月(ｻｸﾗｲｻﾂｷ)
満月の夜に産まれたので
｢月が咲く｣と書いて咲月

双子の妹は
｢月が満ちる｣と書いて
満月(ﾐﾂｷ)

そのまんま過ぎるが
両親からもらった名前に
ｹﾁをつける気はない
むしろｷﾚｲな名前だと
人からよく言われるし
覚えてもらいやすい

ちなみに
ｼﾞﾝｸｽを信じているなんて
子供っぽいと
思われるかもしれないが
一応､人生17年目になる

世では花の17歳かもしれないが
正直言って
青春を謳歌しているかは謎

原因はわかっている





………性格だ

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>> 2 どこかふわふわした雰囲気で
ちょっぴり天然
似合う色はﾋﾟﾝｸ
そんな絵に書いたような
可愛らしい妹

一方
がさつで不器用な乱暴もの
どこか男らしさを
感じさせるのが私だ

ﾋﾟﾝｸなんて死んでも
似合わないだろうし
女らしさなんてものは
欠片すらない
母のお腹の中に
丸々忘れてきたんだろう

見た目はそっくりだが
醸し出す雰囲気と性格は
まるで違う

食べてきたものも
取り巻く環境もほとんど
同じで変わりないのに
こんなにも違うなんて
おもしろいものだ

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>> 3 満『咲月ちゃん､今日は満月だね？緋い月の日じゃないといいね？』

学校へ行く電車の中
隣に座る満月が言った

咲『…色は夜にならないとわからないからな…緋くなきゃいいんだけど』

満『大丈夫！今日が緋い日でも咲月ちゃんのことはアタシが守ってあげる！』

気合いの入った
眼差しを向けられるが
やんわりと遠慮しておいた

今日が緋い月の日かどうか
わからないが
もし今日がその日なら
出来るだけ一人で
いたほうがいい

今までの経験上
起こるﾄﾗﾌﾞﾙは避けられないし
一緒にいる人を
巻き込む事もあり得るからだ

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>> 4 普段の緋い月の夜なら
まだしも今日は…

｢緋い月が満ちる夜｣は
より一層悪いﾄﾗﾌﾞﾙが起こる

だから満月の日は
厳重注意の日

もし緋い日だとしても
月が出る前にさっさと家に帰り
部屋で大人しくしていれば
被害は最小限にできる

これも経験上から言える事

咲『心配しなくても大丈夫だから(笑)母さん達も信じてくれないｼﾞﾝｸｽを満月は信じてくれる｡それだけで十分だよ』

満『でも…！』

咲『駅｡着いたぞ』

納得せず何か言いかけていたが
それを遮り電車を降りた

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>> 5 満月は
泣き虫で怖がりで甘えん坊
幼い頃から私にﾍﾞｯﾀﾘだった

