ぱんだ日記
20年間、忘れられない人がいます。
その人は、20年前に事故で亡くなりました。
約束は、一度も守ってくれるこはありませんでした。
だけど、まだ若かったから我慢してました。
そんな彼が、忘れられないまま歳をとってしまい、結婚のお話があっても
踏ん切りがつかず、だけど何の解決することなく時間だけが過ぎてくばかり。
私には今現在、好きな人がいます。
だから、今まで誰にも話せなかったことを、日記にしてみようと思います。
好きな人と一緒の未来を歩いて行けるようになるかは分かりませんが、
少なくとも、私の心が軽くなるといいと思って。
亡くなった彼が、私のことを「ぱんだ」と呼んでいました。
本当は、このネームを使うのは止めようとしましたが、私の勝手な思いから
使うことにしました。
14/02/03 00:53 追記
少し戻りますが、私が外国人に絡まれているとき、彼は私の方にまっすぐ歩いてきました。
そして、私の腕をつかみ、ぐいぐい引っ張って後ろの車両へと行きました。
その電車は 最終だったため、ほとんど人が乗ってなく、高校生も私一人だったから、目立っていたと思います。
後ろの車両へ行くと、突然彼が怒り出しました。
『外国人はひとりだけだったのだから、突っ走って逃げられたはずだ!!』と。
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>> 3
当時私は17歳でした。
とある部活に所属していたため、大会近くなると遅くまで練習していました。
0時過ぎてしまうこともあり、その時は家族に迎えに来てもらっていました。
年に一度の迎えでしたが、私の勝手で迎えを頼んでいるので、家族には申しわけない気持ちと、感謝の気持ちはありました。
telの書いてあるメモですが、なぜか捨てられずにずっと、お財布に入れて
持ち歩いていました。
もちろん電話などするつもりはありませんでした、その時は。
数日がたち、学生なので勉強と部活に追われる日々、すっかり彼のことを忘れてしまっていました。
そして、ある日の最終電車の中、
「よっ!ぱんだ!」
あきらかに私にかけられた言葉でした。
でも、ぱんだって・・・
顔を上げると、彼が笑っていました。
一瞬 時が止まった感じがして、とりあえず私も笑顔を作りました。
これが、二度目の再会です。
>> 4
電車の中で、色々な話をしました。
色々、とはいっても彼が私に質問ばかりしてきたと思います。
終電の女子高生が珍しかったのだと思います。
私が彼にしたしつもんは、なぜ私をぱんだと呼ぶのか?そのくらいだったと思います。
ぱんだと呼ぶ理由は、制服が白黒なことと、お団子にまとめたヘアースタイルが
ぱんだの尻尾に似ているからだそうです。
楽しそうに笑って話す彼の顔が、本当に優しくて 何より声が素敵だった。
容姿と声のギャップはあったけど、恋愛経験の全くない私には、恋に落ちるまでそう時間はかからなかった。
彼の家と私の家は、方向は違うけど同じ市内だった。
駅に着くと、また送ってくれることになり、彼の車の後ろに私の自転車を積んでくれた。
前回も送ってもらったけど、私は危険なことをしていると反省した。
母にも嘘をついてしまったわけだし、本当 最低な子供だ。
母の見えないところで、私は危険をおかしていたのだから。
車の中でどんな話をしただろう?
話しているだけで、本当楽しかった記憶はある。
そして家の近くで車を止め、駅から自転車で帰ってきたような感じで家に帰る。
後ろめたさで心臓がバクバクしていたかも知れない。
>> 5
ある日の土曜日、私は初めて彼の家へtelしてみた。
女の人の声がして、多分 お母さん。私は、緊張していたと思う。
声が震えていたかも知れない。
そして、彼を呼んでもらった。
しばらくすると受話器から彼の声がする。
何を話しただろう?・・・でも話の流れから、また会うことになる。
三度目の再会だ。
「会える」・・・そう思うと素直に嬉しかった。
どんな服を着て行ったのだろう?
