終わりまでのカウントダウン

8年付き合って、両家へ挨拶も済ませて正式に婚約して、
新居で入籍前に同棲も始めてたのに
披露宴も新婚旅行も間近に控えた日に振られて連絡もつかない。

そんなどん底な状況のあなたと出会いました。

まぁ、その時は見かけただけ。
周りの友人さんと思われる人にキャンセルになった二次会のことをなぜか必死に謝っていました。

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>> 1 次に見かけたのは、その２カ月後くらい。
少し落ち着いたようにも見えました。
でも無言でひとり大量のお酒を飲んでいました。

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>> 2 それからさらに２カ月後にあなたに気づいたとき、
あなたはまるで廃人でした。

だれこれ構わず失恋話をして、愚痴を言って、つぶれて眠るまで飲んだくれていました。

入籍直前に元ｶﾉが急に行方をくらませた。
最初は事故も疑ったけど、元ｶﾉの貴重品やお気に入りの服などがなくなっていた。
それから２週間もしないうちに、性病が発覚。もちろん風俗や浮気など他にやましいことはない。
さらに１カ月後、予定していた入籍日も挙式日も新婚旅行の日程も全て過ぎ去ったあとで元ｶﾉから連絡がきた。

『４年前から不倫していた。その人のことを愛しているからあなたとは結婚できない。』
『大学を卒業後ずっとOLをしていることになってたけど、本当は半年で辞めた。それからは風俗で働いてた。同棲を始めてから、夜の仕事ができなくなって収入が減った。友達と旅行とか実家に帰ると言ってたまに仕事してた。貯金もあった。』
『仕事のせいか、不倫相手かわからないけど性病をもらってしまった。
　バレたらやばいと思って逃げた。』

俺の８年は何だったんだろう・・・
何だったんだろう・・・

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>> 3 それから２週間、私もいろいろあった時期で
仕事のあとに一人お酒を飲んでいて
飲んだくれる彼を毎日のように見ていた。

最初は、
馬鹿じゃないのｗ８年も付き合ってて彼女の本性わからないとかｗ
うっざ・・家で一人でやってくれ・・・
って思ってた。

なんで距離が縮まったんだっけ・・・。

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>> 4 ある日の仕事帰り、彼はまだお酒が入っていない状態だった。

私もなんであそこしか行くところなかったんだろうｗ
不思議と落ち着く空間だったからかな。

まだ少し時間が早くて、彼の他に誰もお客はいなかった。
正直、彼を見つけて、　　げっ　と思った。

でも彼はまだお酒が入ってなくて、いつもよりしゃんとしていた。
いつもより。

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>> 5 つまみと生ビールを頼んだ私に、話しかけた彼。

『お酒強いの？いつもいるね。』

・・・いつもってお前に言われたかねーよ・・・
『そうですね、他に行くとこないんで』

『俺も・・婚約者に捨てられて』
・・・うぜぇ・・きたよ・・・さっそくその話かよ・・
『そうなんですね、辛ｒ
『彼氏いないの？』

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>> 6 『・・いません。もう２年くらい』
『２年!!　２カ月でも俺は地獄だったのに・・』

『そういう人もいるんでｓ・・
『友達は？』

人の発言にかぶせて質問しすぎ・・・

『友達はいるけど、一人で飲みたい気分なんです』

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>> 7 こいつうぜぇなーーーって思ったはずなのに、
そのあと何でだったか・・だんだん打ちとけてた。

何の会話からだったかは覚えてない。

その日盛り上がった会話。

ディズニーランドのこと。
水族館やマリンスポーツのこと。
これまでに行った旅行先。

気が付いたら６時間以上がたっていて、
元ｶﾉ情報だけでなく彼の家族のことまで知っていた。
私も同じくらい自分のことを話してしまっていたと思う。

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>> 8 そこから３カ月間、毎日電話して話した。
元ｶﾉの話を聞くことは徐々に減っていった。

