✏携帯小説✏🐬🌟光の愛里🌟🐬
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生まれながらにして重度の聴覚障害を持つ少女【水野愛里】…彼女は障害というハンデを乗り越え、今を精一杯生きる為に自分と闘う…この物語は太陽一杯の南国沖縄の孤島を舞台にイルカの調教師を目指す一人の聴覚障害者の少女の感動のストーリーである…🐬
📓水野愛里(主人公)
📓鳥羽聡(愛里の幼なじみ)
📓水野晋作(愛里の祖父)
📓早乙女陽子(愛里の母)
📓水野政信(愛里の父)
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🐬序章🐬
【わたしの夢~南錦小学校4年1組水野愛里】〔私は大きくなったらイルカさんのサーカスのお姉さんになりたいです…何故ならイルカさんはとっても賢くて優しい動物だからです…こないだ私はイルカさんとお話をしました…イルカさんは優しく私に言いました…『もう一人じゃないんだよ💕』って…〕
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【さぁ皆様‼これからアシカの太郎と花子がボール遊びに挑戦致しま~す‼上手く出来たら拍手をお願いしま~す💦】満員の観客が見守る中、中央のメインステージでトレーナーの上原恵はアシカのショーを仕切っていた…二頭のアシカが代わる代わるボールをポンポンと鼻でつつき上げながらお互いの鼻でキャッチボールをし出した…それを見た観客は一斉にウワァ💕と歓声を上げる…『はぁ~い‼今日の太郎と花子はとぉ~ても機嫌がいいみたいで~す‼昨日のお客様にはここまでしなかったのにねぇ💦…え❓何❓太郎…〔今日は美人が多いから気合いが入る〕だってぇ‼❓…聞きました❓皆様~💦』恵の冗談に観客席から一斉に笑いが起こる…『はい、では皆様💦…これで〔太郎と花子のアシカショー〕は終了致します‼この後もここ南錦マリンワールドでごゆっくりお楽しみ下さい…💦』恵は観客に手を振ると見ていたお客は一斉にスタンディングオベイションをして恵とアシカ達の演技に一喜一憂していた…『有難う‼有難うございま~す💦』華麗に観客に手を振るすぐ側でショーアシスタントの水野愛里はアシカの行ったショーの後片付けを黙々としていた…『お姉さんカッコイイ~‼💕』『アシカさんバイバ~イ💦』遠足に来ていた幼稚園の団体がヤンヤヤンヤとトレーナーの恵の側に駆け寄りイルカやアシカの生態やどんな食べ物が好きか等をやつぎばやに質問してくる…『凄い人気よね~あのトレーナーさん‼』『だって面白いんだもん💦冗談とか凄く上手だし…ママ💦…またこのショー見たい~💦』愛里とすれ違う観客の親子連れがそんな事を笑顔で話し、帰って行った…(……フゥ💨)愛里は一度ため息を付くとアシカが使用した輪投げの輪やボールをせっせと片付けていた…
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沖縄県本土から南東へ約100km…美しい珊瑚礁と抜けるような青よりも青い空…沢山の琉球樹木に囲まれた常夏の楽園〔南錦島〕…周囲80km程のその小さな島にある【南錦マリンワールド】…沢山の熱帯地方の魚達や海の生き物達がすぐ目の前に見える水族館とイルカやアシカ、鯱のステージショー等が連日開催されている巨大プールの二つからなる東京ドームがすっぽり3つは入る敷地にそれは存在した…【皆様~💨只今より水族館玄関前にて可愛らしいペンギン達によるパレードが始まります‼…是非お子様とご一緒にお楽しみ下さいませ…💦】夏休みの日曜日とあって本土や本州からも観光客が詰め掛け、現地は大賑わいだ…『え❓…あ、はいはい💨…館長が呼んでるんですね‼分かりました💦すぐ行きます…』『チーフ💦…どうします❓セイウチの餌付けショーは中止にします❓』横で若いスタッフの一人が汗をかきながら慌てている…『仕方ないな💨…セイウチの〔菊千代〕が風邪なら無理させられないからな💧』若いスタッフは首をあやふやに振るとセイウチの飼育員のいる場所に一目散に駆けて行った…
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『悪いね鳥羽君💨忙しいのに…』マリンワールド事務局の奥にある館長室で館長の水野晋作は鳥羽聡を労った…水野晋作は先代からこの南錦マリンワールドを引き継いだなかなか経営手腕のあるもうすぐ78歳を迎える老人館長だ…『…例の件…ですよね❓』鳥羽の耳から架けているピンマイクの無線からはひっきりなしにスタッフから館内の状況が報告されている…『しかし困ったもんだ💨…ショーの全てを仕切ってくれていた上原君が産休となると…彼女の代わりにショーを仕切るトレーナーが居なくなるんだよ💧』『…そうですよね💨1日2日なら僕が代役を務める事が出来ますが毎日となるとちょっと💦…』『そりゃ君は無理じゃ💦…いくらトレーナーの経験が豊富だといえ君は館内を統括するチーフという立場なんじゃから…💦』晋作はタオルでキコキコと鯨の置物を拭いている…聡はそれをじっと眺めながら一呼吸置いて晋作に言葉をかけた…『館長…〔愛里〕では無理でしょうか❓』晋作の手が止まった‼…晋作は暫く考えた後にまた置物を拭き出した『愛里はもう4年間もサブトレーナーとして上原の元で勉強してきました…2頭のイルカの事も熟知しています💦…そろそろやらせてみる価値はあるんじゃないかと…💧』晋作は振り返り黙って椅子に腰掛けた…聡はじっと何かを考え込む晋作の姿を見ていた…『鳥羽君…💧君には話していなかったんじゃが…愛里に以前一度だけショーを仕切らせた事があったんじゃ…じゃがその時あの子、大きなトラブルに陥ってな…』『トラブル…💦ですか❓』『ショーの進行が上手く行かず見ていた観客を怒らせてしまったんじゃよ…💧』『と、申しますと❓』晋作の顔が曇り聡はそれ以上話を切り出していいのかどうか迷っていた…
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『ハイ…ドリー、ナナ💦…餌ノ時間ダヨ…コッチ来なサイ…』
誰も居ない室内プールで愛里は二頭のバンドウイルカ〔ドリー〕と〔ナナ〕に食事をさせていた…
『…食ヨク…旺盛ダネ…ドリー💧…最近太っタンジャナイ❓…お腹マワリプクプクダヨ…‼』
バケツの鯖を丸ごとドリーの口に放り込みながら愛里は一度フゥ~💨と深いため息をついた…
『愛里‼…あ、い、り💦‼』
後ろからポン💨と肩を叩かれ振り向くと仕事上がりの恵が立っていた…
『ねぇ愛里…今日の💦…二回目の💦…ステージの時…にね💦…イルカと…私の…間に…💦…立っちゃ…💦駄目…‼…ドリーが💦…混乱…して…たから💦‼』
恵は愛里に手話を使って笑顔で丁寧に話した…今日のイルカショーの最中に誤ってプール前に出た愛里の姿を見た二頭のイルカが恵の指示を無視して違う動きをしたからだ…
『私達…同じ服💦…だから…イルカ…💦は…この制服…を💦着ている…トレーナー…に💦指示を…忠実に…貰おう…と💦…するから…💦』
愛里よりも少し後にこの世界に入った上原恵は水野愛里の良き友達であり良きライバルでもあった…この職場に来て以来、障害をもつ愛里を同情したり嫌がったりする素振りは微塵も見せず、ただひたすら愛里のそばで健常者と同等に愛里と向き合って来たのだ…
『…メグ…ワカッた💧…アリガト💦…注意シテクレテ…』
愛里は恵のアドバイスを素直に受け止め、再びイルカに餌をやり始めた…愛里は仕事には厳しく一切妥協しない上原恵を心から尊敬していた…反面、自分とのコミュニケーションを取ろうと仕事多忙の中、必死で手話を覚えて、意志の疎通を図ろうとしてくれた優しい彼女も愛里は心底大好きだった…
(フゥ💨💧…私が休んだら…ここのショーは一体どうなるんだろ💦…)
愛里のぎこちなくイルカに餌をやる後ろ姿を黙って見つめながら恵は腕組みをしながらうつ向いて深いため息をついた…
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『以前一度だけ上原君が風邪で休んだ時に愛里にイルカライブショーの代役を頼んだ事があったんじゃよ…』
鳥羽聡はじっと晋作の話を聞いていた…
『事前にテープに上原君の言葉を録音しておいて愛里にはその言葉を頼りに口パクでショーを演じて貰うつもりだったんじゃが…💧』
晋作の目線が落ちた…聡は無線に入るスタッフの声に耳を傾けながら
『…駄目…だったんですか❓』
『初めは順調だったんじゃが…終盤突然テープの音が館内に届かなくなるトラブルがあってな💦…その音頼りにショーを演じていた愛里は急に自分の耳に録音の言葉が入って来なくなった事に動揺してしまいパニックに陥りその場で演技を止めて蹲り泣き出してしまったんじゃよ…💧観客からは〔何をしてんだ💢‼〕〔早くショーを続けろよっ💢‼〕とあちらこちらから罵声を浴びて…耐えきれなくなって愛里はそのままスタッフルームに閉じ籠り二時間もそこから出て来なかったんじゃ…💧』
『そんな事があったんですか…💦』
聡は腕組みをしながら黙り込んだ…
『ワシが悪かったんじゃ💦…あの子の障害の事も慎重に考えてやれずただその場の穴埋めをすればいいという安易な考えが…あの子をさらに深く傷つける結果になってしまったんじゃよ…💧』
晋作は聡をじっと見つめながら
『なぁ鳥羽君…ワシは小学校からの愛里の幼馴染みとして、そしてこの館内を取り仕切るメインチーフの立場として君に聞きたい…💧あの子…愛里はこの先あんな障害を持ってこの仕事を続けられると思うかね❓』
晋作はしわくちゃの顔を一度両手でスッと撫でため息をついた…聡は此処の館長であり、愛里の実の祖父でもある水野晋作のその言葉に答えを返す事が出来ずたださっき晋作が拭いていた鯨の置物をじっと見つめていた…
