僕と携帯電話とおかん
はじめて小説を書きます。ほぼノンフィクションです。誤字脱字あるかと思いますがお許し下さい。
『貧乏な母親が僕にくれたもの。
それは携帯電話とお米だけ。
一人暮し、部屋4畳、風呂トイレ共同、家賃3万円が僕の城。
収入額、約月に6万円。
何が楽しくて生きているのかわからない。
でも親孝行がしたい。たったそれだけの気持ち。
18歳の僕。未成年からどん底。
それでも夢を見ます。』
貧乏人の頑張りを伝えます。
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来た道を逆に歩く。
どんな顔でみんなに会えばいいんだろう。
同情されるなんて嫌だ…
泣きながら帰るなんてもっと嫌だ…せめて、普通にしていよう。
そして、ちゃんと謝ろう…
そしてあと1年、静かに暮らそうと思った…
いま自分がどこらへんにいるのかがわかった…
ここって彼女の家の近くじゃないか…
そうだった…もともとここから僕は自分に負けたんだった…
彼女の家の前を最後に通っていこう…
1日経っちゃったな、
おかんももう帰っちゃっただろうな…おっちゃんが「任せといて下さい」とか言ってそうだ…
おとんみたいな存在だもんな、
知らない間に、おとんだと思っていたよ… 。
誰だろう、僕の名前を呼ぶ声がする…あまり、遠くて聞こえない…
「……ちゃん、…ちゃん!!」
ちゃんと聞こえないよ、
でもこの呼び方をする人、一人しかいないよ…もう涙ばっかりだ…
「…ちゃん!!…行っ…たの?…」
徐々に、聞こえてくる。
彼女のお母さんだ…
そこには、彼女も、彼女のお父さんもいた!!車で時間がある時、ずっと探していてくれたんだ。
彼女も僕を見て、口に手をあててボロボロと泣いている…
彼女のお父さんも、車から降りてきてくれる。
こんなボロボロでちっちゃなな僕を見られたくなかったよ。
もう…みんなに…2度と、会えないって、 思ってた…決めてた…
そんな感情を解き放ってくれるみんながいた、
みんなは僕に会いたくて、会いたくて、求めてくれていた。
もう別れたのに…そんなもの関係ないんだって、
彼女のお母さんは僕にハイタッチをして、抱き締めてくれた
「ママだよ、本当に心配したんだよ、手紙読んでね、サヨナラなんて言わないでよ…」
ほんとに、細かった…癌と闘った体があまりにも、細かった…
「ママと2人でゆっくり話そっか。お腹は空いた?コンビニ行こうか、」
彼女はずっと手で顔を覆っていた…
パジャマにしていた、ミニーマウスの顔がでっかくプリントされたティシャツにジャージの短パン姿で、サンダルで…
僕は彼女の目を見ることができなかった…それはきっと好きという気持ちと罪悪感、ただそれだけだった。
別れを言ったのは僕のほうなのに…彼女にはもう自分の道を進む権利がある…僕が自分で放棄したんだ。後悔したって遅い…
またやり直したいなんて、こんなことがあってからでは、言うことなんかできない、
僕は彼女を深く傷付けたんだから…
1度別れた2人はもう2度とはもとに戻ることはできない…
僕もそれを望むに望められない…彼女だってそうだと思う。
「レストラン行く?コンビニでもいいよ!」僕はコンビニを選んだ コンビニに行ってもなにかが食べたいとかはなかった。
あんなにお腹が空いていたのに…なかなか選べない僕に彼女のお母さんは以前僕が好きだった、納豆を選んでくれた。
「ママもこれにしよ!!」と納豆巻きと五目おにぎりを手にとって 以前に僕が納豆を食べて美味しいと言っていたことを覚えてくれていた。
また選ぶことができない僕の気持ちも汲んでくれた。
彼女とお父さんは車で先に家に戻っていた。
彼女のお母さんがそうさせた…2人っきりで話したい。そう言ってくれたことが嬉しかった。
彼女の家まで歩いて向かう…そんなに遠くなかった。
その間、僕は涙を流していなかった。というよりは、今の状況に自分の気持ちをどこに置いていいのかがわからなかったんだ。
冷静ではないが落ち着こうとしていた。
僕は携帯電話を借りておかんに電話させてもらった。
いつもすぐにでるのに留守番電話がなった…
まだおかん…帰ってないんだ、
おっちゃんの電話番号は覚えていなかった
もしおっちゃんの近くにおかんがいなかったら…
おかんは誰とも連絡がとれない状態で宛もなく僕を探しているのかもしれない…おかんにとってここは、本当に誰も知っている人がいない、
独りぼっちで僕を探してくれてる、きっといっぱい泣いて…僕より泣き虫だから…
おかんのこと…僕が一番よく知っている。きっとそうなんだ…
「携帯電話、お母さんには難しいわ」
嘘だよ…僕の記憶力もおかんとおとんから受け継いだものだよ…
本当は、すごく、欲しかったんだろ…
彼女の家に着いた。なにもしらないわんちゃんが迎えてくれる。僕に飛びかかってきてくれる。靴が綺麗に並んでいる。少し懐かしい匂いもした。
リビングで座らせてもらって、おにぎりをすすめてくれた。
彼女を含めた他のみんなは上の階にいる。
僕は納豆巻きをいただいた、あまり食欲はなかったけど、食べなきゃと思った。
彼女のお母さんも納豆巻きを食べていた。
少し、お腹にものをいれたからなのか、五目おにぎりもいただいた。
「手紙、ありがとうね。しばらくしたら読んでって言われてたみたいなんだけど、あの子我慢できなかったみたい…それで私にも読ませてくれたの、それで泣きながら、走って外に飛び出しちゃったのよ…」
本当に心配してくれていたことが伝わった…
僕はごめんなさい、と謝った。