仕事が忙しくなってだんだん飲みに行けなくなっていた。
でもどんなに忙しくても、化粧を落とすのすら面倒な夜でも寝る前の30分は彼と通話するのが日課になっていた。

仕事での失敗談とか、
通勤途中に見かけた初々しい学生カップルとか、
ランチで食べたトンカツがめっちゃうまかった話とか、
どうでもいいことばかりだけど、すごく落ち着いた。

最初は彼のこと馬鹿にしてた。
８年も付き合ってた女性のこと何にもわかってなくて
メロメロになって何も見えてなくて
結婚ドタキャンとかｗｗｗｗｗｗｗｗどんまいｗｗｗｗｗｗｗｗ

それから、彼はどういう人なのかなーって気になってきた。
ちょっと興味本位。

でもいつのまにかそういうの忘れて
共通の趣味も多いし、知識豊富で話がおもしろいし、
ただただ夜の電話が毎日の楽しみになってた。

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>> 9 ある日、彼がぽつりと言った。

いつもありがとう。
○○と話すと楽しくて、やけ酒しなくなった。
それに気持ちが落ち着いて、よく眠れる。

知り合ったばかりの頃のことを思い出すと、彼は本当に荒れてたし
元ｶﾉの代わりであっても良いと思った。

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>> 10 久しぶりに仕事の休みが取れる日、彼にデートに誘われた。

嬉しかった。
指折り数え、デートに着ていく服を何度も考えなおしたり・・
美容院にも行っておいたw

待ち合わせで、初めて私服の彼をみた。
いつもスーツだったからw
おしゃれで、ちょっとかわいらしいかんじで、ドキドキした。

博物館に入って、ランチして、ぶらぶら散歩したりお買いもの。
それから前からずっと行きたいなと思ってたちょっとリッチなお店でお夕飯。

楽しい一日はあっという間に過ぎて、帰るのがすごく惜しい・・
そう思っていたら、
『明日も会えないかな？俺は休みだから、職場のそばでランチとか・・
　仕事のあとにちょっとお茶でもいいんだ。電話より、顔合わせて話したい』

次の日も会うことになった。

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>> 11 それからデートを３回した。
しばらくして、彼が海外出張のために半月ほど日本を離れることになった。
出張の前のデートの時、彼がpc用のビデオカメラを買ってくれた。
通話料のかからないメッセンジャーでＴＶ通話するため。

残業でお見送りは行けなかった。
時差はあったけど毎日やっぱり話をした。

日本に帰ったら、おいしい和食が食べたい。
こっちでも食べれるけどやっぱりいまいちだよー。
ベタに肉じゃがとか、豚の生姜焼き、鯖味噌とか
・・・○○が作ってくれたら嬉しいなぁ・・なんて。

帰国の日、空港にはお迎えに行けそうにもなかった。
次の日は私も彼もお休みだったので、家に招待することになった。

それからは大変。
なにしろ２年以上も彼氏いなかったし・・。
家の大掃除（笑）

あ、けっしてごみ屋敷ってわけではないですよ。

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>> 12 彼の要望の中から、鯖味噌をチョイス。
ほうれん草のお浸し、ひじきと大豆の煮物、おみおつけ。
それから祖母の送ってくれた佃煮なんかも並べてみた。

感激してたw

うまー！えー！？！　うまー！！
おかわりしていい？

○○って意外に料理うまいんだね（笑）
ちょっとげてもの出てくるかもなんて心配してた・・・（笑）
なんてひどいことも言われた。

海外出張のお土産に、かわいらしい置物を１つもらった。
駅前で買って来てくれたケーキもデザートに食べた。

借りてきたＤＶＤをみていいかんじになって
はじめてキスもした。
幸せでもあったけど、急に元ｶﾉさんのことが気になった。

『ねぇ、もう元ｶﾉさんのことは・・・いいの？』
『・・・うん。○○のことが好き。２週間、ずっと会いたいって思ってた。
　ぎゅーってして、キス！！！ってずっと思ってて正直さっきの映画の内容頭に入ってない・・』