- << 9 🐬6🐬 《先天性中枢性難聴》…これが水野愛里の産まれながらに宿命を背負わざるを得なかった彼女の病名である…愛里が3歳の時、両親は何度呼びかけても反応しない愛里の体の異変に気付き、病院に連れて行った時医師から告げられた辛い現実だった…彼女の母陽子は夫と離婚した後、障害を背負い生きていかなければならない愛娘を不憫に思うが故に自らも深刻な鬱状態となる…娘を育てる事が出来なくなり施設に預ける事を覚悟した時、別れた夫の父親であり愛里の祖父である水野晋作が彼女を預かりたいと申し出た…晋作は可愛い孫を施設に預けるくらいなら自分の住む南国沖縄の綺麗な海と空のもとで自由に伸び伸びと育ててやりたいと思っていたからだ… (この先…この仕事を続けていけるか…か…) 閉園後、聡は誰もいないイルカの調教プールの脇にしゃがみこむとさっき館長の晋作に言われた事を思い出していた…プールの中で仲良く泳ぐドリーとナナを見つめながら聡は唇を噛んだ… 『何シテルノ❓…サトシ…』 腕捲りをしてデッキブラシを持った愛里が従業員控室から出てきた 『…💦何だ…まだ…💦居たの…💦か…』 聡は心の中を見透かされたような少し恥ずかしい気持ちになりながら組んでいたあぐらを崩して立ち上がり、手話で返した… 『…私ハマダプールサイドノ掃除残ッテル…カ…ラッ…コレガ終わっタラ…帰ル…💦』 愛里は言葉を選ぶようにゆっくりと聡に話しかけた… 『大丈夫💦…か❓…』 『ン❓…何ガ❓』 『…い、いや💧…何でも…💦ない💦』 聡は視線を泳がせながら空の客席のほうを向いて黙り込んだ… 『それ…💦終わったら…💦飯でも…💦食いに行か…💦ないか❓』 初対面や声質の低い人相手には手話で会話する癖がついている愛里だが、祖父の晋作や聡などの付き合いの長い人間には殆ど手話を使わずに口元の読心術や身振り手振りで意志の疎通が出来るようになっていた… 『イイケド…💦サトシ…手伝ッテヨ‼二人デスレバ早くオワルカラ…』 愛里は控室からデッキブラシを持ち出して聡に手渡した…
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『以前一度だけ上原君が風邪で休んだ時に愛里にイルカライブショーの代役を頼んだ事があったんじゃよ…』
鳥羽聡はじっと晋作の話を聞…
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《先天性中枢性難聴》…これが水野愛里の産まれながらに宿命を背負わざるを得なかった彼女の病名である…愛里が3歳の時、両親は何度呼びかけても反応しない愛里の体の異変に気付き、病院に連れて行った時医師から告げられた辛い現実だった…彼女の母陽子は夫と離婚した後、障害を背負い生きていかなければならない愛娘を不憫に思うが故に自らも深刻な鬱状態となる…娘を育てる事が出来なくなり施設に預ける事を覚悟した時、別れた夫の父親であり愛里の祖父である水野晋作が彼女を預かりたいと申し出た…晋作は可愛い孫を施設に預けるくらいなら自分の住む南国沖縄の綺麗な海と空のもとで自由に伸び伸びと育ててやりたいと思っていたからだ…
(この先…この仕事を続けていけるか…か…)
閉園後、聡は誰もいないイルカの調教プールの脇にしゃがみこむとさっき館長の晋作に言われた事を思い出していた…プールの中で仲良く泳ぐドリーとナナを見つめながら聡は唇を噛んだ…
『何シテルノ❓…サトシ…』
腕捲りをしてデッキブラシを持った愛里が従業員控室から出てきた
『…💦何だ…まだ…💦居たの…💦か…』
聡は心の中を見透かされたような少し恥ずかしい気持ちになりながら組んでいたあぐらを崩して立ち上がり、手話で返した…
『…私ハマダプールサイドノ掃除残ッテル…カ…ラッ…コレガ終わっタラ…帰ル…💦』
愛里は言葉を選ぶようにゆっくりと聡に話しかけた…
『大丈夫💦…か❓…』
『ン❓…何ガ❓』
『…い、いや💧…何でも…💦ない💦』
聡は視線を泳がせながら空の客席のほうを向いて黙り込んだ…
『それ…💦終わったら…💦飯でも…💦食いに行か…💦ないか❓』
初対面や声質の低い人相手には手話で会話する癖がついている愛里だが、祖父の晋作や聡などの付き合いの長い人間には殆ど手話を使わずに口元の読心術や身振り手振りで意志の疎通が出来るようになっていた…
『イイケド…💦サトシ…手伝ッテヨ‼二人デスレバ早くオワルカラ…』
愛里は控室からデッキブラシを持ち出して聡に手渡した…
物語に引き込まれてしまっています。昔見た水族館でのイルカショーが鮮明に蘇ってきます。あの時のイルカショーも裏では色々大変な事もあったのかな?とか興味津々です(^-^)続き楽しみに待っています。
度々レスを汚してすみませんm(_ _)m
>> 10
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南錦島唯一の目抜き通りの中にある琉球料理専門店〔クイナ〕…今日も島の漁師や観光客で店内はごった返している…
『ヒェ~💦…相変わらず混んでるなぁ~…💧予約しとくんだった💦』
聡は愛里を連れてよく此処に来る…聡の実家は父親と二人暮らし、母親を早くに病気で亡くし、兄は20歳の時単身上京し、飲食店で修行した後、経営のノウハウを学び此処南錦島に帰郷する予定であったが何故か身入りの良い大都会東京に住み着き、今やスナックを幾つか経営しているなかなかのやり手オーナーらしい…
〔ウチ帰っても厳めしい顔の親父一人だけだからさ💨…ハハハ💦酒も進まないよ💨〕
そういっていつも聡は何かある事に愛里を晩御飯に誘うのだ…
『フゥ💨…風…気持ちいいな💦』
夜になると南から吹き付けて来る風が心地よく肌に絡まる…此処南錦島は非常に凌ぎ易い…気象学的に気圧還流に適した位置にあるせいか、湿度は沖縄本土や本州に比べれば雲泥の差だ…
『何か…喋れよ💦…』
聡は店の客席が空くのを待つ間表の芝生の上で愛里と座っていた…
『何カッテ…何❓💧』
愛里は一度視線を聡に向けたが聡が自分を見た瞬間また視線を前の夕闇迫るオレンジの海岸線にやった…
『恵…産休に入っちまうな💦…』
気まずい沈黙を破るかのように聡が先に切り出した…
『…ソ…ダネ…💧』
水野愛里はどんな男が見ても一度は振り向く程の美貌だった…背はモデルのように高く、軽く栗色に染められたショートヘアーに長い手足…目は吸い込まれる位大きくて澄んでいた…
『サトシ…実ハネ💦…愛里…モ…💦サトシニ…話ガ💦…アッタノ‼』
深いオレンジ色の南太平洋独特の濃い夕焼けが愛里の顔にゆっくりと陰を作っていく…芝生の上で三角座りする膝に置かれた愛里の小麦色に焼けた細く整った指先はモジモジと何かを言いたそうに絡んではほどけ、また絡む…
『…何だよ💨言ってみなよ💦』
聡は愛里の綺麗な指先に目線を落としながらぎこちなく尋ねた…
『愛里ネ…💧コノ仕事…辞めヨッカナッテ…考えテル💦…』
『…え❓💦』
>> 11
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『や、辞めるって💧…イ、イルカの調教師…💦をか❓💦』
予期していない突然の愛里の言葉に聡の声はシドロモドロになり愛里は思わず眉を潜め、
『エッ💧…ゴ、ゴメン、今何テイッタ❓…聞きトレナカッタ…💦モウ一度💦お願イ…‼』
幼少期から付き合いのある聡の言葉でさえ読み取れないこんな場合、愛里は初対面の人にするように聡にもハッキリと解るように手話で聞き返す癖が付いていた…
『あ💧…ご、ゴメンゴメン…あ~💦…何故💦…仕事…💦…辞め…たい…の💦❓』
聡はゆっくりと愛里に手話で問いかけた…
【え~2名でお待ちの鳥羽様‼鳥羽様いらっしゃいますかァ~💦】
店の中から年配の店員が聡達の順番を呼んだ…聡はアァ~💧と両手を広げ会話に水を刺された事を残念がった…
『ま💨…中で…💦ゆっくり💦…話そっ‼』
聡は愛里の肩をポン💨と叩くと二人は賑やかな店内の隅のテーブル席に座った…店の壁には所狭しと漁師町らしく色とりどりの大漁旗が飾られていてまるで海賊か何かの船の船内に紛れ込んだような騒ぎである…
『あ~…俺はこの琉球蕎麦焼酎、…で、彼女は💦あ~愛…💦里💦…パインサワー…💦…で…良かった…っけ💦❓』
手話で愛里に注文を聞く聡の姿を見て伝票を構えた若い新人店員は初めての爬虫類を見るかのような好奇で不思議そうな顔をして眉を潜めて愛里をジロジロと眺めながら承知しましたと席を離れた…
『…気にすんなって💨』
聡がメニューを開き何食べたい❓と愛里の前に差し出した…愛里はひたすらうつ向いて顔を上げようとしない…聡は意を決して一度ため息を付いた後、愛里‼と呼んだ
『……おじい…💦あ、いや、館長から💦…聞いたよ💦…ライブショーで💦…お客さんに💦…野次られ…たん💦…だって💦❓』
愛里は顔を上げ、聡の放つ手話の意味を確認だけするとまたうつ向いてしまった…
『だって‼…あれ…は💦…愛里の…💦せいじゃ💦…ないだろ‼…事故…💦そう、事故だっ…💦たんだよっ💨そんな事で…💦』
『…‼…ソンナ事❓…今〔ソンナ事〕ッテ言っタヨネ💦❓』
聡の〔そんな事〕に反応して愛里の目が光った…‼
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『サトシ…愛里ガズット前カラ2頭ノイルカノ訓練シテルノ…知っテルヨネ❓』
『あ、あぁ💧…し、知ってる…』
愛里は下を向きながら淡々と聡に言葉を投げ掛ける…耳に付けた桃色の貝殻のイヤリングが愛里が指を動かしながら話す度にフラフラと孤を描く…
『最近ネ…〔ドリー〕ト〔ナナ〕ガ私ノ言うコト…聞かナクナッテ…キテルノ💦』
『言うこと聞かない❓…それっ…💦て…どういう…💦意味❓』
聡の言葉が終わるか終らないかの時にさっきの店員がお待たせしました💦と飲み物を運んできた…会話に水を刺された事に聡は少し戸惑いながら再び愛里にその理由を聞いてみた…
『多分…私ノ言っテル言葉ガ理解デキナクナッテ来てルノ…💧アノ子タチ…』
聡は焼酎のグラスを持ち、渇いた喉に一気に流し込みたい気分になっていたが愛里の話を聞くのが先と判断し、静かにグラスを持つ手を離した…
『愛里ネ…イルカのライブトレーナーニ成りタクテ…毎日頑張ッテ来タ💦…ダケド愛里段々話ス事ガ出来ナクナッテ…キテルミタイ💧』
『それってつ…💦つまり…耳の…💦病気が…💦進行して来てる…って💦事❓』
愛里はコクリと頷いた…店員が注文を取りに来たが聡はもうちょっと待ってくれと制止した…
