ブラックボックス
【今後の私】がまだ続いているのにも関わらず、また新たに書いてみようと思ったので書いてみます。
メインが【今後の私】ですので今から始めるこの話の更新は時に隔日・隔週になるかもしれませんが良ければ感想宜しくです🍀
※素人が書く物なので中傷誹謗がないようお願いします。文脈の誤字脱字は予めご了承下さい☝
新しいレスの受付は終了しました
救急隊員に運ばれ、父と一緒に明日香も救急車に同乗する。
「ご家族の方ですか?」
「持病や現在かかっている病気はありますか?」
とにかく色んな質問をされた。明日香は記憶を辿りながら答えられる範囲で答えたが、わからない事も多かった。
病院に到着するなり、治療室の中では医師や看護師達が慌だしく検査の準備や、父が服用した錠剤を吸引し、胃の中の洗浄を始めた。
薬の多量摂取が原因なのか?明日香の父は意識がなく昏睡状態に陥っていた。
「お父さん…どうして…?」
治療中のため、閉ざされたドアの外で待つ事しか出来ない。明日香は混乱し、ドアの前で崩れ落ちた。
父と母は数か月前、明日香が中学生になったばかりの頃に離婚し、母は明日香と父を捨て違う男の元へ出ていた。
祖母から聞いた話によると明日香の親権や慰謝料を争う事等もなく、
すんなり離婚が成立したらしい。
母は呪縛から解放され、自由になったのだ。例え自分が捨てられようともそれでいいと明日香は思った。
明日香は両親に興味がなかった。幼い頃から家庭は冷えきっていたからだ。寧ろ冷めた家庭が当たり前のように思っていた。明日香は温かい家庭を知らずに育った。
周りは明日香の事を「可哀相…」と言うが、本当に可哀相なのは両親だと幼い頃から明日香は知っていた。
治療が終わるとICU(集中治療室)に父は運ばれた。
しばらく面会謝絶、事態は予断を許さない状態だったからだ。
明日香は呆然と面会謝絶の札を見て立ち尽くす。
「明日香!」
背後から聞き覚えのある声が聞こえた。祖母が病院から連絡を受け、血相をかいてやってきた。
「…おばあちゃん!」
父方の祖母だ。明日香は涙声で祖母に駆け寄ると抱き付いた。
「なんで?なんで…!」
堪えていた涙が溢れ出す。
「大丈夫だよ…大丈夫だから…」
祖母は明日香の頭を撫でていたがこの時、祖母の目頭も熱くなっていたに違いないだろう。
半日が経とうとした時、容態が安定したのか父は一般病棟に移された。
しかし大部屋は満床のため空きがない。そこで空きが出るまでの間、個室に移る事になった。
病室に入ると点滴を打ってベッドで横わる父の姿が見えた。
祖母は複雑そうな
顔で息子でもある父の頬を撫でる。
明日香は父の手を握り、父が眠りから覚めるまで待つ事にした。
更に時間は流れた。
長時間、病院にいるせいもある…流石に疲労はピークに達する。でも疲労よりも明日香の中で不安が渦巻いた。
“お願い早く起きて…”
何度も心の中で呪文のように明日香は唱える。
そんな明日香の傍らで祖母は高齢のため、ベッドの近くにあるソファで少し休んでいた。
「ん‥‥」
意識があるのか?無意識なのか?酸素マスクを外すような父の仕草に明日香は反応した。
「お父さん!わかる?お父さんッ!!」
明日香は父の身体を揺らす。その様子に休んでいた祖母も近付いてきた。
「明日香、今看護師さん呼ぶから…」
祖母はベッドに備え付けてあった呼び出し用のボタンを押した。
すぐに医者や看護師が駆け付けてやってきた。
「小野田さん!ここどこだかわかりますか?」
医者が父の状態を見ながら父の名前を呼ぶ。
「‥‥は‥い」
微かに目を開け、
父は掠れるような小さな声を出すと意識はそこで途切れ、また静かに眠りに陥った。
「2人共!迷惑かけてすまなかった…!」
父はお酒の勢いを借り、祖母と明日香に頭を下げ、バツの悪そうな顔で謝った。それは夕方の食事時の時だった。