『この５カ月本当に幸せでいっぱいだった。
　もう人生終わりと思ってたけど、○○のおかげで立ち直れた。
　仕事も頑張れた。プロジェクトもうまくいった。
　・・・結婚を前提に、付き合ってください。』

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>> 13 幸せいっぱいだった。

私だって諦めてた。
もう一生独身なんだって思ってたし。
趣味も食べ物の好みもこんなに合う人が世界にいたなんて！
浮かれてた。

そのあともデートを重ねて、初めて彼の家に行くまでは。

大きなプロジェクトが終わって、仕事帰りそのまま彼の家にお邪魔した。
３連休ももらった。すごく楽しみで、荷物はかさむけど職場に着替えも持参してた。

彼のマンションの部屋は、女性の生活のあとがあった。
さすがに歯ブラシはなかったけど（笑）

同棲してたマンションは、１人で暮らすには広すぎる・・。
でも引っ越す気力もない。
出逢ったばかりのころ、そう言ってた。

入ってすぐ、あーまだここに元ｶﾉさん来てるなーって思った。
これがこう、というわけじゃないんだけど。

おしゃれな部屋で魅せる収納になってて、
彼の荷物が入ってるのと同じくらいのスペースがごっそりなにもない空間になってた。
あー・・・。元ｶﾉさんのものが置いてあった場所なんだな、って思った。
そこに何も置かないことが、元ｶﾉさんの帰りを待っているように感じた。

おしゃれなソファ。
色あせてきてるけど、社会人２年目のボーナスで買って思い入れがあるからって笑ってた。
台所には、なんでも同じものが２つずつだった。
コップ、いろんなお皿、スプーンとフォーク。
なんとなく、気持ち悪くなった。

彼とエッチするつもりで、お泊まりの予定で遊びに来たけど、
できそうもなくなった。

金・土・日の３連休のうち、彼の休みは土日だけで、
木曜の夜から泊まって、金曜日は適当にぶらぶら時間つぶしたりして
土日には無計画にドライブとどこかに宿泊かなにか・・とプチ旅行予定だった。

何かものすごく悲しい気分になっていた。
この前のお礼に、と彼が用意してくれてたパスタ。美味しいのは美味しいんだけど、もうどうしようもなく寂しくなってた。

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>> 14 ご飯のあと、もう家に帰ろうかとも思った。
でもまたＤＶＤを用意してくれてて、言えなくて、そのまま一緒にみた。
自分の気のせいであってほしいとも思ったんだと思う。

シャワーをお借りすることになって、寝室へ入ったとき、泣いた。
女物のシャンプーとトリートメント。
結構高級なブランドものの、洗顔料とパック。

帰ろうかと思った。
でも帰れなかった。帰ったら終わりな気がした。
あとでこの時帰らなかった自分を責めたけどw

元ｶﾉのものなんて使うの気持ち悪くて
彼用のシャンプーを使ってみたら、思った以上にスーッとしたので
やっぱり元ｶﾉのシャンプーをつかった。
甘いストロベリーの香り。
ちょっと吐いた。

洗顔料は、５センチくらいぶにゅー！と出して泡だてて
たっぷりたっぷりつかった。
パックなんてデコルテまでしっかり使ってみた！！！w

パックは５～１０分放置って書いてあったから、
髪もトリートメントしながら待ってて、手持無沙汰になって何気にちらっと排水溝のところみてみたら、
私の髪の毛じゃない、太めのしっかりした結構明るくてながーーーーーーい髪の毛が落ちてた。

w

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逃げ帰ってしまえばよかったのに。

二股なんてバカにされてるのに。

なぜか、彼には私のほうがふさわしい！
あんな汚い女に負けたらだめ！だなんて思っちゃった（笑）


私のあとにシャワーを浴びた彼は、
同じくストロベリーの匂いをぷんぷんさせて出てきた。
トニックシャンプーは？って聞いたら、
夏場にさっぱりしたいときしか使わないよだって。
・・でもストロベリーのシャンプーを自分ではチョイスしないよなぁ。