母の服を拝借したかも知れない。
待ち合わせは、私の家の近くの公園。
中学生の頃の通学路の途中に公園はある。
当時は自転車で通るけど、久しぶりに歩く道はきっと新鮮に思えたと思う。
公園に着くと、彼はまだいない。
どのくらいだろう、しばらくすると彼の車がきた。
車に乗ることの抵抗はなく、ごく自然に乗り込み この前のお礼をする。
彼は、優しい笑顔で私をみていた。私は、その笑顔にほっとした。
異性の人と一緒にいて、初めて安らぎを覚えた瞬間だったと思う。
私は彼に、恋をした。
>> 6
彼について書きます。
彼は、私の2つ上の19歳。
専門学生で、学校が終わるとバイトに行きます。
バイトが終わると、いつも最終電車になってしまうらしく、
実は私が外国人に絡まれる以前から私を時々見かけていたそうです。
バイトは、学校の費用を両親に出してもらったので、その返済でバイトしているようです。
働くようになってからでいいと言われたみたいですが、頑固な一面があったのでしょうね。
彼は自分のことを、土曜日の車の中で話してくれました。
それからもうひとつ。
彼は 私に付き合おうと告白してきました。
何のためらいもなく、私はうなずいたと思う。
ここからが、交際のスタートです。
彼とは2年間のお付き合いでした。
別れ話もなく、彼は事故で私の前から姿を消してしまった・・・
さよならも言わず、消えてしまった・・・
手しか繋いだことしかなくて、未成年の私をいつも暖かく包んでくれた。
彼がいてくれたから、私は幸せの意味を知ることができた。
>> 7
私が高校3年生になった年、彼は就職しました。
就職してからは、なかなか連絡も取れずにいましたが
このころになると、もうすっかり彼の家に溶け込めてました。
相変わらず私の家では、彼のことを言えないまま。
本当は彼のことを話して、堂々と付き合っていたかったです。
でも、家は本当に厳しかったから 話せば絶対反対されたと思います。
後ろめたい気持ちはありました、相変わらずですが。
仕事ばかりの彼ですが、たまに会うと色んな約束をしてくれました。
遊園地デートや、海に連れて行くこと、雪山に行って雪合戦とか、色々。
でもなにひとつ、約束は守られませんでした。
指切りもしたこともあったのに。
いつも仕事ばっかり。
私は、仕事を理解していませんでした。
それでも何も言えず、笑って「頑張ってね」って言うだけ。
本当の心は、寂しかった。
>> 8
彼と会えるのは、月に5日か6日くらい。
それでも、全く会えないよりは、会える幸せを感じられるだけマシだと思った。
この後、彼の仕事の都合で2か月会えない苦しみを知ってしまった。
それでも、忘れてはいけないこと、私は学生である。
学生は、勉強を頑張らなくてはいけない、ということ。
恋愛するために、学生やってるわけじゃないから。
だから、その2か月は、勉強に部活に頑張ってみた。
私は、彼に近づきたかった。
彼と同じ職場で一緒に働きたいと思っていた。
忙しい時は、私がお手伝いしたかった。
なんてね、安易な考え方しかできなかった。
あとから聞いた話しで、彼は私が隣で笑っていてくれるだけで疲れなんか吹っ飛ぶと言ってたそうです。
もっと、時間の許す限り笑っていたかった。
彼とは、永遠かと思っていたから。
>> 9
2か月で、人はどのくらい成長できるのでしょう?
勉強したからって、私は何も変わっていなかったと思う。
でも、心の変化はあったようです。
2か月過ぎて、彼からの電話が鳴る。
私の両親は共働きのため、彼との電話連絡はスムーズにいきました。
受話器の向こうからトーンは低いけど、いつもの優しい彼の声。
その声に、ずっと我慢していた涙がこぼれる。
言葉にならず、どう話しただろう?