そして充電器を借りておっちゃんにメールを打った…
そして僕はいまの気持ちとこれからのことを悩んでいたことをありのままに伝えた。
ひとりで抱え込んでいたものを吐き出す、誰かに聞いてもらうことで楽になれた気もした。
携帯電話に入っていた彼女からのメールを開く、「お願いだからいまどこにいるのか教えて、」と言う内容だった…
もう連絡をするつもりはなかった。彼女を傷付けた僕にはそれが彼女のためにできる唯一の償いだと思ったから…
「もうお互いに連絡とらないようにしよっか、どっちも辛いだけだから、2人とも、もう別々の道を歩いていくんだよ。
だから強く生きないといけないの、死にたいって思っちゃうかもしれない…弱いところはあるよ、人間だもん、楽しいことばっかりが人生じゃないってママは思うんだ。
いっぱい辛いことあると思うんだ、そんな時、ママに連絡してきてもいいし、お母さんや他の友達に甘えたってもいいんだよ。
今は生きていくことがしんどいかもしれないけど、絶対に生きててよかったって思える日がくるからね…」
「ママも癌でもう駄目かと思った。髪の毛もほら、カツラなんかかぶってさ、みんな付きっきりでお見舞いに来てくれたりして、
生きてて本当に良かったって思えるの。みんなのためにもね」
「だからね、これは返すね。」と僕が彼女に書いた手紙を渡してくれた…
僕は自分で書いた手紙を開いて読み返してみた。ところどころ、涙に濡れてしわになっているところもある。
『いままで本当にありがとう。幸せだった。この手紙を読んでるってことはきっとしばらく時間経ってるよね。
だから言うよ。本当は大好きでした。嘘ついてごめんね。でも勝手に僕は別れを決めました。すごく悩んで決めたことなんだごめんなさい。
1年後にもっと辛いと思って僕は逃げたした。これでお互いが幸せになれるって思ったから。
僕のことはもう忘れてください。いつか新しい彼氏ができた時に今が一番幸せだと噛み締めてほしい。
僕はすこし寂しく感じているかもしれないけど、君が新しい彼氏と一緒に幸せになれるように祈ってます。
僕は死んでしまったけど、天国からいつまでも君の幸せを見守っています。
サヨナラ…。』
こんなこと書いて心配させて、情けなかった…死ぬこともできなかった。
もう別々の道を行く、僕はもう彼女と会うことはできない。
これで…やっぱり良かったんだ…僕は彼女の前から消えて生きていく…そう決めた。
彼女の家を出る時、見送ってくれたのは彼女のお母さんだけだった。 どんな顔をして会えばいいのかなんてお互いわからない…
「ありがとうございました。」今までとはあえて言わなかった…
帰りは駅までおっちゃんが迎えに来てくれる。
家を出た僕は彼女の部屋を見た。電気がついていなかった。
なんでだろう… でも今の僕にはもう…考えても仕方のないことだった。
17歳梅雨明け、僕は人生の中での恋愛に終止符を打った。2度と恋はしない。人を傷付けることしかできない。これから先も、恋をしないだろう…トラウマなんかではなく、僕は彼女を傷付けた、その罪と罰だった。
これからどうなるかなんてわからない僕が僕自身を許せる日まで、僕が貧乏から開放されるその日まで、自分を責め続けることになる…素直になれかった、それが僕のあやまちだった。
僕は静かに、携帯電話を開く…
キー操作音が夜の街に響く…
アドレス帳にある彼女のプロフィールをじっと見つめる…
幸せな時間だった、目を瞑ってまた心の中で「ありがとう」って言う。「サヨナラ…」
そして、今までの思い出を噛み締めながら涙混じりに、彼女の名前をアドレス帳から消した…
それはとても辛かった…
おっちゃんを待っている間、辛かったり自分を責めてしまったりしてしまう時にいつも流れてくるのが、あの優しいギターの音色だった…
しばらく弦を握っていないな、
弾きたいな、僕に生きる意味を教えてくれる存在。
ギターを握っているかのように指を動かす、
なんでも弾いてみたい曲が弾ける気がした、
「ギターを弾いている姿が好き…」
ただ嬉しかった…
その姿を生き甲斐にしたい。
またアルバイトを始めよう。
1年間しかないこの期間に
1年後どうなってるかわからないけど、
ギターリストにやっぱりなりたい!!たくさんの曲を作ってみたい。僕の作った曲を聴いてほしい…
お金を貯めて、もっと細かな音が弾けるエレキギターが弾いてみたい。
夢を繋いでいこう…
僕のためにじゃなくて、聴いてくれる人のために!!
僕には癖があった…
嫌なことや辛いこと逃げ出したいことがあると自分で自分の口の中を噛む癖だ。
おかんには何度もやめなさいと言われたことがある。
口を洗うと血が混じっている。
何度も口内炎の薬を塗ったことがある。
でも癖だからやめられない…
気が付くと噛んでいる。
しばらくしておっちゃんが迎えに来てくれた、怒られたでも良かったと言ってくれた。
紙パックのジュースをもらうストローをさして飲んだ。
口の中にはオレンジの味と血の味が広がった。
帰りの車の中、音楽が流れていたおっちゃんは昔、バンドを組んでいた。普通の大学に通って、サークル活動を通して音楽に生きたと言った。
そのうちの1つのギターを僕にくれた。ずっとおっちゃんが使っていたものみたいだ。
バブルの時代、無難に就職してれば良かった…自分は音楽で食っていけると思った。今の寮をその時のおまけで建てた。しかし結局、他にはなにも残らなかった…唯一残った宝物、その宝物に住んでいるお前たちも宝物だ。だからもう二度と死ぬなんて思うな…お前と見届けた彼の時のような気持ちにまた俺をさせる気か!!
