｡*その血に連なる者*｡

願いを聞き届けてくれるのなら


私は

何も拒まない。




裏切り者の始末は

何よりも代え難いことだろう。




抗えてみせる。

裏切りの名を馳せて─

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広い庭園のある古びた屋敷は、初代が残した一族にとってとても大切なもの。

途絶えることは許されない

失うことは許されない

一族の血。


それは呪縛にも似た
この一族の定め。


逃れられる術もなく、生涯そのためだけに尽くして行く。


私は…

そんな哀れな血縁者であり


直に後継者となる身。



─逃れられはしない。



狂気に操られた

その血に連なる者よ─

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狂気とは─


強欲な富


誇れる名誉


歪んだ愛情

のこと。

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暗闇の中は静寂を保つ。

夜は静かだ。




闇夜の時こそ

唯一、私だけの時間だ。


誰も

近寄って来るな。



近寄って良いのは

人間以外のイキモノだけ。




誰も騒ぐな。




騒いで良いのは


人間以外のイキモノだけ。









このまま

眠ってしまえたら……。

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お前は気まぐれで嘘つきな猫。




私の…

可愛い


可愛い


猫…。




そんなに小さな存在で


自分より何倍も大きな人間を見下しているのか。



そこらへんの人間より

可愛いがいがある。







私にも他の人間にも
別に何も従わなくて良い



お前だけは

自由に

好きなように

生きて行け。



私はお前にだけに心を許せられる─














お前は自由なんだ。

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父の息子
長男である私の兄は

『後継者』と言う重荷を背負いきれずに屋敷を捨てて出て行った。

残された私が
次に全て背負うことになるのを知っていて。


兄は私をも見捨てて行ったのだ。


いつも…
いつも

いつも

兄は自分を優先してばかり。

兄だけじゃない

この屋敷の人間は

そうやって
幾度となく私を裏切ったことか。


この屋敷の中は

皆狂っているのだから


今更仕方がない…。

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去年、生まれて初めて献血をした時

生まれて初めて自分の血液型を知った。

無論、私を産んだ母さえも私の血液型を知らなかった。




兄の血液型は母と一緒だ。

兄は生まれてすぐ血液を調べたが


私だけは幾つになっても調べさせてはくれなかった。


私の体中をめぐる
血液を

何故調べようとしなかったのか…


母がそれを拒む理由


それは
ようやくわかった。




─まるで恐れていたことが現実に。


不思議なことに

今まで
調べたことのない私の血液を

誰しもが勝手に

母方に似ていると思い込んでいたのだから。

全ての発端はそこから…







私の血液型は

父と一緒だった。

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事実を知った時の
母ときたら


まるで私を気味悪がるように

表情は歪んでいた。






所詮、母には私程の非はないのだから…






呪われた血
父と似た血


私にも幸せは訪れない。





父と似た血が許せない。



幾度となく

自分の体中を巡る
全血液を抜きたい衝動にかられたことか。
















幸せは私を歓迎しない

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最近祖母が

庭園の手入れするために、お手伝いを雇った…


庭師ではない。



どっかの叔母さん。


草木について素人の人間。




ほら
草と花との見分けも出来ていない…


嗚呼
無残にも刈られていく……






何度言えばわかるんだ…


勝手に私の許可もなく



全くいらないことを…







今すぐ間違いなくクビだ。





許さない。


譲れない。

庭園は私だけのもの


何のために
私がわざわざあの高校を出たことか。






また祖母と争いだ。

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買い物行きたいなぁ





せっかく始めたﾊﾞｲﾄも
おばばに見つかったしね。



それでも
10万稼げたからいーや。








この屋敷の
汚れた金なんか使いたくはない


特に
醜いくらい財産への執着心が強い

貴様みたいにはなりたくはない





醜いのは貴様たちだけで十分。










私まで
道連れにするな

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ねぇ知ってる？













この屋敷には


昼夜問わず












幽霊が出ることを







口を半開きにして
ぼーっと
突っ立っているだけ。



アイツ等は

臆病者。

ついでに言うと
馬鹿。



休日は特に
私がひとりで留守番していることが多いからか


私を狙って来る。









死んでいる者に

何を言っても
わかりはしない。





だから総シカト。






この私を軽々しく観るな。

この世に
未練を残した

貴様等が悪い。






貴様等みたいなのが
私は一番嫌い

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ｼﾞｮｰｶｰは

片時も私の側を離れることはない。









札をめくれば






いつだって

道化の顔が私を嘲笑っている。

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隣の老夫婦

うるさいな…






どうやら
金も無いのに競馬で負けて…挙げ句の果てに
お婆さんから借りたお金も使って…

喧嘩中。








お婆さん頑張れ。

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毎日が息苦しい。





弱音は
いくらでも吐けるのに

息は詰まる。









肺に