『サトシはモウ解っテルヨネ❓…愛里ノ耳ノ病気ハ歳ヲ取ル度ニ段々酷クナル…キットイツカハ…愛里ノコノ耳ハ全ク聞こえナクナルンダ…💧ソシタラ…モウ…コノ仕事…続けルコト…出来ナイ…💦』
『だから…今のうちに💦…かろうじて聞こえている今のうちに…💦辞めたい…💦そう言う…💦んだな❓』
聡は頭を無造作に掻きむしるとアァ~💧とため息を付いた…
『じゃあ…💦辞めて…此処辞めて💦…愛里…お前💦…どう💦…するんだよっ💦』
聡の手話は興奮してくると回転が早くなり愛里には何が何だか解らなくなってくる…
『…今ノ…解らナイ💧…手話スルナラ…モットキチント話しテ💢‼』
愛里は意思の疎通がままならない聡との会話に苛立ちながら目の前に置いてあったパインサワーをグイッ💨と一気に飲み干した…
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〔歳ヲ取る度ニ…愛里ノこノ耳…段々聞こえナクナッテキテルノ…〕
…聡はトイレの中で用を足しながら愛里のさっきの言葉を思い返していた…イルカのトレーナーからマリンワールドの統括責任者になった経緯もあり、鳥羽聡はイルカに正しい行為を命令する時、トレーナーが放つ〔的確な発声〕が一番大切な要素である事を知っていた…正しい発声でイルカに次の動きを指示出来ないとイルカの統率に微妙なズレが生じ、それだけでライブショーとして成り立たなくなるからだ…でもどう頑張って努力しても聴覚的ハンデを抱えた愛里にそれは不可能な事だった…
(マリンワールド内の他の業種なら…まだ何とかしてやれんだけどなぁ💧…アイツ…どうしてもイルカのライブトレーナーにこだわってるもんな…)
聡は手洗い場の鏡で自分の姿を眺めながら自分の無力さを痛感していた…居酒屋のトイレから出てきた聡は愛里の前に座り、
『ま、仕切り直しだ💨…とんかくもうちょっと考えてからでも遅くないだろ❓な、愛里…』
注文したゴーヤチャンプルーと豚の角煮をつつきながら聡は愛里に食べないと冷めるぞ、と箸を勧めた…
『コンナ…💦』
愛里の動きが止まった…
『ん❓…どした❓』
聡も箸を止める…
『コンナ…声ガ牛蛙ミタイニ汚クテ…何ヲスルノモ…ノロマデ役立タズノ私ニ…一体コレカラ先何ガ💦…何ガ出来ルッテ言ウノヨッッ💢💢…‼』
愛里は泣きながら店を飛び出した‼
『お、おい、愛里っ‼』
聡は後を追ったが店の外にはもう愛里の姿はなかった…外は南国独特の緑がかった月の陰影が穏やかな南錦の海をコウコウと照らしていた…
>> 16
🐬11🐬
人気のない狭い民家の路地で愛里は膝を抱えてじっと蹲っていた…月夜に照らされた足元のすぐ目の前にはうっそうとした竹林が広がり今にも野生のハブが襲いかかって来そうな薄気味悪さだ…波の音がやけに耳につく…いつもなら大好きな南錦の月に照らされた闇夜の光景もこんな落ち込んだ日にはまるで孤独の悪魔のように映る…
(ハァ💨…)
深いため息をつくと愛里は腰を上げた…
『ねぇねぇ💦…カノジョ‼…』
いきなり背後から肩を叩かれ愛里は心臓が止まりそうになった…振り向くとアロハシャツを来た愛里と同じ歳くらいの若い男性が立っていた…
『……💦』
愛里は驚き後退りしながら二人の男の顔をじっと見つめた…
『こんな所で何をしてんの❓フフフ…💨』
目付きの悪そうな小太り角刈りの男が愛里に話しかけた…
『……💧』
『ナァ~んだ💨…お口無いのかなぁ~❓…よぉ~く見るとアンタ…可愛い顔してんなぁ‼』
どうやら本土からやって来た観光客らしい…愛里はお呼びでないといった素振りで二人の男から去ろうとした瞬間‼もう一人の痩せ型のサングラスの男が愛里の二の腕を掴んだ‼
『何シカトしてんだよっ💢💢ちょっとこっち来いよ‼』
そう言うや否や二人の男は愛里の腰を持ち上げ一気に竹林の茂みの中に引きずり込んだ‼‼…
『愛里っ💨…お~い💦…愛里ぃ~‼』
後を追い掛けて来た聡は町のはずれの石垣の神社の前まで来ると膝を付いて荒い息を整えた…
(ハァ💨💧ハァ💨💧…もう家に帰っちまったのかなっ💦ハァ💨ハァ💨)
聡はそう考えると明日愛里に逢ったら何て言おうかとあれこれ考えを巡らせながら元来た道を引き返した…その数m離れた道路脇に愛里の履いていたサンダルが転がっていた事もわからずに…💧
>> 17
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『暴れてんじゃねぇよ💦…すぐ気持ちよくさせてやっからよっ‼』
男達はうっそうと生い茂る竹林の奥に愛里を引きずり込むといきなり愛里の体を押し倒し押さえ込んだ‼
『グゥ…💦ガッ…ギィ~‼イ、イヤァァァァァァァァァ💢💢💢‼‼』
愛里は必死に今持っている限りのありったけの声を張り上げた‼男達は一瞬何処から声を出しているのかと驚いた‼その叫び声は若い女性が上げる一般的な女性の悲鳴ではなくまるで今まで聞いた事もないような地獄からの断末魔の声にも聞こえたからだ‼
『う、うわっ💧…な、なんだこの女っ❓…』角刈りの男が愛里のその声にひるんだ‼
『バカ野郎💢💦腕離すんじゃねぇ‼』
もう一人のサングラスの男が愛里の両足首を押さえながら叫んだ‼
『ガァァァァァ💢‼‼ギヤァァァァァァァ💦‼‼💢』
愛里にとって、その悲鳴は助けが来るようにと必死にあげたつもりの声のつもりだったが、愛里の発する声はさほど大きいものではなく、その叫び声の連鎖は次第に竹林の闇の中にかき消されていった…
『……💧おい、ヤス…もしかしたらこの女…耳が不自由で声出すのが下手なんじゃないのかな💦❓』
愛里を押さえていたサングラスの男が以前親戚にも同じような病気のヤツが居たと角刈りの男に説明した…
『え💨…まじで❓…じゃあ声を上手く出せないってのか❓…イヒヒヒ💧…そいつぁ好都合だぜ‼』
角刈りの男は愛里の両腕をグイッと地面に抑え付けると愛里のお腹の上に馬乗りになりジロジロと愛里の顔を舐めるように見つめた‼
『ンガッ💢…ハナ💦…ハナ…セ💢…ンンッ…ハナ…セヨ…ッテ💦』
想像もしない最悪の状況に愛里の声は声にならず興奮すればするほど言葉にならなくなっていた‼
『ハハッ💦…こりゃいいや‼…声が出せないんじゃこっちも仕事が捗るってぇもんだっ‼‼』
次の瞬間、愛里の着ていたTシャツが勢いよく破かれたっ‼
『ンヤァァァァァァァァッ💨💦ンガァ💨…ンンッ‼💢』
>> 18
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『ンヤァァァァァァァァ💢💢💢‼‼』
破られたTシャツから下着が見えた‼
『ほら💦騒げよ‼…イヒヒヒ💦…声出して助けて~って言ってみろよっ‼』
角刈りの男が力ずくで愛里の手首を持ち暴れる愛里の頬をぶった‼
『ギィ💦‼…』
愛里は必死で抵抗したがやがて力尽き、放心状態になってしまった…全身の力が抜けてまるで操り人形の糸がプツンと切れたように…
『……観念したか💦…イヒヒヒ…最初から暴れなきゃいい思い出来たのによっ💦』
愛里の目から悔し涙が溢れ出た…声さえ…普通に人並みの女性が上げるカン高く威圧感のある声さえ上げる事が出来たなら…💦
(助ケテ…💧サトシ…助ケテ…お願イ…)
サングラスの男が愛里のスカートの中に手を入れ、パンティを脱がそうとしたその瞬間‼馬乗りになっていた角刈りの男の体がフワッと宙に浮いたかと思うと鈍い音がして男は愛里の横に口から血を流し倒れこんだ‼
『‼…だ、誰だ💧‼』
サングラスの男の手が愛里の足首から離されたと同時に聞き覚えのある安心感のある声がして愛里は起き上がった‼その怒りに燃えた憎しみの怒鳴り声は難聴の愛里の耳にもハッキリと聞き取れた…
『クゥォッラァァァァ💢💢💢‼‼その汚い手を愛里からどけろォォォォォォォォォォ💦💦💢💢‼‼』
愛里の露になった太ももの上に男達らしき血の滴が付いている…
『グハッ💦…ゲホッ💨』
男達は聡の怒りの拳を顔面に受け、ひきつりながらチクショウ💢を連呼しながらその場を去って行った…
『だ、大丈夫だったか‼❓何もされてないな❓愛里っ‼愛里っ💦‼』
その拳の主は鳥羽聡だった…
『サト…シ…サトシ…サ…サトシィィィィィィ‼‼』
張り詰めていた緊張が塞き止められていたダムの水のように愛里の心を解放した‼
『サトシィィ💦💦』
愛里は聡に抱きつくとありったけの力で聡を抱き締めた…体は恐怖からかまだガクガクと震えて愛里は何度も力無い声で聡の名前を呼んで泣いた…
『大丈夫…もう大丈夫だ💨…怖い思いさせたな💦…愛里…ゴメンな💧』
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『震え…止まったか💦❓』
聡は愛里に冷たい麦茶を手渡すと愛里は少し震える両手でしっかりとコップを持った…二時間もの警察の事情聴取を受け、聡は愛里をひとまず近くの自分の家に連れてきた…
『チキショッ💢ったく何処のどいつだ💢‼可愛いい愛里をこんなひでぇ目に遭わせるヤツらはっ💢‼俺が見つけたらタダじゃおかねぇからな💢‼』
聡の父鳥羽照志は泡盛のグラスを片手に村中に聞こえるような声で喚き散らした‼
『ハァ💧…酔っ払いは…💦無視して…💦部屋に来いよ💨さっき…💦館長には…💦今日は愛里を…💦ウチに泊めるって…💦言ったから…💦』
聡は足取りのままならない愛里の肩を持ちながら自分の部屋に愛里を招いた…
『ほら、蚊が…💦入るから…💦この蚊帳の中に…さ‼』
聡は網をあげ蚊帳の中に愛里を座らせた…縁側から虫の音色や蛙の合唱が休みなく寄せては消える…
『これ…💧男もん…💦だけど…いっか❓💦』
聡は箪笥から漢字で〔翔〕と書かれた赤いTシャツを愛里に手渡すと着替えろと勧めた…愛里は恥ずかしそうについさっき自分のシャツを脱いで愛里に羽織ってくれた聡の紫色のチェック柄のそれと交換した…
『💨ま💧…まあ…良かった…💦何もなくて…さ💨』
聡は蚊帳の中に敷かれたタオルケットに横になると煙草に火を付けた…
『アリガト…サトシ💦』
愛里はうつ向きがちに聡に言葉をかけた…
『ハハッ…いいよ💨…愛里が…💦無事だった…💦それだけで💕…何てったって…💦俺はお前の…💦兄貴変わりみたいな…💦もんだから💨』
聡は寝そべりながら愛里に手話で答えた…
『…ア…💧…兄…貴…カァ💨』