おまえがよ…どんどんギター上手くなっていくのが、本当に嬉しかった…
知らない間に弦を張り替えてくれていたのはおっちゃんだったんだ…
バブルの時代に置き忘れてきた想いを今の寮に住んでいる僕たちに託してる。だから別れが人一倍悲しい…
中途半端な別れは絶対に許さないぞ…
「おかぁちゃんよ、泣きながら待ってるぞ。しっかり怒られてきなさい!」
寮に着いた時、僕の部屋に明かりがついてるのを確認した。
謝らなきゃ、部屋のドアを開けた、目に飛び込んできたの真っ赤な目をしたおかんだった、
怒っていて赤いのではなくて、泣きすぎて腫れ上がっているからだ…
謝らなきゃ、と思っていたのに声がでない。僕は立ちすくんでいた…
おかんがこっちに向かって歩いてきて、僕を抱き締める…
そして「あほたれ!!どんだけ心配したと思ってんねや!!」と泣きながら怒鳴る。「ほんまに、よかった…よかったよ。一生分泣いたわ…」
おかんはあまり方言を使わない、おかんは関東生まれだったから…
なのに…
「お母さん、携帯電話買う…」
初めておかんが僕に自分の押さえていた気持ちを…
それほど、心配させたんだ…
僕の中でなかなか出てこなかった、やっとでた言葉、「ごめんなさい。」
がむしゃらに、自分なりに貧乏と闘ってきたと思ってた…
僕はまったく知らなかった…
泣きながらお酒を飲んで記憶をなくしたかのように…おかんが話す。けっして笑って聞けるような状態ではなかった…
聞かなければよかったとさえ思った話だった…
その泣き声に周りの寮生も何事かと僕の部屋の前に集まる。
それを慌てて階段を上がってきたおっちゃんがなだめて部屋に返す。そしておっちゃんが入ってきた時にはおかんはもう、ぐちゃぐちゃに倒れ込むように泣いていた…
僕が死のうとしたことに、とてもショックを受けていた…
おっちゃんによればおかんはおっちゃんの携帯電話を握りしめて、僕からの連絡をひたすら待っていた。
その間、一睡もしていない、仕事が終わって駆けつけてきてくれた疲れた身体でだ。
また、僕から連絡があった時に迎えに行ってやれないことでもまたショックを受けていた。
だからおっちゃんは敢えておかんを乗せて車で迎えにこなかった。
「必ず連れて帰ってくるから!!」
そう約束して…
携帯電話がずっと欲しかった。
僕といつでも繋がっていたかった。家に帰って電話がないかどうかいつも、確認していた。
毎日1通でも元気にやってるよっていう便りが欲しくて何度も電気屋さんに向かったって…
僕の携帯電話を止めないように、また借金を毎月ちゃんと返していけるように…
ぐっと自分の欲を我慢していた。1人で寂しい夜がずっと続いた。
何度も何度も涙で枕を濡らして…
自分から電話は極力しない…僕のためにと…僕にめんどくさがられたくないからって、
でも僕のために、僕だけのために…頑張るって
言ってくれていた。
僕が彼女と幸せな時間を作っている間も…文化祭の時にほんとに幸せそうな僕を見て、心から安心したって、僕が幸せそうで良かった。
僕はなにも気付いてやれなかった…
そんなたった1人の僕が…
死にたいって、サヨナラ今までありがとう…なんて
聞きたくなかったって…
お父さんいないからって、自分が父親代わりをする。
母親としても僕を守っていく。 そんなおかんが…おっちゃんに…
「あの子の父親みたいに接してあげてください…本当は父親がいて欲しかったと思うんです。お願いします。」って寮に入る前に電話でおっちゃんに頼んでいたなんて…
おっちゃんは、ずっと内緒にしていたけど、おかんが泣きじゃくる姿を見て、たまらず僕に教えてくれた。
僕はアホタレだった…死にたいなんて、思っちゃいけなかった… おっちゃんにずっと「あの子を信じてる」って言っていた。
こんな僕をずっと信じて連絡を待ってくれていた… あと1年間が自分のタイムリミットなんて…おかんに言っちゃったよ。
もっと辛くさせていた…
僕は崩れ落ちた…自分勝手で人に優しくなりたいなんて考えていた、ギターで伝わる想いがあるなんて考えていた。
もっとすぐ側で隠れて支えてきてくれた人がいたのに…
どんなに辛くても僕の前では強がっていたお母さんが…
僕の目の前で、泣いている…
心が痛かった、なんで気付かなかったんだろ…
僕は外にも聞こえそうなくらい、大きな声で泣いた…
外は不謹慎にも、満月がとっても綺麗だった…
あの日から僕は元気がでなかった。
僕がとった行動は僕を心配してくれる人に迷惑をかけたからだ。
おかんが家に帰る時に僕に言った言葉、「頑張ってるあんたの笑顔が一番好きだから。」
気持ちに答えなきゃ駄目だから、
どんなことにも乗りきれる!!
そうやって無理やり自分を元気付けて夏休みが過ぎた…
僕は無心にアルバイトをした…
「受験はしないのか?」と聞かれることは多かった、
その言葉1つ1つを曖昧に聞き流した。
一生懸命働いた…その姿を誉めてくれる人もいた。
嬉しかったけど心からどうしても喜べなかった…
心の奥底に…いつまでも彼女の存在があった。
どうしようもないんだけど…
生まれ変わってもう一度、同じ気持ちで彼女に逢いたかった…
1日1日を過ごしていくことは当たり前なのかもしれない。
朝に目を覚ますと彼女の夢を見たり、メールがないということに辛さを覚え
夜になると将来のことを考えて辛さを蘇らせる。
彼女のことをはやく吹っ切ってしまいたい…時間が経ってほしい、しかし、高校を卒業したらと考えると不安で時間が経ってほしくない。
アルバイトをして、毎月3万円程はお金があった。夏休みに働いた分と合わせると10万円にもなった。それを封筒にしまい、大事な本に挟んでしまっておく。
おかんの話を聞いてからこの着実に貯まっていくお金を自分のために使っていいのかがわからなかった。
また友達は受験勉強の真っ只中にいるのに自分はアルバイトをしている。
1人だけ違うことをしているうちに、徐々に学校でもみんなと会話することを躊躇うようになった。
僕が大学受験をしないことを友達はどう思っているのだろうか。
学校で僕は周りとは違う環境にいた。孤立化していたんだ…
そんな僕に未来に光を繋いでくれる始まりのベルが鳴った。
みずきからだった。みずきとはアルバイトで一緒になる時があってしばしば連絡を取り合っていた。みずきも彼女と別れたばかりでまた同じ年齢ということもあり、
話が合った。
みずきは大学は決まっていた。
エスカレーターと呼ばれる大学の附属高校に通っていたからだ。
みずきには僕は大学受験をしないという話をしていたため
「東京に旅行に行こう」と声をかけてくれた。
「4日ぐらい行かないか?