ストレスが溜まる。

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サヨナラ


サヨナラ

サヨナラ












まるで枯れ葉みたいに





『サヨナラ』は散って行く

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ちょっと前に
駅前の路地で出逢った
猫の親子。

子猫が五匹くらい居た。



今日、久しぶりに
その路地を通ると

小学生の男の子が一匹の子猫と遊んでいた。


私は無意識に問い掛ける。

「ねぇ…他の子猫は？」





その男の子と幼い頃の私の姿が重なる気がした。






「みんなくるまにひかれちゃったんだよ」







嗚呼やっぱり。





あの時「元気でね」って

そんなこと
言っても


元気でいられるはずがなかったのに。





あの親子を引き取ることも出来ない

私が

そんな言葉

言ってはいけなかったんだ。

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昨日の晩

屋敷が寝静まった時間帯に
珍しく一人でおばばが起きていた。



暫くすると


突然、私の部屋に来て

「何かおかしい…」と言うから


仕方なく
一緒に一階の床の間まで行くと




天井裏から「人が這ってるような音がする」
と言い出した…





今更…気づいたらしい。




どこまで気がついたのかわからないけど。





「気のせいじゃない？」なんて私言ってあげた。









天井を見上げれば



絶対めんどくさいことになる

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疲れた…。




噛まれた傷が痛む…。







明日くらいに腫れて
もっと痛みそう













今さっき
交差点のところで









真咲（兄）にそっくりな人見た










振り返った時には

人混みに紛れててわからなくなってたけど。









真咲は
今度いつ帰って来るんだろ…

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もうやだ！！



ここどこ⁉⁉⁉






電車間違えた─────











ここどこ⁉
⁉

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最悪な１日だった…。

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父には姉と妹がいる。


２人共
それぞれ子供も居る。




つまり私にとっては
いとこの母親で、伯母にあたるのだ。





既に屋敷の住人でない彼女たちの血さえも
永遠に呪いは癒えやしないのだ。


この屋敷で生まれた子なのだから。

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父の姉は

幼い頃からとても真面目で落ち着いた清楚なひとだと言われられていた。
私からみても教育熱心な母親のイメージがあったが…
そんな彼女は信じがたい秘密を持っている。


彼女は若い頃に
歳の離れた政治家と不倫していたらしい。

私がそのことを知ったキッカケは

彼女の元不倫相手の死。

元であろうと
彼女は不倫相手の葬儀に出席する理由があった。
その時点で
“彼女の秘密”は私に隠せ通せなくなっていたのだ。


彼女は…


不倫相手との間に子供をつくったのだから…


それも
同じ不倫相手との間に２人も子供を残した。


つまり
その２人の子供と言うのは極平穏な親族だと思っていた
私の従姉弟のことなのである。


不倫で子供を残したにせよ、所詮は不倫

結婚は出来なかったが恐ろしいことに
元不倫相手が亡くなって、今の彼女には『彼氏』が居るのだと言う。


もうすぐ50歳だと言うのに…
この期に及んで、これからの老後も高望みしたいのか。

当然のことながら
屋敷に住んで居ないだけで嫁いだ訳でもないのだから

今の立場を使って

彼女は祖父母の遺産相続も狙っている。
この屋敷の財産さえも

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>> 22 もう清楚で真面目なんて不似合いすぎる。
そんなイメージの欠片なんて無い


もはや
壊れてしまったひと


可哀想なひとたち

それでも
所詮、私にとっては人事

もともと
父の姉の方の従姉弟なんて好きじゃない。
むしろ気持ち悪くて仕方がない。


従姉弟のお姉さんは、大人しいひとでとにかく秀才で
何より私が一番苦手とする人物。

弟の方は、とにかく生理的に無理。

気持ちが悪い。

私の母曰わく
記憶にない幼い頃から嫌っていたみたいで、従姉弟の弟のことをよくイジメていたらしい…


私の結婚相手を探すので夢中な祖母は

全てを知っていて
その従姉弟の弟を婿養子にすると言い出す始末

もうアイツが存在するだけで腹が立つ


いつも何考えてるからわからない表情で
ニヤニヤしてるか
ぼーっとしてるかのどちらか…


冗談じゃない
考えただけで吐き気がする

恋人も結婚相手も

そんなの邪魔

私には不必要


どうせ婿養子が居たとしても
そいつが当主になれるわけでもない。


当主になれるのは
血に連なる者だけ。





結局
次期当主になるのは


この私。








いつか必ず盛大に裏切ってみせる

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相続なんてもの



祖父母が死んだ時

一緒に灰になって埋めてしまえばいいのに。









傲慢なやつらの
手の届かない場所に







そうやって遺言を残して欲しいよ

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うるさいなぁ


一日中

電話が鳴り止まない






全部、着物屋から。


来年の成人式ための。









電話に出たら出たで

こっちが話しかけるｽｷもなく
ずーっと
ひとりで喋ってるし



勝手に個人情報持ってるのも気にくわない



まぁこっちはこっちで

速攻、電話切るけどね




しかも
笑えることに

皆、私の名前の読み方間違ってるし(笑)








リアルに

「そんな人居ません」

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ば-か

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