離婚までの記録～その後～

それから半年…。


Ｍが、妊娠したみたい。そう言った。


三人ですぐに産婦人科へいくと、赤ちゃんが授かっていた。


俺とＭは喜んだ。


赤ちゃんの遺骨の前で二人でありがとうと言い、Ａ君にもまたママのお腹に赤ちゃんがかえってきてくれたんだて。


そう言ったらＡ君は、本当に!?やったー。と言って喜んだ。


だけど急にＭは暗い顔をした。


『もし…もしまた赤ちゃんが病気とかになったら…』


そんなＭを抱き締めて


『大丈夫。先生も二人も病気になる確率はほとんどないっていってたじゃん。たまたま運が悪かったからからでまたそうなる事はほぼ無いってさ。大丈夫だよ』


そう言った。


『うん…そうだよね。赤ちゃん…今度は絶対に元気に産むからね！』


Ｍはお腹に話しかけた。


つられてＡ君もＭのお腹に、ねっ！赤ちゃ～んと話しかけたので二人で顔を見合わせて笑った。

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Ｍのツワリは酷かったが、今回は順調に赤ちゃんは育っていた。


A君も、Ｍの親も俺の親もみんな喜んでいた。


俺も出来るだけ会社から早く帰れるようにして家事などを手伝った。


出産はＭの実家でするので、予定日の二ヶ月前にＭとＡ君は二人でＭの実家に行った。


二人がいなくなると寂しくなったが、これまで以上に仕事を頑張らなければと取り組んだ。


里帰り中は毎日Ｍと電話をした。Ａ君はＭのお母さんが大好きなのでとても楽しそうだった。
Ｍもお母さんがご飯等を作ってくれる分だいぶ楽だと言っていた。

電話で話していると会いたくてたまらなくなる。大の男が寂しいなんて恥ずかしくてとても言えないが。


出逢った頃よりも更にＭへの気持ちは増すばかりで一緒にいる時間が増えるほど愛しい気持ちも大きくなる。


ＭやＡ君、これから産まれてくる赤ちゃんを全力で守りたい、幸せにするんだ、そんな気持ちでいっぱいになる。

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ある日の昼にＭからメールがきた。


『ちょっと痛いみたい、もしかしたら陣痛とかかも』


予定日よりも二週間は早かったのでびっくりした。


『もう産まれそうな感じ!?』


と返した。


『まだだと思う、そんなに強くないし間隔もバラバラだから。だけど夜中とかになったらどうかな…。一応準備してた方がいいかも。また変化あったら連絡するね』


と返ってきた。


『分かった。準備はしてあるから連絡きたらすぐ行けるよ！』


と返した。


それからは携帯が気になってしょうがなかった。


連絡が来たらすぐに帰れるようにその日は定時ですぐに帰った。

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>> 53 その日の夜１０時過ぎにＭから電話がきた。


『間隔が短くなってきたから病院に電話して聞いてみたら前屈陣痛だろうっていわれたよ💦おしるしの出血もあったし。だからもう来た方がいいかも』


『そっか。じゃあ今日はもう無理だから、明日の始発ですぐに行くよ！大丈夫？辛くない？』


『まだそんなに痛くないから大丈夫。Ｋも気を付けてきてね、またメールする』

『うん。俺もメールするから、頑張ってね、絶対に間に合うように出来るだけ急ぐから。』


そう言ってすぐに準備してあった荷物を玄関に用意して、明日朝一の電車と始発の飛行機を調べた。


なにがなんでも間に合うように行きたかった。
Ｍが痛い思いをして頑張ってくれているのだから、なにができるわけでもないがせめて側にいてあげたかった。


俺は少しでもＭに何かしてあげたいと思い、陣痛にいいサスリ方等をネットで調べた。

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>> 54 次の日、始発に間に合う電車に乗るために早朝から家を出た。


Ｍに今家を出たよ、とメールする。


Ｍからは


こっちもかなり間隔が短くなってきた。多分もう今日中には産まれるよ。
もう少し様子見て今より少し間隔短くなったらまた病院に聞いてみる。
二人目は早く産まれるとか聞いたし。