父の自殺未遂?騒動から数週間が過ぎようとした頃、ようやく父の口から事実を聞く事が出来た訳だが、父自身があんな事態に陥りながらも事実は実に馬鹿げた内容だった。
「これからはあんな事しちゃダメだよ!」
祖母に続き、苦笑いを浮かべながら明日香もすぐに言葉を返す。
明日香が学校帰りに見たあの日の光景は父が意識を失った後、テーブルに置いていた小瓶が落ちて錠剤が散乱しただけであった。
発見時、錠剤が散乱したその場面しか見ていない明日香からすれば、父が大量に薬を服用したと勘違いしても当たり前の光景であり、あの場に居れば誰だって勘違いする事だろう。
食事が終わり、テーブルに箸を置くと明日香は父の側に駆け寄った。
「戻ってきてくれて良かった…」
明日香は父に優しい言葉を掛けると、その言葉とは裏腹に父から晩酌の缶ビールを取り上げ没収した。
いつもなら晩酌の缶ビールをせがむ父であるが、この日ばかりは具の字も出せず、父は2本目の缶ビールを諦めるしかなかった。
今回、父の身にもしもの事があれば洒落にもならなかったが、こうして無事に父が退院出来た今にすれば話はお笑い草である。
因みに父のお酒が飲めない件であるがこれには理由があった。
会社の健康診断の判定が例年より厳しくなり、検査で尿酸値と肝機能の数値の高さで再検査にひかかった。
原因は勿論飲酒であり、痛風の予備軍でもあった父は脱・酒!を決まり文句に掲げていたが敢無く挫折。
食事の席でお酒の力を借りて祖母と明日香にカミングアウトした挙句、調子付いてもう1本飲もうとしたのを明日香が上手く止めた訳である。
同じ作用の薬を多重服用し、その相互作用により急激に血糖値が低下。
急性的な症状を引き起こして父自身が命をも危くした訳であるが、医師や薬剤師から正しい指導を受けた上、決まった用法で薬を服用すればこんな事態にはならなかったという話である。
皆様、お酒の飲み過ぎと薬の服用にはくれぐれもご注意を🙇💫
下手な話でしたがここまでご覧頂き有難うございます。如何でしたか?
オチが見えましたか?
続きが気になる方は
🌱今後の私🌱感想板の方にご一報下さい。
辺りが夕陽に照らされる頃、帰る時間を知らせるように終業ベルが鳴り響いた。
工場内では帰り仕度を始める者や、使用した輪転機の清掃をする者、
今日の生産数の最終確認をする者など様々に動いている。
「小野田さん、今日食事でもどうですか?」
「あ…、井藤主任…」
麻子は気まずそう青年を見た。青年の名前は井藤陽平。この工場に入社して今年6年目になる28歳の青年だ。
それに比べて麻子は肩身の狭いパート社員。離婚後、肩身の狭さに更に拍車を掛けた現状の中に麻子はいた。
麻子の数か月前までの苗字は『小野田』だった。離婚後、旧姓の『宮下』に戻ったのはいいが、工場内では噂の的だった。
“子供を捨てた母”というレッテルを貼られ、ありもしない誹謗中傷に麻子は心身共に日に日に衰弱していった。
麻子の上司でもあり、同じ部署で働く陽平はそんな麻子の事をずっと心配していた。
「あ、宮下さんスイマセン…!」陽平は慌てて麻子の呼び名を訂正した。
「構いませんよ」麻子は静かにそう答えた。
「え…?」一瞬、陽平は間抜けな声を出した。言葉の微妙なニュアンスに麻子の言葉の意味が理解出来なかった。
「スイマセン…!」
もう一度、麻子に向かって謝ると麻子は俯き加減になった。
「?」陽平は困惑している。
「お食事ご一緒します」そんな陽平にはにかむような仕草をして麻子は微笑んだ。
一児の母とは思えない程、麻子の容姿は若く見えた。見た目が派手という訳ではなく童顔のせいかもしれない。
20代後半の陽平と並んでも違和感を感じる事がない。“34歳で中学生の子供がいるなんて思えないな…”ふと陽平は麻子を見て思った。
「井藤主任?あのお飲み物は…?」
麻子の急な問い掛けに陽平は驚いた。我に返ると店の店員が注文を聞いている最中だった。
「あ…僕、生中で」
