今日もくもり

レス41 HIT数 1322 あ+ あ-


2025/03/08 06:28(更新日時)

誰も気づかない

話しかけても反応がない

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No.3085424 (スレ作成日時)

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No.1

今日もここは、沢山の人が行き交う。

腕時計と、信号を交互に見ながら、スマホで会話するサラリーマン

音楽を聴きながら信号を待つOL

手を叩きながら爆笑してる大学生だろうグループ

No.2

毎日毎日同じ毎日。

観察すると、大体同じ時間に同じ人がいる。

俺だけじゃない。

毎日同じことを繰り返してるのは。

No.3

少しだけ安心する。

だけど、俺はここの人たちとは少し違う。

何時からだろう。

No.4

思い出そうとすると、
周りの景色が、ぐるぐる回り、ぼんやりとして、頭がいたくなる。

結局諦め、俺はまた、忙しそうに行き交う人々を眺める。


No.5

雨の日も風の日も、心地よいだろう天候の日も俺はただただなにも出来ず立ち尽くす。

No.6

泣く女がいた。


ただただその女は、静かに涙を流していた。

気まずい。少し視線を外す。

そんな事しなくてもいいのに。

No.7

ベンチに座るスーツ姿の女

頬を伝う涙を拭こうともせず、真っ直ぐ前を見つめている。

握り締められた、女の拳と、肩は少し震えている。


No.9

女は少しすると、すっと立ち上がり、涙をハンカチで拭うと歩き始めた。

ほどほどにがんばれよ。と、心の中で少し応援した。

No.10

羨ましい。泣けるなんて

人混みに溶け込んでいく女の後ろ姿をを見ながらそっと呟く。

No.11

視線を感じる。

俺は、大きなため息をつく。

嫌いじゃないけど、好きでもない。


No.12

目があったら終わり。

いや、合わなくても合っても結果は、同じ。

ほら、やっぱり

No.13

横に揺れたものが止まり、

ワンっと一言吠え、また激しくしっぽを揺らしながら、今にも二足歩行してこっちに来そうなくらい、飼い主を引っ張る犬。

飼い主であろうおじさんが、またかという表情をしている。

No.14

結局いつも隣りに座る。

息づかいが荒い犬と俺と困惑してるおじさん。

今日は、雨。

だから、黄色のカッパを着ている犬と、俺と、傘をさすおじさん。

No.15

結局撫でてやる。

犬なのに、撫でてやると
はぁはぁいいながら、笑ってるようにみえる表情をする。

不思議だ。

満足したのか、またおじさんと歩き始める。

No.16

男は、横断歩道の真ん中に立ち、空を見上げる。

先が見えない雲から、落ちてくる雫。

自分の人生みたいだ。

もうこんな毎日疲れた。

No.17

男の頬を雨が伝う。


まるで、泣けない男のために、代わりに泣いてくれているようだ。

車が通っても男は、気にせず空を見上げ続ける。

No.18

どのくらい立ち尽くしていたのだろうか。

いつの間にか、辺りは明るくなり、雨も止み、お天道様が顔だしていた。

雀たちも一生懸命お話をしている。

あぁ、もう朝か。

No.19

男は家にかえった。

何時もなら、この時間は、テレビの音、掃除機をかける音、さまざな生活音でこの部屋は埋め尽くされている。

でも今日は違った。

No.20

人の気配もない。

机の上には、食べかけのカップ麺と、飲むかけのペットボトル

男は、壁に寄りかかると、そのままストンッと、床に座り込む。


No.21

静寂は、すきだ。嫌いじゃない。

少し窮屈そうな瓶の中で泳ぐ青色の魚。

結局自由に生きれるやつは、それほど多くはないのかもしれない。

No.22

夕方になり、男が帰ってきた。

晩御飯は、またカップ麺だ。

男二人の静かな同居が数日続いたある日、

女と男が楽しそうに会話しながら帰って来た。

五月蝿い。

No.23

ふにゃふにゃ言ってる赤ん坊を抱きながら。

朝も夜も、赤ん坊は、関係なく泣いている。

女はうとうとしながら、赤ん坊の世話を毎日してる。

赤ん坊は、やっと女が寝ついた瞬間に目を覚まし泣きはじめる。

No.24

こんな小さいのに、なんて策士なんだ。

すこしは、寝かしてやれよ。

と、赤ん坊にいうと、俺が見て、きゃっきゃつ笑った。

ん?