と返ってきた。


わかった！また飛行機乗るときにメールするよ。Ｍは辛かったりきつかったら返信しなくて大丈夫だからね。


俺はそう返信した。

空港に付き始発の便に乗る前にＭに今から飛行機で出発するとメールをした。


Ｍから、病院に電話したらもう来てくださいって言われたから、A君を起こして準備できたらお母さんに運転してもらって病院に行く。とメールがきた。


俺も出来るだけ急ぐから。行く途中気を付けてね！と返信した。


飛行機に乗っている間もＭが気になってソワソワして落ち着かなかった。


着く前に産まれてしまうかもしれない。 だけどこればかりはどうにもできない。


早く着いてくれと願うばかりだった。

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飛行機が着いて急いで電車に乗り込んだ。


出るときは薄暗かったがもうすっかり明るくなっていた。


Ｍに早く会いたかった。側にいてあげたかった。


駅につくと病院の場所はわからなかったのでタクシーに病院の名前を言って向かった。


駅から病院はすぐそばだった。


病院に着いて看護士さんに部屋を聞き向かった。


部屋に入るとＭがベッドで唸っていた。


『Ｍ…大丈夫？』


『Ｋ！間に合ったんだね、よかった』


Ｍは嬉しそうに笑った後に、うぅ…といって痛がった。


『陣痛どんなかんじ？』


俺が聞く


『う～ん、１０分間隔が続いてるかな…。Ａ君の時より痛みがキツイ』


『そっか…。辛いね。あっ、そう言えばＡ君は？』


『Ａ君はお母さんと一回家に戻ったよ、ご飯とかも食べてなかったし』


『そうなんだ。朝早かったしね。そうだ、背中さすろうか？』


『うん、ありがとう』


俺はＭの背中をさすった。


だけどあまり役にはたっていなさそうだった。


代われるものなら代わってあげたいがそれもできない。


俺はただ少しでもＭが楽になるように背中をさするしかできない。


本当に男は無力だなと思った。

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段々と陣痛の間隔が短くなってきた。
Ｍは苦しそうで、話もできなくなっていた。