『ん❓何か言ったか❓』
『ンンッ💧…ナ💦…ナンニモ💨』
聡は組んだ膝の上をポリポリ掻きながら蚊帳の中に紛れ込んだ蚊の1匹を殺そうと必死になっていた…
>> 20
主です‼
光の愛里🌟皆様からのご意見ご感想お待ちしています🐬
自由人様💕いつも応援していただき本当に嬉しく思っております…誠に有り難うございます🐬愛里はこれからもまだまだ続きます✌つたない小説ですがどうか優しい目で見守ってやって下さい…他の読者からのメッセージもお待ちしています🐬
- << 23 🐬15🐬 『鳥羽君💦…昨日は愛里を助けてくれて有り難う…ほんと何とお礼を言えばいいか💧』 3日後に聡は館長室に呼ばれ晋作に感謝の言葉を受けた… 『いえ…💦こないだの愛里の状況じゃすんなり家に帰るとは考えられなかったもので💧…あちこち探して回ってて結果オーライでしたよ💨最近の観光客はあんな奴らも増えて来てますから気をつけないと…』 聡は学生時代から空手をやっていたせいで襲われていた愛里を見つけるや否や思わず手が出てしまったと頭を掻いていた… 『…で愛里は…大丈夫ですか❓』 『あぁ…💧流石に翌日は仕事休ませたが…今日から元気に出て来とるみたいじゃ…』 『そうですか💨』 聡は微笑んだ… 『…ショックじゃったろな💧愛里のヤツ…悔しくて仕方なかったじゃろて…💦』 晋作は書類に印鑑を押しながらかけていた眼鏡をその持っていた印鑑でクイッと持ち上げながら哀しげに呟いた… 『…あの晩どうして私は皆と違うの❓私だけ声が出ないの❓…って…散々泣かれました…💧襲われそうになった事よりもむしろ声が出なかった事が相当ショックだったみたいで…💧』 『やはり無理なんじゃよ💦…イルカと交流するのはな…ベテラン健常者トレーナーとて簡単にこなせない難しい仕事なのに…障害のある愛里に出来る訳がない…そう思わんか…鳥羽君っ💨』 聡はうつ向いて黙っていた…館内放送で午後のアシカショーの告知アナウンスが流れる… 『……館長…愛里の事は俺に任せてくれませんか❓…何とかしてトレーナーではなくてもこのマリンワールドで愛里が出来そうな職種をさせるように説得してみますから💦』 晋作はじっと考えた後 『…すまんのぅ…いつもいつも💨愛里の事ばかり頼んで…』 と聡に苦笑いの視線を投げかけた… 『…いぇ…大切な幼馴染みですから💨…放っておけませんよ💦』 聡はそれだけ言うと部屋を後にした… 『……フフフ…放っておけない…か💨』 晋作は視線をまた机の書類に落とした…
10~15まで、一気に読んでしまいました。まるで、映画かテレビでも見ているかのように情景が浮かびハラハラしました。主さんは、やっぱりスゴいと思います。また続きを楽しみに待っていますので、よろしくお願いしますm(_ _)m
>> 21
主です‼
光の愛里🌟皆様からのご意見ご感想お待ちしています🐬
自由人様💕いつも応援していただき本当に嬉しく思っております…誠に有り難う…
🐬15🐬
『鳥羽君💦…昨日は愛里を助けてくれて有り難う…ほんと何とお礼を言えばいいか💧』
3日後に聡は館長室に呼ばれ晋作に感謝の言葉を受けた…
『いえ…💦こないだの愛里の状況じゃすんなり家に帰るとは考えられなかったもので💧…あちこち探して回ってて結果オーライでしたよ💨最近の観光客はあんな奴らも増えて来てますから気をつけないと…』
聡は学生時代から空手をやっていたせいで襲われていた愛里を見つけるや否や思わず手が出てしまったと頭を掻いていた…
『…で愛里は…大丈夫ですか❓』
『あぁ…💧流石に翌日は仕事休ませたが…今日から元気に出て来とるみたいじゃ…』
『そうですか💨』
聡は微笑んだ…
『…ショックじゃったろな💧愛里のヤツ…悔しくて仕方なかったじゃろて…💦』
晋作は書類に印鑑を押しながらかけていた眼鏡をその持っていた印鑑でクイッと持ち上げながら哀しげに呟いた…
『…あの晩どうして私は皆と違うの❓私だけ声が出ないの❓…って…散々泣かれました…💧襲われそうになった事よりもむしろ声が出なかった事が相当ショックだったみたいで…💧』
『やはり無理なんじゃよ💦…イルカと交流するのはな…ベテラン健常者トレーナーとて簡単にこなせない難しい仕事なのに…障害のある愛里に出来る訳がない…そう思わんか…鳥羽君っ💨』
聡はうつ向いて黙っていた…館内放送で午後のアシカショーの告知アナウンスが流れる…
『……館長…愛里の事は俺に任せてくれませんか❓…何とかしてトレーナーではなくてもこのマリンワールドで愛里が出来そうな職種をさせるように説得してみますから💦』
晋作はじっと考えた後
『…すまんのぅ…いつもいつも💨愛里の事ばかり頼んで…』
と聡に苦笑いの視線を投げかけた…
『…いぇ…大切な幼馴染みですから💨…放っておけませんよ💦』
聡はそれだけ言うと部屋を後にした…
『……フフフ…放っておけない…か💨』
晋作は視線をまた机の書類に落とした…
>> 23
🐬16🐬
南錦マリンワールドの呼び物は何も壮大なイルカやアシカショーだけではなかった…水族館エリアにある、半円形の筒型に造られた大水槽も此処の目玉の一つである…南国亜熱帯の海に生息する色とりどりの様々な種類の魚達がのんびり泳ぐ姿が間近に見る事が出来るこの大水槽には連日本土からの遠足の園児や小学生、観光客らが押し寄せる…
『うわぁ💕ママ見て~💦エイさんがいるぅ~‼』
『あれって鮫やろ💧…一緒に入れてて他の魚食われへんのやろか‼』
『ネェネェ💦幸枝っ💨…あのウミガメさ、ウチのハゲ専務に似てない❓キャハハハ💦』
水槽の周りから様々な土地からの観光客の声が響き渡り、すぐそばで警備に当たっていた聡はフフフと笑った…ダイバーが水槽内に入り、熱帯魚らに餌を与えるショーの最中であり、そこは溢れんばかりの人だかりだ💦…
【皆様‼どうか押し合わないで下さい💨…ゆっくり見る事が出来ますからっ💦慌てないで‼】
聡と周りの男性スタッフが拡声機を使い観客の指揮を取る…
(ん❓…)
人だかりから離れた休憩室のゴミ箱の側で聡は愛里を発見した…愛里はいつものライブスタッフの黒い制服とは違い、館内清掃用の青い繋ぎの制服を着て館内随所に設置してあるゴミ箱の袋の交換をしているではないか…💨
(あ…💧…アイツ…何やってんだ❓…ライブステージに居なきゃなんないだろ❓…どして…)
聡は人の波をかきわけながら愛里に辿り着いた…
『愛里っ‼…何…💦…やってんだよ💦…こんな…💦場所で💦❓…〔ドリー〕と…💦〔ナナ〕の調教は…終わった…💦のか❓』
聡は雑巾片手にゴミ箱の淵を拭こうとする愛里の手を掴んだ…
『……アァ💦…サトシ…』
『アァ…じゃねぇよ‼…イルカの側にいて…💦訓練…しなきゃ…💦駄目だろ❓』
愛里は聡の忠告には耳を貸さずに黙々と仕事を続けながら…
『💨…ダッテ…モウ一緒ダヨ💧…イクラアノ子達ヲ訓練シテモ…全然愛里ノ言うコト聞かナイシ💦』
『だからって💨…ハァ…💧』
聡は深いため息をついた…
>> 24
🐬17🐬
『とにかくこっちに来いよ💦』
聡は愛里の腕を掴み従業員用の通路まで引っ張って行った…
『チ、チョット‼…痛イヨッ、サトシ💦』
『お前💦…ホントに…💦それで…💦…いいのか❓…💦夢だったんだろ❓…イルカの…💦サーカスのおねえさんに…💦なる事‼』
聡は身振り手振りで激しく手話をしながら愛里の顔を見つめた…
『…サトシ…ニハ…分かんナイヨ…産マレ持っタ中枢性ノ難聴ガドンナモノナノカ…💧楽しソウニ会話スル仲間ヤ友達ノ輪ニ入レズ、何話シシテルカモ全然聞きトレズ…💦タダ愛想笑イダケ浮かベル毎日ガドレホド辛イカナンテ…💦健康ニ産まれテキタ、サトシニハ…絶対分かんナイヨッ💢‼』
愛里は持っていた雑巾を床に叩きつけた‼
『あぁ、分かんないねっ💦…つぅか…💦そんな…💦意気地無しのヤツの…💦気持ちなんか…💦分かりたくねぇよっ💢…いいか…愛里💦お前は…💦逃げてるんだ💦…自分は…誰にも理解されない💦哀しい…💦障害者だって…💦そんな泣き事ばっか…💦言ってるから…💦…誰もお前の事…💦分かって…やろうと…💦思わねぇんだよ💦…何もかも…💦耳の障害の…せいにして…💦ホントにやりたい夢から…💦いつまでも…逃げてんじゃねぇよっ💢‼』
聡が初めて見せた愛里への素直な感情だった…
『俺だって…💦何度お前を…💦イルカの調教師から…💦諦めさせようと…💦思ったか分かんないよ💢…けど…💦お前小学生の時に…💦クラスの皆の前で言ったよな💦…イルカの調教師は…💦私の…全てなんだって…💦だから俺は…俺は💦…なのに…お前がそんなじゃ…💦そんな何でもすぐ諦めるヤツじゃ…💦もういいよっ💢‼』
警備の若いスタッフが聡に指示を貰おうと駆け寄って来たが、聡と愛里のただならぬ気配に気づき、またスゥ~とその場から消えて行った…
『…サトシノ…馬鹿っ💢馬鹿っ💢‼…』
愛里は両手で顔を覆い泣きながら外へ出ていった…
『お前の…夢だろが…💧』
誰もいない部屋の隅で聡はポツリと呟いた…
>> 25
🐬18🐬
『あ…鳥羽チーフ💦』
ドリーに空中回転の訓練をつけていた上原恵は聡の姿に気付き手を止めた…
『愛里…見なかったか❓』
聡は泣きながら去って行った愛里の後ろ姿がやけに気になり夕方、仕事の合間を見つけてプールサイドにやって来た…
『…それが💧…昨日からここには来てないんですよ💦…最後に見たのは一昨日の昼間でその時はもうこの仕事辞めてしまいたいって…かなり落ち込んでましたが…💧』
恵はドリーの鼻先を優しく撫でながら餌のイワシを口に放り込んだ…
『そっか💨…今日も清掃用の繋ぎ着て全然関係ない事してたもんだからさ💧…心配になって💦』
『フフフ…鳥羽チーフは愛里の事になると一生懸命なんだから💨』
恵は皮肉混じりに聡に言うとドリーに判るように右手を高く上げ、ドリーをまたプールの中央に泳がせた…少し目立ち始めたお腹がいつもの機敏な恵の動きとは異なるものの、相変わらず上原恵の調教風景は静かな緊迫感のある空気を漂わせていた…
『何処行ったか、検討つかないかな💦❓まだ家には帰ってないみたいなんだ💧…ったく‼…どこほっつき歩いてるんだか💨』
聡は制服の一番上のボタンを暑苦しそうに外すとため息をついた…
『もしかしたらあの子…軽沢の海岸かも…何か嫌な事あったらいつもあの海岸に行くんだって…そう言ってたような…』