土日挟んで2日くらい仮病使えるだろ?」
そんな話だった。
最初は戸惑った…
仮病はまず使えない…おっちゃんも先生にも僕が学校を休むと、心配させてしまう。またおっちゃんに関しては寮だからバレてしまう。
なによりお金がかかるのでは!?
そんな懸念もあった。
「お金はかからない!夜光バスで往復するから移動代は大阪から東京までで往復6千円ちょっとで済むし。宿は2泊分は親戚の家に泊めてもらってあとはマンガ喫茶だ!1万円あったらお釣りがくるよ!!あとはあっちでどれだけ使うかなんだけど…ちょっと考えてみて!!」
みずきはとてもノリノリだった。
みずきは慰安旅行だと言っていた…それは僕にとっても日頃の悩みを忘れるいい機会じゃないかと思った。
それを正直に先生とおっちゃんに話してみようと思った。
心配をよそに、おっちゃんも先生も大賛成だった。
ただ先生は「これっきりだよ」と念を押した。
学校では、大学のオープンキャンパスといって大学見学に行く人が多い時期だった。だから2日学校を休んでも問題はなかった…
また日頃から体育等の受験科目ではない授業に出たくないという人も多かったため、全員が揃うことはほとんどなかった。
みずきが夜光バスの手配をしてくれた、みずきは東京に行ったら池袋に行きたいとずっと言っていた。当時やっていたドラマの公園を見たかったからだ。
あとはノープランだった。
それはそれで楽しいと思った。
9月の末の木曜日、僕たちは大阪駅で待ち合わせをし夜光バスに乗り込んだ。
あまりにも狭くて、ビックリしたが…僕の記憶にあるのは、京都までだった、あとは目が覚めると、
皇居があった。
「まもなく東京に到着します。」アナウンスが流れた。
僕は初めてやってきた首都に興奮した。
少し高速道路が混んでいたのか予定よりも1時間ほど遅れていた…朝の7時だった。
僕らは取り合えず荷物を置きに行くためにみずきの親戚の家に向かうことにした。
杉並区高円寺そこに向かう。中央線に乗って乗り換えなしだった。
ただ僕らは通勤の人の多さに驚いた。下り列車で始発でよかったと思った。
行き交う人は金曜日だったからなのか少し疲れている表情をしていた。
電車に乗った。田舎から来たということがバレてもおかしくないほど興奮していた。
御茶の水、四谷、新宿、どこも聞いたことのある名前ばかりだった。
新宿を出た時、『歌舞伎町一番街』を見て、2人で「夜王だ!!」なんて口にしたぐらいだ。
そして、高円寺に到着して純情商店街と呼ばれる有名な商店街を抜けて、みずきの親戚の家に到着した。
僕とみずきの2人の東京旅行が始まった。
みずきは親戚の人に夜帰るとき連絡すると行って家を出た。すこし休憩したのでお昼ご飯を頂いた後の出発だった。
1日目は池袋を目指す。
西口公園に着いた時、みずきは「ここに座っていたのか~」なんて漏らす。
僕の目に飛び込んだのは噴水でも公園でもなく、立教大学に向かう楽しそうな大学生の姿だった…
ほんとにノープランだった。
僕とみずきは公園に2時間くらいいた。
話題はもちろんみずきの失恋話だった。
他に好きな人ができたらしい…
僕はそっちのほうが諦めがつくと思ったが言わないでいた。
僕なんか自分で別れを決めておいて忘れられないでいる。
なんの説得力もない。また僕の方が状況がまだましだとか思われたくなかったから。
結局、夕方までいた。なにもせずに話をしているだけ、ただここが東京であったということだけだった。
ギターを弾いている人がいた。大学のサークルかなにかなのか人がたくさん集まっていた。それを見たり聴いたりしている人も大勢いた。
「移動しよう!!どこ行く?」みずきは観光案内のガイドブックを取り出して尋ねてきた。
みずきは興味があるのかどうかわからなかったが、代々木公園に行きたいと僕は言った。
路上ライブを聴きたかった。
みずきは笑顔で賛成してくれた。
そして山手線を新宿方面に向かう。代々木駅で降りたのが、代々木公園がどこにあるのかわからなかったため、駅員さんに聞いた。
「明治神宮の方に向かったらあるよ」それでもわからず迷った…
結局、代々木公園に到着した時には日が落ちていて誰も路上ライブをしていなかった。
代々木公園で2人で寝転がって、笑い合った。「ノープランすぎたね」なんて言いながら…ただ楽しかった。
東京に来てから電車代と飲み物代以外にお金は使わなかった。
池袋西口公園では話をして写メールをいっぱいとって
代々木公園では寝転がって人間観察をして時より野鳥なんか探してみた。
1日目はそんな感じで終わり高円寺に帰った。帰りは…乗ったこともないような満員電車だった。
東京は本当に人が多いと思ったよ。
そしてみずきの親戚の家ではみんなでトランプをやった。僕はトランプは亡くなった彼とずっとやっていたから強かった。
罰ゲームの一発ギャグはほとんどがみずきだった。おかしくておかしくてずっと笑っていた。
親戚の人が「東京に来たんだったらせっかくだから東京タワーとか行ってきたら」と言ってくれたから、僕らは明日、昼からの活動予定にレインボーブリッジと東京タワーを入れた。
そして行き方も教えてもらった。
新橋、ゆりかもめ、浜松町、
このキーワードをしっかり覚えた!!
