春風空色

そこはとても寒い場所だった。
気温が別段低いわけではない。だがしかし、凍えそうなくらい寒かった。


隣ですやすやと寝息をたてている若者に目をやる。

なぜ此処にいるのだろう。まだこんなに若いのに。

…そして

自分はなぜ此処にいるのだろう。

……裏切りか。
それとも己の望んだ結果か。









彼は頭が良かった。

この先に待ち構えるものが何かを、彼は知っていた。

• 共感0

話の腰を折るようですみません…。しかし、書いてあることが、驚くほど私とﾘﾝｸしていて、書き込まなきゃいられなかったのです。　　　　　　　　　　　　　　　　　別次元の少年、ひらひらのﾄﾞﾚｽを着た少女、なにかから逃げる強い旅人剣士。そして仲間と立ちむかう。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　夢でした。いや、過去形でいうことはありません。夢です。今も。叶うことなら、今すぐにでも来てほしい。迎えが。行きたい、そこへ。主さんの話、私の夢です。これからも来ますので、ぜひ綴ってください。話の邪魔をしてしまい、申し訳ありませんでした。

• 共感0

>> 2 いえいえ！とんでもないです。

嬉しいなぁ。
まさかレス貰えるなんて思ってませんでした。
ありがとうございます！

ペースは凄いゆっくりですが…宜しくお願いします。

• 共感0

私も主ｻﾝのｽﾚに何だか共感を覚えました☆私も小さい頃そう思ってたなぁ…って(^-^)
これから楽しみにしています！頑張って下さい！

• 共感0

>> 4 高校生さんもありがとうございます！

お二人の御期待に添え………ないだろうなぁ(笑)

創作初挑戦なんで大目に見てくださいね(^^;)

• 共感0

第１章

　　　『逢』

• 共感0

７月３日


とても気持ちのいい空だ。

透き通っていてどこまでも深く、見ているとそのまま吸い込まれてしまいそうな鮮やかな青。
ここのところずっと雨だったから余計眩しく見えるのかもしれない。




私は自転車をこいでいた。

この時間は下校途中の学生達で溢れている。

キャッキャと笑いながら走ってくる小学生。
ぎこちなく手を繋いで歩く初々しい高校生のカップル。

学生だったのなんてついこの間の筈なのに、
若いなぁ…なんて思ってしまう自分が悲しい。

• 共感0

ふと前を見ると。

向こう側の歩道を柴犬を連れたお爺ちゃんが歩いてきた。

……微笑ましいなぁ。

千切れんばかりに尻尾を振りながら飼い主の足元をチョロチョロ歩くワンコ。
かわいいな…何がそんなに楽しいんだろ。

あんまりチョコマカしてたら踏みつけられちゃうぞ。

…あぁハラハラするなぁ。
駄目だよ、進行方向にいちゃ…歳をとると反射神経鈍るんだからね。
…いや、私は違うよ？そんな歳じゃないけどさ…

あ、ほら、危ない………あっ！



『痛いっ!!!!』










足を踏まれた犬の悲鳴と被って、私の大きな声が辺りに響く。




…………。



…しまった―…。


思わず口に出してしまった。



何ごとだと皆が振り返る。

私は顔を真っ赤にして慌ててペダルを踏み込んだ。

• 共感0

これが。

今思えばこの瞬間が。

全ての始まりだったのだと…この時の私はまだ気付いていなかった。



気付くはずもなかった。

• 共感0

７月７日


いつもより早くに目が覚めた。
…早くといってもほんの30分なんだけど、それでも朝が違って見える。

私の部屋は４階だから、窓の前はすぐ電線だ。そこに並んでとまっていた雀がチュンチュンと鳴いた。朝だなぁ。


窓を開けて伸びをする。
ぼんやりと寝惚けた太陽の光が心地いい。
今日もいい日になりそうだ。


私は呟いた。




『今日は雨が降るよ…』









……………






………あまりに唐突だったので、自分でも驚いた。こんな天気のいい日に、私は何を言ってるんだか…と笑った。









…その日は快晴だったにも関わらず、午後から天気が崩れた。

• 共感0

７月８日


時々の友達との食事はとても楽しい。仕事の愚痴を言ったり聞いたり、最近の近況報告や馬鹿馬鹿しい話なんかであっという間に時間が過ぎていく。


今日は駅前のイタリアンレストランでピザの食べ放題コースに挑んだ。

私は、食べ放題だとかバイキングでは食べれるだけ食べないと損した気持ちになるので相変わらず限界まで挑戦した。友達と二人で、８枚のピザを完食した。

• 共感0

胃がパンパンに空気を入れた風船のようで、動く度に破裂しそうになった。少し気持が悪い。

やっぱりチーズがくどかったかなぁとか、最後に注文したピザ２枚がキツかったかなぁ…なんて思いながら帰り道を歩いていると。



一匹の猫を見つけた。

• 共感0

猫は、必死にごみ袋に顔を突っ込んで何かしていた。

そして。







『あぁ…腹減ったぁ…』







隣にいた友達が、

「まだ食べたかったの?!」

と驚いた。

• 共感0

何かがおかしかった。

私は気付かないふりをしていたのかもしれない。
これから来るであろう何かから逃げていたのかもしれない。


でも。


“彼女”はそれを許さなかった。

• 共感0

７月14日

冷蔵庫を開けたら何も入っていなかったので、仕方なく買い出しに出かけた。…何もではないけれど、バターと醤油と干からびた玉ねぎしか無かった。

きちんと鍵を閉めて。

マンションのエレベーターを降りて。

自転車置き場まで歩いていると。


『ねぇ。』


…誰かに呼び止められた。

• 共感0

「はい？」

すぐに振り返ったが、そこには誰もいなかった。
…そら耳だろうか。

私は向き直ってポケットから自転車の鍵を取り出した。すると…


『…ねえ！』


さっきよりも不機嫌そうな声。
でも、振り返ってもやはり誰もいない。
何？イタズラ？
誰か隠れているのだろうか？
私をからかっているの？




……その時ふと、頭をよぎった疑問。



“今の声はどこから聞こえたの？”




…後ろ？

…右？

…左？

…上？

…前？



…違う…



…違う。

• 共感0

『ちょっと！無視しないでくれる？』

どれとも違う。

この声の主は…


『私、ここでずっと待ってたんだから！』





……私だ。


私の声だ。

• 共感0

『ふぅん…なるほどね。』

私の口から勝手に出てくる言葉。声。

『里菜の言った通りだわ。
ねぇ、名前は？』

でもこの声の主は私ではない。この声の主は、おそらく私の目の前にいる…

『ねぇってば！何よ、先に私に名を名乗れってのかしら？…仕方ないわね…』

真っ黒で、スラリと長い尻尾をツンと上げて此方を見ている、

『私は沙万。サマよ。』





…綺麗な猫。猫だ。

• 共感0

『さ、名前は？』

「これって…」

何がなんだかわからなくて混乱している私を、猫は不機嫌そうに睨んだ。

『名前！』

「あ…さ、崎元　結…」

『サキモトね。』

「…どうして…」

どうして貴方は私の口を使って話をしているの？どうして話ができるの？

出てこなかったその先の言葉に猫は返した。

『さあね。』

にやり、と笑ったように見えた。

• 共感0

あの臭いがする。

何とも言えない嫌な臭い。
どこから来ているのかはわからない。強烈すぎて身動きがとれない。

耐えて、耐えて、たどり着く先が同じならば。


いっそ終わらせてしまうのも悪くない。




どんなにあがいても、

皆、そこに行かずには終れないのだから。

• 共感0