『軽沢海岸だな💦…分かった…行ってみるよ、有り難う‼』
聡は恵に調教の邪魔して悪かったと謝るとプールサイドを出ていった…聡の後ろ姿を眺めながら恵は一度ゆっくり息を吐くと
『さあ💨いくよ、ドリー‼今度はこれよ💦』
そうドリーに教え込むとドリーは水中から真っ直ぐ勢いよく飛び出し空中で見事に3回転捻りの技を繰り出した‼
『オッケー💦いいよ…ドリー…💨…ハァ~…しかしこれを私の後に…誰がするんだろ💧』
ドリーの順調過ぎる調教を尻目に恵の気持ちは逆に重くずっしりと沈んでいた…
- << 28 🐬19🐬 南錦島の北西に位置する中粫(なかうるち)海水浴場から少し南に行った所に軽沢海岸がある…ホテルや民宿が軒を連ねるリゾート感溢れる中粫に比べ、軽沢海岸には普段は地元民以外にあまり観光客が訪れず、ひっそりとした穴場の海岸である…真っ白な小麦粉を敷きつめたようなその海岸には沢山の椰子科の琉球樹木が西風にそよぐ…聡は自転車で今まさに水平線に沈む夕日を浴びて海岸線を走らせていた… (いないな💧…) 聡は自転車を反転させ、元来た道を帰ろうとした瞬間、海岸の椰子の木の木陰で一人座っている愛里を見つけた… 『何してんだよ💦…愛里‼』 聡は愛里が気付くように愛里の正面に立って声をかけた… 『……サトシ…仕事ハ❓』 『…💨それは💦…こっちの…💦…セリフだって‼こんな所で…油…💦売ってんじゃ…💦ないよ💨』 『イインダ…モウ…』 愛里は眩しそうに目を細めながら沈む夕日を眺めている… 『…ハァ~💨』 聡は呆れ顔で愛里の横に座った…オレンジ色に光る夕日が海岸の水面に映り長い布を敷いたように輝く… 『…仕方ねぇな…💧替わりを捜すか…』 『カワ…リ❓…』 聡は側にあった木の棒を拾うと立てた膝の前で落書きを始めた… 『オーストラリアに…💦トレーナーの研修に行ってる…💦財前と島袋…💦知ってるだろ❓』 『……』 来月恵が産休に入った後急遽あいつらに帰って来てもらってショーの穴埋めしようかと考えてる…』 愛里は一瞬聡の顔を見たがまたすぐに前を向いて黙りこんでいる… 『いいよな…💦それで…💦』 聡は試すように愛里に言葉をかけると木の棒をポンと後ろに投げて立ち上がりじゃ明日💨と言い残し去ろうとした… 『何も…誰かの真似じゃなくてもいいんじゃないのか❓…お前はお前らしく誰のものでもない水野愛里らしさをお客さんに見せてやれば…』 後ろ姿で放った聡のその言葉を愛里は聞き取る事ができなかった…
>> 26
🐬18🐬
『あ…鳥羽チーフ💦』
ドリーに空中回転の訓練をつけていた上原恵は聡の姿に気付き手を止めた…
『愛里…見なかったか❓』
…
🐬19🐬
南錦島の北西に位置する中粫(なかうるち)海水浴場から少し南に行った所に軽沢海岸がある…ホテルや民宿が軒を連ねるリゾート感溢れる中粫に比べ、軽沢海岸には普段は地元民以外にあまり観光客が訪れず、ひっそりとした穴場の海岸である…真っ白な小麦粉を敷きつめたようなその海岸には沢山の椰子科の琉球樹木が西風にそよぐ…聡は自転車で今まさに水平線に沈む夕日を浴びて海岸線を走らせていた…
(いないな💧…)
聡は自転車を反転させ、元来た道を帰ろうとした瞬間、海岸の椰子の木の木陰で一人座っている愛里を見つけた…
『何してんだよ💦…愛里‼』
聡は愛里が気付くように愛里の正面に立って声をかけた…
『……サトシ…仕事ハ❓』
『…💨それは💦…こっちの…💦…セリフだって‼こんな所で…油…💦売ってんじゃ…💦ないよ💨』
『イインダ…モウ…』
愛里は眩しそうに目を細めながら沈む夕日を眺めている…
『…ハァ~💨』
聡は呆れ顔で愛里の横に座った…オレンジ色に光る夕日が海岸の水面に映り長い布を敷いたように輝く…
『…仕方ねぇな…💧替わりを捜すか…』
『カワ…リ❓…』
聡は側にあった木の棒を拾うと立てた膝の前で落書きを始めた…
『オーストラリアに…💦トレーナーの研修に行ってる…💦財前と島袋…💦知ってるだろ❓』
『……』
来月恵が産休に入った後急遽あいつらに帰って来てもらってショーの穴埋めしようかと考えてる…』
愛里は一瞬聡の顔を見たがまたすぐに前を向いて黙りこんでいる…
『いいよな…💦それで…💦』
聡は試すように愛里に言葉をかけると木の棒をポンと後ろに投げて立ち上がりじゃ明日💨と言い残し去ろうとした…
『何も…誰かの真似じゃなくてもいいんじゃないのか❓…お前はお前らしく誰のものでもない水野愛里らしさをお客さんに見せてやれば…』
後ろ姿で放った聡のその言葉を愛里は聞き取る事ができなかった…
>> 28
🐬20🐬
翌朝もプールサイドに愛里の姿は無かった…聡は全館内統括責任者としての忙しい責務の合間を縫って身重で無理させられない上原恵のイルカライブショーのアシスタントも兼務し、目も回るような多忙な数日間が続いた…
『チーフ💦…大丈夫ですか💧❓…最近あんまり寝てないんでしょ❓…昼間はライブショーのアシ業務に水族館エリアの警備、夜は深夜まで経理の書類整理…💧そんな事してたらいつか倒れてしまいますよっ💦』
控室で栄養ドリンクを飲み干す聡に上原恵が心配そうに労いの声をかける…
『ハハッ💧…大丈夫大丈夫っ💦…これくらいでヘコたれてたら責任者は務まらないって💨』
聡は汗だくになりながら一度顔の汗を手で拭った…
『……豪州に研修中の財前さんと島袋さんには連絡取ったんですか❓』
恵はフゥ💨とため息をつくと椅子に大事そうに腰掛けた…上原恵にもこれ以上無理はさせられない状況にまで来ている事は聡にも分かっていたが今は観光シーズンで目玉のライブショーにはどうしても穴を空ける事は出来ないと頭を悩ませているのは確かだった…
『…財前と島袋に帰って来てもらって穴を埋めて貰う事は簡単な話だ💧…でも…』
聡は言いかけた言葉を止めた…
『でも💦❓…ヤッパリ愛里にやらせてみたい…鳥羽チーフはまだそうお考えなんですね❓』
恵はウチワで自分に風を送り暑い~💦と唸りながら返した…
『…しかしショー人員が少なく、こんな大変な状況と知っているのにもかかわらず…アシスタントとしてライブの仕事を放棄するっていうのは…💦幾らなんでも…どんなに贔屓目に見ても鳥羽チーフは愛里を余りにも甘やかし過ぎなんじゃないでしょうか❓…あの子を特別視しないと思うのであれば尚更もっと厳しい目で見てあげなければいけないのでは…💦❓』
恵のその言葉は聡には痛烈に痛かった…全て的を得た間違いも狂いもない正しい意見だと感じたからだ…
(…恵の言う通りだ💧…確かに俺は💦)
聡は栄養ドリンクの空瓶をゴミ箱に無造作に入れるとふらつく体で午後のアシカショーの準備をしに黙って部屋から出て行った…
>> 29
🐬21🐬
『いつまで悲劇のヒロインぶったら気が済むんだ❓💨』
退座漁港の近くの防波堤の一番端で脚を垂らしてじっと海を眺めている愛里に聡は話しかけた…天気予報では南から大型で風の強い台風10号が沖縄地方に接近中との事で波は次第に激しさを増し雨はまだ降っていないものの鉛色の空の雲は今にも防波堤の二人を飲み込みそうな勢いでゴォ~と唸りを上げて動いていた…
『はっきり…💦言うぞ…💦…みんな…💦お前のお陰で…💦迷惑してる…💦』
風と波が聡と愛里の顔に容赦なく吹き付ける…
『ダカラ…前カラ言ッテルジャナイ💨愛里ハ…アソコニハ…必要ナイ…人間ダッテ‼』
『…もう一度…💦言ってみろ…💦』
『エ❓…』
『だからもう一度…💦言ってみろって…💦言ったんだよっ💢‼』
防波堤の側のテトラポットが次第に高くなりだした海潮を荒々しく二つに裂く‼何度も何度も休む事なく…
『いいか、愛里💦…お前は甘えたいだけなんだ💦…皆から同情されて…💦障害者だからってチヤホヤされて…💦…特別扱いしてほしい…💦だけ…💦なんだよっ💢💢違うかっ‼‼』
愛里は思わず立ち上がり聡を睨み付けたと同時に大粒の雨が降りだした‼
『チ、違ウワッ💢…』
『じゃあ何だよっ‼…💦何が違うのか…💦言ってみろよっ💢』
誰もいない大粒の雨が降りしきる防波堤の上で聡と愛里は互いに仁王立ちで睨み合っている‼
『…私ハ…💧…愛里ハタダ…💦』
『そうやって…💦いつも目の前の現実から…💦目を背けてばかり…💦いたら…💦何にも…💦始まんねぇだろっ💢…お前には…お前の…💦やり方が…💦もっと自信持って…💦…やってみろよっ…💦…やる前から逃げて…💦ばっかじゃ…💦…何も…💦始まらねぇんだよっ💢‼‼‼』
聡の手話は横なぶりの雨にかき消されそうになりながらびしょ濡れの愛里に届いてくれと必死だった…
『私…ノ…ヤリ方…💦💧』
『そうだよっ‼人の真似しようと…💦すっから考えちまうんだ…💦健常者と…💦同じようにする…必要なんて…💦ないよっ💢‼自分らしさ…💦見せりゃいいんだよっ‼‼』
『…自分…ラシサ💧』
愛里には聡のその言葉が胸に突き刺さっていた…
- << 32 🐬22🐬 『今日も休んだのか…💧アイツ…』 聡は午前のアシカショーの準備をする上原恵に話しかけた… 『…来て…ないみたいですね💨…フゥ…今日もチーフの手を煩わせなきゃならないですね💦…御免なさい💦』 恵は聡に深々と頭を下げて今日のショーのサポートをお願いした… 『い、いいよ💦…そんなに頭下げるなって💧じ、じゃあ事務所行って館長に逢ったらまたここに来て準備手伝うから💦』 聡は肩からボストンバックを幾つも下げ、控室の廊下を歩いて行った… 『……💨』 恵はそんな優しくて頼りになる聡の後ろ姿を暫く見つめて安堵のため息をついた…そして道具箱からアシカが使用する球やフラフープをゆっくりと出そうとした瞬間‼お腹にこの世のモノとは思えない程の激しい痛みに襲われた‼ 『‼…ア💧…ウグッ💦💦』 恵はその場に倒れ込んだ‼ 『だ…だれ…💧か…ア…チ…チーフ…💦』 『う、うそ‼…だ、大丈夫❓恵っ💦恵しっかりしてっ‼』 たまたま控室のそばを通りかかった同僚のスタッフが恵の異変に気付き、助けに駆け寄った‼… 『も、もしかして…産まれちゃう❓‼』 同僚は無線で鳥羽チーフや近くのスタッフらに連絡を入れた… 『恵っ💦…大丈夫だからねっ‼』 『……………こ…ここは…❓💧』 『病院だよ…💨赤ちゃんはまだお腹にいる…』 恵は気がつくとベッドに寝ていた…すぐ横には聡が座っていた 『…チーフ…💧…どしてここに❓』 『大丈夫だ…過労による軽い腹痛だってさ💨この時期にはよくある事なんだって💦…恵お前かなり無理してくれてたもんな💧…済まなかったな…』 恵は余りの激痛で意識不明のまま近くの病院に運んで来たんだと聡から説明を受けた… 『ハッ‼💨…ショーはっ❓💧…午前のアシカとイルカのショーはどうしたんですか❓💦』 恵は急に思い出したようにベッドから飛び起き、聡に尋ねた… 『ショーは暫く中止にしたよ💨』 『中止って💦…』 『仕方ないだろ…お前の後を継いでやれるスタッフはいないんだから…』 聡のどこか哀しげな表情を見て恵は唇を噛み締めた…