あまり記憶になくて。
でも、彼に会う約束はできた。
嬉しくて、その日はずっと泣いていたかも知れません。
そして数日が過ぎて、彼と会う日がやってきました。
多分また、母の服を拝借して会いに行ったと思います。
待ち合わせ場所は、私の家の近くの公園。
忘れもしない出来心。
彼は先に来て待っていてくれました。
やっぱり、我慢できず泣いてしまった。
それも、私の方から彼の胸に飛び込んで。
始めて、彼の胸に触れた。
暖かかった。
>> 10
その後も、相変わらず月に5日か6日しか会えなかったけど、前より彼が近くに感じました。
そして、いつものように彼の手を握っておしゃべりをしました。
今思うと、本当に大切な幸せの時間を共有できていたことだけで特別なことだったと感じます。
彼が私の前から消えてしまう直前まで、私はずっと日記を書いていました。
ずっと大切に保管していて、もう2度と読むことはないと思っていました。
こんな形で、また開くことになったけど、こんなにも特別で、幸せな時間の終わりが近づいていることに気づきもしなかった。
彼のぽっちゃりして、少し大きめな手が好きだった。
ずっとその手を離すことはないと、私は勝手に思い込んでいた。
彼もまた、同じ気持ちだと信じていた。
本当に、彼が好きだった。
>> 11
夏も終わりに近づき、私の所属していた部活も引退して、残るは進路。
大学は考えてはいなかったけど、やりたいことはあった。
だけど、これって確実なものが見当たらなくて、迷いながら時間だけが過ぎていく。
一見無駄な時間を過ごしているようですが、迷う時間も本当は大切なんだと思う。
悩んで、迷って、そこから何かを学び取る。
そこが、すべての始まりのような気がする。
その頃彼は、まだ少し先のクリスマスのことを考えていた。
私の両親に、私たちの交際を認めてもらうと張り切っていた。
きちんとした形でつきあいたいと。
正直、嬉しかった。
果たしてくれた約束はないけど、そういう気持ちが嬉しくて。
私は、彼に守られている。
そう思ってた。
進路の方は、一応学校受験するとのことで決まりました。
>> 12
勉強の得意、不得意は誰でもあると思います。
私は、歴史や地理とかは本当に不得意でした。
逆に得意な科目は、数学です。
だけど受験となると、全科目の問題が出ますよね。
得意な科目だけ受けるわけにはいきません。
彼は私と違い、歴史や地理とか得意だと自慢げに話していました。
なので不得意である科目で、分からないところは教えてもらっていました。
当時は気づきもしなかったけど、丁寧に教えてくれる彼の意外な姿が
私には新鮮に思えていたのかも知れません。
穏やかな時間を、彼と共有できたことがただ嬉しかったのだと思う。
受験は、年明けでも2月中旬や3月上旬に行われたと思います。
彼のおかげで見事合格しました。
本当は、彼に真っ先に報告したかったけど、彼は仕事だから夜に電話をしました。
でも、彼と話はできなかった。
彼の母が電話で、まだ仕事から戻らないと言われました。
発表の日はちゃんと伝えてあったのに・・・
でも、仕事だから仕方ない。
>> 13
クリスマスが抜けていたので、少し戻ります。
実は、クリスマス当日は彼に会えなかったのです。
25日に、いつもの公園で待ち合わせしました。
何の疑いもなく待ち合わせ場所へ行き、彼を待つ。
当時、携帯もポケベルも持っていなかった私は、長い時間 彼を待ち続けました。
いつもなら遅れても5分くらい。
でもその日は、何時間も待っていた。
私の母に、挨拶する・・前の晩もその話をしていたから。
「裏切られた」その思いだけが増えていき、初めて彼に怒りを覚えた瞬間でした。
家に帰ってから部屋にこもり、夕食も取らずに泣いていたのを覚えています。
彼からの連絡もありませんでした。
だから、母には会ってません。
>> 14
もう、彼とは連絡をとらない!!・・そんな決意をしました。
そんな決意は、すぐに自分で破ってしまうことになったけど。
次の日の26日。
午前中に彼から連絡がきて、私に謝り続けていました。
仕事でトラブルがあったとか、そんなことを言ってました。
でも後に、それは嘘だと知ってしまうことになる。
意外な形で。
そう、彼からの連絡は 昨日のお詫びに、彼の母がケーキを焼いたから
家に食べに来てくれとのこと。
最初は、別れ話を私が持ち出したのだと思う。
彼は、ひたすら私に謝り続けた。
時間を計ったわけではないけど、1時間は謝り続けてた。
私だって完全に嫌いになったわけじゃない。
だから謝る彼の声をずっと聞いていた。
