京女に魅せられて
思い通りにならない不思議な彼女は
古都に似つかわしくなく
挑戦的に自分の前に現れた
~【四条で待ち合わせ】より~
>> 100
あの男の店はウサギちゃんのエナジーチャージの場所らしい
細い路地を歩いて案内されながら話を聞いていると
ウサギちゃんのあの男への信頼度が嫌気がさす程うかがえる
少し落ち込み
少しジェラシーを感じながら歩いているうちに店に着いた
居心地の悪さは容易に想像出来るその空間に
堕天使にいざなわれて私は足を踏み入れた
>> 101
『いらっしゃいませ ようこそ』
以前例の店で会った時よりも更に研ぎ清まされた端正な笑顔であの男が迎えてくれた
『どうも』
私も得意のポーカーフェイスで応える
既に静かなバトルが始まっているようだ
ウサギちゃんはスタッフや常連客に私を紹介し始めた
>> 102
『この方私の ええひとやの❤』
冗談まじりに微笑むウサギちゃんの甘い誘惑
私の ええひと
本気じゃないとわかっていても心を揺さぶられる
敢えて視線は合わさなかったが
こちらに顔を向けたあの男が私の視界に入っている
ウサギちゃんの紹介に
その場は沸き立ち盛り上がっていた
>> 103
ウサギちゃん可愛いよ
初めて会った時から変わらない
屈託なく笑うその笑顔が好きだよ
楽しそうにしている君を見ているだけで心があたたかいよ
そんな私の心を知ってか知らずか
オーダーするのを忘れていた私にあの男がダニエルをツーフィンガーで差し出した
会釈で応えながらタバコをくわえる
『こっち向いて』
ウサギちゃんの声に振り向くと
両手を添えてライターに火を灯した堕天使が微笑んでいた
>> 104
タバコの火と同時に
私の心にも完全に火をつけたね
『ウサギちゃん 私を本気にさせると火傷するよ(笑)』
余裕を見せるつもりで言った台詞だが
あの男への挑戦状であり
私の本心でもあった
ウサギちゃんの真意はわからない
でも
もうそんな事はどうでもいい
私はウサギちゃんを愛している
>> 105
店に入る前の憂鬱はどこかに行ってしまったかのように
ウサギちゃんと私は例の店に居るかの如く和やかに飲んでいた
あの男も接客中とあって灰皿を確認する程度にしか私達の前に現れない
相変わらずのカシスソーダを飲むウサギちゃん
やはり酒のアテには苺のようだ
君がいつも甘酸っぱいのはそのせいなんだね
静かで優しい時間が流れていた
>> 106
『ごめん ちょっとお手洗い』
おもむろに席を立ったウサギちゃんに目をやると
後ろのボックス席には既に誰もいない事に気付いた
店内の客はカウンターの私とウサギちゃんだけになっていた
閉店が近いのか
店のスタッフも ひとりふたりとあがっていく
カウンター越しには あの男と私
何とも言えない緊張感が漂っていた
>> 107
そこへメールの着信音
ウサギちゃんから❓
不思議に思いながら展開してみる
「こないだ例の店で私がお手洗い行った隙にサラリーマンさんバックレたやろ
仕返し(笑)」
なんてことだ
してやられてしまった
文面の続きには
「そいつがサラリーマンさんと膝突き合わせて話したいらしいねん
仲良くね❤」
いたずらな堕天使の笑えないジョークが書かれていた
>> 108
思えば
この前の 年上女との事をカミングアウトした後の気まずさから
今日の和んだ状況はあまりにも上手く出来過ぎていた
『同じものでええかな』
携帯の画面を見て絶句している私に
あの男が酒を勧めてきた
とっさの事に思わず頷いてしまった
膝を突き合わす❓
ウサギちゃんのこわい罠
>> 109
私に話とは❓
ウサギちゃんとの事しかないだろうが
頭の中に色んなものが駆け巡る中
あの男が口を開いた
『普段カラオケ 何唄てはります❓』
予想外の切り口に私は言葉を選ぶ余裕もなく
マトモに普段歌う曲を答えた
>> 110