>> 30
🐬21🐬
『いつまで悲劇のヒロインぶったら気が済むんだ❓💨』
退座漁港の近くの防波堤の一番端で脚を垂らしてじっと海を眺めている愛里に聡は…
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『今日も休んだのか…💧アイツ…』
聡は午前のアシカショーの準備をする上原恵に話しかけた…
『…来て…ないみたいですね💨…フゥ…今日もチーフの手を煩わせなきゃならないですね💦…御免なさい💦』
恵は聡に深々と頭を下げて今日のショーのサポートをお願いした…
『い、いいよ💦…そんなに頭下げるなって💧じ、じゃあ事務所行って館長に逢ったらまたここに来て準備手伝うから💦』
聡は肩からボストンバックを幾つも下げ、控室の廊下を歩いて行った…
『……💨』
恵はそんな優しくて頼りになる聡の後ろ姿を暫く見つめて安堵のため息をついた…そして道具箱からアシカが使用する球やフラフープをゆっくりと出そうとした瞬間‼お腹にこの世のモノとは思えない程の激しい痛みに襲われた‼
『‼…ア💧…ウグッ💦💦』
恵はその場に倒れ込んだ‼
『だ…だれ…💧か…ア…チ…チーフ…💦』
『う、うそ‼…だ、大丈夫❓恵っ💦恵しっかりしてっ‼』
たまたま控室のそばを通りかかった同僚のスタッフが恵の異変に気付き、助けに駆け寄った‼…
『も、もしかして…産まれちゃう❓‼』
同僚は無線で鳥羽チーフや近くのスタッフらに連絡を入れた…
『恵っ💦…大丈夫だからねっ‼』
『……………こ…ここは…❓💧』
『病院だよ…💨赤ちゃんはまだお腹にいる…』
恵は気がつくとベッドに寝ていた…すぐ横には聡が座っていた
『…チーフ…💧…どしてここに❓』
『大丈夫だ…過労による軽い腹痛だってさ💨この時期にはよくある事なんだって💦…恵お前かなり無理してくれてたもんな💧…済まなかったな…』
恵は余りの激痛で意識不明のまま近くの病院に運んで来たんだと聡から説明を受けた…
『ハッ‼💨…ショーはっ❓💧…午前のアシカとイルカのショーはどうしたんですか❓💦』
恵は急に思い出したようにベッドから飛び起き、聡に尋ねた…
『ショーは暫く中止にしたよ💨』
『中止って💦…』
『仕方ないだろ…お前の後を継いでやれるスタッフはいないんだから…』
聡のどこか哀しげな表情を見て恵は唇を噛み締めた…
>> 32
🐬23🐬
『…愛里…あ~い~りっ‼』
愛里は軒先で一人座り、ボォ~ッと夜空を眺めていると突然肩をポン💨と叩かれた…
『西瓜…食うか❓』
お風呂上がりの祖父の晋作が愛里の隣にヨイショ💨と腰掛けた…
『今日も…💦ずっと…ウチに…💦居たのか❓…』
晋作はこれでもかというくらいにその赤く熟れた西瓜に塩をかけ、ジュルンとむしゃぶりついた…
『皆心配…💦しとるぞ…この4年間…💦どんなに…💦風邪ひいても…💦仕事だけは休まなかった…💦お前じゃったからなぁ…💦』
晋作はお世辞にも決して上手いとは言えない手話で愛里にしみじみと言葉をかけた…
『………』
『嫌に…💦…なったか❓この仕事…』
晋作は顔に止まった蚊に気付き、頬をピシッと張った…二人で暮らすには余りにも広すぎる沖縄独特の茅葺き屋根造りの民家の周りはうっそうと葦の葉が生えている…そのあちらこちらから虫の声が聞こえて辺りは幻想的な雰囲気になる…
『…ジイ…私…💧』
愛里は晋作から手に持たされた西瓜を膝に置いたまま口をつけずにいた
『焦らんでもいいんじゃよ💨…焦らんでも…💦この呉に及んで…💦何を焦る事があろうて…💦』
愛里は晋作の言葉とこないだ聡に言われた言葉を重ねていた…
『愛里…お前は…💦少しでも早く…💦一人前のイルカの調教師に…💦なろうなろうとしておるじゃろ❓…少しでも…💦お客さんに…💦認めてもらえる優秀な…💦調教師になりたい…頭の中…💦そればかりじゃないか❓…じゃがな愛里‼…それは…💦間違いじゃ…💦まずはお客さんの事より…💦お前が心から…💦この仕事を楽しむ事が…💦一番大事じゃないかの…❓💦お前自身が楽しめないと…💦誰もショーを見て…💦楽しんでくれんのではないじゃろか❓違うかな…❓』
目の前一面に夏の星座がプラネタリウムの如く輝いている…愛里と晋作は暫く黙ってそれを眺めていた…
>> 33
🐬24🐬
愛里の耳に突然の恵の過労入院により、ライブショーが中止になっていると聞かされたのはそれから何日かしての事だった…
『…ドウシテ‼…ドウシテモット早クニ教えテクレナカッタノ💨💢』
愛里は聡が仕事の事で晋作に逢いに来た時にこっそり聞いてしまったのだ…
『別に…💦隠してた…💦訳じゃ…💦ないよ…💦ただ…💦今のお前じゃ…💦』
必死に言い訳をする聡に愛里は今までに見た事もないような形相で聡を怒鳴りつけた…
『私…ヤル‼…ヤッテミルカラッ‼』
そう言い残し、愛里は一目散に恵の病院へと向かった…
【私ラシサ…私ラシサッテ…一体ドンナナンダロ…コンナ耳モマトモニ聞こえナイ…言葉モロクニ話セナイ…コンナ私ノ中ニ住んでル…私ラシサッテ…】
愛里は走りながら考えた…そして今までどれだけ自分に甘えていたのかもようやく知ったような気がした…
(聴覚障害者として産まれ、人と違う事を知って絶望に叩き落とされたあの時…私は本当に自分の運命と最後まで闘っていたのだろうか❓本当の生き甲斐を見つけてそれに向かって前進する努力をしていただろうか❓…何処か心の隅で私は人と違うから…希望なんて持てる資格なんてないんだとか…結局そうして勝手に納得して自分自身から逃避していただけなんじゃないだろうか…そうだよ💦何にもやらない前から道は開けないじゃない‼…とにかくやろう‼…やって駄目ならまた考えればいいんだ‼…このまま死んでるみたいには生きたくはないから…)
自転車を走らせる愛里の前から南からの季節風が強く吹き付けた‼愛里は体と心が急に水素を含んだように軽くなっていくのを感じた…
>> 34
🐬25🐬
『もういいよ、愛里💨…私は大丈夫だから💕』
病院のベッドの上で恵は見舞いに来てくれた愛里に優しく言葉をかけた…
『メグノ体…一番ニ心配シテアゲナキャイケナイ立場ナノニ💧…ホントゴメン…』
『いいんだよ愛里‼…そんな事より今さ、アシカと…💦イルカライブが中止に…💦なってるんだ…💦豪州から…💦来てくれる…💦予定だった…💦財前さんと島袋君もまだ…💦向こうから…💦来れないみたいだし…このまま…💦だと…💦せっかくショーを見に来てくれた…💦お客さんが…💦可哀想…💦』
人一倍責任感の強い恵は愛里に言っても仕方がないとは分かってはいるものの、自分がショーを仕切れないこの悔しさをどこかにぶつけなければならないくらい辛く感じていた…
『メグ…私ニ…任セテ‼』
暫くの沈黙の後に突然愛里が力強く言った…
『メグガ頑張ッテココマデ築キアゲタコノ南錦マリンワールドノ看板ヲ、コノママ終わらセチャ駄目ダモン‼』
『……愛里…💦』
恵は少し驚いた様子で愛里の目を見たがその目は一点の偽りのない真剣な愛里の思いが溢れんばかりに恵には伝わってきた…
(この子…変わった…いや、今着実に変わろうと努力してる…💦…やれるんじゃないかな…今の愛里になら…‼きっと…)
恵はまだ疲れの残る体を起こし、真っ直ぐ愛里の前に座りじっと目を見た‼
『いい愛里…💦今から…💦ドリーとナナの癖や…💦特徴を細かく…💦貴方に教える…💦…それをどのようにして…💦貴方の【形】にするかは…💦愛里次第だよ‼…いい❓ゆっくり言うからよく…💦聞いててね…💦』
恵は愛里に二頭のイルカの特徴や癖を身振り手振りで愛里に教えた…愛里は真剣に恵の手話を一語一句聞き逃さないと必死に恵の軽やかに動く指先の軌道を目で追いかけていた…
>> 35
🐬26🐬
台風一過の湿気をおびた真夏の太陽が降り注ぐ南錦島は今日も朝早くから大勢の観光客が船を乗り継いでやってくる…マリンワールドの目玉であるライブステージの前には今日も〔公演中止〕の札が貼られてある…
『あ~ぁ💧…ママァ…今日もまたイルカさん見れないの💨❓』
あちこちからライブステージを楽しみにやってきた家族連れやカップルの落胆の声が聞こえてくる…
『みたいね💨…水族館のほうだけで我慢しよっか💧』
ざわめきながらライブステージの玄関前を後にする観光客を見ながらマリンワールド統括責任者である聡は唇を噛んだ…
(…クソッ‼…)
聡はやりばのない苛立ちを何処にも発散する事なく施設の場所を聞いてくる観光客らに笑顔で対応しながら努めて冷静さを装っていた…PiPiPi…‼突然聡の無線が鳴り聡は受けた…
『‼…チーフ💧…た、大変ですっ💦…愛里が…‼』
ショープール近くの売店に配置されていたスタッフが慌てながら聡に連絡を寄越した…
『あ、愛里がどうしたんだ💧❓』
『と、とにかく早く訓練プールの方に来てくださいよ💦』
聡は無線を繋ぎながら言われた通り訓練プールの方に走った…聡が訓練プールに駆けつけた時、聡の目の前には今までに見た事ない光景が広がっていた…そこには全身ウエットスーツを着た愛里がプールの中に入り、ドリーとナナのすぐ側に頭だけ出しながら泳いでいたのだ…
『あ、愛里っ‼お前…な、何してんだよっ💧💦』
無線で連絡を寄越したスタッフが聡の隣に駆け寄って顔を真っ青にして説明した…
『私も止めたんです💦…あの子耳に水が入ると大変な事になるって聞かされてたから…だから止めたんです‼…でもあの子…💦聞かなくて‼』
『愛里っ💢バカッ‼…今すぐプールから出ろっ💢…お前自分が何やってるか分かってるのか❓…お前の耳に水が入りでもしたら病気の難聴が悪化する恐れがあるからって💦…あれ程医者に言われただろっ💢‼』
聡の声は余りの興奮状態にあったせいか手話をしなくても愛里の耳には理解出来た…