次の日、彼が仕事に行ってる間に大掃除。
家中の埃と髪の毛を掃きだしてしまった。

もしかしたら、別れる前から落ちてたやつかもしれないし。
なわけないけど。
ここまで大掃除してまたあったら文句言おう。

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>> 16 次に彼の家に遊びに行った時、
やっぱり元ｶﾉさんの空気を感じ取った。
あーあ、もうだめだと思った。

お家ご飯で軽くお酒飲もうと言われてて、
下心ありの、というのは分かってた。
分かってて行ったんだけど、あーやっぱり切れてないんだなって悲しくなった。

彼が元ｶﾉと別れたあと、どんなに苦しんでいたか
どんなに復縁を望んでいたか（性病も不倫も全て許すから帰って来てほしいって言ってた）
どんなに元ｶﾉを愛していたのかを思って
ここにいる自分が惨めになった。

私の存在のせいで復縁できなくなっているのではないかと思った。

ご飯の準備をする彼に
『この家、元ｶﾉさんがまだ来てるんでしょう・・？』って声をかけたら
『え・・・』と言って固まった。

いいよー私は大丈夫。
この10カ月間、とっても楽しかった。それだけで十分。
ありがとう。
元ｶﾉさんと今度こそうまくいくといいね＾＾

なるべく笑顔で言って、そのまま走って帰った。
でたらめに走って駅がわからなくなって、
そのまま走って足が疲れたところでタクシーを拾った。

繁華街に出て、バーに入って少し飲んで、家に帰った。

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>> 17 マンションのエントランスに、私の上着を持った彼がつったっていた。

良かった！！どこ行ってたの？
足速すぎでしょ・・駅まですぐ追いかけたけどもういなくて。
携帯の電源も落ちてるし・・
家の明かりついてないから待ってたら帰ってくるかなって・・

『帰ってください。元ｶﾉさんとお幸せに』

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>> 18 3日後、改めて連絡があった。
『話を聞いてほしい』

会う気にはなれなくて、電話にした。

元ｶﾉと復縁したいという気持ちは微塵もない。
○○のことを愛しているし、○○との将来を結構真剣に考えている。
⇒えーでも元ｶﾉさん家に来てたでしょう？
・・・・
⇒私のじゃないながーい髪の毛落ちてたよ。
何度か、荷物を取りにきたりしてた。
⇒なんで何度も来るの？まとめて全部返さないの？
　会いたいからでしょう。いいじゃん。
もう全部返したし、会う気はない。
⇒いいよ、私は今なら本当に大丈夫。もうそうっとしておいて。
　元ｶﾉさんと仲良くね。

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>> 19 そのあと、彼は家に来た。

別れたくない、元ｶﾉとはなんでもない
それの繰り返しだった。

あんなことされて、許せるわけがない。
元ｶﾉとの将来なんてもうない。


なんであの時許したんだろう。

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>> 20 元ｶﾉさんとのごたごたを忘れるかのように
忘れられるように、
ラブラブに過ごした。

デートを重ねて、
性病チェックもしてもらって（笑）、
プチ旅行も行った。

クリスマスにはお高いランチやホテルを予約していてくれて、
初めての大人なクリスマスだった。

キラキラで緊張しすぎてディナーをあまり食べれなくって、
あとでお腹すいてきた・・って言ったらルームサービスを取ってくれた。

ロゼのシャンパンと、おつまみと、サラダと、フライドチキン。
窓から見える、東京タワーのハートマーク。
幸せだった。

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>> 21 年末年始は互いに実家に帰ることになって、クリスマス休暇後には会う予定はなかった。

彼は、実家にはネット環境がないからメッセンジャー使えないと言った。
私は、親戚付き合いもあるし電話もあんまりできないかもねと笑った。

メールは毎日やった。
新年おめでとうのメールも。

母に年賀状の追加の印刷を頼まれて、PCをたちあげたら
メッセンジャーに彼もログインしていた。

あれ？って思ってチャットを送る。
『新年おめでとう！　
　会社PCから？緊急の仕事でも入ったー？
　私は年賀状の印刷を頼まれちゃってｗ』

返事を打ってるときに表示されるマークが出たけど、
なかなか送られてこない。

『あ、忙しいかな？ごめん。また落ち着いてからゆっくり電話しよ』

特にそのときは何も思わなかった。

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>> 22 年が明けて、彼を初めてみかけたくらいの時期になった。