No.25

こいつは、へんだ。

朝も昼も夜も元気だ。かと思えば急に静かになる。


なんて忙しい奴なんだ。

No.26

俺には時間の流れは関係ない。

歳を取ることも若返ることもない。

ずっとこのままの姿だ。


でもこの五月蝿い奴は、1日1日出来ることが増えていく。

朝まで立てなくてズリズリ歩いて癖に、昼には急に立てるようになった。

それから奴は、なぜか俺のとこに来ようとしてくる。

あぁ、お前。諦めてハイハイで来るのか。


No.27

そいつは俺の足を触ろうとするが、小さい手がスルリと通り抜け壁に頭をぶつけ泣いた。

あぁ分かったよ。

だから、泣くな。今度はクッションの近くに居てやるから。


No.28

あんな泣いて癖にいつの間にか、バンバン跳ねるようになってきた。

五月蝿い。

最近、奴の母親が、ダンボールに家の中の物を入れ始めた。

No.29

そして俺があの横断歩道に行って帰って来たら、邪魔だった小さい木みたいなやつとか、部屋に合わない大きなソファーに、小さな滑り台。

全て無くなってた。

あぁ。俺はやっと静かな部屋でゆっくり出来る。

No.30

静まり返った暗い部屋の壁に腰掛け座った。

あぁ、この部屋はこんなに広かったのか。

それに夜たまにじゃれてくる奴を構わなくてもいいのか。

熱くなった額に俺の手を添え続けなくてもいいしな。


No.31

そして俺はあの横断歩道を渡ろうとした。

目の前にあの五月蝿い奴の母親と父親、少し顔が引き締まって黒いランドセルと黄色い帽子を被った男の子がいた。

あぁ。あの五月蝿い奴は、無事成長したのか。

3人は男に気付かずそのまま歩いていった。

No.32

どんなに遠くに居ってしまっても、どんなに時が経とうとも俺は多分あの家族を忘れないだろう。

だけど、あんな騒がしい日々が幸せだったなんて今更気付くなんてな。

でも俺は何時までもここでまた会えるの楽しみにしてる。

今までありがとう。

No.33

ある日俺が部屋に帰ると女がいた。


「えっ…?」


お互い目が合い固まった。

俺のことが見えてるいるのか?

いや、それとも俺と同族なのか?

No.34

「あっ…すいませんこんにちは。」

と、女が挨拶してきた。


「こんにちは。」


久しぶりだった。誰かと会話したのは。いつぶりだろうか。

No.35

「ええっと、失礼なこと聞いちゃいますけど、亡くなってる人ですよね?流石に生きてたら、警察に連絡しないと…」


「多分死んでる…。」


「あぁですよね?びっくりしたぁ。あはは!私、他の人が見えないものが見えるぽくて…」

と笑う女

「いや、俺も俺のことが見える奴に初めて会った。」


「よかったぁ。優しそうな人で!」

良かったのか?この女変わってるなと疑問に思ったが、男は心に閉まった。

No.36

「どう思います?ほんとバカらしいですよねぇ~。分かってるよ。私だってこんなビール呑みながらさきイカ食べちゃってさぁ。結婚したくないならそういえばいいのにさぁ…もう…」

酒を飲み始めると、しくしく泣いたり怒ったりを繰り返す女。

相談に乗ったり他愛もない話も普通にこの女とするようになってしまった。

というか、なぜこいつはこんなにも普通に接してくるのだろうか?

No.37

今日は雨だ。


いつもの横断歩道の真ん中で、空から雨が落ちてくるのを見ていたら辺りは暗くなっていた。

そろそろ帰るか。


というか、あの家に来る人間はなんでみんな五月蝿い奴ばっかりなんだろうか。



No.38

家の中には1日雨にあたっていたのに、ずぶ濡れにならない男とすぅーっと頬に伝う涙を流す女。

「もう堪えられないよ…なんで…なんでなの?」

そう呟いて泣き続ける女

No.39

「だって…わざわざ殺さなくても良くない?いいよね?本当なんで??」

テレビの前にあるソファーで並んで座って映画鑑賞する2人


「まぁ、確かに。でも最初から最後まで幸せな映画ってつまらないからじゃないの?」


「確かにそうかも。でも楽しかったね!泣いたからストレス解消出来た気がするし!」

No.40

「今までありがとう」

女はそう一言告げて涙を流しまたこの部屋を去った。

女は主任に階級が上がり、転勤することになったのだ。

また1人静かな部屋に1人きりになった。


まぁ、いい。あいつはドラマみると泣いたり笑ったり忙しくて、たまにというか高確率で、酒を呑むとだる絡みで、俺に上司の愚痴を言ってくるしめんどくさかった。

だからこれで良かったんだ。

だけど、また辛くなったら何時でもここに俺は居るからほどほどに頑張れよ。

窓から女がキャリーケースを引きずっている背中に呟いた。




No.41

たまにふと思う。

俺が生きていたら何をしていたんだろうって。

何かに一生懸命になって、何かに怒ったり喜んだり悲しんだりしていたんだろうか。

誰かを心から愛してその人の寝顔をみて微笑んだり美しい景色をみて綺麗だと心から言うことが出来たんだろうか。


あぁ。俺はなんだかんだ理由をつけて向き合って無かったけれど幽霊ではなく人として生きたいんだ。


本当は覚えてた。忘れるハズなんてない。

俺は冷たい雨が降る日に、あの横断歩道で轢かれて死んだんだ。

もし生まれ変われるならもう一度やり直したい。


でももう無理なんだよな。

また俺はあの横断歩道の真ん中に立って雨が降っている空を見上げた。

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