研究成功

レス14 HIT数 2155 あ+ あ-


2009/06/29 20:15(更新日時)

私は研究者として、この半生を捧げてきた…


研究…
研究…
研究…



その毎日だ…




こんにちは☺
新作ショートショートです。
感想、激励レスは、旧作の【生まれた時から愛してる 感想スレ】にお願いします☺

No.941651 (スレ作成日時)

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No.1

来る日も来る日も、研究室で、私は研究を重ねてきた。


小さな成功もあれば、大きな失敗もあった。


だが、研究とはそんなものだ…

No.2

そんな毎日…


気付けば、私はもう60才…還暦を迎えようとしていた。



出会いも無く、恋愛もせず、結婚もせず…


私の人生とは、何だったのだろうか…


そう考えるようになった。

No.3

私は、この研究室に入って、初めて休暇を取った。



外を歩くと…
平気で尻やヘソを出した女や、ズボンがずり落ちて、パンツが丸見えの男を目にした。


それぞれが、小さな箱を耳にあてたり、それを見ながら歩いている。


“あれが、携帯電話なのだな…”


それくらいの知識はあった。

No.4

私は、喫茶店に入り、コーヒーを注文した。

若い給仕は、『少々お待ちください。』と言った。


コーヒーは、今でもあったか…




店を出る時に、80円を置いた私に、給仕は『お客様、コーヒーは350円です。』と言った。


私が研究室に閉じこもり、年老いていく間に、コーヒーの値段は四倍以上になったようだ。


言われた金額を出すと、給仕は『ふふふっ』と、可愛らしく笑った。


笑った…
いや、私が“笑われた”のだと分かっている。


だが、何十年ぶりかに見た女性の笑顔に圧倒された…

No.5

私は、研究室に戻ると、媚薬…
【惚れ薬】の研究に没頭した。


あの給仕を口説くには、私は年をとり過ぎた…



【惚れ薬】さえ成功すれば、あの可愛らしい微笑みを独り占めできる…

No.6

来る日も来る日も、研究室にこもった私は、ひたすら【惚れ薬】を作るために、研究に研究を重ねた…




気付けば…
5年の歳月が過ぎようとしていた。

No.7

やったぞ!
成功した!

【惚れ薬】は、私の手の中の小瓶にある。


この薬は、一滴でも水に混ぜると【惚れ薬】になる。

だから、小瓶で十分だ。




あれから6年目…


私は、また久しぶりに研究室を出ると、あの喫茶店に向かった。


あの可愛らしい給仕の事しか頭に無かった…

No.8

街並みは、変わっていたが、あの喫茶店は無くなってはいなかった…



店に入ると、小太りの給仕が注文を聞きに来た。


『すみません。6年ほど前にいらした給仕さんは?』
と、聞くと…

面倒臭そうに、
『給仕?…ああ、ウエイトレスの事?』

“ウエイトレス”?
重みが無い…
痩せてるという意味か?

だったらそうだ。
6年前に会ったあの給仕は、痩せていた。


『そうです。ウエイトレスです。』
と、答えた。

No.9

『6年前ねぇ…、ああ。マスターの奥さんじゃない?』

無愛想ながらも答えてくれたが…


奥さん…?

結婚したのか…?
私が6年間も研究室に閉じこもっている間に…

6年…


私には、毎日の繰り返しの6年間だったが、若い給仕が恋をして結婚するには相当な年月だ…

No.10

私は、また6年間もの時間を無駄にしてしまったのか…


無意味に年老いてしまったのか…



虚しさ…
絶望感…
虚無感…


私の人生は、いったい何だったのだろう…

No.11

私は、手に握り締めていた小瓶を見つめた…


小瓶の中では、薄い桃色の液体が揺らめいている。




ヤケになった私は、小瓶の蓋を開けると、一気にそれを飲み干した。

No.13

人間の体は、ほとんどが水分から出来ている。




私は…
一瞬にして

【惚れ薬】になった…


        【完】

No.14

♦お詫び♦

12番目のレスは、誤字があり、削除しました。
13番目に訂正したものを書き込みました🙇

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