みずきが浜松町のことを「ダウンタウンみたいやな」とか言うもんだから、頭にしっかり焼き付いた。
昨日は夜光バスだったため、僕らは早めに床に着いた。
きっとすごく楽しかったんだ。
小学生ぐらいの気持ちに戻っていたんだと思う。
東京はたくさんの都道府県民が集まる街だ。大学もそうだろ、仕事もそうだと思う。お笑い芸人も東京進出を目指す。またミュージシャンもそうだと思った。
僕は色でイメージするんだ。
大阪は青、福岡は黄、広島は赤、高知は桃、京都は茶、静岡は白、神奈川は水、宮城は緑、北海道は銀、沖縄は金、そして東京は虹。
東京はその47都道府県全ての色が交ざり合っている。1つの色じゃないんだ。
虹とは大袈裟かも知れないが僕はそう思った。
明日、レインボーブリッジを見る。東京タワーから夜景を見る。
その風景はきっと綺麗なんだろうな、って思わずにはいられなかった。
また東京に来てふと思ったことがあった。
僕の生まれてくる前に亡くなった母側のおじいちゃんとおばちゃんだ。
おじいちゃんとおばちゃんは東京に住んでいた。そして亡くなってお墓はこっちにある。
おかんが生まれた場所にすこし行ってみたいと思った。
朝、僕はおかんにおかんがどこで生まれたのかを聞いた。
帰る前に行ってみよう
おかんから連絡で日暮里と聞いた。昼過ぎ、みずきと僕は一度新宿に出て山手線に乗った。
そして新橋に向かう。
電車の路線地図に日暮里を見つけた。
おかんが生まれた場所でおとんに出会った場所。
見ておきたかったし感じてみたかった。どんなところなんだろうか、興味があった。
そんな気持ちを抱きながら、ゆりかもめに乗る。
テレビでよく見るテレビ局が見える。東京湾、上から見直した、瀬戸内海とはまた違った色だった。
クルーザーも走っている。
海上保安庁もあった。
お台場のイメージは大砲がいっぱいありそうな感じだったが全然違っていた。
僕とだいちゃんはお台場を満喫した。似顔絵を男2人で書いてもらったり、海浜公園を歩いてみたり、アトラクションにすこし乗ってみたり。給食を楽しめる場所なんかあって、楽しかった。
周りは相変わらず、大学生などのカップルが多かった。
そんなことをしていると夜になった。お台場にも路上ライブをしている人がいた。
僕たちはしばらく聞き入っていた。なんで路上ライブをするのか、それは自己満足と希望かな!!なんて教えてくれた。
レインボーブリッジを見てみずきは「封鎖したい」なんて言ってたけど、僕は少し違うことを思った。
レインボーブリッジを手掛けた人たちのことなんかを考えていた。どうやって虹色に輝かせる橋を架けようなんて考えたんだろう。
それはなんでだろう、
自己満足なのか、それとも見て感動させたいという希望を持ってなのか、たまたまなのか…
なんで、こんなに人を魅了させるんだろう、
レインボーブリッジを見て、そんなこと考える夢のないような人間は僕だけかもしれない…
帰りのゆりかもめ、僕はレインボーブリッジを見ながら遠ざかっていく橋に寂しささえ感じた…一瞬で通りすぎていく…でもなんか笑えた。
浜松町に着いた時、すでに赤色に輝く東京タワーは見えていた。徐々に近付いてく、大きくなっていく。足元は想像を遥かに超えていた。地盤をしっかり固めて上へと伸びていくその赤い建物はいかに僕らがちっちゃな存在かを思わせる。
僕は東京タワーの展望台から夜景を見て、言葉には出来ない感動をした。涙が流れてもおかしくなかった。だが僕も成長した。そんな簡単に泣くことはしないと決めたんだ。無数に広がる光の粒を見ながら、人間がちっちゃな存在であり、無限な存在であると…
あまりにも自分の悩みが小さくて、狭い世界に生きてきていて、でも優しい光に包まれた存在。
ちょうど、光をはなっていない小さな建物が見えた。その横には大きなビルがあった。綺麗に光っていた。そして商店街かな、無数の光が集まっている場所がある。またその周りにはたくさんの建物が光っている。だからその真ん中のの光っていない建物が周りの光で見ることができる。
それこそが僕なんだ。
なんとなく生きていることが間違ったことなんかじゃなくて、自分には何もないと考えていたことが間違いだった。
ただそう思うことしかできなくて、だからどうこうすることもできない。いまの僕にできることは前向きに考えていくこと…
でも慰安旅行として来たはずのこの東京の地で、東京を見下ろせる高い場所で、
なぜか今になってまた…彼女の声が聞こえてきた気がした、
僕が弱さを感じる度にあの温かな環境を思い出してしまう。
東京タワーから見る夜景は、あまりにも切なかった…
ここから西の方角を望遠鏡で覗いてみた、遠いこの場所から
今、僕がこんな気持ちでいるってことを伝えたかった。
伝えることがもうできない、どうやっても伝わらない、
