ずっと…

レス34 HIT数 3427 あ+ あ-


2009/06/29 00:55(更新日時)

僕は…


あなたがOKしてくれるまで、一生待ちます!




【巡り巡る出逢い】
に続いて、ショートショートの第二段に挑戦します‼

引き続き、感想レスは
【生まれた時から愛してる】
に、お願いします☺
今回も、激励レスをお待ちしています‼

タグ

No.941640 (スレ作成日時)

新しいレスの受付は終了しました

投稿制限
スレ作成ユーザーのみ投稿可
投稿順
新着順
主のみ
付箋

No.1

私…
大島真奈美。


大学時代からの5人の仲間とは、社会人になって別々の会社に就職した今も、その腐れ縁は続いている。

祐美。
和樹。
恭一郎。
智久。

そして、私…。

No.2

私達が長く友達でいられるのは、そこには“友情”しか存在せず、“愛情”なんて、甘ったるいものが無かったから…



そう…


大学時代から…

No.3

『真奈美…起きてた?』

『…祐美?どうしたの、こんな夜中に。』


『ごめんね。こんな時間に電話して…』

『いいけど…今日は彼とデートだったんじゃないの?』



『私…ふられちゃった…。』



翌日には、私達5人はいつもの居酒屋に集まり、口々に祐美を励ました。


『みんな、ありがとね。』
泣き笑いする祐美の顔を、みんながあったかい目で見た。

No.4

講義が終わって、私は大学を出ようとした。


『真奈美!』
呼び止められ、振り向くと、恭一郎が立っていた。


『あら。今日は真面目に来てたのね。』

『ちょっと、話があるんだ…』
恭一郎の真剣な目で、何かあったんだとわかった。


『和樹の父親の事なんだけど…』


『和樹のお父さんって、酒屋さんの?』

『そう。配達の途中で自転車で転んでさあ、足を骨折して入院したんだ。』



私達は“当然”集まった。

和樹の実家の酒屋を手伝った。
もちろん、無料奉仕。

でも、そんなの誰も気にしない。

ワイワイと楽しく酒屋で働いた。

No.5

恭一郎…。

これが、なかなかのイケメンで、その上、父親は総合病院の院長。


BMWを乗り回し、医学部の恭一郎がモテないわけがない。

恭一郎は、女と修羅場になると必ず私に頭を下げた。


『頼む!この通り!』

『またぁ?ホントにあんたってば、節操が無いわよね。』


『なぁ、頼むよ。イタリアンのコースでどうだ?』


『もう…、仕方ないわね。』



喫茶店…。
『あんたが恭一郎の女?』

『そうです。彼とは別れて下さい。』

『ふざけないでよ!』

女は、私にグラスの水をぶっかけると、立ち上がり喫茶店を出ていった。


水浸しの私は、
『恭一郎、フレンチのコースにしてちょうだい。』
そう言った。

No.6

『寝るな!智久!』
和樹が怒鳴った。


『お前なあ、なんでいつもレポートがぎりぎりなんだよ…』

『ごめん…』


『いいじゃない、智久なりに頑張ってんのよ。』


『頑張ってるヤツが、寝るかぁ?』

和樹は、呆れた声で祐美を見た。


私と恭一郎は、それを笑って見ていた。


のんびり屋の智久は、真面目に講義に出席してるのに、要領が悪くって、いつも私達の叱咤激励の中で期限ギリギリに、レポートを提出していた。

No.7

こんなバラバラの私達は、何故か気があって、こうして大学時代を過ごした。



四年目の春、相変わらずギリギリで智久も揃って卒業式を迎えた…。



それからも、仲間に何か起きればみんなは集まった。

何もなくったって、集まっては騒いだ。


学生時代と変わらず、私達の付き合いは続いた。


私と祐美は、違う会社のOL。


和樹は、父親の酒屋を継いだ。


恭一郎は、大学院に進んだ。


智久は、中小企業のサラリーマンになった。

No.8

ある週末、祐美からのメールが届いた。

“緊急召集!”