１年前、ああいうふうになるなんて思ってなかったなー（笑）
なんて思いながら一人お店に行ってみた。

久々に会った常連さんがいた。
『彼君と付き合ってるんだって？』
はい、そうです。半年くらいかな・・

『・・・彼はやめておいたほうがいいんじゃない？』
なぜですか？

『ごめん。余計なおせっかい。忘れて。』

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>> 23 バレンタイン。
彼にチョコレートと靴下を渡した。
手紙も添えた。

クリスマスはプレゼント交換はなしでって話をしていたので
初めてのプレゼント。

いろいろ迷って、好みとかないかなーって思って
彼の愛用してるブランドの靴下にした。
チョコは自分が食べたいやつ（笑）

手紙には、月末に控えた私の誕生日のために
計画してくれている海外旅行のお礼も書いた。

初めて話した日に、私が行ってみたい！といったハワイのことを覚えてくれていて、
クリスマスのちょっと前くらいに、
『誕生日ケーキはハワイのパンケーキなんてどう？』って誘ってくれた。
自分の旅費はもちろん出すって言ったけど、
基本料金だけで、あとは全部任せてって言われてた。

その手紙のせいで事件になるとは思ってなかった。

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>> 24 ハワイへは10日間の滞在だった。
よく休みが取れたもんだね、とお互いに笑った。

私は大きなプロジェクトを２つ成功させていたし、
そこまでに結構休日出勤も多かったので
上司や同僚も大目にみてくれた。

彼もいろいろ仕事大変みたいだったので、よく調整してくれたなーと思う。

15万円の基本料金しか彼に渡していないのだけど
飛行機もホテルもかなりグレードアップしていて、
いろんなオプションをつけてくれていた。

毎日、誕生日だからといろんなことをしてくれた（笑）
ぶあついステーキなんて滞在中に４回も食べたし
パンケーキも３店の食べ比べができたし、
ハンバーガーなんて数え切れないほど食べた。

本当の誕生日ディナーには、美しいサンセットビーチを眺められるレストランを予約してくれていた。
歌手の人が私のためにはっぴーばーすでーを歌ってくれた。

オアフ島からハワイ島へのツアーも参加。

ホテルのプールサイドでぼーーーーーーーーっとしたりもした。

幸せいっぱいの１０日間。

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>> 25 帰国してからは、休暇分の仕事に追われた。

ホワイトデーまではデートなんて言ってられなかった。
久々に彼の家に行ったら、やっぱり違和感。

３連休にしていて、家で仕事をしながらも２人でのんびりするって決めていた。

ホワイトデーのお返しは誕生日のお祝いが大きすぎたし要らないよって言ってあったけど、
ケーキと彼お手製のお夕飯を用意してくれてた。

彼は私よりずっと料理がうまい。
特に、洋食。

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>> 26 2日目に生理がきた。
彼のトイレの棚の奥に少しだけストックを置かせてもらっていて、
それをとろうとしたら、手紙が入っていた。

彼からじゃないのは明らか。
馬鹿じゃないのっていうくらいファンシーな柄。
嫌な予感がしながらも、開けてみた。

『彼君へ』
そう書いてあった。
でも明らかに私のために書いたような手紙だった。

その中には、
婚約解消したあとも定期的に家に来ていて変だよね
でもラブラブでシアワセ
結婚はしなくても二人の間には愛があるよね
年末に食べた蟹おいしかったなー
初詣、人いっぱいだったけどいつもの神社に一緒にいけて良かった
・・・・・・・・・・・・

超大作だった。

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>> 27 クリスマスやハワイの企画盛りだくさんで優しい彼。
昨日だっておいしいトマトクリームパスタ作ってくれた。