『…ダイジョウブ💨…心配ナイヨ💦頭ハ水ニハ浸ケテナイ‼』
愛里は聡にそれだけ告げるとまた二頭のイルカと泳ぎ出した…
>> 36
🐬27🐬
『とにかく愛里💦…出て来て‼早く💦』
スタッフの一人がプールに飛び込もうとした瞬間、聡はそれを制止した…
『❓…ま、待てっ‼…ち、ちょっと待って少しだけ様子を見よう💦』
聡は真っ直ぐ愛里に視線をやり右手だけ大きく広げ周りのスタッフにストップをかけた‼
『だ、だってチーフ💨…このまま放っておいたら…あの子💦』
『分かってる💨…分かってるが…💧ちょっと待てって‼』
今度はきつい口調で聡は周りを制止した…辺りは妙な沈黙に包まれた…ただ聡らに聞こえてくるのは愛里と二頭のイルカがバシャバシャと水しぶきをあげて泳いでいる水の張りつめた音だけだった…
(あいつ…💧いったい…何してるんだ❓)
聡には愛里のその奇妙な行動が理解出来なかった…愛里はそれぞれのイルカを側に呼んでは頭の部分を指でツンツンと何度となく叩いたと思うとまた一緒に泳ぎ出す…そしてまた同じ事の繰り返しをしてみせる…
『…💧フゥ💨…頭を水に浸ける様子はないみたいだし💧…ひと安心はひと安心なんですけど…しかしチーフ…💨あの子…何やってるんでしょうか❓』
ザワザワと数人のスタッフが愛里の不可解な行動を見て騒ぎ始めた…
『みんな、いくぞ‼』
聡は振り返ると周りのスタッフにこのままこの場を去れと命令した…
『しかし、チーフ💧…愛里はどうするんですかっ💦…あのま…』
『いいから‼…みんなはそれぞれの持ち場に戻ってくれ💦』
そう告げると聡はスタッフの背中を押し自らも訓練プールを後にした…
『いいんですか❓…愛里をあのままで…💧後でどうなっても知りませんよっ💨』
スタッフは口々に聡に噛みついたが聡は大丈夫大丈夫‼と笑顔でそれを返し、プールの入口の扉を閉めた…
『…みんなの気持ちはホント解る、感謝している💦…でも今はあのままアイツのやりたいようにさせてやってくれないか❓…アイツの体にもし何かあったら全ての責任はこの俺が取るから…』
スタッフは聡のなみなみならぬ決意に負け、分かりましたと頷いて持ち場に散っていった…
(愛里…信じてるぞ‼…頑張れよ‼)
聡は心で一言呟くと水族館の警備に走って行った…
- << 39 🐬28🐬 それから何日も愛里と二頭のイルカとの奇妙な行動は続いた…聡は愛里のその行動を邪魔せずただ見守っていた… 『💨…そうか…やっとやる気になってくれたか💦』 カップアイスを食べながら晋作は薄暗い水族館の大水槽の前で聡から事の成り行きを聞かされていた…聡と晋作が座っている椅子の目の前を色鮮やかな熱帯魚の群れが通り過ぎる…余りの鱗の光沢に二人の顔もポッ💨と光が当たり、幻想的な雰囲気に包まれた… 『…今アイツなりに2頭のイルカに調教をつけているみたいです…何をしているのかは敢えて聞いていませんが…💦…トレーナーとしてショーの穴埋めをしようという並々ならぬ自覚だけは見受けられますが…💧』 『…そうか💨…ワシは待っておったんじゃ…愛里がいつかそうなってくれる事をな…』 晋作はしみじみとアイスの残りを口に運ぶと小さなため息を一つつき、水槽を見上げた… 『イルカの調教師という仕事は五体満足で健康な人間でもなかなか難しい仕事じゃ…💦ましてや愛里のような聴覚にハンデのある子が簡単に出来る仕事じゃない…しかしアイツには…愛里には人一倍イルカの気持ちが解るような気がするんじゃ…ワシにはむしろ健康な人間には解らない何かが愛里には備わっているような気がしてならないんじゃよ…言葉が通じないからこそ通じる何か…』 『言葉が通じないからこそ通じる何か…💧ですか❓』 聡は眉間に皺を寄せて晋作の話を聞いていた… 『💨まあ鳥羽君…心配するな💦…愛里はお前さんが思ってる程弱い人間じゃない‼…幼い頃から愛里をよく知ってる鳥羽君にはもう分かってるはずじゃが💨…違うかな❓』 晋作は苦笑いをしながらアイスのカップをゴミ箱に捨てると聡の肩をポン💦と叩き、事務所に戻って行った… (…愛里…💧お前…) 水槽のへりにへばりついているエイの姿を眺めながら聡は暫くそこを動かなかった…
>> 37
🐬27🐬
『とにかく愛里💦…出て来て‼早く💦』
スタッフの一人がプールに飛び込もうとした瞬間、聡はそれを制止した…
『❓…ま、待てっ…
🐬28🐬
それから何日も愛里と二頭のイルカとの奇妙な行動は続いた…聡は愛里のその行動を邪魔せずただ見守っていた…
『💨…そうか…やっとやる気になってくれたか💦』
カップアイスを食べながら晋作は薄暗い水族館の大水槽の前で聡から事の成り行きを聞かされていた…聡と晋作が座っている椅子の目の前を色鮮やかな熱帯魚の群れが通り過ぎる…余りの鱗の光沢に二人の顔もポッ💨と光が当たり、幻想的な雰囲気に包まれた…
『…今アイツなりに2頭のイルカに調教をつけているみたいです…何をしているのかは敢えて聞いていませんが…💦…トレーナーとしてショーの穴埋めをしようという並々ならぬ自覚だけは見受けられますが…💧』
『…そうか💨…ワシは待っておったんじゃ…愛里がいつかそうなってくれる事をな…』
晋作はしみじみとアイスの残りを口に運ぶと小さなため息を一つつき、水槽を見上げた…
『イルカの調教師という仕事は五体満足で健康な人間でもなかなか難しい仕事じゃ…💦ましてや愛里のような聴覚にハンデのある子が簡単に出来る仕事じゃない…しかしアイツには…愛里には人一倍イルカの気持ちが解るような気がするんじゃ…ワシにはむしろ健康な人間には解らない何かが愛里には備わっているような気がしてならないんじゃよ…言葉が通じないからこそ通じる何か…』
『言葉が通じないからこそ通じる何か…💧ですか❓』
聡は眉間に皺を寄せて晋作の話を聞いていた…
『💨まあ鳥羽君…心配するな💦…愛里はお前さんが思ってる程弱い人間じゃない‼…幼い頃から愛里をよく知ってる鳥羽君にはもう分かってるはずじゃが💨…違うかな❓』
晋作は苦笑いをしながらアイスのカップをゴミ箱に捨てると聡の肩をポン💦と叩き、事務所に戻って行った…
(…愛里…💧お前…)
水槽のへりにへばりついているエイの姿を眺めながら聡は暫くそこを動かなかった…
>> 39
🐬29🐬
『ンモゥ💢‼…ドリー💦ナナ‼…違ウデショ💨ドウシテ出来ナイノヨッ💢』
訓練プールで今日も愛里は2頭のイルカに調教をつけていた…聡は通路の壁にもたれながらじっと愛里の調教風景を見ていた…
『ダカラッ💢…‼』
愛里は指示通り動かない2頭のイルカに半ば苛立ちを隠せない様子で水面を一度ピシャ💦と掌で叩くとプールサイドでじっとうつ向いたまま考え込んでしまった…
『愛里っ💨‼』
見るに見かねたのか聡はゆっくり愛里の元へ歩み寄り声をかけた…
『ア💨…サトシ…居タノ…』
浮かない顔で愛里は無愛想にそれだけ言うとまたうつ向いてしまった…暫く沈黙が二人を包んだ…聡は仕方ないなぁ~という顔つきで一度ため息をつくといきなりザバァン‼とプールに足から飛び込んだ…愛里はびっくりして顔を上げ聡の方を見た…
『いいか❓…そんな💦…態度…💦してたら…💦…イルカ達にも…💦伝わっちゃうぞ💨…💦』
聡は愛里の目の前に顔だけ出すと次の瞬間頭からプールに潜りイルカ達の方へ泳ぎ出した…いきなりの聡の行動に戸惑いながらも愛里はじっと聡の方を見ていた…何分か聡はイルカ達と一緒に泳いだ後プールから上がりずぶ濡れのまま愛里に近づき
『…さ💨…息抜きでもすっか‼な💦』
と言いながらいきなり大声で笑い出した…
『…💧訳…分カンナイヨ💨…サトシ…💧』
愛里はその聡の子供みたいな一連の奇怪な行動に思わず笑わずにはいられなかった…
🐬🐬
『ウッワ~‼今日も暑いがいい天気だ~💨』
日中は37度近くまで上がるこの南錦島独特の渇いた残暑の中、聡は愛里を息抜きと称して外に連れ出した…
『愛里…💦お前最近…💦全然…💦遊んで…💦なかったろ❓…ずっと考え込んで…💦落ち込んでばっかじゃ…💦脳味噌…腐っちまうぞ💦‼』
『ヨク言ウヨ💨…サトシダッテ、仕事休ンデル所…愛里…見タコトナイヨ‼』
『そ、そっかぁ💦❓アハハ…アハハ…‼』
聡は少し照れ気味に頭をかきながら歩く愛里の前で両手を広げて飛行機が飛ぶ真似をした…
『…バカッ💨』
そんな聡を愛里は後ろから笑った…
- << 42 🐬30🐬 島唯一の若者の町碧南(へきな)村のブティックで愛里と聡はショッピングを楽しんだ… 『…💧…お、おい💦…愛里…何俺に…服合わせ…💦てんだよっ💦』 愛里はクスクスと笑いながら後ろで冷やかし程度にぶっきらぼうにジーンズを選んでいた聡の背中に青のボーダーのTシャツを合わせて来た… 『フフフ…イイジャン‼💨…ヨク似合ウヨ💦…サトシ💨』 『い、か、買わないぞ💦…俺は💨💧』 聡は目を丸くして愛里の悪戯な笑顔を見返して照れた…小麦色に綺麗に日焼けした愛里の均整のとれた指先を見つめながら聡は何度も何度も愛里の試着を断り続けた… 『ンモッ💨…オ金ナラ気ニシナイデ💦…コノ服ハ愛里カラノプレゼント‼…』 『ぷ、プレゼント💧💦』 『タマニハイイジャン💨…愛里、サトシニハイツモオ世話ニナッテルカラ…』 愛里は嫌がる聡の腕に強引にそのシャツを持たせてパンパン💨と聡の肩を軽く叩いて見せた… 『な、なんで💦…❓…いいのに…💧』 『愛里ガソウシタイダケ💨…黙っテプレゼントサレナサイッ💢』 愛里は聡をそのまま店のレジまで連れていくとすぐに勘定を済ませた… 『あ、…有り難う💧…な、何か…💦悪いな💦…じゃ…💦遠慮…なく💦』 聡は店を出た愛里に手話でお礼を告げた… 『……💦キット…サトシニハ…似合ウヨ💨』 海風に愛里のしなやかな髪がなびいた…聡は背伸びして大きくその海風が巻き付くのをまるで楽しむかのような愛里の大きな背伸びを見ながら何故か心が波立つのを感じた…何かにフッキレたすがすがしい自信に満ちた愛里のその愛里の横顔は今まで聡が見た事もないくらいに綺麗で美しく輝いていた… (…愛…里💧…) 聡は心の中で一度愛里の名前を口にした… 『サトシ‼…泳ギニ行こッ💦』 愛里は聡の手を取ると眩しく光輝く目の前の碧南の砂浜に走り出していた…
おはようございます。
気温が不安定で、風邪などひかれていないでしょうか?