私の好きな声。
大好きな人だ。
そして、家の近くまで迎えに来てもらった。
>> 16
以前、2か月彼の仕事の都合で会えなかったとき、寂しさを紛らすため、学生本来のやるべきことに打ち込めた。
何でも打ち込めるものがある、ということは本当にいいことなんだと思う。
二度目の彼に会えない時間が来ると分かっていたら、何らかの準備ができたのに。
二度目は何にも打ち込めるものがなく、誰かと話をすること自体が嫌になってしまった。
もちろん、家族とも口数が少なくなって 理由を聞かれても答えることすらできず、突然泣き出してしまうこともあった。
部屋からほとんど出ることもなく、世間で言うと「ひきこもり」と言うことになる。
その時の状態は、全く覚えていない。
部屋に閉じこもり、何をしていたのかも。
打ち込める何かが欲しかった。
受験の合格発表の日に連絡したとき、本当に仕事から戻ってないと信じてた。
次の日の夜も繋がらない。
だから、ずっと連絡だけを待ち続けた。
会えない苦痛が増えていく、会いたい気持ちが募っていく。
精神不安定な状態に陥った。
>> 18
本当は、外に出るのが怖かった。
ひきこもっている期間は 一か月もなかったけど、ずっと家の中でひとり
自分との戦いをしていた。
彼に会いたい、その気持ちはあったけど、自宅へ出向いたところで会えなかったら・・そう思うと怖くて怖くて、なら彼に来てもらいたいという思いも十分あったと思う。
だけど、私を呼んだのは彼の母。
彼以外が私を自宅に呼ぶなんて、考えもしなかったこと。
そして私は、やっとのおもいで家を出た。
正直、どうやって彼の家に行ったのかあまり記憶にありません。
歩いて行ける距離でもないし、車の免許もまだ持っていなかったから。
でも、必死で彼の家を目指したのだと思う。
>> 19
ここからは、私が心の中で整理したことを書きます。
私の卒業式の2日前、彼は事故で亡くなったそうです。
交通事故でした。
自宅付近の道で、車が彼に衝突しました。
駐車場から自宅に向かう途中の出来事で、衝突されたとき道に倒れたそうです。
ですが、外傷もなく、痛みも転んだときの臀部のだけ。
衝突してきた運転手さんにも、大丈夫とか何とか言ったのだと思う。
連絡先も聞かないままで。
一部始終は、彼の母に話したとのことでした。
その晩は、普通にご飯を食べ、普通にリビングでくつろぎ、普通に自分のベッドに入ったそうです。
そのまま、目覚めることはなかった。
私のことを思うと、彼の母はこのまま黙っていようと思ったそうです。
でも、彼が生きていた証を受け取って欲しいと強いおもいがあった。
その証は、指輪でした。
夏前から彼自身が気に入った指輪を探し回って、とうとうクリスマスに間に合わず、当日も探しに行ったそうです。
やっと見つけた指輪は1月に入ってから。
だから私の卒業式が終わってから、渡すつもりでいたようです。
そして同時に、結婚を前提としたお付き合いを、私の母にするため挨拶に行こうとしていたそうです。
私は、彼に大切にされていた。
会う時間も少なかったのに、ちゃんとけじめをつけようとしてくれていた。
約束を果たしてくれなかったわけではなかった。
彼の思いが詰まった指輪は、今も大切に持っています。
>> 20
彼は彼の母に、なんでも話すそうです。
私が彼と知り合う前の電車の中、終電なのに女子高生がいる。
その時から、彼は私に興味を持ってくれていた。
そんなことも話題にしていたなんて、気づきもしなかった。
彼との2年間は、本当にいい思い出です。
忘れてはいけない大切な記憶。
彼が確かに生きていた証は、指輪として残ったけど、手をつないだときの
温かさ、「ぱんだ」って呼んでくれる彼の声もちゃんと私の中で生きている。
この先も、ずっと。
それでも、やっと好きな人ができました。
今は、どうなるか分かりません。
いつか、その人と幸せになれるかも分かりません。
だけど、私は自分の幸せをちゃんと見つけていこうと思います。
私はこれまで、亡くなった彼に縛られていると思ってました。
でもそれは違う。
自分自身が自分を身動き取れないようにしているだけだと思いました。
自分の心の弱さだと思います。
強い心になることは難しいけど、自分の弱さを受け入れられるよう
頑張ってみようと思います。
自分自身のために、歩き出そうと思います。
文章力がないもので、理解しがたいところはあると思いますが
読んでくださり、ありがとうございました。
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