でも・・・年末年始はネット環境ないって言ってたのにメッセンジャーにログインしてたじゃない。
家にいたんじゃないのかな・・・。
誰と・・？

でもでも・・・。

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>> 28 『年末年始は何してたの？』

どうしたの急に。帰省してたよ。

『30日から三が日までだよね？』

そうだよ。

『ネット環境がないからって言ってたけど、
　１月１日にログインしてたじゃん？』

え・・？
してないよ。

『本当はこの家にいたんじゃないの？元ｶﾉと』

・・いないよ。

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>> 29 急にどうしたの？
なんで疑うの？
家になんかあげないよ。

『家に？　・・外では会うの？』

・・・あー。

『そうなんだ』

ごめん。地元帰ったとき、同窓会があって・・・。

『同窓会か、ふーん』

疑ってるの？何もないよ！！

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>> 30 そしてGW。
私の家にきて、GW後半は旅行することになっていたけど、
初日はバイクのメンテするから会えないということだった。

でも電話もつながらない。

こないだの手紙もあるし・・・。

ちょっとかまかけてみたら、
『元ｶﾉの誕生日だからお祝いしてた・・・』

は？！
なんで裏切るの・・意味わかんない！！
しかも、GWだよ？！
『お前とは明日から旅行いくじゃんか』
旅行があるから、浮気してていいんだ
『浮気じゃない。誕生日祝って飯食っただけだ！』
元ｶﾉと？・・・元婚約者と？

『・・そういうのの前に、妹みたいな存在なんだよ！やましいことはない！！』

ふ～ん。
年末年始もずっと２人で過ごしてたのに？
何日も二人っきりでやましいことなにも起らなかったんだ＾＾

『は？何言ってんの？クリスマスお前と一緒だっただろ』

クリスマスじゃないよｗそのあとの年末年始だよ。

『そこは、帰省してた』

でも、メッセンジャーにログインしてたじゃん。家にいたでしょ？

『帰省してたって。こっそり食事にいったのは悪かったけど、疑われるようなことはしてないし、お前に言うと嫌な思いさせるかなと思って黙ってただけだよ』

嘘が下手なんだし、すぐバレるんだからやめたらいいのに。
元ｶﾉとやりなおしたいなら、そうしたらって言ったじゃん。
何日も一緒にいて疑われるようなことしてないとか信じられないね。

『食事のことは謝る！でも本当にやましいことはない！
　それに、何日も一緒にいてはない。誕生日に一緒にご飯食べただけだ』

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>> 31 もうやだ！！！
裏切られてばっかり、別れる！！！！！

『まって、本当にまって。違う。
　食事だけだって！でもそれさえも嫌ならもう二度としない！！』

やましいことがあるから言えなかったんでしょう？！
『ないけど、嫌がるかと思って・・・』
嫌がるかと思ったんでしょ、わかってて行ったんでしょう。最低だよ。

『二度としない。連絡先も消すよ。それで許して。
　年末年始も、お前が疑っているようなことは一切ない。
　なんなら、地元の友達と会うか？
　年越しは幼馴染３人でマージャンやったりパチスロしたりのあほな習慣があるって言ったろ？今年もそうだったよ』

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>> 32 あとでわかったこと。


元ｶﾉは彼に返した鍵の他に合鍵を作っていて、まだ持っていたこと。
彼のいない時間にマンションに侵入して、いろいろ漁っていたこと。

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>> 33 もやもやしたままも付き合いを続けていた私。

若干彼にはうんざりしていた。
信じ切れない自分も嫌だと思っていた。

信頼関係がないのに付き合ってるなんておかしい、信じられない人とは付き合えない。
ちょっとでも浮気をした過去の彼氏たちはすぐに別れてた。

なんでそうしなかったんだろう。

共通の趣味、嗜好。
運命だと思ってたんだろうな（笑）

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>> 34 ２度目の夏。
イベントごとが多くて、なんだかんだで盛り上がってきた。
揉めたことも許せてきた。