そんなときＭが


『なんかおしっこ漏れちゃった…』


と言った。


『じゃあすぐ看護士さん呼ぶから』


そう言って俺はナースコールを押した。


看護士さんはすぐ来てくれたが、Ｍがおしっこだと思ったのは破水だった。


『あら、破水みたいよ！ちょっと助産婦さん呼んでくるからね！』


と看護士さんは言って出ていった。


『なんかさっきより少し痛みがましになった…気がする』


Ｍがボソッとそう言った。


すぐに助産師さんがきて子宮孔の広がりを見た。


『もう充分開いたみたいですよ、分娩室まで行きましょうか』


そう言ってＭを起こした。


Ｍはゆっくり起き上がると助産師さんに抱えられて分娩室に向かった。


俺もおろおろしながらその後をついていった。


分娩室に着いてＭは分娩台に横になった。


看護士さん達が手際よく点滴や酸素マスク等をつけていった。


相変わらずＭは苦しそうだった。


俺はそんなＭの手をただ握りしめていた。

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分娩室に入り30分くらいたっただろうか。


いきむのまだ我慢して！と言われていたが、Ｍがもう我慢出来ない、と言った。


助産師さんは、よしっ！もういきんでも大丈夫！ゆっくり息して！止めないで！


と叫んだ。


Ｍも苦しそうに痛いっ、痛い～と叫んでいた。


俺は頑張れ、頑張れと言って手を握ることしかできなかった。


本当に、その痛み全部俺が代われたらいいのにと思った。

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どれくらいの時間がたったのかもわからない。


助産師さんが、頭が出てきましたよ！ がんばって！と言った。


Ｍは全身に力を入れて赤ちゃんを出そうとしていた。


そして次の瞬間赤ちゃんが出てきた。


Ｍは、ふぅぅぅっと 深く息を吐いていた。


俺は感動して涙ぐんだ。


Ｍが愛しくてたまらなかった。


気づけば何度もありがとう、ありがとうと泣きながらＭに言っていた。


しばらくすると、タオルにくるまれた赤ちゃんを看護士さんがＭの胸元に連れてきてくれた。


生まれたてのまだ髪も濡れたままの赤ちゃん。


Ｍは小さく微笑んで赤ちゃんにお疲れさま、ありがとうと言った。


その後俺の方を見てありがとう、愛してると言った。


俺はまだ涙ぐんでいる情けない顔で、こっちこそ本当にありがとう、心から愛してるよ、と言った。

本当に嬉しかった。Ｍに感謝してもしきれなかった。愛しい気持ちでいっぱいだった。


こんなに感動したのは初めてだった。
今までよりももっとＭやＡ君や赤ちゃんを大切にしたいという気持ちだった。


そして二人で赤ちゃんを眺めた後に、俺はＭのお母さんに産まれましたと電話した。


Ｍのお母さんとＡ君は近くにいたらしくすぐに来た。


Ａ君はちっちゃ～い！可愛い！と赤ちゃんを見て喜んでいた。


お母さんもお疲れさまとＭに言った後、Ｍと俺とＡ君と赤ちゃんとでの家族写真を撮ってくれた。


その後Ｍはまだ分娩室から動けないし、眠たくなったと言うので俺達は外に出て俺は食事を取ることにした。

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Ｍのお母さんとＡ君は家に戻った。


俺は病院に戻り、Ｍも病室に戻ったがまだ寝ていた。


あれだけ長い時間頑張ったんだから相当疲れてるはずだ。


寝顔が愛しかった。


Ｍと過ごす日々が増える度に愛する気持ちが増えていく。


Ｍの目が覚めるまでずっと見ていた。


Ｍが目を覚ますとお腹空いた、と言った。


Ｍらしくて笑ってしまった。


丁度夕食がついさっききていたので、Ｍのベッドに運んであげた。


Ａ君の時は全然食べられなかったけど、なんだか今回は食べれる！


そう言いながら美味しそうに食べていた。


そんなＭを眺めていて、幸せだなと感じた。


その日は俺は病院に泊まることになっていた。


Ｍも俺も疲れていたのでその夜はぐっすり眠った。

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俺はその次の日には仕事もあるので帰らなければならなかった。


ずっと側にいたかったがそうもいかない。


Ａ君にも家で待ってるからなと伝えて俺は帰った。


家に帰ると静かだった。


今頃なにしてるかなと考えた。


今朝まで会っていたのに、もう会いたかった。


電話もできるが、Ｍも疲れてるだろうからやめた。


予定では４ヶ月後に帰ることになっているから、Ｍ達がこっちに帰ってくるのはまだまだ先だった。

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それからまた毎日メールでやりとりをした。


赤ちゃんの様子とかＡ君の事などだった。


Ｍは大変そうだが楽しそうだった。
病院のサービスでエステもしたと嬉しそうに言っていた。



そんなＭの楽しげな様子をメールで見る度に俺も嬉しくなった。


そんなやりとりをしているうちに退院の日が来た。
病院の入り口で皆で撮った写メを送ってくれた。


赤ちゃんも元気に育っていたしＡ君も相変わらず元気いっぱいだった。


退院してからは毎日夜に少しだけ電話していた。


Ｍの声を聞くだけで会いたくてたまらなくなる。


時々Ａ君もパパ元気～？と声を聞かせてくれた。


幸せだなと毎晩感じていた。
結婚ってこんなに誰かを大切に思い、愛しく思い、幸せなものだったんだなと思った。


人生でこんなにも幸せだと感じたことはなかった。


ＭやＡ君や赤ちゃんがこんな気持ちを教えてくれた。

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１ヶ月後、丁度２連休が取れるのでＭ達の元へ行った。


Ａ君はおおはしゃぎで嬉しそうに飛び付いてきた。


赤ちゃんは写メでは見ていたが、実際にみるとかなり成長していた。


その日にＭが昔巫女をしていた神社にお宮参りの予約をしていたので家族でいった。


帰りには写真館で皆で写真も撮った。


俺がいる間はＭにゆっくり寝てもらうためにおっぱい以外は全部俺がすることにした。


Ｍはありがとう、助かるよと言っていたけど本当に役に立ったかはわからない。


夜は何度も起きないといけないし、昼はＡ君の世話もあるしＭは本当に大変だなと実感した。


改めてありがとうと言いたくなった。


Ａ君は赤ちゃんが産まれたことが本当に嬉しいらしく、毎日可愛いね、なんでこんなに可愛いの？と聞いてくるらしい。


そんなＡ君も可愛いなと思った。


後三ヶ月、きっと赤ちゃんもＡ君も今より成長してるんだろうな、そう思いながら俺はまた一人で戻った。




※補足※

里帰りが４ヶ月と言うのは俺の休みの都合上でした。

はじめの連休だと、１ヶ月の赤ちゃんを長旅させるのは心配だったので、その次の連休取れる日となるとそれくらい先になったからです。

Ｍ一人でＡ君も赤ちゃんも連れて変えるのは厳しいと言うことで、里帰りは長くなるが俺の連休を待って皆で帰ると言うことで４ヶ月というかたちにしていました。

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