『ええ曲ですよね
今度その低音の魅力を聴かせてもらわなあきませんね』
わざわざ膝を突き合わせて話すにはいささか拍子抜けする話題
そして
結局
しばらくそんなどうでもいい話をしただけで私は店をあとにした
何だったんだ
ウサギちゃん
君の真意は何なんだ
こうしている間にも
ウサギちゃんの存在が私の心に より深く刻まれていくのがわかる
>> 111
翌日
ウサギちゃんから全く昨日の事には触れない普段通りのメールが届いた
私もわざわざ報告するほどの事をあの男と話さなかったから普通に返信をする
お互いに昨日の事については一切触れなかった
それでも着実にウサギちゃんは私の中で自身の立場を確立していく
もしかしたら本当に悪魔なのかい
甘く 可愛く 切ない
やわらかな悪魔
>> 112
ウサギちゃん
この腕の中に抱きしめてみたい
捕まえたと思えても
君はいつも上手に私の手をすり抜けていく
それは まるで
砂漠の美しい砂のように
風に身を任せながらも静かにその存在感を私の心に植え付けていく
>> 113
ウサギちゃんと知り合ってどの位経っただろう
ウサギちゃんの存在感のせいか
随分前からの知り合いみたいな錯覚に陥るが
実際はまだ4ヵ月ほどだ
ウサギちゃんの事を考えない日は無い
ウサギちゃん
君は私の事どう思ってるの
メールに入力しては消す
私と結婚したいと思うかい
確認画面に進むが 保存して消す
完全にイカれてる
悪魔に翻弄されてしまった情けないおじさんだね
笑ってもいいよ
>> 114
気がつけば
例の店とは全く無関係なところで私とウサギちゃんの関係は歩き始めていた
マスターの存在すら
さながらTV番組の
【あの人は今】みたいだよ
ウサギちゃんとはほぼ毎日やり取りをする
相変わらず他愛もない会話
変な言い方かも知れないが
生身の女を相手にしている感覚がない
不思議な感覚に麻痺してしまっている
ウサギちゃん
なんて現実味の無い女なんだ
>> 115
肩を抱き寄せた事はあるものの
それ以上先の進展を見ない私とウサギちゃん
いっそ連れ去ればいいのかな
てか
そんなの無理だよね
妄想の中では
幾度となく押し倒しているよ
考えただけでも気持ちいいよ
可笑しいと言われても仕方ない
まさに
これが私の本音だから
君を誰にも渡したくないよ
>> 116
ウサギちゃんと相変わらずやり取りを続ける中
たまに 音信不通みたいになる時がある
もちろんお互い様だが
そんな時は不安になるね
確固たる立ち位置を決められないでいる私とウサギちゃん
今 平和なだけに
余計な事をして波風をたてるのも趣味じゃない
じれったさも
何故か楽しんでいる自分がいるよ
ウサギちゃんが居る生活
そばに居るともっと楽しいんだろうね
>> 117
そんな風に過ごしながら
気がついたら季節は変わっていた
ウサギちゃんとの関係は前進も後退もせず
今や生活の一部になっていた
年上女の存在も よほどの事がない限り思い出す機会もない
ウサギちゃんと出会った当初から考えれば
私達のストーリーの中のキャスティングにかなりの変動があった事は間違いない
むしろ
キャストは私とウサギちゃんだけで充分だ
私だけのウサギちゃん
毎日同じようなメールをやり取りし
時折声を聞き
そして 気まぐれにミーティングする
ウサギちゃん
君の生活のプログラムに私の存在は組み込まれているかい
>> 118
ウサギちゃんの生活リズムの中に私という存在が組み込まれているかどうかはわからないが
ある程度の間隔でウサギちゃんは私とのミーティングを希望してくる
会いたい
と言われる時は決まってウサギちゃんが疲れている時だ
必要とされているのか
ただの安全パイだと思われているのか
真実を知る事は野暮かも知れないね
でも
どんな理由にせよ私を求めてくれるのは嬉しいよ
欲を言えば
もう一歩踏み込んだところまで