彼が友人をどんどん紹介してくれてきたからかな？
彼女として彼の隣にいるんだけど、他の人にも認識してもらえると安心になった。
上手く言えないけど。

秋。彼の２度目の誕生日。
１回目は親しくなったばかりだったし外にご飯を食べにいっただけだったけど・・
私はハワイでお祝いしてもらったわけだし、お返しをしたかった。

今度は私の企画でタイにいくことになった。
・・・お財布事情もあって（笑）

そして事件がおこった。

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>> 35 彼より数日長めに休暇がとれた私は、彼の家で彼の荷造りを手伝いつつ
半同棲のような生活を楽しんでいた。

彼が仕事に行くのを見送って、翌日の分のワイシャツにアイロンをかける。
主婦みたいｗなんて思いながら、彼のサングラスと帽子とサンダルを借りて近所のスーパーにいって早めの夕飯の買い出し。

簡単にお昼を済ませて、撮りだめしていたドラマをみていたときだった。

玄関から音がした。

気のせいかとも思って、見に行ったら、鍵が開いてた。

あれ？私鍵かけてなかったっけ？
でもチェーンはかけてる（笑）逆じゃんｗなにしてんの・・って閉めようと近寄った時

ドアが開いた。
チェーンが伸び切って　がしゃん！と音がする。

つづけて

がしゃがしゃがしゃ！！

連続で力いっぱい引かれた。


こわい！！１

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>> 36 玄関とリビングの間のガラス戸をそっと閉めた。
チェーンであんまり開かないとはいえ、覗かれたら嫌だし。

どうしよう、と思ってたらドアをドンドンドン！！！と叩かれた。


『○○！！！！！！！いるんでしょ？！出てきなさいよ！！！！』

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>> 37 え・・・なんで私の名前・・・？

最初は理解できなかった。


『彼君を返せ！！！泥棒！！！』
『しね！！！！』
『お前なんか消えろ、お前のせいだ！！！』
『きぃぃぃぃぃ！！！！』
『ここ開けろ！！！！！！』

怖くて彼に連絡もできなくて一番奥の寝室のベッドの中でがたがた震えてた。

しばらくして近隣住民に通報されて、元ｶﾉさんは連れて行かれた。

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>> 38 そのあとのことはあんまり覚えてない。

怒声がやんで、ドンドンもなくなったら、
こんどはピンポンが続いて怖くなってた。
彼の声がしてやっと玄関へ行ったように思う。

警察の人に質問されたりしたけどよく覚えてない。

旅行まで２日だったけど、彼は速攻で次のマンションを借りて業者に任せて引っ越しをした。

旅行のこともあんまり覚えてない。
夜だけだけど、ドキドキして泣いたりして、彼を困らせた。
中止にしたらよかったのに、しなかったのは日本にいないほうが落ち着くかもって。

彼は、日本に戻ったらお前の携帯も解約して、新しくしようと言ってきた。
学生時代から使っている携帯だよいやだよって言ったら
私の携帯も元ｶﾉにバレているからだと言われた。

年明けから無言電話が多くて、着信拒否にしていた。
元ｶﾉの番号（当時は知らなかった）の着信拒否⇒非通知でかかってくる⇒それも拒否⇒公衆電話でかかってくる⇒拒否⇒よくわからない固定電話でもかかってくる⇒つど拒否

何かのいたずらだとは思ってたけど、元ｶﾉからだとは思ってなかった。

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>> 39 帰国後、携帯を変えた。

自分のマンションには、彼と一緒に帰るようにして、他はいつも彼の新しいマンションか友人の家に泊まった。

元ｶﾉは、彼や私に近づかないという誓約書のようなものを書いたらしい。
たしかにそれから私に直接何かをすることはなかった。

でも私はまた玄関をガンガンされるんじゃないかとか、怖くて
変な夢もいっぱいみた。

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>> 40 ２度目のクリスマスがきた。

あまり外出したい気分ではなくなっていて、家で過ごした。

何をしているんだろうと思った。

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