「私も同じ物をお願いします」
二人して同じ飲み物を注文した。スペイン料理を賄う小さいなお店のカウンター越しに二人して座ると、グラス片手にまずはビールで乾杯する事にした。
「ご心配おかけしましてスイマセン…」
ビールで喉を潤すと開口一番に麻子が陽平に向かい頭を下げた。
「宮下さん、やめて下さい!」陽平は慌てて頭を下げる麻子を制した。
「今日は気分転換という事で楽しみましょう」麻子に向かって笑顔を向けると陽平は店のメニュー表を麻子に手渡した。
「今日は僕の奢りなんで好きな物食べて下さいね」そんな明るく振る舞う陽平の姿に麻子は心救われた。
どちらからという訳でもなく、不思議と互いに身の回りの事や自分の話をする事が出来た。
お酒の力かもしれない。しかし麻子は実はお酒が弱かった。
グラス一杯のビールを飲み干すと麻子は完全に酔ってしまい、一人でケラケラと笑い始めた。笑い上戸であった。
大人しい性格のせいか?普段笑う姿をなかなか見る事が出来ないだけに、陽平から見た麻子は新鮮にだった。そんな麻子につられて陽平も笑った。
「宮下さん、大丈夫ですか?」陽平は麻子を支えながら大通りに出るとタクシーを捕まえようとしていた。
陽平の問いに「はい、大丈夫れす」…と答えるものの、麻子は呂律が回っていない。
「お家にちゃんと帰れますか?宮下さん!?」
ようやく捕まえたタクシーの後部座席に麻子を乗せたまではいいが、麻子はそのまま眠りに入ってしまった。
「お客さん…」タクシーの運転手が困ったように陽平を見る。こんな状態では一人で麻子を帰らせられないので陽平も一緒に同乗した。
「スイマセン、とりあえず進んで下さい」運転者にそう指示を出すと陽平は麻子の荷物を漁り始めた。麻子を家まで送らないといけないからだ。
麻子を担ぎ、タクシーから降りたのはいいが、目の前の家屋に陽平は唖然とした。
「宮下さんがこんな所に…?」麻子の荷物の中に免許証が入っていたので免許証の住所を頼りに来たのはいいが、思わず独り言が漏れる。
築何年かはわからないが随分古い木造二階建てのアパートだった。
恐る恐るアパートの入口のドアを開けると裸電球が薄暗く燈っている。アパートの入口を入った所には郵便受けがあり、麻子の表札を見つけると陽平は麻子を担いだまま、階段を上がった。
古い建物のせいか廊下はキシキシと軋む。家のドアの前まで来たのはいいが鍵が掛かっていた。
「宮下さん、自分で鍵開けて下さいね…」
麻子をドアの前に下ろすと起こすために陽平は肩を揺すった。
「う~ん…」しかし寝惚け眼で麻子は自分の鞄から鍵を出すとまた眠りに落ちてしまった。
「今後は宮下さんにお酒飲まさないようにしないとな…」独り言をまた言うと陽平は麻子の家のドアを開ける。
玄関先まで仕方なく上がったのはいいが、陽平は部屋の構造が分からず暗闇の中、手探りで電気のスイッチを探し明かりをつけた。
目の前にいきなり飛び込んできたのは小さな炊事場だった。玄関から一歩上がるともう炊事場があり、すぐに部屋へと繋がるアパートの作りに目を丸くした。
陽平は更に驚いた。
四畳半程の一室のアパートに麻子が一人で住んでいる事実だ。
驚きながらも麻子を部屋の隅に座らせると、
目の前にあった折畳まれた折畳み式のベッドを広げ、陽平は眠りに落ちている麻子をベッドに寝かしつけた。
このまま麻子に背を向け陽平は帰ろうとした。
“あれ‥‥?”
自分の手がどういう訳か濡れている。ふいに陽平は後ろを振り返ると麻子は泣いていた。それは麻子の涙だった。
起きた訳ではなく、
瞳を閉じたまま麻子は泣いていた。
恐らくまだ眠っているだろう。悪い夢でも見てるのか?
陽平は麻子の側に戻ると麻子が小さな声で呟いた。「明日香…」それは麻子の娘の名前だった。
陽平はどういう訳か急に麻子の事を愛しく想い始めた。いや、以前から押さえ込んでいた感情が湧き上がったというべきか?