そんな資格はない…
東京タワーから下を見下ろしてみた…暗くて何も見えやしなかった、でも高さは伝わった。
落っこちてしまいたい、地震が起きたら、楽になれる…
僕が小学生の時に経験した、あの大きな地震。
どうしようもない僕のこの気持ちはもう行き場をなくしてずっと僕の心に留まっている。
山手線に乗って、日暮里で降りる。みずきとは今日は別行動だ。
みずきがお願いして、あと1泊親戚の家にいさせてくれよう取り合ってくれた。親戚の人は大丈夫と言ってくれたから、僕らは甘えた。
それぞれ3日目は自分の行きたいとこに行こうと決めた。
待ち合わせはなく好きな時間に高円寺にもどるということにした。
日暮里は繊維街と呼ばれるような商店街といった場所だった。
山手線の外側は住宅街で内側はお寺やお墓があった。
おかんの住所や学校は外側にあった。散歩していると、この小学校なのかなと思う場所があった。
ゆっくりとした時間が流れる温かな場所だった。
僕は感じることはないんだろうけど、懐かしい匂いがする…
なんでだろう、一度来たことのあるような本当に懐かしい空気。
どれだけ時がすぎたのかわからないけどおかんはここから旅立った時、どんな気持ちだったのかな、おとんに付いていくそういって思い出を残してこの地を離れたんだと思う。
おとんが死んで、入れ違いに僕が生まれた。
ここにおかんが帰ってくるという決断をしなかったのは僕のためだ。おとんが残してくれた家を僕に住ましてあげたいそういった願いがあった。
故郷に帰る…それはおとんと出会ったこの場所に置いてきた思い出に打ち潰されてしまうからではなかったのかな。
そこまでは知らないが、この遠い街へ来た僕は確実に、おとんとおかんの血が流れている、そう思わせる本当にどこか懐かしい匂いがする街だった。
大事なことを見失っていた僕にこの場所でおとんとおかんの温もりを感じさせてもらい、何度も何度も逃げ出したくなった僕に生きる勇気を与えてくれた。
公園のベンチに座って、ただ時間を費やしていた。
男子高校生が日曜日に制服と鞄を持って歩いている。図書館でもあるのかなと思った。鞄の学校名を見て僕は日暮里にはあの高校があるんだ…と確信した。
学校の先生が何度も口に出す高校の名前だった。
でもすぐさま思考を止めた、僕には関係のないことだった。
今は何も考えずにこの匂いと空気に触れていたい。
なんで生きているんだろう、
なんで働くんだろう、
なにに人は幸せを感じるのだろう、
趣味だけで満足を得られるのだろうか、
お金がない僕にとっては唯一幸せを感じられた恋愛も、素直になれない僕の手で終わらせてしまった。
やりたいことをやるって大切なことだと思う。有名になってテレビにでたり、起業して社会貢献できたり、スポーツ選手もそうだろう。
サラリーマンもそうさ!!自分達のやっている仕事で必ず救われている人がいるはずなんだ、表にでないだけで…
生き甲斐や遣り甲斐を持って仕事をすれば幸せになれるのかな…
自分がやりたいことをやれている人が羨ましい。
やらなければいけないという受け身で仕事をしたくない。それも1つの働く意義なんであろうけども、
誰かを幸せにしたい…今まで迷惑をかけた人達に恩返しがしたい…ってだけで、
1年後受け身の仕事でやっていけるかなと不安になる。
いつの間にかまたそんなことばっかり考えてしまっていた。
はじめまして🙇
涙したり微笑んだりしながら読んでいます😃
まだ半分くらいなんですが、最後まで読ませていただきます🙇
私は一時期育児放棄のような状態で、一軒家に小学生で一人きりでした。
なのでこう言うのは不謹慎かもしれませんが主サンがうらやましく思います。
>> 384
[主です]
白猫さんこんばんは😄
コメントありがとうございます。
そうですか、たくさん辛い経験されてきた方がいるから、なんかこう、元気でるような話ができたらなと思いまして、書き綴っています‼
まったく不謹慎なんかじゃないんです。僕はいつも悩んで悩んで自分を追い詰めてここまでやってきました。読んでくれてる方に自分だけじゃないんだって思ってくれると嬉しいです。
僕は小さな人間なんで結果的にこのような形でしか伝えることができません!!
本当はおっきなステージでギターを聞いてもらいながら読んでいただきたいななんて思ってしまってますし…この場面はこの歌や演奏で聞いてほしいなんかいっぱいあります。
少しでも白猫さんが元気になれるゆうに頑張って書いていくので、これからもどうか、よろしくお願いします。
日暮里が夕日で赤く染まっていた。駅前に大きなマンションがあってそれが綺麗に照らされているんだ。
日暮里が最も綺麗に見える場所に行ってみたかった。夕日を近くで感じれるような高いところに!!