それでもどこか芯が強く
泣きながらお化け屋敷の
お化け役から
私を守ろうとしたり
誰も信じてくれないような事も
満月だけは何の疑いもなく
信じてくれたりした

自分を信じ
守ろうとしてくれる妹を
自分もまたその妹を信じ
守ろうと決めた
何があっても守る
そのためには強くなる…

この時の決意が見事
女らしさを払拭させ
男らしさを
身に付けたのかもしれない





…ひねくれって言う
余計な要素も若干混じって

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>> 6 満『咲月ちゃん』

咲『…ん？』

満『部活…早く終わらせて帰ろうね｡なんだか嫌な予感するから』

教室に入り
教科書やら筆記用具やらを
整頓しながら真剣な面持ちで
言ってきた

満月も何か感じるのだろうか
私自身も､今日は特別
緋い月の夜ではないことを
願っている

肌がﾋﾟﾘﾋﾟﾘするような
痛みにも似た感覚がする
ｿﾞｸｿﾞｸと悪寒が背中に走る

今日はとんでもないことが
起きるかもしれない…

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>> 7 ────……
───……





…あれ？





いつの間に寝ていたんだろう…
学校は？
今さっき学校に
着いたばかりだったはず
どうしてこんな所に…

寝ていたというより
倒れていたのだろうか？

だってここは…
ここは…





…どこだ？

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>> 8 ここはどこだ？
どうしてこんな所にいる？

何故

いつ

どうやって

ここへ来た？

見渡して
状況を掴もうとするものの
混乱して頭が回らない
なんとか自分を落ち着かせ
ひとつひとつ考える

まずここはどこなのか？
暗い部屋
十畳ほどのｽﾍﾟｰｽだろうか…
何もないからやけに広く感じる

…いや､ある
ひとつだけ窓が

弱い光が差し込んでいる
かろうじて
部屋の中の様子がわかるのは
あの光のおかげだろう

部屋には何もないし
他には誰もいない

もう少し情報が欲しい
自分が置かれたこの状況を
理解するために

警戒しながら
ゆっくりと窓に近付く

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>> 9 弱い光は空から届いていた
雲に隠されることなく
煌々と輝く










緋い満月──…

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>> 10 咲(もう夜！？半日以上の記憶がない…！外の様子は！？)

見えない…
緋い月以外に何もない
まるで暗い闇にこの部屋が
浮かんでるようだ

咲(何が起きてる…？これは現実？他に人は？満月は無事なの？どうやってここから出られる…？)

窓は開かない
固く固定されている

嫌な予感が不安とともに
増幅する
身体中が危険を知らせる





開けない夜の始まり─…

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>> 11 《今から…ｹﾞｰﾑを始める…》

物音もなく静かだった部屋に
突然聞こえてきた
｢ｹﾞｰﾑ開始｣

満『誰！？いきなり何！？』

ｽﾋﾟｰｶｰなど見当たらない
もちろん人影も…

直接頭の中に
話しかけられてるように響く
若い…子供のような声

《ﾙｰﾙを説明する…》

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>> 12 《まず…ここは
異次元(ﾊﾞｰﾁｬﾙ)空間が
占める世界…
現実世界ではない…
あなた方は今､精神体であり
身体は現実世界で
眠っています》

満(…は？意味がわからない
あなた方って事は
誰か他にも…？
異次元？信じられるわけが…)

突然､窓に人が映る
窓ｶﾞﾗｽがTVの液晶のように
鮮やかに映し出す

そこには何か
機械のｶﾌﾟｾﾙのようなものが
いくつも並べられ
その中には人間が
一人一人眠っている

満(嘘でしょ…？何で！？)

信じられない光景だ
あるひとつのｶﾌﾟｾﾙの中に…





｢私｣がいる─…

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>> 13 †訂正…No13のｾﾘﾌは
満月ではなく咲月です
m(_ _;)m





咲(どうゆう事！？
私はここにいる…あれは…
誰！？)

ｶﾌﾟｾﾙの中で私が眠っている
頭…いや全身に機械を
とりつけられ手術の時に
つけるようなﾏｽｸまで…

生きているのかも疑問だ

《生きてるよ｡》

咲(！？)

《…今はね…》

咲『今は…って？目的は何？！
あんた誰だよ！？
そもそもこんな状況…
信じろなんて無理だ！』

一方的にまくし立てた
当たり前だ
こんな状況に
誰が落ち着いてられる？
信じられるわけがない！

でも不思議と…
心のどこかで
感じてしまった感覚…
認めたくないけど





夢ではなさそうである─…

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>> 14 現実味なんてない
でも…感じる…
夢ではない…

起きてるんだ
とんでもないことが

《今は生きているけど…
ｹﾞｰﾑｵｰﾊﾞｰになったら死ぬ》

咲『ｹﾞｰﾑ…ｵｰﾊﾞｰ？』

《参加者は全ての人類
全員が今､同じ状況にある
誰か一人でもｹﾞｰﾑをｸﾘｱすれば
全員が助かる
全員がｹﾞｰﾑｵｰﾊﾞｰになれば…
全員死ぬ》

咲『目的は何？あんた誰？
どうしてこんな事を？！』

《《…ｸｽｸｽｸｽ…ﾌﾌｯ…ｱﾊﾊ》》

小さく笑い声が聞こえる
一人じゃない…相手は複数だ
しかもどの声も子供の声
小学生くらいの…幼い…

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>> 15 ♂《目的も僕らのことも…
すぐには教えない
それでは意味がないからね》

