一つの星が浮かぶ夜空 意味が分かると怖い話

レス5 HIT数 349 あ+ あ-


2022/09/25 22:17(更新日時)

「もし君を愛してなかったらこんなに苦しくなかったのだろうか。
もし君に出会っていなかったらこの旅は幸せだったのだろうか。
一体この舟はどこに向かっているのか分からない。
けれど黒い海の上をひたすら進み続けている。
本当にごめん。
君に何も言わずに出て行ったりしてごめんね。
それでも群青色の空には一つの星が浮かんでいるよ。
君も見ているといいな。
とても綺麗だよ。
いつか君が僕のこと思い出してくれますように。
いつか君が泣かなくてすみますように。
夢は壊れて現実を見て絶望して現実を頑張っても夢は直せなくて。
君と居たかっただけなのに。
君のことが好きでたくさん笑った僕も好き。
嵐がやってきてもこの舟は進み続ける。
青い海の上をひたすら進み続ける。
オレンジ色の空にもう星はない。
いつか君も僕も消えて無くなってしまうけれど出会えた喜びは無くならない。
君が誰かを愛して愛されますように。
とても寂しいけれど涙を拭ってまた進む。
いつか君が僕のこと思い出してくれますように。
いつか君が泣かなくてすみますように。
君の旅がどうか、幸せでありますように。」

やっと読み終えた。
「っていう詩なんだけど…どう?」
友人の反応を伺う。
「うん、いいと思うよ」
よっっっし!
「でもなーんかねー…」
と友人は眉をひそめる。
「なんかってなんだよ…」
ということで、僕リアム・ムーアは出来上がった詩の感想を聞きたくて、友人のエマ・テイラーに朗読していたのである。
「でもさー登場人物が自分が出てる詩を読むっておかしくない?」
「あーそれはメタ発言、読者からしたら面白くないからダメダメー」
メタ発言を登場人物にさせるのは注意が必要。
メタ発言するということは、自身が虚構の存在だと認めることになってしまう。
これといった理由がない限りやらない方が無難だな。
「でも可哀想よね。自分が架空の存在だって気づいちゃってるのって。」
「うーんでも架空の存在だって気づかない方が可哀想じゃないか?」
「そうね…」
とエマは悲しそうな目をする。
何か哀れな生物を見ているような目だ。
「他になんかないの?」
視線をそらして聞く。
しかしまさか、彼女がこんな発言をするとは思ってもみなかった。
つまりあの目はそういう意味だったのだろう。
いや、ほんと、でもまさか…ね?
「…ひとつだけ気になったところがあるよ」
「え、どこ?」
「多分うっかりミスなんだろうけど、リアムが読んでくれたお話の最後にね…句点がついてたよ」

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No.3637969 (スレ作成日時)

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No.1

どゆこと??
面白い笑

No.2

>> 1 解説いいましょか?

No.3

【解説】
友人は前半の語り手のセリフの最後に句点がついていることを指摘しました。
しかしそれは読者の視点に立たなければできないことで、登場人物であるはずの彼女自身には出来ない発言なのです。
いわゆるメタ発言です。
つまり彼女自身は自身が虚構の存在であることを自覚してしまっていた、と言うオチでした。

No.4

>> 3 なるほど!
メタ発言の部分は自分達が架空って知ってる上で言ってるのかって勝手に解釈してたわ笑
いいねこれ センスあるよ

No.5

>> 4 ありがとうございますー!🙇

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