同じくらい高いマンションの屋上にあがった。策を越えて…
きっと見つかったら怒られるだろう。でも高いこの場所に人がいることなんて誰にも見えやしない。
どんな大きな声を出しても聞こえない。夕焼けがとてもきれいで、山手線の電車がその下を走る。
僕は大きな声で、歌を歌った。
とても丁寧に歌った。
この懐かしい匂いのする空気を肌で感じて、赤くて綺麗で懐かしい景色を見つめて、自分の弱さを感じ、そのたびに想う、彼女やおかん達のぬくもりを思い出し、気持ちが高ぶる度に流れる涙と一緒に…
精一杯歌った。この歌が君に届くように…伝わるように…
そのたびに生きててよかった、僕はいつか…誰かにこんなふうに、思われる人間になりたい…
どんなに大きな声で歌を歌っても誰にも聞こえない。
でもこの遠い街からみんなに響かせたくて、
僕は大きく泣いた…誰にも聞こえないんだから、泣きたいだけ泣けばいい…思いっきり好きなだけ…
赤い夕焼けが僕にはあまりもせつなかった…
おかんと最後に見た…夕焼けを思い出しては、昔に戻りたい。
もっともっと昔に…僕は成長してきた。でも、またあの日のように素直な気持ちでいられた時間を取り戻したかった…
帰りたくなったよ…
みんなのもとに帰りたくなった、
会って、ありがとうを言いたい。どんな言葉を使えばいいのかなんてわかんないけど、
やっぱり感謝なんだ。一番大切なその気持ちだけは忘れたくない。
目を閉じて思い浮かぶのは昔の日々だった。
【参考】*嵐の『ギフト』の表現を使わせて頂きました。あのころの僕はこの歌のような気持ちだった。よかったら聴いてみてください*
僕にとって東京への旅行は慰安旅行ではなかった。思いを強くするものだった。
でも、なぜかすっきりしていた。
高円寺に戻ってみずきと待ち合わせをした。みずきは原宿で買い物をいっぱいしたみたいだった。両手いっぱいに荷物を持っていて、僕を見て笑う。
なにも買ってないそれがおかしかったみたいだ。また日暮里に何しにいったのかを興味深く聞いてきた。
僕は真剣に教えた。それをみずきはいつもより真剣に聞いてくれた。いつもふざけているみずきにしては珍しかった。
そして、聞き終わったあとに…
「銭湯でもいかないか?」
僕は頷いて、銭湯に向かった。僕たちだけだった。早かったからかな、こんなもんなのか、
ちっさな銭湯だ。東京にもこういった場所があったんだと思った。
「おまえ将来なにやんの?」
みずきの質問に僕は顔にシャワーを浴びながら答えた。
「XJAPANになる!!」
笑って言った。冗談で言ったつもりだった。馬鹿にされたら水をかけてやろうと思った。
そんな僕の冗談をみずきはまた真剣に受け止めた。
僕が日暮里に行った話をしたからなのかもしれないが、みずきは僕を決して馬鹿にしなかった。
「夢はでっかくないとな!!Xってもともと無名だった…それなのに今やあんなに感動させられるんだもんな。すげぇよな!でもそしたら将来は東京進出か!最高のパートナー見つけないとな。俺なんて親のスネかじってそのままやりたいこともなく就職してくんだ。きっと今しかできないことあるんだろうな…俺はおまえが羨ましいよ。俺にはおまえみたいにギター弾けないしそんなに頭良くないし、きっと就職してなーにやってんだろうって思うんだ、いまからそんなこと考えて馬鹿だよな。おまえのそんなとこ好きだよ。へんな意味じゃないからな!!俺、おまえを応援したい。一緒に東京旅行来てくれて、ありがとな!」
そんなこと言うみずきに僕は飛びかかってお湯に沈めた…心から嬉しかったんだと思う。
「みずきはなんかやりたいことないの?」
「俺か!?まぁいつかできるんじゃないかな…まだなんもわかんないや…大学行ったら教育免許とってみようかなって思うくらいかな!!」
みずきは照れ隠しなのか、股間をゴシゴシ洗いながら背中越しに話す。すこしいつものふざけたみずきに戻っていた。
「俺には弟と妹がいてな、可愛いんだこれが!!年が離れてて、今まだ小学生なんだよ。にいちゃん、にいちゃんって!!あいつら生意気だけど東京旅行行くとか言ったら寂しいとか東京ドーム持って帰ってきてとか、俺にそんな力があるかちゅうねんな!!ゴジラか俺は!!」
そして湯船に浸かって大の字に浮かび出した。わざとなのか股間には桶があったが…
奇策でおちゃめなみずきなら学校の先生になれるだろうなと思った。きっと優しくて面白い授業をする。
結局、そんな話をしていたら、みずきが「のぼせた」とか言うので銭湯を出た。
ポカポカな気持ちで3日目の日を終えた。
東京慰安旅行最終日はみずきと横浜へ行った。
東海道線に乗り歴史を感じる電車に乗って横浜へ向かう。
驚いたのは駅と駅が離れているということだった。
途中で事故があったのか次は横浜というところで電車が止まった。みずきも僕も座りながらウトウトしていたので、まだ降りたくないと思っていたのでちょうどよかった。
横浜でなにをするかなんて決めていなかったけど、ただ横浜に行って海を見よう、そんな感じだった。昼過ぎに出発をして夜のバスまで時間を使う。病みに病んだ僕たちはただノープランでフラフラ時間を潰すことが、今できることで一番楽だったのかもしれない。
横浜駅に降りた時に感じたのがやはり水色のイメージだった。
歩いている人それぞれが横浜の雰囲気を出している。東京や大阪とはまったく違った雰囲気だった。
みずきと旅行に来て楽しかったことも多かった。こんなに世界って広いんだと思う。
彼女を振って後悔して先も見えない将来と向き合ってきた自分があまりにも狭い殻に閉じ籠っていた気がした。
思い出したこともいっぱいあったけどいつかきっと思い出になって今がまた一番幸せだと思える日が来るようにひとつひとつ自分のページを増やせていけたらいいな。
鬱病と診断されてから誰にも言えず死んでしまいたいと何度も思った。でもそんな勇気もなく周りに生かしてもらってる自分。
他の人が羨ましく思えたり僕だけこんなに辛い中にいる、そのようにどうしても考えてしまっていた。
自分の中にあるこんな闇の部分をとっぱらってしまいたい。
もう一度許されるなら恋をしたい。もう少しだけ学校にいたい…
もうすこしだけ…今、みずきと一緒に旅行している時間が延びてほしい。
みなとみらいのが綺麗すぎて、自分の心をまた少し優しく和らげてくれる。
そんな気持ちを持ったまま…
なんでだろう…
もう、死んでしまっても、いいのかな…
なんて思ってしまった。
病んでいる自分は楽しかったことがあった後の反動でそんなことを思う。