♀《ｹﾞｰﾑを進めていけば
わかる…かもしれないよ？》

咲『ｹﾞｰﾑって…何をするの？』

♂《ｹﾞｰﾑをｸﾘｱするには
朝を迎える事
正し朝を迎えるには
ある条件を満たさねばならない
条件を満たさなきゃ
日は昇らない》

♀《どんな条件かはｹﾞｰﾑを
進めていく上で自分で考えて》

♂《この世界で大怪我したり
命を落としたとしても
現実世界では
怪我はしてないし死なないよ
ただしｹﾞｰﾑで死んだ時や
ｹﾞｰﾑ続行が見込めない場合は
この世界からは消滅して
精神体も現実世界で
眠りについてもらう》

♀《全員がそうなったら
ｹﾞｰﾑｵｰﾊﾞｰ
現実世界で全員死ぬ
ﾏｽｸから毒ｶﾞｽを噴射してね》

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>> 16 咲『そんな事っ…！』

♀《誰か一人でもｸﾘｱできたら
全員解放するよ》

♂《参加するならまずその
部屋からｹﾞｰﾑを行うｽﾃｰｼﾞへ
移動してもらう事になる
参加を拒否するなら…
その時点でこの世界からは
消滅してもらうよ》

咲『ちょっ…！
もっと情報はないの？！
そんなんでｸﾘｱなんて
できるわけが…』

♂《ｹﾞｰﾑを進めていく上で
情報を得るといい
情報を持ったｷｬﾗもいるよ
ｹﾞｰﾑの世界だからね》

♀《もちろん邪魔してくる
敵ｷｬﾗだっているからね
ｹﾞｰﾑの世界だもん》

咲『ｽﾃｰｼﾞってどんな所？』

♂《行けばわかるさ
さぁ…ｹﾞｰﾑに参加する？》

にわかに信じられない話だ
簡単に決断なんて
できるわけない
頭の整理だって
ちゃんとつけたい
第一…命の危険があるんだ





どうしたら─…

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>> 17 具体的な目的はわからない
朝を迎えろなんて抽象的過ぎる
条件も…その方法も
情報が少なすぎる

それでも…何もせずただ
眠っているわけにはいかない
どっちにしろ命の危機には
変わりなさそうだ

咲(やってみるしか…ない)

♂《参加…する？》

咲『…あぁ｡やる…よ！？』

Yesの返事をした瞬間
突然光りに包まれた
あまりに眩しくて目を閉じる
それと同時に思った





やっぱり
緋い月は厄介で嫌いだと─…

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>> 18 咲『…ここは？…!…
やっぱり夢!？』

跳び跳ねるように起き上がる
そこは自分の部屋のﾍﾞｯﾄﾞ

夢だと思いたい…
あんな話はただの妄想だと…

ｶｰﾃﾝを開くと
夜空に緋い月が浮かんでいた
部屋の時計は
5時30分を指している
朝だとしても夜だとしても
5時30分の空の様子ではない

時計が止まったんだ

こじつけでもいい
そう思い込みたい
思いたいのに─…





満『咲月ちゃん！』

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>> 19 顔を真っ青にした満月が
部屋へ入ってきた

満『…咲月ちゃん…ｱﾀｼ…変な夢見たの…学校にいたはずなのに気付いたら夜になってて…真っ暗な何もない部屋にいたの…』

──────…

満月も
同じ体験をしたようだった

咲『やっぱり…夢じゃ…なかったって事か…』

重く暗い空気が流れる…
お互いに落ち着かせねばという気持ちと不安からか無意識のうちに手を握りあっていた

満『あったかい…体温も感触も感じるのにｱﾀｼ達は今､実在しない身体なんだね…信じられないや…』

咲『今こうして手を繋いでるのに…実際は手も触れてないんだな…』

満『咲月ちゃん…ｱﾀｼ達どうなるのかな？どうしたらいいのかな？』

咲『満月…』

握る力が強くなる
不安でいっぱいだ





緋い月は不気味に笑ってる─…

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>> 20 更新希望です🙇‼

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