私を求めてくれないか
>> 119
眠れない夜
ウサギちゃんの甘い匂いに包まれて眠りたくなるよ
心配しないで
何もしないから
嘘だよ
君が隣に居たら何度でも抱くよ
何度も 何度も
その先にあるのは幸せな眠り
>> 120
そんな妄想 いや 空想を現実が邪魔する
君は無理なんだよね
あのビストロで勇気を振り絞って教えてくれたよね
ウサギちゃん
君を救ってあげたい
闇の世界から
とりあえずそれまでは
草食系を気取ってみるよ
ウサギちゃんが安心していられる草原に案内するよ
>> 121
久しぶりに例の店でウサギちゃんと待ち合わせをする
心なしか残業も苦にならない
足早に例の店に向かう途中に携帯が鳴った
年上女からだ
何の用だ❓
電話に出るか迷ったがやめる
そう
これからウサギちゃんに会うのに気分的に邪魔されたくない
そうしているうちに例の店に着いていた
>> 122
店に入るとマスターは見えない
何処かに行っているようだ
カウンターには滑らかに身体のラインを描くロングヘアーの後ろ姿
ボックス席にもまだ客は居ない
『待たせたね』
声を掛けると不安げな表情でウサギちゃんが振り返った
『マスターは今 足りひんもん買いに行ってはる』
ウサギちゃんの隣に座りながら内ポケットからタバコを出す
ウサギちゃんは気を利かせて灰皿を差し出してくれたが
相変わらず表情が固い
>> 123
『今日は元気ないね』
直球を投げてみる
ウサギちゃんはこちらを見据えて言いにくそうに口を開いた
『年上さん ここのお客さんとゴタゴタしたらしいねん』
『えっ そうなの❓』
『お付き合いしてたらしいねん』
さっきの電話はその件なのか
それより
ここの客とデキていた事に少々驚く
意外と衝撃はない
やはり私の中では過去のものになっているからだろう
>> 124
酒の整理を終えたメンバーさんがおおまかな話をしてくれた
いざこざの原因が何かはマスターやメンバーさんにもはっきりしないようだが
店の外壁に年上女を中傷する貼り紙がしてあったらしい
年上女に狂わされた悲しい男
一瞬
以前の自分とダブったと同時に嫌悪感に襲われた
ウサギちゃんをマトモに見れない
自分が汚く思えた
頭痛がする
>> 125
結局その日は頭痛が取れず
せっかくのウサギちゃんとの時間が訳のわからないうちに過ぎていった
私を気遣うウサギちゃんの表情も曇ったまま
夕方入った年上女の着歴を消したい気持ちと裏腹に
その画面すら見たくない
いつまで邪魔されるんだ
ウサギちゃんとの距離が縮まりかけると存在感を示す
いや
私が弱いだけだね
ウサギちゃんというサンクチュアリに踏み込む勇気がない
年上女を言い訳にしている情けないオジサンだよ
>> 126
ウサギちゃんとなかなか向き合えないまま
また時間だけが過ぎていた
疲れて寝てしまう毎日
忙しくしていると余計な事を考えなくていい
特別仕事が好きな訳でもないが
気がつけば仕事人間になっていた
面白くない男だね
働いて
食べて
寝て
また起きて
時折 趣味を楽しんで
何ら面白くもない生活
私にはウサギちゃんという光が必要だよ
ウサギちゃん
砂漠にダイヤモンドを見つけたみたいな気持ちだよ
>> 127
ウサギちゃんとやり取り出来ないまま
また時間だけが過ぎていた
今は気力がないよ
なんだか疲れてる
こうしているうちに
また君は誰かに口説かれていたりするんだろうね
仕方ないよね
そんな君だから好きなのかも知れないね
>> 128
ウサギちゃん
君と知り合ってから
また新しい冬を迎えたね
初めて会話した日
私の頭の中に過った曲も冬の歌だった
あれから色々あったよね
手が届きそうになっては離れ
時折 君を見失いそうになりながらここまで来た
まだまだ君とは離れられそうにないよ
わからないけど
君にはとてつもなく意味深いものを感じる