陽平は麻子に淡い恋心を抱いていた。そうあの時からだ…。
「宮下さん…泣かないで…」そう言うと陽平は麻子の前に跪き、優しく口付けをした。
その時、何かが触れるような感触を感じ麻子は目を覚ました。目覚めたばかりでぼんやりとする視界の中に陽平がいる。
「井藤主任‥‥?」
その言葉を口にした途端、麻子はベッドから飛び起きた。
「えぇ…?」麻子は混乱した。この狭い自分の部屋の中に陽平がいる。さっきまで小さなスペイン料理店にいたはずだ。
「あ…あの私‥‥」
気が動転して上手く言葉が出てこない。
「宮下さん、酔って店で寝ちゃったんですよ」
「置いて帰る訳にもいけないし…」陽平は申し訳なさそうに麻子にそう言うと咄嗟に自分の口元を押さえた。
「そうですか‥‥」
麻子もどこかぎこちなく言った。
着衣の乱れはない。ベッドに座り込む状態で胸元に手を当てるととりあえず麻子は安心した。
陽平が口付けした事に麻子は気付いていないみたいだった。
だが、麻子に見つめられると陽平の顔はどんどん赤くなってゆく。陽平自身もその事に気付いていた。陽平は直ぐさまその場を何事もなく去ろうとした。
「どうかしましたか?」立ち上がろうとしたその瞬間、陽平の様子に心配したのか?ベッドの上から麻子の手が陽平の顔に触れる。
この時、陽平の中で何かが弾けた…。
自分の顔に触れる麻子の手を取ると、陽平は跪いたまま麻子を自分の胸に引き寄せた。
意図も簡単に麻子の小柄な身体がすっぽりと陽平の胸元に収まった。
これは夢なのか?それとも酔った勢いか…?
しかし互いに顔を見合わせると、鼓動の激しい高鳴りを感じずにはいられなかった。
麻子は夫と別れて以来、初めて違う男に抱き締められた。職場の上司と言えど自分より6つも下の離れた男にだ。
自分よりも若くしなやかな腕が自分を力強く抱き締める。
始めは驚き、無防備な状態だったが我に返ると麻子は躊躇した。
異性との久し振りの抱擁は一児の母である前に女である自分を呼び起こした。年を重ねても子が生まれても自分は女だったのだ。
陽平に触れ、麻子の瞳は潤いに満ちた。躊躇を忘れ、気付けば麻子のためらっていた手が無意識に陽平の腰に手を回していた。
4年前、麻子がパート社員として入社した当時、女として見ていた陽平の視線に以前から麻子は気付いていた。
だが今もなお、陽平は女として自分に接してくれていた。一途な陽平のその想いに麻子は愛しさを感じ始めていた。
陽平の手が麻子の耳の裏をなぞり、頬に触れると麻子の顔を引き寄せるように唇を奪った。
息も出来ぬ程の激しさに麻子は陽平の若さを感じずにはいられなかった。徐々に陽平の息遣いは荒くなってゆく。
「麻子さ…ん…」陽平は初めて麻子を名前を呼んだ。愛しくも切なく呼ぶその艶のある声に麻子の身体に電流が走った。
陽平は自分の腕の中で麻子を抱き締め続けた。抱擁とキスの嵐に麻子の身体が敏感になってゆく。服の上からそっと胸を触れるだけで麻子は身体を捩った。
「陽平さ…んッ…」
麻子も初めて陽平の名を呼んだ。小声ながらも吐息混りに出た麻子の声は実に色っぽかった。
麻子の白い肌が…紅い唇が…陽平をどんどん狂わせてゆく。
陽平が麻子をベッドに押し倒したその時、倒した拍子に何かが倒れる音が聞こえてきた。ベッドに押し倒された状態で麻子は倒れた音の方に視線を向けると写真立てが倒れていた。
【ブラックボックス】をご覧の方へ🍀
現段階では話が所々飛ぶ事が多い作品ではありますが、最終的に何故そうなったのかがわかる形でフィナーレを飾れたら…なんて思っています。
挫ける事もあるかもですが、出来れば完成させたいです📓✨
🌱今後の私🌱感想書込板の方で【ブラックボックス】の感想も取り扱っています。宜しければ感想もお待ちしています📝
両親が離婚してから時は更に過ぎ、あれから2年が過ぎようとしていた。
風の噂では明日香の母(麻子)が再婚したと明日香は聞いたが、それはあくまで噂であり、事実を母から聞かされた訳でもないので真相は闇の中だった。