毎回、ハラハラドキドキしながら読ませていただいております。
また、続きを楽しみに待っていますので、よろしくお願いしますm(_ _)m
>> 40
🐬29🐬
『ンモゥ💢‼…ドリー💦ナナ‼…違ウデショ💨ドウシテ出来ナイノヨッ💢』
訓練プールで今日も愛里は2頭のイルカに調教をつけ…
🐬30🐬
島唯一の若者の町碧南(へきな)村のブティックで愛里と聡はショッピングを楽しんだ…
『…💧…お、おい💦…愛里…何俺に…服合わせ…💦てんだよっ💦』
愛里はクスクスと笑いながら後ろで冷やかし程度にぶっきらぼうにジーンズを選んでいた聡の背中に青のボーダーのTシャツを合わせて来た…
『フフフ…イイジャン‼💨…ヨク似合ウヨ💦…サトシ💨』
『い、か、買わないぞ💦…俺は💨💧』
聡は目を丸くして愛里の悪戯な笑顔を見返して照れた…小麦色に綺麗に日焼けした愛里の均整のとれた指先を見つめながら聡は何度も何度も愛里の試着を断り続けた…
『ンモッ💨…オ金ナラ気ニシナイデ💦…コノ服ハ愛里カラノプレゼント‼…』
『ぷ、プレゼント💧💦』
『タマニハイイジャン💨…愛里、サトシニハイツモオ世話ニナッテルカラ…』
愛里は嫌がる聡の腕に強引にそのシャツを持たせてパンパン💨と聡の肩を軽く叩いて見せた…
『な、なんで💦…❓…いいのに…💧』
『愛里ガソウシタイダケ💨…黙っテプレゼントサレナサイッ💢』
愛里は聡をそのまま店のレジまで連れていくとすぐに勘定を済ませた…
『あ、…有り難う💧…な、何か…💦悪いな💦…じゃ…💦遠慮…なく💦』
聡は店を出た愛里に手話でお礼を告げた…
『……💦キット…サトシニハ…似合ウヨ💨』
海風に愛里のしなやかな髪がなびいた…聡は背伸びして大きくその海風が巻き付くのをまるで楽しむかのような愛里の大きな背伸びを見ながら何故か心が波立つのを感じた…何かにフッキレたすがすがしい自信に満ちた愛里のその愛里の横顔は今まで聡が見た事もないくらいに綺麗で美しく輝いていた…
(…愛…里💧…)
聡は心の中で一度愛里の名前を口にした…
『サトシ‼…泳ギニ行こッ💦』
愛里は聡の手を取ると眩しく光輝く目の前の碧南の砂浜に走り出していた…
>> 42
🐬31🐬
照り付ける真夏の太陽の下、全力疾走で碧南村の真っ白な海岸に辿り着いた愛里は頭から砂浜に倒れ込んだ…後から聡がそれに続いてぎゃ~と言いながら愛里のすぐ横に倒れ込んだ…
『あ…愛里💦…泳ぐったって…💦…お前…💦泳いだら…駄目って…医者から…💦言われ…てる💦…だろ❓💧』
『堅い事イワナイイワナイ‼』
頭まで全身砂まみれになりながら聡は頭から砂浜に飛び込んだ際に口に入った砂をペッ💦と吐き出しながら困った顔つきで愛里を見上げた瞬間、聡の心臓はドキッ💧と大きく鳴った…愛里は着ていたタンクトップをバサッ💨と一枚脱ぎ捨てると中からパステルグリーンのハイビスカス模様のビキニが現れた…
『あ‼…愛里…💧…お、お前っ💦』
『タマニハ…羽目ヲ外サナイトネッ💨』
愛里はニコッと聡に笑いかけ今度は履いていたデニムのバミューダをゆっくり脱ぎ捨てた…聡は愛里のその予想外な一連の行為に半ば戸惑いながら視線をどこに持っていけばいいか困惑していた💧
『こいつ💨…始めから…💦こうするつもりで…💦中に水着を…💦着ていたのか💨この確信犯💢‼』
『キャハハハ💦』
聡は右手にゲンコツを作りわざと怒ったように愛里を追いかけると愛里も楽しそうにキャッキャッ‼と手を頭に当てて逃げ回った…小学生以来に見せた久し振りの他愛もない幼馴染みの二人の時間だった…人影もまばらな碧南村の海岸の椰子の木が楽しそうにふざける二人を見守っているかのように時折大きく風になびき葉が音を立てる…愛里と聡は小さな子供が鬼ごっこをするかのようにはしゃぎあって笑い転げた…汗だくになりながら聡は服のまま透き通ったコバルトブルーの海に飛び込んだ‼…
『サトシ~💦…愛里モ…オヨギタァ~イ‼』
海面から頭を出した聡に波打ち際の愛里は肩が抜けるくらいの大きな手話で訴えた…
『…💨仕方ないな…💦…耳の中に…💦水入れんじゃないぞっ‼…ほら、こいよっ愛里‼』
聡は手招きして愛里に海へ入って来いと促した…愛里は目が無くなるくらいに微笑むとゆっくり海の中に足を進めた…
>> 43
🐬32🐬
『ハアッ💨…ハアッ💨…パンツ💦…ビショビショに…ハアッ💨なっちゃったよ💧…アハハハハハ‼』
聡と愛里は海から上がるとパイン椰子の木陰にドサッ💨と座り込んでまたお腹から笑い合った…聡を見て愛里はまだ笑いころげている…
『こ、コラッ💢…笑うなっ💦💧』
『ダッテ…💦サトシ、…💦アハハ…愛里ガ上ニ乗っカッタラ…💦アハハ…溺れソウニナッテンダモン💦』
『ば、バカッ‼海面で…体ごと上に乗られたら…💦…そりゃ死ぬぞ💧普通…』
聡は身振り手振りでさっき沖ではしゃぎ合って溺れそうになった事のテンマツをおどけながら手話で説明して見せた…愛里はお腹を押さえながら三角座りの脚をバタバタとバタつかせながらヒーヒー言いながら笑っていた…
『…そんな愛里…💦ほんと…💦久し振りに…💦見たよ💨』
笑う愛里の横顔を見つめながら聡は急に我に返ったように真面目に言葉を発した…
『…💦…エッ❓…ソッカナ💨』
聡の突然の真面目モードに愛里も少し緊張気味に座り直した…
『お前は…💦そうやって…💦笑ってる顔が…💦一番いい…💦よ‼』
『エッ❓…今何テ❓…ワカラナカッタカラモウ一度‼』
『ば、バカッ💦…二回は…そ、その💧…い、言えるかっ‼💢』
愛里は困った聡の顔を見るのが大好きだった…こうしてたまに核心に迫る言葉を発した時に限って愛里は理解出来ているにもかかわらず必ず聞き直すフリをしてからかうのだった…
『…あと…💦お前がそんないい顔をする時は…💦イルカと接している時だ…💦』
椰子の葉がザワザワと風になびく…
『……』
愛里の口数はなくなりじっと海岸線の鳥の群れを眺めている…
『なあ愛里…覚えてるか❓…お前が…💦初めて…💦山梨から…この島の小学校に…💦転校してきた…💦日の事…』
聡は足元の白い砂を右手で握り上げるとその小指からザァ~と砂時計のように砂を滑らせるように落とした…愛里は脚についた砂を手で静かにはたき落とすとじっと聡の話す手話に集中した…
>> 44
🐬33🐬
『小学3年の秋、お前がこの島の学校に転校してきた時さ…クラスの男子、お前の事馬鹿にしたよな💦…変な声~とか、はっきり喋れよ💦…とか…』
『………』
愛里は足元の砂を手で掻いて真っ白な巻き貝の欠片を拾い上げた…
『ほら💦…あの年頃のガキって…思った事すぐ口に出しちまうっていうか…デリカシーの欠片もないってゆうか…💦けどな愛里…💦俺思ったんだ…あいつらああやって愛里を苛めて困らせてたけど…実は本当はみんなお前の事が好きだったんじゃないのかなって…💦』
『…私ノ事ガ…❓』
『うん…💦みんなお前と仲良くなるキッカケ捜してたのかもなって…💦ただ突然の転校生にどう接すればいいのかがよく解らなかったんだと思う…💦それってどういう意味か分かるか❓💨』
聡はじっと愛里の目を見た…
『お前が思っている程…お前が気にしている程…みんなお前の障害の事なんて何とも思ってなかったって事だよ💦』
『……💧』
『仲良くなりたかった…キッカケをただ捜していただけなんだ…💦障害のあるなしなんてあの頃の子供には関係ないんだよ💨…ましてやこんな田舎坊主しか住んでいない島のガキにはそこまでひねくれて考える頭なんてなかったんだ…💦』
『…フフフ…💨サトシモ…ソノ田舎坊主ノ一人ノクセニッ‼』
愛里は思わず微笑んで持っていた砂を聡の脚にかけた…
『…フフフ…だから…お前は特別なんかじゃないんだ💦…みんなと同じ元気に生きる権利のある一人の女性なんだ💦…分かるな…❓だから自分だけがハンデがあるとか…悲しい境遇なんだとか…💦そうやってひねくれてんじゃねぇぞ‼…分かったか❓💨』
聡は愛里の頭をポンと叩くとすっきりした顔でまた海に向かって大声で駆け出した…
『頑張れっ💦頑張れっ💦…水野愛里っ~~‼‼生きる事に負けんじゃねぇ~‼自分に負けんじゃねぇ~‼‼世界中の誰も応援してくれなくっても💦…俺が…この俺が応援してっからなァ~💦』
聡は天にも登るような声でそれだけ言うと頭から海に飛び込んで行った…
『……サトシ…💧』
愛里には聞こえてないはずの一切の手話のない聡の声だったが愛里の胸には何故かはっきりとその言葉が聞こえた気がした…
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