>> 129
年末になり
またウサギちゃんとのやり取りが活発になった
毎日仕事ご苦労様
私もそれなりにやってるよ
君のメールや声は一番の癒しだよ
無理言ってもらった写メにもかなり癒されてるよ
何度見ても飽きないね
実際君が毎日横に居たら幸せだろうね
いつかそんな日がくる事を
何故か確信する自分が居るよ
>> 130
時折
ふと君と 君のまわりの男連中に嫉妬光線だよ
ウサギちゃん可愛いよ
仕方ないよね
誰かのかわりでも構わない
側にいたいよ
いや
自分だけのものにしたいよ
>> 131
ちまたでバレンタインの文字が目立ってきたね
いつもまわりを気遣うウサギちゃん
知人まわりから男女問わず
まるで御歳暮のようだね
ご苦労様
私には気遣いはいらないよ
気遣いではなく
君の気持ちが欲しいから
>> 132
趣味に没頭する疲労感
仕事の疲労感
女に振り回される疲労感
全て疲れるね
ウサギちゃん
何故君には疲れないんだろう
雪も見なくなってきたある日
気がついたら例の店に足が向いていた
ウサギちゃんは足が遠退いたと言っていたが
万に一の偶然に賭けてみる
え❓
クローズの札が下がる扉に立ちすくむ
ウサギちゃんどころか店そのものが動いていない
>> 134
マスターに何かあったのか❓
よく見ると扉のガラス越しにうっすら灯りが見える
目をこらすとマスターと見知らぬ女いる
遠目にもわかる緊迫感
覗き趣味はないが
私はその様子を見ていた
>> 135
よく見ると
更に2~3人ほど女が居る
いずれも見知らぬ女
しばらく足を運ばない間に客層も様変わりしていたようだ
車の往来が途切れると微かに中の声が聞こえてきた
>> 136
ありがちな痴話喧嘩にも見えたそのやり取りは
妙な修羅場だった
一人はマスターの彼女とおぼしき女
後はお節介な客が口を挟んでいるらしい
何故かマスターを擁護する女たち
一般常識が成立しない会話
こんな時に人間の本性が見える
>> 137
時折
通行人の目を気にしながら
あくまでも待ち合わせかの如く
わざとらしく携帯を触り腕時計を確認しながら
しばらく私はその場所に居た
ウサギちゃんが来ない事を祈りながら
>> 138
この店がいわく付きなのか
こういった場所ではありがちなのか
とかくこの店にまつわる男女間の人間模様は複雑だ
いや
逆に安直なのかもしれない
世間もこんなものかもしれない
マスターにしろ
年上女にしろ
私にしろ
>> 139
そもそも私は何故この店に足を運び始めたのか
短い時間に色んなものが頭を駆け巡る
当時の私は人生に諦めていたようなところがあった
今も意欲的とはいえないが
少なくともこの店によって私の生活が一変した事にはかわりなかった
>> 140
ウサギちゃん
君は何故ここに飛び込んで来たんだい
私と出会うため
私や
それにまつわる事で君を不要に傷つけてしまった
見えない深い傷を持つ君
いつも何かを諦めている私
決して前向きな関係には思えないが
それでも
私と出会うためにここへ来たと感じて欲しい
>> 141
ウサギちゃんと私は似ている
いつも心の不可分を感じながら生活する私達
違うのは
普段スローペースな私が君には急いでいる事
じっとしている事が苦手であろう君が私との事はのんびりな事
もう少し急いでもいいんだよ
いや
のんびり一生かけても構わないよ
相変わらず優しいね
ずっと変わらない
私を捉えて離さない
多分
そんなつもりはないんだろうね
好きでたまらないよ
会いたいね
またこの季節がやってきたね
はじめて声を聞いた時から迷いはないよ
だから迷わないで
私のものになって
.
お邪魔します。
ここに登場するウサギちゃんが私の知る人にソックリでビックリしました。
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