明日香の父は相変わらずで、祖母は年を重ねれば重ねる程、身体が徐々に弱り始めてきた感じに見受けられたが、本人は至ってそんな事を気にした様子もないように見えた。いや、見せていたのかもしれない。
ある日、右下腹部の痛みを訴え、祖母が盲腸で入院をする事になった。
今まで薬で散らしてきたが度重なる再発から今回手術を行う事になったらしい。
手術と言っても豪快に切開する訳ではなく、手術方法はカテーテルを使った内視鏡手術でこの手術の場合、個人差にも寄るが目立った傷痕は残りにくいという医師の話だったそうだ。
祖母は病院の公衆電話から自宅に電話をかけ、
明日香にそう説明すると入院に必要な物を持ってくるようにと明日香に頼んだ。
急遽入院が決まったので、家にも帰れず祖母は明日香に頼ばざるを得なかった。
明日香は祖母からの電話を切ると病院に向かうために準備を始めた。
保険証を始め、何日入院するか不明だが2・3日分の着替えをとりあえず用意するため、祖母の部屋と向かった。
だが普段祖母の部屋に入る事がないため、
何処に何が締まっているのか明日香にはわからなかった。
タンスの引き出しを幾つか開けては明日香はそれらしき物を見つけるとバックに詰め込む作業を淡々と進める。
そこで偶然にも明日香は引き出しの奥に締まってある封筒に目を留めた。
その封筒に書かれた筆跡は明日香の中で見覚えのあるものだった。
この字は母(麻子)の字だ。明日香は祖母がいない事をいい事に封筒の中身をそっと盗み見た。
祖母宛てに書かれたその内容は明日香が祖母から聞かされた事実と異なる内容が記されていた。
「何これ‥‥?」
思わず明日香の口から声が漏れた。離婚の真相をここで明日香は初めて知った。
自分と父を置いて違う男の元へと行ったと祖母から聞かされたが、実はそれが偽りだったなんて明日香は今まで疑いもしなかった。
重い足取りの中、明日香は病院に向かった。
“祖母に悟られないよういつも通りにしなくては…”と思いながら、何度も祖母と会った時のシミュレーションを頭の中で繰り返す。
病院に着くと祖母が病院のロビーで待つ姿が自動ドア越しから見えた。
祖母も明日香が来た事に気付き、明日香に向かって手を振った。
「遅くなってゴメンね…、これでいいのかな?」祖母がいる場所へ駆け寄ると明日香は荷物を渡した。
祖母は手渡されたバックの中身を確認する。
「大丈夫、有難うね」
荷物を確認し終わると祖母は一息ついた。
「申し訳ないけど、家の事もしばらく頼んだよ」明日香の顔を見据えるように見ると祖母は明日香の手を握ってきた。
明日香は身体が一瞬ビクッとなったが、祖母に心配かけまいと無理に笑顔を作ってこう言った。
「大丈夫だよ、おばあちゃん」「また病院にも来るからね」祖母の手を握り返した後、その言葉を残すと明日香は足早に病院を後にした。
病院から家路に着いた後、どれぐらい時間が経ったのだろう?
父には祖母から連絡があった直後、携帯が繋らなかったので留守番電話に『おばあちゃんが盲腸で入院する』とメッセージを残していた。
暗闇の中、キッチンにあるテーブルに座ると明日香は俯せになりながら父を待っていた。
祖母から連絡があった頃、明日香は丁度学校帰りだった。それから病院から帰ったのが西日が沈みかけた夕方で…今はすっかり夜になっていた。
「ただいま~」いつもより遅くに父が帰宅した。家に入ると周囲はシンッと静まり返り、家の玄関以外、明かりはついていないようだった。
「明日香~?」不思議に思い、父は明日香の名を呼んだ。しかし明日香の声は聞こえてこない。
“出掛けてでもいるのか?”とも思ったが、玄関には明日香の靴がある事から父は玄関を上がるととりあえずキッチンへと向かった。
やはり玄関以外、部屋もキッチンも真っ暗だった。キッチンを目の前にすると人影が見え、
それが明日香だとわかり父は安心した。
手探りで壁伝いにスイッチを探し父はキッチンの明かりをつける。
「明日香~?寝てるのか~?」
呑気な声で言う父の言葉に、テーブルで俯せになったままの明日香が反応した。
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