ヤングシャウト

レス13 HIT数 2544 あ+ あ-


2011/02/05 13:28(更新日時)

これはフィクションです。
高校1年になったばかりの春からスタートします。

舞台は東京。

大学二年生の兄と中学二年の妹を持つ高校一年生のユウヤが主人公です。

No.1516587 (スレ作成日時)

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No.1

「またお前ブラーなんか聞いてるのかよ。クソみたいな軟弱ブリットポップなんか聞いてるからそんなひ弱な身体つきになるんだ。」
大学二年生の兄タクヤが罵る。

毎度のことだ。兄はアメリカンロック信者でレッドホットチリペッパーズのベーシスト、フリーを神と崇めている。

No.2

俺は黙って聞き流し、コンポを停止する。

兄には永遠に解らないのだ。こんな下衆な兄になったのはひとつの分岐点がある。東京大学を落ちたのだ。筋肉バカにはふさわしくないと思うが国際基督教大学に通っている。早稲田大学ならお似合いなのだが。

俺は東京大学を志望している。兄のようにはならない。

No.3

「ユウヤ、明後日の金曜日。7時に新宿に来い。東口改札口前だ。来なかったらお前のその宝物のUKロックのCDを叩き割る。」

兄はそう恫喝し、出ていった。

飲み会の人員を兼ね、俺のアメリカンロックへの傾倒を狙っている。これは三度目のことだ。一度バックレたことがある。そのときはレディオヘッドのザ・ベンズを踏み割られた。

No.4

その飲み会はアメリカンロックマニアの集いともいうべきもので男女数人で語り合う異様な会だ。

過去の会では、いたしかたなく俺がアメリカで唯一許せるバンド、ウィザーについて話したが鼻で笑われ終わった。女が美形ぞろいならまだ救いがあるが、美形にはほど遠いエイリアン、ドラえもん、ちび太女版といったかかわりたくない人類だった。

兄はサディストだ。俺が苦しむのを横目に旨そうに酒を舐める。

No.5

金曜日、しぶしぶと新宿に向かった。

数学の参考書を読みながら待つと兄とその友人達がやってきた。

「こいつ俺の弟のユウヤだ、軟弱なやろうだからよ。たっぷりアメリカンで漬けてやろうぜ。」

皆に紹介され、地下の居酒屋に入っていった。

No.6

隣に座ったのはショートヘアのナツミという女。自己紹介で175cmあり女子サッカー部でキーパーをしていることを知った。日焼けで黒く、腕も太い。俺はアーネストホーストと心の中で名付けてやった。

ナツミはオフスプリングが好きらしく延々と西海岸パンクについて語る。

No.7

過去の兄は洋楽好きで米英問わず聞いていた。

東京大学の受験日にUKロックをセレクションしたものをヘッドホンで聞きながら電車に乗っていたときのことだ。急激な下痢が兄を襲った。

下痢は試験中も続き、集中力が切れて東京大学を落ちた。

それから歪んでUKロックを毛嫌いするようになった。
俺が東京大学を狙って勉強に励むことも気にくわないらしい。

No.8

しかしよく食う女だ。ナツミはピザ、パスタ、ラザニアの皿を次々と空にしていく。

「今日練習あって腹ペコなのよね。」

腹ペコじゃなくても普通に食べるだろう。アーネストホーストだからな。

好みのタイプはリンプビズキットのボーカル、フレッドだという。なるほどお似合いだ。

俺はまだ高校一年。9時前には解放される。帰れるのだ。酒は飲んでいない。ちらりと時計に目をやりアーネストホーストの世話があと15分で終することを知る。

アーネストホーストはお茶の水女子大の一年生で飯田橋に住んでいるという。

No.9

帰宅する旨を告げ、席を立つとアーネストホーストに手首を捕まれた。

驚きはその握力。女という生き物の生物学上証明不可能な力。

息を飲み、冷や汗が頬をつたう。

「あたしも帰るよ。」

アーネストホースト…かなうわけがない。

「家にマリマンのビデオがあるのよ、寄って見てく?」

マリリン・マンソン…俺は何も言えなかった。従うしかなかった。

No.10

アーネストホーストのアパートに着き、ビールを手渡され、マリリン・マンソンのビデオ上映会が開催された。

アーネストホーストが電気を消した。

画面には聖書を破り、身体に傷をつけ、絶叫するマリリン・マンソン。傍らにはキャミソール姿のアーネストホーストがしなだれかかってくる。

俺は諦めた。抵抗したところであの丸太のような腕でギロチンチョークされて気絶するのがオチだ。

童貞だった。

理想はあった。色白のリサローブのような彼女と、トラヴィスを聞きながら、木漏れ日の中で、愛し合い、ひとつになる。

現実。酒臭いアーネストホーストとマリリン・マンソンの絶叫を聞きながら。

傍らにはサッカー選手が使うスネ当てがころがっていた。

No.11

初めてだった。

口でされ、瞬発。顔にぶちまけた。

「若いからね、すぐだね。」

二度目上からのしかかられた。

また瞬発だった。

三度目。また瞬発。

「チッ」

アーネストホーストが舌打ちし、呟いた。

「ソーローかよ」

俺は泣いた。顔を隠し、眠ったふりをした。

No.12

翌日、帰宅し、打ち拉がれレディオヘッドを聞きながら英語の勉強をしていた。

妹が部屋に入ってきた。

「ユウ兄!童貞捨てたんだって?超ッパヤだったって?」

妹はこうなのだ。中学二年生にしてこの雑知識量は半端ではない。

俺はゲラゲラ笑う妹にアーネストホースト→兄→妹との情報伝達を察し、絶望した。

やはり俺には救いが欲しい。UKロックが心地よい。

No.13

俺には明確な目標がある。

税理士、公認会計士の資格を取り、世界四大会計事務所であるLondonに本拠地を構えるErnst&Youngに就職する。

London勤務になり、セントジェームス駅の近くに居を構えるのだ。

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