翌日、私はいつもの居酒屋に顔を出した。


店に入ると、和樹がいた。

『よお。真奈美にも祐美からメールがあったのか?』


『うん。何があったのかわからないの。“緊急召集”だけ。』


『俺も、同じ。真奈美、生ビールでいいか?』


『うん。さてと、今回は何かしら…まさか…』


『すみません、生ビール一つ!…だな、祐美…また失恋かぁ?』


そんな話をしていると、恭一郎が来た。

『よお。なぁ、祐美さぁ、また失恋したのか?』


祐美からの“緊急召集”のメールは、恭一郎にも届いていたらしい…

No.9

『真奈美、会社はどうだ?慣れたか?』

『ま、ね。単調な毎日って感じよ。恭一郎は?』


『俺は、退屈な研究をやってるよ。和樹は?店はどうだ?』

『コンビニが近くに出来てから、売り上げ激減だよ。何か対策を考えないとな…。』

『和樹の店もコンビニにしたら…?』



などと話をしていたら、祐美と智久が揃って入ってきた。

No.10

『あら。お揃いで…。祐美、今回は何があったの?』


『ちょっと待って。智久も生ビールでいい?』


『…うん。』


『すみません。生ビール2つください。…で、今日…集まったのは…』


恭一郎が
『おいおい、もったいつけるなよ。』
と言った。

No.11

『あのね、智久が恋したの。』



『……………?』
『……………?』
『えぇーーー!』



智久は、恥ずかしそうに下を向いている。

『美人か?』
『どこで知り合ったの?』
『何やってるコだ?』


私達は、智久に一度に質問した。

No.12

『あのね…』
祐美が説明を始めた。

『智久の会社の事務の女の子なんだって。私達より2才年下。智久に言わせると“天使みたいに美人”だってさ…。』


不細工な天使って、想像できないけど、智久にとっては天使みたいな存在なんだ…。

No.13

『女の事なら、俺に任しとけ。』


出た…
恭一郎。



『いいか、智久。お前の場合は、おとなしいから、ちゃんとアピールしなきゃダメだぞ。』


智久は、顔を上げて恭一郎の話を真剣に聞いていた。


『そのギャップを利用して、逆に引っ張るぐらいの強さを見せてみろ。意外性に、女は弱いぜ。』



恭一郎のアドバイスはともかく、私達は口々に智久の背中を押す言葉を並べた。

智久は、それらを黙って聞いていた。

No.14

それから
1ヶ月…



智久からメールが届いた。

“勇気を出して告白したら、OKしてくれたよ!ありがとう。”



へえ…
あの智久に彼女ができたんだ!



私も、笑みがこぼれた。

メールの最後に…


“今度の日曜日に、みんなに彼女を紹介したいから、僕の家に来てくれよな。”


もちろん、私達はお邪魔する事にした。

No.15

『こちらが、坂口慶子さんです。』


日曜日…
紹介された智久の彼女は、とんでもないくらいに美人で、私達は揃って驚いた!


『恭一郎、慶子さんを口説くんじゃないわよ!』


私は、小さな声で恭一郎に釘を刺した。


『俺は、そんな節操ナシじゃねぇょ!』

恭一郎は、そう言ってはいたけど、慶子さんを気に入ったって事がすぐにわかった。


『慶子さん、何か手伝う事ない?』

『慶子さん、ゆっくり座ったら?』


何かと慶子さんに話し掛けていた。


でも、慶子さんは笑ってそれをかわして、智久とべったりだった。



ふふっ。
女殺しの恭一郎も、かたなしね。

No.16

キッチンで、慶子さんと祐美と私が、所狭しと、料理を作っては、リビングのテーブルに運んだ。


祐美が…
『ねぇ、慶子さんって智久のどこが好きになったの?』
と聞いた。


私は、チキンとレタスのサラダをドレッシングと混ぜながら、その会話を聞いていた。


『智久さんったら…』

恥ずかしそうに、慶子さんが答えた。

『僕は、あなたが好きです。あなたがOKしてくれるまで、一生待ちます!ですって。一生待たれたら、私、お嫁さんに行けなくなっちゃう気がしたの。』


と、答えた。



智久ったら、やるじゃない。

No.17

私達…そして、慶子さんは智久のアパートで、楽しい時間を過ごした。



あの、ぼんやりした智久が、こんな素敵な女性を捕まえるなんて…





智久…
幸せになってね。

No.18

しばらくして和樹から、智久と慶子さんが同棲を始めたと聞いた。



結婚も秒読み…かな?


