飛び下り

僕が数人の生徒たちと駆け付けたとき、洋平は崖っぷちに立たされていた。

ふるえる洋平に対し、その眼下から呼び掛ける声があった。


「泣き虫よーへー！どうせ飛び下りる勇気なんてないくせに、気取ってんじゃねーよ」


僕はその生意気そうな声の持ち主を一発で思い浮かべることができた。斉藤健児。餓鬼大将的な存在で、いつも洋平のことをからかっている中心人物だ。

僕は言った。


「はやまるんじゃない！やめるんだ洋平君」

「先生！で、でもボク、もういやなんだよ。皆に馬鹿にされ続けるの……耐えられないんだ！！」


すると、洋平が立っている場所の下からも声がした。


「先生、どーせコイツは飛びませんよ。コイツにそんな度胸ないっすから」


ゲラゲラと一緒になって笑う男子たち。


「っ……！と、飛んでやる。お前たちみんな、ボクの下敷きにしてペシャンコにしてやる！！」


肩を怒らせて怒鳴る洋平。まずい、自暴自棄になっている。


「よせ！死ぬかもしれないんだぞ！！？」


「このままでいるくらいなら、死んだほうがマシです。ボクは飛びます！」


言うや否や、洋平は助走をつけて勢いよく空へ舞った。

• 共感0

僕は駆け寄って彼の体をつかもうとしたが、間に合わなかった。

少年の体は、僕の目の前でゆっくりと落ちて行く。

まるで、時が止まってしまったかのように怠惰で緩慢な動き。

真下で、引き千切れそいなほど目を見開いているのは、健児たちだった。


そして、ついに運命の瞬間が訪れてしまったのだ。


今、洋平の体は地面と平行に横たわっていた。うつぶせになった顔の下からは赤い血が流出し、赤い水溜まりを生んでいる。


僕は自分の不甲斐なさを呪うと共に、思わずこう呟かざるを得なかった。


「……だから、階段から飛び下りちゃいけないってあれほど言ったのに」


「すっげー！本当に飛びやがった。おい洋平、お前けっこうやるじゃねーか！見直したぜ！！」

「う、うん。ちょっと鼻が痛いけど、思ったより大したことなかったよ」


「はいはーい。どいてどいてー！保健委員の自分が通りますよっと」


こうして、前人未到の階段12段飛ばしを成し遂げた洋平は、この町最強の階段ジャンパーとして君臨したのであった。


了

• 共感0

一応これで終わりです。

感想とかもらえたら、うれしいです。

• 共感0

>> 3 ふぇ～ん😫💦

大どんでん返し😞💧

鼻血で良かった😢

ハラハラ感と安堵感と怒りとか色んな気持ちが出ました😄

短編なのに凄いですね😄

• 共感0

旅人４さん、感想ありがとうございます😊

途中に誤字があったみたいで申し訳ないです😣

小説を書くのはあまり得意ではないのですが、もしまた見掛けることがありましたら、どうか読んでやって下さいませ🙏

• 共感0

>> 5 はい😄🎵

お見かけしましたら
読ませていただきますね😄

• 共感0

はじめまして🙇🙇面白かったです😃まさか階段と言うオチとは😱😱誰かモデルとかいらっしゃるのですか？(^^)v

• 共感0

感想ありがとうございました😊

はい、階段から飛び下りて鼻血を出してしまったのは、自分の昔の体験談です😔

幼稚園に通っていたころ、友達とどちらがより高い場所から飛び下りられるかを競っていて、その時にやってしまったんですね😣

• 共感0

>> 8 どうりでリアルだと思いました。逆に私は子供の頃は運動神経が悪く、臆病でしたので、そういう事はしたことが無かったですが、最近、仕事とかで色々ありまして、ヘルニアにも関わらず、バンジージャンプをしたいと考えています。なんかバンジーが出来たら成長出来る気が無性にするんです。でもかなりの高所恐怖症で正直、迷ってましたが、あなた様の小説を読んで勇気を貰いました。本当に有難うございます🙇🙇🙇🙇

• 共感0