悲しませる人がもしいなかったら…たぶん消えている。
悲しませる人がいるから、死ねない。だからそんな勇気がない。
これから、ほんとうに僕はどうなっていくんだろう。
もうすぐ3歳になろうとしている僕の携帯電話のように充電器のバッテリーがゆっくり消耗していく。いつの間にか朝充電が終わっても夜まで携帯電話の電源が入ってることはなくなった。
これから飲み始めようとしている学生達の楽しそうな様子はあまりにも僕を苦しめた。
結局、最後の最後で、僕は慰安旅行を成功させることはできなかった。みずきはどうだったのかなんて聞かなくてもわかる。
きっと2人とも、帰ったら何かが吹っ切れているなんてことはないんだ。
魔法がかかった4日間が終わりを告げる。
東京駅出発のバスに乗り込む時、みずきと僕は無言だった。
楽しかった、また来たいね、そんな言葉を発しない。
僕たちにとってこの4日間は人生のたったの4日だったんだ。彼女と過ごした2年間に比べたら…同じ人生の僅かな時間なのに…
彼女を忘れたい気持ちがあるのに…彼女に逢いたい気持ちが強すぎる。朝に大阪駅に到着した。現実に帰ってきた。今日からまた学校に行って寮に戻って寝て、同じ日をまた繰り返す。それは学校の卒業に向かって…そうやって、また1週間、1ヶ月を過ごす。彼女がいない初めての冬を1人で過ごすことになる。
季節は冬11月。受験のピークに近づくシーズン。僕はもう卒業したらどうするのかを考えなければいけないそんな季節がやってきた。そんな時だった。
登録にない番号から電話が入る。「もしもし!?」と出てみる。僕の表情が一気に変わる。嬉しいのかどうしたらいいのか迷ってる暇はなかった。いや、ずっと迷ってきたはずだったが答えが見つけられないままにいただけだった。懐かしい声を聞いた時、誰なのかはすぐにわかった。もう忘れるはずだったのに「元気?」そんな彼女の言葉に、なんて答えていいのかなんて…今は見付からなかった。「元気だよ」素直にならなくちゃ駄目だ。もう自分を許してあげなきゃ…たったひとつの僕の生きていくための希望を…でも駄目なんだ。僕は答えを見つけられていない。友達になりたい!!それが精一杯だった…
初めまして
読ませ 頂きました
自分も うつ 経験者です
何もかもが嫌になり
1人でした…
だけど ある バンドとの出会いがあり
今の自分が居ます
高校の時に…バイトして買ったギター🎸で
今でも使ってバンド練習してます
今 使ってる ギター🎸は…
主さんと同じ位の年齢かな…😃
大事なギター🎸です😃
10-feet ってバンドが好きです⤴
➰ライオン➰☝
って曲です🎵
思いがけない彼女の電話に僕はすこし動揺していた…
でもそんな僕の気持ちは一瞬でかき消された。
「大学決まったよ。東京の大学に指定校推薦で決まった…伝えておきたくて、一番に伝えたかった。喜んでくれる?」
「そっか、おめでとう。どこの大学の指定校推薦をもらったの?」
彼女が挙げた大学名に僕は驚いた。指定校推薦とはいえ、高校の授業をしっかりしていないと行けるような大学の名前じゃなかった。
「どうして、そこに決めたの?」
「東京の大学ならどこでもよかった…やりたいことは大学入ってから決める。ごめんね、遠くに離れて忘れたかったから…ママにも反対されたけど、どうしてもってお願いした…」
本当は伝えようか迷ったと言ってくれた。でもお互いが好きだった時間は消せないから、いつか忘れてしまって、愛情から友情に変えてしまいたいそんな日が来るまで、離れていたい。いつか久しぶりってお互いが幸せになれる日が来ることを願って…と彼女は教えてくれた。
失恋したのは彼女のほうなんだ。僕のしたことがどれほど彼女を苦しめたか、それでも僕に自分の進む道を教えてくれた。
連絡先を消してしまっていたとしても、徐々に二人が一緒にいた時間が過去のものになっていったとしても、僕が想いを消さない限り、君は側にいるって思ってた。
例え付き合っていなくても、他に誰か別の人が横にいたとしても…それはそれで、僕はよかった。
でも彼女が遠くに離れていくって知ったから
それを受けとめて応援してあげなくちゃいけない。
彼女が決めた道を否定することなんてできない。
本当のお別れを迎える来年の春、最後に彼女にプレゼントしてあげたいものがあった。
僕の歌と僕の将来の事、そんな自分勝手な僕の頼みを彼女は喜んで承諾してくれた。
エレキギターが聞きたい!!彼女の最後のお願いに、僕は貯金で買えるギリギリのそれを買った。
彼女の願いを叶えてあげる、僕にできる唯一の償いであり、愛情でもあった。
きっとそんな僕の気持ちをおかんはわかってくれた。「あんたエレキギターなんて買ったの!?お母さんにもちゃんと聴かしてよ!!」なんて言ってくれる。
だいちゃんもその頃には受験終わってるかな…
みんなともお別れが現実味を帯びてくる。
僕は将来何をするかは考えなくちゃいけない。
みずきなんか僕がエレキギター買ったからって毎日のようにアコースティックギターを弾かせてくれと遊びにやって来る。
年も明けた冬の真っ只中の2月。
ついに僕は18歳になった。
卒業まであと1ヶ月と半分もない。私立大学を受けた人たちは受験からの解放に喜びに溢れていた!!静かに、僕は卒業の3月を待った。
タイムリミットはすぐそこまで来ている。高校時代の思い出が走馬灯のように記憶を駆け巡る。
泣いても笑っても、もう春はそこまでやって来ていた。
あれからどれくらいの月日が経ったんだろう。
2010年9月
僕は卒業アルバムと日記と携帯電話を開いて思い返す。
僕は今、東京に住んでいる。
荒川は静かに流れている。夏には隅田川で大きな花火があがる。
僕の住んでいる城は何もない。お風呂もトイレも共同で、おかんからは毎月、「元気にしているか?」との手紙とお米が届く。
僕は元気だよ。勝手に決めた自分の人生の道をおかんは応援してくれた。わがまま言ってごめんね。いつかきっと恩返しができるようになるよ。いまは自分の選んだ道を後悔なく進んでる。
おかんが高校入学時に買ってくれた携帯電話、今や時代遅れと言われてもいいようなくらい古い型だ。でも僕は機種変更は絶対にしない。宝物だから。ギターも2つ宝物だ。それだけで充分に今、幸せなんだ。本当に幸せなんだ。
目を瞑って、あの日を思い出す。涙が自然と流れるくらい、鮮明に…
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