私達は、智久と慶子さんに気を遣って、集まる時にはあまり智久を誘わないようにした。



みんな、智久の幸せを祈ってた。


大学時代には、あんなに要領が悪くて、おとなしかった智久にあんなに素敵な彼女ができるなんて…


奇跡のようなものだった。

No.19

真夜中…


電話の音で目が覚めた…


『…もしもし。』


『…僕。』




『…智久?どうしたの?』



『慶子が…』

『どうしたのよ。喧嘩でもしたの?さっさと謝っちゃいなさいよ。』





『死んじゃったんだ…慶子が。』






『……………………?』

No.20

『朝…仕事にでる時にさぁ…』





『私は今夜、7時頃に帰って来られるけど、智君は?』


『僕もそれぐらいには帰って来るよ。』

『じゃ、お料理作るから、楽しみにしててね。』


『晩ご飯、なに?』

『うーん。ロールキャベツにしようかな…』


『うわぁ。楽しみにしてるね。じゃ、先に出るね。』


『うん。行ってらっしゃい。』





『普通の朝…だったんだ…』
智久は、その日の事を独り言みたいに小さな声で話した。

No.21

『でもね…、僕は少しだけ帰りが遅くなったんだ…。慶子は、それよりももっと帰りが遅くなって…』




先に帰宅した智久は、電話機の留守番ボタンが点滅しているのを見て、再生した。


慶子さんの声で…
『智君、今から帰るから、待っててね…』


その言葉が終わる瞬間、激しい物音の後、留守番電話は切れた…




残業を終えた慶子さんが、携帯で智久と暮らすアパートに電話した、最後の言葉だった。




その直後、信号無視の車が慶子さんを殺した…

No.22

慶子さんの死から、智久はふさぎ込んだ。


みんなが代わる代わる掛ける電話には出ない。


アパートに行っても玄関が開くことは無かった。



私達は、時々、智久抜きで集まると…
『しばらく、そっとしとおこう…』


そう言いながらも、智久を心配した私達は、やっぱり電話を掛けたし、アパートへも足を運んだ。




智久は…
会社を辞めた…

No.23

そうして、一年が過ぎた…


恭一郎から電話があった。
『真奈美!智久から電話があったんだ。“みんなに会いたい”って…。明日、智久のアパートに行けるか?』



『もちろんよ!祐美達は?』


『みんな行くって言ってる。』


『そう。じゃあ、私は仕事が終わって6時頃には行けると思うわ。』


『わかった。他のヤツらにも6時頃って、メールしておくよ。』


『うん。お願いね。…じゃ、明日。』



智久…
あれから一年…

みんな、ずっと心配してたんだよ。

No.24

一年ぶりに入る智久のアパート…


ウイスキーの空き瓶や、缶ビールのゴミでいっぱいだった。


私と祐美は、閉まったままのカーテンと窓を開けて、掃除をした。


それが落ち着いて…

私は、やっと智久の顔を見た。


やつれた智久は、まるで別人だった…



智久が
『みんな、ごめんね。心配かけて…』
そう言って、顔を上げて笑った智久は…


やっぱり智久だった…


私は、涙がこぼれた…

横で祐美は、すでに号泣していた…


和樹と恭一郎は、ただ黙って、智久の言葉を聞いていた。

No.25

『僕、引っ越そうと思うんだ…』
智久は、そう言った。


恭一郎は、
『そうか。うん、環境を変えるのは、今の智久には必要だな。』
と言った。


『うん…ここには慶子との思い出が多過ぎて、辛いんだ…』


『よし!そうと決まったら、引っ越しにはウチの軽トラだすからな!智久、引っ越しは俺達に任しとけ。』
和樹が言った。


私も祐美も、言葉は無かったけれど、もちろん引っ越しを手伝うつもりだ。

No.26

新しく住むアパートが決まり、次の土曜日に、いよいよ智久は引っ越す事になった。


私達は、早朝から集まると智久のアパートへ向かった。


ドアを開けて…
和樹が声を上げた。


『おい!智久!引っ越しの準備、何もしてねぇじゃん!』


『…ごめん。』


『お前、学生の頃のレポート提出ん時と変わってねぇなぁ…』


私も、祐美も、恭一郎も…


『寝るな!智久!』
って、和樹が怒鳴っていた頃を思い出して、笑った。



『じゃあ、始めましょうか。』
私の言葉を合図に、みんなが引っ越しの準備を始めた。



ゴミを仕分け、本を紐でくくり、服を段ボール箱に詰め、キッチンを掃除しながら台所用品も片付けた…


狭いアパートだから、四人がそれぞれを分担して片付けるとあっという間に終わった。


『駐車場から軽トラを取って来るよ。』

和樹が、そう言ってアパートを出ようとした時に、部屋の片隅で…



“カチッ…”
“カシャッ…”

と、聞き慣れない音がした。

No.27

私達は…
その音がした方を見た。


そこには、電話機があった…


そして…

“カチッ…”
“カシャッ…”



の音に続いて…



“智君、今から帰るから待っててね”


慶子さんの声がした…



恭一郎が…
『嘘だろ…』

No.28

『嘘だろ…、この電話機…コンセント、抜いてあるんだぜ…。』



私達四人は…

しばらく動けなかった。




智久が…

『僕…引っ越し…やめるよ。』


そう言った…

『先に“一生待つ”って言ったのは、僕なんだから…』





誰もそれを止められなかった…。

No.29

2ヶ月後…


私達は、あれっきり連絡を取らなかった。


それぞれが、智久を心配していた…
きっと…



でも、どう言葉を掛ければいいのか分からない私達は、何もしないまま…




2ヶ月を過ごした…

No.30

私達が智久のその後を知ったのは、新聞の小さな記事だった…


その内容は…


智久の住むアパートの住人が、異臭がすると大家に苦情を入れ、合い鍵で智久の部屋に入った大家が、腐乱した智久の死体を発見した…

司法解剖したが、死因は特定出来ず…




智久…
智久…




“おい!寝るな!”
“全く、仕方ねぇなあ…”
そう言う和樹。


笑ってる私達…



学生時代の私達5人が頭をよぎる…

No.31

お焼香を済ませた私達に、智久の母親が声をかけた。


私達は…
『このたびは…』
それ以上、言葉にならなかった。


『いつも智久にお話を聞いていました。あの子は大人しいから、ずっと友達がいなかったんです。時々届く手紙には、いつもあなた方の事が書いてありました。電話でも、あなた方の話ばかりを…』


智久に目元のよく似た母親は…

『あなたが、真奈美さん?』
と、聞いた。

『はい…』



『あなたが、和樹さんね。…あなたは祐美さん…、あなたが恭一郎さんですね…。』

No.32

一目で母親に誰かが分かるくらいに、智久は話していたんだ…



痛いよ。
胸が…痛いよ…
智久…



『あの子が発見された時に、二人分の食事…ロールキャベツがテーブルにあって、ワイングラスには先に亡くなった坂口慶子さんという方の指紋があったと警察の方から聞きました。』



慶子…さん?

No.33

ねぇ…
智久。
“一生待つ…”って約束を守ったんだね。


そして…
慶子さんは…
“今から帰るから…”って、約束を守ったんだね。




二人は、ずっと逢いたかったんだね。


智久…
今、慶子さんと二人で幸せでいるんだね。

No.34

その後…
祐美は、お見合いして結婚。
今では二児の母。


和樹は、酒屋をコンビニに変えて頑張っている。
コンビニのバイトの女の子に密かに片思いをしている。


恭一郎は、大学院を出て、国家試験に合格して父親の病院で外科部長として勤めている。







今日は…
私の結婚式。
『真奈美、おめでとう!』
『よう!幸せになれよ。』

『真奈美~。俺、お前の事が好きだったんだぜ。』

そう言った恭一郎は、祐美と和樹に睨まれていた。



智久…
私も、形は違うけど…
あなたと慶子さんみたいに、幸せになるから…ね。


        【完】

投稿順
新着順
主のみ
付箋

新しいレスの受付は終了しました

小説・エッセイ掲示板のスレ一覧

ウェブ小説家デビューをしてみませんか? 私小説やエッセイから、本格派の小説など、自分の作品をミクルで公開してみよう。※時に未完で終わってしまうことはありますが、読者のためにも、できる限り完結させるようにしましょう。

  • レス新
  • 人気
  • スレ新
  • レス少
新しくスレを作成する

サブ掲示板

注目の話題

カテゴリ一覧